説明

移載機能付搬送台車

【課題】搬送台車における荷物の上げ下ろし(移載)を作業者1人で安全に行うことが可能な移載機能付搬送台車を提供する。
【解決手段】
載置した荷物を安定した状態で保持する保持部材と、 前記保持部材を支持しパレット用車輪を有する車輪付移載パレットと、 前記車輪付移載パレットを乗せ前後方向に移送するためのレールと、 前記レールを支持するレール支持体と、 前記レール支持体の高さを調節する高さ調節手段と、 前記高さ調節手段を支持し台車用車輪を有する本体フレームと、 前記保持部材の位置と他の位置との間で荷物の移載を行うための前記本体フレームによって支持された多関節アームと、 を備えるようにした移載機能付搬送台車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送台車の技術分野に属する。特に、搬送台車における荷物の上げ下ろし(移載)を作業者1人で安全に行うことが可能な移載機能付搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷版胴やエンボスロール等の軸付きのロールは重量物(質量1000Kg程度)であり、ホイストで吊ってパレット等から搬送台車に移載して目的の場所に搬送するのが一般的である。たとえば、図10に示すように、まず、作業者は版胴倉庫に保管されている版胴をホイストで吊り上げてそのまま移動しパレットの処で版胴を下げ降ろしてパレットに移載する。次に、その版胴が載せられたパレットをフォーク付搬送台車のフォークで持上げる。その搬送台車は人力または電動で動作しており、作業者は、目的の場所として印刷機の傍(機脇)までそのパレットを搬送し、そのパレットから搬送台車のフォークを外す。再びホイストでその版胴を吊って版胴を印刷機に取り付ける。
このホイストで重量物を吊って台車に乗せ替える作業は大きな危険をともなうという問題がある。また、版胴の交換と搬送は1人では出来ず複数の作業者が必要となるという問題がある。そのため、自機の作業を犠牲にしても他機の作業を手伝わなければならなくなり、全体として生産効率を低下させるという問題がある。
【0003】
そこで、新しい工場の建設時においては、スタッカークレーン、チェーン搬送、有軌道台車搬送、AGV搬送、等の搬送システムを構築することにより、版胴等重量物の搬送を効率化することが行われている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−87205 しかしながら、スペース等の関係でそのような搬送システムを導入できない旧い工場では、上述のように、作業者がホイストを使って版胴を台車に乗せ、その台車を人力または電動で機脇まで運び、再びホイストで吊って版胴を装置に取り付けるという作業が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものである。その目的は、搬送台車における荷物の上げ下ろし(移載)を作業者1人で安全に行うことが可能な移載機能付搬送台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る移載機能付搬送台車は、載置した荷物を安定した状態で保持する保持部材と、 前記保持部材を支持しパレット用車輪を有する車輪付移載パレットと、 前記車輪付移載パレットを乗せ前後方向に移送するためのレールと、 前記レールを支持するレール支持体と、 前記レール支持体の高さを調節する高さ調節手段と、 前記高さ調節手段を支持し台車用車輪を有する本体フレームと、 前記保持部材の位置と他の位置との間で荷物の移載を行うための前記本体フレームによって支持された多関節アームと、 を備えるようにしたものである。
また、本発明の請求項2に係る移載機能付搬送台車は、請求項1に係る移載機能付搬送台車において、前記荷物は両端に軸を有する軸付ロールであって、前記多関節アームは前記両端の軸の各々を別個に把持して前記移載のための同期した動作を行う一対の多関節アームであるようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に係る移載機能付搬送台車によれば、保持部材により載置した荷物が安定した状態で保持され、 パレット用車輪を有する車輪付移載パレットにより保持部材が支持され、 レールにより車輪付移載パレットが乗せられ前後方向に移送され、 レール支持体によりレールが支持され、 高さ調節手段によりレール支持体の高さが調節され、 台車用車輪を有する本体フレームにより高さ調節手段が支持され、 本体フレームによって支持された多関節アームにより保持部材の位置と他の位置との間で荷物の移載が行われる。すなわち、荷物の移載は多関節アームにより行うことができ、レールと投入用レールの高さを合わせ、荷物を移載した車輪付移載パレットを投入することができる。したがって、搬送台車における荷物の上げ下ろし(移載)を作業者1人で安全に行うことが可能な移載機能付搬送台車が提供される。
また、本発明の請求項2に係る移載機能付搬送台車によれば、請求項1に係る移載機能付搬送台車において、荷物は両端に軸を有する軸付ロールであって、多関節アームは両端の軸の各々を別個に把持して移載のための同期した動作を行う一対の多関節アームである。したがって、搬送台車における軸付ロールの上げ下ろし(移載)を作業者1人で安全に行うことが可能な移載機能付搬送台車が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。本発明の移載機能付搬送台車における構成の一例を図1〜図3に示す。図1〜図3において、1は本体フレーム、2は高さ調節手段、3はレール支持体、4 a,4bはレール、6は車輪付移載パレット、7a,7bは保持部材、8a,8bは多関節アーム、9a,9b(,9c,9d)は台車用車輪、10はハンドル付電動車、100は軸付ロール、201a,201bは投入用レールである。
図1〜図3は、構成を示すとともに、倉庫等に保管されている軸付ロール100を車輪付移載パレット6に移載し(図1)、それを搬送し(図2)、使用場所(エンボス機、印刷機、等)に至るように敷設されているレールにおける投入用レール201a,201bの部分に投入する(図3)までの過程が示されている。
【0008】
本体フレーム1は移載機能付搬送台車の主要なフレームであって、この本体フレーム1は移載機能付搬送台車の各部分、すなわち多関節アーム8a,8b、台車用車輪9a,9b、等を支持する。台車用車輪9a,9b(,9c,9d)は、本体フレーム1に設けられ、本体フレーム1を移動可能とするための車輪である。図1〜図3に示す一例においては、本体フレーム1は自力で移動するための動力を有していない。その動力は本体フレーム1に連結したハンドル付電動車10から得ている。
ハンドル付電動車10は、図1〜図3に示す一例においては、本体フレーム1と連結しており、走行のための駆動輪と操作のためのハンドルを有する。ハンドルは作業者が前後に倒すと倒した方向に走行し、倒した角度の応じた走行速度が得られ、ハンドルを左右方向に振るとその方向に走行し、ブレーキ操作や停止操作を行うかハンドルから手を離すことにより停止する。
【0009】
高さ調節手段2はレール支持体3の床面からの高さを調節する手段である。高さを調節する目的は、レール4a,4bと投入用レール201a,201bとの高さを一致させて、車輪付移載パレット6を軸付ロール100の使用場所へ投入できるようにするためである。高さ調節手段2としては油圧シリンダーと昇降ガイドを有するリフト機構を使用することができ、そのような機構の高さ調節手段2は、本体フレーム1とレール支持体3との間に設けることができる。また、本体フレーム1と台車用車輪9a,9b(,9c,9d)(を支持する支持体)との間に設けることもできる。
【0010】
レール支持体3はレール4a,4bを支持する支持体である。レール支持体3は、図1〜図3に示す一例においては、本体フレーム1の上方に設けられており、高さ調節手段2によって床面からの高さを調節することができる。
レール4a,4bはレール支持体3によって支持され、移載機能付搬送台車の前後方向(走行方向)に延長するレールである。レール4a,4bは車輪付移載パレット6を乗せ前後方向に移送するためのレールである。
【0011】
車輪付移載パレット6は、軸付ロール100を載置してレールが敷設された場所を移動するためのパレットである。そのために、保持部材7a,7bを支持するとともにパレット用車輪(図示せず)を有する。
保持部材7a,7bは、図1〜図3に示す一例においては、楔型の切欠き部分を有する一対の部材(ブロック)である。保持部材7a,7bは、軸付ロール100の両端に存在する軸をこの楔型の切欠き部分に落とし込んで保持する。保持部材7a,7bによって保持が行われることにより搬送中に軸付ロール100が脱落することがなくなる。このように、保持部材7a,7bは載置した軸付ロール100を安定した状態で保持するための保持部材である。
【0012】
多関節アーム8a,8bは保持部材7a,7bの位置と他の位置との間で軸付ロール100の移載を行うための多関節アームである。多関節アーム8a,8bは本体フレーム1によって支持されており、図1〜図3に示す一例においては、本体フレーム1における前後の側面が多関節アーム8a,8bの根元部分となっている。多関節アーム8a,8bの根元部分の動作機構はその側面の内側に設けられている。多関節アーム8a,8bは、その側面から、本体フレーム1における左右の側面の中の一方の側面にそのアームを伸ばしている。
【0013】
多関節アーム8a,8bの先端部分は軸付ロール100の両端に存在する軸を保持できる形状となっている。図1〜図3に示す一例においては、軸の外径と同じかやや大きい内径を有する三日月型の先端部分となっている。この先端部分はその内径を変化させて軸を把持するため2つの指(親指と他の指)のような構造、すなわち関節を有し2指の間隔を変化可能な構造とすることができる。
多関節アーム8a,8bの先端部分から根元部分については、図1〜図3に示す一例においては、模式的に2つのアームと1つの関節だけが示されている。実際は、多関節アーム8a,8bの動作形態、すなわち保持部材7a,7bの位置と他の位置との間で軸付ロール100の移載を行うための動作形態に応じて必要とする数のアームと関節を設ける。
【0014】
多関節アーム8a,8bとしては、リンク(形の変化しない構造物)とジョイント(回転またはスライドするリンク可動部分;関節)からなる構造物(リンク機構)、それを動作させるアクチュエータ(油圧シリンダー、油圧発生装置、電磁弁、配管、等)、制御操作装置(PLC:Plogramable Logic controller、等)によって構成することができる。また、荷物の形状が複雑であるか、移載の形態が複雑であるときには、いわゆる工業用ロボットを使用してもよい。
【0015】
以上、構成について説明した。次に、本発明の移載機能付搬送台車における動作について説明する。
まず、図1に示すように、軸付ロール100は倉庫等の床面に保管されている。軸付ローラ100は、図1に示す一例においては、楔型の切欠き部分を有する一対の部材(保持部材7a,7bと同様の部材)に支持されて横に寝かせて置かれている。移載機能付搬送台車の本体フレーム1の部分がその軸付ロール100に沿って並列して配置するように、作業者がハンドル付電動車10を操作する。これによって、移載機能付搬送台車の本体フレーム1の部分はその軸付ロール100に沿って並列して配置する。さらに、移載機能付搬送台車の2つの多関節アーム8a,8bの先端部分の各々が軸付ロール100の2つの軸の各々に近接する位置となるように、作業者がハンドル付電動車10を操作し本体フレーム1の配置を微調節する。これによって、移載機能付搬送台車の2つの多関節アーム8a,8bの先端部分の各々は軸付ロール100の2つの軸の各々に近接する位置となる。
【0016】
次に、多関節アーム8a,8bが軸付ロール100を把持するとともに、把持した軸付ロール100を保持部材7a,7bに移載するように、作業者が多関節アーム8a,8bを操作する。これによって、多関節アーム8a,8bは軸付ロール100を把持するとともに、把持した軸付ロール100を保持部材7a,7bに移載する。この過程については、詳細を後述する(図4〜図9参照)。
次に、軸付ロール100を載置する移載機能付搬送台車が移動するように、作業者がハンドル付電動車10を操作する。これによって、軸付ロール100を載置する移載機能付搬送台車は移動する。その移動先は、図2に示すように、使用場所(エンボス機、印刷機、等)に至るように敷設されているレールにおける投入用レール201a,201bの部分である。
【0017】
次に、投入用レール201a,201bの各々の位置に対して、移載機能付搬送台車のレール支持体3に支持されたレール4a,4bの各々の位置が一致するように、作業者がハンドル付電動車10を操作する。このとき、作業者は必要に応じて高さ調節手段2を操作し高さ方向の位置を一致させる。これによって、投入用レール201a,201bの各々の位置に対して、移載機能付搬送台車のレール支持体3に支持されたレール4a,4bの各々の位置は一致する。投入用レール201a,201bとレール4a,4bは連結して一体化する連結構造(図示せず)を有している。連結して一体化した後においては、軸付ロール100を載置する車輪付移載パレット6はレール4a,4bから投入用レール201a,201bへと安全に移動することが可能となる。作業者は投入用レール201a,201bとレール4a,4bは連結して一体化する作業を行う。
【0018】
次に、車輪付移載パレット6がレール4a,4bから投入用レール201a,201bへと移動するように、作業者が移載機能付搬送台車において操作する。これによって、車輪付移載パレット6は、図3に示すようにレール4a,4bから投入用レール201a,201bへと安全に移動する。移動した車輪付移載パレット6は、敷設されたレールの上を使用場所へと移動することが可能となる。なお、車輪付移載パレット6は、通常は、レール支持体3または本体フレーム1に対してロック機構(図示せず)によりロックされている。したがって、その移動のときにはロック機構は開放状態とされる。また、移載機能付搬送台車に車輪付移載パレット6は作業者による手動またはアクチュエータ(油圧シリンダー、等)の移動機構(図示せず)により行われる。
【0019】
以上、図1〜図3を参照して動作について説明した。次に、本発明の移載機能付搬送台車における多関節アーム8a,8bの動作について説明する。図4〜図9に多関節アーム8a,8bの動作過程を説明図として示す。
まず、図4に示すように、移載機能付搬送台車の2つの多関節アーム8a,8bの先端部分の各々は軸付ロール100(版胴)の2つの軸の各々に近接する位置となっている。多関節アーム8a,8bは折り畳まれた状態となっている。この状態においては多関節アーム8a,8bがコンパクト化されており、移載機能付搬送台車の移動、保管、等において邪魔にならない。
【0020】
次に、図5に示すように、多関節アーム8a,8bが伸びて軸付ローラ100の軸(版胴軸)を保持する。
次に、図6に示すように、多関節アーム8a,8bが軸付ローラ100を持ち上げる。
次に、図7に示すように、そのまま多関節アーム8a,8bが軸付ローラ100を車輪付移載パレット6の保持部材7a,7bに移載する。
次に、図8に示すように、多関節アーム8a,8bが軸付ローラ100の軸を開放し折り畳まれる。
次に、図9に示すように、多関節アーム8a,8bが完全に折り畳まれ、元の状態に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の移載機能付搬送台車における構成と動作の一例を示す図(その1)である。
【図2】本発明の移載機能付搬送台車における構成と動作の一例を示す図(その2)である。
【図3】本発明の移載機能付搬送台車における構成と動作の一例を示す図(その3)である。
【図4】本発明の移載機能付搬送台車における多関節アームの動作の一例を示す図(その1)である。
【図5】本発明の移載機能付搬送台車における多関節アームの動作の一例を示す図(その2)である。
【図6】本発明の移載機能付搬送台車における多関節アームの動作の一例を示す図(その3)である。
【図7】本発明の移載機能付搬送台車における多関節アームの動作の一例を示す図(その4)である。
【図8】本発明の移載機能付搬送台車における多関節アームの動作の一例を示す図(その5)である。
【図9】本発明の移載機能付搬送台車における多関節アームの動作の一例を示す図(その6)である。
【図10】従来における軸付ローラの移載方法を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 本体フレーム
2 高さ調節手段
3 レール支持体
4a,4b レール
6 車輪付移載パレット
7a,7b 保持部材
8a,8b 多関節アーム
9a,9b(,9c,9d) 台車用車輪
10 ハンドル付電動車
100 軸付ロール
201a,201b 投入用レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置した荷物を安定した状態で保持する保持部材と、
前記保持部材を支持しパレット用車輪を有する車輪付移載パレットと、
前記車輪付移載パレットを乗せ前後方向に移送するためのレールと、
前記レールを支持するレール支持体と、
前記レール支持体の高さを調節する高さ調節手段と、
前記高さ調節手段を支持し台車用車輪を有する本体フレームと、
前記保持部材の位置と他の位置との間で荷物の移載を行うための前記本体フレームによって支持された多関節アームと、
を備えることを特徴とする移載機能付搬送台車。
【請求項2】
請求項1記載の移載機能付搬送台車において、前記荷物は両端に軸を有する軸付ロールであって、前記多関節アームは前記両端の軸の各々を別個に把持して前記移載のための同期した動作を行う一対の多関節アームであることを特徴とする移載機能付搬送台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−126664(P2009−126664A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305391(P2007−305391)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】