説明

積層フィルムコンデンサの製造方法

【課題】積層フィルムコンデンサを効率よく的確に製造することを可能とし、かつ、コンデンサ素子の切断面における金属膜の絶縁距離を充分に確保してコンデンサの耐電圧を高める。
【解決手段】フィルム膜の片面に金属膜が蒸着された金属化フィルム10を積層してコンデンサ素子を成形する積層フィルムコンデンサの製造方法であって、外形が多角形状のドラム20の外周に金属化フィルムを連続して巻取るとともに、このドラム20における多角形の頂点を含む所定の範囲内に位置する金属化フィルムにバーンオフ処理を行って金属膜を除去した後、このバーンオフ処理によって金属膜が除去された範囲内で金属化フィルムを切断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム膜に金属膜が蒸着された金属化フィルムを積層することでコンデンサ素子を成形する積層フィルムコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ素子の成形は、金属化フィルムを所定の寸法に切断し、この切断された複数枚の金属化フィルムを積層しているのが一般的である。また、金属化フィルムを先に積層しておき、これを所定の寸法に切断してコンデンサ素子を成形する技術も知られている(特許文献1)。いずれにしても、コンデンサ素子の切断面では、金属化フィルムの切断時に金属膜が回り込んで露出し、積層された金属化フィルムの金属膜同士が電気的に短絡しやすい状態となる。このことが、コンデンサの耐電圧を低下させる原因になっている。
この対策としては、コンデンサ素子の切断面に位置する金属膜の端部を除去するための処理が必要であり、特許文献1の技術ではコンデンサ素子の切断面にプラズマによるエッチング処理を行うことで、この切断面に位置する金属膜の端部を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2742818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に開示されている技術では、金属化フィルムを積層して切断する作業と、エッチング処理によって成形後のコンデンサ素子の切断面に位置する金属膜の端部を除去する作業とが個別に行われるため、積層フィルムコンデンサの製造効率がわるい。また、積層された金属化フィルムを切断した後にエッチング処理を行っていることから、希望どおりに金属膜が除去されない場合があり、金属膜の絶縁距離が充分に確保されないことになる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、積層フィルムコンデンサを効率よく的確に製造することを可能とし、かつ、コンデンサ素子の切断面における金属膜の絶縁距離を充分に確保してコンデンサの耐電圧を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
フィルム膜の片面に金属膜が蒸着された金属化フィルムを積層してコンデンサ素子を成形する積層フィルムコンデンサの製造方法であって、外形が多角形状のドラムの外周に金属化フィルムを連続して巻取るとともに、このドラムにおける多角形の頂点を含む所定の範囲内に位置する金属化フィルムにバーンオフ処理を行って金属膜を除去した後、このバーンオフ処理によって金属膜が除去された範囲内で金属化フィルムを切断することを特徴とする。
【0007】
より好ましくは、外形が正多角形状のドラムを使用してその外周に金属化フィルムを連続して巻取ることである。
さらに好ましくは、ドラムの外周における複数の箇所に対し、それぞれ金属化フィルムを個別に送り込んで巻取ることである。
さらに好ましくは、バーンオフ処理を行った後の金属化フィルムを、ドラムに巻取られた状態のままで切断することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、金属化フィルムをドラムの外周に連続して巻取るとともに、所定の範囲内に位置する部分の金属膜をバーンオフ処理によって除去することにより、金属化フィルムの積層とバーンオフ処理とを併行して行うことができる。この結果、積層フィルムコンデンサを効率よく製造することができる。
特に、ドラムの外周に巻取られた金属化フィルムにおいて、ドラムの多角形の頂点を含む所定の範囲内に位置する部分の金属膜を除去した後に、同じくその範囲内で金属化フィルムを切断してその部分を取り除くことにより、ドラムの平坦な外周に積層された金属化フィルムだけでコンデンサ素子を成形することができる。
また、金属化フィルムにバーンオフ処理を行った後に切断するため、コンデンサ素子の切断面における金属膜の絶縁距離が充分に確保され、コンデンサとしての耐電圧を高めることができる。
【0009】
さらに、正多角形状のドラムに金属化フィルムを巻取ることにより、このドラムの平坦な外周に積層された金属化フィルムで成形されるコンデンサ素子の切断面間の寸法が均等に揃えられる。また、金属化フィルムのバーンオフ処理の位置がずれることなく正確に重なり、その後の切断作業も容易となる。
【0010】
また、ドラムの外周における複数の箇所にそれぞれ金属化フィルムを送り込んで巻取ることにより、金属化フィルムの積層が効率よく行われ、結果としてコンデンサ素子を成形するためのサイクルタイムが短縮される。
しかも、バーンオフ処理後の金属化フィルムをドラムに巻取られた状態のままで切断することにより、これまでのように金属膜を除去する処理と金属化フィルムを切断する作業とが別工程で行われていたのと異なり、工程間での金属化フィルムの品質管理が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】積層フィルムコンデンサを表した斜視図。
【図2】一般的なコンデンサ素子の成形工程を表した説明図。
【図3】コンデンサ素子を表した正面図。
【図4】ロール状に巻かれた金属化フィルムを表した斜視図。
【図5】金属化フィルムを積層しながらバーンオフ処理を行う装置を表した正面図。
【図6】図5の一部を表した斜視図。
【図7】図5のドラム外周に積層される金属化フィルムを誇張して表した説明図。
【図8】図5の変更例を表した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1に示されている積層フィルムコンデンサは、複数枚の金属化フィルム10を積層することで成形されたコンデンサ素子12を主体として構成されている。個々の金属化フィルム10は、ポリプロピレン等の樹脂材からなる誘電体としてのフィルム膜10Aと、その表面に蒸着された金属膜10Bとからなっている。
コンデンサ素子12の上下面は保護フィルム14で被われており、またコンデンサ素子12の左右両側面には電極16がそれぞれ設けられている。これらの電極16は、コンデンサ素子12の両側面に対する金属溶射(メタリコン)によって成形される。
【0013】
コンデンサ素子12の一般的な成形工程は、図2で示すように帯状に連続する金属化フィルム10を例えば二枚重ね状態で所定の製品寸法に順次切断した後、それらを積層している。このため、積層された各金属化フィルム10の金属膜10Bは、それぞれのフィルム膜10Aを介在した配置になる(図1、図3)。
コンデンサ素子12において、電極16がそれぞれ成形される図1の左右両側面(以下「メタリコン面12a」と称する)では、積層された各金属化フィルム10の金属膜10Bが左右の電極16に対して交互に電気接続されている(図1)。電極16に接続されない側の金属膜10Bの端部は、後述する金属化フィルム10における金属膜10Bの余白部13(インサイドマージン)によるものである。
【0014】
コンデンサ素子12において、金属化フィルム10の切断面が積層された図3の左右両側面(以下「積層切断面12b」と称する)では、各層の金属膜10Bの端部がそれぞれ除去されて積層切断面12bから後退した位置で止められている。これは、後述の金属膜10Bに対するバーンオフ処理によるものである。
なお、コンデンサ素子12のメタリコン面12aに金属溶射による電極16が成形された後は、エイジング工程に移される。エイジング工程においては、積層された金属化フィルム10を一定圧で加圧した状態に保持し、金属化フィルム10の密着性を高め、あるいは金属化フィルム10の相互間にある空気中の水分を除去する等の処理が行われる。
【0015】
帯状に連続した金属化フィルム10は図4で示すようにロール状に巻かれており、フィルム膜10Aの幅方向に関する片側の縁寄りに所定幅の余白部13を残して金属膜10Bが蒸着されている。このようなロール状の金属化フィルム10を二つ準備し、それぞれの余白部13が互いに反対側に位置するように重ね、これを所定寸法に切断して積層することにより、図2で示すコンデンサ素子12となる。そして、コンデンサ素子12のメタリコン面12aでは、各層の金属膜10Bが左右の電極16に対して交互に電気接続される状態となる。
図4で示す金属化フィルム10を準備する作業の一例としては、図4で示すフィルム膜10Aの2倍の幅をもつ既製フィルム膜を一方向へ送りながら、幅方向の両側に余白を残して金属溶射を行った後、フィルム幅の中央で二つに分断してそれぞれを個別に巻取る。これにより、図4で示すロール状の金属化フィルム10が二つ準備されたことになる。
【0016】
つづいて、ロール状に巻かれた金属化フィルム10を積層しながらバーンオフ処理を行うための手段について説明する。
まず、図5で示す第1供給部22および第2供給部23に、図4で示すロール状の金属化フィルム10をそれぞれセットする。これらの両供給部22,23から繰り出された個々の金属化フィルム10は、それぞれの中間ローラ22a,23aによって送り方向を調整して巻取り用のドラム20の外周にそれぞれ導かれる。また、両供給部22,23は、それぞれの金属化フィルム10をドラム20の外周に押付けながら適正に巻取るための中間ローラ22b,23bを備えている。そして、これらの中間ローラ22b,23bは、金属化フィルム10をドラム20の外周に押付ける方向への付勢力が付与されている。なお、これらの金属化フィルム10は、例えば個々の繰り出し端部側に所定長さの予備代をとってドラム20の外周に数回巻付けておくことにより、その後の巻取りが適正に行われる。
そして、
【0017】
ドラム20はその外形が正多角形状(正六角形状)をしており、その外周の相対向する箇所において第1供給部22および第2供給部23から繰り出された金属化フィルム10が巻取られるように設定されている。また、これらの金属化フィルム10は、それぞれの金属膜10Bを表面側とし、かつ、それぞれの余白部13を互いに反対側に位置させた状態でドラム20に巻取られる。
なお、ドラム20の外形は六角形状に限るものではなく、かつ必ずしも正多角形状でなくてもよい。
【0018】
ドラム20において、第1供給部22および第2供給部23からの金属化フィルム10が巻取られる箇所の下流側には、バーンオフ処理を行うための第1電極26および第2電極27が配置されている。両電極26,27は、所定の距離を隔てて配置されたプラス電極26a,27aとマイナス電極26b,27bとを個々に備えている。これらのプラス電極26a,27aとマイナス電極26b,27bとの間の通電により、それぞれのマイナス電極26b,27bが接触している箇所において、金属化フィルム10の金属膜10Bが溶融除去される。
【0019】
ドラム20を軸心回りに図5の矢印方向へ連続的に回転させることにより、第1供給部22および第2供給部23から繰り出される金属化フィルム10がドラム20の外周面に巻取られる。これと併行して第1電極26および第2電極27におけるプラス電極26a,27aとマイナス電極26b,27bとの間の通電が所定のタイミングで行われる。これにより、両供給部22,23から繰り出されてドラム20の外周に巻取られている金属化フィルム10には、このドラム20における多角形の頂点を含む所定の範囲でバーンオフ処理が順次行われ、その範囲で金属膜10Bが溶融除去される。図7に示されている各除去範囲Sが、バーンオフ処理によって金属膜10Bが溶融除去された箇所である。
なお、図7はバーンオフ処理の状態を明瞭に示す目的で金属化フィルム10の厚みを誇張して表しているが、実際の金属化フィルム10の厚みは薄いことから、ドラム20の外周に倣った六角形状に近い形状で巻取られる。
【0020】
第1電極26を例にとってバーンオフのタイミング設定の一手段を説明すると、図6で示す制御装置28には、光センサ29からの検出信号が送信されるようになっている。この光センサ29は、ドラム20の外周に沿って一定の間隔で設けられた複数の投光部21からの光を一定のタイミングで検出する。制御装置28は、光センサ29からの検出信号に基づき、第1電極26のプラス電極26aとマイナス電極26bとの間の通電を実行して金属化フィルム10に対するバーンオフを行う。したがって、金属化フィルム10の金属膜10Bが除去される除去範囲Sの長さ、あるいは除去範囲Sの開始点と終了点とは、主として制御装置28によるプラス電極26aとマイナス電極26bとの間の通電時間、あるいは通電のタイミングによって調整することができる。
図6では図示が省略されている第2電極27についても、それ専用の制御装置と光センサを用いて上記と同様にバーンオフのタイミングが設定される。
【0021】
バーンオフ処理によって金属膜10Bが溶融除去された各除去範囲Sは、ドラム20における多角形の頂点を含むその前後の範囲となっている。これらの除去範囲Sは、金属化フィルム10に角が生じており、コンデンサ素子12としては使用できない部分であることから、次工程における金属化フィルム10の切断によって取り除くことが予定されている箇所である。そして、各除去範囲Sを切断して取り除いた後は、ドラム20の平坦な外周に積層された平坦な金属化フィルム10のみによってコンデンサ素子12が成形されることになる。
【0022】
このように、第1供給部22および第2供給部23から繰り出される個々の金属化フィルム10は、バーンオフ処理による除去範囲Sの位置がずれることなく重なった状態でドラム20に巻取られる。つまり、金属化フィルム10の積層とバーンオフ処理とが併行して行われる。そして、金属化フィルム10がドラム20の外周に所定の積層状態まで巻取られたら、この金属化フィルム10をドラム20に巻取られたままで、あるいはドラム20から外した後、各除去範囲Sの箇所においてレーザーカット等で切断してコンデンサ素子12を成形する。この結果、コンデンサ素子12は前記のようにドラム20の平坦な外周に積層された金属化フィルム10だけで成形される。
また、積層された金属化フィルム10を各除去範囲Sの箇所において切断することにより、コンデンサ素子12の積層切断面12bにおける金属膜10Bの絶縁距離が充分に確保される。なお、バーニング処理の前に金属化フィルム10を切断して積層した場合には、積層切断面12bに金属膜10Bが回り込んでバリのように露出することがあり、その後のバーニング処理が困難になるが、そのような不具合も回避できる。
【0023】
図5〜図7で示す構成は、2方向から繰り出される金属化フィルム10をドラム20に巻取って積層しているが、図8で示すようにドラム20に巻取られる金属化フィルム10を4方向から繰り出すことも可能である。図8では第1供給部22、第2供給部23に加えて第3供給部30および第4供給部31にもロール状の金属化フィルム10がセットされる。これらの第3供給部30および第4供給部31から繰り出された金属化フィルム10においても、それぞれの中間ローラ30a,31aよって送り方向を調整して巻取り用のドラム20の外周にそれぞれ導かれる。また、第3供給部30および第4供給部31についても、それぞれの金属化フィルム10をドラム20の外周に押付けながら適正に巻取るための中間ローラ30b,31bを備えている。
なお、第1供給部22〜第4供給部31から繰り出される金属化フィルム10は、それぞれの金属膜10Bの余白部13が第1供給部22、第3供給部30、第2供給部23、第4供給部31の順で交互に反対側に位置した状態でドラム20に巻取られる。
【0024】
図8においては、第1電極26および第2電極27に加えて、第3供給部30および第4供給部31から繰り出される金属化フィルム10にバーンオフ処理を行うための第3電極34および第4電極35が配置されている。これらの両電極34,35においても、所定の距離を隔てて配置されたプラス電極34a,35aとマイナス電極34b,35bとを個々に備えている。これらのプラス電極34a,35aとマイナス電極34b,35bとの間の通電により、それぞれのマイナス電極34b,35bが接触している箇所において、金属化フィルム10の金属膜10Bが溶融除去される。
【0025】
図8で示す構成では、4枚の金属化フィルム10がそれぞれドラム20に巻取られ、金属化フィルム10の積層とバーンオフ処理とが併行して行われる。したがって、これらの作業が図5〜図7で示す場合よりも2倍の効率で行われる。そして、積層状態の金属化フィルム10がバーンオフ処理の箇所、つまり図7の各除去範囲Sと同じ箇所で切断されるのも前述の場合と同じであり、これによってドラム20の平坦な外周に積層された金属化フィルム10だけでコンデンサ素子12が成形される。
【符号の説明】
【0026】
10 金属化フィルム
10A フィルム膜
10B 金属膜
12 コンデンサ素子
20 多角形状のドラム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム膜の片面に金属膜が蒸着された金属化フィルムを積層してコンデンサ素子を成形する積層フィルムコンデンサの製造方法であって、
外形が多角形状のドラムの外周に金属化フィルムを連続して巻取るとともに、このドラムにおける多角形の頂点を含む所定の範囲内に位置する金属化フィルムにバーンオフ処理を行って金属膜を除去した後、このバーンオフ処理によって金属膜が除去された範囲内で金属化フィルムを切断することを特徴とした積層フィルムコンデンサの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された積層フィルムコンデンサの製造方法であって、
外形が正多角形状のドラムを使用してその外周に金属化フィルムを連続して巻取ることを特徴とした積層フィルムコンデンサの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された積層フィルムコンデンサの製造方法であって、
ドラムの外周における複数の箇所に対し、それぞれ金属化フィルムを個別に送り込んで巻取ることを特徴とした積層フィルムコンデンサの製造方法。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載された積層フィルムコンデンサの製造方法であって、
バーンオフ処理を行った後の金属化フィルムを、ドラムに巻取られた状態のままで切断することを特徴とした積層フィルムコンデンサの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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