説明

積層グレージングユニットの製造プロセス

ユニット(1)がガラス機能を有する少なくとも1つの基板(2、4)およびポリマー中間層の少なくとも1つの層(3)を含む、所定の負荷に耐えるように積層グレージングユニット(1)を製造するためのこのプロセスが、
所定負荷の特性時間および特性温度範囲にわたる中間層の構成材料の粘弾性挙動(Eint(t,T))を説明する法則が得られるステップと、
剪断伝達への中間層の寄与が伝達係数によって表される分析モデルと、中間層のヤング率、積層グレージングユニット上の印加負荷、および積層グレージングユニット(1)の寸法(a、b、h、hintj)の関数として伝達係数を表す式とを用いて、所定負荷を受ける積層グレージングユニット(1)の負荷抵抗を表す少なくとも1つの量の最大値が計算されるステップと、
ユニット(1)の負荷抵抗を表す量の計算最大値が許容可能な最大値以下となるような方式で、積層グレージングユニット(1)の寸法(a、b、h、hintj)が調整されるステップと、
各基板(2、4)および中間層の各層(3)が、調整寸法(a、b、h、hintj)に合わせて準備および組み立てられるステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス機能を有する少なくとも1つの基板、およびポリマー中間層の少なくとも1つの層を含む、積層グレージングユニットを製造するためのプロセスに関する。本発明はまた、最適化された積層グレージングユニットにも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の関連において、「積層ガラス」という用語は、結合された単一基板および中間層の単一層を含む構造を有し、少なくとも1つの基板および中間層の少なくとも1つの層を含むいずれかのグレージング構造を意味すると理解される。
【0003】
積層グレージングユニットの製造を目的とするポリマー中間層の粘弾性挙動を説明する法則は、静的負荷または準静的負荷を受けたときに、これらのユニットの機械的挙動に影響を及ぼすことが知られている。積層グレージングユニットの設計を検証するためには、その負荷抵抗がその用途に適合することを確認する必要がある。たとえば、建造物のファサードのグレージングユニットが特定の風負荷に耐えることができること、または建造物の屋根に設置されるように意図された太陽電池モジュールが特定の雪負荷に耐えることができることを、確認する必要がある。具体的には、積層グレージングユニット上の予測可能な負荷の強度、および前記負荷が積層グレージングユニット上に分散される方法は、この負荷の特性時間および特性温度範囲とともに、積層グレージングユニットを製造する際に考慮されるべきパラメータである。
【0004】
所定の支持および負荷条件下で、積層グレージングユニットの負荷抵抗を判定する従来の方法の1つは、積層グレージングユニットが中間層を持たないグレージングユニットに融合され、積層グレージングユニットにおける剪断伝達への中間層の寄与が0から1の間の伝達係数
【数1】

(注:以下、文中では「ω~」と代替表記)
によって表される、分析モデルを使用することにある。積層グレージングユニットの機械的性能に対する中間層の寄与は、伝達係数ω~が高いほど大きい。実際には、伝達係数ω~は、積層グレージングユニットの等価厚を定義するために使用され、これに基づいて積層グレージングユニットの負荷抵抗を表す量が、一体型グレージングユニットに適用可能なものと類似の式を用いて計算されてもよい。
【0005】
一例を挙げると、この従来型方法において、積層ガラスパネルの撓みを計算するための等価厚は、
【0006】
【数2】

によって与えられ、そして積層ガラスパネルのガラス機能を有する基板i上の最大応力を計算するための等価厚は、
【0007】
【数3】

によって与えられ、ここでhは積層ガラスパネルのガラス機能を有する各基板の厚みであり、
m;iは、積層グレージングユニットに使用される中間層の層の厚みを考慮に入れない、ガラス機能を有する基板iの平均平面と積層グレージングユニットの平均平面との間の距離である。
【0008】
しかしながら、与えられた積層グレージングユニットの伝達係数ω~を正確に判定する方法は、文献では利用不可能である。これに加えて、従来の方法では、等価厚は、積層グレージングユニットの中間層厚を考慮せず、中間層の伝達係数ω~および積層グレージングユニットの各基板の厚みの関数として表される。ここで、中間層による積層グレージングユニットの機械的性能への寄与が無視できない場合、中間層厚に対する等価厚の依存性の不在は、構造の機械的挙動の過剰近似を招く可能性がある。具体的には、従来の方法において、2つのガラス基板の間に配置された、標準厚の単一中間層板を有する積層グレージングユニットと、同じ2つのガラス基板の間に配置された同じ中間層の標準厚の2つの板を含む積層グレージングユニットとの間で、区別されない。その結果、積層グレージングユニットの設計のための仕様を確立する際に、ガラス基板の必要な厚みを過剰見積もりする傾向があり、その一方で、中間層厚の増加は設計基準を満たすのに十分であり得るだろう。結果的に、従来の方法の枠内で得られる積層グレージングユニットの費用および重量は、最適化されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
得られた積層グレージングユニットが重量および負荷抵抗の両方に関して最適化されることを保証する、積層グレージングユニットの製造プロセスを提供することによって、本発明がより具体的に改善することを目指すのは、これらの欠点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明の一対象は、特性時間範囲および特性温度範囲に対応する所定負荷に耐えられるように積層グレージングユニットを製造するためのプロセスであって、積層グレージングユニットは、ガラス機能を有する少なくとも1つの基板、およびポリマー中間層の少なくとも1つの層を有し、プロセスは、
所定負荷の特性時間および特性温度範囲にわたる中間層の構成材料の粘弾性挙動を説明する法則が得られるステップと、
積層グレージングユニットにおける剪断伝達への中間層の寄与が伝達係数によって表される分析モデルと、中間層のヤング率、積層グレージングユニット上の印加負荷、および積層グレージングユニットの寸法の関数として伝達係数を表す式とを用いて、所定負荷を受ける積層グレージングユニットの負荷抵抗を表す少なくとも1つの量の最大値が計算されるステップと、
積層グレージングユニットの負荷抵抗を表す量の計算最大値が、許容可能な最大値以下となるような方式で、積層グレージングユニットの寸法が調整されるステップと、
積層グレージングユニットの基板および中間層の層が調整寸法に合わせて準備および組み立てられるステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の関連において、「積層グレージングユニットの寸法」という表現は、たとえば長方形の積層ガラスパネルの場合の、その周囲寸法、その幅およびその長さのみならず、その1つまたは複数の基板の厚み、および中間層のその1つまたは複数の構成層の厚みも意味すると理解される。
【0012】
本発明による積層グレージングユニットの製造プロセスの別の有利な特徴によれば、個別にまたは技術的に可能な組み合わせにおいて取り入れられるのは、
中間層の構成材料の挙動法則を決定するために、一定の動的変位を課しながら周波数および温度を変化させることによって、粘度分析計を用いて中間層のサンプル上でヤング率が測定され、WLF法によって確立された周波数/温度等価性の法則が使用される。
【0013】
中間層の構成材料の挙動法則が、5×10−7Hzから3×10−1Hzの間の周波数範囲、および−20℃から60℃の間の温度範囲にわたって決定される。
【0014】
積層グレージングユニットの負荷抵抗を表す量として、以下が計算される:
式IIIが成立するような積層ガラスの等価厚hef;wに基づく、積層グレージングユニットの撓み:
【数4】


および/または、
式IVが成立するような、積層ガラスの等価厚hef;σ;iに基づく、積層グレージングユニットのガラス機能を有する各基板上の最大応力:
【数5】

ここでhはガラス機能を有する各基板の厚みであり、
intjは中間層の各層の厚みであり、
m;iは、ガラス機能を有する基板iの平均平面と積層グレージングユニットの平均平面との間の距離である。
【0015】
以下のステップにしたがって、ガラス機能を有する少なくとも1つの基板およびポリマー中間層の少なくとも1つの層を含むいずれかの積層グレージングユニットに有効な、伝達係数を表す式が決定される。:
積層グレージングユニットの中間層の構成材料の粘弾性挙動を説明する法則が得られるステップと、
中間層の機械的特性を定義するために中間層の構成材料の挙動法則を用いて、積層グレージングユニットの曲げにおける有限要素数値モデルが確立されるステップと、
一方では数値モデルを用いて、他方では剪断伝達への中間層の寄与が伝達係数によって表される分析モデルを用いて得られた結果の間で比較が行われ、これらの結果が収集するまで伝達係数の値が調整されるステップと、
中間層のヤング率の関数としての伝達係数の変動を示す伝達関数が逐次代入法によって構築されるステップと、
中間層のヤング率、積層グレージングユニット上の印加負荷、および積層グレージングユニットの寸法の関数として伝達係数が表されるような方式で、伝達関数が方程式に代入されるステップと、
中間層のヤング率、積層グレージングユニット上の印加負荷、および積層グレージングユニットの寸法の関数として伝達係数を表す式のパラメータが経験的に決定されるステップ。
【0016】
積層グレージングユニットは長方形パネルであり、伝達係数を表す式における積層グレージングユニットの寸法は、パネルの幅および長さ、ガラス機能を有する各基板の厚み、および中間層の各層の厚みである。
【0017】
本発明の別の対象は、電子計算ユニットによって命令が実行されたときに、上述のような製造プロセスの計算ステップを実行するためのこれら命令を含むデータ記録媒体であって、前記命令は、積層グレージングユニットにおける剪断伝達への中間層の寄与が伝達係数によって表される分析モデルと、中間層のヤング率、積層グレージングユニット上の印加負荷、および積層グレージングユニットの寸法の関数として伝達係数を表す式とを用いて、所定負荷を受ける積層グレージングユニットの負荷抵抗を表す少なくとも1つの量の最大値を計算するための命令を含む。
【0018】
一実施形態によれば、命令は、前記所定負荷を受ける積層グレージングユニットの負荷抵抗を表す少なくとも1つの量の最大値を計算するための命令の後に、表示量の計算最大値がこの表示量の許容可能な最大値以下となるような方式で積層グレージングユニットの寸法の調整値を計算する命令を含む。
【0019】
本発明の別の対象は、上述のような製造プロセスによって得られる積層グレージングユニットである。
【0020】
本発明の別の対象は、ユニットに印加される所定の最大負荷に対応する場所に設置されるように意図された積層グレージングユニットであって、この積層グレージングユニットは、ガラス機能を有する少なくとも1つの基板およびポリマー中間層の少なくとも1つの層を含み、この積層グレージングユニットは、それぞれ対応する名目積層グレージングユニットの中間層厚および基板厚よりも小さい中間層厚および/または基板厚を有し、積層グレージングユニットの別の寸法は、対応する名目積層グレージングユニットのものと等しく維持されており、ここで対応する名目積層グレージングユニットは、ユニットの負荷抵抗の表示量が一体型グレージングユニットに適用可能なものと類似の式を用いて計算される基になる積層グレージングユニットの等価厚が中間層の層の厚みとは無関係である製造方法によって、前記所定の最大負荷に耐えるように製造された積層グレージングユニットである。
【0021】
本発明による積層グレージングユニットの別の有利な特徴によれば、
積層グレージングユニットは、ガラス機能を有する少なくとも2つの基板およびポリマー中間層の少なくとも1つの層を含む建造物のグレージングユニットであって、中間層の各層は、ガラス機能を有する2つの基板の間に配置されている。
【0022】
積層グレージングユニットは、ガラス機能を有する前面基板および少なくとも1つの太陽電池を含む太陽電池モジュールであって、ポリマー積層中間層の層は前面基板と太陽電池との間に挿入されている。
【0023】
本発明の特徴および利点は、例示および以下の添付図面の参照によってのみ与えられる、本発明による製造プロセスおよび積層グレージングユニットのいくつかの実施形態の以下の記載において、明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ガラス機能を有する2つの基板およびポリマー中間層を含む積層ガラスパネルの、模式的斜視図である。
【図2】図1の平面IIに沿った部分断面図である。
【図3】中間層のヤング率の関数としての伝達係数の変動を表す曲線である。
【図4】2mの幅および3mの長さを有し、各々が4mmの厚みを有する2つのガラス基板、および2つの標準中間層板、すなわち0.76mmの厚みを有する中間層の層を含むパネルについて、実験的測定によって、先行技術の積層グレージングユニットの製造プロセスの関連における推測によって、および本発明による積層グレージングユニットの製造プロセスの関連における推測によってそれぞれ得られた、パネルに印加される風負荷の関数としての、長方形積層ガラスパネルの最大撓みの変動を示すグラフである。
【図5】2mの幅および3mの長さを有し、各々が4mmの厚みを有する2つのガラス基板、および1つまたは2つの中間層板、すなわち0.38mmまたは0.76mmの厚みを有する中間層の層を含むパネルについて、実験的測定によって、先行技術の積層グレージングユニットの製造プロセスの関連における推測によって、および本発明による積層グレージングユニットの製造プロセスの関連における推測によってそれぞれ得られた、パネルに印加される風負荷の関数としての、長方形積層ガラスパネルの最大撓みの変動を示すグラフである。
【図6】3mの長さを有し、各々が4mmの厚みを有する2つのガラス基板、ならびにそれぞれ本発明による積層ガラスパネルおよび先行技術の対応する名目積層ガラスパネルのための2つの構造中間層板、すなわち0.76mmの厚みを有する中間層の層を含むパネルについて、パネル上の印加された風負荷およびパネルの幅/長さ比λ=a/bの両方の関数としての、長方形積層ガラスパネルの等価厚を表す三次元グラフである。
【図7】パネルに印加される風負荷およびパネルの幅/長さ比λ=a/bの両方の関数としての、先行技術の対応する名目積層ガラスパネルの等価厚と比較した、図6に示される本発明による積層ガラスパネルの等価厚に関する節減を表す、図6に由来する三次元グラフである。
【図8】3mの長さを有し、各々が4mmの厚みを有する2つのガラス基板、ならびにそれぞれ本発明による積層ガラスパネルおよび先行技術の対応する名目積層ガラスパネルのための2つの中間層板、すなわち0.76mmの厚みを有する中間層の層を含むパネルについて、パネル上の印加された風負荷およびパネルの幅/長さ比λ=a/bの両方の関数としての、長方形積層ガラスパネルの等価厚に関する節減を表す、図7に示されるグラフと類似のグラフである。
【図9】3mの長さを有し、各々が4mmの厚みを有する2つの標準ガラス基板、ならびにそれぞれ本発明による積層ガラスパネルおよび先行技術の対応する名目積層ガラスパネルのための2つの音響中間層板、すなわち0.76mmの厚みを有する中間層の層を含むパネルについて、パネル上の印加された風負荷およびパネルの幅/長さ比λ=a/bの両方の関数としての、長方形積層ガラスパネルの等価厚に関する節減を表す、図7に示されるグラフと類似のグラフである。
【図10】ガラス機能を有する3つの基板、および2つの基板の間に各々は位置されたポリマー中間層の2つの層を含む積層ガラスパネルに関する、図2と類似の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、ポリビニルブチラール(PVB)ベースの中間層の層3が間に接合された、2つのガラス基板2および4を含む、長方形の積層ガラスパネル1を示す。変形例として、中間層の層3は、PVB以外の適切な特性のいずれの粘弾性材料で作られてもよい。パネル1の幅および長さはそれぞれaおよびbで示され、基板2および4の厚みはhおよびhで示され、中間層の層3の厚みはhint1で示される。本発明による製造プロセスの目的は、第一の実施形態における雪負荷、または図4から図9に示される第二の実施形態における風負荷などの、所定負荷Fに耐えられるように、積層ガラスパネル1を設計することである。
【0026】
本発明による製造プロセスを実行するための鍵となる先行ステップは、中間層のヤング率Eint、パネル上の印加された負荷F、および積層ガラスパネルの寸法a、b、h、およびhintjの関数として、積層ガラスパネルの中間層の伝達係数ω~を表す式を決定することである。この式は、ガラス機能を有する少なくとも1つの基板およびポリマー中間層の少なくとも1つの層を含むいずれの積層ガラスパネルにも有効であるが、これは以下に記載されるステップによって決定される。
【0027】
まず、積層ガラスパネルの中間層の構成材料の粘弾性挙動Eint(t,T)を説明する法則が、実験的に決定される。周波数および温度の関数としてのヤング率Eintの変動が、5×10−7Hzから3×10−1Hzの間の周波数(f=1/t)範囲、および−20℃から60℃の間の温度(T)範囲について、決定される。これらの周波数および温度範囲は、たとえば建造物に取り付けられたときに、積層グレージングユニットに印加される静的または準静的負荷の特性範囲に相当する。具体的には、風負荷の特性時間tは、0℃から20℃の対応する温度(T)範囲においておよそ3秒であるが、その一方で雪負荷の特性時間tは、−20℃から20℃の対応する温度(T)範囲においておよそ3週間である。
【0028】
挙動法則Eint(t,T)を決定するために、一定の動的変位を課しながら周波数および温度を変化させることによって、たとえばMetravibのVA400粘度分析計など、粘度分析計を用いて、中間層のサンプル上でヤング率Eintが測定される。一例を挙げると、動的変位は1×10−6mで固定される。Metravib粘度分析計は、1から400Hzの周波数範囲の値のみを提供する。粘度分析計による測定で取得することができない周波数および温度の値については、WLF(Williams−Landel−Ferry)法によって確立される周波数/温度等価法則が、知られている方式で使用される。
【0029】
次に、特定の負荷を受ける積層ガラスパネルの負荷抵抗を計算するように、積層ガラスパネルの曲げにおける有限要素数値モデルが確立される。事前に決定された挙動法則Eint(t,T)を用いて、この数値モデルについて、中間層の機械的特性が定義される。一例を挙げると、この数値モデルは、パネルの4辺の各々における単純な支持体および均一な負荷を使用して、中間層を包含する積層ガラスパネルの非線形モデルが組み込まれるCOSMOS−M計算ソフトウェアを用いて、確立されてもよい。
【0030】
数値計算の結果はその後、積層ガラスパネルにおける剪断伝達への中間層の寄与が伝達係数ω~によって表される解析式によって得られたものと、比較される。これら解析式はたとえば、積層ガラスパネルの最大撓みWmaxおよび積層ガラスパネルのガラス機能を有する基板i上の最大応力σmaxが、以下のように計算され得るようにする:
【数6】

および、
【数7】

ここでhef;wは既出の式(I)で定義されたように、最大撓みWmaxを計算するための等価厚;hef;σ;iは既出の式(II)で定義されたように、最大応力σmaxを計算するための等価厚;Fは積層ガラスパネル上の印加負荷;Eintは積層ガラスパネルの中間層のヤング率;Aは積層ガラスパネルの幅aおよび長さbの積abに等しく;kおよびkは、欧州規格ドラフトprEN 13474の付録Bに示される値を有する係数である。
【0031】
変形例として、積層ガラスパネルにおける中間層の厚みを考慮に入れるため、以下のように、式(V)および(VI)にしたがって最大撓みおよび最大応力を計算するために、等価厚の式を再構築することが可能である:
【数8】

【数9】

ここでhは積層ガラスパネルのガラス機能を有する各基板の厚みであり、
intjは積層ガラスパネルの中間層の各層の厚みであり、
m;iは、図1から図10に示されるように、積層グレージングユニットにおいて使用される中間層の層の厚みを考慮に入れた、ガラス機能を有する基板iの平均平面と積層グレージングユニットの平均平面との間の距離である。
【0032】
一方では数値モデルから得られた結果、他方では解析式から得られたものを比較することにより、伝達係数ω~の値は、結果を収集させるように調整される。こうして、中間層のヤング率Eintの関数としての伝達係数ω~の変動を表す伝達関数は、逐次代入法によって構築される。このような伝達関数ω~=f(Eint)を表す曲線は、図3に示されている。
【0033】
伝達関数はその後、中間層の特性の関数のみならず、パネル上の印加負荷Fおよび積層ガラスパネルの物理的パラメータの関数としても伝達係数ω~を表すように、経験的な式を用いる方程式に代入される。伝達関数を公式に代入するこのステップは本発明の鍵となるステップを構成し、伝達係数ω~の式はその後、重量および負荷抵抗に関して最適化された積層グレージングユニットを得るように、系統的に使用されることが可能となる。
【0034】
図3にその例が示される、上記で得られた伝達関数を表す曲線より、伝達関数ω~=f(E)の特性式は、以下の形式のものであることが見いだされた:
【数10】

ここでαは定数であり、
βはパネルの物理的および幾何学的パラメータの群であり、
Gは中間層の剪断係数であって、これは式Eint=2(1+v)Gを用いて中間層のポアソン比vおよびヤング率Eintから決定されることが可能である。
【0035】
本発明者らは、風試験の間の、積層ガラスパネルの最大撓みの測定から得られた実験的結果に基づいて、ならびに積層ガラスパネルの曲げにおける有限要素モデルから得られた数値計算結果にも基づいて、伝達関数式のパラメータを経験的に決定した。より正確には、本発明者らは、いくつかのパラメータに関して、伝達係数ω~の感度を調査した。第一の近似値まで、伝達係数ω~は、パネルの幅aおよび長さbに、積層ガラスパネルの各ガラス基板の厚みhに、積層ガラスパネルの中間層の各層の厚みhintjに、パネルに印加される均一に分散された負荷Fに、ガラスのヤング率E(70GPa)に、および中間層のヤング率Eintに、依存する。
【0036】
伝達係数ω~は、使用される中間層の厚みおよび種類とは関係なく、積層ガラスパネル上の印加負荷の関数として、直線的に変動することが見いだされた。これは、負荷の強度が、アセンブリの曲げにおける変形エネルギー、およびひいては、特定の方式において、積層ガラスパネルのあるガラス基板から別のガラス基板へ伝達される剪断力を、支配するためである。積層ガラスパネルが負荷の下でより大きく変形するほど、中間層にかかる応力は大きく、そしてその伝達能力は低くなる。この結果、積層ガラスパネル上の印加負荷Fの関数として、以下のアフィン式が得られる:
【数11】

ここで勾配φの値は、曲げにおける積層ガラスパネルの実験的および数値的データを補間することによって、−5e−5に設定される。すると、比率
【数12】

はy軸上の切片となり、これが外部作用のないアセンブリの潜在剛性を決定する。
【0037】
これらの検討の結果、ガラス機能を有する少なくとも1つの基板およびポリマー中間層の少なくとも1つの層を含む積層ガラスパネルの伝達係数ω~について、以下の式が得られる:
【数13】

ここでλは比a/bであり、
totは積層ガラスパネルの合計厚みであり、
iは1からnまで変動してjは1からn−1まで変動し、nは積層ガラスパネルのガラス機能を有する基板の数を表す。
【0038】
積層ガラスパネルの伝達係数ω~を表すこの式(VII)は、以下に記載され、一例として、以下の第一および第二の実施形態に示されるような方式で、本発明による製造プロセスの関連において使用される。
【0039】
特性時間(t)範囲および特定温度(T)範囲に対応する所定負荷Fに耐えられるように、たとえば図1の積層ガラスパネルなどの、積層ガラスパネルを製造することが望ましいとき、中間層の構成材料の粘弾性挙動Eint(t,T)を説明する法則が、少なくとも負荷Fの特性時間および温度範囲を網羅することによって、まず決定される。挙動法則Eint(t,T)は、周波数および温度を変化させることによって、ならびに一定の動的変位を課すことによって、粘度分析計を用いて、そして粘度分析計を用いて測定することが不可能な周波数および温度については、WLF(Williams−Landel−Ferry)法によって確立される周波数/温度等価法則によって、上述のように決定される。実際には、挙動法則Eint(t,T)は、各中間層組成物について一度だけ決定され、この中間層組成物を包含するいずれかの積層ガラスパネルを製造するプロセスにおいて再度使用されることが可能となる、データベース内のメモリに記憶される。
【0040】
積層ガラスパネルの最大撓みWmaxおよび/またはパネルのガラス機能を有する各基板上の最大応力σmaxなど、所定の負荷Fを受ける積層ガラスパネルの負荷抵抗を表す少なくとも1つの量の最大値が、次に計算される。この目的のため、積層ガラスパネルの伝達係数ω~を表す式(VII)は、たとえば最大撓みおよび最大応力を計算するために式(V)および(VI)、ならびに積層ガラスパネル内の中間層厚を考慮に入れた等価厚の式(III)および(IV)など、解析式と組み合わせて使用される。
【0041】
積層ガラスパネルの寸法a、b、h、hintjはその後、積層ガラスパネルの負荷抵抗を表す各量Wmax、σmaxの計算最大値が、たとえば基準によって定義された許容可能な最大値以下となるような方式で、調整される。各計算量Wmax、σmaxの最大値は、負荷Fの特性時間および特性温度範囲にわたる最大値である。実際には、最大応力は対象の温度範囲にわたって温度による影響を受けないので、計算最大応力σmaxの最大値は負荷Fの特性時間範囲にわたる最大値である。
【0042】
調整寸法a、b、h、hintjが一旦決定されてしまうと、各基板および積層ガラスパネルの中間層の各層は、調整厚みh、hintjを用いて準備され、同様に調整された幅aおよび長さbを備える積層ガラスパネルを形成するように組み立てられる。
【0043】
本発明による製造プロセスのための上述の計算ステップは、入力データ処理アルゴリズムを用いてプログラミングされた計算ユニットによって実行されてもよく、このアルゴリズムは、積層ガラスパネルの負荷抵抗を計算するための解析式、特に最大撓みおよび最大応力を計算するための式(V)および(VI)、ならびに等価厚の式(III)および(IV)とともに、伝達係数ω~を表す式(VII)を包含する。計算ユニットは、データ記録媒体上に記録された命令を実行することが可能な、従来のプログラム可能計算ユニットに基づいている。この媒体は、本発明による製造プロセスの計算ステップに対応する命令が計算ユニットによって実行されるときに、上述のアルゴリズムを実行するためのこれらの命令を含む。アルゴリズムを実行するための命令群は積層ガラス設計プログラムまたはソフトウェアに組み込まれ、これは有利なことに、ユーザが迅速かつ確実に設計問題を解決できるようにする、簡素化されたグラフィカルインターフェースを含む。
【0044】
第一の手法において、アルゴリズムの入力データは、積層ガラスパネルの中間層の挙動法則Eint(t,T)、積層ガラスパネル上に印加される所定負荷F、およびパネルの寸法a、b、h、hintjであってもよい。計算ユニットは次に、出力として、対象の積層ガラスパネルの負荷抵抗を表す量の計算値、具体的にはパネルの最大撓みおよび/またはユニットの各ガラス基板i上の最大応力を伝えるように、設計される。この第一手法は、与えられた寸法の積層ガラスパネルが特定用途向けに正しく設計されているか否かを確認することを可能にする。この第一手法を用いると、アルゴリズムの入力データとして供給されるパネルの寸法a、b、h、hintjを段階的に修正することにより、積層ガラスパネルの荷重負荷を表す各量Wmax、σmaxの最大計算値が対応する許容可能な最大値以下になるような方式で、パネルの寸法を繰り返し調整することも可能であり、この許容可能な最大値は、たとえば規格によって定義される。
【0045】
第二の手法において、積層ガラスパネルの設計を直接的に最適化する目的のため、アルゴリズムの入力データは、積層ガラスパネルの中間層の挙動法則Eint(t,T)、積層ガラスパネル上に印加される所定負荷F、積層ガラスパネルの負荷抵抗を表す1つ以上の量の許容可能な最大値、具体的にはパネルの最大撓みおよび/またはユニットの各ガラス基板i上の最大応力、および積層ガラスパネルの寸法a、b、h、またはhintjのうちのいくつかであってもよい。積層ガラスパネルの負荷抵抗を表す量の許容可能な最大値は、たとえば基準によって定義される。次に計算ユニットは、出力として、アルゴリズムに入力データとして供給されなかった積層ガラスパネルのその他の寸法a、b、h、またはhintjの調整値を伝えるように、設計され、これらの調整値は、積層ガラスパネルの負荷抵抗を表す各量Wmax、σmaxの計算最大値が、入力として供給された対応する許容可能な最大値以下となるように、適合されている。
【0046】
本発明による製造プロセスの第一の例示的実施形態において、図1に示される積層ガラスパネル1を設計することを目的とする。パネル1は、建造物の屋根に水平に配置されるように、および650Paの雪負荷に曝されるように、意図されている。この例において、パネル1は、1.5mの幅aおよび長さbを有し、2つのガラス基板2および4は、それぞれ6mmの厚みhおよび4mmの厚みhを有する。中間層の層3は構造中間層と呼ばれる層であり、その目的は、パネル1の負荷抵抗に関する許容範囲基準を満たすように、中間層のこの層の厚みhint1を決定することである。
【0047】
この種の用途において、特に注目すべきはガラス基板2および4における最大応力σmaxiであるが、これは、長時間印加される負荷の下でのガラスの静的疲労を考慮に入れた最も限定的な基準だからであり、雪負荷の場合がこれに該当する。
【0048】
下記の表1は、中間層厚を考慮に入れずに積層グレージングユニットの負荷抵抗を決定するための従来の方法に関する計算によって得られた結果を示す。伝達係数ω~の検討値は、構造中間層および雪負荷について欧州規格ドラフトprEN 13474に提示された概略値である。
【表1】

【0049】
表1より、従来の方法では、等価厚を求める際に中間層の厚みを考慮に入れないので、中間層の厚みにかかわらず、6mmの厚みを有するガラス基板2における応力が許容可能基準を超過することは明らかである。このため、従来の方法を用いると、負荷抵抗に関する許容可能基準を満たすように、積層ガラスパネルにおけるガラス厚を増加させる必要があると思われる。
【0050】
下記の表2は、それぞれ6mmの厚みhおよび4mmの厚みhを有する2つのガラス基板2および4、ならびに基板2および4の間に接合されて0.76mの厚みhint1を有する構造中間層の層3を含む、積層ガラスパネル1について、本発明による製造プロセスに関する計算によって得られた結果を示す。したがってパネル1は、それぞれ6mmおよび4mmの厚みを有する2つのガラス基板、ならびに2つの中間層板を含むので、「64−2」型のパネルである。
【表2】

【0051】
表2が示すように、積層ガラスパネルにおける中間層厚を考慮に入れて、式(VII)にしたがって伝達係数ω~を計算した結果、許容可能基準に適合する設計が得られた。
【0052】
この第一の実施形態より、本発明による製造プロセスの関連において意図されるように、積層グレージングユニットの設計において中間層厚を考慮に入れることで、負荷抵抗に関する許容可能基準に適合する積層グレージングユニットのさらに薄いガラス組成物を提供することが可能になる。
【0053】
特に図4および図5に示される第二の実施形態では、2mの幅aおよび3mの長さbを有し、0から1200Paの間の風負荷を受ける、図1に示される積層ガラスパネル1の機械的強度を確認することが目的である。パネル1の2つのガラス基板2および4の各々は、4mmの厚みhおよびhを有する。
【0054】
図4は、パネル1がガラス基板2および4の間に接合された0.76mmの厚みhint1を有する標準中間層の層3を含むときの、パネル上の印加された風負荷の関数としての、パネル1の最大撓みWmaxの変動を示す。そしてパネル1は、各々4mm厚の2つのガラス基板および2つの中間層板を含むので、「44−2」型のパネルである。図4は、実験的測定(44−2 exp)によって、積層グレージングユニットにおける中間層厚を考慮に入れずに積層グレージングユニットの負荷抵抗を決定するための従来の方法に関する計算(44−i calc)によって、および本発明による製造プロセスに関する計算(44−2 calc)によって、それぞれ得られた結果を示す。
【0055】
図5は、パネル1が、各々4mm厚のガラス基板2および4に接合された構造中間層の層3を含み、層3は1つの中間層板に対応する0.38mm、または2つの中間層板に対応する0.76mmのいずれかの厚みhint1を有するときの、パネル上の印加される風負荷の関数としての、パネル1の最大撓みWmaxの変動を示す。第一のケースでは、パネル1は「44−1」型のものであり、第二のケースでは、依然と同じ「44−2」型のものである。図5は、実験的測定(44−1 exp、44−2 exp)によって、積層グレージングユニットにおける中間層厚を考慮に入れずに積層グレージングユニットの負荷抵抗を決定するための従来の方法に関する計算(44−i calc)によって、および本発明による製造プロセスに関する計算(44−1 calc、44−2 exp)によって、それぞれ得られた結果を示す。
【0056】
図4および図5に示される結果を比較することにより、積層ガラスパネルの中間層厚を考慮に入れたおかげで、本発明による製造プロセスに関して、最大撓み予測がより正確であることが明らかである。図4および図5の例はこのように、本発明によるプロセスの付加価値を示しており、これは中間層の機械的役割により良い評価をもたらす。
【0057】
この第二の実施形態に戻ると、図6は、耐えなければならないパネル上に印加される風負荷F、およびパネルの幅/長さ比λ=a/bの両方の関数としての、「44−2」型の長方形積層ガラスパネルの最大撓みを計算するための等価厚を表す、三次元グラフを示す。この例において、積層ガラスパネルは、3mの長さを有しており、各々4mm厚の2つのガラス基板、ならびに2つの中間層板、すなわち0.76mmの厚みを有する中間層の層を含む。図6は、本発明にしたがって調整された寸法を備えるパネル(he1)、および先行技術の対応する名目パネル(he2)のそれぞれについて、パネルの負荷抵抗に関する許容可能基準に適合するために必要とされるパネルの等価厚を示す。
【0058】
本発明の関連において、「本発明による積層ガラスパネルに対応する名目積層ガラスパネル」という表現は、本発明によるパネルと同じ負荷Fに耐えられるように、しかし、たとえば上述の式(V)および(VI)を用いて、積層ガラスパネルの等価厚に基づいてパネルの負荷抵抗を表す量が計算されるが、積層ガラスパネルの等価厚はパネルの中間層の層3の厚みhint1とは無関係である、従来の製造方法によって、製造される積層ガラスパネルを意味すると理解される。
【0059】
図6は、パネルが耐えなければならないのと同じ負荷Fについて、本発明による積層ガラスパネルが、先行技術の対応する名目積層ガラスパネルの必要とされる等価厚he2以上の、必要とされる等価厚he1を有することを、明確に示している。結局、等価厚の式(III)からの結果として、パネル上の同じ印加負荷Fについて、本発明による積層ガラスパネルは、対応する名目積層ガラスパネルの中間層厚および基板厚のそれぞれよりも小さい中間層厚hintjおよび/または小さい基板厚hを有してもよく、積層ガラスパネルのその他の寸法、すなわちその幅a、その長さb、および場合により減少されていないその中間層厚およびその基板厚のいずれでも、対応する名目積層ガラスパネルの寸法と同じに維持される。
【0060】
したがって、所定の負荷に耐えられるように意図された、本発明による積層ガラスパネルの重量は、同じ所定負荷に耐えられるように意図された先行技術の対応する名目積層ガラスパネルの重量よりも軽いということになる。積層ガラスパネルが多層パネルである場合、「中間層厚」という用語は積層ガラスパネルの中間層の層の厚みの合計を意味すると理解され、「基板厚」という用語は、積層ガラスパネルのガラス機能を有する基板の厚みの合計を意味すると理解される。
【0061】
図7から図9は、先行技術の対応する名目積層ガラスパネルの等価厚と比較したときの、そしてパネル上の印加される風負荷およびパネルの幅/長さ比λ=a/bの両方の関数としての、等価厚に関する節減Δhを、それぞれ示し、
図7では、図6で検討された本発明による積層ガラスパネルに関し、
図8では、2つの構造中間層板の代わりに2つの標準中間層板を含む点においてのみ図6で検討されたパネルと異なる、本発明による積層ガラスパネルに関し、および
図9では、2つの構造中間層板の代わりに2つの音響中間層板を含む点においてのみ図6で検討されたパネルと異なる、本発明による積層ガラスパネルに関する。
【0062】
これらのグラフより、その1つまたは複数の中間層の組成物が何であれ、本発明による積層グレージングユニットの等価厚が、対応する名目積層グレージングユニットの等価厚以上であることが明らかであり、これにより、対応する名目積層グレージングユニットと比較して、所定負荷に耐えられるように意図された本発明による積層グレージングユニットの重量を減少させることを可能にする。
【0063】
当然ながら、3mの長さを有する「44−2」型の積層ガラスパネルの具体例を挙げて示されているものの、本発明による積層グレージングユニットの等価厚の増加は、その他の積層グレージングユニット、特に異なる寸法a、b、h、hintjを有する積層グレージングユニットに置き換えられることが可能である。
【0064】
上述の第一および第二の実施形態から明らかなように、本発明による製造プロセスは、最適な負荷抵抗および最適な寸法の両方を有する積層グレージングユニットを得ることを可能にする。本発明の関連において、積層グレージングユニットの最適寸法は、積層グレージングユニットの構造が、積層ガラスにおける中間層厚を考慮に入れない従来の方法を用いて製造された積層グレージングユニットのものと比較して軽量化されてもよいように、最適化されたガラス基板および中間層組成物に対応する。本発明による積層グレージングユニットの構造のこのような軽量化は、屋根用途の場合に特に有利である。
【0065】
本発明によるプロセスは、積層グレージングユニットに印加される負荷の特性時間および特性温度範囲にかかわらず、曲げにおける積層グレージングユニットの挙動が迅速に決定され得るようにする。これは、粘度分析計を用いて行われる測定に、およびWLF法によって確立される周波数/温度等価法則に基づいて、中間層の構成材料の粘弾性挙動を説明する法則が一旦決定されてしまうと、積層グレージングユニットの負荷抵抗は、解析式とともに伝達係数ω~を表す式を用いて、容易に計算されるからである。具体的には、本発明によるプロセスは、必ずしも高価な試験を行うことなく、単純な粘度分析計測定によって特性付けられた後に、新たな中間層材料の性能を容易かつ迅速に決定する可能性を、提供する。
【0066】
上述のように、本発明による製造プロセスの計算ステップを実行するための命令は、記録媒体に書き込まれてもよい。本発明によるプロセスはその後、ユーザが積層ガラス設計問題を迅速かつ確実に解決できるようにする、簡素化されたグラフィカルインターフェースに組み込まれることが可能である。
【0067】
本発明は、記載および図解された例に限定されるものではない。具体的には、本発明によるプロセスは、図10のパネル10によって示されるような、いくつかのシートを含む積層ガラスパネルを製造するために実行されてもよい。このパネル10は、ガラス機能を有する3つの基板12、14、16、および各々が2つの基板の間に接合された中間層の2つの層13、15を含む。
【0068】
これに加えて、上記の例において、積層ガラスパネルは、ガラス基板およびPVB中間層の層を含む。より一般的には、本発明によるプロセスは、特にガラスまたはプラスチックで作られた、ガラス機能を有するいずれかの種類の基板を含む積層ガラスパネルの製造に、および適切な特性を有するいずれかの粘弾性材料、特にアクリルポリマーまたはアセタール樹脂タイプの材料で作られた中間層を有する積層ガラスパネルの製造に、使用されてもよい。そうすると、伝達係数を表す式に材料のパラメータを適合させる必要がある。
【0069】
同様に、本発明は、積層ガラスパネルの製造に関して記載されてきた。しかしながら、本発明によるプロセスは、いずれかの積層グレージングユニット、具体的にはパネル形状以外の形状を有する積層グレージングユニットの製造のために実行されてもよく、すると負荷抵抗を計算するための解析式は、相応に適合されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性時間(t)範囲および特性温度(T)範囲に対応する所定負荷(F)に耐えられるように、積層グレージングユニット(1;10)を製造するためのプロセスであって、積層グレージングユニット(1;10)が、ガラス機能を有する少なくとも1つの基板(2、4;12、14、16)、およびポリマー中間層の少なくとも1つの層(3;13、15)を含み、
所定負荷(F)の特性時間および特性温度範囲にわたる中間層の構成材料の粘弾性挙動(Eint(t,T))を説明する法則が得られるステップと、
積層グレージングユニットにおける剪断伝達への中間層の寄与が伝達係数(ω~)によって表される分析モデルと、中間層のヤング率(Eint)、積層グレージングユニット上の印加負荷(F)、および積層グレージングユニットの寸法(a、b、h、hintj)の関数として伝達係数(ω~)を表す式とを用いて、前記所定負荷(F)を受ける積層グレージングユニット(1;10)の負荷抵抗を表す少なくとも1つの量の最大値(Wmax;σmax)が計算されるステップと、
積層グレージングユニット(1;10)の負荷抵抗を表す量の計算最大値(Wmax;σmax)が許容可能な最大値以下となるような方式で、積層グレージングユニット(1;10)の寸法(a、b、h、hintj)が調整されるステップと、
積層グレージングユニット(1;10)の基板(2、4;12、14、16)および中間層の層(3;13、15)が調整寸法(a、b、h、hintj)に合わせて準備および組み立てられるステップと、を含むことを特徴とする、製造プロセス。
【請求項2】
中間層の構成材料の挙動法則(Eint(t,T))を決定するために、周波数(f=1/t)および温度(T)を変化させることによって、および一定の動的変位を課すことによって、粘度分析計を用いて中間層のサンプル上でヤング率(Eint)が測定され、WLF(Williams−Landel−Ferry)法によって確立される周波数/温度等価法則が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項3】
中間層(3)の構成材料の挙動法則(Eint(t,T))が、5×10−7Hzから3×10−1Hzの間の周波数(f=1/t)範囲、および−20℃から60℃の間の温度(T)範囲にわたって決定されることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の製造プロセス。
【請求項4】
積層グレージングユニット(1;10)の負荷抵抗を表す量として、
【数1】

が成立するような積層ガラスの等価厚hef;wに基づく、積層グレージングユニット(1;10)の撓み(Wmax)、および/または
【数2】

が成立するような、積層ガラスの等価厚hef;σ;iに基づく、積層グレージングユニット(1;10)のガラス機能を有する各基板上の最大応力(σmax)が計算され、
ここでhがガラス機能を有する各基板(2、4;12、14、16)の厚みであり、
intjが中間層の各層(3;13、15)の厚みであり、
m;iが、ガラス機能を有する基板iの平均平面と積層グレージングユニット(1;10)の平均平面との間の距離である、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造プロセス。
【請求項5】
ガラス機能を有する少なくとも1つの基板およびポリマー中間層の少なくとも1つの層を含むいずれかの積層グレージングユニットに有効な、伝達係数を表す前記式(ω~=f(Eint,F,a,b,h,hintj))が:
積層グレージングユニットの中間層の構成材料の粘弾性挙動(Eint(t,T))を説明する法則が得られるステップと、
中間層の機械的特性を定義するために中間層の構成材料の挙動法則(Eint(t,T))を用いて、積層グレージングユニットの曲げにおける有限要素数値モデルが確立されるステップと、
一方では数値モデルを用いて、他方では剪断伝達への中間層の寄与が伝達係数(ω~)によって表される分析モデルを用いて、得られた結果が比較され、これらの結果が収集するまで伝達係数(ω~)の値が調整されるステップと、
中間層のヤング率(Eint)の関数としての伝達係数(ω~)の変動を表す伝達関数が、逐次代入法によって構築されるステップと、
中間層のヤング率(Eint)、積層グレージングユニット上の印加負荷(F)、および積層グレージングユニットの寸法(a、b、h、hintj)の関数として伝達係数(ω~)が表されるような方式で、伝達関数が方程式に代入されるステップと、
中間層のヤング率(Eint)、積層グレージングユニット上の印加負荷(F)、および積層グレージングユニットの寸法(a、b、h、hintj)の関数として伝達係数(ω~)を表す式のパラメータが、経験的に決定されるステップとにしたがって決定されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の製造プロセス。
【請求項6】
積層グレージングユニット(1;10)が長方形パネルであり、伝達係数を表す前記式(ω~=f(Eint,F,a,b,h,hintj))における積層グレージングユニット(1;10)の寸法がパネルの幅(a)および長さ(b)、ガラス機能を有する各基板(2、4;12、14、15)の厚み(h)、および中間層の各層(3;13、15)の厚み(hintj)であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造プロセス。
【請求項7】
データ記録媒体であって、電子計算ユニットによって命令が実行されたときに、請求項1から6のいずれか1項に記載の積層グレージングユニットを製造するプロセスの計算ステップを実行するための命令を含み、前記命令が、積層グレージングユニットにおける剪断伝達への中間層の寄与が伝達係数(ω~)によって表される分析モデルと、中間層のヤング率(Eint)、積層グレージングユニット上の印加負荷(F)、および積層グレージングユニットの寸法(a,b,h,hintj)の関数として伝達係数(ω~)を表す式とを用いて、前記所定負荷(F)を受ける積層グレージングユニット(1;10)の負荷抵抗を表す少なくとも1つの量の最大値(Wmax;σmax)を計算するための命令を含むことを特徴とする、データ記録媒体。
【請求項8】
前記命令が、前記所定負荷(F)を受ける積層グレージングユニット(1;10)の負荷抵抗を表す少なくとも1つの量の最大値(Wmax;σmax)を計算するための命令の後に、表示量(Wmax;σmax)の計算最大値がこの表示量(Wmax;σmax)の許容可能な最大値以下となるような方式で積層グレージングユニット(1;10)の寸法(a,b,h,hintj)の調整値を計算する命令を含むことを特徴とする、請求項7に記載のデータ記録媒体。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項に記載の製造プロセスによって得られる積層グレージングユニット(1;10)。
【請求項10】
ユニットに印加される所定の最大負荷(F)に対応する場所に設置されるように意図された積層グレージングユニット(1;10)であって、ガラス機能を有する少なくとも1つの基板(2、4;12、14、16)およびポリマー中間層の少なくとも1つの層(3;13、15)を含む積層グレージングユニット(1;10)において、これがそれぞれ対応する名目積層グレージングユニットの中間層厚および基板厚よりも小さい中間層厚(hintj)および/または基板厚(h)を有し、積層グレージングユニット(1;10)の別の寸法(a、b、h、hintj)が、対応する名目積層グレージングユニットのものと等しく維持されており、ここで対応する名目積層グレージングユニットが、ユニットの負荷抵抗の表示量が一体型グレージングユニットに適用可能なものと類似の式((V)、(VI))を用いて計算される基になる積層グレージングユニットの等価厚(hef;w、hef;σ;i)が中間層の層(3;13、15)の厚み(hintj)とは無関係である製造方法によって、前記所定の最大負荷(F)に耐えるように製造された積層グレージングユニットであることを特徴とする、積層グレージングユニット(1;10)。
【請求項11】
積層グレージングユニット(1;10)が、ガラス機能を有する少なくとも2つの基板(2、4;12、14、16)およびポリマー中間層の少なくとも1つの層(3;13、15)を含む建造物のグレージングユニットであり、中間層の各層(3;13、15)がガラス機能を有する2つの基板(2、4;12、14、16)の間に配置されていることを特徴とする、請求項9および10のいずれかに記載の積層グレージングユニット。
【請求項12】
積層グレージングユニット(1;10)が、ガラス機能を有する前面基板および少なくとも1つの太陽電池を含む太陽電池モジュールであり、ポリマー積層中間層の層が前面基板と太陽電池との間に挿入されていることを特徴とする、請求項9および10のいずれかに記載の積層グレージングユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−531376(P2012−531376A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518084(P2012−518084)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059270
【国際公開番号】WO2011/000862
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】