説明

移植機

【課題】走行機体を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の表示を行う左右一対の表示ランプによって、マーカの振出し状態表示や、所定状態の報知を兼用してコスト削減を図った場合であっても、オペレータや周囲の者に対して方向指示の表示を確実に視認させることのできる移植機を提供することを課題としている。
【解決手段】左右一対の表示ランプ18,27と、方向指示の操作を検出する操作検出手段47,48と、左右の表示ランプ18,27による方向指示の表示を行う制御部46とを備え、マーカ19を植付作業機8の左右に配置し、該マーカ19の振出し状態の表示を前記左右の表示ランプ18,27によって行うように前記制御部46を構成した移植機であって、表示ランプ18,27による方向指示の表示を行っている間は、表示ランプ18,27によるマーカ19の振出し状態の表示を行わないように前記制御部46を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の表示ランプにより方向指示の表示を行う移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体に昇降可能に連結された植付作業機と、左右一対の表示ランプと、走行機体を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の操作を検出する操作検出手段と、該操作検出手段の検出結果に基づいて左右の表示ランプによる方向指示の表示を行う制御部とを備え、外側方に振出されることにより次工程の植付条列に走行基準線を引くマーカを、植付作業機の左右両側にそれぞれ配置し、該左右のマーカの振出し状態の表示を前記左右の表示ランプによって行うように前記制御部を構成した特許文献1に記載の移植機が公知となっている。
【0003】
また、左右の表示ランプによって、植付作業機に苗が無くなったことが検出された際の報知である苗切れ報知及び、肥料切れ検出手段によって施肥用の肥料が無くなったことが検出された際の報知である肥料切れ報知の少なくとも一方である所定状態報知と、前記方向指示の表示とを、兼用して行うように制御部を構成した特許文献2に記載の移植機が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−166316号公報
【特許文献2】特開2007−151456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献1及び2の移植機は、左右一対の表示ランプを、方向指示用として使用するとともに、左右のマーカの振出し状態表示、苗切れ報知又は肥料切れ報知の報知手段として使用することにより、部材を兼用し、コストを削減させているが、左右の表示ランプによって、方向指示を行っている最中に、前記左右のマーカの振出し状態表示や、苗切れ報知や、肥料切れ報知を行うことがあり、この場合、オペレータ又は周囲の者に対する方向指示の表示が分かり難い場合がある。
【0006】
本発明は、走行機体を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の表示を行う左右一対の表示ランプによって、左右のマーカの振出し状態表示や、所定状態の報知を兼用してコスト削減を図った場合であっても、オペレータや周囲の者に対して方向指示の表示を確実に視認させることのできる移植機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、走行機体3に昇降可能に連結された植付作業機8と、左右一対の表示ランプ18,27と、走行機体を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の操作を検出する操作検出手段47,48と、該操作検出手段の検出結果に基づいて左右の表示ランプ18,27による方向指示の表示を行う制御部46とを備え、外側方に振出されることにより次工程の植付条列に走行基準線を引くマーカ19を、植付作業機8の左右両側にそれぞれ配置し、該左右のマーカ19L,19Rの振出し状態の表示を前記左右の表示ランプ18,27によって行うように前記制御部46を構成した移植機であって、左右の表示ランプ18,27による方向指示の表示を行っている間は、左右の表示ランプ18,27による左右のマーカ19L,19Rの振出し状態の表示を行わないように前記制御部46を構成したことを特徴としている。
【0008】
第2に、オペレータが視認可能なように座席21の前方に設置された左右一対のモニタランプ27L,27Rを、前記左右の表示ランプ18,27とし、方向指示された側のモニタランプ27を点滅させるとともに方向指示されていない側のモニタランプ27を消灯させることにより、上記方向指示の表示を行う一方で、マーカ19が振出された側のモニタランプ27を点灯させることにより上記左右のマーカ19L,19Rの振出し状態の表示を行うように前記制御部46を構成したことを特徴としている。
【0009】
第3に、走行機体3に昇降可能に連結された植付作業機8と、左右一対の表示ランプ18,27と、走行機体3を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の操作を検出する操作検出手段47,48と、該操作検出手段47,48の検出結果に基づいて左右の表示ランプ18,27による方向指示の表示を行う制御部46とを備え、苗切れ検出手段17によって植付作業機8に苗が無くなったことが検出された際の報知である苗切れ報知と、肥料切れ検出手段13によって施肥用の肥料が無くなったことが検出された際の報知である肥料切れ報知との少なくとも一方である所定状態報知を、前記左右の表示ランプ18,27によって行うように前記制御部46を構成した移植機であって、左右の表示ランプ18,27による方向指示の表示を行っている間は、表示ランプ18,27による上記所定状態報知を行わないように前記制御部を構成したことを特徴としている。
【0010】
第4に、走行機体3又は植付作業機8の左右にそれぞれ設置されたウィンカランプ18L,18Rによって、左右の表示ランプ18,27を構成し、方向指示された側のモニタランプ27を点滅させるとともに方向指示されていない側のモニタランプ27を消灯させることにより、上記方向指示の表示を行う一方で、左右両側のウィンカランプ18L,18Rが同時に点滅することにより、上記所定状態報知を行うように前記制御部46を構成したことを特徴としている。
【0011】
第5に、走行機体3に昇降可能に連結された植付作業機8と、オペレータが視認可能なように座席21の前方に設置された左右一対のモニタランプ27L,27Rと、走行機体3又は植付作業機8の左右にそれぞれ設置されたウィンカランプ18L,18Rと、走行機体3を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の操作を検出する操作検出手段47,48と、該操作検出手段47,48の検出結果に基づいて前記左右のモニタランプ27L,27Rによる方向指示の表示と、前記左右のウィンカランプ18L,18Rによる方向指示の表示を行う制御部46とを備え、外側方に振出されることにより次工程の植付条列に走行基準線を引くマーカ19を、植付作業機の左右両側にそれぞれ配置し、該左右のマーカ19L,19Rの振出し状態の表示を前記左右のモニタランプ27L,27Rによって行うとともに、苗切れ検出手段17によって植付作業機8に苗が無くなったことが検出された際の報知である苗切れ報知と、肥料切れ検出手段13によって施肥用の肥料が無くなったことが検出された際の報知である肥料切れ報知との少なくとも一方である所定状態報知を、前記左右のウィンカランプ18L,18Rによって行うように前記制御部46を構成した移植機であって、左右のモニタランプ27L,27Rによる方向指示の表示を行っている間は、左右のモニタランプ27L,27Rによる左右のマーカ19L,19Rの振出し状態の表示を行わないとともに、左右のウィンカランプ18L,18Rによる方向指示の表示を行っている間は、ウィンカランプ18L,18Rによる上記所定状態報知を行わないように前記制御部46を構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、走行機体を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の表示を行う左右一対の表示ランプによって、マーカの振出し状態の表示や、所定状態の報知を行うことにより部材を兼用してコストの削減をした場合においても、方向表示が行われている間は、上記その他の表示や報知が行われ無いため、方向指示の表示をオペレータ又は周囲の者に確実に視認させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。
【図2】ステアリングハンドル及びその周辺の構成を示す斜視図である。
【図3】前面表示パネルの背面図である。
【図4】マーカ機構の振出し姿勢と収納姿勢を示す植付作業機の要部正面図である。
【図5】(A)は収納姿勢時のマーカの要部正面図であり、(B)は振出姿勢時のマーカの要部正面図である。
【図6】制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】制御部のメインルーチンの処理フロー図である。
【図8】ウィンカランプ制御の処理フロー図である。
【図9】モニタランプ制御の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。本乗用田植機は、左右一対の前輪1及び後輪2によって支持される走行機体3の前部のエンジン(図示しない)を覆うボンネット4を設け、該ボンネット4の後方側に操縦部6を設置し、該走行機体3の後端部に昇降リンク7を介して昇降自在に植付作業機8を連結することにより構成されている。該植付作業機8は、油圧シリンダである昇降シリンダの伸縮によって昇降駆動される。
【0015】
前記ボンネット4の左右両側方には、施肥用の肥料を収容する肥料タンク11がそれぞれ設けられている。該肥料タンク11内の肥料は、圃場走行時、植付作業機側に設けられた施肥ノズル(図示しない)によって圃場に施肥される。また、上記肥料タンク11には、肥料タンク11内部に貯蔵される施肥用の肥料の残量を検出する肥料残量センサ13(肥料切れ検出手段)を備えている。
【0016】
前記植付作業機8は、前方に向って上方に急傾斜した苗載せ台14と、苗載せ台14の背面側に載置された苗を掻き取って圃場に植付ける植付部16とを備えており、該植付作業機8には苗載せ台14上の植付苗が無くなったことを検出する苗切れセンサ17(苗切れ検出手段)が設けられている。
【0017】
また、前記苗載せ台14の左右両端側にはそれぞれウィンカランプ18L,18R(表示ランプ)が設けられており、該左右一対のウィンカランプ18L,18Rは、走行機体3の周囲(特に後方側)の者に対し、走行機体3を旋回させる際の進行方向を左右何れかで示す方向指示の表示を行うとともに、左右両方のウィンカランプ18L,18Rを同時に点滅させることによって前記苗載せ台14上の苗が無くなったことを報知する苗切れ報知と、前記肥料タンク11内の肥料が無くなったことを報知する肥料切れ報知とを行うように構成されているが、詳細は後述する。
【0018】
さらに、植付作業機8の左右の各側部には、該植付作業機8の外側方に振出されることにより次行程の植付条列に基準線を引くマーカ19が設けられている。
【0019】
上記操縦部6は、オペレータが着座する座席21の前方にステアリングハンドル22を備え、ステアリングハンドル22の一方側側方(図示する例では左側方)に走行レバー23を設け、ステアリングハンドル22の他方側側方に操作レバー24(図2参照)を配置し、ステアリングハンドル22のさらに前方には、前方を向いたオペレータに視認可能な前面表示パネル26が設置されており、前記走行レバー23は、揺動操作によって前後進切換を行うとともに、前進側又は後進側への増減速を行う。
【0020】
図2は、ステアリングハンドル及びその周辺の構成を示す斜視図であり、図3は、前面表示パネルの背面図である。前面表示パネル26には、走行機体3を左右何れかに旋回させるかを示す上記方向指示の表示を行う左右一対のモニタランプ27L,27R(表示ランプ)と、肥料残量センサ13の検出結果に基づいて肥料タンク11内の残量表示を行う残量表示部28(肥料切れ表示部)と、苗切れセンサ17の検出結果に基づいて苗切れが検出された際に、植付作業機8の苗載せ台14上に苗を補給が必要である旨を表示する苗補給表示部(苗切れ表示部)29とが設けられている。なお、上記左右のモニタランプ27L,27Rは、上記方向指示の他、左右のマーカ19L,19Rの振出状態を表示するように構成されているが、詳細は後述する。
【0021】
操作レバー24は、前後揺動によって、左右のマーカ19L,19Rの振出操作を行うとともに、上下揺動によって、植付作業機8の昇降操作及び植付作業機8の駆動の入切操作を行うが、オペレータが操作レバー24から手を離すと、弾性部材によって、該操作レバー24は、中立位置に復帰される。
【0022】
具体的に説明すると、植付部16の駆動停止された植付作業機8が、圃場から離間した非作業高さに位置している場合に、操作レバー24の下方揺動操作を1回行うと、駆動停止が保持された植付部16が圃場に接地又は近接する作業高さまで、植付作業機8が下降する。このように、植付部16の駆動停止された植付作業機8が作業高さに位置している場合に、操作レバー24の下方揺動操作を1回行うと、作業高さの植付部16が駆動され、植付作業が開始される。このように、植付作業が開示されている場合に、操作レバー24の上方揺動操作を1回行うと、作業高さに位置した植付作業機8の植付部16の駆動が停止される。このように、植付部16の駆動停止された植付作業機8が作業高さに位置している場合に、操作レバー24の上方揺動操作をさらに1回行うと、植付部16の駆動停止が保持された状態で、植付作業機8が上記非作業高さまで上昇される。
【0023】
また、操作レバー24の前方揺動操作を行った場合には、右側のマーカ19Rを振出すことを示す右マーカフラグが、後述する制御部(図6参照)のRAMメモリ上にセットされる一方で、操作レバー24の後方揺動操作を行った場合には、左側のマーカ19Lを振出すことを示す左マーカフラグが、該RAMメモリ上にセットされる。
【0024】
さらに、この操作レバー24の下方側には、走行機体3を左右何れかに旋回させるかを示す方向指示の操作を左右揺動によって行う方向指示具31が取付支持されている。方向指示具31における左右中立位置から左側への揺動操作が、走行機体3がこれから左旋回することを示す左折指示操作になる一方で、方向指示具31における左右中立位置から右側への揺動操作が、走行機体3がこれから右旋回することを示す右折指示操作になる。
【0025】
そして、方向指示具31による左折指示操作が行われた場合、左ウィンカランプ18L及び左モニタランプ27Lが点滅するとともに右ウィンカランプ18R及び右モニタランプ27Rが消灯することにより、走行機体3がこれから左旋回することを示す左折指示表示が行われる一方で、方向指示具31による右折指示操作が行われた場合、左ウィンカランプ18L及び左モニタランプ27Rが消灯するとともに右ウィンカランプ18R及び右モニタランプ27Rが点滅することにより、走行機体3がこれから右旋回することを示す右折指示表示が行われるが、詳細は後述する。
【0026】
図4及び図5に基づき、前記マーカの構成について説明する。
図4は、マーカ機構の振出し姿勢と収納姿勢を示す植付作業機の要部正面図であり、図5(A)は収納姿勢時のマーカの要部正面図であり、(B)は振出姿勢時のマーカの要部正面図である。これらに図示する通り、植付作業機8の左右の端部にそれぞれ配置された各マーカ19L,19Rは、車輪形状に成形されており、この左右のマーカ19L,19Rが、支持アーム32を介して、植付作業機8下端部の左右幅方向全体に形成された横フレーム33の左右の端部に、それぞれ支持されている。
【0027】
具体的には、左右の支持アーム32L,32Rは、その基端側が、駆動機構34によって、横フレーム33の左右端部にそれぞれ取付け支持される一方で、先端側には前記マーカ19が遊転状態でそれぞれ取付けられている。この支持アーム32L,32R毎に設置された上述の駆動機構34は、支持アーム32L,32R全体が基端側を支点に左右回動するように、該支持アーム32を横フレーム33の端部に支持している。
【0028】
この左右回動によって、支持アーム32L,32Rは、植付作業機8側にマーカ19を収納するように、植付作業機8の側部に沿う上下方向の収納姿勢と、マーカ19を植付作業機8の外側方に振出すように、基端部から先端部に向かって左右外側を向いた振出姿勢とに切換えられる。
【0029】
このマーカ19L,19R毎に設けられた駆動機構について説明すると、左右の各駆動機構34は、横フレーム33に固設された支持ブラケット36と、支持ブラケット36に設置された電動式のマーカモータ37と、支持ブラケット36に左右回動可能に支持され且つ正面視扇形をなすセクタギヤである駆動ギヤ39と、一対のマーカ検出スイッチ41(マーカ検出手段)とを備え、該駆動ギヤ39が支持アーム32L,32Rと一体回動するように構成されている。
【0030】
駆動ギヤ39は、マーカモータ37の出力軸に取付けられた出力ギヤ40と常時噛合い、このマーカモータ37の動力によって、該駆動ギヤ39が左右回動駆動される。この駆動ギヤ39の円弧状の両端部には接当部39a,39bが一体形成されている。
【0031】
そして、マーカモータ37の動力によって、支持アーム32が収納姿勢に切換えられた場合には、一方の接当部である収納側接当部39aが、一方のマーカ検出スイッチである収納側マーカ検出スイッチに41a接当し、該収納側マーカ検出スイッチ41aを検出作動させるとともに、マーカモータ37の動力によって、支持アーム32が振出姿勢に切換えられた場合には、他方の接当部である振出し側接当部39bが、他方のマーカ検出スイッチである振出側マーカ検出スイッチ41bに接当し、該振出側マーカ検出スイッチ41bを検出作動させる。
【0032】
言換えると、各マーカ19L,19Rの振出制御では、マーカモータ19を収納側に駆動させている最中に、収納側マーカ検出スイッチ41aが検出作動した場合、マーカモータ37の駆動を停止させることにより、収納姿勢への切換作動を終了させる一方で、マーカモータ37を振出側に駆動させている最中に、振出側マーカ検出スイッチ41bが検出作動した場合、マーカモータ37の駆動を停止させることにより、振出姿勢への切換作動を終了させる。このため、マーカモータ37が不要に駆動させることが無く、エネルギーロスが低減されるとともに、マーカモータ37の不必要な駆動によって、各種部材が破損することも効率的に防止される。
【0033】
上記構成によれば、植付作業時、支持アーム32L,32Rの振出姿勢への切換によって植付作業機8の外側方に振出されたマーカ19L,19Rは、側面視円形をなし、前進走行に伴う回転作動によって、走行機体3が現在走行している植付条列に沿って直線状に延びる走行基準線の隣の植付条列に、次工程で走行機体3が走行するための走行基準線を、該植付条列に沿って直線状に引くように構成されている。
【0034】
以上のような、左右のウィンカランプ18L,18Rと、左右のモニタランプ27L,27Rを用いた方向指示の表示と、左右のマーカ19L,19Rの振出状態表示と、苗切れ報知又は肥料切れ報知である所定状態報知とは、走行機体3に搭載されてマイコン等によって構成された制御部46によって、実行される。
【0035】
次に、図6乃至9に基づき、制御部の構成について説明する。
図6は、制御部のブロック図である。該制御部46の入力側には、上述した苗切れセンサ17及び肥料残量センサ13の他、方向指示具31の左折指示操作を検出する操作検出手段である左折指示検出スイッチ47と、方向指示具31の右折指示操作を検出する操作検出手段である右折指示検出スイッチ48とが設けられている。一方、制御部46の出力側には、左右のウィンカランプ18L,18Rと、左右のモニタランプ27L,27Rと、左右のマーカモータ37L,37Rとが設けられている。
【0036】
制御部46は、左右のマーカフラグの何れか一方がセットされている際に、植付作業機8が作業位置に下降された状態か、或いは植付作業機8が作業位置に下降されて植付部16が駆動された状態の場合、マーカフラグがセットされている側のマーカ19の支持アーム32を、マーカモータ37によって、振出姿勢に切換えるとともに、マーカフラグがセットされていない側のマーカ31の支持アーム32を、マーカモータ37によって、収納姿勢に切換える。このため、現植付条列の始端側において、オペレータは、左右の内で苗が植付けられていない側に操作レバー24を揺動操作することにより、次工程の植付条列にマーカを振出し、現植付条列に引かれた走行基準線に沿った走行機体3の前進走行によって、上記次工程の植付条列に直線状の走行基準線が引かれる。
【0037】
なお、現植付条列の終端側に達した場合、植付作業機8が非作業位置に上昇され、次工程の植付条列の始端側に車体をUターン旋回させた後、再び、植付作業機8を作業位置に下降させるが、この際、該次工程の植付条列から見て、次工程のさらに次の工程の植付条列が位置する側は、上記現植付条列から見て、該次工程の植付条列が位置する側と、左右が反転する。このため、左右のマーカフラグの一方がセットされ且つ他方がリセットされている場合に、植付作業機の上昇或いは上昇後の下降に起因して、左右のマーカフラグの前記一方をリセットするとともに前記他方をセットすることにより、操作レバー24を用いる事無く、左右のマーカ19L,19Rの振出を自動的に行う自動振出制御を制御部46によって行うことが可能になる。
【0038】
図7は、制御部のメインルーチンの処理フロー図である。同図に示す通り、制御部46は、処理が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、上記方向指示の表示と上記所定状態報知とを行うウィンカランプ制御のサブルーチンを実行し、該サブルーチンの処理が終了すると、ステップS2に進む。ステップS2では、上記方向指示の表示と、左右のマーカの振出状態の表示を行うモニタランプ制御のサブルーチンを実行し、該サブルーチンの処理が終了すると、ステップS1に処理を戻す。
【0039】
図8は、ウィンカランプ制御のサブルーチンの処理フロー図である。制御部は、ウィンカランプ制御が開始されると、ステップS11に進む。ステップS11では、左折指示検出スイッチ47のON・OFFを検知し、左折指示検出スイッチ47がONされて方向指示具31による左折指示操作が検出された場合には、ステップS12に進み、左ウィンカランプ18Lを点滅させるとともに右ウィンカランプ18Rを消灯させることにより、左折指示表示を行う。ステップS12の後はリターンする。一方、ステップS11において左折指示検出スイッチ47がOFF状態であった場合には、ステップS13に進む。
【0040】
ステップS13では、右折指示検出スイッチ48のON・OFFを検知し、右折指示検出スイッチ48がONされて方向指示具31による右折指示操作が検出された場合には、ステップS14に進み、左ウィンカランプ18Lを消灯させるとともに右ウィンカランプ18Rを点滅させることにより、右折指示表示を行う。ステップS14の後はリターンする。一方、ステップS13において、右折指示検出スイッチ48がOFF状態であった場合には、ステップS15に進む。
【0041】
ステップS15では、苗切れセンサ17の状態をチェックする。ステップS15において苗切れセンサ17が苗載せ台14への植付苗の補給時期であることを検出した場合にはステップS16に進み、左右のウィンカランプ18L,18Rを同時に点滅させることにより、苗載せ台14に載置した植付苗の苗切れを警告する。ステップS16の後はリターンする。一方、ステップ15で苗切れセンサ17により苗切れ状態が検出されなかった場合にはステップS17へ進む。
【0042】
ステップS17では、肥料残量センサ13の状態をチェックする。ステップS17において肥料残量センサ13が肥料の補給時期であることを検出した場合にはステップS16に進み、左右のウィンカランプ18L,18Rを同時に点滅させることにより、肥料タンク11内の肥料切れを警告する。上記同様ステップS16の後はリターンする。一方、ステップS17で肥料残量センサが肥料の補給時期であることを検出しない場合にはステップS18に進み、左右のウィンカランプ18L,18Rを消灯させる。ステップS18の後はリターンする。
【0043】
すなわち、ウィンカランプ制御では、ウィンカランプ18は、走行機体の周囲の者に対して、苗切れ報知又は肥料切れ報知である所定状態の表示と、方向指示の表示とを兼用するとともに、上記所定状態の表示よりも優先して方向指示具による左折指示表示又は右折指示表示をウィンカランプ18L,18Rに表示させることにより、走行機体3の周囲の者に対して確実に方向指示の表示を視認させることができる。
【0044】
図9は、モニタランプ制御のサブルーチンの処理フロー図である。制御部46は、モニタランプ制御が開始されると、ステップS21に進む。ステップS21では、左折指示検出スイッチ47のON・OFFを検知し、方向指示具31による左折指示操作が検出された場合には、ステップS22に進み、左モニタランプを点滅させるとともに右モニタランプを消灯させることにより、左折指示表示を行う。ステップS22の後はリターンする。一方、ステップS21において左折指示検出スイッチがOFF状態であった場合には、ステップS23に進む。
【0045】
ステップS23では、右折指示検出スイッチ48のON・OFFを検知し、右折支持検出スイッチ48がONされて方向指示具31による右折指示操作が検出された場合には、ステップS24に進み、左モニタランプを消灯させるとともに右モニタランプを点滅させることにより、右折指示表示を行う。ステップS24の後はリターンする。一方、ステップS23において、右折指示検出スイッチ48がOFF状態であった場合には、ステップS25に進む。
【0046】
ステップS25では、左マーカフラグをセットされているか否かをチェックする。ステップS25において左マーカフラグがセットされている場合にはステップS26に進み、左側のマーカフラグがセットされていない場合にはステップS27に進む。
【0047】
ステップS26では、右マーカフラグをセットされているか否かをチェックする。ステップS26において右マーカフラグがセットされている場合にはステップS28に進み、左右のモニタランプ27L,27Rを両方とも点灯させることにより、左右のマーカ19L,19Rが圃場に振出された両マーカ振出し状態を表示する。ステップS28の後はリターンする。一方で、ステップS26において右マーカフラグがセットされていない場合には、ステップS29に進み、左モニタランプ27Lを点灯させるとともに右モニタランプ27Rを消灯することにより、オペレータに左マーカ19Lが振出されていることを報知する。ステップS29の後はリターンする。
【0048】
ステップS27では、右マーカフラグをセットされているか否かをチェックする。ステップS27において右マーカフラグがセットされている場合にはステップS30に進み、左モニタランプ27Lを消灯させるとともに右モニタランプ27Rを点灯することにより、オペレータに右マーカ19Rが振出されていることを報知する。ステップS30の後はリターンする。一方で、ステップS27において、右マーカフラグがセットされていない場合には、ステップS31に進み、左右のモニタランプ27L,27Rを消灯させる。ステップS31の後はリターンする。
【0049】
すなわち、モニタランプ制御では、モニタランプ27は、左右のマーカ19L,19Rの振出し状態の表示と、方向指示具31による左右の方向指示の表示とを兼用するとともに、上記左右のマーカ19L,19Rの振出し状態の表示よりも優先して方向指示具による左折指示表示又は右折指示表示をウィンカランプ18L,18Rに表示させることにより、オペレータに対して確実に方向指示の表示を確認させることができる。
【0050】
なお、左右のマーカの振出状態は、マーカフラグによって検出してもよいが、各マーカに設けられた左右のマーカ検出スイッチによって、検出してもよい。
【符号の説明】
【0051】
3 走行機体
8 植付作業機
13 肥料残量センサ(肥料切れ検出手段)
17 苗切れセンサ(苗切れ検出手段)
18 ウィンカランプ(表示ランプ)
19 マーカ
21 座席
27 モニタランプ(表示ランプ)
46 制御部
47 左折指示検出スイッチ(操作検出手段)
48 右折指示検出スイッチ(操作検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)に昇降可能に連結された植付作業機(8)と、左右一対の表示ランプ(18,27)と、走行機体を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の操作を検出する操作検出手段(47,48)と、該操作検出手段の検出結果に基づいて左右の表示ランプ(18,27)による方向指示の表示を行う制御部(46)とを備え、外側方に振出されることにより次工程の植付条列に走行基準線を引くマーカ(19)を、植付作業機(8)の左右両側にそれぞれ配置し、該左右のマーカ(19L,19R)の振出し状態の表示を前記左右の表示ランプ(18,27)によって行うように前記制御部(46)を構成した移植機であって、左右の表示ランプ(18,27)による方向指示の表示を行っている間は、左右の表示ランプ(18,27)による左右のマーカ(19L,19R)の振出し状態の表示を行わないように前記制御部(46)を構成した移植機。
【請求項2】
オペレータが視認可能なように座席(21)の前方に設置された左右一対のモニタランプ(27L,27R)を、前記左右の表示ランプ(18,27)とし、方向指示された側のモニタランプ(27)を点滅させるとともに方向指示されていない側のモニタランプ(27)を消灯させることにより、上記方向指示の表示を行う一方で、マーカ(19)が振出された側のモニタランプ(27)を点灯させることにより上記左右のマーカ(19L,19R)の振出し状態の表示を行うように前記制御部(46)を構成した請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
走行機体(3)に昇降可能に連結された植付作業機(8)と、左右一対の表示ランプ(18,27)と、走行機体(3)を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の操作を検出する操作検出手段(47,48)と、該操作検出手段(47,48)の検出結果に基づいて左右の表示ランプ(18,27)による方向指示の表示を行う制御部(46)とを備え、苗切れ検出手段(17)によって植付作業機(8)に苗が無くなったことが検出された際の報知である苗切れ報知と、肥料切れ検出手段(13)によって施肥用の肥料が無くなったことが検出された際の報知である肥料切れ報知との少なくとも一方である所定状態報知を、前記左右の表示ランプ(18,27)によって行うように前記制御部(46)を構成した移植機であって、左右の表示ランプ(18,27)による方向指示の表示を行っている間は、表示ランプ(18,27)による上記所定状態報知を行わないように前記制御部を構成した移植機。
【請求項4】
走行機体(3)又は植付作業機(8)の左右にそれぞれ設置されたウィンカランプ(18L,18R)によって、左右の表示ランプ(18,27)を構成し、方向指示された側のモニタランプ(27)を点滅させるとともに方向指示されていない側のモニタランプ(27)を消灯させることにより、上記方向指示の表示を行う一方で、左右両側のウィンカランプ(18L,18R)が同時に点滅することにより、上記所定状態報知を行うように前記制御部(46)を構成した請求項3に記載の移植機。
【請求項5】
走行機体(3)に昇降可能に連結された植付作業機(8)と、オペレータが視認可能なように座席(21)の前方に設置された左右一対のモニタランプ(27L,27R)と、走行機体(3)又は植付作業機(8)の左右にそれぞれ設置されたウィンカランプ(18L,18R)と、走行機体(3)を左右何れに旋回させるかを示す方向指示の操作を検出する操作検出手段(47,48)と、該操作検出手段(47,48)の検出結果に基づいて前記左右のモニタランプ(27L,27R)による方向指示の表示と、前記左右のウィンカランプ(18L,18R)による方向指示の表示を行う制御部(46)とを備え、外側方に振出されることにより次工程の植付条列に走行基準線を引くマーカ(19)を、植付作業機の左右両側にそれぞれ配置し、該左右のマーカ(19L,19R)の振出し状態の表示を前記左右のモニタランプ(27L,27R)によって行うとともに、苗切れ検出手段(17)によって植付作業機(8)に苗が無くなったことが検出された際の報知である苗切れ報知と、肥料切れ検出手段(13)によって施肥用の肥料が無くなったことが検出された際の報知である肥料切れ報知との少なくとも一方である所定状態報知を、前記左右のウィンカランプ(18L,18R)によって行うように前記制御部(46)を構成した移植機であって、左右のモニタランプ(27L,27R)による方向指示の表示を行っている間は、左右のモニタランプ(27L,27R)による左右のマーカ(19L,19R)の振出し状態の表示を行わないとともに、左右のウィンカランプ(18L,18R)による方向指示の表示を行っている間は、ウィンカランプ(18L,18R)による上記所定状態報知を行わないように前記制御部(46)を構成した移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−139153(P2012−139153A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293557(P2010−293557)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】