説明

移植用細胞シートの製造方法、移植用細胞シート、及び移植用細胞シートを用いる治療方法

【課題】効率よく移植用細胞シートを製造する移植用細胞シートの製造方法、該製造方法で製造された移植用細胞シート、及び治療効果の高い損傷部位の治療方法を提供する。
【解決手段】背部の脂肪組織から細胞を分離することと、分離した細胞をα−MEM中で培養して脂肪組織に由来する幹細胞を含むシート状の培養物を形成させることとを含む移植用細胞シートの製造方法、該製造方法で製造された移植用細胞シート、及び脂肪組織に由来する幹細胞を含む移植用細胞シートを用いる治療方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植用細胞シートの製造方法、移植用細胞シート、及び移植用細胞シートを用いる治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重症臓器不全や難治性疾患、あるいは交通事故などによって、生体組織の一部又は全部が損傷を受けた場合に、生体内で増殖し分化する移植材料を用いてこの欠損部を補う再生医療による治療が注目されている。
上記治療においては、移植材料の供給源として、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、又は体性幹細胞が用いられるが、その中でも近年、体性幹細胞の1種である脂肪組織由来幹細胞を用いた移植材料の開発が進められている。
例えば、脂肪組織由来の間葉系幹細胞を含む移植用細胞シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、脂肪組織から幹細胞を大量に調製する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
通常、脂肪組織由来幹細胞は、腸管膜脂肪や大網脂肪などの腹腔内の内臓組織に蓄積された脂肪、いわゆる内臓脂肪から調製される。これは主に、内臓脂肪が心血管疾患の危険因子であり過剰量の脂肪は除去したほうがよいことを理由とし、幹細胞の採取効率によるものではない。また、皮下脂肪を脂肪組織由来幹細胞の供給源とすることもあるが、主に美容上の理由により、腹部や臀部から脂肪組織を採取している。脂肪組織由来幹細胞について、生体の部位別の採取効率は未知であり、特にヒト以外の動物においては、侵襲性が低く、簡便に大量の脂肪組織由来幹細胞を取得する方法について検討されていないのが実情である。
【0004】
一方、移植材料として開発が進んでいる細胞シートは、典型的には、一層ないしは数層の培養物である。この細胞シートは、通常、付着性の幹細胞を培養皿中で増殖させて得られる。この細胞シートを移植した場合の治療成績を向上させるためには、損傷が生じてから早期に移植を行うことが重要であり、幹細胞の培養物が所望の面積に達するまでの培養期間を短縮すること、あるいはストック可能な細胞シートが求められている。
【0005】
ところで、前述したような生体組織の損傷は、ヒト以外の動物にも起こり得ることである。動物病院に持ち込まれる動物では、角膜に損傷を受けた例がよくみられる。慢性化した角膜損傷の治療方法は角膜移植であるが、角膜提供はほとんどない。動物の角膜損傷に再生医療を適用した治療は、経済的、社会的な需要が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/080434号パンフレット
【特許文献2】WO2006/006692号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、効率よく移植用細胞シートを製造する移植用細胞シートの製造方法、及び該製造方法で製造された移植用細胞シートを提供することである。さらに本発明の課題は、治療効果の高い損傷部位の治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、背部の脂肪組織から細胞を分離することと、分離した細胞をα−MEM中で培養して脂肪組織に由来する幹細胞を含むシート状の培養物を形成させることと、を含む移植用細胞シートの製造方法である。
【0009】
本発明の第二の態様は、背部の脂肪組織に由来する幹細胞を含む移植用細胞シートである。
【0010】
本発明の第三の態様は、ヒト以外の動物を対象とし、脂肪組織に由来する幹細胞を含む移植用細胞シートを移植部位に接触させることと、接触を維持させて移植部位の環境に応じた組織を再生させることと、を含む治療方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率よく移植用細胞シートを製造する移植用細胞シートの製造方法、及び該製造方法で製造された移植用細胞シートを提供することができる。さらに本発明によれば、治療効果の高い損傷部位の治療方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例2のアガロースゲル電気泳動のゲルの写真である。
【図2】本発明の実施例3のフローサイトメトリーのグラフである。
【図3】本発明の実施例4の骨細胞の写真である。
【図4】本発明の実施例4の軟骨細胞の写真である。
【図5】本発明の実施例4の脂肪細胞の写真である。
【図6】本発明の実施例10の骨細胞の写真である。
【図7】本発明の実施例10の軟骨細胞の写真である。
【図8】本発明の実施例10の脂肪細胞の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、背部の脂肪組織から細胞を分離すること(以下、「分離工程」ともいう。)と、分離した細胞をα−MEM中で培養して脂肪組織に由来する幹細胞を含むシート状の培養物を形成させること(以下、「培養工程」ともいう。)と、を含む移植用細胞シートの製造方法である。
かかる構成とすることにより、本発明によれば、少ない脂肪組織からでも移植用細胞シートを製造することができる。また、本発明によれば、移植用細胞シートを得るために要する培養期間を短縮することができる。即ち、本発明によれば、効率よく移植用細胞シートを製造することができる。
【0014】
また本発明は、本発明の製造方法で製造された移植用細胞シートである。該移植用細胞シート(以下、「細胞シート」及び「シート」ともいう。)は、背部の脂肪組織に由来する幹細胞を含む。なお、本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能(増殖能)と分化能とを有する細胞をいう。
本発明の細胞シートは、幹細胞を含むことにより、生体各所に移植した際、移植部位の環境に応じた組織を再生させることができる。
【0015】
本発明の製造方法は、幹細胞の供給源を背部の脂肪組織、より具体的には背部の皮下脂肪とすることで、幹細胞の採取効率ひいては細胞シートの製造効率が向上する。
また、幹細胞の供給源が背部脂肪組織であると、所望量の幹細胞を取得するために摘出する脂肪組織の量が少なくて済むことから、生体への侵襲度が低い。加えて、脂肪組織摘出術は、例えば骨髄穿刺に比べ、危険度の低い手術であることからも、生体への侵襲度が低い。さらに、口腔粘膜を供給源とした場合に比較して、摘出時の出血が少なく、摘出後の摂食行動が制限させることがなく、得られる幹細胞の細菌などによる汚染度が著しく低く好ましい。
【0016】
本発明において「背部」とは、哺乳網の動物の第一頚椎から第七腰椎までの背側部(胴まわり360度のうち背中側の180度)を意味する。背部としては、頚背部、肩部、中背部、腰背部、尾背部が挙げられるが、幹細胞の採取効率ひいては細胞シートの製造効率の観点から、腰背部が好ましい。本発明において「腰背部」とは、第二〜第七腰椎腰最長筋一帯を意味する。
【0017】
本発明において、脂肪組織の供給源となる動物種は、哺乳網の動物であれば特に制限はないが、例えば、貧歯類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目などを挙げることができ、具体例として、イヌ、ネコ、ラット、ウシ、ブタ、ウマ、サル、ヒト等を挙げることができる。上記具体例の中でも、幹細胞の採取効率ひいては細胞シートの製造効率が良好である観点から、供給源としてはイヌが好適である。
脂肪組織の供給源となる動物種は、そこから得られる細胞シートの被移植個体と異種でもよく同種でもよい。脂肪組織の供給源となる動物は、異個体でもよく、同個体でもよく、1個体でもよく、複数個体でもよい。
【0018】
分離工程において、細胞の分離の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、外科手術の手技で適当量の脂肪組織を背部の皮下から摘出し、摘出後の脂肪組織をコラゲナーゼやトリプシン等の酵素で処理し、細胞浮遊液を調製することで行うことができる。
【0019】
培養工程は、分離後の細胞を、例えば培養器に播種して、α−MEM中で培養し、培養液中にシート状の培養物を形成させる。シート状の培養物の形成は、通常の培養条件において、細胞が培養面(一般に培養器の底面)に付着し、増殖することにより、容易に達成される。脂肪組織を供給源とし、培養器の底面に付着して増殖し、シート状の培養物を形成する細胞は、通常、間葉系幹細胞である。
【0020】
播種する細胞数は、細胞の供給源である動物の年齢、細胞の継代数、培養期間などに合わせて適宜調整可能であるが、一般に、1×10〜1×10cells/cmの細胞密度になるよう播種することができる。
細胞の播種の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、細胞を懸濁した培養液を培養器に注入することで行うことができる。
【0021】
培養工程では、培養液としてα−MEMを使用する。α−MEM(Stanners C.P., et al. Nature New Biology 1971;230:52-54)は、細胞の分化を誘導しにくく、本発明に好適である。また、培養液がα−MEMであると、細胞の分化を誘導することがある各種の細胞増殖因子やアミノ酸などの栄養物質を培養液中に添加しなくても、細胞の増殖速度が良好である。
【0022】
α−MEMには、細胞の増殖速度を向上させる点から、血清を添加することが好ましい。α−MEM中の血清の濃度は、培養状態によって適宜変更することができるが、増殖効率と細胞の分化を誘導しない観点から、5〜15%(v/v)が好ましい。血清としては、特に制限するものではないが、例えばFCS(ウシ胎仔血清)又はヒト血清を使用することができる。
α−MEMには、必要に応じて抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシンなど)を添加することが好ましい。α−MEMには、細胞の分化を誘導しない観点から、各種の細胞増殖因子やアミノ酸などの栄養物質を添加しないことが好ましく、血清と抗生物質の他には何も添加しないことが好ましい。
【0023】
細胞の培養には、通常の培養条件、例えば37℃の温度で5%CO濃度のインキュベーター内での培養が適用される。
培養期間は、播種した細胞数(細胞密度)、細胞の供給源である動物の年齢、目的とするシートの大きさ等によって、適宜調整可能である。通常、培養皿にコンフルエントな状態になるまで培養を継続する。
本発明の細胞シートの大きさ及び形状は、特に制限されず、移植部位の大きさ及び形状に応じて選択してよく、培養に用いる培養皿の大きさ及び形状により調整することができる。
【0024】
通常、培養皿にコンフルエントな状態になるまで培養を継続した後、シート状に形成された培養物を回収する。回収の手段としては、培養物に損傷を与えない手段であればよい。この際、培養物を培養面から剥離させる前に、培養液を除去し、培養物の支持体として、吸水性の膜を培養物上に静置し、該膜ごと培養物を剥離することが好ましい。上記の吸水性の膜としては、例えば、PVDF膜や、「CellShifter」(CellSeed製)が挙げられる。
【0025】
本発明の製造方法においては、コンフルエントに達した培養物を、細胞外基質をよく保持した状態で簡便に回収することができる点で、温度応答性細胞培養器材を用いることが好ましい。温度応答性細胞培養器材は、温度の高低により器材表面の親疎水性が変化するものであり、培養物は、温度変化により培養面から容易に剥がれる。このような温度応答性細胞培養器材としては、例えば、「UpCell」(登録商標)(CellSeed製)が上市されており、本発明に好適に使用できる。
【0026】
本発明の製造方法においては、回収したシート状の培養物から細胞浮遊液を調製し、これを播種し培養してシート状の培養物を形成させる一連の操作を、適当な回数繰返して継代培養し、最終的な移植用細胞シートを製造してもよい。
【0027】
以上に説明した製造方法により製造される本発明の細胞シートは、背部の脂肪組織に由来する付着性の幹細胞を増殖させて得られる、一層ないしは数層の培養物である。
本発明の細胞シートには、背部の脂肪組織に由来する幹細胞(以下、「背部脂肪組織由来幹細胞」ともいう。)が含まれ、この幹細胞が分化した脂肪細胞、線維芽細胞、間質細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、骨芽細胞、軟骨細胞などが含まれていてもよく、脂肪組織から持ち込まれた脂肪細胞、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞などが含まれていてもよい。
上記の幹細胞以外の細胞は、細胞シートに含まれていてもよいが、細胞シートが十分な増殖能と多様な分化能とを発現する観点から、なるべく少ないことが好ましい。脂肪細胞などの非付着性の細胞は、脂肪組織から分離した細胞を培養する際に、培養液を交換しながら浮遊細胞を捨てることで、除去が可能である。
【0028】
本発明の細胞シートには、背部以外の脂肪組織由来の幹細胞、及び/又は、他の種類の組織由来の幹細胞が含まれていてもよい。取扱いの簡便さ(増殖速度の制御の容易さ等)の点で、幹細胞としては、脂肪組織由来幹細胞のみ、特には背部脂肪組織由来幹細胞のみが含まれていることが好ましい。
通常は、脂肪組織を細胞の供給源として細胞シートを製造することで、細胞シートに含まれる幹細胞を脂肪組織由来幹細胞のみにすることが可能であり、脂肪組織の採取部位を背部に限ることで、細胞シートに含まれる幹細胞を背部脂肪組織由来幹細胞のみにすることが可能である。
【0029】
本発明の細胞シートに含まれる脂肪組織由来幹細胞としては、間葉系幹細胞が好ましい。間葉系幹細胞は、脂肪細胞、線維芽細胞、間質細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、神経細胞など様々な細胞への分化能を有している観点から好ましい。
また、間葉系幹細胞は、細胞外基質(例えば、コラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン等)の生産性が高く、シートの形成性およびシートの強度の観点からも好ましい。間葉系幹細胞を含む細胞シートは、シート表面に細胞外基質を豊富に有しているため、移植の際に移植部位への縫合が不要であり、シートどうしを重ねることも可能である。
間葉系幹細胞であることは、CD29、CD44、CD71、CD90、CD105等の細胞表面マーカーにより、容易に確認することができる。
【0030】
本発明の細胞シートは、生体から採取された細胞の初代培養物であっても、継代された培養物であってもよいが、細胞密度の向上と細胞外基質生産能力の向上の観点から、3継代以上7継代以下の培養物であることが好ましい。本発明において「継代」とは、当技術分野で通常用いられる意味で使用され、「継代数」は、生体から採取した初代培養以来の継代回数で表される。本発明の細胞シートは、3継代以上の培養物であれば細胞外基質の生産性がよく、7継代以下の培養物であればシートに含まれる幹細胞の増殖能も充分に高く、移植用に好適である。
【0031】
さらに本発明は、脂肪組織に由来する幹細胞を含む移植用細胞シートを移植部位に接触させることと、接触を維持させて移植部位の環境に応じた組織を再生させることと、を含む治療方法である。本発明の治療方法は、ヒト以外の動物を対象とする。
かかる構成とすることにより、本発明によれば、治療効果の高い損傷部位の治療方法を提供することができる。
本発明において「治療」とは、症状の改善であればよく、重症化の抑制や症状の軽減若しくは緩和もこの用語に包摂される。また、本発明において「再生」とは、当技術分野で通常用いられる意味で使用される。
【0032】
本発明の治療方法に用いる移植用細胞シートは、脂肪組織由来幹細胞を含むことにより、生体の様々な部位に移植可能であり、移植部位において増殖することが可能であり、移植部位に応じた組織に分化することが可能である。また、同種異個体間で移植が可能であり、異種異個体間で移植が可能である。
【0033】
本発明の治療方法に用いる移植用細胞シートにおいて、該シートに含まれる脂肪組織由来幹細胞の供給源となる生体部位については特に制限されない。供給源となる生体部位が限定されないことと、製造に用いる培養液が限定されないことのほかは、本発明の治療方法に用いる移植用細胞シートは、既述の本発明の移植用細胞シートと同様の態様である。
【0034】
本発明の治療方法に用いる移植用細胞シートは、脂肪組織を採取する生体部位と培養に用いる培養液を限らず、既述の本発明の製造方法に準じて製造することができる。脂肪組織を採取する生体部位は、背部でも腹部でもよく、脂肪組織は、皮下脂肪でもよく、内臓脂肪でもよい。培養液としては、細胞培養に一般的に用いられるものでよく、例えば、MEM、DME、DMEM、F12、DM−160、DM−201、EBM、EMEMを使用することができ、その他に、WO2006/006692号公報の第7頁目第20行目〜第45行目に記載の培地等を使用することができる。
【0035】
本発明の治療方法に用いる移植用細胞シートは、既述の本発明の製造方法で製造したものが好ましい。即ち、背部の脂肪組織から細胞を分離し、α−MEM中で培養して製造したものが好ましい。既述の本発明の製造方法で移植用細胞シートを製造することにより、比較的短期間で移植用細胞シートを効率よく製造することができるので、例えば同個体間で移植をする場合、組織の欠損が生じてから移植を行うまでの経過時間を短縮することができる。
【0036】
本発明の治療方法において、移植用細胞シートを移植部位に接触させる方法は、特に制限されるものではないが、例えば、外科手術の手技で移植部位を露出させ、露出させた移植部位に移植用細胞シートを載置することで行うことができる。
移植用細胞シートを移植部位に接触させた後、該接触を維持させる。接触の維持は、通常、移植用細胞シート表面に存在する細胞外基質により、移植用細胞シートが移植部位に付着し、該付着が維持されることで、容易に達成される。
【0037】
移植用細胞シートと移植部位との接触を維持させることにより、移植部位の環境に応じた組織が再生される。これは、移植用細胞シートに含まれる脂肪組織由来幹細胞が、移植部位の環境、中でも移植部位に存在する被移植個体由来のサイトカイン等の分化誘導因子に応じて、移植部位に本来存在する組織に分化することによる。
【0038】
本発明の治療方法の対象となる動物は、ヒト以外の動物であれば特に制限はない。ここで動物とは、通常、哺乳鋼の動物である。経済性や必要度から、イヌ、ネコ等の愛玩動物、ウシ、ウマ等の経済動物、パンダ等の希少動物、及びキリン等の動物園で飼育されている動物などを具体例として挙げることができる。
【0039】
本発明の治療方法においては、異種異個体を供給源とする移植用細胞シートを用いることが可能である。組織適合性の向上と感染リスク低減の点からは、同種異個体間の移植が好ましく、同個体間の移植がより好ましい。
【0040】
移植部位は特に制限されないが、組織としては、移植用細胞シートの定着性、及び移植用細胞シートに含まれる幹細胞の分化能の観点から、内皮、上皮、骨組織、軟骨組織、脂肪組織、心筋、平滑筋などの組織が好適である。また、臓器もしくは器官としては、皮膚、消化管、肝臓、心臓、血管、眼、鼻、耳など、いずれでもよい。
【0041】
本発明の治療方法は、移植用細胞シートの定着性、移植用細胞シートに含まれる幹細胞の分化能、及び移植用細胞シートの形状の観点から、角膜、特には角膜上皮を再生させる治療方法として好適である。例えば、角膜上皮が失われて露出した角膜実質の上に、移植用細胞シートを載置し、該載置を維持すると、移植用細胞シートに含まれる幹細胞が角膜上皮に分化することができ、角膜上皮を再生することができる。本発明の治療方法は、角膜移植後のように上下の眼瞼を縫合して目を閉じておく必要がなく、簡便であり、被移植個体の活動を制限しない。
【0042】
本発明の治療方法を角膜の再生に適用する場合、該治療方法が適用される疾患としては、例えば、慢性角膜炎が挙げられる。慢性角膜炎を惹起する原因としては、異所性睫毛症、眼瞼内反症、乾燥性角結膜炎、外傷などが挙げられる。これらの中でも、正常な涙膜の形成が可能な症例、例えば、異所性睫毛症、眼瞼内反症において、適応症に応じた眼科外科手術(外科的整復)との組み合わせにより、角膜の再生率を向上させることができる。
【0043】
本発明の治療方法は、イヌを対象動物とし、同種異個体または同種同個体を供給源とする移植用細胞シートを用いて、角膜、特には角膜上皮を再生させる治療方法として好適である。当該治療方法は、移植用細胞シートの形状、移植用細胞シートの定着性、及び移植用細胞シートに含まれる幹細胞の分化能の点で有利である。また、当該治療方法は、組織の再生率がよく、治療効果が高い。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
<脂肪組織由来幹細胞の分離と培養>
イヌの腰背部皮下から脂肪組織を摘出し、1グラムを計量した。5%(v/v)ペニシリン(10,000unit/ml)−ストレプトマイシン(10mg/ml)(以下「PS」と称する。)(シグマ製)を含有するPBSにて脂肪組織を洗浄し、付着した血液などを除去した後、滅菌培養皿内で、外科鋏で細片化した。
細片化した脂肪組織を15mlコニカルチューブ(ヌンク製)に入れ、2%(v/v)PS含有PBSに0.1%(w/v)コラゲナーゼtype1(Worthington製)を溶解した溶液を10ml加え、37℃で30分間振盪した。よく撹拌した後、3mlのα−MEM(ギブコ製)(10%(v/v)FCS(ハイクロン製)、及び1%PS(v/v)を含む。以下、同様)を加え、軽く撹拌した。なお、実施例1〜10で共通に使用したα−MEM(ギブコ製)の組成を、表1に示す。
【0046】
上記チューブを500×g、5分間遠心処理し、上清を捨て、10mlのα−MEMを加えてピペッティングし、25cm組織培養フラスコ(ヌンク製)に播種した。2日後に、培養液を交換し、非付着細胞を捨てた。その後、週2回、非付着細胞を捨てながら培養液を全量交換した。
コンフルエントに達したらPBSで洗浄し、0.25%(w/v)トリプシン−0.03%(w/v)EDTA溶液で37℃、5分間培養し、細胞を培養面から剥離して回収した。回収した細胞を5×10個/cmの密度で75cm組織培養フラスコ(ヌンク製)に播種した。以降は、継代培養を必要に応じて繰り返し、シート状の培養物を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
[実施例2]
<脂肪組織由来幹細胞の評価1.幹細胞マーカーの検出>
実施例1の方法によりシート状の培養物を得て、そこから細胞を分離した。分離した細胞から、FastPure RNA kit(タカラバイオ製)を用いて、該キットの仕様に従い、RNAを抽出した。次いで、PrimeScript RT−PCR kit(タカラバイオ製)を用いて、該キットの仕様に従い、cDNAを作製した。
下記表2に示すNeupaneらのプライマー(Neupane M., et al. Tissue Engineering Part A. 2008;14(6):1007-15)とプラチナTaq DNAポリメラーゼ(インビトロジェン製)を用いて、OCT4遺伝子、NANOG遺伝子、SOX2遺伝子をPCRにより増幅し、アガロースゲル電気泳動により各遺伝子の発現の有無を確認した。結果を図1に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
図1のとおり、細胞の多分化能を示すマーカー(幹細胞マーカー)であるOCT4遺伝子(274bp)、NANOG遺伝子(141bp)、SOX2遺伝子(142bp)の発現が、それぞれの塩基数に相当する位置に確認された。このことから、実施例1の方法で得られた培養物には、幹細胞が含まれることが確認された。
【0051】
[実施例3]
<脂肪組織由来幹細胞の評価2.細胞表面抗原の検出>
実施例1の方法によりシート状の培養物を得て、そこから細胞を分離した。分離した細胞をPBSで懸濁した細胞懸濁液に、マウス抗イヌMHCクラスI抗体(VMRD製)とマウス抗イヌMHCクラスII抗体(VMRD製)とを添加し反応させた。PE標識ロバ抗マウス抗体で標識し、フローサイトメーター(COULTER製)を用い、MHCクラスIとMHCクラスIIの発現を解析した。結果を図2に示す。
【0052】
図2の実線はコントロールを示し、破線はMHCクラスIIの発現を示し、一点鎖線はMHCクラスIの発現を示す。
図2のとおり、MHCクラスIIの発現は確認されなかった。したがって、実施例1の方法で得られる培養物は、同種異個体間の移植が可能である。
【0053】
[実施例4]
<脂肪組織由来幹細胞の評価3.骨、軟骨、脂肪への分化能の検討>
実施例1の方法によりシート状の培養物を得て、そこから細胞を分離した。分離した細胞を、StemPro Osteogenesis/Chondrogenesis/Adipogenesis Differentiation Kit(インビトロジェン製)を用いて、該キットの仕様に従い、骨、軟骨、及び脂肪へ分化誘導した。下記の方法で、骨、軟骨、及び脂肪への分化を検出した。結果を図3〜5に示す。
【0054】
(骨の検出)
細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、アリザリンレッドSを用いて室温で3分間染色した後、顕微鏡で観察した。
(軟骨の検出)
細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、アリューシャンブルーを用いて室温で1時間染色し、0.1NのHClで洗浄し蒸留水で中和した後、顕微鏡で観察した。
(脂肪の検出)
細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、オイルレッドOを用いて室温にて1時間染色した後、顕微鏡で観察した。
【0055】
図3のとおり、StemPro Osteogenesis Differentiation Kitを用いて分化誘導した場合、骨細胞を染色するアリザリンレッドSで染色が確認された。このことから、実施例1の方法で得られる培養物には幹細胞が含まれ、該幹細胞が骨細胞に分化したことが確認された。
図4のとおり、StemPro Chondrogenesis Differentiation Kitを用いて分化誘導した場合、軟骨細胞を染色するアリューシャンブルーで細胞の染色が確認された。このことから、実施例1の方法で得られる培養物には幹細胞が含まれ、該幹細胞が軟骨細胞に分化誘導されたことが確認された。
図5のとおり、StemPro Adipogenesis Differentiation Kitを用いて分化誘導した場合、脂肪細胞を染色するオイルレッドOで細胞の染色が確認された。このことから、実施例1の方法で得られる培養物には幹細胞が含まれ、該幹細胞が脂肪細胞に分化誘導されたことが確認された。
以上のことから、実施例1の方法で得られる培養物には、骨細胞、軟骨細胞、及び脂肪細胞に分化する多分化能を有する幹細胞が含まれていることが確認された。
【0056】
[実施例5]
<細胞シートの作製>
実施例1の方法によりシート状の培養物を得た。培養物をPBSで洗浄し、0.25%(w/v)トリプシン−0.03%(w/v)EDTA溶液を添加して培養面から剥離し回収した。回収した培養物を15mlコニカルチューブ(ヌンク製)に入れ、α−MEMを加え、軽くピペッティングし、細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液をUpCell 3.5cmディッシュ(CellSeed製)に注ぎ、1×10cells/dishとなるように細胞を播種し、37℃で7日間培養した。その間、培養液を1回全量交換した。その際、非付着細胞を捨てた。
コンフルエントを確認後、培養物が浸る程度に培養液量を調整し、ドーナツ状にカットした3.5cmディッシュ用CellShifter(CellSeed製)を培養物上に重ねた。室温(20〜25℃程度)で5分間静置し、ピンセットを使って、CellShifterに支持された培養物をディッシュから剥離した。
このようにして、脂肪組織由来の幹細胞を含む細胞シートを作製した。
【0057】
[実施例6]
<採取部位別の細胞シートの作製効率の検討>
イヌの腰背部、頚背部、及び鼠径部の各皮下、並びに腹腔内から脂肪組織を摘出し、それぞれ1gを計量した。実施例1の方法と同様にして細胞を培養し、初代培養において、25cm組織培養フラスコ(ヌンク製)に付着細胞がコンフルエントになるまでの日数を比較した。結果を下記表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
表3のとおり、腰背部の皮下、次いで頚背部の皮下から細胞を採取したとき、コンフルエントになるまでの日数が短かった。また、鼠径部の皮下から採取したほうが、腹腔内から採取したときよりも、コンフルエントになるまでの日数が短かった。
したがって、腹腔内の脂肪から採取するよりも、皮下脂肪から採取するほうが、細胞シートの作製効率がよく、腹部の皮下脂肪や腹腔内の脂肪から採取するよりも、背部の皮下脂肪から採取するほうが、細胞シートの作製効率がよいことがわかった。特には、腰背部の皮下脂肪からの作製効率がよいことがわかった。
この理由として、背部(特には、腰背部)の皮下脂肪には、単位重量あたりより多くの幹細胞が含まれていることが考えられた。
【0060】
表3のとおり、腰背部の皮下から細胞を採取したとき、初代培養において、25cm組織培養フラスコ(ヌンク製)に付着細胞がコンフルエントになるまでの日数は、5.0±0.83日であった。この時の回収された細胞数は、(4.2±0.4)×10個であった。
【0061】
[実施例7]
<培養液別の細胞シートの作製効率の検討>
イヌの腰背部皮下から脂肪組織を摘出し、実施例1の方法と同様にして細胞を培養した。ただし、培養液(細胞の懸濁に使用する溶液としても使用する。)を、α−MEM、α−MEM+G(1%グルタマックス(インビトロジェン製)を含むα−MEM)、及びDMEM/F12(DMEM:F12(1:1)に10%(v/v)FCS、及び1%PS(v/v)を含む。)のいずれかとし、初代培養において、25cm組織培養フラスコ(ヌンク製)に付着細胞がコンフルエントになるまでの日数を比較した。結果を下記表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
表4のとおり、α−MEMにグルタマックスを添加した場合と、添加しない場合とで、コンフルエントになるまでの日数は変わらなかった。α−MEMを用いると、アミノ酸を更に添加しなくても、細胞シートの作製効率がよいことが確認された。
【0064】
[実施例8]
<細胞シートの移植1>
正常なイヌの角膜において、脂肪組織由来の幹細胞を含む細胞シートを移植することの効果を検討した。
【0065】
アトロピン及びキシラジン、あるいはジアゼパムの前投薬により鎮静処置をほどこした雌イヌに対し、プロポフォールの静脈内投与により麻酔し、気管チューブを挿管して、イソフルラン吸入麻酔により麻酔を維持した。
眼科用表面麻酔剤ベノキシール(参天製薬)を点眼し、眼科機器(ピンセット、角結膜鋏、スリットナイフなど)を用いて角膜上皮を切除し除去した。
【0066】
雄イヌの腰背部を脂肪組織の供給源として、実施例5の方法により細胞シートを作製しておき、ディッシュから剥離した直後の細胞シートを、CellShifterごと角膜の上にのせた。
そのまま5分間静置した。その間、乾燥防止のため、37℃に加温した生理食塩水を時々点眼した。静置後、静かにCellShifterをはがし、眼科用ピンセットを用いて、細胞シートを角膜全体に広げた。
抗生物質(エコリシン)を点眼し、その後、イヌを覚醒させた。
【0067】
施術から1週間後では、角膜の一部に白濁が認められたが、5週間後では、角膜は全体にわたって透明であり、角膜上皮の再生が確認された。
【0068】
施術から5週間後に、角膜上皮の一部を採取し、常法の in situ ハイブリダイゼーションにより検討したところ、Y染色体が検出された。したがって、再生した角膜上皮を構成する細胞は、移植した細胞シートに由来することがわかった。
このことから、本発明の細胞シートは、移植部位において、該部位を構成する細胞種に分化し、該部位の組織として定着することが確認された。
【0069】
[実施例9]
<細胞シートの移植2>
イヌの慢性角膜炎に至った角膜損傷例において、脂肪組織由来の幹細胞を含む細胞シートを移植することの効果を検討した。
【0070】
実施例8と同様にして、細胞シートを移植した。その際、角膜上皮が変性し色素沈着を起こしている部分を可能な限り切除し除去し(角膜表層切除術)、その除去部分に細胞シートをのせた。なお、細胞シートを作製した際の脂肪組織の供給源は、被移植個体とは別個体のイヌとした。
【0071】
施術後、4か月以上観察した12例について、下記の評価基準に従って、移植効果を評価した。結果を下記表4に示す。
−評価基準−
A:角膜の透明度が改善され、飼い主の満足度が極めて高い。
B:角膜の透明度が改善され、軽度の白濁が残るものの、飼い主の満足度は高い。
C:角膜に白濁が残るものの、イヌのQOLは改善し、飼い主の満足度は良好である。
D:角膜の透明度はあまり改善しないものの、施術前よりは良い。
E:角膜の透明度が施術前と比べまったく改善しない。
【0072】
施術した12例中、A:7例、B:2例、C:1例、D:1例、E:1例であった。Cまでを改善ありとすると、改善率は83%であった。
このことから、脂肪組織由来の幹細胞を含む細胞シートを移植することで、角膜損傷例が良好な治癒経過をたどることが確認された。
【0073】
改善度が悪かった症例は、いずれも重度の乾燥性角結膜炎(KCS)であった。このことから、正常な涙膜の形成が困難なKCS症例には、細胞シートを移植しても症状の改善はあまり期待できないと考えられた。
特に移植後の成績が良かった症例は、異所性睫毛症や眼瞼内反症によって角膜が損傷し慢性角膜炎に至った症例であり、異所性睫毛症や眼瞼内反症の外科的整復と、角膜表層切除術および細胞シート移植をあわせて実施することで、極めて良好な成果が得られた。また、外傷によって慢性角膜炎に至った症例においても良好な成績が得られた。
本発明の細胞シートの角膜損傷例への移植は、適応症の選択と、適応症に応じた眼科外科手術(外科的整復)との組み合わせにより、さらに治療成績を向上させることが可能である。
【0074】
[実施例10]
<ラットからの脂肪組織由来幹細胞の分離と培養>
ラットの腰背部皮下から摘出した1グラムの脂肪組織を用いて、実施例1と同様の方法によりシート状の培養物を得た。
初代培養において、25cm組織培養フラスコ(ヌンク製)に付着細胞がコンフルエントになるまでの日数は、6±0日(平均±標準偏差、n=3)であった。この時の回収された細胞数は、2.3×10個であった。ラット由来の細胞は、1つ1つが大きく広がって培養面に張り付いている様子が観察された。
腰背部を脂肪組織の供給源にしたとき、イヌとラットとを比較すると、イヌのほうが、コンフルエントになるまでの日数が約1日少なく、回収された細胞数が2倍近く多かった。イヌの腰背部を脂肪組織の供給源とするほうが、ラットの腰背部を脂肪組織の供給源とするよりも、細胞数が増える効率がよかった。
【0075】
上記で得たシート状の培養物から細胞を分離し、実施例4と同様の方法で、骨、軟骨、及び脂肪への分化能を検討した。
図6のとおり、StemPro Osteogenesis Differentiation Kitを用いて分化誘導した場合、骨細胞を染色するアリザリンレッドSで染色が確認された。このことから、ラットの腰背部皮下から得られた培養物には幹細胞が含まれ、該幹細胞が骨細胞に分化したことが確認された。
図7のとおり、StemPro Chondrogenesis Differentiation Kitを用いて分化誘導した場合、軟骨細胞を染色するアリューシャンブルーで細胞の染色が確認された。このことから、ラットの腰背部皮下から得られた培養物には幹細胞が含まれ、該幹細胞が軟骨細胞に分化誘導されたことが確認された。
図8のとおり、StemPro Adipogenesis Differentiation Kitを用いて分化誘導した場合、脂肪細胞を染色するオイルレッドOで細胞の染色が確認された。このことから、ラットの腰背部皮下から得られた培養物には幹細胞が含まれ、該幹細胞が脂肪細胞に分化誘導されたことが確認された。
以上のことから、ラットの腰背部皮下から得られた培養物には、骨細胞、軟骨細胞、及び脂肪細胞に分化する多分化能を有する幹細胞が含まれていることが確認された。
【0076】
実施例の結果が示すとおり、背部の脂肪組織から細胞を分離し、分離した細胞をα−MEM中で培養することを含む細胞シートの製造方法は、増殖能と多分化能とを有する幹細胞を含み移植治療に好適な細胞シートを、効率よく製造することができる。
よって、本発明は、移植用細胞シートを効率よく製造する方法を提供することができ、移植治療に好適な細胞シートを提供できる。
また、実施例の結果が示すとおり、脂肪組織由来の幹細胞を含む細胞シートを移植部位に接触させ、接触を維持させることを含む治療方法は、移植部位において組織を再生させることができる。
よって、本発明は、治療効果の高い損傷部位の治療方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背部の脂肪組織から細胞を分離することと、
分離した細胞をα−MEM中で培養して脂肪組織に由来する幹細胞を含むシート状の培養物を形成させることと、
を含む移植用細胞シートの製造方法。
【請求項2】
前記幹細胞が間葉系幹細胞である請求項1に記載の移植用細胞シートの製造方法。
【請求項3】
前記背部が腰背部である請求項1又は請求項2に記載の移植用細胞シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移植用細胞シートの製造方法で製造された、脂肪組織に由来する幹細胞を含む移植用細胞シート。
【請求項5】
ヒト以外の動物を対象とし、
脂肪組織に由来する幹細胞を含む移植用細胞シートを移植部位に接触させることと、
接触を維持させて移植部位の環境に応じた組織を再生させることと、
を含む治療方法。
【請求項6】
再生により得られる組織が角膜上皮である請求項5に記載の治療方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−44970(P2012−44970A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192682(P2010−192682)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】