説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】 安定して製膜でき、かつ高反射性能を有し、光源に含まれる紫外線からの劣化を防ぎ、紫外線吸収剤などのブリードアウトが実質的に生じない液晶ディスプレイや内照式電飾看板の反射用フィルムとして好適に用いることのできる積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 平均粒子径0.1〜10μmの硫酸バリウム粒子21〜60重量%および平均粒子径0.1〜5.0μmのルチル型二酸化チタン粒子1〜40重量%を含むポリエステル組成物の層A、この層と隣接し平均粒子径0.1〜10μmの硫酸バリウム粒子0.1〜15重量%および平均粒子径0.1〜5.0μmのルチル型二酸化チタン粒子1〜15重量%を含むポリエステル組成物の層Bから構成される積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリエステルフィルムに関し、可視領域において高い反射率を備える積層ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイにおいて特開昭63−62104号公報に示されるようなサイドライト方式が、薄型で均一に照明できるメリットから広く知られている。このサイドライト方式とはある厚みを持ったアクリル板などの透明な板のエッジより冷陰極管などの照明を当てる方式であり、透明な板に付与された網点印刷のために照明光が均一に分散され、均一な明るさをもった画面が得られる。
【0003】
これに対してサイドライト方式よりもより高輝度が求められる液晶テレビなどのディスプレイにおいては、画面の背面に冷陰極管などの照明光を画面の全体をカバーするように配置し、光拡散性の高いシートを介して、画面背後から照明を当てる直下型方式が採用されてきている。
【0004】
いずれの方式をとる場合も、高輝度を求める程、光強度の強い光源が用いられ、光源からの紫外線の部材への影響も軽視できなくなってきている。このような用途において、光源からの光を画面側とは反対方向に漏れる光を画面側に返すために従来より反射性能を有するフィルムを用いられているが、高い反射性能はもちろんのこと、紫外線での劣化に対する耐性も必要になってきている。液晶ディスプレイにおける紫外線での劣化に対する耐性とは、紫外線に因る変色や反射率の低下などが特に問題になり、これらに対する解決方法として特開2001−226501号公報記載の技術などが知られているが、いずれも高輝度ディスプレイの反射フィルムとしては輝度が不十分であったり、紫外線吸収性能が不十分であったり、フィルムから紫外線吸収剤がブリードアウトを起こし、フィルム製造工程での多大な弊害が生じたり、フィルムになった後に時間とともにブリードアウトし紫外線吸収性能が低下するなどの弊害があった。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−62104号公報
【特許文献2】特開2001−226501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決することを課題とし、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、十分な反射性能を付与するために硫酸バリウムや紫外線吸収性能を有するルチル型二酸化チタンを高濃度に添加しても安定して製膜でき、かつ高反射性能を有し、光源に含まれる紫外線からの劣化を防ぎ、紫外線吸収剤などのブリードアウトが実質的に生じない、液晶ディスプレイや内照式電飾看板の反射用フィルムとして好適に用いることのできる積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、平均粒子径0.1〜10μmの硫酸バリウム粒子21〜60重量%および平均粒子径0.1〜5.0μmのルチル型二酸化チタン粒子1〜40重量%を含むポリエステル組成物の層A、この層と隣接し平均粒子径0.1〜10μmの硫酸バリウム粒子0.1〜15重量%および平均粒子径0.1〜5.0μmのルチル型二酸化チタン粒子1〜15重量%を含むポリエステル組成物の層Bから構成される積層ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、安定して製膜でき、かつ高反射性能を有し、光源に含まれる紫外線からの劣化を防ぎ、紫外線吸収剤などのブリードアウトが実質的に生じない液晶ディスプレイや内照式電飾看板の面光源反射板として好適に用いることのできる積層ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステル]
本発明の積層ポリエステルフィルムは、硫酸バリウム粒子およびルチル型二酸化チタン粒子を含むポリエステル組成物の層Aと、この層と隣接し硫酸バリウム粒子およびルチル型二酸化チタン粒子を含むポリエステル組成物の層Bから構成される。
【0010】
ポリエステル組成物のポリエステルとしては、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなるポリエステルを用いる。ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸を挙げることができる。ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオールを挙げることができる。これらのポリエステルの中で、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0011】
ポリエチレンテレフタレートを用いる場合、好ましくは全ジカルボン酸成分あたり1〜15モル%、さらに好ましくは3〜14モル%、最も好ましくは5〜13モル%の共重合成分を含有する共重合ポリエステルを用いるとよい。1モル%未満であると不活性粒子を含有する層、例えば31重量%以上の硫酸バリウムやルチル型二酸化チタン粒子を含有する場合において製膜できないことがあり好ましくない。15モル%を超えると熱寸法安定性に欠けたフィルムになったり製膜すらできない状況に陥る可能性があり好ましくない。
【0012】
この共重合成分としては、ジカルボン酸成分として、例えばイソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸を挙げることができる。ジオールとして、例えばエチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオールを挙げることができる。特に層Aに用いるポリエステルの共重合成分としては、良好な製膜性を得るために、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸を用いることが好ましい。
【0013】
[硫酸バリウム粒子]
層Aのポリステル組成物は、硫酸バリウム粒子を21〜60重量%、好ましくは23〜55重量%、さらに好ましくは25〜50重量%含有する。そして、層Bのポリエステル組成物は、硫酸バリウム粒子を0.1〜15重量%、好ましくは0.2〜14重量%、さらに好ましくは0.5〜13重量%含有する。この範囲で含有することにより十分な反射性能を得ながら、良好な製膜性を得ることができる。
【0014】
いずれの層についても、硫酸バリウムの平均粒子径は0.1〜10μm、好ましくは0.3〜8μm、さらに好ましくは0.5〜5μmである。この範囲の平均粒子径のものを用いることにより、良好な分散性と製膜性を得ることができる。なお、硫酸バリウムは板状であっても球状であってもよい。
【0015】
[ルチル型二酸化チタン粒子]
層Aのポリエステル組成物は、ルチル型二酸化チタン粒子を1〜40重量%、好ましくは1.5〜35重量%、さらに好ましくは2〜30重量%含有する。この範囲で含有することにより、十分な反射性能と紫外線吸収効果を得ることができる。
【0016】
層Bのポリエステル組成物は、ルチル型二酸化チタン粒子を1〜15重量%、好ましくは2〜14重量%、さらに好ましくは3〜13重量%含有する。この範囲で含有することにより、紫外線から保護フィルム全体を保護するとともに、良好な製膜性を維持することができる。
【0017】
いずれの層についても、ルチル型二酸化チタン粒子の平均粒子径は0.1〜5.0μm、好ましくは0.2〜4.0μm、さらに好ましくは0.3〜3.0μmである。この範囲の平均粒子径のものを用いることにより、分散性と製膜性を得ることができる。
【0018】
ルチル型二酸化チタン粒子は、分散性をさらに向上させるために、ステアリン酸等の脂肪酸およびその誘導体等を用いて処理された用いると、フィルムの光沢度を一層向上させることができるので好ましい。
【0019】
なお、ルチル型二酸化チタンは、ポリエステル組成物に配合する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去を行うことが好ましい。精製プロセスの工業的手段としては、粉砕手段で例えばジェットミル、ボールミルを適用することができ、分級手段としては、例えば乾式もしくは湿式の遠心分離を適用することができる。なお、これらの手段は2種以上を組み合わせ、段階的に精製してもよい。
【0020】
[粒子の配合方法]
硫酸バリウム粒子およびやルチル型二酸化チタンをポリエステル組成物に配合する方法としては各種の方法を用いることができる。その代表的な方法として、下記のような方法を挙げることができる。(ア)ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に粒子を添加する方法、もしくは重縮合反応開始前に粒子を添加する方法。(イ)ポリエステルに粒子を添加し溶融混練する方法。(ウ)上記(ア)または(イ)の方法において粒子を多量添加したマスターペレットを製造しこれらと添加剤を含有しないポリエステルとを混練して所定量の添加物を含有させる方法。(エ)上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
なお、前記(ア)のポリエステル合成時に添加する方法を用いる場合には、二酸化チタン粒子は、グリコールに分散したスラリーとして反応系に添加することが好ましい。
【0021】
硫酸バリウム粒子およびやルチル型二酸化チタンの配合方法としては、特に上記(ウ)または(エ)の方法をとることが好ましい。
硫酸バリウム粒子およびルチル型二酸化チタン粒子は、製膜時のフィルターとして線径20μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き15〜50μmの不織布型フィルターを用い、ダイから押し出す直前の溶融ポリマーを濾過することが好ましい。このようにすることで、粗大凝集粒子の個数を減らすことができる。
【0022】
[蛍光増白剤]
ポリエステル組成物には、蛍光増白剤を配合することが好ましい。この場合、ポリエステル組成物に対する濃度として、好ましくは0.01〜0.2重量%、さらに好ましくは0.05〜0.1重量%の範囲で蛍光増白剤を配合するといよい。蛍光増白剤の配合量が0.01重量%未満では350nm付近の波長域の反射率が十分でなく、反射板とした時に照度が十分なものとならないことから好ましくない。0.2重量%を越えると、蛍光増白剤の持つ特有の色が現れてしまうため好ましくない。
【0023】
蛍光増白剤としては、例えばOB−1(イーストマン社製)、Uvitex−MD(チバガイギー社製)、JP−Conc(日本化学工業所製)、TBO(住友精化社製)ケイコール(日本曹達社製)を用いることができる。
【0024】
[層構成]
本発明の積層ポリエステルフィルムは、層Aおよびこれに隣接する層Bからなる。この層Aおよび層Bの構成を含むものであれば、多数の層から構成されてもよい。例えば、層A/層Bの2層構成であってもよく、層B/層A/層Bの3層構成、あるいは層A/層B/層A/層Bの4層構成であってもよい。さららに5層以上の構成であってもよい。
【0025】
製膜上の容易さと効果を考慮すると2層構成あるいは層B/層A/層Bからなる3層構成の形態が好ましい。特に層Bにて層Aを保護する形態、すなわち、層B/層A/層Bの三層構成が好ましい。
【0026】
フィルムの片面または両面に、他の機能を付与するために他の層をさらに積層した積層体としてもよい。ここでいう他の層としては、透明なポリエステル樹脂層、金属薄膜やハードコート層、インク受容層、コーティング層を挙げることができる。
コーティング層としては、酸化防止剤、帯電防止剤、蛍光増白剤を含有するコーティング層を挙げることができる。
【0027】
[製膜方法]
以下、本発明のフィルムを製造する方法の一例を説明する。
まず、ダイから溶融したポリエステル組成物をフィードブロックを用いた同時多層押出法により、積層未延伸シートを製造する。すなわち層Aを形成するポリエステル組成物の溶融物と層Bを形成するポリエステル組成物の溶融物を、フィードブロックを用いて、例えば層B/層A/層Bとなるように積層し、ダイに展開して押出す。このとき、フィードブロックで、層B/層A/層Bとなるように積層されたポリエステル組成物は積層された形態を維持している。なお、マルチマニホールドダイでも製造できるが、積層フィルムの界面での密着性、製造上の簡便さからフィードブロックを用いるほうが、好ましい。
【0028】
ダイより押出されたポリエステル組成物は、キャスティングドラム上で冷却固化され、未延伸積層フィルムとなる。この未延伸積層フィルムを、例えばロール加熱、赤外線加熱といった加熱手段で加熱し、まず縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は、2個以上のロールの周速差を利用して行うことが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)以上の温度とし、特にTg〜70℃高い温度とするのが好ましい。延伸倍率は、縦方向、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)ともに、好ましくは2.5〜4.0倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず好ましくなく、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
【0029】
縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これらの処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。そしてTgより(5〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満するとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
【0030】
横延伸後のフィルムは両端を把持したまま(Tm−10〜100)℃で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、熱処理温度が(Tm−80)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがある。また、熱固定後フィルム温度を常温に戻す過程で(Tm−20〜100)℃以下の領域の熱収縮量を調整する為に、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることができる。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.5%、さらに好ましくは0.2〜1.2%、特に好ましくは0.3〜1.0%の速度ダウンすなわち弛緩(以降この値を弛緩率という)を実施する。この弛緩により縦方向の熱収縮率を調整することができる。また、フィルム横方向は両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
【0031】
[物性]
このようにして得られる本発明の積層ポリエステルフィルムの85℃の熱収縮率は、直交する2方向ともに0.7%以下、さらに好ましくは0.6%以下、特に好ましくは0.5%以下の達成が可能である。2軸延伸後のフィルムの厚みは、好ましくは25〜250μm、さらに好ましくは30〜220μm、特に好ましくは40〜200μmである。25μm以下であると反射率が低下して好ましくなく、250μmを超えるとこれ以上厚くしても反射率の上昇が望めないことから好ましくない。
【0032】
本発明の積層ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面の反射率は、波長400〜700nmの平均反射率が好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上、特に好ましくは94%以上である。90%未満であると十分な画面の輝度を得ることができず好ましくない。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を詳述する。
なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0034】
(2)各層の厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋する。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
【0035】
(3)反射率
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaS0白板を100%とした時の反射率を300〜800nmにわたって測定した。2nm間隔で反射率を測定した。
【0036】
(4)延伸性
安定に製膜できるか、下記基準で評価した。
○:1時間以上安定に製膜できる。
×:1時間以内に切断が発生し、安定な製膜ができない。
【0037】
(5)熱収縮率
85℃に設定されたオーブン中でフィルムを無緊張状態で30分間保持し、加熱処理前後の標点間距離を測定し、下記式により熱収縮率(85℃熱収縮率)を算出した。
熱収縮率(%)=((L0−L)/L0)×100
L0:熱処理前の標点間距離
L :熱処理後の標点間距離
【0038】
(6)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
示差走査熱量測定装置(TA Instruments 2100 DSC)を用い、昇温速度20m/分で測定を行った。
【0039】
(7)平均粒子径
日立製作所製S−4700形電界放出形走査電子顕微鏡を用いて倍率10000倍にて、樹脂(フィルム)に添加する前の各粒子を100個ずつ任意に測定し(楕円状の場合は(長径+短径)/2にて求める)、平均粒子径を求めた。
【0040】
(8)ブリードアウト
1枚のフィルムを2枚のスライドガラスに挟み込み、200℃15分間保持し、スライドガラス両面とフィルムの両面を目視にてブリードアウトがないか、下記基準で評価した。
○:ブリードアウトが実質的に観察されない。
×:ガラスもしくはフィルム面にブリードアウトが観察され、変色も目視で観察される。
【0041】
(9)紫外線照射での評価
紫外線の強いランプとしてキセノンランプ照射器(ATLAS社製SUNTEST+)を用い、ブラックパネル温度60℃にて300時間照射し、照射前の色相(L1*、a1*、b1*)と照射後の色相(L2*、a2*、b2*)を色差計(日本電色製SZS−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)にて測定した。
下記式にてΔE*を求めた。
ΔE*={(L1*−L2*)2+(a1*−a2*)2+(b1*−b2*)21/2
【0042】
[実施例1]
表1および表2記載の共重合ポリマーに表1および表2記載の硫酸バリウムおよびルチル型二酸化チタンを添加し、それぞれ280℃に加熱された2台の押出機に供給し、層Aのポリマーおよび層Bのポリマーを、層Aと層BがB/A/Bとなるような3層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを表1記載の延伸温度にて加熱し長手方向(縦方向)に2.8〜3.4倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.5〜3.7の倍率で延伸した。その後テンター内で表3記載の条件で、熱固定を行い、縦方向の弛緩、横方向の幅入れを行い、室温まで冷やして二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表4に記載の通りであった。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
表1および表2において、略号は以下のとおりである。
Tg :ガラス転移点
Tm :融点
PET:ポリエチレンテレフタレート
IPA:イソフタル酸
NDC:2,6−ナフタレンジカルボン酸
PMX:ポリメチルペンテン
なお、二酸化チタンは全てルチル型結晶の粒子を用いた。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
[実施例2〜8]
表1、表2および表3に記載の条件にて実施する以外は実施例1と同様にしてフィルムを製膜した。得られたフィルムの特性は表4に記載のとおりであった。
【0049】
[比較例1]
表1、表2および表3に記載の条件にて実施する以外は実施例1と同様にしてフィルムを製膜した。得られたフィルムは、ルチル型二酸化チタンの添加量が少なく、紫外線に対する耐性に劣るものであった。
【0050】
[比較例2]
表1、表2および表3に記載の条件にて実施する以外は実施例1と同様にしてフィルムを製膜した。得られたフィルムの特性は表4に記載のとおりであり、硫酸バリウムの添加量が少なく反射率に劣るものであった。
【0051】
[比較例3]
表1、表2および表3に記載の条件にて実施する以外は実施例1と同様にしてフィルムの製膜を試みたが、共重合ポリエチレンテレフタレートを使用していないため、延伸性が低く、フィルムが作製できなかった、
【0052】
[比較例4]
表1、表2および表3に記載の条件にて実施する以外は実施例1と同様にしてフィルムの製膜を試みたが、硫酸バリウム、ルチル型二酸化チタンの添加量が多く、延伸性が低いため、フィルムが作製できなかった。
【0053】
[比較例5]
比較例1と同様にフィルムを作成し、その片面にポリウレタンエマルジョン液(AP−40 大日本インキ社製)を乾燥後の厚みで0.3μmに塗布し、110℃のオーブンにて乾燥させた。さらにこの表面にユーダブルUV6010(日本触媒社製、溶液濃度20%状態)を用い、乾燥後の厚みが5μmになるように150℃のオーブンにて乾燥させ、塗工面側から反射性能、紫外線耐性、ブリードアウトを評価した。得られたフィルムの特性は表4に記載のとおりであり、反射性能、紫外線耐性に優れるものの、ブリードアウトが見られた。
【0054】
[比較例6]
比較例5のユーダブルUV6010を下記の塗液に置き換え、乾燥後の厚みを4μmにした以外は比較例5と同様にサンプル作成を行い、評価を行った。
【0055】
塗液の組成は以下のとおりである。
ユーダブルUV714(日本触媒社製) 10重量部
スミジュールN3200(住友バイエルンウレタン社製)0.5重量部
酢酸エチル/トルエン(重量比1/1) 12重量部
【0056】
得られたサンプルの塗工面側から反射性能、紫外線耐性、ブリードアウトを評価した。得られたサンプルの特性は表4に記載のとおりであり、反射性能、紫外線耐性に優れるものの、ブリードアウトが見られた。
【0057】
[比較例7]
層Aの樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いこの層に無機微粒子として炭酸カルシウムを14重量%、層Bの樹脂としてポリエチレンテレフタレートに非相溶樹脂であるポリメチルペンテン樹脂を10重量%、ポリエチレングリコール1重量%混合し、実施例1に準じてフィルムを製膜した。得られたフィルムの特性は表4に記載のとおりであり、反射率、紫外線耐性に劣る結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、可視光領域の反射率が高く、商品や店舗の宣伝に、駅の案内表示板等に使用する内照式電飾看板や液晶表示装置をはじめとした各種の反射板基材として、中でも特に平板型情報表示装置(液晶ディスプレイ等)の反射基材や太陽電池のバックシートに最適に用いることができる。
【0059】
また紙代替、すなわちカード、ラベル、シール、宅配伝票、ビデオプリンタ用受像紙、インクジェット、バーコードプリンタ用受像紙、ポスター、地図、無塵紙、表示板、白板、感熱転写、オフセット印刷、テレフォンカード、ICカードなどの各種印刷記録用途の基材としても用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径0.1〜10μmの硫酸バリウム粒子21〜60重量%および平均粒子径0.1〜5.0μmのルチル型二酸化チタン粒子1〜40重量%を含むポリエステル組成物の層A、この層と隣接し平均粒子径0.1〜10μmの硫酸バリウム粒子0.1〜15重量%および平均粒子径0.1〜5.0μmのルチル型二酸化チタン粒子1〜15重量%を含むポリエステル組成物の層Bから構成される積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
層Aのポリエステルが共重合成分を全ジカルボン酸成分あたり1〜15モル%含むポリエチレンテレフタレートである、請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
面光源反射板として用いる請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2006−212925(P2006−212925A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27676(P2005−27676)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】