説明

積層シートおよびその製造方法

【課題】 土壌の凹凸形状に沿い易い透水性防草シートとして好適な積層シートおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 セミランダムウェブまたはパラレルウェブから得た親水性不織布と多孔質フィルムとを積層してなる通気度10〜500cc/cm・secである遮光性の積層シートを提供する。またメルトブロー不織布と、セミランダムウェブまたはパラレルウェブから得た親水性不織布とを加熱接着することを特徴とする該積層シートの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業分野に用いられるシートに関するものであり、シート上から雨や潅水によって与えられた水分をよく透水して土壌に提供する一方で、土壌の水分蒸散を抑制して
保ち、更には、雑草等の繁殖も抑えることが可能なシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業用シートは、果樹、野菜等の栽培地面に直接敷設して使用されるもので、シートの持つ遮光性により雑草の生育を抑制したり、土壌を覆うことで植物が必要とする水分の蒸散を抑えたり、シート上から降雨水を浸透して水分を補うことが可能なもの等が提案されている。これらの農業用シートには、防草性と透水性の機能を有したシートが求められており、各種提案されている(特許文献1〜2参照)。しかし、果樹・野菜を栽培する土壌には、凹凸の形状をした部分が多く存在し、その土壌への沿いにくさが問題として指摘されている。土壌への沿いが悪いと、農業用シートを敷設した上を歩行する際に足を引っ掛けたり、風によってシートが剥がれたりする場合がある。そこで、これらの問題の改善が強く求められている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−262472号公報
【特許文献2】特開平 9−248070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の背景を鑑みて、土壌の凹凸形状に沿い易い透水性防草シートとして好適な積層シートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述した課題を解決するものであって、親水性不織布と多孔質フィルムとを積層してなる積層シートであって、前記親水性不織布および/または前記多孔質フィルムの少なくともいずれかに遮光性の顔料を含み、前記親水性不織布はセミランダムウェブまたはパラレルウェブから得た不織布であって、該積層シートの通気度は10〜500cc/cm・secであることを特徴とする積層シートと、その製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、優れた透水性と適度な土壌の水分保持性を有し、且つ土壌の凹凸に沿い易いシートを得ることができる。具体的には、親水性不織布が水を効率良く裏面に浸透させ、多孔質フィルムにより一旦土壌に浸透した水の蒸散を抑制する機能を果たす。遮光性顔料により雑草の生育に必要な太陽光の透過を抑制し、不織布を構成するウェブにセミランダムウェブまたはパラレルウェブを用いることで、土壌の凹凸形状に沿い易い柔らかさと伸びを良好に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の積層シートを構成する親水性不織布は、特に制限はないが、合成繊維、天然繊維、天然の植物繊維や動物性のタンパク質などを一度溶解してから化学的に処理して繊維化した再生繊維、などのうち親水性を有するものや、繊維の表面に親水性を付与したものからなる親水性繊維または、該親水性繊維を別の繊維と混綿したものから得られる。
親水性を有する合成繊維としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂が挙げられ、水酸基を分子中に有するもの、特にモノマー単位に有するものが望ましく、分子内に均一に水酸基を有するものが更に望ましく、このような観点からポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する場合がある)系繊維が好ましい。
親水性を有する天然繊維としては、綿、絹、麻などが挙げられる。
親水性を有する再生繊維としては、レーヨン、リヨセル、キュプラ、ポリノジックなどのセルロース系繊維が挙げられる。
繊維の表面に親水性を付与する方法としては、親水性の油剤や樹脂を繊維の表面に付与する方法、繊維形成性樹脂と共に親水性樹脂を繊維化し、繊維表面の少なくとも一部を親水性樹脂で覆うようにする方法がある。親水性樹脂で繊維の表面を覆う方法によれば、親水性能の経年劣化が少ないので好ましい。繊維形成性樹脂と共に親水性樹脂を繊維化する方法は製造工程が短くなるとともに均一に高い親水性を付与できるので好ましい。特に繊維の全表面を親水性樹脂で鞘状に覆うことが親水性の高さから好ましい。
親水性を付与するときに用いる油剤としては、特に制限はないが、燐酸エステルアルカリ金属塩、プロピレングリコール、エチレングリコールブチルエーテル、ステアリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンベヘニン酸アミドなどが挙げられる。
親水性を付与するときに用いる親水性樹脂としては、特に制限はないが、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。このうちエチレン−ビニルアルコール共重合体は、ランダム共重合体が得やすいこと、共重合比率を選択しやすいことから、必要な親水性を均一に導入できるので特に好ましい。
親水性を付与する繊維の原料となる繊維形成性樹脂としては特に制限はないが、親水性が高くない繊維形成性樹脂からなる繊維の表面をより親水性の高い油剤や樹脂で親水化することを目的としていることから、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6などのポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂などが挙げられる。
親水性繊維の繊維長は特に制限はないが、20〜70mmが好ましく、特に25〜60mmであればカード通過性の観点から、均一な地合のウェブが得られやすい点で好ましく、要求によって適宜調節する。また該親水性繊維の繊度は0.5〜7.0dtexが好ましく、特に1.0〜5.0dtexであれば親水性不織布の繊維密度が積層シートとしたときの通水性や、土壌水分の保持性のバランスが得られ易いという点で好ましい。
親水性不織布を別の繊維と混綿して親水性不織布とすることで、親水性、不織布の嵩、不織布の強度などを調節できるので好ましい。別の繊維としては通常親水性繊維と混綿しやすいものが選ばれる以外に特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなるポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレートなどからなるポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6などからなるポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリウレタン系繊維などが挙げられる。ポリエステル系繊維などの疎水性繊維を用いると嵩高い親水性不織布を得やすく、積層シートとしたときの通水性や、土壌水分の保持性のバランスが得られ易いという点で好ましい。
【0008】
これら別の繊維の繊維長は特に制限はないが、20〜70mm、特に25〜60mmであればカードの通過性が良く混綿しやすいので好ましく、要求によって適宜調節する。またこれら別の繊維の繊度は0.5〜7.0dtex、特に1.0〜5.0dtexであれば積層シートとしたときの通水性や、土壌水分の保持性のバランスが得られ易いという点で好ましい。
親水性不織布は目付け15〜100g/mが好ましく、厚さ0.15〜2.00mmであることが好ましい。親水性不織布の目付けと厚さを制御することで、内部の空隙の容積を調節することができる。厚さと空隙率は通水性と土壌水分の保持性に影響を与える。これらを制御することで水の通水速度の調節ができる。
【0009】
以上の親水性繊維のうちでも、強度、耐久性、製造の容易さの観点から、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する場合がある)繊維を用いることが好ましい。
【0010】
PVA繊維の含有量としては、親水性繊維全体に対して6〜100質量%含有することが好ましく、混綿する場合には、前述の他の繊維を使用する。
【0011】
本発明に用いるPVA繊維は、PVA樹脂を含む紡糸原液を溶液紡糸、具体的には湿式紡糸、乾湿式紡糸、乾式紡糸して製造される。紡糸原液に用いる溶媒としては、PVA繊維の製造に際して従来から用いられている溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水、またはグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類、ジエチレントリアミン、ロダン塩などの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、供給性、環境負荷への影響の観点から、DMSO、水が特に好ましい。紡糸原液中の樹脂濃度は、PVA樹脂の組成や重合度、溶媒によって異なるが、6〜60質量%の範囲が一般的である。本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液にはPVA樹脂以外にも、目的に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤などの添加剤などが含まれていてもよい。
【0012】
前記した溶液紡糸により得られたPVA繊維は、結晶化度や配向度を向上させるため延伸熱処理を施してもよい。延伸熱処理条件は、一般的には210℃以上の温度、好ましくは220〜260℃の温度で行うのがよく、8倍以上の全延伸倍率、好ましくは10〜25倍の全延伸倍率で延伸すると、繊維の結晶化度と配向度が上がり、繊維の機械特性が著しく向上するので好ましい。また、該PVA繊維には、必要に応じ、耐熱水性を向上させることを目的としてPVA系繊維で一般的に行われているアセタール化処理やその他の架橋処理を施してもよい。
【0013】
該PVA繊維の断面形状は特に制限されず、例えば、丸形断面、異形断面、多角形断面などであってもよい。また、PVA繊維の単繊維繊度は特に制限されないが、不織布の機械的特性、吸水性、保水性などの観点から、0.5〜7.0dtexが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0dtexである。一方、PVA繊維の平均繊維長は、20〜70mmが好ましく、より好ましくは25〜60mmである。
【0014】
本発明に用いる親水性不織布に混綿させる疎水性繊維は、標準状態(20℃、65%RH)における公定水分率が5%未満であり、かつ融点160℃以上の繊維をいい、具体的には、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維等が挙げられるが、なかでもポリエステル系繊維、特にポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【0015】
該疎水性繊維の断面形状についても特に制限されず、例えば、丸形断面、異形断面、多角形断面、多葉形断面、中空断面、V字形、T字形、H字状、アレイ形の各種断面等であってもよい。
また、該疎水性繊維の単繊維繊度は、カード通過性や適度な不織布密度を確保する観点から、0.5〜7.0dtexが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0dtexである。一方、該疎水性繊維の平均繊維長は、20〜70mmが好ましく、より好ましくは25〜60mmである。
【0016】
疎水性の樹脂からなる繊維に親水性を付与する場合においては、親水性の繊維油剤を用いると低コストで親水性繊維が得られる点で好ましい。該疎水性繊維に用いる親水性繊維油剤としては、特に限定されないが、燐酸エステルアルカリ金属塩、プロピレングリコール、エチレングリコールブチルエーテル、ステアリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンベヘニン酸アミドなどが挙げられる。なかでも燐酸エステルアルカリ金属塩との組み合わせが好ましく、具体的には、アルキル基あるいは脂肪族エーテル基を有する燐酸のモノ、ジ、トリエステルアルカリ金属塩であり、例えば、C8〜C18のアルキル燐酸エステルアルカリ金属塩、ジエチルエーテル燐酸エステルアルカリ金属塩などが挙げられ、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。特に、C10〜C13のアルキル燐酸エステルカリウム塩が、高い耐久性が得られる点で好ましく用いられる。
【0017】
一方、本発明に用いる親水性不織布を多孔質フィルムと積層するために親水性不織布に接着性繊維を用いることができる。ここで接着性繊維とは積層時に多孔質フィルムとの接着を促進するものであればよいが、積層後、たとえば使用時には接着性が低下するものが望ましい。このような接着性繊維としては例えば熱融着性繊維が挙げられる。本発明に用いる親水性不織布を構成する熱融着性繊維の種類は特に制限されないが、融点150℃以下の低融点樹脂を一成分とする繊維を用いることが望ましく、例えば、低融点樹脂からなる単独繊維(例えば、ポリエチレン系繊維)や、高融点樹脂(ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂など)を芯成分とし、低融点樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、変性ポリエステル系樹脂)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維等が利用できる。
なかでも耐候性に優れる点から、ポリエステル系樹脂からなる熱融着性繊維が好ましく、特に芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分が変性ポリエステルである芯鞘型複合繊維を用いることが好ましい。
また、該熱融着性繊維の単繊維繊度は、カード通過性の観点から、0.5〜7.0dtexが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0dtexである。一方、平均繊維長は、20〜70mmが好ましく、より好ましくは25〜65mmである。
【0018】
本発明に用いる親水性不織布は、上記した親水性繊維を6〜100質量%用いることが好ましく20〜81質量%用いることが更に好ましく30〜55質量%用いることが更に好ましい。また疎水性繊維を30〜70質量%用いると、親水性を維持しつつ透水性が高まるので、好ましい。該疎水性繊維の割合は、例えば疎水性繊維の表面を樹脂や油材などで親水処理した親水性繊維の場合も、疎水性繊維分の質量について考慮する。すなわち親水性不織布を構成する疎水性樹脂の質量割合を考慮する。油剤を用いて親水化した場合は親水化した繊維の重さは元の疎水性繊維と殆ど同じであると解されるので、親水化処理後の繊維の重さを用いて近似できる。また親水性樹脂で表面を芯鞘状に被覆した複合繊維の場合は、断面構造の観察と比重から推察できる。また接着性繊維を15〜25質量%用いると、親水性不織布の力学強度が向上するだけでなく、多孔質フィルムとの一体化が容易となるので好ましい。該接着性繊維は上記親水性繊維および/または疎水性繊維の一部として機能させることができる。また該接着性繊維は疎水性繊維であることで、不織布の耐水性が増すので好ましい。親水性不織布として、非接着性の親水性繊維/非接着性の疎水性繊維/接着性の疎水性繊維を55:30:15〜30:45:25の割合で用いることが最も望ましい。それぞれを上記した比率とすることで、優れた透水性を確保することが可能となる。特に、防草シート等に使用した場合、透水性が低いと散水してもシート表面から流れてしまい、特に畝などで使用した場合に浸透されず、シート被覆面(地面)が水分不足となり、野菜等が枯死するおそれが生ずる。すなわち、散水した箇所にすばやく吸収される必要がある。
また、地面に吸収された水分は、適度に土壌中に保水され徐々に放湿される必要がある。放湿が生じにくいシートは、水分過多となり野菜等の根が腐るおそれがある。
本発明においては、親水性不織布として上記構成の不織布を用いることで上記課題を解決できる。
【0019】
本発明のシートを構成する多孔質フィルムは、シート上から雨や潅水によって与えられた水分をよく透水して蒸散を制御する為に、積層体の通気度をコントロールする部位である。
多孔質フィルムの原料は特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等から製造される。
本発明の積層シートの多孔質フィルムは水分の蒸散を制御するうえで、表面と裏面とが連通していることが非常に望ましい。
また本発明の多孔質フィルムは次の多孔質フィルムから得ることが望ましい。
表面に100〜760,000個/cmの孔が観察できることが好ましく、600〜380,000個/cmの孔が観察できることがさらに好ましく、3000〜30000個/cmの孔が観察できることがさらに好ましい。また表面に5mm/cm〜60mm/cmの孔が観察できることが好ましい。
また表面に観察される孔は80〜50,000μmであることが好ましく、300〜20,000μmであることが更に好ましく、1,000〜5,000μmであることが特に好ましい。
また該多孔質フィルムの厚さは0.01〜1.0mm(現物は0.3mm)の範囲であることが好ましい。
多孔質フィルムの製造方法は特に制限はないが、複数の樹脂からなるフィルムの1つを溶解などの方法で除去する方法、印刷などの方法で多孔質パターンを形成する方法、発泡剤などで多孔質を形成する方法、繊維から織布や不織布のフィルムを得る方法、繊維状に溶融した樹脂を無数に重ねてフィルム化する方法(メルトブロー法)などが挙げられる。
また親水性不織布と積層するために接着性を有することができる。ここで接着性は積層時に親水性不織布との接着を促進するものであればよいが、積層後、たとえば使用時には接着性が低下するものが望ましい。例えば種々のバインダーや熱融着性樹脂などを用いることが出来、多孔質フィルム自体が熱融着性樹脂であると、バインダーによって孔が塞がれて性能が低下することがないので、好ましい。
また該多孔性フィルムはこのようにして得た多孔質フィルムが積層した場合に元の構造が変形する場合があるが、元のフィルムの性質によって積層シートは望ましい効果を得ることができる。
多孔質フィルムには、メルトブロー法で得られるメルトブロー不織布を熱溶融処理によってフィルム化させたものを用いることが積層体の通気度のコントロールや、親水性不織布との複合処理に好適で、メルトブロー不織布は、好ましくは平均繊維径15μm以下の極細繊維からなり、目付が15〜100g/m2のメルトブロー不織布である。該メルトブロー不織布を構成する繊維の平均繊維径が15μmを超えると、通気度が高くなり、土壌の水分蒸散を抑制して保つ性能が悪くなる場合がある。
水の透水性および地面からの蒸散抑制の点から、該メルトブロー不織布を構成する繊維の平均繊維径は15μm以下であることが好ましく、2〜15μmであることがより好ましい。また、親水性不織布側より染み込んできた水分を適度に拡散して地面へ均一に透水させるという観点から、該メルトブロー不織布の目付は、5〜50g/mが好ましく、10〜30g/mがさらに好ましい。
【0020】
本発明に用いるメルトブロー不織布を構成する繊維としては、熱可塑性エラストマーよりなる極細繊維が好ましく、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエーテル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどからなる極細繊維が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系エラストマーが好ましく、特にエチレンとα−オレフィンとの共重合体からなるポリオレフィン系エラストマーが好ましく用いられる。
エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましい。
【0021】
本発明においてエチレン−α−オレフィン共重合体を用いる場合、そのメルトフローレート(MFR:ASTM D1238準拠)は、5〜200g/10分が好ましく、さらに好ましくは、10〜100g/10分である。
【0022】
特に本発明においては、エチレン−α−オレフィン共重合体として、エチレン−オクテン共重合体を用いることが水分の拡散性の点から好ましい。
【0023】
本発明に用いるメルトブロー不織布は、一列に並んだオリフィスを有するノズルから加熱溶融した樹脂を押し出し、その近傍に備わったスリットからノズルと同程度の温度に加熱された高温エアを噴出し、オリフィスから紡出された溶融樹脂と接触させることで細化し、それをノズル下方に配置した捕集面に積層しシート化することで得られる。
【0024】
また本発明の積層シートに防草性の機能を付与する為に、遮光性を有するシートとするのが望ましく、かかる点からシート全面に遮光性を有する顔料を配置することが好ましい。
シート全面に遮光性を有する顔料を配置する方法としては、例えばエマルジョン等液体バインダーに遮光性を有する顔料を添加して分散させた状態で、シート全表面にグラビアロールにて付与する方法が挙げられる。
【0025】
また、多孔質フィルムとして用いるメルトブロー不織布に、構成繊維質量に対してカーボンブラックを1〜10%含有させた原着繊維から構成される不織布を用いることが顔料の堅牢度が高くなるといった理由から好ましい。カーボンブラックの含有量が1%未満であると遮光効果が充分ではく、必要とする防草効果が得られない場合がある。一方、含有量が10%を超えるとメルトブロー紡糸が困難となる場合がある。メルトブロー紡糸性および遮光性のバランス確保の点から該カーボンブラックの含有量は3〜7%が好ましい。
【0026】
該メルトブロー不織布を構成する樹脂に添加するカーボンブラックとしては、チャネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等公知のものを使用できる。
【0027】
親水性不織布は、公知の方法により製造することができる。例えば、上記の短繊維をカーディングし、短繊維ウェブを得る。該短繊維ウェブとしては、積層シートの横方向の柔らかさと伸び性を確保する観点でパラレル、セミランダムの繊維配向が好ましい。
【0028】
上記の方法で得られる親水性不織布の目付は、15〜100g/m2が好ましく、より好ましくは20〜70g/mである。親水性不織布の目付が100g/m以上になると、積層シートの重量が重くなり、作業性の観点からあまり好ましくない。
【0029】
本発明の積層シートの製造方法は特に限定されず、上記した多孔質フィルムと親水性不織布とを良好に接着させ得る方法であればいずれでもよく、例えば、カレンダー加工法、エンボス加工法などによって製造することができる。また、ニードルパンチや水流絡合等の機械的絡合によって両者を絡合した後、熱処理を施して構成繊維を熱融着させてもよい。中でも生産性よく製造できる点から水流絡合、エンボス加工が好ましく採用される。
【0030】
エンボス加工を行う際、透水性確保等の点から、エンボス柄は連続柄ではなくポイントエンボスが望ましく、圧着面積率は5〜40%、好ましくは10〜30%がよい。圧着面積が40%を超えると透水量(速度)が劣る場合があり、逆に面積率が低すぎるとシート強度不足となる場合がある。
【0031】
このようにして得られる本発明の積層シートの目付は、30〜250g/mであることが好ましく、より好ましくは40〜150g/mである。また、本発明の積層シートは、より優れた透水性、保水性を確保する点や、シート強度が得られやすい、使用面が限定されないという利点から、多孔質フィルムの両面に親水不織布を積層した三層構造とすることが特に好ましい。
【0032】
このようにして得られる本発明の積層シートは、透水性が80%以上、蒸散性が3〜15g/日であることが好ましい。透水性が低すぎるとシート表面を水が流れてしまい必要な部分に水が染み込んでいかない場合がある。
また、蒸散性が低すぎると、水分で土が腐敗したり、地面内のガス抜けが悪く、菜果樹の根を腐らせたり生育が悪くなる場合があり、好ましくない。逆に蒸散性が高すぎると水分不足を起こす場合がある。
なお、本発明にいう透水性および蒸散性は、後述する方法により測定する。
【0033】
また、本発明の積層シートは、雑草の発芽を防止するために遮光性を有していることが望ましく、具体的には遮光率90%以上、好ましくは95%以上である。本発明にいう遮光率は、後述する方法により測定する。
【0034】
また、本発明の積層シートは土壌への沿いやすさの観点から剛軟性が130mm以下であることが好ましく、100mm以下であることが更に好ましい。
【0035】
また、本発明の積層シートは、敷設後、積層シート上を歩行することで積層シートが変形して、より土壌に沿いやすくなるといった観点から10%伸長時応力が34N/5cm以下であることが好ましく、20N/5cm以下であることが更に好ましい。
【0036】
また、本発明の積層シートはメルトブロー不織布と、セミランダムウェブまたはパラレルウェブから得た親水性不織布とを加熱接着する方法によって得ることが生産性と製品の性能の観点から最も好ましい。
【0037】
本発明の積層シートは、果樹園、野菜園等の栽培地面、畝間、通路等、特に凹凸の大きい土壌に保水と防草を目的として敷設するシートとして有用であるが、これに限定されず、朔面や住宅周囲の防草を目的とした用途にも適用することが可能である。また、本発明の積層シートは、水分の透水性、吸水性に優れ、かつ適度に水分を発散するので、上記した各種シートとして使用した際に、被覆した地面の温度変化が小さいという利点がある。
【0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、本実施例中の各物性値は以下の方法にて測定した。
【0039】
(目付、厚さ、密度)
30cm角に切り出した試料を4枚重ね、12gf/cm荷重下で測定した厚さを1/4にすることにより、試料一枚相当の厚さ(mm)を算出した。さらに同じ試料(30cm角×4枚)の質量を測定し、一枚あたりの目付(g/m)を求めた。また、目付を厚さで割った値を見かけ密度(g/cm)とした。
【0040】
(剛軟性)
JIS L1096 剛軟性A法(45°カンチレバー法)に準じ、シート横方向の剛軟性を測定した。
【0041】
(横10%伸長時応力)
JIS L1913引張り強さ及び伸び率に準じ、シート横方向に引っ張って、試料が10%伸長した時の引張り強さを測定した。
【0042】
(平均繊維径)
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織布の表面を1000倍に拡大した写真を撮影し、この写真に2本の対角線を引き、この対角線と交わった繊維の太さを倍率換算した値を用いた。そして、これら繊維の50本の平均値を平均繊維径とした。
【0043】
(多孔質フィルムの平均開孔数)
マイクロスコープを用いて、多孔質フィルム表面の孔が鮮明に観察できる倍率に拡大した写真を撮影し、この写真中の孔数を数えた。多孔質フィルム10箇所の単位面積あたりの平均値から平均開孔数を得た。
【0044】
(多孔質フィルムの平均孔径)
マイクロスコープを用いて、多孔質フィルム表面の孔が鮮明に観察できる倍率に拡大した写真を撮影し、この写真中の孔面積を得た。次に孔総面積を孔数で除し、得られた孔1個あたりの面積から、孔を正円と仮定したときの直径を算出した。多孔質フィルム10箇所の単位面積あたりの平均値から平均孔径を得た。
【0045】
(遮光性)
JIS L1906 5.10(遮光性および投光性)に準じ、遮光率(%)を測定した。なお、光源の照度は1000lxに調整した。
【0046】
(透水性)
透水性は、図1に示す方法にて測定した。
まず、30cm×62cmの格子ネット1(ネット径1mm径、孔間隔3.5cm)を地面に対し30°の角度になるよう配置した。次に、幅30cm×長さ40cmの試料2(積層シート)を格子ネット上に設置した。なお、この際、試料の真下に受槽(I)3、格子ネットと地面が接する部分の付近に受槽(II)4を設置した。
水500gを入れたビーカー5を準備し、試料の上端部より高さ3cmの位置から水を20秒間かけて流し、その後1分間放置した。
次いで、受槽(I)へ落ちた水量(透水量;g)、試料への吸水量(保水量;g)および受槽(II)へ落ちた水量、すなわち受槽(I)へ落ちず、また試料へも吸水されずに流れた水量(流れ量;g)をそれぞれ測定した。
透水量および保水量の合計を500gで除した値(%)を透水性(透水率)とした。
同様の測定を3回続けて行い、それぞれ結果を記録した。なお、各測定回の間隔は5分間とした。
透水性の値が高いほど透水性能がよいと判断した。
【0047】
(蒸散性)
500ccビーカー(口径10cm)に水300gを入れ、15cm×15cmの試料(積層シート)をビーカーの注ぎ口を覆うように被せた後、注ぎ口付近を輪ゴムで縛り、質量を測定した。
このビーカーを恒温恒湿機(タバイエスペック社製、「プラチナスレインボーPR−1S」)に入れ、40℃、湿度60%の条件下、24時間毎に質量を測定し、水分蒸発量を求めた。なお、測定時間は5日間(120時間)とし、蒸発した水分量を測定時間で除し、蒸散性とした。
蒸散性(g/日)=水分蒸発量(g)/5日
なお、ビーカーに試料を被せずに測定した場合における蒸散性は、43g/日であった。
【0048】
原料として、以下のものをそれぞれ準備した。
[繊維A]:ポリビニルアルコール繊維(クラレ社製、「クラロンK−II EQ0」)1.7dtex×38mm
[繊維B]:ポリエチレンテレフタレート繊維(耐久親水性繊維油剤使用 帝人社製、「TT04L」)1.7dtex×44mm
[繊維C]:ポリエチレンテレフタレート繊維(疎水性繊維油剤使用 帝人社製、「TT02T」)1.7dtex×51mm
[繊維D]:熱融着性繊維(芯:ポリエチレンテレフタレート/鞘:共重合ポリエステルである芯鞘型複合繊維、鞘成分融点110℃、帝人社製、「TT04C2」)2.2dtex×51mm
[繊維E]:ビスコースレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン社製 コロナ)1.7dtex×40mm
[メルトブロー不織布A]:エチレン−オクテン共重合体(ダウ・ケミカル社製、「エンゲージ」、MFR:30g/10分)を用いて平均繊維径7μm、目付20g/mのメルトブロー不織布を製造した。なお、該メルトブロー不織布の構成繊維中に3質量%含有されるよう該共重合体に顔料としてカーボンブラックを添加した。
[メルトブロー不織布B]:メルトブロー不織布Aと同条件にて目付20g/mのメルトブロー不織布を製造した。なお、該メルトブロー不織布の構成繊維中にはカーボンブラックを添加しなかった。
[バインダーA]:日本カーバイド社製アクリル系バインダー(FX−582)に東洋インキ社製、(WS−Black K−7)を質量比15:85で混合し、調合液を作成した。
【0049】
(実施例1)
ポリビニルアルコール繊維(繊維A)を40質量%、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維B)を40質量%、熱融着性繊維(繊維D)を20質量%混綿し、目付30g/mのセミランダムウェブを製造した。
次に、メルトブロー不織布(メルトブロー不織布A)の両面に、得られたウェブをそれぞれ積層した後、この積層物に水流を噴射し、絡合処理を施した。なお、水流絡合処理は、直径0.1mmのオリフィスがウェブの幅方向に間隔0.6mm毎に設けられたノズルを用い、水圧3MPa、5MPaで表裏に各々噴射し交絡させた。
絡合処理後、シリンダー乾燥機にて130℃で熱処理を行い、メルトブロー不織布を多孔質フィルム化させると同時に両面親水性不織布を積層した、本発明の積層シートを得た。
得られた積層シートから、多孔質フィルム(熱処理後のメルトブロー不織布)のみを取り出し、マイクロスコープで観察した結果、平均孔数は約13,500個/cmで、平均孔径47μmはであった。
その他の結果を表1〜3に示す。
得られた積層シートを図2に示す畝間に敷設し、4月〜6月までの3ヶ月間経過を観察した結果、土壌への沿い性は良好で、敷設範囲内に雑草生育はほとんど見られなかった。
【0050】
(実施例2)
実施例1で用いたものと同様のウェブおよび多孔質フィルムを準備し、3層積層および水流絡合処理を施した。
次に、アクリル系バインダー調合液(バインダーA)をシートの両方の全表面にグラビアロールにて3.2g/m付与した。
次いで、シリンダー乾燥機にて130℃で乾燥を行い、多孔質フィルムの両面に表面が黒色である親水性不織布を積層した、本発明の積層シートを得た。
得られた積層シートから、多孔質フィルム(熱処理後のメルトブロー不織布)のみを取り出し、マイクロスコープで観察した結果、平均孔数は約14,200個/cmで、平均孔は径51μmであった。
その他の結果を表1〜3に示す。
得られた積層シートを図2に示す畝間に敷設し、4月〜6月までの3ヶ月間経過を観察した結果、実施例1と同様に、土壌への沿い性は良好で、敷設範囲内に雑草生育はほとんど見られなかった。
【0051】
(実施例3)
ビスコースレーヨン繊維(繊維E)を40質量%、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維B)を40質量%、熱融着性繊維(繊維D)を20質量%混綿し、目付30g/mのセミランダムウェブを製造した。
次に、メルトブロー不織布(メルトブロー不織布A)の両面に、得られたウェブをそれぞれ積層した後、この積層物に水流を噴射し、絡合処理を施した。なお、水流絡合処理は、直径0.1mmのオリフィスがウェブの幅方向に間隔0.6mm毎に設けられたノズルを用い、水圧3MPa、5MPaで表裏に各々噴射し交絡させた。
絡合処理後、シリンダー乾燥機にて130℃で乾燥を行い、メルトブロー不織布の両面に親水性不織布を積層した、本発明の積層シートを得た。
得られた積層シートから、多孔質フィルム(熱処理後のメルトブロー不織布)のみを取り出し、マイクロスコープで観察した結果、平均孔数は約13,900個/cmで、平均孔は径58μmであった。その他の結果を表1〜3に示す。
得られた積層シートを図2に示す畝間に敷設し、4月〜6月までの3ヶ月間経過を観察した結果、実施例1,2と同様に、土壌への沿い性は良好で、敷設範囲内に雑草生育はほとんど見られなかった。
【0052】
(実施例4)
実施例1で用いたものと同様の原料繊維を用い、同様の混率にてセミランダムウェブを製造した後、水流を噴射し、絡合処理を施した。なお、水流絡合処理は、直径0.1mmのオリフィスがウェブの幅方向に間隔0.6mm毎に設けられたノズルを用い、水圧3MPa、5MPaで表裏に各々噴射し交絡させ、目付30g/mの水流絡合不織布を得た。
一方、実施例1で用いたメルトブロー不織布(メルトブロー不織布A)を準備し、このメルトブロー不織布の両面に得られた水流絡合不織布を積層し、積層物とした。
得られた積層物に対し、熱エンボスロール(圧着面積率26%、ポイント面積0.51cm/個、ポイント数51個/cm)を用いて、ロール温度130℃、線圧30kg/cmにて熱エンボス処理を施し、メルトブロー不織布の両面に親水性不織布を積層した、本発明の積層シートを得た。
得られた積層シートから、多孔質フィルム(熱処理後のメルトブロー不織布)のみを取り出し、マイクロスコープで観察した結果、平均孔数は約14,100個/cmで、平均孔径は50μmであった。
その他の結果を表1〜3に示す。
得られた積層シートを図2に示す畝間に敷設し、4月〜6月までの3ヶ月間経過を観察した結果、実施例1〜3と同様に、土壌への沿い性は良好で、敷設範囲内に雑草生育はほとんど見られなかった。
【0053】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維C)を80質量%、熱融着性繊維(繊維C)を20質量%混綿し、目付30g/mのセミランダムウェブを製造した。
次に、メルトブロー不織布(メルトブロー不織布A)の両面に、得られたウェブをそれぞれ積層した後、積層物に水流を噴射し、絡合処理を施した。なお、水流絡合処理は、直径0.1mmのオリフィスがウェブの幅方向に間隔0.6mm毎に設けられたノズルを用い、水圧3MPa、5MPaで表裏に各々噴射し交絡させた。
絡合処理後、シリンダー乾燥機にて130℃で乾燥を行い、積層シートを得た。
得られた積層シートから、多孔質フィルム(熱処理後のメルトブロー不織布)のみを取り出し、マイクロスコープで観察した結果、平均孔数は約13,200個/cmで、平均孔径は55μmであった。
その他の結果を表1〜3に示す。
得られた積層シートを図2に示す畝間に敷設し、4月〜6月までの3ヶ月間経過を観察した結果、潅水時や降雨時の通水性が極めて悪かった。
【0054】
(比較例2)
ポリビニルアルコール繊維(繊維A)を40質量%、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維B)を40質量%、熱融着性繊維(繊維D)を20質量%混綿し、目付80g/mのセミランダムウェブを製造した。次いで、このウェブに水流を噴射し、絡合処理を施した。なお、水流絡合処理は、直径0.1mmのオリフィスがウェブの幅方向に間隔0.6mm毎に設けられたノズルを用い、水圧3MPa、5MPaで表裏に各々噴射し交絡させた。
絡合処理後、シリンダー乾燥機にて130℃で乾燥を行い、シートを得た。結果を表1〜3に示す。
得られた積層シートを図2に示す畝間に敷設し、4月〜6月までの3ヶ月間経過を観察した結果、降雨後の土壌水分の蒸散早く、積層シートを敷設していない対照区とほとんど差が見られなかった。また、敷設後1ヶ月で雑草の生育が試験区全域に確認された。
【0055】
(比較例3)
実施例1で用いたものと同様の親水性不織布およびメルトブロー不織布を準備し、3層積層および水流絡合処理を施した。
次に、メルトブロー不織布(メルトブロー不織布B)の両面に、得られたウェブをそれぞれ積層した後、この積層物に水流を噴射し、絡合処理を施した。なお、水流絡合処理は、直径0.1mmのオリフィスがウェブの幅方向に間隔0.6mm毎に設けられたノズルを用い、水圧3MPa、5MPaで表裏に各々噴射し交絡させた。
絡合処理後、シリンダー乾燥機にて130℃で乾燥を行い、本発明の積層シートを得た。得られた積層シートから、多孔質フィルム(熱処理後のメルトブロー不織布)のみを取り出し、マイクロスコープで観察した結果、平均孔数は約13,300個/cmで、平均孔径は51μmであった。
その他の結果を表1〜3に示す。
得られた積層シートを図2に示す畝間に敷設し、4月〜6月までの3ヶ月間経過を観察した結果、敷設後1ヶ月で比較例2と同様に雑草の生育が試験区全域に確認された。
【0056】
(比較例4)
ポリビニルアルコール繊維(繊維A)を40質量%、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維B)を40質量%、熱融着性繊維(繊維D)を20質量%混綿し、目付30g/mのクロスウェブを製造した。
次に、メルトブロー不織布(メルトブロー不織布A)の両面に、得られた親水性不織布をそれぞれ積層した後、この積層物に水流を噴射し、絡合処理を施した。なお、水流絡合処理は、直径0.1mmのオリフィスがウェブの幅方向に間隔0.6mm毎に設けられたノズルを用い、水圧3MPa、5MPaで表裏に各々噴射し交絡させた。
絡合処理後、シリンダー乾燥機にて130℃で乾燥を行い、本発明の積層シートを得た。得られた積層シートから、多孔質フィルム(熱処理後のメルトブロー不織布)のみを取り出し、マイクロスコープで観察した結果、平均孔数は約14,000個/cmで、平均孔径は56μmであった。
その他の結果を表1〜3に示す。
得られた積層シートを図2に示す畝間に敷設したが、沿い性が悪かった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明における透水性を測定するための装置を示す模式図。
【図2】本発明における積層シートの評価試験を行った畝間の模式図。
【符号の説明】
【0061】
1:格子ネット
2:積層シート
3:受槽(I)
4:受槽(II)
5:ビーカー
6:積層シート
7:固定冶具
8:畝
9:農作物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性不織布と多孔質フィルムとを積層してなる積層シートであって、前記親水性不織布および/または前記多孔質フィルムの少なくともいずれかに遮光性の顔料を含み、前記親水性不織布はセミランダムウェブまたはパラレルウェブから得た不織布であって、該積層シートの通気度は10〜500cc/cm・secであることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記親水性不織布がポリビニルアルコール系繊維6〜100%含むことを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
遮光率が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
【請求項4】
前記多孔質フィルムがポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
【請求項5】
請求項1に記載の積層シートであって、多孔質フィルムの両面が前記親水性不織布と積層されてなることを特徴とする積層シート
【請求項6】
シート横方向の剛軟性が130mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
【請求項7】
シート横方向の10%伸長時応力が、34N/5cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
【請求項8】
メルトブロー不織布と、セミランダムウェブまたはパラレルウェブから得た親水性不織布とを加熱接着することを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−78477(P2009−78477A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250344(P2007−250344)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(307046545)クラレクラフレックス株式会社 (50)
【Fターム(参考)】