説明

移相器及びアンテナ装置

【課題】全体を小型化することができる移相器を提供する。
【解決手段】直線状の出力側導線1と、出力側導線1と並行して設けられ一端部が高周波信号の入力部2aである直線状の入力側導線2と、前記並行方向に沿って移動可能であると共に入力側導線2から入力された高周波信号を出力側導線1の出力端へと伝達するための可動導体3と、可動導体3と一体的に移動可能なノッチフィルタ7とを備えている。ノッチフィルタ7は、入力部2aに入力された高周波信号が入力側導線2の他端部2b側に流入することを阻止するために、可動導体3から所定距離だけ離れて設けられ入力側導線1と結合されている結合導体部21を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の位相を連続的に変えることのできる移相器及びアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイアンテナは複数のアンテナ素子を有していて、アンテナ素子間の位相差を調整することにより、アレイアンテナのビームチルト角(指向性)を変えることができる。そして、アンテナ素子間の位相差を調整するために、従来、分配移相器を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この分配移相器は、出力側となる円弧状の固定導体と、この円弧状の固定導体の中心位置に設けられた入力側となる中心導体と、固定導体と中心導体とを絶縁フィルムを介して静電的に結合させる回転結合導体とを備えている。
【0003】
このような分配移相器において、前記ビームチルトの変更範囲を広くするためには、分配移相器による移相変化量を大きくする必要があり、このためには、出力側である円弧状の固定導体の半径を大きくすればよい。しかしこの場合、移相器の面積が広くなり、全体が大型化してしまう。
そこで、縦長形状にすることができる分配移相器が提案されている(特許文献2参照)。この分配移相器は、直線状の出力側導体と、この出力側導体に沿って移動する可動導体とを有していて、この可動導体に、ケーブルによる給電のための入力端子が設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−284902号公報(図2参照)
【特許文献2】特表平10−508730号公報(図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献2に記載の分配移相器の場合、出力側導体の両端部(出力端)における位相差を変更するために、可動導体を直線的に移動させればよいが、この際、入力端子も同方向に移動する。したがって、この入力端子に接続させるケーブルを可撓性のある柔らかいものとする必要がある。例えば、前記ケーブルとして同軸ケーブルを採用することができるが、この場合であっても、位相を繰り返し変化させるために可動導体を頻繁に移動させていると、同軸ケーブルの湾曲が繰り返され、ケーブルの劣化が早まるという問題点がある。さらに、このケーブルを編組ケーブルとした場合、相互変調波歪が発生するおそれもある。
【0006】
そこで、本発明は、可撓性のケーブルを有することなく給電することができる移相器及びこの移相器を備えたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の移相器は、端部が出力端となる出力側導線と、ベース部に固定状態で前記出力側導線と並行して設けられ一端部が高周波信号の入力部である入力側導線と、前記並行方向に沿って移動可能であると共に、前記入力側導線に入力された高周波信号を前記出力側導線の出力端へ伝達するための可動導体と、前記可動導体と一体的に移動可能なノッチフィルタとを備え、前記ノッチフィルタは、前記入力部に入力された高周波信号が前記入力側導線の他端部側に流入することを阻止するために、前記可動導体から所定距離だけ離れて設けられ前記入力側導線と結合されている結合導体部を有していることを特徴とする。
【0008】
入力側導線はベース部に固定状態で設けられているので、この入力側導線の入力部に給電するためのケーブルを動かす必要がないため、従来のような可撓性を有するケーブルは不要である。
そして、ノッチフィルタは、入力部に入力された高周波信号が入力側導線の他端部側に流入することを阻止するため、当該高周波信号は、可動導体を介して出力側導線の出力端から出力されることになる。
【0009】
(2)また、前記ノッチフィルタは、前記結合導体部から所定長さ延びて形成されている本体導体部を有し、前記出力側導線と前記入力側導線とは前記所定長さよりも小さい値で接近して設けられ、前記本体導体部は、前記結合導体部から前記並行方向に沿って延びているのが好ましい。
この場合、ノッチフィルタを機能させるために、所定長さの本体導体部が必要となり、この所定長さが長くなっても、当該本体導体部を前記並行方向に沿って延びるように形成することで、移相器は並行方向に直交する方向に大きくならず、移相器の小型化が可能となる。
【0010】
(3)また、本発明のアンテナ装置は、前記移相器と、複数のアンテナ素子を一方向に並べて有しているアンテナユニットとを備え、前記並行方向と前記一方向とが平行となるように前記移相器が、前記アンテナユニットに取り付けられていることを特徴とする。
この場合、複数のアンテナ素子を一方向に並べて有していることから、アンテナユニットは一方向に長くなる。そして、移相器が前記並行方向に長くなっても、一方向に長いアンテナユニットの当該一方向と、前記並行方向とが平行となるように、移相器がアンテナユニットに取り付けられるので、アンテナ装置全体は一方向に長い形状となる。すなわち、一方向に直交する方向に大きくなるのを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移相器において、入力側導線の入力部に給電するためのケーブルを動かす必要がないため、従来のような可撓性を有するケーブルは不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の移相器の一部を示している説明図である。以下の実施形態の移相器は、高周波信号の電力分配を行えると共に、分配された信号の位相差を連続的に変えることのできる分配移相器Aである。
図2は図1の分配移相器Aを3つ備えた(第一の分配移相器A1、第二の分配移相器A2及び第三の分配移相器A3を備えた)四分配位相給電装置の模式図である。図3は図1のF−F矢視における断面図である。
図1に示している分配移相器Aは、両端部が出力端1a,1bとなる直線状の出力側導線1と、一端部が高周波信号の入力部2aである直線状の入力側導線2とを備えている。
【0013】
図1の出力側導線1は、誘電体からなる第一の基板10(基板10の上面:図3参照)に形成されたストリップ線路からなり、また、入力側導線2は、出力側導線1と同様に、前記第一の基板10(基板10の上面)に形成されたストリップ線路からなり、出力側導線1と入力側導線2とは、並行(平行)して設けられている。以下、出力側導線1と入力側導線2との線方向(並行方向)を長手方向Xと呼ぶ。図2に示しているように、出力側導線1と入力側導線2とは、長手方向Xに、ほぼ同じ長さである。
【0014】
すなわち、出力側導線1と入力側導線2とは基板10に固定された状態で設けられている。そして、入力側導線2の入力部2aに入力端子が設けられていて、この入力端子も、基板10上に取り付けられている。この入力端子にケーブル(例えば同軸ケーブル)が接続され、当該ケーブルから入力端子を介して入力側導線1に高周波が給電される。
【0015】
また、図1の分配移相器Aは、入力側導線2に入力された高周波信号を出力側導線1の両出力端2a,2bへ分配して伝達するための可動導体3を更に備えている。また、分配移相器Aは、誘電体からなる第二の基板20を更に備えていて、前記可動導体3は、第二の基板20(基板20の下面:図3参照)に形成されたストリップ線路からなる。また、第二の基板20(可動導体3と同じ面:基板20の下面)には、図1に示しているように、金属導体から形成されたノッチフィルタ7が設けられている。このノッチフィルタ7の構成及び機能については後に説明する。
【0016】
さらに、この分配移相器Aでは、前記第一の基板10は分配移相器Aにおいて固定された状態にあるが、第二の基板20は第一の基板10に対して長手方向Xに移動可能となるようにガイド部(図示せず)によって支持されていて、後述する駆動機構8(図2参照)によって、第二の基板20は長手方向Xに移動する。
【0017】
このように第二の基板20上に、可動導体3とノッチフィルタ7とが共に設けられていることから、この第二基板20を駆動機構8によって長手方向Xに移動させることで、可動導体3とノッチフィルタ7とは、長手方向Xに沿って一体的に移動可能となる。
【0018】
図1において、可動導体3は、出力側導線1に重ね合わせることが可能な出力部11と、入力側導線2に重ね合わせることが可能な入力部12と、出力部11と入力部12とを接続している線路部13とを有している。出力部11は出力側導線1の線方向に長い形状であり、入力部12は入力側導線2の線方向に長い形状であり、線路部13は、出力部11の長手方向の中央部と入力部12の長手方向の中央部とを結んでいる。
【0019】
なお、図3に示しているように、可動導体3の出力部11と出力側導線1とは絶縁体4を介して結合されていて、また、図1において(図3の形態と同様に)可動導体3の入力部12と入力側導線2とは絶縁体5を介して結合されている。絶縁体4,5は例えばフッ素樹脂からなり、図3の実施形態では、絶縁体4,5は可動導体3に取り付けられている。なお、絶縁体4,5は、出力側導線1、入力側導線2に取り付けられていてもよい。また、出力側導線1、入力側導線2が形成されている部分のみに絶縁体4,5を設けるのではなく、出力側導線1、入力側導線2を含めた基板10(全体)の前面を、覆うようにして絶縁体を設けてもよい。
【0020】
ノッチフィルタ7の構成及び機能について説明する。ノッチフィルタ7は、入力側導線2上に重ね合すことが可能な結合導体部21を有している。さらに、ノッチフィルタ7は、結合導体部21の中央部位から延びて形成されている所定長さLの本体導体部22を有している。
結合導体部21は、入力側導線2の線方向(長手方向X)に可動導体3から約λ/4(λ:入力される高周波信号の波長)の長さについて、入力側導線2の他端部2b側に位置ずれして設けられている。具体的に説明すると、結合導体部21の長手方向Xの中点は、可動導体3(線路部13)の長手方向Xの中点から、長手方向Xに沿ってλ/4だけ、入力側導線2の他端部2b側に位置ずれしている。また、結合導体部21は、(図3の形態と同様に)入力側導線2と絶縁体6を介して結合されている。
【0021】
なお、絶縁体6を結合導体部21に取り付けることができるが、絶縁体6を入力側導線2に取り付けてもよい。また、前記のように、基板10の前面を、覆うようにして絶縁体を設けた場合、結合導体部21に絶縁体6を取り付けなくてもよい。
また、前記絶縁体4,5,6には樹脂等による絶縁部材の他に空気が含まれる。絶縁体を樹脂とする場合、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂以外に、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリアセタール等とすることができる。また、この場合、薄いシート状であるのが好ましい。
【0022】
このようにノッチフィルタ7は、可動導体3から所定距離(λ/4)だけ離れて、入力側導線2の他端部2b側に配置されていることで、後にもさらに説明するが、可動導体3の入力部12に入力された高周波信号が入力側導線2の他端部2b側に流入することを阻止するができる。
また、図1の一点鎖線で示しているように、ノッチフィルタ7は、特性調整用のスタブ23を有していてもよい。特性調整が必要となる場合に、結合導体部21から延びるように、このスタブ23を形成する。
【0023】
図2により前記駆動機構8について説明する。駆動装置8は、第二の基板20に固定のラック部材31と、このラック部材31に噛み合う歯車32(大歯車32a)と、この歯車32を回転駆動させる駆動部33とを有している。駆動部33は、例えばモータ、減速器及びこのモータの正逆回転を制御する制御部とを有している。制御部がモータの正逆回転及び回転量を制御することで、歯車32は所定角度だけ回転し、これによりラック部材31が長手方向Xに移動する。ラック部材31の移動により第二の基板20は長手方向Xの両方向に移動可能である。
【0024】
前記歯車32は、大歯車32aと、当該大歯車32aと一体回転する小歯車32bとを有していて、所定のギヤ比に設定されている。
また、図2の四分配位相給電装置は、前記駆動機構8によって長手方向Xに移動する移動部材37を更に備えている。この移動部材37は、前記第二の基板20とは独立して移動可能に設けられていて、前記小歯車32bと噛み合うラック部を有している。
【0025】
また、図2において、第一の分配移相器A1、第二の分配移相器A2及び第三の分配移相器A3はそれぞれ同じ構成であり、前記説明のとおりである。
そして、前記移動部材37と、第二の分配移相器A2の第二の基板20A2とは、第一のロッド35によって連結されていて、当該移動部材37と、第三の分配移相器A3の第二の基板20A3とは、第二のロッド36によって連結されている。このため、駆動機構8によって歯車32を回転させると、大歯車32aによって基板20A1は長手方向Xに移動すると共に、小歯車32bによって移動部材37が移動して基板20A2及び基板20A3が同方向へ連動して移動する。
この構成により、単一の駆動機構8によって三つの分配移相器A1,A2,A3を同時に移相させることが可能となり、四つの出力端Q1,Q2,Q3,Q4の位相差が同時に変化する。
【0026】
また、本実施形態では、前記歯車32の大歯車32aと小歯車32bとのギヤ比を、2:1に設定している。すなわち、第一の分配移相器A1の基板20A1を、第二の分配移相器A2の基板20A2及び第三の分配移相器A3の基板20A3に対して二倍の移動量を有して移動させるように、ギヤ比が設定されている。これにより、四つの出力端Q1,Q2,Q3,Q4の移相量を常に一定の比率で変化させることができる。
すなわち、図2において、基板20A2及び基板20A3が左側に同じ量だけ移動すると、基板20A1は左側にその二倍移動する。この場合、第一の分配移相器A1の入力P(入力部2a)から四つの出力端Q1,Q2,Q3,Q4それぞれまでの経路長は、−3、−1、+1、+3について変化する。このように経路長の差(=2)の比率は一定値が維持されるため、四つの出力端Q1,Q2,Q3,Q4の位相はすべて変化するが、変化した移相差の比は同じままである。
【0027】
以上のように構成された分配移相器Aの機能を説明する。
入力側導体2の入力部(入力端子)2aから入力された高周波信号は、絶縁体5を介して可動導体3の入力部12に伝わり、可動導体3の線路部13を伝達し、可動導体3の出力部11から絶縁体4を介して出力側導線1に流れ、高周波信号は両端部の出力端1a,1bへと分配される。
そして、可動導体3を長手方向Xに移動させることで、入力側導線2の入力部2aから、出力側導線1の出力端1a,1bに至る線路長が変化し、この線路長の変化によって、出力端1a,1bへと分配される高周波信号の位相差を変化させることができる。
【0028】
このとき、ノッチフィルタ7は、可動導体3から入力側導線2に沿ってλ/4だけ離れて位置し、かつ、ノッチフィルタ7の結合導体部21が入力側導線2と高周波的に結合していることから、入力側導線2に入力された高周波信号は、当該入力側導線2の他端部2b側にほとんど向かわないようになる。すなわち、入力側導線2における高周波信号の入力部位から入力側導線2の他端部2b側を見たインピーダンスが、ほぼ無限大となるように、ノッチフィルタ7の位置(λ/4)が設定されている。したがって、入力側導線2の一端部側である入力部2aから入力した所定周波数の高周波信号は、そのほとんどが可動導体3へと伝導することになる。
【0029】
そして、出力側導線1の出力端1a,1bへと分配される高周波信号の位相差を変化させるために、可動導体3を長手方向Xに移動させるべく、前記駆動機構8によって、第一の基板10に対して第二の基板20を長手方向Xに移動させても、可動導体3およびノッチフィルタ7の結合導体部21は入力側導線2に沿って一体的に移動する。このため、可動導体3と結合導体部21とは所定距離(λ/4)だけ離れて位置した状態が保たれている。したがって、可動導体3を長手方向Xに移動させるために第二の基板20の位置を変化させても、ノッチフィルタ7によって、入力側導線2の他端部2b側へと高周波信号が通過するのを阻止するように作用し、当該信号は可動導体3側へと流れ、さらに、ノッチフィルタ7による高周波信号の通過を阻止する効率が最も良好となるλ/4の距離だけ離れた状態は維持されている。
【0030】
また、入力側導線2及び可動導体3の特性インピーダンスは25Ωとなるように(例えば導体の幅が)設定されていて、出力側導線1の特性インピーダンスは50Ω(入力側の二倍)となるように設定されていている。
可動導体3の線路部13から出力側導線1を見たインピーダンスは、特性インピーダンス50Ωの出力側導線1が二つ並列に接続された構成となるので25Ωとなる。したがって、出入力側でインピーダンスは一致している。
また、前記実施形態では、入力側導線2と可動導体3との間、及び、可動導体3と出力側導線1との間は、絶縁体5,4を介して結合されているので、金属接触がなく、相互変調波歪みの発生を防止することができる。
【0031】
また、図1において、ノッチフィルタ7の本体導体部22は、結合導体部21の中央部位から所定長さLを必要としていて、この所定長さLを例えばλ/4とすることができる。そして、この所定長さLを有する本体導体部22は、入力側導線2と平行させるために屈曲部22aを有しているが、結合導体部21から当該屈曲部22aを介して、残りの大部分22bは長手方向Xに沿って延びるようにして形成されている。
これによれば、出力側導線1と入力側導線2とを前記所定長さLよりも小さい値で接近して設けることができる。つまり、出力側導線1と入力側導線2との間隔Kを、所定長さLよりも小さくすることができる。これにより、長手方向Xに直交する方向の寸法を小さくすることができ、分配移相器Aを細長くして小型化させることが可能となる。
【0032】
出力側導線1と入力側導線2との間隔K、及び、ノッチフィルタ7の寸法についての具体例を説明する。
入力する高周波信号の周波数が200MHzである場合、出力側導線1と入力側導線2との間隔Kの値は、50mm〜100mm程度とすることができる。そして、前記絶縁体6が空気である場合、結合導体部21の中央部位からの本体導体部22の所定長さLの値は、約375mm程度となる。また、絶縁体6がポリテトラフルオロエチレン(又はポリエチレン)である場合、本体導体部22の所定長さLの値は、約260mm程度となる。
このように、本体導体部22の所定長さLの値は、前記間隔Kの値よりも大きくなるが(L>K)、本体導体部22を、屈曲部22aを介して入力側導線2と平行となるように折り曲げて形成することで、分配移相器Aの幅方向(=長手方向Xの直交方向)の寸法を小さくすることができる。
【0033】
以上の構成によれば、分配移相器Aにおける移相変化量を大きくすることを目的として、可動導体3の移動範囲を長く得るために出力側導線1及び入力側導線2を長手方向Xに長くしても、出力側導線1及び入力側導線2は直線的に並行して設けられているので、当該並行方向に直交する方向には寸法を小さくすることができ、分配移相器Aの小型化が可能となる。
さらに、入力側導線2及び入力部(入力端子)2aは、分配移相器Aが有している固定状態の基板10に固定状態で設けられている。そして、分配移相器Aにおける移相を変化させるために可動導体3を前記入力側導線2に沿って移動させればよいので、入力側導線2の入力部2aに給電するためのケーブルを動かす必要がない。このため、従来のような可撓性を有するケーブルは不要である。
また、ノッチフィルタ7は、入力側導線2の一端部側の入力部2aに入力された高周波信号が、当該入力側導線2の他端部2b側に流入することを阻止することができるため、高周波信号は、可動導体3を介して、出力側導線1の出力端1a,1bから出力されることになる。
【0034】
そして、以上のように構成した分配移相器Aと、図4に示しているように、複数のアンテナ素子41を一方向に並べて有しているアンテナユニット40とを備えることで、本発明のアンテナ装置が構成される。
前記アンテナユニット40はアンテナ素子41が上下方向に複数並べられることで、縦長(細長形状)となっている。そして、この縦長方向と、分配移相器Aの前記長手方向Xとが平行となるように、分配移相器Aが、アンテナユニット40に一体として取り付けられている。
アンテナユニット40に対する分配移相器Aの取り付け位置は、例えば、アンテナユニット40の指向方向と反対側となる部分(ユニット40の背面)に、分配移相器Aを取り付ければよい。
【0035】
これにより、アンテナユニット40は、複数のアンテナ素子41を上下方向に並べて有していることから、当該アンテナユニット40は上下方向に長くなる。そして、分配移相器Aが一方向に長くなっても、上下方向に長いアンテナユニット40の当該上下方向と、分配移相器Aの長手方向とが平行となるように、分配移相器Aがアンテナユニット40に取り付けられているので、アンテナ装置全体は上下方向に長い形状のままで済む。つまり、アンテナ装置を、縦長にして小型化させることが可能となる。
そして、前記分配移相器A(図2の四分配位相給電装置)によって、アンテナ素子41間の位相差を調整することにより、アレイアンテナのビームチルト角(指向性)を変えることができる。例えば図4に示しているように、ビームチルト角を、θ1からθ2へと変化させることができる。
【0036】
また、本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、前記実施形態では、出力側導線1及び入力側導線2を直線とした場合を説明したが、ほぼ直線であればよく僅かに曲がっていてもよい。すなわち、出力側導線1及び入力側導線2を直線状としているが、この直線状には、多少の湾曲が含まれる。
【0037】
また、図2では四分配位相給電装置を説明したが、アンテナ素子41の数に応じて、分配数は変更自在である。また、これに応じて歯車32のギヤ比を設定すればよい。例えば図示しないが5ブロックの分配移相器からなる場合、別に固定出力端を設け、ギヤ比を3:1等とすることができる。
また、分配移相器Aは、(図示しないが)対向する板状の外導体を更に有し、出力側導線、入力側導線及び可動導体が、これら外導体間の中央に配置されたストリップ線路(トリプレート線路)とするのが好ましいが、基板の裏側に外導体を形成し、出力側導線、入力側導線及び可動導体をマイクロストリップ線路とすることもできる。
また、図1では、ノッチフィルタ7の本体導体部22を、出力側導線1と離れた側に形成した場合を説明したが、図示しないが、本体導体部22を出力側導線1と入力側導線2との間に形成してもよい。
また、図1の実施形態では、一点鎖線で示しているように、ノッチフィルタ7は特性調整用のスタブ23を有している場合を説明したが、このスタブ23を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の移相器の一部を示している説明図である。
【図2】図1の分配移相器を3つ備えた四分配位相給電装置の模式図である。
【図3】図1のF−F矢視における断面図である。
【図4】本発明のアンテナ装置を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 出力側導線
1a,1b 出力端
2 入力側導線
2a 入力部
2b 他端部
3 可動導体
6 絶縁体
7 ノッチフィルタ
10 第一の基板(ベース部)
21 結合導体部
22 本体導体部
40 アンテナユニット
41 アンテナ素子
A 分配移相器
X 長手方向(並行方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が出力端となる出力側導線と、
ベース部に固定状態で前記出力側導線と並行して設けられ一端部が高周波信号の入力部である入力側導線と、
前記並行方向に沿って移動可能であると共に、前記入力側導線に入力された高周波信号を前記出力側導線の出力端へ伝達するための可動導体と、
前記可動導体と一体的に移動可能なノッチフィルタと、を備え、
前記ノッチフィルタは、前記入力部に入力された高周波信号が前記入力側導線の他端部側に流入することを阻止するために、前記可動導体から所定距離だけ離れて設けられ前記入力側導線と結合されている結合導体部を有していることを特徴とする移相器。
【請求項2】
前記ノッチフィルタは、前記結合導体部から所定長さ延びて形成されている本体導体部を有し、
前記出力側導線と前記入力側導線とは前記所定長さよりも小さい値で接近して設けられ、
前記本体導体部は、前記結合導体部から前記並行方向に沿って延びている請求項1に記載の移相器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の移相器と、複数のアンテナ素子を一方向に並べて有しているアンテナユニットとを備え、前記並行方向と前記一方向とが平行となるように前記移相器が、前記アンテナユニットに取り付けられていることを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−135895(P2010−135895A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307425(P2008−307425)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】