説明

移植機

【課題】単一の操作具の単純な操作により移植作業を誤操作をすることなく容易に行うと共に、部品点数を削減する。
【解決手段】単一の操作レバー25上下方向の操作により植付装置の昇降を行い、該操作レバー25の前後方向の操作により左右マーカの振出し方向を設定する。3位置切換えスイッチ29は、作業機準備スイッチ30がオフの場合、方向指示器を操作する。上記スイッチ30がオンの場合、切換えスイッチ29は、両出し、自動、停止の各マーカモードに切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付装置等の作業機、マーカ及び方向指示器を備えた乗用田植機等の移植機に係り、詳しくは作業機の昇降、マーカのモード切換え及び左右マーカの振出し方向並びに方向指示器の各操作の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用田植機は、運転操作部に(手元)操作レバーが配置されており、該操作レバーを上下方向に操作することにより植付装置を昇降制御し、該操作レバーを前後方向に操作することにより、マーカの作動形態が切換えられる。具体的には、上記操作レバーを機体後方に向けて操作すると、植付装置の昇降に伴い左右マーカの振出し方向が交互に切換えるマーカ自動モードになって、該操作レバーの後方向への1回操作毎に、左右マーカの振出し方向が順次切換えられる。また、上記操作レバーを機体前方に操作すると、左右マーカが作業位置に左右同時に繰出される両出しモードと、マーカの振出しが停止される停止モードとに順次切換えられる(特許文献1参照)。
【0003】
また、他の乗用田植機は、運転操作部に配置された操作レバーを上方向に1回操作することにより、植付クラッチが伝動遮断側に操作されると共に植付装置が上昇操作され、かつ作動位置にあるマーカが植付装置の上昇に伴って格納位置に引上げられる。また、上記操作レバーをもう1度上方向に操作すると、植付装置が田面まで下降操作される。この状態で、上記操作レバーを後方向に一度操作すると、反対側のマーカのフックが外されて、該マーカが作動位置に切換えられると共に、植付クラッチが伝動側に操作される。
【0004】
そして、植付作業にあっては、副変速レバーが低速位置にあって、上述した操作レバーによる植付装置の昇降、植付クラッチ及びマーカの切換え操作が行われるが、路上走行にあっては副変速レバーが高速位置に切換えられる。この状態では、上記操作レバーは方向指示器操作用に切換えられ、該操作レバーを前方向に操作すると左側の方向指示器が点滅し、後方向に操作すると右側の方向指示器が点滅する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−125613号公報
【特許文献2】特開平8−331908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者(特許文献1参照)の操作レバーによる操作は、1個の操作レバーにより、植付装置の昇降操作、マーカ振出し方向の決定操作及びマーカモードの切換え操作が行え、部品点数の削減が図られるが、操作が複雑となって、オペレータが戸惑う虞れがある。
【0007】
後者(特許文献2参照)の操作レバーによる操作は、1個の操作レバーにより、植付装置の昇降操作と方向指示器の操作を行うことができるが、上記両操作は副変速装置等の他の切換え手段により切換えられるため、該切換えの誤りによって路上走行中での方向指示器の操作時に、不測に植付装置が作動することが懸念される。
【0008】
また、マーカモード切換え用の操作具と、方向指示器用の操作具とそれぞれ別に設けるものもあるが、このものでは、部品点数の増加を招いてしまう。
【0009】
そこで、本発明は、単一操作具により作業機(植付装置)の昇降及び左右マーカの振出し方向の設定操作を自然な感覚で行うことができると共に、方向指示器の操作具がマーカモードの切換えを兼用して、方向指示操作時に誤操作、誤作動がなく、かつ部品点数の削減を図った移植機の操作装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前輪(2)及び後輪(3)により支持され、運転操作部(11)を有する走行機体(5)と、該走行機体に昇降自在に支持された作業機(12)と、該作業機の左右に、上方に収納された収納位置から田面に接する作業位置に振出し自在に設けられた左右のマーカ(20)と、左右の方向指示器(18)と、を備えてなる移植機(1)において、
前記運転操作部(11)に、前記作業機(12)を昇降操作すると共に前記左右のマーカ(20)の振出し方向を設定する単一の操作具(25)と、中立、右及び左の3位置に切換え得る切換えスイッチ(29)と、を備え、
前記切換えスイッチ(29)を、前記作業機(12)が非作業状態にあることを判定した場合、前記左右の方向指示器(18)の操作用として機能し、前記作業機(12)が作業状態に入ることを判定した場合、前記作業機の昇降毎に前記左右のマーカの振出し方向が切換えらえるマーカ自動モードと、前記左右両マーカが作業位置に振出し状態となる両出しモードと、前記左右マーカの振出しが停止される停止モードとに切換えるマーカモードの切換え用として機能するように切換える制御部(40)を備えてなる、
ことを特徴とする移植機にある。
【0011】
前記運転操作部(11)に、前記方向指示器(18)の作動を表示する左右の方向指示用表示器(28l,28r)を備え、
前記切換えスイッチ(29)の中立位置を、前記マーカモードの切換え用と機能する際の前記マーカ自動モードに対応し、
前記切換えスイッチ(29)が前記マーカモード切換え用として機能する際、前記左右の方向指示用表示器(28l,28r)が、前記マーカ自動モードにおける前記左右のマーカの振出し方向を表示してなる。
【0012】
前記非作業状態と前記作業状態に入ることの判定を、前記作業時の警報制御を作動するスイッチ(30)により行い、該スイッチ(30)のオン時には前記切換えスイッチ(29)を前記マーカモードの切換え用として機能し、前記スイッチ(30)のオフ時には前記切換えスイッチ(29)を前記方向指示器(18)の操作用として機能してなる。
【0013】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明によると、単一の操作具により作業機の昇降操作とマーカの振出し方向の設定とを行うものでありながら、該操作具の操作方向を作業機の昇降方向とマーカの振出し方向と同じにする等により、上記操作具の操作は、オペレータの感覚と一致した単純なものとなって、移植作業時の操作を容易にして誤操作及び誤作動の発生をなくすことができる。
【0015】
また、マーカモードの切換えは、方向指示器を操作する3位置切換えスイッチを兼用するので、マーカモード切換え専用のスイッチを必要とせず、部品点数を削減できると共に、上記切換えスイッチは、作業状態に入るか否かにより方向指示器操作用とマーカモード切換用とに切換えられ、方向指示操作時に作業機が不意に下降する等の懸念はなく、高い信頼性と安心感により操作することができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によると、左右方向指示器の操作を行わない切換えスイッチの中立位置に、マーカ自動モードが設定されるので、移植作業においては、マーカ自動モードで作業されることが多く、路上走行から圃場内に移動して移植作業に移行する際、又はその逆に移植作業から路上走行に移行する際、上記切換えスイッチを中立位置のままで切換える必要がない場合が多く、操作が単純で操作の混同が少ない。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、移植作業時には苗切れ、肥料切れ等を警報する警報制御を作動するスイッチがONされるので、該スイッチのON,OFFにより自動的に前記切換えスイッチが非作業時には方向指示器用として、作業時にはマーカモード切換え用として切換えられ、操作が単純、容易となって誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用し得る乗用田植機の全体側面図。
【図2】その運転操作部を示す図。
【図3】その3方(3位置)切換えスイッチを示す図。
【図4】その表示パネルを示す図。
【図5】乗用田植機の一方のマーカ部分を示す後面図。
【図6】そのマーカ駆動部を示す後面図。
【図7】その作動を示す図で、(a)はマーカの収納姿勢、(b)はマーカの作業姿勢を示す。
【図8】その制御部のブロック図。
【図9】そのメインフロー図。
【図10】方向表示制御のフロー図。
【図11】作業機(植付装置)操作制御のフロー図。
【図12】マーカの振出しモード制御のフロー図。
【図13】マーカ出力制御のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明をする。図1に示すように、移植機としての乗用田植機1は、前輪(走行輪)2及び後輪(走行輪)3に支持された機体(走行機体)5を有しており、該機体5の前方には、センターポール6が設けられていると共に、ボンネット7に覆われたエンジンが搭載されている。ボンネット7の後方には、ステアリングハンドル9や、作業者が着座する運転座席10などが配設された運転操作部11が設けられていると共に、該運転座席10の後方側では、作業機である植付装置12が昇降リンク機構14を介して昇降自在に機体5に連結されている。
【0020】
上記植付装置12は、マット苗を載置する苗載せ台13と、該苗載せ台13から苗を掻きとって圃場に植付ける植付作動部15と、を有していると共に、その後端にてロータリケース16を回転自在に支持するプランタケース17の下方には、圃場を均すための複数のフロート19が設けられている。そして、これら複数のフロート19の内、1つは作業時に圃場面の状況に応じて植付装置12を昇降制御し、植付け深さを調節するための感知フロートとなっている。
【0021】
また、植付装置12の左右両側方には、圃場の未植付け側に振出されて、植付け次工程における走行基準線を圃場に線引きする線引きマーカ20が設けられており、該線引きマーカ20は、マーカアーム22の先端に回転自在に支持されたマーカホイール21と、該マーカアーム22の振出及び収納を行うマーカモータユニット23と、を有して構成されている。上記苗載せ台13の左右側方には方向指示器(ウインカー)18(18r,18l)が配置されている。
【0022】
一方、上記ステアリングハンドル9の下方側には、図2に示すように、中立位置に復帰付勢され上下方向及び前後方向に傾倒操作可能な(手元)操作レバー(単一の操作具)25が設けられており、該操作レバー25は、その上下方向操作により植付装置(作業機)12の昇降及び該植付装置への動力伝達を断接する植付(作業)クラッチを操作する。
【0023】
具体的には、例えば、植付クラッチが接続(植付入)されている状態から上記操作レバー25を上方に操作すると、植付クラッチが切断(植付切)され、この植付クラッチが切断されている状態から更に該操作レバー25を上方に操作すると、植付装置12が上昇する。また、この植付クラッチが切断され、かつ植付装置12が上昇している状態から上記操作レバー25を下方に傾倒操作すると、まず植付装置12が下降し、更に、該操作レバー25を下方に傾倒操作すると、植付クラッチが接続する。更に、植付装置12が昇降作動中に、その昇降方向とは反対側に上記操作レバー25を操作することで該植付装置12の昇降を停止させることもできる。一方、上記操作レバー25は、前後方向に操作することによって、左右の線引きマーカ20を、起立した状態で機体側に収納された収納姿勢(図5実線位置)と、機体外側に振出されて伸展した作業姿勢(図5二点鎖線位置)とに切換えることができるようにも構成されている。
【0024】
更に、上記操作レバー25の下方には、方向指示器操作用の切換えスイッチ29が配設されている。該切換えスイッチ29は、図3に詳示するように、中立位置、右傾動位置、左傾動位置の3位置に切換える3方(3位置)切換えスイッチからなり、かつこれら切換え位置に保持され、方向指示用の外にマーカモードを切換える機能を兼用する。具体的には、中立位置において、マーカモードが、植付装置の昇降によりマーカの左右振出し方向を自動的に切換える自動位置となると共に方向指示の切り位置となる。右傾動位置において、マーカモードがマーカを収納位置に保持する停止位置となると共に、右方向指示器を点滅作動する。左傾動位置において、マーカモードが左右両マーカを振出し位置とする両出し位置となると共に、左方向指示器を点滅作動する。
【0025】
また、上記運転操作部11においてステアリングハンドル9の前方に配置されたダッシュボード(表示)パネル27には、図4に示すように、植付作業時の各種作業の表示があると共に、左右の方向指示器18の作動に同調して点滅する左方向指示用ランプ28lと右方向指示用ランプ28rを有する。なお、これら左右の方向指示用ランプ28l,28rは、上記左右方向指示器の表示の外に、左右マーカの振出し方向の表示にも兼用され、該マーカ振出し方向の表示に際しては、マーカ振出し方向のランプが連続点灯する。また、図2に示すように、ステアリングハンドル9には油圧感度ダイヤル26の外に、作業準備スイッチ30及びその作動表示ランプ30aが配置されており、該作業準備スイッチ30は、植付作業時の各種制御(例えば植付装置の水平制御、上記操作レバー25による植付クラッチの操作)、並びに各種警報(例えば苗切れ、肥料切れ)をON,OFFに切換える。
【0026】
ついで、植付装置(植付部)12の昇降機構について説明をする。植付部12を昇降させる昇降リンク機構14の昇降シリンダ14a(図1参照)の伸縮は、図6に示すコントロールバルブ126によって制御され、該コントロールバルブ126は、側面視略矩形状の作動アーム127を有している。該作動アーム127の近傍には、上述した植付クラッチを断接するクラッチアーム129が設けられており、該クラッチアーム129及び上記コントロールバルブ126を作動させる作動アーム127は、作業機操作カム130によって連動して操作されるように構成されている。作業機操作カム130は、作業機操作カムモータ131によって回転駆動すると共に、その回動位置を作業機操作カムポテンショ32によって検出されている。
【0027】
即ち、上記作業機操作レバー25の上下方向への傾倒操作に応じて、作業機操作カム130を、植付クラッチが切断され、かつ植付部12が上昇位置となる上げポジションと、植付クラッチが切断され、かつ植付部12が停止状態となる固定ポジションと、植付クラッチが切断され、かつ植付部12が下降位置となる下げポジションと、植付クラッチが接続され、かつ植付部12が下降位置となる植付ポジションと、の何れかの位置に作業機操作カムモータ131によって設定することによって、上記植付部12の昇降及び植付クラッチの断接が操作されている。
【0028】
ついで、左右の線引きマーカ20の構成について詳しく説明をする。線引きマーカ20は、図5に示すように、上述したマーカモータユニット23によって、収納姿勢と作業姿勢とに切換えられており、該マーカモータユニット23は、図6及び図7に示すように、マーカモータ35と、該マーカモータ35の出力ギヤ35aと噛合するラック36と、ラック36の取付軸37に取付けられたマーカ保持部材39と、から構成されている。
【0029】
マーカアーム22の基端部22aは、上記取付軸37に回転自在に取付けられており、スプリング44によって作業姿勢側に付勢されていると共に、上記取付軸37に一体に設けられたマーカ保持部材39と当接することにより位置決めされている。
【0030】
このマーカアーム22は、マーカモータ35の回転がラック36を介して取付軸37に伝達され、マーカ保持部材39が該取付軸37と一体となって回転することによって、その位置を切換え可能になっている。
【0031】
また、図7(a)(b)に示すように、ラック36の上方側には、線引きマーカ20の収納姿勢を検出するマーカ収納検出スイッチ41が設けられていると共に、ラック36の下方側には、線引きマーカ20の振出姿勢を検出するマーカ振出検出スイッチ42が設けられており、マーカアーム22が上方に起立して収納された場合には、ラック36の上方カム部36aがマーカ収納検出スイッチ41と当接して、線引きマーカ20の収納姿勢が検出され(図7(a)の状態)、マーカアーム22が振出されている場合にはラック36の下方カム部36bがマーカ振出検出スイッチ42に当接して、線引きマーカ20の振出姿勢が検出される(図7(b)の状態)。
【0032】
ついで、移植機1の制御部40について説明をする。図8は、移植機1の制御ブロック図であり、制御部40の入力側には、上述した作業機操作レバー25の上方側への傾倒操作を検出する作業機操作スイッチ(上側)50a、作業機操作レバー25の下方側への傾倒操作を検出する作業機操作スイッチ(下側)50b、作業機操作レバー25の前方側への傾倒操作を検出するマーカ操作スイッチ(前側)51a、作業機操作レバー25の後方側への傾倒操作を検出するマーカ操作スイッチ(後側)51b、左右の線引きマーカ20それぞれについて設けられた、マーカ収納検出スイッチ41L,41R、マーカ振出検出スイッチ42L,42R及び作業機操作カムポテンショ32が接続されていると共に、植付部12への動力を断接する植付クラッチの入切操作を可能とすると共に前記3方切換えスイッチ29の機能を切換える前記作業準備スイッチ30、マーカの作動モードの切換えを兼用した方向指示器用のスイッチである前記3方切換えスイッチ29、植付部12の高さ位置を検知するリフト角ポテンショ56などが接続されている。
【0033】
一方、制御部40の出力側には、上述した作業機操作カムモータ31、左右のマーカモータ35R,35L、パネル27上の左右方向指示器用表示ランプ(方向ランプ)28l,28r並びに左右方向指示器(ウインカーランプ)18l,18rが接続されている。
【0034】
また、制御部40は、作業機操作レバー25の前後操作に基づいて線引きマーカ20の振出し方向を設定するマーカ出力手段40bとを有していると共に、リフト角ポテンショ56からの信号に基づいて植付部12の昇降高さを検知し、該植付部12が切換え基準位置(切換え高さ、所定の基準高さ)以上の上昇位置にあるか、切換え基準位置以下の下降位置にあるかを検出する昇降位置検出手段を有している。なお、切換え基準位置は、線引きマーカ20の振出しを実行するかどうかの基準となる振出し基準位置(振出し高さ)よりも上方側に設置されている。
【0035】
ついで、上記線引きマーカ20の制御について、図9乃至図13に基づいて説明をする。図9は、方向指示器の作動を兼用した線引きマーカ20の振出しに関するメインフローであり、上記制御部40は、方向表示制御S1、植付け作業機操作制御S2、振出モード制御S3、マーカ出力制御S4の各制御を、この順番で繰り返し実行している。
【0036】
[方向表示制御]
方向表示制御S1は、図10に示すように、前記作業準備スイッチ30がONか否かが判断される(S111)。該作業準備スイッチ30は、植付け作業に際してONされるスイッチであるため、該スイッチがONの場合、植付け作業中又はその準備段階であり、OFFの場合、路上走行等の植付け作業以外の状態(非作業中)である。上記ステップS111がYES、即ち作業準備スイッチ30がONの場合、植付け作業状態であって、左右いずれのマーカが振出されるかをパネル27の方向(指示用)ランプ28l,28r(図4参照)の点灯により運転者に知らせると共に、左右の方向指示器(ウインカーランプ)18(l,r)は消灯する(S111)。
【0037】
上記ステップS111がNO、即ち作業準備スイッチ30がOFFの場合、植付け作業以外の例えば路上走行状態であって、3方切換えスイッチ29が方向指示スイッチとして機能する。該方向指示スイッチ29が右傾動状態(右ON)の場合(S113;YES)、右の方向ランプ28lが点灯すると共に右方向指示器(右ウインカーランプ)18lが点滅する(S114)。上記ステップS113がNOで、方向指示スイッチ29が左傾動状態(左ON)の場合(S115;YES)の場合、左の方向ランプ28lが点滅すると共に左方向指示器(左ウインカーランプ)18lが点滅する(S116)。
【0038】
上記ステップS115がNO、即ち3方切換えスイッチ29が中立位置にある場合、左右の方向ランプ28l、28rは共に消灯すると共に左右の方向指示器(左右ウインカーランプ)18l、18rが共に消灯する(S117)。
【0039】
[作業機操作制御]
上記作業機操作制御S2は、作業機操作レバー25による植付装置(植付部)12の昇降に関する制御であり、図11に示すように、まず作業機操作レバー25が上方側又は下方側へ傾倒操作されたかを判断する(S10、S11)。そして、作業機操作レバー25が上方側へと操作された場合(S11)、植付装置12が、下降位置にあり植付けクラッチが接続されている植付状態であると(S12,S13,S14)、制御部40は、作業機操作カムモータ31を作動させて作業機操作カム130を下降ポジションとし、植付クラッチを切断する(S15)。
【0040】
また、植付装置12が下降動作中の場合には(S16)、その下降動作を停止して植付装置12の位置を固定し(S17)、植付装置12が植付けクラッチが切断された状態で下降位置にある下降状態の場合には(S13、S16)、植付装置12を上昇させて上昇位置にする(S18)。なお、植付装置12が上昇位置にあるか、上昇動作中の場合には、植付装置12はそのまま上昇位置となる(S12)。
【0041】
一方、作業機操作レバー25が下方側に操作された場合、まず、作業準備スイッチ30のオン・オフが判断され(S19)、植付装置12を植付状態にしても良いかどうかが判断される(S20,S21)。そして、作業準備スイッチ30がオンされている場合に、植付装置12が下降状態にあると(S22,S24)、制御部40は、作業機操作カムモータ31を作動させて作業機操作カム30を植付ポジションとし、植付クラッチを接続する(S23,S25)。
【0042】
また、植付装置12が下降動作中の場合には、植付クラッチ入待ち状態とし(S26,S31)、この植付装置12の下降動作が停止してから(S32)、植付クラッチを接続する(S33)。
【0043】
更に、作業準備スイッチ30のオン・オフに係らず、植付装置12が上昇動作中には(S20,S28)、植付装置12は、その上昇動作を停止してその位置で固定される(ステップS27)。
【0044】
また、作業準備スイッチ30がオフの場合には、植付クラッチを接続して植付装置12の植付状態にできないため、植付装置12が上昇動作をしていなければ、自動昇降制御の下降位置とされる(S29,S30)。
【0045】
[振出モード制御]
振出モード制御53は、図12に示すように、作業準備スイッチ30のON(S40;YES)により作動し、該作業準備スイッチ30がOFFの場合(S40;NO)、左右のマーカ20は収納状態に保持される(S41)。上記作業準備スイッチ30がONにより、まず上記3方切換えスイッチ29に基づくマーカ自動モードにあるか判断され(S42)、YESの場合、植付部(植付装置)がマーカ切換え高以上か(S43)、かつ植付クラッチフラグがONか(S44)が判断され、共にYESの場合、振出モードがセットされると共に振出されるマーカが反転側(右であれば左、左であれば右)にセットされ、かつ植付クラッチフラグがクリアされる(S45)。
【0046】
上記ステップS42において、方向指示器操作用を兼用して、3方切換えスイッチ29が中立位置である自動位置にない場合(S42;NO)、該スイッチ29が左傾動位置にあるかが判断される(S46)。該スイッチが左傾動位置である両出しモードである場合(S46;YES)、左右のマーカは、共に振出し位置にセットされる(S47)。上記スイッチ29が右傾動位置にある場合(S46;NO)、マーカは停止モードとなっており、左右マーカは、共に収納位置にセットされる(S41)。
【0047】
前記ステップS43,44が共にNOである場合、マーカ操作具である前記操作レバー25により人為的にマーカの振出し方向が変更される。即ち、マーカ操作具が後方(運転者が引く方向)に操作された場合(S48;YES)、振出モードが右振出しか判断され(S49)、NOの場合、即ち既に右振出し状態でない場合、植付装置の下降に伴って右マーカが振出されるようにセットされる(S50)。上記ステップS49がYESの場合、振出モードが左振出しか判断され(S51)、既に左マーカが振出し状態にある場合(S51;YES)、左マーカは収納位置にセットされる。
【0048】
前記ステップS48においてNOの場合、マーカ操作具25が前方(運転者が押す方向)に操作されたか判断される(S52)。YESの場合、振出モードが左振出しか判断され(S53)、既に左マーカが振出し状態でない場合、植付装置の下降に伴って左マーカが振出し位置となる左振出しにセットされる(S54)。上記ステップS53がYESの場合、振出モードが右振出しか判断され(S55)、既に右マーカが振出し位置にある場合、右マーカが収納位置になるようにセットされる(S56)。
【0049】
そして、マーカ操作具25の前方及び後方操作時に(S48;YES,S52;YES)、左右マーカが振出し状態でない場合、3方切換えスイッチ29が中立位置であるマーカ自動かONかを判断する(S57)。YESの場合、前記S50,S54による右又は右振出モードを読込んで振出モードにセットし(S58)、次のマーカ出力制御S4に送る。上記ステップS57でNOの場合、3方切換えスイッチ29が自動モードではないので(S59;YES)、上記振出モードを記憶して、次の自動モード(S42)に備える(S60)。
【0050】
[マーカ出力制御]
ついで、マーカ振出制御によって設定された線引きマーカ20の設定を実行するマーカ出力制御S4について説明をする。図13に示すように、マーカ出力制御S4は、まず、植付部(植付装置)12の高さが上述した振出し基準位置(マーカ振出し高さ)以下かどうか、即ち、植付部12が上述した該振出し基準位置以下の振出し可能高さ(振出し実行位置)にいるかどうかを判別する(ステップS70)。
【0051】
そして、植付部12が振出し可能高さにいる場合には、マーカモード設定に設定された線引きマーカ20の振出し設定に基づいて、左右のマーカモータ35L,35Rに電気信号を出力する。
【0052】
具体的には、マーカモード設定によって機体右側の線引きマーカ20の振出しが設定されると、機体右側のマーカ振出検出スイッチ42Rがオンされるまで、マーカモータ(右)35Rを駆動させて機体右側の線引きマーカ20を作業姿勢にする(ステップS77〜S80)。
【0053】
また、マーカモード設定によって機体右側の線引きマーカ20の収納が設定されると、機体右側のマーカ収納検出スイッチ41Rがオンされるまで、マーカモータ(右)35Rを駆動させて機体右側の線引きマーカ20を収納姿勢にする(ステップS85〜S88)。
【0054】
一方、機体左側の線引きマーカ20についても同様に、マーカモード設定によって機体左側の線引きマーカ20の振出しが設定されると、機体左側のマーカ振出検出スイッチ42Lがオンされるまで、マーカモータ(左)35Lを駆動させて機体左側の線引きマーカ20を作業姿勢にする(ステップS81〜S84)。
【0055】
また、マーカモード設定によって機体左側の線引きマーカ20の収納が設定されると、機体左側のマーカ収納検出スイッチ41Lがオンされるまで、マーカモータ(左)35Lを駆動させて機体左側の線引きマーカ20を収納姿勢にする(ステップS89〜S92)。
【0056】
また、植付部12が振出し基準位置よりも高い場合、即ち、該振出し基準位置よりも高い振出し待機高さ(振出し待機位置)にある場合には、左右のマーカ収納検出スイッチ41L,41Rがオンされているかどうかを検出し、マーカ収納検出スイッチ41L,41Rがオンされていない場合には、オンされていない側のマーカモータ35L,35Rを駆動させて、線引きマーカ20を収納姿勢とする(ステップS70〜S74)。言い換えると、マーカ出力は、植付部12が上方位置にある際には、左右の線引きマーカ20を収納姿勢とした両上げ状態にする。
【0057】
ついで、実際の圃場上での動作について説明をする。
【0058】
作業者は、植付作業を開始するにあたって機体5に乗り込んでエンジンをスタートさせると、圃場の入口から入り、入口とは対角位置から植付け作業を開始する。
【0059】
作業者は、植付け作業を開始するにあたって、まず作業準備スイッチ30をONする。そして、植付装置12の条数分だけ圃場際から離れた位置を作業開始位置に設定すると共に、植付装置12を上昇させて、線引きマーカ20の振出し設定を行う。この状態では、3方切換えスイッチ29を左傾動位置した両出し状態に設定する。
【0060】
そして、この線引きマーカ20の設定が終わると、作業機操作レバー25を下方側に操作して、植付装置12を下降させると共に、機体5の両側に左右の線引きマーカ20で走行予定線を線引きしながら、植付け作業を行う。
【0061】
そして、反対側の圃場端まで来ると枕地で旋回し、自動的に植付装置12が上昇すると共に、左右の線引きマーカ20が一旦、収納される。旋回が終わると、作業者は、3方切換えスイッチ29を中立位置として自動マーカモードに設定し、方向指示用ランプ28l,28rの点灯により現在左右いずれのマーカが振出し位置にセットされているかを確認する。そして、今回の植付作業で線引きする側である未植付け側が現在のマーカ振出し方向と同じであればそのままで、反対側であれば、操作レバー25を前又は後方向に操作する。即ち、未植付け側が右側でマーカ振出し方向が左であれば、操作レバー25を後方向に操作して、振出し方向を右に設定する。反対に、未植付け側が左側でマーカ振出し方向が右である場合、操作レバー25を前方向に操作して、振出し方向を左に設定する。
【0062】
この状態で、作業者が作業機操作レバー25を下方側に操作して植付装置12を下降させると、先に振出し設定された線引きマーカ20が振出される。そして、その後、旋回の度に自動的に左右の線引きマーカ20の振出し方向を切換えて、圃場の未植付け側に走行予定線を線引きしながら、植付作業を進行する。
【0063】
ところで、植付け作業の途中で苗載せ台13に苗を補給する場合、作業者は、植付装置12を上昇させる。苗の補給が完了して、植付装置12を下降させると、線引きマーカ20の振出し方向が切換わって、機体反対側の線引きマーカ20が振出されるため、作業者は、作業機操作レバー25を前方又は後方側に傾倒操作して、未植付け側の線引きマーカ20を振出し、植付作業を続行する。
【0064】
植付作業が進行して、最終植付け工程の1つ前の植付けが終了すると、作業者は、旋回する前に3方切換えスイッチ29を右傾動位置にしてマーカを作動停止モードとし、左右の線引きマーカを両上げ状態にし、圃場端に苗を植付けて行く。
【0065】
この最終植付け工程が終了すると、作業者は、線引きマーカ20を両上げ状態にしたまま枕地部分を走行しながら植付けを行い、反対側の圃場端まで来ると、最初に引いておいた走行予定線を目安として植付けを行いながら走行する。
【0066】
そして、再度、反対側の枕地部分に苗を植付けながら走行し、圃場の入口から圃場外へと出る。
【0067】
そして、圃場での植付け作業を終了すると、作業準備スイッチ30をOFFにする。これにより、上記3方切換えスイッチ29が、上述したマーカモードの切換えから方向指示用に機能が切換えられる。乗用田植機1は、圃場から路上に出ると、上記切換えられて方向指示用となっている3方切換えスイッチ29により方向指示器18が操作される。即ち、スイッチ29を右傾動位置にすると、右方向指示器(ウインカー)18lが点滅すると共に、パネル27の右方向指示用ランプ28lが点滅する。スイッチ29を中立位置にすると、両方向指示器18l,18r及び方向指示用ランプ18l,18rが消灯する。スイッチ29を左傾動位置にすると、左方向指示器18rが点滅すると共に左方向指示用ランプ28rが点滅する。
【符号の説明】
【0068】
1 移植機(乗用田植機)
2 前輪
3 後輪
5 走行機体
11 運転操作部
12 作業機(植付装置)
18,18l,18r 方向指示器(ウインカー)
20 マーカ
25 単一の操作具(作業機操作レバー)
28,28l,28r 方向指示用表示器(ランプ)
29 (3位置,3方)切換えスイッチ
30 (作業準備)スイッチ
40 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪により支持され、運転操作部を有する走行機体と、該走行機体に昇降自在に支持された作業機と、該作業機の左右に、上方に収納された収納位置から田面に接する作業位置に振出し自在に設けられた左右のマーカと、左右の方向指示器と、を備えてなる移植機において、
前記運転操作部に、前記作業機を昇降操作すると共に前記左右のマーカの振出し方向を設定する単一の操作具と、中立、右及び左の3位置に切換え得る切換えスイッチと、を備え、
前記切換えスイッチを、前記作業機が非作業状態にあることを判定した場合、前記左右の方向指示器の操作用として機能し、前記作業機が作業状態に入ることを判定した場合、前記作業機の昇降毎に前記左右のマーカの振出し方向が切換えらえるマーカ自動モードと、前記左右両マーカが作業位置に振出し状態となる両出しモードと、前記左右マーカの振出しが停止される停止モードとに切換えるマーカモードの切換え用として機能するように切換える制御部を備えてなる、
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記運転操作部に、前記方向指示器の作動を表示する左右の方向指示用表示器を備え、
前記切換えスイッチの中立位置を、前記マーカモードの切換え用と機能する際の前記マーカ自動モードに対応し、
前記切換えスイッチが前記マーカモード切換え用として機能する際、前記左右の方向指示用表示器が、前記マーカ自動モードにおける前記左右のマーカの振出し方向を表示してなる、
請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記非作業状態と前記作業状態に入ることの判定を、前記作業時の警報制御を作動するスイッチにより行い、該スイッチのオン時には前記切換えスイッチを前記マーカモードの切換え用として機能し、前記スイッチのオフ時には前記切換えスイッチを前記方向指示器の操作用として機能してなる、
請求項1記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−120490(P2012−120490A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274395(P2010−274395)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】