説明

積層フィルム

【課題】実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、安定して製膜することができ、紫外線による劣化(黄変)が抑制され、熱による変形が少ない、液晶ディスプレイや内照式電飾看板用の反射板基材として好適に用いることのできる、白色の積層フィルムを提供する。
【解決手段】平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子31〜60重量%を含むポリエステルからなる層Aと、このA層に接し平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子1〜30重量%を含むポリエステルからなる層Bからなり、A層を最外層として光を反射する用途に用いる積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関し、詳しくは、高い反射率を備えかつ耐光性および耐熱性に優れる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイにおいて従来、ディスプレイの背面からライトを当てるバックライト方式が採用されていたが、近年、特開昭63−62104号公報に示されるようなサイドライト方式が、薄型で均一に照明できるメリットから、広く用いられるようになっている。このサイドライト方式では背面に反射板を設置するが、この反射板には光の高い反射性および高い拡散性が要求される。
【0003】
側面もしくは背面から直接当てるライトとして用いられる光源の冷陰極管からは紫外線が発生するため、液晶ディスプレイの使用時間が長くなると、反射板のフィルムが紫外線によって劣化し、画面の輝度が低下する。また、近年、液晶ディスプレイの大画面化と高輝度化が強く求められ、光源から発せられる熱量が増大し、熱によるフィルムの変形を抑制することが必要になってきた。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−62104号公報
【特許文献2】特公平8−16175号公報
【特許文献3】特開2004−50479号公報
【特許文献4】特開2004−330727号公報
【特許文献5】特開2005−125700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決することを課題とし、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、安定して製膜することができ、紫外線による劣化(黄変)が抑制され、熱による変形が少ない、液晶ディスプレイや内照式電飾看板用の反射板基材として好適に用いることのできる、白色の積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術においては反射を担う層Aは中間層に使用される構成体であり、反射表面には多量の不活性粒子を含んだ層を設定しないのが通常であったが、発明者は鋭意検討の結果、層Aに反射性能はもちろんのこと、紫外線による劣化(黄変)を防ぐ効果もあることを見出し本発明にいたった。
【0007】
すなわち本発明は、平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子31〜60重量%を含むポリエステル組成物の層Aと、この層Aに接し平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子1〜30重量%を含むポリエステル組成物の層Bからなり、層Aで光を反射する用途に用いる積層フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、安定して製膜することができ、紫外線による劣化(黄変)が抑制され、熱による変形が少ない、液晶ディスプレイや内照式電飾看板用の反射板基材として好適に用いることのできる、白色の積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、層Aとこの層Aに接する層Bから構成される。
層Aは、平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子31〜60重量%を含むポリエステル組成物からなる。層Bは、このA層に接し、平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子1〜30重量%を含むポリエステル組成物からなる。
【0010】
[ポリエステル]
層Aおよび層Bのポリエステル組成物を構成するポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートといった公知のポリエステルを用いることができる。特に耐熱性の観点から、層Aおよび層Bのポリエステル組成物を構成するポリエステルは、ポリマーTgが80〜125℃であることが好ましい。
【0011】
層Aのポリエステルとしては、好ましくはジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むものを用いる。このポリエステルは、ナフタレンジカルボン酸成分を好ましくは1〜100モル%、さらに好ましくは3〜99モル%、特に好ましくは8〜98モル%含み、テレフタル酸成分を好ましくは0〜99モル%、さらに好ましくは1〜97モル%、特に好ましくは2〜92モル%含み、エチレングリコールを主たるジオール成分としてなる。主たる成分とは例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上の成分をいう。ナフタレンジカルボン酸成分が1モル%未満であると耐熱性が向上しなかったり、延伸性が確保できないことがあり好ましくない。また、テレフタル酸が99モル%を超えると耐熱性確保が難しくなり好ましくない。
【0012】
層Bのポリエステルとしては、好ましくはジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸およびテレフタル酸を含むものを用いる。このポリエステルは、ナフタレンジカルボン酸を好ましくは3〜20モル%、さらに好ましくは4〜18モル%、特に好ましくは8〜15モル%含み、テレフタル酸成分を好ましくはテレフタル酸80〜97モル%、さらに好ましくは82〜96モル%、特に好ましくは85〜92モル%含む。ナフタレンジカルボン酸成分が3モル%未満であると製膜性が確保できず好ましくなく、20モル%を超えると耐熱性や製膜性が劣る可能性あり好ましくない。また、テレフタル酸成分が80モル%未満であると製膜性が劣る可能性が出てくるので好ましくなく、99モル%を超えると耐熱性が劣る可能性が生じてくるので好ましくない。
【0013】
なお、層Aのポリエステルは、好ましくはアンチモン元素を実質的に含有しない。実質的に含有しないとは、含有量が20ppm以下、好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下をいう。アンチモン元素を実質低に含有すると白色フィルムの場合、黒く筋状に見え、フィルム外観を著しく損なってしまい好ましくない。
【0014】
アンチモン元素を実質的に含有しないポリエステルを得るためには、ポリエステルをアンチモン化合物以外の触媒を用いて重合する。ポリエステルの重合に使用する触媒としては、マンガン(Mn)化合物、チタン(Ti)化合物、ゲルマニウム(Ge)化合物のいずれかを用いることが好ましい。チタン化合物としては、例えば、チタンテトラブトキシド、酢酸チタンを用いることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば、無定形酸化ゲルマニウム、微細な結晶性酸化ゲルマニウム、酸化ゲルマニウムをアルカリ金属またはアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在化にグリコールに溶解した溶液、酸化ゲルマニウムを水に溶解した溶液を用いることができる。
【0015】
[不活性粒子]
層Aの組成物は不活性粒子を31〜60重量%含有する。31重量%未満であると反射率が低下したり、紫外線に因る劣化が激しくなったり、60重量%を超えるとフィルムが破れやすくなる。また、層Bの組成物は不活性粒子を1〜30重量%含有する。1重量%未満であると滑り性が確保できず、30重量%を超えると非常に破れやすいフィルムとなる。
【0016】
層Aおよび層Bの不活性粒子は、その平均粒径がいずれも0.3〜3.0μm、好ましくは0.4〜2.5μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmである。平均粒径が0.3μm未満であると分散性が極端に悪くなり、粒子の凝集が起こるため生産工程上のトラブルが発生し易く、フィルムに粗大突起を形成し、光沢の劣ったフィルムになったり、溶融押出し時に用いられるフィルターが粗大粒子により目詰まりを生じさせる可能性がある。平均粒径が3.0μmを超えるとフィルムの表面が粗くなり光沢が低下するばかりか、適切な範囲に光沢度をコントロールすることが困難となる。なお、不活性粒子の粒度分布の半値幅は、好ましくは0.3〜3.0μm、さらに好ましくは0.3〜2.5μmである。
【0017】
不活性粒子としては、高い反射性能を得る観点から、好ましくは白色顔料を用いる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素、特に好ましくは、硫酸バリウムを用いる。この硫酸バリウムは板状、球状いずれの粒子形状でもよい。硫酸バリウムを用いることで一層良好な反射率を得ることができる。
【0018】
不活性粒子として、酸化チタンを用いる場合、好ましくはルチル型酸化チタンを用いる。ルチル型酸化チタンを用いると、アナターゼ型酸化チタンを用いた場合よりも、光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が少なく、色差の変化を抑制することができるので好ましい。このルチル型酸化チタンは、ステアリン酸等の脂肪酸およびその誘導体等を用いて処理して用いると、分散性を向上させることができ、フィルムの光沢度を一層向上させることができるので好ましい。
【0019】
なお、ルチル型酸化チタンを用いる場合には、ポリエステルに添加する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去を行うことが好ましい。精製プロセスの工業的手段としては、粉砕手段としては、例えばジェットミル、ボールミルを適用することができ、分級手段としては、例えば乾式もしくは湿式の遠心分離を適用することができる。これらの手段は2種以上を組み合わせ、段階的に精製しても良い。
【0020】
不活性粒子をポリエステルに含有させる方法としては、下記のいずれかの方法をとることが好ましい。
(ア)ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に添加、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法。
(イ)ポリエステルに添加し、溶融混練する方法。
(ウ)上記(ア)または(イ)の方法において不活性粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これらと添加剤を含有しないポリエステルとを混練して所定量の添加物を含有させる方法。
(エ)上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
【0021】
なお、前記(ア)のポリエステル合成時に添加する方法を用いる場合には、酸化チタンにおいてはグリコールに分散したスラリーとして、反応系に添加することが好ましい。
特に上記(ウ)または(エ)の方法をとることが好ましい。
【0022】
本発明では、製膜時のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き20〜50μmの不織布型フィルターを用い、溶融ポリマーを濾過することが好ましい。この濾過を行なうことにより、一般的には凝集して粗大凝集粒子となやすい粒子の凝集を抑えて、粗大異物の少ないフィルムを得ることができる。
【0023】
層Aおよび層Bのトータルの重量100重量%あたりの不活性粒子の割合は、好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは15〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%、特に好ましくは25〜55重量%である。フィルムあたり不活性粒子の含有量が10重量%未満であると必要な反射率や白度が得られず、不活性粒子の含有量が80重量%を超えると製膜時に切断が発生しやすく好ましくない。
【0024】
[添加剤]
本発明の積層フィルムには、蛍光増白剤を配合してもよい。蛍光増白剤を配合する場合、層Aまたは層Bのポリエステル組成物に対する濃度として、例えば0.005〜0.2重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%の範囲で配合するといよい。蛍光増白剤の添加量が0.005重量%未満では350nm付近の波長域の反射率が十分でないので添加する意味が乏しく、0.2重量%を越えると、蛍光増白剤の持つ特有の色が現れてしまうため好ましくない。
【0025】
蛍光増白剤としては、例えばOB−1(イーストマン社製)、Uvitex−MD(チバガイギー社製)、JP−Conc(日本化学工業所製)を用いることができる。
また、必要に応じて更に性能を上げるために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤等を有する塗剤を本フィルムの少なくとも片面に塗布することもできる。
【0026】
層Aの厚みは、積層フィルムの層Aおよび層Bの合計厚み100あたり、好ましくは40〜90、さらに好ましくは50〜85である。40未満であると反射率が劣る可能性があり好ましくなく、90を超えると延伸性の観点から好ましくない。
【0027】
フィルムの片面または両面に、他の機能を付与するために、他の層をさらに積層した積層体としてもよい。ここでいう他の層としては、例えば透明なポリエステル樹脂層、金属薄膜やハードコート層、インク受容層を例示することができる。
【0028】
[製造方法]
以下、本発明の積層フィルムを製造する方法の例として、層A/層B/層Aの積層フィルムの製造方法の一例を説明する。ダイから溶融したポリマーをフィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸シートを製造する。すなわち層Aを形成するポリマーの溶融物と層Bを形成するポリマーの溶融物を、フィードブロックを用いて例えば層A/層B/層Aとなるように積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。
【0029】
ダイより押出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。この未延伸状フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)以上の温度、さらにはTg〜70℃高い温度とするのが好ましい。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、縦方向、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)ともに、好ましくは2.2〜4.0倍、さらに好ましくは2.3〜3.9倍である。2.2倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。そしてTgより(5〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満であるとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
【0030】
横延伸後のフィルムは両端を把持したまま(Tm−20〜100)℃で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、熱処理温度が(Tm−80)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがある。また、熱固定後フィルム温度を常温に戻す過程で(Tm−20〜100)℃以下の領域の熱収縮量を調整するために、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることができる。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.5%、さらに好ましくは0.2〜1.2%、特に好ましくは0.3〜1.0%の速度ダウンを実施してフィルムを弛緩(この値を「弛緩率」という)して、弛緩率をコントロールすることによって縦方向の熱収縮率を調整する。また、フィルム横方向は両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
【0031】
このようにして得られる本発明の積層フィルムは、85℃の熱収縮率が、直交する2方向ともに0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下、最も好ましくは0.3%以下とすることができる。
ここでは、逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、本発明の積層フィルムは逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよい。
【0032】
二軸延伸後の積層フィルムの厚みは、好ましくは25〜250μm、さらに好ましくは40〜250μm、特に好ましくは50〜250μmである。25μm以下であると反射率が低下し、250μmを超えるとこれ以上厚くしても反射率の上昇が望めないことから好ましくない。
【0033】
このようにして得られる本発明の積層フィルムは、その少なくとも一方の表面の反射率が波長400〜700nmの平均反射率でみて90%以上、さらに好ましくは92%以上、さらに好ましくは94%以上である。90%未満であると十分な画面の輝度を得ることができないので好ましくない。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点で厚みを測定して、それらの平均値をフィルムの厚みとした。
【0035】
(2)各層の厚み
フィルムサンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定して、各層の平均厚みを求めた。
【0036】
(3)反射率評価
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO白板を100%としたときのフィルムサンプルの反射率を400〜700nmの波長域にわたって測定し、得られた反射率チャートから2nm間隔で反射率を読み取った。なお、フィルムの構成が一方の面が層A、他方の面が層Bの場合には、層A側の反射率の測定を行った。上記の範囲内で平均値を求めた。次の基準で反射率の評価を行った。
○:平均反射率90%以上かつ全測定領域において反射率90%以上
△:平均反射率90%以上であるが反射率90%未満の波長域もある
×:平均反射率90%未満
【0037】
(4)延伸性評価
未延伸フィルムを延伸する際の製膜の状況を観察し、下記基準で評価した。
○:1時間以上安定して製膜できる
×:1時間以内に切断が発生し、安定した製膜ができない
【0038】
(5)85℃熱収縮率
85℃に設定されたオーブン中でフィルムサンプルを無緊張状態で30分間保持し、加熱処理前後の標点間距離を測定し、下記式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=((L0−L)/L0)×100
L0:熱処理前の標点間距離
L :熱処理後の標点間距離
【0039】
(6)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
示差走査熱量測定装置(TA Instruments 2100 DSC)を用い、昇温速度20m/分で測定を行った。
【0040】
(7)紫外線による劣化(耐光性評価)
フィルムサンプルにキセノンランプ照射(SUNTEST CPS+)にてパネル温度60℃、照射時間300時間の条件で光照射を行い、光照射前後での色変化をみた。なおフィルムの構成が一方の面が層A、他方の面が層Bの場合、層A側から光照射を行い測定を行った。
初期のフィルムサンプルの色相(L、a、b)と照射後のフィルムサンプルの色相(L、a、b)とを色差計(日本電飾製SZS−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)にて測定し、色変化dEを下記式で計算し、下記基準で評価した。
dE={(L−L+(a−a+(b*−b1/2
○: dE≦10
△:10<dE≦15
×:15<dE
【0041】
(8)熱による変形(たわみ評価)
フィルムサンプルをA4版に切り出し、フィルムの4辺を金枠で固定したまま、80℃に加熱したオーブンで30分間処理した後、変形(フィルムのたわみ状態)を目視にて観察し、下記基準で評価した。
○:たわんだ状態が観察されない
△:一部に軽微なたわみが観察される
×:たわんだ部分があり、たわみの凹凸が5mm以上の隆起として観察される
【0042】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル132重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル23重量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたり12モル%)、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03重量部、二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルのジエチレングリコール成分量は2.5wt%、ゲルマニウム元素量は50ppm、リチウム元素量は5ppmであった。このポリエステルを層AのポリエステルおよびBのポリエステルとして用い、表1に記載のA層およびB層の組成物を作成した。それぞれ285℃に加熱された2台の押出機に供給し、層Aの組成物と層Bの組成物とを、A/Bとなるような2層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイスよりシート状に成形した。得られたシート状の成形物を、表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムとし、これを表2に記載の温度条件にて、加熱および長手方向(縦方向)の延伸を行い、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に、表2記載の条件で延伸した。その後テンター内で表2記載の温度条件で熱固定を行い、縦方向の弛緩および横方向の幅入れを行い、室温まで冷やして二軸延伸された積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、反射板基材としての物性の評価を行った。結果を表2にまとめる。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
[実施例2〜8]
ポリエステル組成物の成分を表1に記載のとおり変更して、表2に記載の製膜条件をとる他は実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、評価を行った。
【0046】
[実施例9]
ポリマーを重合する段階にて実施例1における2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル23重量部をイソフタル酸ジメチル18重量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたりイソフタル酸12モル%共重合)に変更してイソフタル酸共重合ポリエステルを重合した。これと実施例1にて用意した2,6−ナフタレンジカルボン酸共重合ポリマーとをブレンドした。このブレンドは、ジカルボン酸成分のモル%換算においてナフタレンジカルボン酸/イソフタル酸が11/1になるように行った。表1および2に記載の条件にて積層フィルムを作製し、評価を行った。
【0047】
[実施例10および11]
酢酸マンガンを0.05重量部を酢酸チタン0.02重量部に変更し、ジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(100モル%)のみを用いた他は実施例1と同様にしてポリエステル(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたりナフタレンジカルボン酸成分100モル%であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレート)を重合した。得られたポリエステルの固有粘度は0.68dl/g、融点は268℃、ジエチレングリコール成分量は2.5wt%、チタン元素量は15ppm、リチウム元素量は5ppmであった。このポリエステルを層Aのポリエステルに用い、層Bのポリエステルとして実施例1で作製した共重合ポリエステルを用い、表1に記載の組成で、表2に記載の条件で積層フィルムを作製し、評価を行った。
【0048】
[実施例12]
実施例9にて作製したイソフタル酸共重合ポリエステル(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたりイソフタル酸12モル%共重合)のみを用いて、表1に示すように2層フィルムを作製し、評価を行った。
【0049】
[実施例13]
A/B/Aの3層構成の積層フィルムを製造した。この際、表1および2に記載の組成物を用い、表2に記載の延伸条件で積層フィルムを作成し、評価を行った。
【0050】
[比較例1]
ジメチルテレフタレート85重量部、エチレングリコール60重量部とを酢酸カルシウム0.09重量部を触媒として常法に従い、エステル交換反応をせしめた後、リン化合物としてポリマーに対し0.18重量%となるようにトリメチルホスフェート10重量%含有するエチレングリコール溶液を添加し、次いで重合触媒として三酸化アンチモン0.03重量部を添加した。その後、高温減圧下にて常法に従い重縮合反応を行い極限粘度0.60のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリエステルの固有粘度は0.65dl/g、融点は257℃、ジエチレングリコール成分量は1.2wt%、アンチモン元素量は30ppm、カルシウム元素量は10ppmであった。このポリエチレンテレフタレートを用い、不活性粒子として硫酸バリウムを配合して表1記載の組成物を作成し、表2記載の条件にて積層フィルムを作成し、評価を行った。
【0051】
[比較例2]
不活性粒子として2酸化チタンを配合し表1および2記載の条件をとる他は比較例1と同様にして積層フィルムを作成し、評価を行った。
【0052】
[比較例3]
層Bのポリエステルとして実施例10および11にて得られたポリエステル(ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート)を用いて表1記載の組成物を作成し、表2記載の条件にて積層フィルムを製膜したが、延伸性能が極めて低く、製膜時のフィルムの切断が多発し、フィルムサンプルが作製できなかった。
【0053】
[比較例4]
層Aおよび層Bのポリエステルとして実施例10および11にて得られたポリエステル(ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート)を用い、表1記載の組成物を作成し、表2記載の条件で積層フィルムを製膜したが、延伸性能が極めて低く、フィルムの製膜時の切断が多発したため、フィルムサンプルが作製できなかった。
【0054】
[比較例5]
層Aのみからなる単層フィルムを作成した。層Aのポリエステルとして比較例1および2にて得たポリエステルを用い、表1に記載の組成物を作成し、表2記載の条件にてフィルムを製膜したが、延伸性能が極めて低く、製膜時の切断が多発したため、フィルムサンプルが作製できなかった。
【0055】
[比較例6]
ポリエステルとして実施例9にて得られたイソフタル酸共重合ポリエステルを用い、表1記載の組成物を作成し、表2記載の条件にて3層フィードブロックを用いて製膜したが、製膜時に切断が多発したためフィルムサンプルが作製できなかった。
【0056】
[比較例7]
二酸化ゲルマニウム0.04重量部を三酸化アンチモン0.04重量部に変更する他は実施例1と同様にして共重合ポリエステルを得た。得られた共重合ポリエステルのアンチモン量は40ppmであった。このポリエステルを用い、表1および2に記載の条件で積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムは耐光性に劣る結果であった。
【0057】
[比較例8]
比較例1で得られたポリエステルを用い、3層フィルムの層Aおよび層C(三層フィルムの表面と裏面)に用いる組成物を表1に記載のとおり作成した。他方、ポリエチレンテレフタレートに、これとは非相溶なポリメチルペンテン10重量%とポリエチレングリコール1重量%とを混合して表1記載の層Bに用いる組成物を作成した。これらの組成物を用いて、表2記載の条件にて積層フィルムを作製した。評価結果を表1および2に示す。筋が目立ち、反射率、たわみおよび耐光性に劣る結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の積層フィルムは、光線の反射率が高く、紫外線に対する劣化が抑えられ、各種の反射板、中でも特に液晶ディスプレイの反射板や太陽電池のバックシートに最適に用いることができる。これらの反射板として用いる場合には、層Aを反射面として用いることが好ましい。
【0059】
本発明の積層フィルムは他の用途にも用いることができ、例えば、紙代替、すなわちカード、ラベル、シール、宅配伝票、ビデオプリンタ用受像紙、インクジェット、バーコードプリンタ用受像紙、ポスター、地図、無塵紙、表示板、白板、感熱転写、オフセット印刷、テレフォンカード、ICカードなどの各種印刷記録に用いられる受容シートの基材として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子31〜60重量%を含むポリエステル組成物の層Aと、この層Aに接し平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子1〜30重量%を含むポリエステル組成物の層Bからなり、層Aで光を反射する用途に用いる積層フィルム。
【請求項2】
層Aおよび層Bのポリエステル組成物を構成するポリエステルのポリマーTgが80〜125℃である、請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
層Aのポリエステルが、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸成分を1〜100モル%を含み、ジオール成分としてエチレングリコールを主たる成分としてなる、請求項2記載の積層フィルム。
【請求項4】
層Bのポリエステルが、ジカルボン酸酸成分としてナフタレンジカルボン酸3〜20モル%およびテレフタル酸80〜97モル%からなり、ジオール成分としてエチレングリコールを主たる成分としてなる、請求項2記載の積層フィルム。
【請求項5】
層Aの厚みが、積層フィルムの層Aおよび層Bの合計厚み100あたり40〜90である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムからなる液晶表示装置用反射板。

【公開番号】特開2007−320238(P2007−320238A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154677(P2006−154677)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】