説明

穀粒乾燥調整加工装置

【課題】遠隔地にいても穀粒処理用の全ての装置の穀粒処理情報が得られ、かつ遠隔地の穀粒処理用の全ての装置を作動制御可能な穀粒乾燥調整加工装置を提供すること。
【解決手段】穀粒を乾燥させる乾燥装置1と乾燥穀粒を脱ぷする脱ぷ・風選装置2と該脱ぷした脱ぷ粒を選別して計量する選別計量装置3を備え、各装置1〜3における処理工程の制御を行う各制御部4〜6にそれぞれの装置の処理工程を互いに共有する無線通信回路部4a〜6aをそれぞれ設け、いずれかの装置で異常が発生すると、当該無線通信回路部は異常情報を他の装置の無線通信回路部に送信して、異常の情報を各装置1〜3に共有させる穀粒乾燥調整加工装置であり、各装置のオペレータは他の装置について、異常情報があれば、直ちにそれを確認でき、異常事態への対処ができるようになるだけでなく、各装置1〜3の運転状況を把握できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒乾燥調整加工装置に関し、特に穀粒乾燥調整加工装置の運転制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は既に、図9に示すように乾燥装置で乾燥した穀粒を脱ぷ装置へ移送供給して脱ぷし、更にこの脱ぷ装置で脱ぷした脱ぷ粒を選別計量装置へ移送供給して選別計量する一連の穀粒乾燥調整加工行程において、これら乾燥装置、脱ぷ装置及び選別計量装置にそれぞれ設けた制御部の間で、各装置の作業条件をデータ伝送すべくバース等の入出力手段を介して無線通信により情報を交換する構成により穀粒調整加工装置の運転制御をする装置についての発明を特許出願している。
【特許文献1】特公平7−16221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1記載の装置の構成によれば、乾燥装置、脱ぷ装置及び選別計量装置のそれぞの連係を取るべく各制御装置を有線で接続した構成をとったが、 作業場のスペースにより並列配置できない場合が多く、実際に自動的に連係運転制御をするには至っていない。
【0004】
そこで、本発明の課題は、遠隔地にいても穀粒処理用の全ての装置の穀粒処理情報が得られ、かつ遠隔地の穀粒処理用の全ての装置を作動制御可能な穀粒乾燥調整加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は次の解決手段により解決できる。
請求項1記載の発明は、穀粒を乾燥させる乾燥装置(1)と該乾燥装置(1)で乾燥した穀粒を脱ぷする脱ぷ・風選装置(2)と該脱ぷ・風選装置(2)で脱ぷした脱ぷ粒を選別して計量する選別計量装置(3)を備え、各乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)における処理工程の制御を行う制御部(4)、(5)及び(6)をそれぞれ備えた穀粒乾燥調整加工装置において、前記乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)の各制御部(4)、(5)及び(6)にそれぞれの装置の処理工程を互いに共有する無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)をそれぞれ設け、各無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)は、前記乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)のいずれかの装置で異常が発生すると、異常が発生した装置の無線通信回路部は、当該異常情報を他の装置の無線通信回路部に送信する構成とした穀粒乾燥調整加工装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、各無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)は、前記乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)のいずれかの装置で異常が発生すると、当該異常情報を他の装置の各無線通信回路部に送信した後、前記各装置(1)、(2)及び(3)の間で穀粒を移送中は前記各装置(1)、(2)及び(3)の全てを停止させる指令を各装置(1)、(2)及び(3)の各無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)に送信する構成とした請求項1記載の穀粒乾燥調整加工装置である。
【0007】
請求項3記載の発明は、各無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)は、前記乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)のいずれかの装置で異常が発生した場合に、当該異常情報を他の装置の無線通信回路部に送信した後に、前記各装置(1)、(2)及び(3)の間で穀粒の移送を開始する信号を受け付けると、当該移送の開始に関わるいずれかの装置を停止させる指令を各装置(1)、(2)及び(3)の無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)に送信する構成を備えた請求項1記載の穀粒乾燥調整加工装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、無線化技術を利用することで、各乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)における処理工程の穀粒処理情報を全ての装置(1)、(2)及び(3)で容易に共有できるので、各装置(1)、(2)及び(3)のオペレータは他の装置について、異常情報があれば、直ちにそれを確認でき、異常事態への対処ができるようになるだけでなく、各装置(1)、(2)及び(3)の運転状況を共有しているので把握ができ、前記オペレータは互いに遠隔地にいても安心して作業管理ができるようになるので負担軽減となる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、無線化技術を利用することで、異常があれば各装置(1)、(2)及び(3)の間で穀粒を移送中は前記各装置(1)〜(3)の全てを停止させることができるので、各装置(1)、(2)及び(3)の間での穀粒を移送中のトラブルを最小限度に抑えることができる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、無線化技術を利用することで、異常があったときに各装置(1)、(2)及び(3)の間で穀粒の移送を開始する信号を受け付けると、当該移送の開始に関わるいずれかの装置を停止させることができ、各装置(1)、(2)及び(3)の間での穀粒の移送に伴うトラブルを無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
図1には本発明の実施の形態の穀粒乾燥調整加工装置の全体図を示す。
本実施例の穀粒乾燥調整加工装置は図9に示す従来の乾燥装置1と脱ぷ・風選装置2と選別計量装置3からなる穀粒乾燥調整加工装置を改良して、これら乾燥装置1、脱ぷ・風選装置2及び選別計量装置3のそれぞれに設けた制御部4〜6の間で、各装置1〜3の作業条件をデータ伝送すべく入出力手段を介して無線通信回路部4a〜6aで接続し、乾燥装置1、脱ぷ・風選装置2及び選別計量装置3の各装置1〜3を担当しているいずれのオペレータであっても他の装置の運転状況を把握できるようにし、さらに各装置1〜3のいずれかに異常があると、直ちに遠隔地にいてもその異常状態によるトラブルを最小限度に留めるための構成に関するものである。
【0012】
本実施例で使用する近距離用の無線通信回路部4a〜6aは小電力タイプであり、429MHzや1.2GHz帯の電磁波を利用する特定小電力無線通信規格(通称テレメータ通信)やIEEE802.15.1準拠のBluetooth規格無線通信あるいはIEEE802.15.4準拠のZigBee規格によるもの等、 いずれにしても低コストで安定した無線通信を実現できるものであれば良い。
【0013】
図2には本実施例で使用する無線通信回路部4a〜6aの代表的なものとしてBluetooth規格の無線通信モジュールのブロック図を示す。また、図3、図4及び図5に前記乾燥装置1、脱ぷ・風選装置2及び選別計量装置3のそれぞれの制御部4a〜6aを示し、それぞれの装置1〜3の情報を無線化して送受信する部分である。
【0014】
例えば、乾燥装置1から脱ぷ・風選装置2へ乾燥穀粒を排出する場合、乾燥装置1の投入穀粒種類情報や乾燥仕上げ水分情報あるいは排出時の水分情報を、乾燥装置1の制御部4で検出記憶しておく。そして、乾燥装置1の制御部4の無線通信回路4aを介して、脱ぷ・風選装置2の制御部5の無線通信回路5aに送信し、脱ぷ・風選装置2の制御部5では前記乾燥装置1で得られた各種情報を記憶する。さらに、粒径などの選別・計量装置3の制御部6の無線通信回路6aを経て粒径選別・計量装置3の制御部6において前記乾燥装置1で得られた各種情報を記憶する。
【0015】
このように例えば、乾燥装置1に投入する穀粒の種類情報や乾燥仕上げ水分情報あるいは排出時の水分情報を無線化通信技術により、何らレイアウトに左右されず、穀粒処理作業の自動化が達成でき、他の装置2,3についているオペレータが容易に乾燥装置1で得られた情報を知ることができる。
【0016】
また、乾燥装置1に投入する穀粒の処理のための情報に基づき、脱ぷ・風選装置2及び/又は粒径選別・計量装置3での穀粒の処理のための運転条件を自動設定することもできる。
【0017】
特に 装置1〜3における各穀粒の処理工程において発生した異常情報を共有する構成に特徴がある。ここで、共有する異常情報が、装置1〜3のいずれかの装置間で穀粒を移送中の場合に得られると、その移送に関わるすべての装置を非常停止すべく各制御部4〜6において、停止信号を発することとした。
【0018】
例えば、乾燥装置1から脱ぷ・風選装置2・粒径選別・計量装置3へ穀粒を移送中に、乾燥装置1の搬送系の過負荷で乾燥装置1が自身の制御部4により非常停止した場合、その非常停止信号を直ちに脱ぷ・風選装置2と粒選・計量装置3の各制御部5,6に送信して各制御部5,6でそれぞれ非常停止すべく信号を発することで遅滞なく乾燥装置1と脱ぷ・風選装置2の間又は脱ぷ・風選装置2と粒径選別・計量装置3の間における穀粒の移送運転を自動的に停止させることができる。
【0019】
また、装置1〜3で共有する異常情報が、各装置1〜3のいずれかの装置の間で穀粒を移送開始させる状態で得られると、その移送に関わるいずれかの装置に異常が確認されれば移送を中断すべく停止信号を発することとした。
【0020】
例えば、乾燥装置1において、排出穀粒の詰まりが発生した場合搬送系モータの過負荷により、非常停止し待機状態となる。このとき、運転者は脱ぷ・風選装置2の運転についていた場合、乾燥装置1の非常停止に気づくのに時間を要すことになる。しかし、本構成により、乾燥装置1の非常停止警告は、直ちに、脱ぷ・風選装置2の制御部5、粒径選別・計量装置3の制御部6に無線通信回路を介して伝送され、脱ぷ・風選装置2及び粒径選別・計量装置3にそれぞれ備える表示部(図示せず)にその旨表示されるので、運転者はどの場所に居ても即座に認知できるので、異常に対処できる。すなわち、運転者は他の処理工程装置の異常発生をどの処理工程の運転に携わっていても認知できることで心理的作業負荷の軽減にもなる。
【0021】
また、本実施例における穀粒処理情報としては穀粒の種類又は乾燥初期または仕上水分情報もしくは乾燥装置1から脱ぷ・風選装置2と粒径選別・計量装置3へ移送供給する際の穀粒水分情報などである。
上記穀粒の種類すなわち品種の情報に基づき、例えば脱ぷ・風選装置2の制御部5、粒径選別・計量装置3の制御部6を設定する。
また、上記穀粒の水分情報としては、穀粒平均水分もしくは穀粒平均水分とそのばらつきを用いて、該水分情報により脱ぷ・風選装置2の脱ぷ能力調整手段(例えばロール間隙調整手段や脱ぷした穀粒の選別制御)を変更する。
【0022】
図6には水分情報と脱ぷロール間隙設定の関係のグラフを示す。図6に示す例は、水分のばらつきは乾燥装置単粒水分値データから、例えば標準偏差を求めて設定したものである。これにより、仕上げ玄米の糠層方面の微細なきずによる玄米脂肪酸の生成の抑制になり、玄米貯蔵品質の高い玄米加工ができる。インペラー式脱ぷ・風選装置2の場合はインペラー翼の回転数を調整で行う。
【0023】
また、本発明は図7に示すように制御情報管理システムにも適用できる。
玄米水分・品質測定装置がより精度の高い品質情報を提供すべく、別途手動または自動でサンプリングして測定を実施する。その測定データを同測定装置制御マイコンに付設の無線通信回路を介して情報データベース化する。そして、玄米が流通した後、玄米購入者が、例えば玄米袋付設のICタグにより、携帯端末等の手段でインタネットを介して生産者の保有する情報データベースから、より詳細な品質情報を得て、その後の加工処理等に役立てることができる。なお、この制御情報管理システムは玄米に限定したものでなく、小麦や大麦、豆類にも応用できる。
【0024】
穀粒処理情報は、例えば、(a)仕上げ水分近傍時又は穀粒の乾燥仕上時に籾の整粒に混入する未熟粒の混入率に関する情報、又は(b)脱ぷ・風選装置2もしくは粒径選別・計量装置3へ移送供給する際に検出した未熟粒に関する情報などを用いる。
【0025】
上記未熟粒に関する情報は、具体的には籾の整粒に混入する未熟粒混入率もしくは不稔粒および不登熟粒混入率である。
【0026】
特に、乾燥装置1付設の水分計11(図3)で検出した水分値検出電圧値12により算出した仕上げ籾中の未熟粒混入率もしくは不稔粒混入率および不登熟粒混入率(その合計のしいな混入率でもよい)を乾燥装置1の乾燥仕上げ水分情報あるいは排出時の水分情報とともに、乾燥装置1の制御部4で検出記憶しておく。
【0027】
そして、脱ぷ・風選装置2へ乾燥穀粒を排出する場合、乾燥装置1の制御部4の無線通信回路4aを介して脱ぷ・風選装置2の制御部5の無線通信回路5aを経て脱ぷ・風選装置2の制御部5に該情報を送信して、その制御部5で記憶する。さらに、粒径選別・計量装置3の制御部6の無線通信回路6aを経て粒径選別・計量装置3の制御部6に該情報を送信して、粒径選別・計量装置3の制御部6で記憶する。
【0028】
前記記憶情報に基づき処理穀粒籾の性状を表示することで、籾中の未熟粒混入率もしくは不稔粒混入率および不登熟粒混入率が多いときには、過度な脱ぷをしないよう警告することができる。
【0029】
また、通常より穀粒(籾)中の未熟粒混入率もしくは不稔粒混入率および不登熟粒混入率が多いときには、選別網目の目合いを設置通りで処理すれば、等級の低い仕上げ玄米を生産することが容易に想定され、選別処理作業の指針となる。
【0030】
また、上記記憶情報を脱ぷ・風選装置2もしくは粒径選別・計量装置3の制御部5,6に表示させることで、記憶情報を確認しながら穀粒の処理を行うことができる。
【0031】
従来、収穫後の穀粒の乾燥には、例えば籾の場合、25%程度の水分値から貯蔵性を高めるため籾の、水分含有量を略15%程度にするため10時間ないし15時間の連続的乾燥処理が必要である。よって、乾燥処理の円滑な進捗の確認は重要であるが、夜間作業にもなり定期的に乾燥装置1の近傍に立つのは、過酷である。特に大規模農家や営農集団では、作業場に複数台の乾燥装置1を併設して、多量の穀粒を乾燥処理しているので、その監視作業も一層過酷となる。
【0032】
そこで図8に示すように各乾燥装置1の制御部4の運転情報(例えば、乾燥速度情報など)を経時的に無線通信回路4aを介して、乾燥作業監視者の好ましい場所に設置された1つの外部情報処理装置10の遠隔記憶部10aへ送信し、記憶と表示を行わせることで、安価にかつ長時間監視作業の軽減になる。さらに複数台の乾燥装置1の複数回の乾燥情報を1つの外部情報処理装置10で比較可能になることで、乾燥装置1の運転が正常かどうかを容易に自己診断できる。
【0033】
また、無線通信回路4aと外部情報処理装置10とを通信可能な状態にすることで、自己診断できない場合には、乾燥中情報を外部のディーラー、メーカ等で情報処理できるようにすることでより精度の高い診断が遠隔でできる。
【0034】
表1に記憶情報の具体例である年度平均乾燥速度(標準乾燥速度設定運転のとき)に関するデータを示し、表2には過年度実績平均乾燥速度の例(籾)の記憶情報のデータを示す。
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表1と表2から年度平均乾燥速度実績値をみてみると、乾燥装置1号機の乾燥速度上昇が情報から読み取れる。標準乾燥速度設定で全ての乾燥を実施しているので(0.8±0.15)%/h程度の乾燥速度が実状であるが、経年変化として1号機が懸念され、総合点検の必要性が覗える。燃焼装置はもちろんのこと、熱風室の点検や温度センサの点検が必要であると診断される。このまま放置すれば次年度の乾燥は乾燥速度過多による胴割れ品質問題が懸念される。
【0037】
このような判断をユーザでは困難な場合、メーカあるいはディーラー側の技術サービス員が現場に行かないでも、データから推定診断でき、その対応案を直ちに立案でき、対応に必要な機材の手配等が迅速に行え効率的なメンテナンスの実施を可能にする。
【0038】
表3には、上記乾燥中情報が乾燥処理量情報に関するものである場合の具体例を示す。
【表3】

【0039】
表3に示すように、年間の乾燥処理量実績データを表示し、張込量センサ等による乾燥処理量を、1乾燥当り平均値からみて、使用乾燥装置の最大処理量(籾)5.0tから考えて効率的な処理にはなっていないことがデータから読み取れる。これより次年度の作付け計画(どの品種をどの圃場でどのくらい作つけるかなど)の指針となる。
【0040】
表4には過年度乾燥処理量の例(籾)の実績値のデータを示す。
【表4】

【0041】
表4に示すように、保有乾燥装置の乾燥処理量の年次変化及び通算データをみることで最大処理量が同一の乾燥装置1である場合、1号機、2号機はバランスよく乾燥作業が実施されていると推定される。一方、3号機が比較的使用量が少ない状況がデータより読み取れる。よって、機械の更新からみて、1号機、2号機がより早期に更新の必要性が発生するものと予測されるので、今後の稲作経営の一助となる。
【0042】
このような判断をユーザでは困難な場合、メーカあるいはディーラー側の技術サービス員が現場に行かないでも、データから推定診断でき、その対応案を直ちに立案でき、対応に必要な方策を電子メール等の手段でが迅速に行え効率的な稲作経営のアドバイスやメンテナンスの実施を可能にする。
【0043】
また、上記乾燥中情報として乾燥処理時間情報に関するものを用いた時の例を表5に示す。
【表5】

【0044】
表5に示すように、年度ごとの乾燥処理時間を積算・表示することで、火災等事故防止のためメンテナンスの必要性を確認できる。また、販売店側としても、このデータにより、安全のための指導はもちろん、部品交換時の寿命データとして今後の品質改善に役立つデータを電子情報として容易に収集できる効果もある。
【0045】
また、表6に過年度の乾燥処理時間の例(籾)を示す。
【表6】

【0046】
表6に示すように、3つの保有乾燥装置1の乾燥処理時間の年次変化及び通算データを見ることで同一型式の乾燥装置1である場合、1号機、2号機はバランスよく乾燥作業が実施されていると推定される。一方、3号機が比較的使用量が少ない状況がデータより読み取れる。よって、機械の更新からみて、1号機、2号機がより早期に更新の必要性が発生するものと予測され、メーカあるいはディーラー側の技術サービス員が現場に行かないでも、データから推定診断でき、その対応案を直ちに立案でき、対応に必要な方策を電子メール等の手段でが迅速に行え効率的な稲作経営のアドバイスやメンテナンスの実施を可能にする。
【0047】
上記表5における乾燥中情報が穀粒の乾燥処理に要した燃料消費量情報を見ると、次のようなことが分かる。
【0048】
すなわち、穀粒の乾燥処理に要した液体燃料消費量を燃料流量計や燃料供給信号の積算等の方法により、1乾燥ごとの燃料消費量(表示省略)、そこから単位時間あたりの消費量、あるいは単位乾燥処理量当たりの消費量に換算して記憶し、通算表示することで、例えば、表5に示す20回目の乾燥は、他の乾燥データと比較して、燃料使用が効率的ではないと判断され、処理量の少なさが課題であると診断される。このようにして、今後の経済的乾燥処理作業の指針がデータから読み取れるので効果的である。また、この表5から次年度の作付け計画(どの品種をどの圃場でどのくらい作つけるかなど)の指針の一助にもなる。
【0049】
また、表7には過年度単位処理量当り単位燃料消費量の例(籾)の年度積算実績値を示す。
【表7】

【0050】
表7に示すように、保有する乾燥装置1の過年度単位処理量当り単位燃料消費量について年次変化及び通算データをみることで同一型式の乾燥装置である場合、1号機、3号機に比べ、2号機は燃料消費にいくらかの問題が生じている可能性があると判断される。特に2号機の最近2ヵ年は燃料消費量が増加傾向にあり、少量乾燥を多用していなければ、燃焼系に懸念される問題があると考えられる。メーカあるいはディーラー側の技術サービス員は現場に行かないでも、入手情報から推定診断でき、その対応案を直ちに立案でき、対応に必要な方策を電子メール等の手段でが迅速に行え効率的な稲作経営のアドバイスやメンテナンスの実施を可能にする。
【0051】
また、上記乾燥中情報として乾燥速度情報に関するものを用いたときの例を上記表5に示す。
表5の乾燥速度は、乾燥開始から終了までの平均乾燥速度をとっているが、乾燥装置1の水分センサの能力や高水分時は乾燥速度がかなり高速であることより所定水分(例えば籾ならば22%)以下での乾燥速度に規定してもよい。
【0052】
表5に示すように、年間の乾燥速度実績データを統計的に処理し、例えば20回の乾燥の平均乾燥速度を求めて、20回目の乾燥のみ、平均乾燥速度が大きく、いくらかの問題点があったことがわかる。つぎにその20回目の乾燥設定情報を記憶情報から呼び出すと、表8に示す通りである。
【0053】
【表8】

【0054】
表8に示す結果から20回目の乾燥では小麦設定で乾燥した結果、最終穀温も高く、乾燥装置1の標準熱風温度通り運転がなされており、穀物種類設定にミスがあったとされる。次回からの乾燥設定に十分注意する必要があることを確実に認識できる。
【0055】
表9には籾乾燥の20回目の乾燥設定情報を示す。
【表9】

【0056】
この籾の乾燥の場合は20乾燥目(20回目)では設定温度よりも高い熱風温度で乾燥されたことがわかる。燃焼制御系に課題があったものと推定され、販売店にその旨伝えることで、迅速な対応が可能である。
【0057】
また、このデータを見た販売店のサービス担当は、乾燥装置1の型式から、規定以下の少量乾燥であったことも要因の1つであることを認識できる。ユーザとともに実施乾燥後の乾燥情報を閲覧しつつ、問題対応ができ、信頼性の高いサービスを提供できる。
【0058】
また、上記表1〜表9に示す複数の穀粒乾燥装置1の乾燥中の処理情報を図8に示すように、経時的に無線通信回路4aを介して、乾燥作業監視者の好ましい場所に設置された1つの外部情報処理装置10の遠隔記憶部10aへ送信し、記憶と表示を行わせることで、安価にかつ長時間監視作業の軽減になる。さらに複数台の乾燥装置1の複数回の乾燥情報を1つの外部情報処理装置10で比較可能になることで、乾燥装置1の運転が正常かどうかを容易に自己診断できる。
【0059】
また、無線通信回路4aと外部情報処理装置10とを通信可能な状態にすることで、自己診断できない場合には、乾燥中情報を外部のディーラー、メーカ等で情報処理できるようにすることでより精度の高い診断が遠隔でできる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、無線化技術を利用することで、穀粒の乾燥、調整及び加工のいずれの装置が互いに遠隔地にあっても容易に互いの処理状況を把握でき、各装置のレイアウトの自由度と作業性が従来より向上する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態の穀粒乾燥調整加工装置の全体図である。
【図2】本発明の実施の形態の穀粒乾燥調整加工装置の代表的無線通信回路部ブロック図である。
【図3】図1の穀粒乾燥調整加工装置の代表的穀粒乾燥装置の制御ブロック図である。
【図4】図1の穀粒乾燥調整加工装置の代表的脱ぷ・風選装置の制御ブロック図である。
【図5】図1の穀粒乾燥調整加工装置の代表的粒径選別・計量装置の制御ブロック図である。
【図6】穀粒の水分情報と脱ぷロール間隙設定の関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の代表的制御情報管理システムの全体図である。
【図8】本発明の実施の形態の代表的運転状態遠隔記憶装置と外部情報処理装置の関連図である。
【図9】従来の代表的穀粒乾燥調整加工装置の全体図である。
【符号の説明】
【0062】
1 乾燥装置 2 脱ぷ・風選装置
3 選別計量装置 4〜6 制御部
4a〜6a 無線通信回路部
10 外部情報処理装置 10a 遠隔記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を乾燥させる乾燥装置(1)と該乾燥装置(1)で乾燥した穀粒を脱ぷする脱ぷ・風選装置(2)と該脱ぷ・風選装置(2)で脱ぷした脱ぷ粒を選別して計量する選別計量装置(3)を備え、各乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)における処理工程の制御を行う制御部(4)、(5)及び(6)をそれぞれ備えた穀粒乾燥調整加工装置において、
前記乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)の各制御部(4)、(5)及び(6)にそれぞれの装置の処理工程を互いに共有する無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)をそれぞれ設け、
各無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)は、前記乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)のいずれかの装置で異常が発生すると、異常が発生した装置の無線通信回路部は、当該異常情報を他の装置の無線通信回路部に送信する構成としたことを特徴とする穀粒乾燥調整加工装置。
【請求項2】
各無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)は、前記乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)のいずれかの装置で異常が発生すると、当該異常情報を他の装置の各無線通信回路部に送信した後、前記各装置(1)、(2)及び(3)の間で穀粒を移送中は前記各装置(1)、(2)及び(3)の全てを停止させる指令を各装置(1)、(2)及び(3)の各無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)に送信する構成としたことを特徴とする請求項1記載の穀粒乾燥調整加工装置。
【請求項3】
各無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)は、前記乾燥装置(1)、脱ぷ・風選装置(2)及び選別計量装置(3)のいずれかの装置で異常が発生した場合に、当該異常情報を他の装置の無線通信回路部に送信した後に、前記各装置(1)、(2)及び(3)の間で穀粒の移送を開始する信号を受け付けると、当該移送の開始に関わるいずれかの装置を停止させる指令を各装置(1)、(2)及び(3)の無線通信回路部(4a)、(5a)及び(6a)に送信する構成を備えたことを特徴とする請求項1記載の穀粒乾燥調整加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−84952(P2010−84952A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251017(P2008−251017)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】