説明

積層フィルム

【課題】
生分解性に優れた積層フィルム、特にコンポスト処理をする際に短い期間で崩壊しフィルムとしての形状を残さない、かつフィルム物性に優れた積層フィルムおよび包装材、廃棄物の袋等を提供する。
【解決手段】
表面層(i)が脂肪族ポリエステル共重合体(A)100〜70重量%、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜30重量%、ポリ乳酸(C)0〜30重量%からなる組成物(D)からなり、中間層(ii)がポリビニルアルコール系ポリマー(E)からなり、さらに裏面層(iii)が脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなり、裏面層(i)のポリエステル共重合体(A)に比べて融点が0〜30℃低いことからなる積層フィルムであり、コンポスト処理装置内で特に中間層(ii)が溶出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性に優れた積層フィルムに関し、特にコンポスト処理をする際に3日間程度で崩壊してフィルムとしての形状を残さない、かつフィルム物性に優れた積層フィルム及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にし、地中へ埋設された場合であっても早期に生分解する包装材が求められており、種々のフィルムが開発されている。
しかし、地中に埋設しても生分解するまでに長期間を要したり、早期に生分解するが包装材として使用する際の強度が不十分である生分解性フィルム、更には生分解性能や包装材としての物性強度にも優れているが、高価となり実用的でないものもある。
例えば、ポリ乳酸の層とポリビニルアルコールの層からなる積層フィルム(特開平8−244190)、ポリ乳酸とそれ以外の脂肪族ポリエステルからなる中間層、及び脂肪族ポリエステルからなる最外層と最内層からなる生分解性袋状製品がある(特開2005−313998)。
【特許文献1】特開平8−244190(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005―313998(実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、生分解性に優れた積層フィルムに関し、特にコンポスト処理をする際に3日間程度で崩壊してフィルムとしての形状を残さない、かつフィルム物性に優れた積層フィルムおよび包装材に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)からなることを特徴とする積層フィルムに関する。
表面層(i)
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)100〜70重量%、及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜30重量%、及びポリ乳酸(C)0〜30重量%(脂肪族ポリエステル共重合体(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及びポリ乳酸(C)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(D)からなる。
中間層(ii)
ポリビニルアルコール系ポリマー(E)からなる。
裏面層(iii)
脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなり、その融点は表面層(i)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点よりも10℃以上低いことが望ましい。裏面層(iii)は、脂肪族ポリエステル(A)にポリラクトン系脂肪族ポリエステル(E)を配合した組成物がある。
る。
【0005】
本発明において裏面層(iii)は、ポリラクトン(E)以外の脂肪族・芳香族ポリエステル(B)にポリラクトン(E)を配合した組成が好適である。
また、脂肪族ポリエステル共重合体(A)における2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、乳酸が好適である。
また、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある脂肪族ポリエステル共重合体が好適である。
これらの積層フィルムは共押出成形することが望ましい。
またゴミ袋等に使用するときはフィルムに縦横の方向性がないため避けにくく、またサイドシールする必要がないのでインフレーション溶融成形法により成形することが望ましい。
これらの成形フィルムは包装材の用途に適している。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層フィルムは、包装材としての十分な強度物性を有しており、コンポスト処理装置内では3日間以内と生ゴミと同じ分解速度で崩壊し、コンポスト処理装置内に堆積しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の積層フィルムは、以下の表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)を有する。
なお、本発明の積層フィルムは、表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)がこの順で積層されて構成されている。
各層に用いられるポリマーの種類、組成等は、それぞれが規定された範囲内である限り、それぞれ同様でもよく、また異なったものとしてもよい。
各層に用いられるポリマーについて以下に説明する。
【0008】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)である。
脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、表面層(i)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体であり、その融点(Tm)は80〜120℃の範囲とすることが好ましい。
融点(Tm)が80℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、融点が低すぎて、包装用フィルムとして用いた場合、例えば溶断シールする際に、シール部の固化が遅いために溶断刃にフィルムが融着する虞があり、包装適性に劣るおそれがある。
一方、融点(Tm)が120℃を越える脂肪族ポリエステル共重合体(A)は固く、フィルムが脆くなるおそれがある。
また、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の結晶化温度(Tc)は35〜75℃が好ましく、より好ましくは37〜73℃である。また脂肪族ポリエステル共重合体(A)の(Tm)−(Tc)は、30〜55℃が好ましく、より好ましくは35〜50℃である。
結晶化温度(Tc)が35℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、結晶化温度が低すぎ、このような共重合体からフィルムを得ようとしても、通常の冷却温度(5〜30℃)では完全に固化せず、得られるフィルムにニップロール等の押し跡が転写したり、冷却ロールから容易に剥がれず、外観に劣るフィルムとなるおそれがある。
(Tm)−(Tc)が30℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、得られるポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムの透明性、フィルム強度が劣るおそれがある。
【0009】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、好ましくは2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0010】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、特に、コハク酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましく、融点(Tm)が低い脂肪族ポリエステル共重合体(A)を得るために、コハク酸を主成分とし、副成分としてアジピン酸を併用してもよい。
【0011】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
これらの中では1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0012】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、特に限定はされないが、通常、1〜10個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の二価脂肪族基を有する化合物が挙げられる。
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等があり、これらの2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体を挙げることができる。
【0013】
これらの中では、L―乳酸、D―乳酸、D,L−乳酸などの乳酸を主成分とするものが好適であり、L−乳酸を主成分とするものが望ましい。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特開平8−239461号公報、特開平9−272789号公報に記載されている。本発明に用いられる脂肪族ポリエステル(A)としては、例えば、三菱化学株式会社からGS Pla(商品名)として製造、販売されているものがある。
【0014】
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、その中でも好ましくは40〜60モル%と共に、芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、その中でも好ましくは60〜40モル%からなる酸成分、さらには脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなるポリエステルである。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)と芳香族ジカルボン酸成分(b2)との合計のモル数と実質的に等しく、得られる脂肪族・芳香族ポリエステルの分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでも良い。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、好ましくは、融点が50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、その中でも好ましくは70〜170℃の範囲にある。また、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルムが成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、その中でも好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0015】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、特に4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものである。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、特に、アジピン酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%の範囲にある。脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の加水分解性や生分解性を向上させ、得られるフィルムを柔軟にする。
【0016】
芳香族ジカルボン酸成分(b2)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である芳香族ジカルボン酸成分(b2)は、特に限定はされないが、通常、8〜12個の炭素原子を有する化合物、とくに8個の炭素原子を有する化合物が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸並びにそのエステル形成誘導体を例示できる。芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、具体的には、芳香族ジカルボン酸のジ−C1〜C6アルキルエステル、例えばジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等を例示できる。
これら芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、特に、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分(b2)は80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%の範囲にある。芳香族ジカルボン酸成分(b2)を共重合することにより、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の耐熱性を保ちながら、柔軟なポリエステルが得られる。
【0017】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、とくには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)としては、例えば、BASF社からECOFLEX(商品名)として製造・販売されている。
【0018】
ポリ乳酸(C)
本発明に用いられるポリ乳酸には、L−乳酸からなるポリマー、D−乳酸からなるポリマー、ポリ乳酸共重合体をはじめ、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸から生るステレオコンプレックスを一部または全部とするポリ乳酸がある。
主にL−乳酸からなりポリマーは、D−乳酸若が30質量%未満、好ましくは10質量%未満で、融点が150〜170℃の範囲のものである。D−乳酸の含有量が30質量%以上のものは成形時の耐熱性が劣るおそれがある。
主にD−乳酸からなるポリマーには、L−乳酸が3−質量%未満、好ましくは10質量%未満で、融点が150〜170℃の範囲のものがある。L−乳酸の含有量が6質量%以上のものは延伸成形性が劣るおそれがある。
また、ステレオコンプレックス型のポリマーの場合の場合は、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の重量比率が55対45から45対55程度の範囲とすることが望ましい。ステレオコンプレックス型のポリマーではその融点が200〜230℃程度となる。
なお、ポリ乳酸におけるD−乳酸含有量は、クロムバック社製ガスクロマトグラフCP CYCLODEX B 236M を用いて測定した値である。
さらに、ポリ乳酸共重合体としては、D−乳酸若しくはL−乳酸以外に乳酸と共重合可能なコモノマーとしては、例えば3−ヒドロキシブチレート、カプロラクン、 グリコール酸などを共重合したものが例示される。
ポリ乳酸の重量平均分子量はフィルム成形能がある限り特に限定はされないが、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)が、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜10g/10分のものが使用される。
これらのポリ乳酸の重合法としては、縮合重合、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮合重合ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
本発明では、L−乳酸からなるポリマー、D−乳酸からなるポリマー、ポリ乳酸共重合体をはじめ、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸から生るステレオコンプレックスを一部または全部とするポリ乳酸を、用途に応じてそれぞれ単独でさらに2種類以上を混合して用いることが行われる。
【0019】
組成物(D)
本発明の積層フィルムの表面層(i)を構成する組成物(D)は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)100〜70重量%、前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜30重量%及びポリ乳酸(C)0〜30%からなる。(脂肪族ポリエステル共重合体(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル及びポリ乳酸(C)の合計で100重量%とする。)
脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪属・芳香族ポリエステル(B)の夫々別個に、あるいは組成物(C)を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
【0020】
ポリビニルアルコール系ポリマー(E)
本発明に用いられるポリビニルアルコール系ポリマーは、ビニルアルコールの結合単位を有するポリマーであり、ビニルアルコールの結合単位の割合が、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上のものが用いられる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコールや、酢酸ビニルおよび、これと共重合体可能な単量体との共重合体の加水分解生成物などがある。
酢酸ビニルはケン化度に必要な水溶性に応じてケン化度を決めるが、崩壊性を上げるにはケン化度60〜80%が望ましい。
ポリビニルアルコール系ポリマーの製造は、従来から知られている方法によって行うことができる。ポリビニルアルコールの重合度は通常200〜2,500程度であり、好ましくは、1,000〜2,000である。一般に酢酸ビニル単独重合体または共重合体の加水分解またはアルコーリシスによって製造される。好適なポリビニルアルコールは、酢酸エステル基の約50から実質的に100%、最も好ましくは80乃至99.5%が加水分解またはアルコリシスを受けている酢酸ビニル重合体である。
本発明のポリビニルアルコールは熱成形出来ることが特に好ましく、ケン化度は60〜80%であり、かつ可塑剤としてポリエチレングリコール類を10〜30%含むことが好ましい。
本用途に適したポリビニルアルコールとしてクラレ社製、商品名 クラレポバール、溶融成形用ポリビニルアルコールCPシリーズが上げられる。
ポリビニルアルコール系ポリマーには、必要に応じて前記の脂肪族ポリエステル共重合体(A)と同様のその他のポリマーや配合剤を配合される。その他のポリマーや配合剤の配合量は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0021】
ポリラクトン系脂肪族ポリエステル(F)
ポリラクトン系脂肪族ポリエステルとしては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクト
ン、β−メチル−δ−バレロラクトン等のラクトンの1種類若しくは2種以上を重合して得られるポリラクトン及びラクトンと他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマーが例示できる。かかるポリラクトン系脂肪族ポリエステル(A−2)の数平均分子量Mnは通常30,000〜300,000の範囲、好ましくは、40,000〜200,000の範囲にある。 これらのポリラクトン系脂肪族ポリエステル(E)の具体例としては、例えば、ε−カプロラクトンの開環重合によって得られたもの、6−ヒドロキシカプロン酸の脱水重縮合によって得られたもの、あるいは両者を重合させて得られるポリε−カプロラクトン、ポリδ−バレロラクトン等が挙げられる。又、ラクトンと共重合される他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、グリコライド、乳酸、ラクタイド、各種ヒドロキシ酪酸、各種ヒドロキシ吉草酸、各種ヒドロキシカプロン酸またはそれらの環状無水物等が挙げられる。
【0022】
表面層(i)
表面層(i)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)70〜100重量%、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜30重量%及びポリ乳酸(C)(脂肪族ポリエステル共重合体(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及びポリ乳酸(C)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(D)からなる。
また、脂肪族ポリエステル共重合体(A)における2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、乳酸が好適である。
また、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある脂肪族ポリエステル共重合体が好適である。
さらに、表面層(i)には、シリカ等の無機微粒子やエルカ酸アミド、ポリエチレングリコールなどをそれぞれ100〜10,000ppm程度配合することが望ましい。
【0023】
中間層(ii)
中間層(ii)は、ポリビニルアルコール系ポリマー(E)からなる。さらに、ポリビニルアルコール系ポリマー(E)に、脂肪族ポリエステル(A)または脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を配合することも行われる。、その配合割合は、ポリビニルアルコール系ポリマー(E)60〜90重量%に対して、脂肪族ポリエステル(A)又は脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が40〜10重量%((E)及び(A)の合計を100重量%とする。)が好適である。これらの中では、脂肪族ポリエステル(A)を配合することが好ましい。
裏面層(iii)
裏面層(iii)は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなり、融点は表面層(i)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)よりも10℃以上低いことが望ましい。
裏面層(iii)は、脂肪族ポリエステル(A)にポリラクトン系脂肪族ポリエステル(E)を配合した組成が好適である。
さらに、表面層(i)には、シリカ等の無機微粒子を100〜10,000ppm程度配合することが望ましい。
【0024】
表面層(i)、裏面層(iii)を構成するポリマーのそれぞれは、脂肪族ポリエステル共重合体(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、及びポリ乳酸(C)、ポリラクトン系脂肪族ポリエステル(F)をヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合する方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等により調製することができる。
但し、ポリビニルアルコール(E)は水溶性なので水中ストランドカットが出来ないため、他の熱可塑性樹脂や添加剤等を入れる場合にはダイスにつながる押出機にドライブレンドで入れることが望ましい。
【0025】
積層フィルム
本発明の積層フィルムは、表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)からなり、それらの各厚さが全厚さ(表面層(i)、中間層(ii)、裏面層(iii)の厚さの合計を100%とする)の10%以上、中でも15%以上とすることが好ましい。
本発明の積層フィルムの各層の厚さは、用途に応じて種々決めることができるが、通常、表面層(i)の厚さは3〜120μm、好ましくは5〜110μm、の範囲、中間層(ii)の厚さは5〜150μm、好ましくは10〜130μm、の範囲であり、裏面層(iii)の厚さは3〜120μm、好ましくは5〜110μmの範囲である。
積層フィルム全体としての厚さはいずれの場合も通常10〜300μm、好ましくは20〜200μm、の範囲である。
【0026】
また積層フィルムの反りを減らすために表面層(i)の厚みと裏面層(iii)の厚みとはほぼ等しいことが好ましい。
また、積層フィルム全体の厚さが10μm未満では製膜、スリット、製袋が難しくなり、300μmを超えるとフィルムの重量が大きくなり包装袋、ゴミ袋としてのハンディさを損ない、コストが高くなるおそれがある。
【0027】
本発明の積層フィルムは、種々公知の方法で製造することができる。例えば、表面層(i)、裏面層(iii)のそれぞれを構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、ポリ乳酸(C)、ポリラクトン系脂肪族ポリエステル(E)を夫々所定の量で配合し、中間層(ii)をポリビニルアルコール系ポリマー(D)と直接三層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムを製造することができる。
また、予め、表面層(i)、裏面層(iii)のそれぞれを構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエスステル(B)を夫々所定の量で配合した後、溶融混練して表面層(i)、中間層(ii)、裏面層(iii)の原料である組成物を得た後、二層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムを製造することができる。
このように本発明の好ましい形態はポリビニルアルコール系ポリマー(D)として熱可塑性のものを用いて共押出成形することである。
【0028】
また夫々別個に表面層(i)、中間層(ii)、裏面層(iii)のフィルムを成形した後貼り合せて積層フィルムを製造することがきる。
本発明の積層フィルムは、未延伸であることが好ましい。延伸フィルムとするとヒートシール強度、透明性が低下するおそれがある。
また本発明の積層フィルムは、印刷性の改良のために、一方の表面を、たとえばコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行うことができる。
ゴミ袋
本発明の積層フィルムはコンポスト処理装置内で3日以内で崩壊しフィルム屑が堆積しないため、特にコンポスト処理装置で用いるゴミ袋での使用に優れている。
【0029】
次に実施例により本発明を説明する。
実施例及び比較例等で使用した原料は次の通りである。
(イ)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名サイリシア730(平均粒径3μm)
(ロ)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名ATMER SA1753
(ハ)ポリエチレングリコール
第一工業製薬社製、商品名PEG4000
(ニ)タルク
粒子径1〜30μmの市販のタルク 10%濃度からなる。
【0030】
(ホ)脂肪族ポリエステル共重合体(A)
コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AZ91T
MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):108.9℃、結晶化温度(Tc):68.0℃、(Tm)−(Tc):40.9℃、密度:1.25g/cmである。
【0031】
コハク酸・アジピン酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−2)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AD92W
MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):86.9℃、結晶化温度(Tc):40.4℃、(Tm)−(Tc):46.5℃、密度:1.25g/cmである。
【0032】
(へ)脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)
BASF社製、商品名 ECOFLEX
テレフタル酸:46モル%、アジピン酸:54モル%及び1,4−ブタンジオール:100モル%からなり、MFR(190℃、荷重2160g):3g/10分、融点(Tm):112℃、密度:1.26g/cmである。
【0033】
(ト)ポリ乳酸(C)
ポリ乳酸(C−1)
D−乳酸含有量:1.9質量%、MFR(温度190℃、荷重2160g):6.7g/10分、融点(Tm):168.0℃、Tg:59.8℃、密度:1.3g/cmである。
(チ)ポリビニルアルコール系ポリマー(E)
クラレ社製、商品名 クラレポバール、溶融成形用ポリビニルアルコール CP−1210 MFR(190℃、荷重2160g):4.0g/10分、融点(Tm):161℃、ガラス転移温度(Tg):26℃、密度:1.25g/cmである。
(リ)ポリラクトン系脂肪族ポリエステル(F)
ポリカプロラクトン
ダイセル化学工業社製、商品名 PH7、MFR(190℃、荷重2160g):2.0g/10分、融点(Tm):60℃である。
【0034】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)光学特性
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、平行光線透過率(PT:%)及びグロス(%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、降伏点及び破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
【0035】
(3)ヒートシール強度
フィルムの熱融着層面同士を重ね合わせた後に、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製 商品名 ルミラー)で挟み、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm、時間:1.0秒の条件下で熱融着した。尚、加熱は上側のみとした。次いで、熱融着した二軸延伸積層フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度を熱融着強度とした。
【0036】
(4)コンポスト崩壊性評価
フィルムをA4大に切り出した後に、屋外設置型コンポスト処理装置(田窪工業所製、地球の友だち、EF−5A)に入れて崩壊の様子を1日目、2日目、3日目に観察した。
観察した結果、
変化のないものを ×
中間層が膨潤し破れやすくなったものを △
中間層が溶出し皮膜層のみ残ったもの ○
とした。
【0037】
(5)耐水性評価
フィルムをA4大に切り出した後に、2つ折りにして両端をインパルスシーラーで
ヒートシールして水を充填した。更に開口部をヒートシールして充填バッグ状にしたものを1日目、2日目、3日目に観察した。
観察した結果、
破れて水の漏れたものを ×
水の漏れのないものを ○
とした。
【0038】
実施例1、2、比較例1及び参考例1
<多層フィルムの製造>
3種3層ダイを有するキャスト成形機を用いて、温度190℃で、表−1の構成になるようにそれぞれの材料を押出機に投入し3層フィルムを得た。但し、表面層(i)、裏面層(iii)の組成部は予め1軸押出機で造粒したものを用いた。中間層(ii)は水溶性素材のためドライブレンドで3種3層ダイを有するキャスト成形機の中間層押出機に投入した。
表面層(i)/中間層(ii)/裏面層(iii)を7/26/7μmの厚みとなるよ
うに溶融樹脂の吐出量、キャストフィルムの引き取り速度を調整した。
【0039】
【表1】

【表2】

表1に示す中間層にポリビニルアルコールを有する実施例1、2は袋としての耐水性を有しながら3日後コンポスト装置内で崩壊しており、コンポスト処理性に優れていた。また中間層にポリビニルアルコールを有しない比較例1はコンポストでの3日間では崩壊しなかった。更にポリビニルアルコール単体からなる参考例1は耐水性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、生分解性に優れた積層フィルムに関し、特にコンポスト処理をする際に3日間程度で崩壊しフィルムとしての形状を残さない、かつフィルム物性に優れた積層フィルムおよび包装材である。
また本発明の積層フィルム溶断シール強度、低温ヒートシール性を有するので、溶断シール、ヒートシールによりゴミ袋を製袋することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の表面層(i)、中間層(ii)及び裏面層(iii)からなることを特徴とする積層フィルム。
表面層(i)
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)100〜70重量%、及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)0〜30重量%、及びポリ乳酸(C)0〜30重量%(脂肪族ポリエステル共重合体(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)及びポリ乳酸(C)の合計で100重量%とする。)からなる組成物(D)からなる。
中間層(ii)
ポリビニルアルコール系ポリマー(E)からなる。
裏面層(iii)
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなり、表裏層(i)のポリエステル共重合体(A)に比べて融点が0〜30℃低い。
【請求項2】
中間層(ii)が、ポリビニルアルコール系ポリマーに脂肪族ポリエステル(A)を配合した組成からなることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
裏面層(iii)が、脂肪族ポリエステル(A)にポリラクトン系脂肪族ポリエステル(F)を配合した組成からなることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)が、乳酸である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある脂肪族ポリエステル共重合体(A)であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
共押出溶融押出成形法により得られる請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
インフレーション溶融成形法により得られる請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルムから得られる包装材。
【請求項9】
請求項8記載の積層フィルム包装材を用いた生ゴミ処理を目的とした用途。

【公開番号】特開2009−96096(P2009−96096A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270762(P2007−270762)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】