説明

積層体およびその用途

【課題】低温ヒートシール性、透明性に優れ、ヒートシール層の動摩擦係数が小さく、二次成形の際のハンドリングに優れる、包装容器等に好適に用いられる積層体、該積層体からなる包装用容器を提供すること。
【解決手段】本発明の積層体は、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層〔I〕と、(A)プロピレンから導かれる単位を50〜95モル%の量で含有し、融点が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されず、極限粘度が0.1〜12dl/gであり、分子量分布が3.0以下であるプロピレン・α−オレフィン共重合体と、(B)ポリプロピレン系樹脂と、(C)ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤と、(D)シリコンオイルからなる滑剤とを特定量含むポリプロピレン系樹脂組成物からなるヒートシール層〔II〕とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体およびその用途に関する。詳しくは、特定の樹脂組成物からなるヒートシール層を有する、包装用容器などに好適に用いられる積層体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、引張強度、剛性、表面硬度、耐衝撃強度、耐寒性などの機械特性、光沢性、透明性などの光学特性、無毒性、無臭性などの食品衛生性などに優れており、食品等の様々な物品を包装するための包装材料として、広く利用されている。
【0003】
ポリプロピレン単層フィルムは、通常耐熱性に優れているため、該フィルム単独ではヒートシール温度まで加熱すると収縮してしまい、ヒートシールすることが困難である。このため、多くのポリプロピレンフィルムには、ヒートシール層が設けられている。
【0004】
ヒートシール層を有するポリプロピレン複合フィルムが数多く知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、結晶性ポリプロピレン層と、該層の少なくとも片面上に積層された結晶性プロピレンとプロピレン・1−ブテンランダム共重合体とを含む層(ヒートシール層)を有する複合フィルムが開示されている。前記ヒートシール層には、さらに抗ブロッキング剤、スリップ剤が添加されていてもよいことが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の複合フィルムは、80℃以上の温度でヒートシール性が発現するフィルムであり、またブロッキング力も大きかった。このため低温でのヒートシール性と耐ブロッキング性の点において、改良の余地があった。
【特許文献1】特開平8−238731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温でのヒートシール性(以下、低温ヒートシール性とも記す)、透明性に優れ、ヒートシール層の動摩擦係数が小さく、二次成形の際のハンドリングに優れる、包装容器等に好適に用いられる積層体、該積層体からなる包装用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン系樹脂組成物からなる層をヒートシール層として設けることにより、前記課題を解決することができることを見出し本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明の積層体は、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層〔I〕と、(A)(1)プロピレンから導かれる単位を50〜95モル%の量で、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を5〜50モル%の量で含有し、(2)示差走査熱量測定(DSC)にて、測定される融点(Tm)が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されず、(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、(4)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下であるプロピレン・α−オレフィン共重合体100〜40重量部と、(B)融点が120℃以上のポリプロピレン系樹脂0〜60重量部(ただし、前記(A)と(B)との合計を100重量部とする)と、(C)平均粒径が、0.5〜5μmのポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤0.
01〜0.3重量部と、(D)粘度が500〜25万mm2/Sのシリコンオイルからな
る滑剤0.1〜3重量部とを含むポリプロピレン系樹脂組成物からなるヒートシール層〔II〕とを有する。
【0009】
前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)が、(5)示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが50〜110℃であり、かつ該融点Tmと、α−オレフィン構成単位含量M(モル%)との関係が、
−2.6M+130 ≦ Tm ≦ −2.3M+155であることが好ましい。
【0010】
前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)が、下記一般式(1a)で表される遷移金属化合物(1a)を含む触媒の存在下に、プロピレンとα−オレフィンとを共重合して得られたものであることが好ましい。
【0011】
【化1】

(式(1a)中、R1、R3は水素であり、R2、R4は炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異
なっていてもよく、R5からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成しても
よい。R13とR14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。)
前記(C)ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤が、ポリメチルメタクリレートからなるブロッキング防止剤であることが好ましい。
【0012】
前記(B)ポリプロピレン系樹脂が、プロピレンから導かれる単位および、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を有するプロピレン系ランダム共重合体であることが好ましい。
【0013】
前記層〔I〕の厚さが10〜60μmであり、前記層〔II〕の厚さが0.1〜5μmであることが好ましい。
本発明の包装容器は、前記本発明の積層体から形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温ヒートシール性、透明性に優れ、ヒートシール層の動摩擦係数が小さく、二次成形の際のハンドリングに優れる、包装容器等に好適に用いられる積層体、
該積層体からなる包装用容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の積層体は、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層〔I〕と、(A)(1)プロピレンから導かれる単位を50〜95モル%の量で、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を5〜50モル%の量で含有し、(2)示差走査熱量測定(DSC)にて、測定される融点(Tm)が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されず、(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、(4)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下であるプロピレン・α−オレフィン共重合体100〜40重量部と、(B)融点が120℃以上のポリプロピレン系樹脂0〜60重量部(ただし、前記(A)と(B)との合計を100重量部とする)と、(C)平均粒径が、0.5〜5μmのポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤0.01〜0.3重量部と、(D)粘度が500〜25万mm2/Sのシリコンオイルからなる滑剤0
.1〜3重量部とを含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる層〔II〕とを有する。
【0016】
<層〔I〕>
本発明の積層体を構成する層〔I〕は、ポリプロピレンン系樹脂(i)から形成される。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂(i)としては、特に限定はないが、通常はDSCで測定される融点(Tm)が140℃以上のポリプロピレン系樹脂が用いられる。本発明では、ポリプロピレン系樹脂(i)として従来公知のポリプロピレンを広く用いることができる。
【0018】
このポリプロピレン系樹脂(i)は、ホモポリプロピレンであってもよく、プロピレンと少量(たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%未満の量)のプロピレン以外のオレフィンとから導かれる単位を含むプロピレン系共重合体であってもよい。共重合体としてはランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。プロピレン系共重合体を形成する他のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
【0019】
本発明では、ポリプロピレン系樹脂(i)として、プロピレン単独重合体が好ましく用いられる。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(i)は、従来公知の固体状チタン触媒成分あるいはメタロセン化合物触媒成分を用いて、公知の方法により製造することができる。
【0020】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(i)は、融点(Tm)が140℃以上、好ましくは140〜165℃、より好ましくは150〜165℃である。融点がこの範囲にあると、剛性、耐熱性と透明性のバランスに優れる。ポリプロピレン系樹脂(i)は、後述する層〔II〕に含まれる(A)プロピレン・α−オレフィン共重合体や(B)ポリプロピレン系樹脂よりも通常融点が高い。
【0021】
また、ポリプロピレン系樹脂(i)のメルトフローレートMFR(ASTMD1238;230℃、2.16kg荷重下)は、通常0.1〜10g/10分、好ましくは0.5〜8g/10分であることが望ましい。
【0022】
また、層〔I〕には、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば帯電防止
剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、滑剤等が挙げられる。
添加剤が含まれる場合には、前記プロピレン系樹脂(i)100重量部あたり、通常は0.01〜5重量部の範囲で用いられる。
【0023】
本発明の積層体は、通常フィルム状またはシート状(以下、これらを総称してフィルムともいう)である。層〔I〕の厚さは、積層体を用いる用途等によっても異なるが、通常は10〜60μm、好ましくは15〜50μmである。前記範囲では包装時のハンドリングに優れるため好ましい。
【0024】
また、層〔I〕は延伸されていることが、剛性および耐熱性の点で好ましい。なお、延伸は、縦軸あるいは横軸方向に延伸を行う一軸延伸でも、縦軸および横軸方向に延伸を行う二軸延伸でもよい。
【0025】
<層〔II〕>
本発明の積層体を構成する層〔II〕は、下記(A)プロピレン・α−オレフィン共重合体と、(B)ポリプロピレン系樹脂と、(C)ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤と、(D)シリコンオイルからなる滑剤とを含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる。
【0026】
(A)プロピレン・α−オレフィン共重合体
本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、以下の(1)〜(4)の特性を満たすものであり、好ましくは、さらに以下の(5)、(6)の特性の一つ以上を満たすものである。特に好ましくは、(1)〜(6)の特性の全てを満たす。
【0027】
(1)プロピレンから導かれる単位を50〜95モル%、好ましくは60〜93モル%、より好ましくは70〜90モル%の量で含有し、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を5〜50モル%、好ましくは7〜40モル%、より好ましくは10〜30モル%の量で含有する。プロピレンが50モル%以下であると、ベール状となるためハンドリング性が非常に悪化し、プロピレンが95モル%以上であると、組合されるポリプロピレン系樹脂(B)との区別がつかず、好ましくない。
【0028】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、プロピレン以外のα−オレフィンから導かれる構成単位を複数組み合わせて含んでいてもよい。
プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)としては、プロピレンおよび1−ブテンから導かれる単位で構成される、プロピレン・1−ブテン共重合体が望ましい。
【0029】
(2)示差走査熱量測定(DSC)にて、測定される融点(Tm)が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されない。好ましくは、融点(Tm)が50〜110℃、より好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは65〜90℃である。融点が50℃より低いと、室温で粘着性を持つようになり、ブロッキング等の問題を生じる傾向があり、融点が110℃より高いと、発明の効果が薄れるので好ましくない。
【0030】
(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/g、好ましくは0.5〜12dl/g、より好ましくは1〜12dl/gである。
【0031】
(4)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下であり、好ましくは2.0〜3.0であり、より好ましくは2.0〜2.5である。Mw/Mnが3.0より大きくなると、積層体のブロッキング性に影響を与えると考えられる低分子量成分量が多くなり、好ましくない。
【0032】
(5)示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが通常50〜110℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは65〜90℃であり、かつ該融点Tmと、α−オレフィン構成単位含量M(モル%)との関係が、
−2.6M+130 ≦ Tm ≦ −2.3M+155
を満たす。
【0033】
(6)(i)頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、または(ii)頭−尾結合したプロピレ
ン単位とα−オレフィンとからなり、かつ第2単位目にプロピレン単位を含むプロピレン・α−オレフィン3連鎖を、3連鎖中の第2単位目のプロピレン単位の側鎖メチル基について、13C−NMRスペクトル(ヘキサクロロブタジエン溶液、テトラメチルシランを基準)で測定したとき、19.5〜21.9ppmに表れるピークの全面積を100%とした
場合に、21.0〜21.9ppmに表れるピークの面積(トリアドタクティシティ)が9
0%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上である。立体規則性を示すトリアドタクティシティが90%より低いと、積層体のブロッキング性や動摩擦係数に影響を与えると考えられる低立体規則性成分量が多くなり、好ましくない。
【0034】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の立体規則性は、トリアドタクティシティ(mm分率)によって評価することができる。
例えば、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体において、このmm分率は、ポリマー鎖中に存在する3個の頭−尾結合したプロピレン単位連鎖を表面ジグザグ構造で表したとき、そのメチル基の分岐方向が同一である割合として定義され、下記のように13C−NMRスペクトルから求められる。
【0035】
このmm分率を13C−NMRスペクトルから求める際には、具体的にポリマー鎖中に存在するプロピレン単位を含む3連鎖として、 (i)頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、および (ii)頭−尾結合したプロピレン単位とα−オレフィン単位とからなりかつ第2単
位目がプロピレン単位であるプロピレン単位・α−オレフィン単位3連鎖について、mm分率が測定される。
【0036】
これら3連鎖(i)および(ii)中の第2単位目(プロピレン単位)の側鎖メチル基のピー
ク強度からmm分率が求められる。以下に詳細に説明する。
プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の13C−NMRスペクトルは、サンプル管中でプロピレン・α−オレフィン共重合体をロック溶媒として少量の重水素化ベンゼンを含むヘキサクロロブタジエンに完全に溶解させた後、120℃においてプロトン完全デカップリング法により測定される。測定条件は、フリップアングルを45゜とし、パルス間隔を3.4T1以上(T1はメチル基のスピン格子緩和時間のうち最長の値)とする。メチレン基およびメチン基のT1は、メチル基より短いので、この条件では試料中のすべての
炭素の磁化の回復は99%以上である。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として頭−尾結合したプロピレン単位5連鎖(mmmm)の第3単位目のメチル基炭素ピークを21.593ppmとして、他の炭素ピークはこれを基準とした。
【0037】
このように測定されたプロピレン・α−オレフィン共重合体の13C−NMRスペクトルのうち、プロピレン単位の側鎖メチル基が観測されるメチル炭素領域(約19.5〜21.9ppm)は、 第1ピーク領域(約21.0〜21.9ppm)、 第2ピーク領域(約20.2〜21.0ppm)、 第3ピーク領域(約19.5〜20.2ppm)に分類される。
【0038】
そしてこれら各領域内には、表1に示すような頭−尾結合した3分子連鎖(i)および(ii)中の第2単位目(プロピレン単位)の側鎖メチル基ピークが観測される。
【0039】
【表1】

表1中、Pはプロピレンから導かれる単位、Bはブテンなどのα−オレフィンから導かれる単位を示す。
【0040】
表1に示される頭−尾結合3連鎖(i)および(ii)のうち、(i)3連鎖がすべてプロピレン単位からなるPPP(mm)、PPP(mr)、PPP(rr)についてメチル基の方向を下記に表面ジグザグ構造で図示するが、(ii)α−オレフィン単位を含む3連鎖(PPB、BPB)のmm、mr、rr結合は、このPPPに準ずる。
【0041】
【化2】

第1領域では、mm結合したPPP、PPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
【0042】
第2領域では、mr結合したPPP、PPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基およびrr結合したPPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
【0043】
第3領域では、rr結合したPPP3連鎖の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
したがってプロピレン系エラストマーのトリアドタクティシティ(mm分率)は、 (i)頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、または (ii)頭−尾結合したプロピレン単位とα
−オレフィン単位とからなり、かつ第2単位目にプロピレン単位を含むプロピレン・α−オレフィン3連鎖を、3連鎖中の第2単位目のプロピレン単位の側鎖メチル基について、13C−NMRスペクトル(ヘキサクロロブタジエン溶液、テトラメチルシランを基準)で測定したとき、 19.5〜21.9ppm(メチル炭素領域)に表れるピークの全面積を100%と
した場合に、 21.0〜21.9ppm(第1領域)に表れるピークの面積の割合(百分率)として、下記式から求められる。
【0044】
【数1】

本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、このようにして求められるmm分率が、90%以上好ましくは92%以上より好ましくは94%以上である。
【0045】
なおプロピレン系エラストマーは、上記のような頭−尾結合した3連鎖(i)および(ii)
以外にも、下記構造(iii)、(iv)および(v)で示されるような位置不規則単位を含む部分構造を少量有しており、このような他の結合によるプロピレン単位の側鎖メチル基に由来するピークも上記のメチル炭素領域(19.5〜21.9ppm)内に観測される。
【0046】
【化3】

上記の構造(iii)、(iv)および(v)に由来するメチル基のうち、メチル基炭素Aおよびメチル基炭素Bは、それぞれ17.3 ppm、17.0ppmで共鳴するので、炭素Aおよび炭
素Bに基づくピークは、前記第1〜3領域(19.5〜21.9ppm)内には現れない。さらにこの
炭素Aおよび炭素Bは、ともに頭−尾結合に基づくプロピレン3連鎖に関与しないので、上記のトリアドタクティシティ(mm分率)の計算では考慮する必要はない。
【0047】
またメチル基炭素Cに基づくピーク、メチル基炭素Dに基づくピークおよびメチル基炭素D'に基づくピークは、第2領域に現れ、メチル基炭素Eに基づくピークおよびメチル
基炭素E'に基づくピークは第3領域に現れる。
【0048】
したがって第1〜3メチル炭素領域には、PPE−メチル基(プロピレン−プロピレン−エチレン連鎖中の側鎖メチル基)(20.7ppm付近)、EPE−メチル基(エチレン
−プロピレン−エチレン連鎖中の側鎖メチル基)(19.8ppm付近)、メチル基C、メ
チル基D、メチル基D'、メチル基Eおよびメチル基E'に基づくピークが現れる。
【0049】
このようにメチル炭素領域には、頭−尾結合3連鎖(i)および(ii)に基づかないメチル
基のピークも観測されるが、上記式によりmm分率を求める際にはこれらは下記のように
補正される。
【0050】
PPE−メチル基に基づくピーク面積は、PPE−メチン基(30.6ppm付近で共鳴
)のピーク面積より求めることができ、EPE−メチル基に基づくピーク面積は、EPE−メチン基(32.9ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。メチル基
Cに基づくピーク面積は、隣接するメチン基(31.3ppm付近で共鳴)のピーク面積よ
り求めることができる。メチル基Dに基づくピーク面積は、前記構造(iv)のαβメチレン炭素に基づくピーク(34.3ppm付近および34.5ppm付近で共鳴で共鳴)のピーク面積の和の1/2より求めることができ、メチル基D'に基づくピーク面積は、前記構造(v)メチル基E'のメチル基の隣接メチン基に基づくピーク(33.3ppm付近で共鳴)の面
積より求めることができる。メチル基Eに基づくピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.7ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができ、メチル基E'に基づくピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.3ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることが
できる。
【0051】
したがってこれらのピーク面積を第2領域および第3領域の全ピーク面積より差し引くことにより、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖(i)および(ii)に基づくメチル基のピ
ーク面積を求めることができる。
【0052】
以上により頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖(i)および(ii)に基づくメチル基のピ
ーク面積を評価することができるので、上記式に従ってmm分率を求めることができる。なおスペクトル中の各炭素ピークは、文献(Polymer,30,1350(1989))を参考にして帰属す
ることができる。
【0053】
このような本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、プロピレンと炭素数2または4〜20のα−オレフィンと、必要に応じて少量のその他のオレフィンを、メタロセン化合物を含む触媒の存在下に共重合することにより好適に得ることができ、好ましくは、WO2004/087775号またはWO01/27124号公報に記載の方法で製造することができる。
【0054】
より好ましくは、本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、下記一般式(1a)で表される遷移金属化合物(1a)を含む触媒の存在下に、プロピレンとα−オレフィンとを共重合して得られたものであることが望ましい。ここで、遷移金属化合物(1a)を含む触媒は、(2a)有機金属化合物と、(2b)有機アルミニウムオキシ化合物と、(2c)遷移金属化合物(1a)と反応してイオン対を形成する化合物と、から選ばれる少なくとも1種の化合物を、遷移金属化合物(1a)とともに含む触媒であることが望ましい。
【0055】
【化4】

(式(1a)中、R1、R3は水素であり、R2、R4は炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異
なっていてもよく、R5からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成しても
よい。R13とR14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。)
【0056】
上述の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、tert−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基;ベンジル基、クミル基、1,1−ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などの環状不飽和炭化水素基の置換した飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フリル基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−フェニルアミノ基、ピリル基、チエニル基などのヘテロ原子含有炭化水素基等を挙げることができる。
【0057】
ケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基などを挙げることができる。
【0058】
また、R5からR12の隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。このよう
な置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基などを挙げることができる。
【0059】
また、R13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(1a)において、シクロペンタジエニル環に置換するR2、R4は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。中でも、R2はtert−ブチル基、アダマンチ
ル基、トリフェニルメチル基のような嵩高い置換基であることがより好ましく、R4はメ
チル基、エチル基、n−プロピル基のようにR2より立体的に小さい置換基であることが
より好ましい。ここでいう立体的に小さいとは、その置換基が占有する体積が小さいことを指す。
【0060】
前記一般式(1a)において、フルオレン環に置換するR5からR12のうち、R6、R7
、R10、R11の任意の二つ以上は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。特に配位子の合成上の容易さから、左右対称、すなわちR6とR11およびR7とR10が同一の基であることが好ましい。このような好ましい様態の中には、R6とR7が脂肪族環(AR−1)を形成し、かつ、R10とR11が脂肪族環(AR−1)と同一な脂肪族環(AR−2)を形成している場合も含まれる。
【0061】
前記一般式(1a)において、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環を架橋するYは炭素原子である。このYに置換するR13とR14は同時に炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。これらは相互に同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。炭素数6〜20のアリール基としては、前述の環状不飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基の置換した飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有環状不飽和炭化水素基を挙げることができる。また、R13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。このような置換基としては、フルオレニリデン基、10−ヒドロアントラセニリデン基、ジベンゾシクロヘプタジエニリデン基などが好ましい。
【0062】
前記一般式(1a)において、Mは第4族遷移金属であり、具体的にはTi、Zr、Hf等が挙げられる。また、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれる。jは1〜4の整数であり、jが2以上の時は、Qは互いに同一でも異なっていてもよい。ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、炭化水素基の具体例としては前述と同様のものなどが挙げられる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類等が挙げられる。Qは少なくとも1つがハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
【0063】
このような遷移金属化合物(1a)としては、たとえばジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、 ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニ
ル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0064】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)を製造する際に好適に用いられる触媒は、上述の遷移金属化合物(1a)とともに、(2a)有機金属化合物、(2b)有機アルミニウムオキシ化合物、(2c)遷移金属化合物(1a)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。これらの(2a)、(2b)、(2c)の化合物には特に制限はないが、好ましくは、WO2004/087775号またはWO01/27124号公報に記載の化合物が挙げられ、例えば以下のものが挙げられる。
【0065】
(2a)有機金属化合物としては、下記のような第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
(2a−1)一般式:RamAl(ORbnpq
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物。このような化合物の具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどを例示することができる。
【0066】
(2a−2)一般式:M2AlRa4
(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154などを例示することが
できる。
【0067】
(2a−3)一般式:Rab3
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである)で表される第2
族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0068】
これらの有機金属化合物(2a)のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましい。また、このような有機金属化合物(2a)は、1種単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0069】
(2b)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0070】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。2)ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0071】
なお、上記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また、回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(2a−1)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同一の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0072】
また、ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物としては、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。これらの有機アルミニウムオキシ化合物(2b)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0073】
(2c)遷移金属化合物(1a)と反応してイオン対を形成する化合物としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。このような(2c)の化合物は、1種単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0074】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の製造においては、遷移金属化合物(1a)とともに、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(2b)を併用した触媒を用いると、特に高い重合活性を示すため好ましい。
【0075】
また、本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の製造に用いる重合用触媒は、必要に応じて担体を用いたものであってもよく、その他の助触媒成分を含むものであってもよい。
【0076】
このような触媒は、あらかじめ各成分を混合するか、または担体に担持させて調製してもよく、重合系に各成分を同時にまたは逐次に添加して用いてもよい。
本発明に係るプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、好適には、上述の触媒の存在下に、プロピレンと、炭素数2または4〜20のα−オレフィン、特に好ましくはブテンと、必要に応じて少量のその他のオレフィンとを共重合して得られる。共重合に際し、各モノマーは、製造するプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)中の各構成単位量が所望の比率となる量で用いられればよく、具体的には、プロピレン/α−オレフィンのモル比で50/50〜95/5、好ましくは60/40〜93/7、より好ましくは70/30〜90/10の割合で用いるのが望ましい。
【0077】
共重合条件は、特に限定されるものではなく、たとえば、重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲、重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下で行うことができる。また、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる二段以上に分けて行うことも可能である。プロピレン・α−オレフィン共
重合体(A)の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができ、触媒中の(2a)、(2b)または(2c)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量はモノマー1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
【0078】
(B)ポリプロピレン系樹脂
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(B)としては、DSCで測定される融点(Tm)が120℃以上のポリプロピレン系樹脂を制限なく用いることができ、本発明では、ポリプロピレン系樹脂(B)として従来公知のポリプロピレンを広く用いることができる。
【0079】
このポリプロピレン系樹脂(B)は、ホモポリプロピレンであってもよく、プロピレンと少量(たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%未満の量)のプロピレン以外のオレフィンとから導かれる単位を含むプロピレン系共重合体であってもよい。共重合体としてはランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。本発明では、ポリプロピレン系樹脂(B)として、プロピレンランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0080】
プロピレンランダム共重合体を形成する他のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。上記のようなα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0081】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)は、従来公知の固体状チタン触媒成分を用いて、公知の方法により製造されたポリプロピレンが好適である。またメタロセン化合物触媒成分を用いて得られるポリプロピレンも使用することができる。
【0082】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)は、融点(Tm)が120℃以上、好ましくは120℃以上、160℃未満、より好ましくは120〜145℃であることが好ましい。融点がこの範囲にあると、剛性と低温ヒートシール性のバランスに優れる。ポリプロピレン系樹脂(B)としては、前記のプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の融点よりも高い融点のポリプロピレンを用いる。またポリプロピレン系樹脂(B)の融点は、前記ポリプロピレン系樹脂(i)よりも、通常低い融点である。
【0083】
ポリプロピレン系樹脂(B)の融点(TmB)とプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の融点(TmA)との差(TmB−TmA)は、10〜100℃、好ましくは20〜100℃である。
【0084】
またこのポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレートMFR(ASTMD1238;230℃、2.16kg荷重下)は、通常0.1〜400g/10分、好ましくは0.5〜100g/10分であることが望ましい。
本発明で用いるプロピレン系樹脂(B)は、通常、プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)よりは硬度が高い。
【0085】
(C)ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤
本発明で用いるポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤(C)としては、平均粒径が、0.5〜5μmであれば、制限なく用いることができ、本発明では、従来公知のポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤を用いることができる。なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤とは、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの粒子からなるブロッキング防止剤を示す。
【0086】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤(C)の平均粒径は、0.5〜5μmであるが、好ましくは1〜4μm、より好ましくは1〜3μmである。前記範囲では、耐ブロッキング性と透明性のバランスに優れるフィルムが得られる。
【0087】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、およびそれらの架橋体等が挙げられ、中でもポリメチルメタクリレート(PMMA)、およびその架橋体が好ましい。
【0088】
本発明に用いるポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤(C)としては、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、MX−180TA(PMMAビーズ、平均粒径1.8μm、綜研化学株式会社製)、アートパールJ−4P(PMMAビーズ、平均粒径2.2μm、根上工業株式会社製)を用いることができる。また、前記平均粒径はレーザー回折法により測定した粒径である。
【0089】
(D)シリコンオイルからなる滑剤
本発明で用いるシリコンオイルからなる滑剤(D)としては、粘度が500〜25万mm2/Sであれば制限なく用いることができ、本発明では、従来公知のシリコンオイルを
滑剤として用いることができる。
【0090】
シリコンオイルからなる滑剤(D)の粘度は、500〜25万mm2/Sであるが、好
ましくは800〜10万mm2/S、より好ましくは1000〜8万mm2/Sである。前記範囲では、スリップ性の良好なフィルムを得ることが出来る。なお、滑剤(D)の粘度はJIS K2283(原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法)記載の方法によって測定することができる。
【0091】
本発明に用いるシリコンオイルからなる滑剤(D)としては、市販品を用いてもよく、市販品としては、信越化学株式会社製、KF−96H−1000CS、KF−96H−6000CS、KF−96H−60000CS等を用いることができる。
【0092】
ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、前記(A)〜(D)を含み、その含有量は、(A)プロピレン・α−オレフィン共重合体100〜40重量部、好ましくは100〜50重量部、(B)ポリプロピレン系樹脂0〜60重量部、好ましくは0〜50重量部(ただし、前記(A)と(B)との合計を100重量部とする)、(C)ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤0.01〜0.3重量部、好ましくは0.02〜0.2重量部、(D)シリコンオイルからなる滑剤0.1〜3重量部、好ましくは0.2〜2重量部含有する。
【0093】
ポリプロピレン系樹脂組成物が、前記範囲で(A)〜(D)を含有することにより、本発明の積層体を構成する層〔II〕は、低温ヒートシール性に優れ、動摩擦係数が小さい。また、層〔II〕を有する本発明の積層体は透明性に優れ、二次成形の際のハンドリングに優れる。このため包装体容器等に好適に用いることができる。
【0094】
また層〔II〕には、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば帯電防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
添加剤が含まれる場合には、前記(A)と(B)との合計を100重量部あたり、通常は0.01〜5重量部の範囲で用いられる。
【0095】
本発明の積層体は、通常フィルムであり、層〔II〕の厚さは、積層体の用いる用途等
によっても異なるが、通常は0.1〜5μm、好ましくは0.5〜3μmである。前記範囲ではヒートシール性と透明性のバランスに優れるため好ましい。
【0096】
また、延伸しない場合、スリップ剤とアンチブロッキング剤のフィルム表面へのブリードが促進されないため、層〔II〕は延伸されていることが、スリップ性と耐ブロッキング性発現の点で好ましい。なお、延伸は、縦軸あるいは横軸方向に延伸を行う一軸延伸でも、縦軸および横軸方向に延伸を行う二軸延伸でもよい。
【0097】
本発明において、(A)プロピレン・α−オレフィン共重合体、(B)ポリプロピレン系樹脂、(C)ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤、および(D)シリコンオイルからなる滑剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物を調製するには、例えば以下の方法を採用することができ、たとえばV型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機により混合する方法、および/または押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の混練機により混練する方法を組合わせて、あるいは単独で採用し、各成分を混合すればよい。混合して得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、ペレット状ないし顆粒状などに調製してもよく、そのままポリプロピレン系樹脂組成物からなる層〔II〕となるフィルム状またはシート状などの成形体に成形してもよい。
【0098】
<積層体>
本発明の積層体は前記ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層〔I〕および、前記ポリプロピレン系樹脂組成物からなるヒートシール層〔II〕を有する積層体である。積層体の層構成としては、少なくとも一方の表層がヒートシール層〔II〕である。層構成の具体例としては、層〔I〕/層〔II〕の二層からなる積層体や、層〔II〕/層〔I〕/層〔II〕の三層からなる積層体が挙げられる。
【0099】
本発明の積層体は、通常フィルムであり、延伸処理が施された延伸フィルムであることが好ましい。
本発明の積層体において、層〔I〕と層〔II〕とを、シングルマニーホールド法、マルチマニーホールド法等のTダイ等を用いた共押出により形成した場合には、前記層〔I〕と層〔II〕とは隣接する。
【0100】
一方、例えば、ポリプロピレン系樹脂(i)からなるフィルムと、前記ポリプロピレン系樹脂組成物からなるフィルムとを別々に製造し、ポリプロピレン系樹脂(i)からなるフィルムとポリプロピレン系樹脂組成物からなるフィルムとを貼り合わせることにより積層体を得る場合には、得られた積層体の層〔I〕と層〔II〕との間に接着剤層を有していてもよい。
【0101】
本発明の積層体は、例えば以下の方法で製造することができる。
(1):前記ポリプロピレン系樹脂(i)と、前記ポリプロピレン系樹脂組成物とを、シングルマニーホールド法、マルチマニーホールド法等のTダイ等を用いて共押出することにより、積層体を形成する方法。なお、前記共押出の後に、共押出で得られた積層体に一軸または二軸延伸を施すことが好ましい。
【0102】
(2):前記ポリプロピレン系樹脂(i)を溶融押出することにより、ポリプロピレン系樹脂(i)からなるフィルムを形成し、必要に応じて一軸または二軸延伸を施し、前記ポリプロピレン系樹脂(i)からなるフィルム上に、前記ポリプロピレン系樹脂組成物を溶融押出するか、あるいは予め形成した前記ポリプロピレン系樹脂組成物からなるフィルムを積層し、積層体を得る方法。なお、前記積層体に一軸または二軸延伸を施すことが好ましい。特に前記積層体を延伸する際には、ポリプロピレン系樹脂(i)からなるフィルムの未延伸方向に延伸することが好ましい。
【0103】
また前記ポリプロピレン系樹脂(i)からなるフィルムに、ポリプロピレン系樹脂組成物からなるフィルムを積層する場合には、通常接着剤で貼り合わせることにより積層する。
【0104】
また、本発明の積層体は、延伸が施された積層体であることが、スリップ性と耐ブロッキング性発現の点で好ましい。積層体の延伸方法としては、例えばテンター法が挙げられる。
【0105】
テンター法で二軸延伸を行う場合には、延伸を施す前の積層体を、延伸に適した温度(例えば80〜130℃)に加熱し、遅(前)ロールと、速(後)ロール間で縦方向に延伸される。次いで、テンター部に入り、フィルムの両端を保持したまま加熱(例えば140〜180℃)され、横方向に延伸される。次いで、この積層体に熱処理を施すことにより、積層体の物性を安定化させ、巻き取り機によって巻き上げることにより、延伸された積層体が得られる。また、縦方向と横方向の延伸を同時に行う二軸同時のテンター法を用いてもよい。
【0106】
延伸倍率としては、層〔I〕、層〔II〕ともに通常、縦方向が4〜6倍、横方向が7〜11倍である。前記延伸倍率の範囲は、フィルムの機械物性、ヒートシール性能、ブロキング性、およびスリップ性発現のため好ましい。
【0107】
<包装用容器>
本発明の包装容器は前記積層体から形成される。
本発明の包装容器は、前記フィルム状あるいはシート状の積層体を所望の形状に成型することにより得てもよく、積層体を所望の包装容器の形状となるように製造することにより得てもよい。
【0108】
本発明の包装容器は、低温ヒートシール性、透明性に優れ、ヒートシール層の動摩擦係数が小さく、二次成形の際のハンドリングに優れる積層体から形成されるため、食品包装、充填包装、繊維包装等に好適に用いられる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、重合体の物性評価は次の方法により行った。
【0110】
〔1−ブテン含量〕
13C−NMRを利用して求めた。
〔分子量分布〕
分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)により測定して求めた。測定には、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用いた。分離カラムとしては、TSKgel GNH6−HTを2本、およびTSKgel GNH6−HTLを2本用い、これらのカラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用いて、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mlとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとしては、分子量がMw<1000、およびMw>4×106については東
ソー社製を用いて、1000≦ Mw ≦4×106についてはプレッシャーケミカル社
製を用いた。なおMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を表す。
【0111】
〔融点〕
重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)によって、240℃で10分間保持した重合体サンプルを、30℃まで冷却して5分間保持した後に、10℃/分で昇温させたときの結晶溶融ピークから算出した。
【0112】
〔極限粘度[η]〕
135℃デカリン中で測定を行い、dl/gで示した。
〔メルトフローレート(MFR)〕
230℃、2.16kg荷重の条件で、ASTM D1238の方法で測定した。
【0113】
[触媒調製例1]ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドの合成
以下の実施例および比較例に用いた、(A)プロピレン・α−オレフィン共重合体の合成に用いたジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドは以下の方法により合成した。
【0114】
1)1−tert−ブチル−3−メチルシクロペンタジエンの合成
窒素雰囲気下で濃度2.0mol/リットルのtert−ブチルマグネシウムクロライド/ジエチルエーテル溶液450ml(0.90mol)に脱水ジエチルエーテル(350ml)を加えた溶液に、氷冷下で0℃を保ちながら3−メチルシクロペンテノン43.7g(0.45mmol)の脱水ジエチルエーテル(150ml)溶液を滴下し、さらに室温で15時間攪拌した。反応溶液に塩化アンモニウム80.0g(1.50mol)の水(350ml)溶液を、氷冷下で0℃を保ちながら滴下した。この溶液に水2500mlを加え攪拌した後、有機層を分離して水で洗浄した。この有機層に、氷冷下で0℃を保ちながら10%塩酸水溶液82mlを加えた後、室温で6時間攪拌した。この反応液の有機層を分離し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾過し、濾液から溶媒を留去して液体を得た。この液体を減圧蒸留(45−47℃/10mmHg)することにより14.6gの淡黄色の液体を得た。分析値を以下に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)δ6.31+6.13+5.94+5.87(s+s+t+d、2H)、3.04+2.95(s+s、2H)、2.17+2.09(s+s、3H)、1.27(d、9H)
【0115】
2)3−tert−ブチル−1,6,6−トリメチルフルベンの合成
窒素雰囲気下で1−tert−ブチル−3−メチルシクロペンタジエン13.0g(95.6mmol)の脱水メタノール(130ml)溶液に、氷冷下で0℃を保ちながら脱水アセトン55.2g(950.4mmol)を滴下し、さらにピロリジン68.0g(956.1mmol)を滴下した後、室温で4日間攪拌した。反応液をジエチルエーテル400mlで希釈後、水400mlを加えた。有機層を分離し、0.5Nの塩酸水溶液(150ml×4)、水(200ml×3)飽和食塩水(150ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾過し、濾液から溶媒を留去して液体を得た。この液体を減圧蒸留(70−80℃/0.1mmHg)することにより10.5gの黄色の液体を得た。分析値を以下に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)δ6.23(s,1H)、6.05(d,1H)、2.23(s,3H)、2.17(d,6H)、1.17(s,9H)
【0116】
3)2−(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)−2−フルオレニルプロパンの合成
フルオレン10.1g(60.8mmol)のTHF(300ml)溶液に、氷冷下でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液40ml(61.6mmol)を窒素雰囲気下で滴下し、さらに室温で5時間攪拌した(濃褐色溶液)。この溶液を再度氷冷し、3−tert−ブチル−1,6,6−トリメチルフルベン11.7g(66.5mmol)のTHF(300ml)溶液を窒素雰囲気下で滴下した。室温で14時間攪拌した後に得られた褐色溶液を氷冷し、水200mlを加えた。ジエチルエーテルで抽出、分離した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過し、濾液から溶媒を減圧下で除去して橙褐色オイルを得た。このオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)で精製して3.8gの黄色オイルを得た。分析値を以下に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)δ7.70(d,4H)、7.34−7.26(m,6H)、7.18−7.11(m,6H)、6.17(s,1H)、6.01(s,1H)、4.42(s,1H)、4.27(s,1H)、3.01(s,2H)、2.87(s,2H)、2.17(s,3H)、1.99(s,3H)、2.10(s,9H)、1.99(s,9H)、1.10(s,6H)、1.07(s,6H)
【0117】
4)ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドの合成
氷冷下で2−(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)−2−フルオレニルプロパン1.14g(3.3mmol)のジエチルエーテル(25ml)溶液にn−ブチルリチウムのヘキサン溶液5.0ml(7.7mmol)を窒素雰囲気下で滴下し、さらに室温で14時間攪拌して桃色スラリーを得た。このスラリーに−78℃でジルコニウムテトラクロライド0.77g(3.3mmol)を加え、−78℃で数時間攪拌し、室温で65時間撹拌した。得られた黒褐色スラリーを濾過し、濾物をジエチルエーテル10mlで洗浄した後、ジクロロメタンで抽出して赤色溶液を得た。この溶液の溶媒を減圧留去して0.53gの赤橙色の固体を得た。分析値を以下に示す。
1H−NMR(270MHz、CDCl3中、TMS基準)δ8.11−8.02(m,3H)、7.82(d,1H)、7.56−7.45(m,2H)、7.23−7.17(m,2H)、6.08(d,1H)、5.72(d,1H)、2.59(s,3H)、2.41(s,3H)、2.30(s,3H)、1.08(s,9H)
FD−MS:m/z=500、502、504(M+
【0118】
〔(A)プロピレン・α−オレフィン共重合体の製造〕
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、866mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン90gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで0.7MPaに加圧した。次いで、上記で得たジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温65℃、プロピレン圧0.7MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、12.5gであった。
【0119】
得られたポリマーは、プロピレン系共重合体(極限粘度[η]:1.63dl/g、融
点:76℃、MFR(230℃):7.0g/10分、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A),Mw/Mn=2.1、ブテン含量28.0mol%)であった。
【0120】
〔(B)ポリプロピレン系樹脂〕
ポリプロピレン系樹脂(B)として、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体(各オレ
フィンのモル比が、プロピレン/エチレン/ブテン=96.3/2.2/1.5であり、MFR(ASTM D 1238,230℃,2.16kg)=7.0g/10分であり、融点=138℃である)を用いた。
【0121】
〔ポリプロピレン系樹脂(i)〕
ポリプロピレン系樹脂(i)として、(株)プライムポリマー製のプロピレン単独重合
体(商品名:F113G(MFR(ASTM D 1238,230℃,2.16kg)=3.0g/10分、 融点:163℃)を用いた。
【0122】
〔評価方法〕
〔ヒートシール性(HS性)〕
長さ200mm、幅15mmの短冊状のフィルムの表面(ヒートシール層)同士を重ね合わせ、60〜140℃の所定の温度に加熱された幅10mmのシールバーを有するヒートシーラー(東洋精機製)で2kg/cm2の荷重で1秒間圧着してヒートシールを行っ
た。このサンプルを一昼夜23℃、湿度50%で状態調整したのち、23℃、湿度50%で剥離速度200mm/分、剥離角度180度で剥離した時の剥離抵抗力を求めた。
【0123】
〔摩擦係数〕
ASTM D1894に準じて、ヒートシール層の動摩擦係数を測定した。
〔全HAZE(透明性)〕
実施例で得られた積層体の全体のHAZEを、ASTM D1003に準拠して測定し
た。
【0124】
〔ブロッキング性〕
ASTM D1893に準じて評価した。下記実施例・比較例で得た延伸フィルムを巾
10cm、長さ15cmに切り出し、ヒートシール層同士を重ね合わせた後2枚のガラス板で挟み、20kgの荷重を乗せ、50℃のエアーオーブン中に放置する。3日後にサンプルを取り出し、剥離強度を万能試験機で測定し、剥離強度(N/m)をブロッキング値とした。
【0125】
〔実施例1〕
前記プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A):100重量部、PMMAビーズ(平均粒径2.2μm、根上工業株式会社製、アートパールJ−4P):0.12重量部、シリコンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−96H−1000CS、粘度1000mm2/S):1重量部からなる組成物をブレンドし、単軸押出し機を用いて混練し、ポリプロピレン系樹脂組成物(プロピレン・1−ブテンランダム共重合体樹脂組成物)をペレットとして作製した。
【0126】
ついで、得られたペレット、およびポリプロピレン系樹脂(i)を、幅300mmのダイスを備えた2種3層T−ダイ成形機を用いて、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体樹脂組成物からなる層が表層(ヒートシール層)、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層がコア層となる、3層構造の積層体(フィルム)を得た。このフィルムの層構成は、表面層:60μm/コア層:900μm/表面層:60μmであった。
【0127】
このようにして得たフィルムから9cm角のシートを切り出し、ブルックナー社製のバッチ式二軸延伸機を用いて、160℃で1分間予熱した後、縦5倍、横8倍に二軸延伸することにより、表面層:1.5μm/コア層:22μm/表面層:1.5μmの延伸フィルムを得た。
【0128】
〔実施例2〜6〕
プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A)、PMMAビーズ、シリコーンオイルおよびポリプロピレン系樹脂(i)の処方を表2に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法で表面層:1.5μm/コア層:22μm/表面層:1.5μmの延伸フィルムを作製した。
【0129】
〔実施例7〕
前記プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A):50重量部、前記ポリプロピレン系樹脂(B):50重量部、PMMAビーズ(平均粒径2.2μm、根上工業株式会社製、アートパールJ−4P):0.12重量部、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−96H−6000CS):1重量部からなる組成物をブレンドし、単軸押出
し機を用いて混練し、ポリプロピレン系樹脂組成物(プロピレン・1−ブテンランダム共重合体樹脂組成物)をペレットとして作製した。
【0130】
ついで、得られたペレット、およびポリプロピレン系樹脂(i)を、幅300mmのダイスを備えた2種3層T−ダイ成形機を用いて、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体樹脂組成物からなる層が表層(ヒートシール層)、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層がコア層となる、3層構造の積層体(フィルム)を得た。このフィルムの層構成は、表面層:60μm/コア層:900μm/表面層:60μmであった。
【0131】
このようにして得たフィルムから9cm角のシートを切り出し、ブルックナー社製のバッチ式二軸延伸機を用いて、160℃で1分間予熱した後、縦5倍、横8倍に二軸延伸することにより、表面層:1.5μm/コア層:22μm/表面層:1.5μmの延伸フィルムを得た。
【0132】
〔実施例8〕
前記プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A):40重量部、前記ポリプロピレン系樹脂(B):60重量部、PMMAビーズ(平均粒径2.2μm、根上工業株式会社製、アートパールJ−4P):0.12重量部、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−96H−1000CS):1重量部からなる組成物をブレンドし、単軸押出
し機を用いて混練し、ポリプロピレン系樹脂組成物(プロピレン・1−ブテンランダム共重合体樹脂組成物)をペレットとして作製した。
【0133】
ついで、得られたペレット、およびポリプロピレン系樹脂(i)を、幅300mmのダイスを備えた2種3層T−ダイ成形機を用いて、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体樹脂組成物からなる層が表層(ヒートシール層)、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層がコア層となる、3層構造の積層体(フィルム)を得た。このフィルムの層構成は、表面層:60μm/コア層:900μm/表面層:60μmであった。
【0134】
このようにして得たフィルムから9cm角のシートを切り出し、ブルックナー社製のバッチ式二軸延伸機を用いて、160℃で1分間予熱した後、縦5倍、横8倍に二軸延伸することにより、表面層:1.5μm/コア層:22μm/表面層:1.5μmの延伸フィルムを得た。
【0135】
〔比較例1〕
前記プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A)、およびポリプロピレン系樹脂(i)を、幅300mmのダイスを備えた2種3層T−ダイ成形機を用いて、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A)からなる層が表層(ヒートシール層)、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層がコア層となる3層フィルムを得た。このフィルムの層構成は、表面層:60μm/コア層:900μm/表面層:60μmであった。
【0136】
このようにして得たフィルムから9cm角のシートを切り出し、ブルックナー社製のバッチ式二軸延伸機を用いて、160℃で1分間予熱した後、縦5倍、横8倍に二軸延伸することにより表面層:1.5μm/コア層:22μm/表面層:1.5μmの延伸フィルムを得た。
【0137】
〔比較例2〕
前記プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A):100重量部とシリカ(富士シリシア製、サイリシア430):0.2重量部とをブレンドし、単軸押出し機を用いて混練しプロピレン・1−ブテンランダム共重合体樹脂組成物をペレットとして作製した。
【0138】
ついで、得られたペレット、およびポリプロピレン系樹脂(i)を、幅300mmのダイスを備えた2種3層T−ダイ成形機を用いて、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A)からなる層が表層(ヒートシール層)、ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層がコア層となる3層フィルムを得た。このフィルムの層構成は、表面層:60μm/コア層:900μm/表面層:60μmであった。
【0139】
このようにして得たフィルムから9cm角のシートを切り出し、ブルックナー社製のバッチ式二軸延伸機を用いて、160℃で1分間予熱した後、縦5倍、横8倍に二軸延伸することにより表面層:1.5μm/コア層:22μm/表面層:1.5μmの延伸フィルムを得た。
【0140】
〔比較例3〜8〕
プロピレン・1−ブテンランダム共重合体(A)、PMMAビーズ、シリコーンオイルおよびポリプロピレン系樹脂(i)の処方を表2に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法で表面層:1.5μm/コア層:22μm/表面層:1.5μmの延伸フィルムを作製した。
【0141】
なお表2、3中、PMMA(1.8μm)は綜研化学株式会社製、MX−180TAを示し、PMMA(2.2μm)は根上工業株式会社製、アートパールJ−4P、平均粒径2.2μmを示し、PMMA(6.6μm)は根上工業株式会社製、アートパールJ−7P、平均粒径6.6μmを示し、シリカは富士シリシア製、サイリシア430を示し、シリコーンオイル100mm2/Sは信越化学工業株式会社製、KF−96H−100CS
を示し、シリコーンオイル1000mm2/Sは信越化学工業株式会社製、KF−96H
−1000CSを示し、シリコーンオイル6000mm2/Sは信越化学工業株式会社製
、KF−96H−6000CSを示し、シリコーンオイル6万mm2/Sは信越化学工業
株式会社製、KF−96H−60000CSを示し、シリコーンオイル50万mm2/S
は信越化学工業株式会社製、KF−96H−500000CSを示し、EBSAは日本油脂株式会社製、アルフローH−50Sを示す。
【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

ブロッキング防止剤および滑剤を含有しない比較例1、ブロッキング防止剤としてシリカを含有し、滑剤を含有しない比較例2、本発明と異なる滑剤を含有する比較例3〜5、および本発明よりも小さな粒径を有するブロッキンブ防止剤および本発明とは異なる滑剤を含有する比較例7では、動摩擦係数が大きくまた、ブロッキング性にも劣る。このため、二次成形の際のハンドリングに劣る傾向がある。
【0144】
本発明よりも大きな粒径を有するブロッキング防止剤を含有する比較例6では、動摩擦係数が小さく、またブロッキング性にも優れるものの、全HAZE、すなわち透明性に劣
る。このため、比較例6の積層体を用いた包装用容器は内容物の視認性に劣る。
【0145】
また、プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)を含有しない比較例8では、ヒートシール性が劣る。
一方、実施例1〜8は低温ヒートシール性、透明性、ブロッキング性に優れ、また動摩擦係数も小さいため、二次成形の際のハンドリングにも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の積層体は、低温ヒートシール性、透明性に優れ、ヒートシール層の動摩擦係数が小さく、二次成形の際のハンドリングに優れる。このため該積層体から形成される包装用容器は、食品包装、充填包装、繊維包装等に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂(i)からなる層〔I〕と、
(A)(1)プロピレンから導かれる単位を50〜95モル%の量で、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を5〜50モル%の量で含有し、
(2)示差走査熱量測定(DSC)にて、測定される融点(Tm)が110℃以下であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されず、
(3)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(4)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下である
プロピレン・α−オレフィン共重合体100〜40重量部と、
(B)融点が120℃以上のポリプロピレン系樹脂0〜60重量部(ただし、前記(A)と(B)との合計を100重量部とする)と、
(C)平均粒径が、0.5〜5μmのポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤0.01〜0.3重量部と、
(D)粘度が500〜25万mm2/Sのシリコンオイルからなる滑剤0.1〜3重量
部とを含むポリプロピレン系樹脂組成物からなるヒートシール層〔II〕とを有する積層体。
【請求項2】
前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)が、
(5)示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが50〜110℃であり、かつ該融点Tmと、α−オレフィン構成単位含量M(モル%)との関係が、
−2.6M+130 ≦ Tm ≦ −2.3M+155であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)が、
下記一般式(1a)で表される遷移金属化合物(1a)を含む触媒の存在下に、プロピレンとα−オレフィンとを共重合して得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【化1】

(式(1a)中、R1、R3は水素であり、R2、R4は炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異
なっていてもよく、R5からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成しても
よい。R13とR14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、
アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。)
【請求項4】
前記(C)ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ブロッキング防止剤が、ポリメチルメタクリレートからなるブロッキング防止剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記(B)ポリプロピレン系樹脂が、プロピレンから導かれる単位および、炭素数2または4〜20のα−オレフィンから導かれる単位を有するプロピレン系ランダム共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記層〔I〕の厚さが10〜60μmであり、前記層〔II〕の厚さが0.1〜5μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層体から形成されることを特徴とする包装用容器。

【公開番号】特開2009−234094(P2009−234094A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84225(P2008−84225)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】