説明

積層セラミック電子部品

【課題】セラミックグリーンシートの積層ずれなどによる電気的特性のばらつきが生じ難く、内部電極先端における電界集中による破損等が生じ難い、積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】第1,第3の内部電極3,5が同じ高さ位置においてギャップを隔てて形成されており、異なる高さ位置において、ギャップG2を隔てて第2,第4の内部電極4,6が形成されており、第1〜第4の幅広部3b〜6bの各先端のコーナー部が、内角が鈍角である角部を有する形状あるいは丸みを帯びた形状とされており、第1,第3の幅広部3b,5b先端のコーナー部が第2の内部電極2にセラミック層を介して重なり合っておらず、第2,第4の幅広部4b,6bの先端のコーナー部が第1の内部電極3にセラミック層を介して重なり合っていない、積層セラミック電子部品1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品に関し、より詳細には、内部電極の平面形状が改良されている積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品の製造に際しては、複数層のセラミックグリーンシートを、複数の内部電極を間に介在させて積層してなるセラミック生チップを焼成することにより、セラミック積層体が得られている。内部電極と、セラミック層とは異なる材料からなる。従って、一体焼成法により得られた上記セラミック積層体では、内部電極とセラミック層との間で、デラミネーションと称されている剥離が生じることがあった。デラミネーションを防止するために、従来、内部電極のセラミック積層体外表面に引き出されている部分の幅を細くした構造が知られている。この構造では、内部電極引き出し部の上下に積層されているセラミック層同士の接合性が高められ、デラミネーションが抑制される。
【0003】
下記の特許文献1には、このような内部電極引き出し部の幅が狭くされている積層セラミックコンデンサが開示されている。図4(a),(b)は、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサにおいて、セラミック積層体内に配置されている内部電極形状を説明するための各模式的平面図である。
【0004】
図4(a)に示すように、セラミック積層体101内のある高さ位置に、第1の内部電極102が配置されている。内部電極102は、セラミック積層体101の第1の端面101aに引き出されており、かつ相対的に幅の狭い幅細部102aと、幅細部102aの先端側に連ねられており、かつ相対的に幅の広い幅広部102bとを有する。
【0005】
他方、図4(b)に示すように、第1の内部電極102とは異なる高さ位置に、第2の内部電極103が配置されている。第2の内部電極103は、第2の端面101bに引き出されている相対的に幅の狭い幅細部103aと、幅細部103aに連ねられている相対的に幅の広い幅広部103bとを有する。第1の内部電極102の幅広部102bと、第2の内部電極103の幅広部103bとがセラミック層を介して対向され、それによって静電容量が取り出されている。
【0006】
第1の内部電極102の幅広部102bの先端のコーナー部102cは丸められており、第2の内部電極103の幅広部103bの先端両側に位置するコーナー部103cも丸められている。それによって、電界集中の抑制が果たされている。
【0007】
加えて、図4(c)において、第1の内部電極102と、第2の内部電極103とが積層されている関係を模式的平面図で示すように、第1の内部電極102の上記コーナー部102cは、第2の内部電極103とセラミック層を介して重なり合わないように配置されている。より具体的には、セラミック積層体101を、下方に投影した場合、コーナー部102cと、第2の内部電極103とが重ならないように、コーナー部102cは、第2の内部電極103が設けられている部分よりも外側に位置されている。同様に、セラミック積層体101下方に投影した場合、第2の内部電極103の幅広部103bの先端のコーナー部103cもまた、第1の内部電極102の外側に位置されている。
【0008】
すなわち、電界が集中しやすい幅広部102b,103bの先端のコーナー部102c,103cは、丸められていることにより電界集中が生じ難いだけでなく、異なる電位に接続される第2の内部電極103または第1の内部電極102とセラミック層を介して重なり合わないように配置されていることによって、電界集中の抑制が図られている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサでは、第1の内部電極102と、第2の内部電極103とが交互に多数積層されるが、内部電極102の先端と、第2の端面101b側に設けられる外部電極との間の距離及び第2の内部電極103の先端と第1の端面101aを覆うように形成される外部電極との間の距離が、セラミックグリーンシートの積層ずれが生じた場合にばらつくおそれがあった。
【0010】
すなわち、上記セラミック積層体101の製造に際しては、前述したように、セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成した後、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを、内部電極同士が所定の位置関係となるように積層される。この場合、セラミックグリーンシートの積層ずれが生じると、得られたセラミック積層体101において、上記距離がばらつくおそれがあった。そのため、第1,第2の内部電極102,103間の対向面積がばらつき、容量がばらつくおそれがあった。
【0011】
他方、上記のような積層ずれによる容量ばらつきを防止する構造の一例が下記の特許文献2に開示されている。特許文献2では、第1の内部電極の先端に、所定のギャップを隔てて、第2の端面に引き出されている第1のダミー電極が設けられている。他方、第2の内部電極が形成される高さ位置では、第2の内部電極の先端と所定のギャップを隔てて、第1の端面に引き出される第2のダミー電極が形成されている。従って、上記各ギャップの距離を一定としておけば、セラミックグリーンシートの積層ずれが生じたとしても、内部電極とダミー電極との間のギャップが常に一定であるため、容量ばらつきを低減することができる。
【特許文献1】特開2004−228514号公報
【特許文献2】特開2005−216955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、特許文献1に記載の積層セラミック電子部品では、製造過程においてセラミックグリーンシートの積層ずれが生じた場合、容量などの電気的特性のばらつきが生じるという問題があった。
【0013】
他方、特許文献2に記載の積層セラミック電子部品では、上記第1,第2のダミー電極を形成することにより、積層ずれに起因する容量ばらつきを抑制することができる。
【0014】
しかしながら、特許文献2の図2及び図8等においては、上記のようなダミー電極が設けられている積層セラミックコンデンサは開示されているものの、内部電極先端両側のコーナー部が、セラミック層を介して重なり合っている他の電位に接続される内部電極と重なり合う位置に設けられているため、電界集中が生じやすく、耐圧が低くなるという問題があった。また、特許文献2の図9及び図10では、内部電極の先端のコーナー部が、他の電位に接続される内部電極とセラミック層を介して重なり合わない構成は示されているものの、ここでは、内部電極先端のコーナー部分の内角が鋭角であり、やはり電界集中が生じやすいという問題があった。
【0015】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、セラミックグリーンシートの積層ずれ等に起因する電気的特性のばらつきが生じ難いだけでなく、内部電極先端のコーナー部における電界集中が生じ難い、信頼性に優れた積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、複数のセラミック層が焼成により一体化されており、対向し合う第1の端面と第2の端面とを有するセラミック積層体と、前記セラミック積層体内に形成されており、前記第1の端面に引き出されている第1の幅細部と第1の幅細部に連ねられており、第2の端面側に位置している第1の幅広部とを有する第1の内部電極と、前記第1の内部電極と重なり合うように第1の内部電極とは異なる高さ位置に形成されており、前記第2の端面に引き出された第2の幅細部と、第2の幅細部に連ねられており、第1の端面側に位置している第2の幅広部とを有する第2の内部電極と、前記第1の内部電極と同じ高さ位置に設けられており、第1の内部電極の前記第1の幅広部の先端とギャップを隔てて対向するように設けられた第3の幅広部と、第3の幅広部に連ねられており、かつ第2の端面に引き出されている第3の幅細部とを有する第3の内部電極と、前記第2の内部電極と同じ高さ位置に設けられており、前記第2の内部電極の第2の幅広部の先端とギャップを隔てて対向するように設けられた第4の幅広部と、第4の幅広部に連ねられており、かつ第1の端面に引き出されている第4の幅細部とを有する第4の内部電極と、前記第1,第2の端面にそれぞれ設けられた第1,第2の外部電極とを備え、前記第1〜第4の幅広部の各先端のコーナー部は、内角が鈍角である角部を有する形状あるいは丸みを帯びた形状とされており、前記第1〜第4の幅広部下方に投影した際に、前記第1の幅広部先端のコーナー部及び前記第3の幅広部先端のコーナー部が前記第2の内部電極に重なっておらず、前記第2の幅広部先端のコーナー部及び前記第4の幅広部先端のコーナー部が前記第1の内部電極に重なっていないことを特徴とする、積層セラミック電子部品が提供される。
【0017】
本発明に係る積層セラミック電子部品のある特定の局面では、前記第1の内部電極と、前記第2の内部電極とがセラミック層を介して重なり合っている部分において容量が取り出され、前記第3,第4の内部電極同士がセラミック層を介して重なり合わないように配置されている。この場合には、本発明に従って、積層ずれに起因する静電容量のばらつきが生じ難く、電界集中が生じ難い積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【0018】
本発明に係る積層セラミック電子部品の他の特定の局面では、前記第1の内部電極の第1の幅広部の先端と、前記第3の内部電極の第3の幅広部先端との間のギャップ幅と、前記第2の内部電極の第2の幅広部先端と、前記第4の内部電極の第4の幅広部との先端との間のギャップ幅が等しくされている。この場合には、第1,第3の内部電極間のギャップ幅及び第2,第4の内部電極間のギャップ幅が等しくされるので、第1,第3の内部電極を有する電極パターン及び第2,第4の内部電極を有する電極パターンを共通化することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0019】
本発明に係る積層セラミック電子部品において、好ましくは、前記第1の内部電極の第1の幅細部の幅方向寸法と、前記第3の内部電極の第3の幅細部の幅方向寸法とが等しく、前記第2の内部電極と第2の幅細部の幅寸法と、前記第4の内部電極の前記第4の幅細部の幅方向寸法とが等しくされている。この場合には、第1の内部電極の幅細部と、第3の内部電極の幅細部とが連ねられたマザーの内部電極パターン、並びに第2の内部電極の幅細部と、第4の内部電極の幅細部とが連ねられたマザーの内部電極パターンを用意することにより、容易に第1,第3の内部電極及び第2,第4の内部電極を、マザーの積層体を切断することにより形成することができる。
【0020】
本発明に係る積層セラミック電子部品のさらに特定の局面では、前記高さ方向の下方位置に第1,第2の内部電極を投影した場合に、前記第1の内部電極の前記第1の幅広部先端のコーナー部が、前記第2の内部電極の幅広部よりも外側に位置しており、前記第2の内部電極の前記第2の幅広部先端のコーナー部が、前記第1の内部電極の外側に位置している。この場合には、第1の内部電極の第1の幅広部先端の両側のコーナー部が、第2の内部電極の幅広部よりも外側に位置しているため、該コーナー部が、第2の内部電極と積層方向において確実に重なり合わない。同様に、第2の内部電極の第2の幅広部先端のコーナー部が、第1の内部電極の外側に位置している場合にも、第2の幅細部先端のコーナー部と、第1の内部電極とがセラミック層を介して重なり合わない位置に確実に配置される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る積層セラミック電子部品では、第1の内部電極が形成されている位置において、第1の内部電極の第1の幅広部の先端とギャップを隔てて、第3の内部電極が設けられており、第2の内部電極が形成されている高さ位置においても、第2の内部電極の第2の幅広部とギャップを隔てて対向するように第4の内部電極が設けられており、第3,第4の内部電極が、それぞれ、第2の端面及び第1の端面に引き出されているため、セラミック積層体の製造工程において積層ずれが生じたとしても、積層ずれによる第1,第2の内部電極間の対向面的や第3,第4の内部電極間の対向面積のばらつきが生じ難い。従って、静電容量などの電気的特性のばらつきを低減することかできる。
【0022】
加えて、第1〜第4の幅広部の各先端のコーナー部は、内角が鈍角である角部を有する形状あるいは丸みを帯びた形状とされているので、該コーナー部において電界集中が生じ難い。さらに、第1,第3の幅広部先端のコーナー部が、第2の内部電極にセラミック層を介して重なっておらず、第2,第4の幅広部先端のコーナー部が、セラミック層を介して第1の内部電極に重なっていないため、それによっても、第1〜第4の幅広部の先端のコーナー部における電界集中が生じ難い。
【0023】
従って、電界集中による破壊やクラックの発生が生じ難い、信頼性に優れた積層セラミック電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサを示す正面断面図である。積層セラミックコンデンサ1は、セラミック積層体2を有する。セラミック積層体2は、チタン酸バリウム系セラミックスのような適宜の誘電体セラミックスからなる。セラミック積層体2は、対向し合う第1の端面2aと、第2の端面2bとを有する直方体状の形状を有する。セラミック積層体2内においては、第1の内部電極3と、第2の内部電極4とがセラミック層を介して重なり合うように配置されている。言い換えれば、第1の内部電極3と第2の内部電極4とは、セラミック積層体2の異なる高さ位置に形成されている。
【0026】
そして、第1の内部電極3が形成されている高さ位置において、ギャップG1を隔てて、第3の内部電極5が形成されている。同様に、第2の内部電極4が形成されている高さ位置において、第2の内部電極4の先端とギャップG2を隔てて、第4の内部電極6が形成されている。
【0027】
第1〜第4の内部電極3〜6の平面形状を、図2(a),(b)を参照して説明する。
【0028】
図2(a)は、第1の内部電極3と、第2の内部電極5とが形成されている高さ位置のセラミック積層体2の模式的平面断面図である。
【0029】
第1の内部電極3は、相対的に幅の狭い第1の幅細部3aと、相対的に幅の広い第1の幅広部3bとを有する。第1の幅細部3aの端部が第1の端面2aに引き出されている。また、第1の幅広部3bは、第1の幅細部3aの先端側に連ねられている。第1の幅細部3aと、第1の幅広部3bとが連ねられている部分においては、第1の幅細部3aから第1の幅広部3bに向かって幅方向寸法が徐々に大きくなる幅方向寸法変化部3cが設けられている。そして、第1の幅広部3bの内側先端の幅方向両側には、コーナー部3d,3eが設けられている。ここでは、コーナー部3d,3eは、矩形の1つのコーナーを切り落とすことにより設けれた形状を有し、従って、コーナー部3d,3eは、いずれも、内角が鈍角である角部A,Bを有する。
【0030】
他方、第3の内部電極5もまた、相対的に幅の狭い第3の幅細部5aと、第3の幅細部5aの内側に連ねられた相対的に幅の広い第3の幅広部5bとを有する。第3の幅細部5aは、第2の端面2bに引き出されている。第3の幅細部5aから、第3の幅広部5bに連なる部分においては、幅方向寸法が内側にいくにつれて大きくなる幅方向寸法変化部5cが設けられている。
【0031】
第3の幅広部5cにおいても、先端両側に、内角が鈍角である2つの角部C,Dを有するコーナー部5d,5eが設けられている。
【0032】
そして、第1の幅広部3bの先端と、第3の幅広部5bの先端とが、上述したギャップG1を隔てて対向されている。
【0033】
他方、図2(b)に示すように、第2の内部電極4が形成されている高さ位置においては、第2の内部電極4と、第4の内部電極6とがギャップG2を介して対向されている。第2の内部電極4は、第1の内部電極3と同様に、相対的に幅の狭い第2の幅細部4aと、相対的に幅の広い第2の幅広部4bと、両者が連ねられている部分、幅方向寸法が内側にいくにつれて大きくされている幅方向寸法変化部4cとを有する。第2の幅細部4aが、第2の端面2bに引き出されている。
【0034】
第2の内部電極4においても、第2の幅広部4bの先端の両側のコーナー部4d,4eは、内角が鈍角である2つの角部E,Fを有する。
【0035】
第4の内部電極6も、第3の内部電極5と同様に、第4の幅細部6a及び第4の幅広部6bと、幅方向寸法が内側にいくにつれて増大する幅方向寸法変化部6cとを有する。第4の幅細部6aの一端が第1の端面2aに引き出されている。また、第4の幅広部6bの先端両側のコーナー部6d,6eもまた、第3の内部電極5の場合と同様に、内角が鈍角である2つの角部H,Iを有する。
【0036】
そして、第4の内部電極の第4の幅広部6bの先端が、第2の内部電極4の第2の幅広部4bの先端とギャップG2を隔てて対向されている。
【0037】
そして、図2(c)に第1,第3の内部電極3,5と、第2,第4の内部電極4,6との積層関係を模式的平面断面図で示す。図2(c)から明らかなように、第1の内部電極3の第1の幅広部3bの先端両側の角部A,Bは、下方に位置している第2の内部電極4と重なり合わない位置に設けられている。他方、第2の内部電極4の第2の幅広部4bの先端の角部E,Fもまた、セラミック層を介して第1の内部電極3と重なり合わないように配置されている。
【0038】
言い換えれば、セラミック積層体2を上記高さ位置の基準となる高さ方向すなわち、セラミック層の積層方向において、下方に投影した場合、第1の内部電極3の角部A,Bは、第2の内部電極4に重なり合わない位置に設けられており、第2の内部電極4の角部E,Fは、第1の内部電極3と重なり合わない位置に設けられている。
【0039】
同様に、第3の内部電極5の第3の幅広部5bの先端の角部C,Dは、第2の内部電極4と重なり合わない位置に設けられており、第4の内部電極6の第4の幅広部6bの先端の角部H,Iは、第1の内部電極3と重なり合わない位置に設けられている。
【0040】
他方、図1に示すように、セラミック積層体2内においては、上記第1,第3の内部電極3,5及び第2,第4の内部電極4,6が、高さ方向すなわち、積層方向において交互に配置されている。そして、第1の端面2aを覆うように第1の外部電極7が、第2の端面2bを覆うように第2の外部電極8が形成されている。従って、第1,第2の外部電極7,8から、第1,第2の内部電極3,4間の重なり合いによる静電容量を取り出すことができる。このような積層セラミックコンデンサ1は、例えば以下の方法で得ることができる。
【0041】
図3(a)に示すように、マザーのセラミックグリーンシート12上に、複数の第1のマザーの内部電極パターン11を印刷する。マザーの内部電極パターン11は、上記第1,第3の内部電極3,5が互いの幅細部3a,5aの部分で背中合わせとなるように連ねられた平面形状を有する。すなわち、複数のマザーの内部電極パターン11が、マザーのグリーンシート12上において、整列配置されている。
【0042】
他方、図3(b)に示すように、別のマザーのセラミックグリーンシート14上に、図3(b)に示すように、第2のマザーの内部電極パターン13を印刷する。第2のマザーの内部電極パターン13は、第2,第4の内部電極4,6を、第2の幅細部4aと、第4の幅細部6aとを連ねるようにして一体化した形状を有する。複数の第2の内部電極パターン13が、図3(b)に示すように、マザーのセラミックグリーンシート14上において、最終的に第1,第2の端面2a,2bを結ぶ対向方向に沿って整列形成されている。
【0043】
マザーのセラミックグリーンシート12,14を複数枚積層し、上下に無地のマザーのセラミックグリーンシートを積層して、マザーの積層体を得る。このマザーの積層体を図3(a)の切断線J,Kに沿って切断することにより、個々の積層セラミックコンデンサ単位のセラミック生チップを得ることができる。このセラミック生チップを焼成することにより、上記セラミック積層体2を得ることができる。
【0044】
この場合、マザーのセラミック積層体を得るに際しての積層工程において、マザーのセラミックグリーンシート12,14の積層ずれが生じたとしても、第1の内部電極3と第3の内部電極5との間のギャップG1及び第2の内部電極4と第4の内部電極6との間のギャップG2の寸法は常に一定とされているため、積層ずれに起因する容量ばらつきが生じ難い。
【0045】
なお、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1では、上記ギャップG1のギャップ幅と、ギャップG2のギャップ幅とが等しくされている。従って、マザーの内部電極パターン11,13を共通化することができ、マザーの内部電極パターンの種類を少なくすることができる。
【0046】
また、第1の幅細部3aの幅方向寸法と、第3の幅細部5aの幅方向寸法とが等しくされており、第2の幅細部4aの幅方向寸法と、第4の幅細部6aの幅方向寸法とが等しくされている。従って、上記のように、第1,第3の内部電極パターンを一体化したマザーの内部電極パターン11や、第2,第4の内部電極を一体化した形状の第2のマザーの電極パターン12を容易に形成することができる。そして、マザーの内部電極パターンの形状の簡略化を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、第1〜第4の内部電極の第1〜第4の幅広部3b〜6bの先端両側のコーナー部が、内角が鈍角である2つの角部A,B〜H,Iを有する。従って、内角が鋭角である先端部分の場合に比べて、電界集中が生じ難い。
【0048】
加えて、第1〜第4の幅広部3b〜6bの先端の角部A,B〜H,Iが、それぞれ、セラミック層を介して隣接している第2の内部電極4または第1の内部電極3に重なり合わないように配置されているので、それによっても電界集中が生じ難くされている。従って、積層セラミックコンデンサ1は、電界集中によるクラックや破壊が生じ難い。
【0049】
よって、本実施形態によれば、電界集中によるクラックや破壊が生じ難い、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサ1を提供することができる。
【0050】
これを、具体的な実験に基づき説明する。
【0051】
上記セラミック積層体2として、3.2mm×2.5mm×高さ2.0mmのBaTiO系セラミックスからなるセラミック積層体を用意した。なお、第1,第2の内部電極3,4間のセラミック層の厚みは4.4μmとし、第1,第2の内部電極3,4が積層されている部分の上下のセラミック層のそれぞれの厚みは250μmとし、第1,第2の内部電極3,4間のセラミック層の数は250枚とした。また、第1,第2の内部電極3,4及び第3,第4の内部電極5,6は、Niペーストのスクリーン印刷により形成した。
【0052】
第1,第2の外部電極7,8は、Cuペーストを焼き付けて得られた焼結膜上に、Mnメッキ膜及びSiメッキ膜を順に形成することにより設けた。
【0053】
このようにして得られた上記実施形態の積層セラミックコンデンサ1を100個用意し、150℃の温度で50Vの直流電圧を一定時間印加した。上記電圧を1000時間印加した後、2000時間印加した後、及び3000時間印加した後に、それぞれ、絶縁劣化が生じていた積層セラミックコンデンサの数を求めた。その結果、1000時間経過後及び2000時間経過後のいずれにおいても、積層セラミックコンデンサにおいて、絶縁抵抗の劣化は認められなかった。また、3000時間経過後には、100個の積層セラミックコンデンサの内2個の積層セラミックコンデンサにおいて絶縁抵抗が劣化したが、劣化した積層セラミックコンデンサの内部を破断して観察したところ、内部電極コーナー部における破損は認められなかった。
【0054】
従って、上記実施形態の積層セラミックコンデンサ1によれば、電界集中による破壊が生じ難いことが裏付けられる。
【0055】
なお、上記実施形態では、内部電極3〜6の幅広部3b〜6bの先端のコーナー部は2つの角部A,B〜H,Iを有するように形成されていたが、コーナー部は、丸みを帯びた形状とされていてもよい。すなわち、図4に示した従来例の内部電極102の先端のコーナー部102cと同様に丸められた平面形状を有していてもよい。
【0056】
上記実施形態では、積層セラミックコンデンサにつき説明したが、本発明は、積層セラミックコンデンサ以外の積層型のサーミスタや積層型圧電セラミック部品などの様々な積層セラミック電子部品に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態の積層セラミックコンデンサの正面断面図。
【図2】(a)は第1,第3の内部電極が形成されている部分のセラミック積層体の模式的平面断面図であり、(b)は、第2,第4の内部電極が形成されている高さ位置のセラミック積層体の模式的平面断面図であり、(c)は、第1,第3の内部電極と第2,第4の内部電極との重なり状態を示す模式的平面図である。
【図3】(a),(b)は、それぞれ、第1,第3の内部電極を形成するための第1のマザーの電極パターンを第1のマザーのセラミックグリーンシートに印刷した状態、及び第2,第4の内部電極を形成するための第2のマザーの電極パターンを第2のセラミックグリーンシート上に印刷した状態を示す各模式的平面図。
【図4】(a)は、従来の積層セラミックコンデンサにおいてある高さ位置に形成される内部電極の平面形状を示すセラミック積層体の模式的平面断面図であり、(b)は、(a)に示した内部電極と異なる高さ位置に形成されている内部電極の形状を説明するためのセラミック積層体の模式的平面断面図であり、(c)は、(a)及び(b)に示されている内部電極間の重なり状態を説明するための模式的平面断面図。
【符号の説明】
【0058】
1…セラミック積層電子部品としての積層セラミックコンデンサ
2…セラミック積層体
2a,2b…端面
3…第1の内部電極
3a…第1の幅細部
3b…第1の幅広部
3c…幅方向寸法変化部
3d,3e…コーナー部
4…第2の内部電極
4…第2の内部電極
4a…第2の幅細部
4b…第2の幅広部
4c…幅方向寸法変化部
4d,4e…コーナー部
5…第3の内部電極
5…第3の内部電極
5a…第3の幅細部
5b…第3の幅広部
5c…幅方向寸法変化部
5d,5e…コーナー部
6…第4の内部電極
6…第4の内部電極
6a…第4の幅細部
6b…第4の幅広部
6c…幅方向寸法変化部
6d,6e…コーナー部
11…第1のマザーの電極パターン
12…第2のマザーの電極パターン
13…第1のマザーのセラミックグリーンシート
14…第2のマザーのセラミックグリーンシート
E,F…角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック層が焼成により一体化されており、対向し合う第1の端面と第2の端面とを有するセラミック積層体と、
前記セラミック積層体内に形成されており、前記第1の端面に引き出されている第1の幅細部と第1の幅細部に連ねられており、第2の端面側に位置している第1の幅広部とを有する第1の内部電極と、
前記第1の内部電極と重なり合うように第1の内部電極とは異なる高さ位置に形成されており、前記第2の端面に引き出された第2の幅細部と、第2の幅細部に連ねられており、第1の端面側に位置している第2の幅広部とを有する第2の内部電極と、
前記第1の内部電極と同じ高さ位置に設けられており、第1の内部電極の前記第1の幅広部の先端とギャップを隔てて対向するように設けられた第3の幅広部と、第3の幅広部に連ねられており、かつ第2の端面に引き出されている第3の幅細部とを有する第3の内部電極と、
前記第2の内部電極と同じ高さ位置に設けられており、前記第2の内部電極の第2の幅広部の先端とギャップを隔てて対向するように設けられた第4の幅広部と、第4の幅広部に連ねられており、かつ第1の端面に引き出されている第4の幅細部とを有する第4の内部電極と、
前記第1,第2の端面にそれぞれ設けられた第1,第2の外部電極とを備え、
前記第1〜第4の幅広部の各先端のコーナー部は、内角が鈍角である角部を有する形状あるいは丸みを帯びた形状とされており、
前記第1〜第4の幅広部下方に投影した際に、
前記第1の幅広部先端のコーナー部及び前記第3の幅広部先端のコーナー部が前記第2の内部電極に重なっておらず、
前記第2の幅広部先端のコーナー部及び前記第4の幅広部先端のコーナー部が前記第1の内部電極に重なっていないことを特徴とする、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1の内部電極と、前記第2の内部電極とがセラミック層を介して重なり合っている部分において容量が取り出され、前記第3,第4の内部電極同士がセラミック層を介して重なり合わないように配置されている、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1の内部電極の第1の幅広部の先端と、前記第3の内部電極の第3の幅広部先端との間のギャップ幅と、前記第2の内部電極の第2の幅広部先端と、前記第4の内部電極の第4の幅広部との先端との間のギャップ幅が等しくされている、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1の内部電極の第1の幅細部の幅方向寸法と、前記第3の内部電極の第3の幅細部の幅方向寸法とが等しく、前記第2の内部電極と第2の幅細部の幅寸法と、前記第4の内部電極の前記第4の幅細部の幅方向寸法とが等しくされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記高さ方向の下方位置に第1,第2の内部電極を投影した場合に、前記第1の内部電極の前記第1の幅広部先端のコーナー部が、前記第2の内部電極の幅広部よりも外側に位置しており、前記第2の内部電極の前記第2の幅広部先端のコーナー部が、前記第1の内部電極の外側に位置している、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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