説明

積層体および画像表示装置

【課題】モアレを目立たなくさせることができる積層体を提供する。
【解決手段】積層体20は、間隔をあけて配列された線状の遮光部60を複数含む光学部材50と、多数の開口領域42を画成する導電性メッシュ40を有する電磁波遮蔽材30と、を含む。導電性メッシュ40は、二つの分岐点46の間を延びて開口領域42を画成する多数の境界線分48から形成されたパターンを有している。前記パターンにおいて、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が、3.0以上4.0未満である。開口領域42が一定のピッチで並べられている方向が存在しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光部を有した光学部材と、導電性メッシュを有した電磁波遮蔽材と、を含む積層体に関し、とりわけ、モアレの発生および濃淡のムラの発生を効果的に抑制することができる積層体に関する。また、本発明は、この積層体を有した画像表示装置であって、とりわけ、モアレの発生および濃淡のムラの発生を効果的に抑制することができる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイパネル(PDP)や陰極管(CRT)等の画像形成装置を有した画像表示装置が広く普及している。これらの画像表示装置においては、画像形成装置の画像観察者側(画面側或いは前面側とも呼ぶ)に、種々の機能をそれぞれ付与された複数枚のシート状(フィルム状)の部材からなる積層体が配置されている。
【0003】
特許文献1および2には、このような積層体に含まれ得る部材の一例として、電磁波遮蔽材(電磁波遮蔽シート)が開示されている。斯かる電磁波遮蔽材は、画像形成装置の画面から放射される輻射のうち、画像光は透過させ、且つ不要なkHzからGHz程度の周波数帯域の電磁波を遮蔽するためのシート状の部材である。広く普及している形態において、電磁波遮蔽材は、多数の開口領域を画成する導電性メッシュを含んでいる。そして、導電性メッシュは、典型的には、正方格子をなす規則的な繰返し周期を持つパターンで形成された導電体からなっている。
【0004】
また、積層体に含まれ得る部材として、透光性を有する一方で不要光を吸収し得る光学部材も挙げられる。一例として、特許文献3には、画像を形成する画像形成装置の画面上に配置される光学部材が示されている。特許文献3における光学部材は、ストライプ状に交互に配列された光吸収部およびプリズム部を有している。プリズム部によって、画像をなす画像光の透過を可能としつつ、光吸収部によって、太陽光や照明光等の環境光からなる外光を不要光として吸収し得るようになっている。このような光学部材によれば、不要光を吸収することによって、画像のコントラスト(白画像輝度の黒画像輝度に対する比)を効果的に高めることができる。又プリズム部及び光吸收部の寸法や屈折率等を適宜設計することによって、画像光の出射方向を拡大或いは縮小させることも出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/114076号公報
【特許文献2】特開平11−121974号公報
【特許文献3】特開2008−170975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光吸収部が繰り返し配列された光学部材と、導電性メッシュを有した電磁波遮蔽材と、を一つの積層体内で重ねた場合、光吸収部の周期性と電性メッシュの周期性との干渉に起因した縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)が視認されることがある。加えて、PDPやCRT等に代表される画像形成装置は、繰返し周期を持った画素配列を有し、画素毎の光を制御することによって所望の画像を形成している。このため、画像形成装置上に、光学部材および電磁波遮蔽材が配置されると、画素配列の周期性と、光吸収部の周期性および導電性メッシュの周期性と、の干渉に起因したより複雑なモアレが視認され得る。このようなモアレは、画像表示装置によって表示され画像の画質を著しく劣化させることになる。
【0007】
特許文献1および特許文献2では、モアレの発生を防止するため、導電性メッシュのメッシュパターンを改良することが提案されている。特許文献1では、有機溶剤処理と酸処理とを組み合わせた化学処理によって導電性メッシュを作製することが提案されている。この導電性メッシュは完全にランダム化したパターンを有しており、モアレの解消には有効である。しかしながら、特許文献1に開示された導電性メッシュのパターンは、必然的にパターン自体に粗密を含むようになり、その粗密による濃淡の外観ムラが発生する。そして、特許文献1の導電性メッシュを画像形成装置上に配置すると、明度の濃淡ムラが視認され、画質を著しく劣化させることになる。また、特許文献1に開示された導電性メッシュのパターンは、断線した箇所を含むようになり、当該部分は、電磁波遮蔽の目的に有効に機能しないだけでなく、透明性を低下させるといった不具合をも来す。
【0008】
一方、特許文献2に開示された電磁波遮蔽材の導電体メッシュのパターンは、断線箇所を含んでいないものの、完全にランダム化されておらず部分的に周期性を残している。特許文献2に開示された電磁波遮蔽材を用いた場合、十分な電磁波遮蔽性を確保しつつ濃淡ムラの発生を抑制することもできるが、モアレを十分に目立たなくなせることができない。
【0009】
本発明は、このような点からなされたものであり、濃淡ムラおよびモアレを目立たなくさせることができる積層体、並びに、この積層体を含んだ画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による積層体は、
間隔をあけて配列された遮光部を複数含む光学部材と、
多数の開口領域を画成する導電性メッシュを有する電磁波遮蔽材と、を備え、
前記導電性メッシュは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
前記導電性メッシュは、一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が3.0以上4.0未満であり且つ前記開口領域が一定のピッチで並べられている方向が存在しないパターンからなる領域を含む。
【0011】
本発明による積層体の前記領域内において、一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0より大きくなっていてもよい。
【0012】
本発明による積層体の前記領域内において、一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0であってもよい。
【0013】
本発明による積層体において、前記電磁波遮蔽材は、前記導電性メッシュを支持する透明基材をさらに有するようにしてもよい。
【0014】
本発明による積層体において、前記導電性メッシュは前記領域を複数含み、複数の領域が互いに同一のパターンを有するようにしてもよい。
【0015】
本発明による積層体において、
前記複数の領域は、ある方向に所定のピッチで配列され、
前記所定のピッチは、前記ある方向に沿った画像形成装置の寸法の1/10以上であってもよい。
【0016】
本発明による画像形成装置は、
画像形成装置と、
上述した本発明による積層体のいずれかであって、前記画像形成装置上に設けられた積層体と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電磁波遮蔽材の導電性メッシュが、二つの分岐点の間を延びて開口領域を画成する多数の境界線分から形成されたパターンを有し、このパターンにおいて、一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が3.0以上4.0未満となっており且つ開口領域が一定のピッチ(周期)で並べられた方向が存在しない(配列が繰返し規則性を持つ方向が無い)ようになっている。これにより、モアレおよび濃淡ムラを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、画像表示装置および積層体の概略構成を示す断面図である。
【図1A】図1Aは、図1に対応する図であって、積層体の一変形例を説明するための図である。
【図2】図2は、図1の画像表示装置および積層体に組み込まれ得る光学部材を、その法線方向に沿った断面で示す、断面図である。
【図3】図3は、図2と同様の断面において、図2に示された光学部材の遮光部を含んだ光学機能層の一部を拡大して示す図である。
【図4】図4は、図3と同様の断面において、図3に示された態様とは異なる光学部材の光学機能層(遮光部)の一態様を示す断面図である。
【図5】図5は、図3と同様の断面において、図3に示された態様とはさらに異なる光学部材の光学機能層(遮光部)の一態様を示す断面図である。
【図6】図6は、図3と同様の断面において、図3に示された態様とはさらに異なる光学部材の光学機能層(遮光部)の一態様を示す断面図である。
【図7】図7は、図3と同様の断面において、図3に示された態様とはさらに異なる光学部材の光学機能層(遮光部)の一態様を示す断面図である。
【図8】図8は、図1の画像表示装置および積層体に組み込まれ得る光学部材の一実施の形態を示す平面図であって、光学部材の遮光部および光透過部の平面視におけるパターンを説明するための図である。
【図9】図9は、図1の画像表示装置および積層体に組み込まれ得る電磁波遮蔽材を示す平面図であって、電磁波遮蔽材の導電性メッシュのパターンを説明するための図である。
【図10】図10は、図9の部分拡大図あって、電磁波遮蔽材の導電性メッシュのパターンを説明するための図である。
【図11】図11は、図8に示された光学部材と、図9に示された電磁波遮蔽材と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図12】図12は、図1の画像表示装置に組み込まれ得る画像形成装置の画素配列を説明するための平面図である。
【図13】図13は、図8に示された光学部材と、図12に示された画像形成装置と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図14】図14は、図9に示された電磁波遮蔽材と、図12に示された画像形成装置と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図15】図15は、図8に示された光学部材と、図9に示された電磁波遮蔽材と、図12に示された画像形成装置と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図16】図16は、図9に示された導電性メッシュのパターンを設計する方法を説明するための図であって、母点を決定する方法を示す図である。
【図17】図17は、図9に示された導電性メッシュのパターンを設計する方法を説明するための図であって、母点を決定する方法を示す図である。
【図18】図18は、図9に示された導電性メッシュのパターンを設計する方法を説明するための図であって、母点を決定する方法を示す図である。
【図19】図19(A)〜(D)は、決定された母点群を絶対座標系および相対座標系において示す図であり、母点群の分散の程度を説明するための図である。
【図20】図20は、図9に示された導電性メッシュのパターンを設計する方法を説明するための図であって、決定された母点からボロノイ図を作成してパターンを決定する方法を示す図である。
【図21】図21は、電磁波遮蔽材の一変形例を示す平面図である。
【図22】図22は、従来技術に係る電磁波遮蔽材の導電性メッシュのパターンを説明するための平面図である。
【図23】図23は、図8に示された光学部材と、図22に示された電磁波遮蔽材と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図24】図24は、図22に示された電磁波遮蔽材と、図12に示された画像形成装置と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図25】図25は、図8に示された光学部材と、図22に示された電磁波遮蔽材と、図12に示された画像形成装置と、を重ねた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0020】
また、以下に説明する実施の形態は、本発明をプラズマディスプレイ装置として構成された画像表示装置に適用する例とした。しかしながら、この例に限られず、本発明を、例えばCRTを用いた画像表示装置等、種々の画像表示装置或いは其の他の用途に対して広く適用することができる。
【0021】
図1〜図21は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は、画像表示装置の表示面への法線方向に沿った断面において当該画像表示装置を示す断面図である。図2〜図8は、画像表示装置に組み込まれた光学部材(光学シート)を説明するための図である。図9および図10は、画像表示装置に組み込まれた電磁波遮蔽材(電磁波遮蔽シート)を説明するための図である。図11は、光学部材の遮光部および電磁波遮蔽材の導電性メッシュを重ねた状態で示す図である。図12は、画像形成装置の画素配列を説明するための図である。図13は、光学部材の遮光部および画像形成装置の画素配列を重ねた状態で示す図である。図14は、電磁波遮蔽材の導電性メッシュおよび画像形成装置の画素配列を重ねた状態で示す図である。図15は、光学部材の遮光部、電磁波遮蔽材の導電性メッシュおよび画像形成装置の画素配列を重ねた状態で示す図である。図16〜図20は、図9および図10に示された電磁波遮蔽材の導電性メッシュの平面パターンを決定する方法を説明するための図である。
【0022】
図1に示すように、画像表示装置10は、画像を形成し得る画像形成装置15と、画像形成装置15の出光側(画像観察者側、以下、画像観察者(側)を単に観察者(側)とも略称する)に配置された積層体20と、を有している。したがって、積層体20の出光面が、画像表示装置10の表示面(出光面)10aをなし、観察者は、画像形成装置15で形成された画像を、積層体20を介して観察することになる。
【0023】
なお、図示された例では、積層体20が、画像形成装置15に接触して配置されている。この場合、積層体20は、接着剤(粘着剤を含む意味として使用)によって画像形成装置15と接合されていてもよいし、単に、画像形成装置15上に配置されていてもよい。あるいは、図示された例とは異なり、積層体20が、画像形成装置15から離間して配置されていてもよい。また、積層体20が、画像形成装置15と接合されていない場合には、積層体20が、硝子板等の高剛性を有した支持板(支持層)を含むようにしてもよい。
なお、本明細書で用いる「接着」には、「粘着」も含まれるものとする。
【0024】
本実施の形態では、画像表示装置10をプラズマディスプレイ装置として構成していることに対応して、画像形成装置15は、プラズマディスプレイパネル(PDP)として構成されている。PDPは、二枚のガラス基板を有し、この二枚のガラス基板の間には画像を画成する放電セルを有し、該放電セル内にはキセノン等の希ガスが充填されている。そして、この希ガス雰囲気中にプラズマを生成し、このときに生じる紫外線を各放電セル内の蛍光体に当てることによって、画素毎に可視光を発生させるようになっている。PDPとして構成された画像形成装置15は、画素毎の発光を制御することにより、画像形成面15aから観察され得る画像を、形成することができる。
【0025】
図12には、画像形成装置(画像表示パネル)15の画素配列の一例が開示されている。図12に示すように、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、画像形成装置15はカラーで画像を形成することができるようになっている。図12に示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(図12では縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(図12では横方向)に、一つずつ順に繰り返して並べられている。なお、図12は、画像形成装置15の画像形成面(出光面)15aへの法線方向、言い換えると、画像形成装置15をなすプラズマディスプレイパネルのパネル面への法線方向から当該画像形成装置15を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0026】
画像形成装置15の出光側に配置された積層体20は、シート状に形成された光学部材(光学シート)50と、シート状に形成された電磁波遮蔽材(電磁波遮蔽シート)30と、を有している。
【0027】
光学部材50は、画像形成装置15からの画像光を透過させることが可能であるとともに、その一方で、表示装置10内に入射した照明光や太陽光等の環境光に代表される不要光(外光)を適切に遮蔽する機能を有している。画像表示装置10が明るい環境内に配置されると、画像表示装置10内に入射する環境光によって、表示画像のコントラストが低下する。とりわけ、PDPを用いた画像表示装置10では、画像表示装置10内に入射した環境光がPDP内の蛍光体で反射されることにより、表示画像のコントラストが著しく低下する。光学部材50は、画像表示装置10内に入射した環境光を吸収することにより、表示画像のコントラスト向上に寄与することができる。
【0028】
また、上述したように、画像形成装置15からは、不要な電磁波も放射される。そして、電磁波遮蔽材30は、画像形成装置15から放射されるkHzからGHz帯域の電磁波(すなわち、ここで言う「電磁波」とは、近赤外線や紫外線を含まない概念である)を遮蔽し、且つ、画像を構成する可視光線を透過させるためのフィルタとして機能する。
【0029】
なお、図1に示す例では、光学部材50が電磁波遮蔽材30の出光側に位置している。ただし、これに限られず、電磁波遮蔽材30が光学部材50よりも出光側に配置されていてもよい。これらの光学部材50および電磁波遮蔽材30については、詳しくは、後述する。
【0030】
加えて、積層体20は、電磁波遮蔽材30および光学部材50に積層された種々の機能層を含み得る。積層体20に含まれる機能層は、画像形成装置15に対応して適宜選択され、例えば、プラズマディスプレイパネルからなる画像形成装置15から放射される特定波長域の放射線等を遮蔽するフィルタ機能を有した層や、光学機能を付与された層や、保護機能等のその他の機能を付与された層とすることができる。より具体的には、フィルタ機能を有した層としては、近赤外線を吸収する機能を有した層、ネオン光を吸収する機能を有した層、紫外線(UV)を吸収する機能を有した層、可視光線中の特定波長域の中に吸収スペクトルを持つ着色フィルタ機能等が挙げられる。また、光学機能を有した層としては、弗化マグネシウム、中空シリカ粒子添加した弗素樹脂等の低屈折率材料層からなる反射防止層、シリカ粒子添加したアクリル系樹脂塗膜等からなる防眩層等が挙げられ、保護機能等を有した層としては、ハードコート層、耐衝撃層、防汚染層、帯電防止等が挙げられる。
【0031】
ところで、積層体20に含まれる各層は、接着剤を用いて、互いに接合されていてもよい。また、この接着剤に、近赤外線を吸収する機能、ネオン光を吸収する機能、紫外線(UV)を吸収する機能等の種々の機能の一以上を付与するようにしてもよい。
【0032】
此処で、図1Aには、特に画像形成装置がPDPの場合に於いて好適な積層体20の例が示されている。図1Aに示された積層体20は、観察者側から順次、反射防止層21、透明基材51、光学機能層55、(図示は略してあるが)紫外線吸収剤及び酸化防止剤を添加した透明粘着剤層、観察者側表面に黒化層を形成した導電メッシュ40、透明基材35、(図示は略してあるが)近赤外線吸収剤、ネオン光吸収劑、及び、着色色素を添加した透明粘着剤層(此の層がPDPと接着する)を含んでいる。
【0033】
なお、本明細書において、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく画像形成装置15から積層体20を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図1においては紙面の上側)のことである。
【0034】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
【0035】
さらに、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面、パネル面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面(の広がり)方向と一致する面のことを指す。本発明に於いて、光学部材50等の各シート状部材は、通常は、何れも厚み分布が全面に亘って均一の為、各シート状部材のシート面は、其の表面、裏面、或いはこれら表裏面と平行な(仮想的)平面を意味する。そして、本実施の形態においては、画像形成装置15のパネル面、画像形成装置15の出光面(画像形成面)15a、シート状の積層体20のシート面、シート状の電磁波遮蔽材30のシート面、シート状の光学部材50のシート面、画像表示装置10の表示面10a等は、互いに平行となっている。
【0036】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」、「三角形」、「台形」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の許容誤差を含めて解釈することとする。
【0037】
次に、光学部材50についてさらに詳述する。図1および図2に示すように、本実施の形態において、光学部材50は、シート状の透明基材51と、透明基材51上に設けられた光学機能層55と、を有している。なお、図1および図2に示された例において、光学部材50は積層体20の中間部に配置されており、且つ、光学部材50の基材51が画像形成装置15の側に配置されている。しかしながら、光学部材50が積層体20のうちの中間部以外の位置、例えば最も画像形成装置15の側に配置されていてもよい。また、図1に示された形態では、光学機能層55が観察者側に位置し、透明基材51が画像形成装置15の側に配置するようにして、光学部材50が配置されている。コントラスト向上効果をより重視する場合は此の形態が好ましい。但し、画像の視野角拡大の方をより重視する場合は、これに替えて図1Aの如く、光学機能層55が画像形成装置15側に位置するとともに透明基材51が観察者側に位置するようにして光学部材50を配置してもよい。
【0038】
尚、図1および図1Aの形態に於いては、積層体20の観察者側の最表面(透明基材51の最表面であると共に画像表示裝置の最表面でもある)には、低屈折率層からなる反射防止層21が設けられている。外光が積層体20の最表面での外光の反射による周囲の風景の映り込みを防止する上では、斯かる形態が好ましい。但し、勿論、高度の外光映り込み防止性能を要求し無い場合は、反射防止層21は省略し得る。
【0039】
透明基材51は、光学機能層55を支持する層であり、適度な強度および適度な透明性を有するように、適宜構成される。一例として、透明基材51の厚さを20μm〜200μmとすることができ、このような透明基材51として、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、適度な透明性と、紫外線照射処理や加熱処理等に対する耐久性と、を有している点で、透明基材51としての適用に好適である。
【0040】
光学機能層55は、間隔をあけて配列された複数の遮光部60を含んでいる。遮光部60は、光学機能層55の層面と平行な或る配列方向に配列され、当該配列方向と交差する方向に線状に延びている。図8に示すように、本実施の形態において、遮光部60は、ストライプ(平行線群乃至は縞模様)状に配列されている。すなわち、各遮光部60は、その配列方向と直交する方向に直線状に延びている。また、本実施の形態において、遮光部60の配列ピッチPは一定となっている。また、隣り合う二つの遮光部60の間には、光透過部56が設けられている。すなわち、光学機能層55は、光学部材50のシート面に沿って交互に配列された遮光部60および光透過部56を有している。
【0041】
なお、画素Pの周期と遮光部60の周期との干渉に起因したモアレを目立たなくする観点から、図13に示すように、ストライプ状に配列された遮光部60の長手方向は、積層体20が画像形成装置10上に配置された状態で、画素Pの配列方向に対して数度傾斜していることが好ましい。此の傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。モアレを最小化するバイアス角の値は、画素P及び遮光部60の配列周期、遮光部60の幅等の複数の要因に依存して変化するが、通常、1〜45°、好ましくは3〜15°の範囲である。
【0042】
光透過部56は、光を透過させる機能を有した部位であり、図2に示すように、画像形成装置15から出射され、出光面15aの法線方向乃至は其の近傍の方向に向かって進行する画像光L21が透過し得るようになっている。観察者は、光透過部56を介して、画像形成装置15で形成される画像を観察し得るようになる。遮光部60は、光を吸収する機能を有した部位であり、図2に示すように、光学部材50のシート面への法線方向から傾斜した光L26、典型的には観察者側から積層体20に入射した照明光や太陽光等の環境光、さらには、画像表示装置10内の迷光を吸収し得るようになっている。このように、画像表示装置10内に観察者側から入射した画像光以外の不要光L26を遮光部60が吸収することにより、画像表示装置10によって表示される表示画像のコントラストを効果的に向上させることができる。
【0043】
図示された遮光部60は、母材(バインダー部)61と、母材61中に分散された光吸収粒子62と、を有している。光吸収粒子62は、可視光を吸収する機能を有した粒子である。これにより、光学機能層55において、光透過部56と遮光部60との界面で反射せずに遮光部60内に入射した光を光吸収粒子62で吸収することができる。ここで説明した光学機能層55では、このような光吸収粒子62の可視光吸収機能によって、光学部材50の法線方向から傾斜した光、典型的には、環境光や迷光等の不要光が効果的に吸収されるようになり、表示画像のコントラストを向上させることができる。
【0044】
このような光吸収粒子62としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、画像形成装置15からの光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト等の炭素、黒色酸化鉄、酸化銅等の金属酸化物等の顔料、アニリンブラック等の染料、或いは、これら顔料或いは染料等で着色した樹脂微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した樹脂微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられ、より具体的には、カーボンブラックを含有した架橋アクリル微粒子や、カーボンブラックを含有した架橋ウレタン微粒子等が好ましく用いられる。こうした光吸収粒子は、通常、遮光部60をなすようになる組成物中に3質量%以上30質量%以下の範囲で含まれ得る。
【0045】
なお、遮光部60に可視光吸収機能を発現させるための手段は、光吸収粒子62による方法に限定されるものではない。例えば、顔料や染料によって、金属や樹脂からなる遮光部60の表面全体を着色し、遮光部60が全体として光吸収機能を発揮するようにしてもよい。
【0046】
図2および図3に示された例において、遮光部60は、光学部材50のシート面の法線方向に沿うと共に遮光部60の延在方向と直行する断面、即ち主切断面に於いて、三角形形状となっている。一方、光透過部56は、主切断面にて、台形形状となっている。そして、図4の主切断面において、光透過部56をなす台形形状における短い上底及び長い下底は、光学部材50のシート面に沿うようになっており、該台形断面における長い下底が透明基材51の側に位置している。そして、遮光部60をなす三角形形状における底辺と、光透過部56をなす台形形状における短い上底と、によって光学機能層55の透明基材51に対面しない側の面が形成されている。
【0047】
また、図2および図3に示された例では、光学機能層55は、シート状に形成された透明なランド部(連通部)57を有しており、このランド部57上に、遮光部60および光透過部56が支持されている。このようなランド部57は、例えば後述する光学機能層55の製造方法に起因して、光透過部56と同一の材料から一体的に形成され得る。ただし、光学機能層55において、このランド部57は必須ではない。したがって、ランド部57が省略されて、光学機能層55が、遮光部60および光透過部56のみから形成されてもよい。
【0048】
ただし、光学部材530の法線方向に沿った主切断面における、遮光部60および光透過部56の主切断面形状は、図2及び図3に示された例に限られず、例えば図4〜図7に示すように、種々の変更が可能である。
【0049】
図4に示された態様では、遮光部60の断面形状が台形形状となっている。詳しくは、遮光部60の断面形状が平行な上底及び下底と、上底及び下底を結ぶ2つの斜辺とを有する台形、とりわけ等脚台形となっている。
【0050】
図5に示された態様では、遮光部60をなす台形形状または三角形形状の斜辺(遮光部60と光透過部56との界面)が、1つの辺からではなく、2つの辺から構成されている。すなわち、遮光部60を画成する斜辺は、主切断面において、折れ線状に形成されている。そして、断面略台形形状の下底側の斜辺または断面略三角形における底辺側の斜辺が光学機能層55のシート面への法線方向に対してなす角度をθa1とし、断面略台形形状の上底側の斜辺または断面略三角形における頂点側(基材31の側)に配置される斜辺が光学機能層55のシート面への法線方向に対してなす角度をθa2とすると、θa1>θa2の関係が成り立つようにしてもよい。また、断面略台形形状の下底側の斜辺または断面略三角形における底辺側の斜辺の、光学機能層55のシート面への法線方向に沿った長さHa1が、断面略台形形状の上底側の斜辺または断面略三角形における頂点側の斜辺の、光学機能層55のシート面への法線方向に沿った長さHa2と同一になるようにしてもよい。
【0051】
また、図5に示された例に限られず、遮光部60をなす断面略台形形状または断面略三角形形状における各斜辺(遮光部60と光透過部56との界面)が、三以上の線分からなる折れ線として形成されていてもよい。さらに、遮光部60の断面略台形形状または断面略三角形形状における各斜辺が、図6に示された態様のように、曲線として構成されていてもよい。あるいは、図7に示された態様のように、遮光部60をなす主切断面形状が矩形状となっていてもよい。すなわち、図7に示された態様では、遮光部60の主切断面形状は、光学部材50のシート面と平行に延びる一対の辺と、光学部材50のシート面への法線方向と平行に延びる一対の辺と、によって画成されている。
【0052】
このような光透過部56および遮光部60の具体例として、光学部材50の法線方向に沿った断面における各寸法を、一例として、次のように設定することができる。まず、遮光部60の最大幅Wmax、より厳密には、当該境界線分の長手方向に直交する断面での最大幅Wmaxを5μm以上100μm以下とすることができる。また、遮光部60の高さH(光透過部56の高さ)を20μm以上200μm以下とすることができる。光学機能層55がランド部57を有する場合を考慮して、光学機能層55の総厚みTと、遮光部60の高さHとが、0.6T≦H≦Tの関係を満たすようにしてもよい。又、遮光部60の配列ピッチPtは5〜200μmの範囲とすることができる。画素Pの寸法(配列ピッチ)と遮光部60の配列ピッチPtとの関係については、適宜の設計が可能である。例えば、画像自体の輝度向上よりも、外光存在下に於ける画像コントラストの向上の方を要求する場合は、遮光部60の配列ピッチPtを画素Pの縦横寸法のうちの小さい方の寸法TMIN(画素が正方形ならば、何れか1辺の寸法)よりも小さく設定し、
Pt<TMIN
とすることが好ましい。一方、外光存在下に於ける画像コントラストの向上よりも画像自体の輝度向上の方を重視する場合は、遮光部60の配列ピッチPtを画素Pの縦横寸法のうちの大きい方の寸法TMAX(画素が正方形ならば、何れか1辺の寸法)以上に設定し、
Pt≧TMIN
とすることが好ましい。
【0053】
また、遮光部60による不要光吸収機能をある程度確保するだけでなく、画像形成装置15からの画像光を透過させるため、光学機能層55(光学部材50)はある程度の高い可視光透過率を確保する必要がある。具体的には、多数の光透過部56が閉めている領域の総割合(以下において「開口率」とも呼ぶ)が50%以上90%以下となるように、遮光部60の幅、遮光部の配置ピッチPtを調節することが好ましい。
【0054】
さらに、光透過部56をなす材料の屈折率や、遮光部60をなす材料の屈折率は、適宜選択され得る。ただし、図示された形態のように、遮光部60の幅が観察者側に向けて広がっていく形態においては、遮光部60の母材61の屈折率Nb及び光透過部56をなす材料の屈折率Npは適宜の値に設計される。まず、遮光部60の母材61の屈折率Nbと光透過部56をなす材料の屈折率Npとを;
Nb<Np
と設定した場合には、次の作用効果を期待することができる。図2に示されているように、画像形成装置15から出射する画像光のうち、観察者に観察されて画像として認識される成分は、主として、光学材料50のシート面の法線と平行乃至略平行な光である。そのため、遮光部60に当たること無く光透過部56を通過するL21は、吸収されること無く光学機能層55を透過することができる。その一方で、画像光L22は、その進行方向が遮光部60を画成する斜面の法線に対してなす角度、すなわち入射角度が臨界角超過となり、光透過部56と遮光部60との界面で吸收されること無く全反射し得る。此の全反射した画像光L22は、画像光の出射角度(表示面10aの法線に対する角度)範囲を拡大することになり、表示装置10に適切な視野角を付与することが可能となる。
【0055】
一方、日光等の不要光L26は、光学部材50のシート面の法線に対して斜方向から入射する。其の為、不要光L26は該斜面の法線に対する入射角が臨界角未満となり、全反射すること無く、入射光の殆ど(通常、入射光の95%程度)が遮光部60の内部に侵入し、光吸収粒子62に吸収され得る。
【0056】
以上の結果、遮光部60の母材61の屈折率Nbを、光透過部56をなす材料の屈折率Npに対して、Nb<Npとした場合、視野角拡大効果及び外光存在下に於ける画像コントラスト向上効果の両効果を奏することができる。なお、この観点において、光透過部56と遮光部60との界面が光学部材50のシート面への法線方向に対してなす角度θa,θa1,θa2は、0°より大きく10°以下となっていることが好ましく、0°より大きく6°以下となっていることが更に好ましい。尚、此の場合、遮光部60の母材61の屈折率Nbは、光透過部56をなす材料の屈折率Npよりも0.12〜0.5だけ小さく設定することが好ましい。
【0057】
次に、遮光部60の母材61の屈折率Nbと光透過部56をなす材料の屈折率Npとを;
Nb<Np
と設定した場合について説明する。画像光のうち、光透過部56を通過するL21は、前記態様と同様に、その儘吸収無しで透過する。一方、遮光部60を画成する斜面に入射するL22は、図2の場合と異なり、光透過部56と遮光部60との界面で全反射することが無く、殆ど(通常、入射光の95%程度)吸収される。其の為、画像光の出射角度範囲を縮小し(狭め)、画像表示装置10の視野角を制限することが可能となる。一方、日光等の不要光L26は該斜面の法線に対する入射角如何によらず、全反射無しで殆どは遮光部60の内部に侵入し、光吸収粒子62に吸収される。其の結果、視野角抑制効果及び外光存在下に於ける画像コントラスト向上効果の両効果を奏する。此の形態は、個人用途や秘密情報表示用の画像表示装置に於ける覗き見防止用途に好適である。
【0058】
ここで、以上のような光学部材50を作製する方法の一例について説明する。以下の説明では、まず光透過部56を形成し、その後に遮光部60を形成することによって、光学部材50を作製している。
【0059】
まず、光透過部56は、硬化することによって光透過部56を構成するようになる光透過部構成組成物、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化する特徴を有したエポキシアクリレートプレポリマー等を用いて、作製され得る。具体的には、遮光部60の構成(配置、形状等)に対応した凸部を有した型ロール、言い換えると、光透過部56の構成(配置、形状等)に対応した凹部を有した型ロールを準備する。当該型ロールとニップロールとの間に透明基材51となるシートを送り込み、該シートの送り込みに合わせて、光透過部構成組成物を型ロールと透明基材51との間に供給する。その後、透明基材51上に供給された未硬化状態で液状の光透過部構成組成物が型ロールの凹部に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該光透過部構成組成物を押圧する。このとき、型ロールの凹部の深さより厚くなるように、すなわち、型ロールと透明基材51とが接触しないように、光透過部構成組成物を透明基材51上に供給しておくことによって、上述したランド部57が、透明樹脂部51と一体的に光透過部構成組成物から形成されるようになる。このようにして透明基材51と型ロールとの間に未硬化で液状の光透過部構成組成物を充填した後、電離放射線を照射して該光透過部構成組成物を硬化(固化)させることによって光透過部56を形成することができる。
【0060】
次に、遮光部60は、硬化することによって母材61をなすようになる電離放射線により硬化する特徴を有したウレタンアクリレートプレポリマー等と、カーボンブラックを含む平均粒径1.5μmの光吸収粒子62と、を含んだ未硬化で液状の光吸収部構成組成物を用いて、作製され得る。まず、先に形成された光透過部56上に光吸収部構成組成物を供給する。その後、隣り合う光透過部56の間の形成された溝、すなわち、型ロールの凸部に対応していた部分の内部に、ドクターブレードを用いながら、光吸収部構成組成物を充填しつつ、該溝外に溢出した余剰分の光吸収部構成組成物を掻き落としていく。その後、光透過部56の間の光吸収部構成組成物に電離放射線を照射して硬化させることにより、遮光部60が形成される。これにより、透明基材51、並びに、透明基材51上に設けられたランド部57と、ランド部57上に設けられた光透過部56およびストライプ状の遮光部60と、を有した光学機能層55を含む光学部材50が作製される。
【0061】
次に、電磁波遮蔽材30についてさらに詳述する。図1に示すように、本実施の形態において、電磁波遮蔽材30は、シート状の透明基材35と、透明基材35上に設けられた導電性メッシュ40と、を有している。なお、図1に示された例において、電磁波遮蔽材30は積層体20の画像形成装置15の側に配置されており、且つ、電磁波遮蔽材30の基材35が画像形成装置15の側に配置されている。ただし、この例に限られず、電磁波遮蔽材30が積層体20のうちの画像形成装置15側以外の位置に配置されていてもよい。また、電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40が画像形成装置15の側に配置されていてもよい。
【0062】
透明基材35は、導電性メッシュ40を支持する層であり、適度な強度および適度な透明性を有するように、適宜構成される。一例として、透明基材35の厚さを20μm〜150μmとすることができ、また、透明基材35の光透過率が80%以上となるようにしてもよい。このような透明基材35として、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、適度な透明性と、紫外線照射処理や加熱処理等に対する耐久性と、を有している点で、透明基材35としての適用に好適である。他の一例として、透明基材35の厚さは500μm〜10000μm(1cm)とすることができる。このような透明材料として、例えば、ソーダ硝子、カリ硝子等の硝子、PLZT等の透明セラミックス、石英の板を用いることが出来る。
【0063】
図9および図10に示されているように、電磁波遮蔽用の導電性メッシュ40は、多数の開口領域42を画成する網状に形成されたライン部44として形成されている。導電性メッシュ40をなすライン部44は、図示しない位置(通常、周縁部)において、接地され、これにより、画像形成装置15の出光面15aと重なる位置に配置された導電性メッシュ40が、画像形成装置15からの電磁波を遮蔽するようになる。
【0064】
電磁波遮蔽材30に十分な電磁波遮蔽機能を付与するため、一つあたりの開口領域42の大きさは、導電体から成る開口領域42を奥行きの短い導波管と近似した場合の、其の遮斷周波数FCUTが当該電磁波遮蔽材30(導電性メッシュ40)の遮蔽すべき電磁波帯域の最大周波数FMAX以上、即ち、
CUT≧FMAX
となるように設定する。まず簡単の為に、各開口領域42の形状を1辺の長さがAの正方形(矩形)と近似すると、
CUT=C/(2A)
となる。但しここでは、導波管中を進行し得る各種モードのうちで最小周波数の基本モードを想定して算出している。従って、
CUT=C/(2A)≧FMAX
の関係が成り立つ。但し、式中におけるCは、光速度(約3.0×10+8m/s)である。これより、
C/(2FMAX)≧A
となる。
【0065】
ここで説明する導電性メッシュ40においては、現実の個々の開口領域42の形状は正方形では無く各種各様では有るが、近似的には、導電性メッシュ40における開口領域42の外接円直径の平均値を平均化した矩形導波管の1辺の長さAAVGと見なすことが出来る。但し、全開口領域に於いて確実にFMAX以下の周波数の電磁波を遮蔽する為には、AMIN〜AMAXの範囲に分布する個々のA(開口領域の外接円直径と見做す)の最大値AMAXについて、C/(2FMAX)を満たす様に設計すべきである為、結局、
C/(2FMAX)≧AMAX
とすることによって、遮蔽すべき電磁波帯域の最大周波数FMAXが決まれば、開口領域42の外接円直径の最大値をAMAXが決まる。FMAX=100GHzとすれば、AMAX≦1.5mmとなり、多少の余裕を見込んで、AMAX≦1.0mmと設計すれば良い。尚、画像光の透過率(画面の明るさ)の確保(ある程度以上の開口面積率が必要)及び微細加工の難易度を考慮すると、最低でも、AMIN≧0.1mm程度は必要である。以上のことから、画像表示装置の画面設置用途の場合を想定すると、開口領域42の外接円直径の平均値Aを、0.1mm≦AMIN≦AMAX≦1mm、或いはμm単位で、100μm≦AMIN≦AMAX≦1000μmとすれば良い。また、此のAMIN及びAMAXの値を開口領域42の(単位開口)面積の値に置き換えると、開口領域の平均面積は、0.01mm以上1mm以下の範囲であることが好ましい。
【0066】
加えて、電磁波遮蔽材30に十分な電磁波遮蔽機能を付与するためには、導電性メッシュ40の面抵抗を低くする必要もある。同時に、導電性メッシュ40は、画像形成装置15の画像形成面(出光面)15a上に位置するため、高い可視光透過率を有している必要もある。そこで、一つあたりの開口領域42の面積を調整しながら、併せて導電性メッシュ40をなすライン部44の幅を調節することにより、導電性メッシュ40の面抵抗を低く保ちながら高い可視光透過率を確保することも可能となる。具体的には、一つあたりの開口領域42の面積を上述した範囲に調節しながら、画像形成装置(画像表示パネル)15の画像形成面15a上において多数の開口領域42が閉めている領域の総割合(以下において「開口率」とも呼ぶ)が50%以上95%以下となるように、ライン部44の線幅を設定することが好ましい。具体的な線幅としては、1μm〜100μm程度、好ましくは5μm〜50μmの範囲で選定する。
【0067】
開口領域42の外接円直径の平均値AAVGと画像表示装置の画素Pとの関係についても、各様の設計が可能である。導電メッシュの濃淡ムラを特に軽減することを求める場合は、開口領域42の外接円直径の平均値AAVGを画像表示装置の画素Pの縦横の寸法のうちの小さい方の寸法TMIN(画素が正方形ならば、何れか1辺の寸法)よりも小さく設定し、
AVG<TMIN
とすることが好ましい。通常、AAVG=0.1×TMIN〜0.7×TMINの範囲とする。又、画面の明るさ(可視光線透過率)及びライン部44の不可視性を特に求める場合は、開口領域42の外接円直径の平均値Aを画像表示装置の画素Pの縦横の寸法のうちの大きい方の寸法TMAX(画素が正方形ならば、何れか1辺の寸法)以上に設定し、
AVG≧TMIN
とすることが好ましい。通常、AAVG=1.3×TMIN〜2.0×TMINの範囲とする。
又、遮光部60の配列ピッチPt、画素Pの縦横寸法のうちの小さい方の寸法TMIN、画素Pの縦横寸法のうちの大きい方の寸法TMAX、及び開口領域42の外接円直径の平均値AAVGとの関係についても、所画像表示装置に要求する性能、要解決課題等に応じて適宜設計が可能である。例えば、
Pt≦TMIN≦TMAX≦AAVG
AVG≦TMIN≦TMAX≦Pt
MIN≦TMAX≦Pt≦AAVG
MIN≦TMAX≦AAVG≦Pt
Pt≦AAVG≦TMIN≦TMAX
AVG≦Pt≦TMIN≦TMAX
MIN≦Pt≦AAVG≦TMAX
MIN≦AAVG≦Pt≦TMAX
等の設計が可能である。
【0068】
以上のような導電性メッシュ40は、例えば次の(1)〜(3)等の従来既知の方法によって、透明基材35上に形成することができる。
(1)透明基材35上に銅、アルミニウム等の導電性金属箔を積層し、この箔を所望のパターン状にエッチングする方法。
(2)導電性インキ(例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂バインダー中に銀、銅、ニッケル等の導電性金属粒子を分散させた導電性インキ)を透明基材35上に所望のパターンで印刷する方法。必要に応じて、導電性をより向上させる為、更に該導電性インキのパターン表面に、銅、銀、金、ニッケル等の高導電率金屬の薄膜をメッキ法等により形成してもよい。
(3)パラジウムコロイド粒子等の無電解メッキ触媒を樹脂バインダー中に含有するインキで透明基材35上に所望のパターンで印刷し、該印刷パターン表面に無電解メッキ法にて銅、銀、金、ニッケル等の高導電率金屬の薄膜を形成する。
尚、これらの方法で形成した導電メッシュ40の表面は金屬光沢を有する。其の為、光学部材50による画像コントラスト向上効果をより有効に発現せしめる為に、導電メッシュ40の観察者側表面に光吸収性の物質からなる黒化層を形成させることが好ましい。斯かる黒化層の色調は黒が理想的であるが、其の他、灰色、褐色、紺色、臙脂色、深緑色、暗紫色等の低明度の有彩色又は無彩色としても良い。黒化層を構成する材料としては、公知の物の中から選択すれば良く、例えば、カーボンブラック(墨)、黒色酸化鉄、酸化銅、微粒子状の銅―コバルト合金等が使用できる。
【0069】
さらに、図9、図10および図20を主として参照しながら、シート状の電磁波遮蔽材30のシート面への法線方向から観察した場合における導電性メッシュ40のパターンについて、説明する。
【0070】
図9、図10および図20に示すように、導電性メッシュ40のライン部44は、多数の分岐点46を含んでいる。そして、導電性メッシュ40のライン部44は、両端において分岐点46を形成する多数の境界線分48から構成されている。すなわち、導電性メッシュ40のライン部44は、二つの分岐点46の間を延びる多数の境界線分48から構成されている。そして、分岐点46において、境界線分48が接続されていくことにより、開口領域42が画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分48で囲繞、区劃されて1つの開口領域42が画成されている。
【0071】
なお、図9、図10および図20に示すように、ライン部44が境界線分48のみから構成されているため、開口領域42の内部に延び入って行き止まりとなるライン部44は存在しない。これは、言葉を換えて言えば、断線し、電気回路として開いた回路は無く、全てのライン部44が閉回路を構成することになる。その結果、ライン部44全体を回路網として考えた場合に、同じ導電体の被覆面積率及び厚みで最大の電気伝導度を得ることができる。このような態様によれば、電磁波遮蔽材30に十分な電磁波遮蔽機能と高い可視光透過率とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0072】
ところで、上述したように、光吸収部が繰り返し配列された光学部材と、導電性メッシュを有した電磁波遮蔽材と、を一つの積層体内で重ねた場合、光吸収部の周期性と導電性メッシュの周期性との干渉に起因した縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)が視認されることがある。さらに、画像形成装置上に、光学部材および電磁波遮蔽材が配置されると、画素配列の周期性と、光吸収部の周期性および導電性メッシュの周期性と、の干渉に起因したより複雑なモアレが視認されやすくなる。モアレが視認されると、画像表示装置に表示される画像の画質を著しく劣化させることになる。
【0073】
ここで図22には、正方格子状パターンで形成された導電性メッシュ140を有した従来の典型的な電磁波遮蔽シート130が示されている。また、図23には、図22に示された従来の導電性メッシュ140を有した電磁波遮蔽シート130を、図8に示されたストライプ状パターンで配列された遮光部60を有した光学部材50と重ねた状態が示されている。また、図24には、図22の電磁波遮蔽シート130を、図12に示された典型的な画素配列の画像形成装置15上に配置した状態が示されている。さらに、図25には、図22に示された従来の電磁波遮蔽シート130を、図8に示された光学部材50とともに、図12に示された画像形成装置15上に配置した状態が示されている。
【0074】
図23および図24に示されているように、正方格子状パターンで形成された導電性メッシュ140が、ストライプ状パターンで配列された光学部材50の遮光部60または画像形成装置15の画素配列と重ねられると、導電性メッシュ140の規則的(周期的)パターンと、遮光部60の規則的(周期的)パターンまたは画素Pの規則的(周期的)パターンと、の干渉によって、明暗の筋が視認されるようになる。さらに、図13に示すようにストライプ状パターンの遮光部60と画像形成装置15の画素配列との間ではモアレがわずかにしか視認されない場合においても、正方格子状パターンの導電性メッシュ140が、ストライプ状パターンの遮光部60および画素配列の両方と重なることにより、モアレがより明確に視認されるようになった。このように図25の状態において、より明確にモアレが視認されるようになるのは、導電性メッシュ140の規則性(周期性)、遮光部60の規則性(周期性)および画素Pの規則性(周期性)だけでなく、さらに、導電性メッシュ140と遮光部60との干渉により生じる縞状模様(モアレ)の規則性(周期性)および導電性メッシュ140と画素Pとの干渉により生じる縞状模様(モアレ)の規則性(周期性)が加わって、新たな干渉を引き起こすためであると考えられる。
【0075】
ところで、図23〜図25に示された例では、導電性メッシュ140によって形成された正方格子の配列方向が、画素Pの配列方向および遮光部60の配列方向に対して、それぞれ数度ずつ傾斜している。上述したように、このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。しかしながら、図23〜図25に於いても、なお残留した縞状模様が視認されることから理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳では無く、其の他、画素P、遮光部60及び導電性メッシュ140間の繰返周期の比、導電性メッシュ140や遮光部60の線幅等の要因にも依存する。とりわけ、規則的パターンで配列された要素が三以上重ねられる場合には、もはや、バイアス角のみでモアレを解消することが事実上困難となる。
【0076】
一方、モアレの発生を防止するため、本実施の形態による電磁波遮蔽部材30の導電性メッシュ40では、開口領域42が繰返し規則性(周期的)を持ったピッチで並べられた直線方向が存在しないようになっている。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単に導電性メッシュ40のパターンを不規則化するのではなく、導電性メッシュ40の開口領域42が一定のピッチで並べられた方向が存在しないように導電性メッシュ40のパターンを画成することにより、光学機能層55を有した光学部材50に電磁波遮蔽材30を重ねた場合に生じ得るモアレ、画素配列を有した画像形成装置15に電磁波遮蔽材30を重ねた場合に生じ得るモアレ、さらには、図15に示す様に光学機能層55を有した光学部材50および画素配列を有した画像形成装置15の両方に電磁波遮蔽材30を重ねた場合に生じ得るモアレをも極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることを知見した。
【0077】
一般的には、導電性メッシュ40のパターンを不規則化することが、モアレの不可視化に有効であるとされてきた。しかしながら、本件発明者らの研究によれば、単に導電性メッシュ40のパターンの形状及び配列ピッチを不規則化したとしても、常に、モアレを十分に目立たなくさせることはできなかった。
【0078】
例えば、特開平11−121974号公報(上述の特許文献2)に開示された導電性メッシュでは、2次元XY平面内に於いてY軸方向について繰り返し周期性を持たないようになっており、この結果、2次元平面全体としては完全な繰返周期を持たず不一定のパターンとして視認され得る。すなわち、開口領域の形状又は配列ピッチを部分的にでも不規則化することによれば、当該開口領域の配列の繰返規則性を、同一形状の単位開口部が縦横に一定の繰り返しピッチで特定の直線方向に並べられている図22の正方格子配列と比較して大きく低下させ、導電性メッシュ自体が全体として不規則なパターンとして視認されるようになり得る。しかしながら、この不規則性パターンとして視認される導電性メッシュでは、モアレが知覚され得る程度に発生することを防止することができなかった。モアレを有効に目立たなくさせることができない原因は、依然としてX軸方向には繰返周期を有している為と考えられる。すなわち、部分的にでもXY平面内の何れかの方向に繰り返し周期性が残存していると、その残存周期性によってモアレが発生するものと考えられる。
【0079】
また、WO2007/114076号公報(上述した特許文献1)の如く、2次元XY平面内のX軸方向、Y軸方向共に各単位開口領域が繰返周期性を持た無い完全に不規則なパターンとすれば、モアレを解消することも可能となる。しかしながら、斯かる完全不規則なパターンを採用した場合、新たな問題点が発生した。それは、各開口領域の形状及び面積が不揃いの為、該導電性メッシュ全体を眺めたとき、導電性メッシュそれ自体に外観上、濃淡のムラが目立ってしまうことである。此れは、画像表示装置の画面上に設置する用途に於いては欠点となる。これに加えて、メッシュを構成するライン部がランダムに配置される結果、ライン部先端が他のライン部と接続し無いで断線し、回路として開いてしまう箇所が生じる。その結果、導電メッシュ全体としての電気伝導度が低下する。このような断線箇所の存在は、電気伝導度の改善に寄与しないだけでなく、可視光透過率を下げる原因となるため、電磁波遮蔽材としては大きな欠点となる。
【0080】
その一方で、ここで説明する本実施の形態に係る導電性メッシュ40の平面パターンのように、開口領域42(閉回路)が一定のピッチで並べられた直線方向が存在しないように遮光性メッシュ40を構成し、且つ、次のように一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均に制約条件を課すことによれば、モアレの発生を効果的に防止することが可能になるとともに、濃淡ムラの発生を効果的に防止することも可能となった。このような作用効果は、モアレの不可視化として単にパターンの不規則化を実施してきた従来の技術水準からして、予測される範囲を超えた顕著な効果であると言える。
【0081】
ここで、図10は、導電性メッシュ40によって画成される多数の開口領域42が、一定のピッチで並べられている方向が存在しないことを説明するための平面図である。図10においては、電磁波遮蔽材30のシート面上において、任意の位置で任意に方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。この一本の直線diは、ライン部42の境界線分48と交差し交差点を形成している。この交差点を、図面では図面左下の側から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口領域42の直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1を持つ開口領域42に対して直線diに沿って隣接する別の開口領域42についても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分48とから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の開口領域42について、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。図10では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共に導電性メッシュ40とは分離して描いてある。この直線diを図10で図示のものから任意の角度だけ回転させて別の方向について各開口領域Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。即ち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分48で画成された開口領域42には繰返周期を持つ方向が存在しない。このように開口領域42が繰返周期を持つ方向が存在しないことを、開口領域42が一定のピッチで並べられている方向が存在しない、と表現する。
【0082】
加えて、本実施の形態による電磁波遮蔽部材30の導電性メッシュ40では、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満となっている。このように一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満となっている場合、導電性メッシュ40の配列パターンを、図22に示された正方格子配列から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0より大きく4.0未満となっている場合には、ハニカム配列からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均を3.0以上4.0未満とした場合、開口領域42の配列を不規則化して、開口領域42が繰返規則性(周期性)を持って並べられた方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、結果として、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0083】
なお、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均は、厳密には、導電性メッシュ40内に含まれる全ての分岐点46について、延び出す境界線分48の数を調べてその平均値を算出することになる、ただし、実際的には、ライン部44によって画成された一つあたりの開口領域42の大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、上述した寸法例で開口領域42が形成されている導電性メッシュにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点46について延び出す境界線分48の数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該導電性メッシュについての一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均値として取り扱うようにしてもよい。
【0084】
実際に、図9に示された電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40では、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0より大きく4.0未満となっている。さらに具体的には、387個の分岐点46について境界線分48の数を確認したところ、3つの境界線分48が延び出している分岐点46が373個存在し、その他の14個の分岐点46からは4つの境界線分48が延び出し、一つの分岐点に於ける境界線分の平均分岐数は3.04個であった。
【0085】
なお、図11には、図9に示された導電性メッシュ40を有した電磁波遮蔽材30を、図8に示されたストライプ状パターンで配列された遮光部60を有した光学部材50と重ねた状態が示されている。また、図14には、図9の電磁波遮蔽材30を、図12に示された典型的な画素配列の画像形成装置15上に配置した状態が示されている。さらに、図15には、図9の電磁波遮蔽材30を、図8に示された光学部材50とともに、図12に示された画像形成装置15上に配置した状態が示されている。
【0086】
図11から理解され得るように、図9に示された導電性メッシュ40を実際に作製して、光学機能層55を有する光学部材50とともに積層体20を作製した場合、当該積層体20には視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。また、図14から理解され得るように、図9に示された導電性メッシュ40を実際に作製して画像形成装置15の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。さらに、図15から理解され得るように、図9に示された導電性メッシュ40を含む積層体20を実際に画像形成装置15の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0087】
さらに、本件発明者らは、そのメカニズムは不明であるが、ここで説明した電磁波遮蔽材30を用いることによって、他の部材間で発生したモアレを目立たなくさせることもできることを知見した。図13に示すように、図8に示された光学部材50と図12に示された画像形成装置15とを重ねた際、薄っすらとモアレが視認されている。その一方で、図15に示すように、図8に示された光学部材50および図12に示された画像形成装置15に加えて、図9に示された電磁波遮蔽材30を更に重ねた場合、それまで視認されていたモアレまでも視認されなくなっている。すなわち、電磁波遮蔽材30によれば、この電磁波遮蔽材30に起因したモアレを発生させない或いは目立たなくするだけでなく、他の部材間で発生し得るモアレを不可視化することも可能となる。例えば上述したバイアス角度の調節だけではモアレを不可視することができない場合、この電磁波遮蔽材30を用いることにより、他の部材の設計等を変更することなく、すなわち他の部材の所望の機能を維持しながら、他の部材に起因したモアレの問題を解消することもできる。このような電磁波遮蔽材30の効果は、これまでの技術水準から予想される範囲を超えた顕著な効果である。
【0088】
ここで、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0より大きく4.0未満であり且つ開口領域42が一定のピッチで並べられた直線方向が存在しない導電性メッシュのパターンを作製する方法の一例を以下に説明する。
【0089】
以下に説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分の経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分を画定して導電性メッシュ40(ライン部44)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図9に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0090】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図16に示すように、絶対座標系XYの任意の位置に一つめの母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。尚、此処で言う絶対座標系とは、通常の2次元空間(平面)のことであるが、後述の相対座標系と区別する為に、特に絶対座標系と呼称する。次に、図17に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図18に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0091】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0092】
以上の手順で、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0093】
此のような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図19(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離の分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挟んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。尚、此処で、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・から後述するボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0094】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、前記の通り、現実の2次元平面(座標系)を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図16(B)、図16(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図16(D)の如きグラフが得られる。斯かる相対座標系上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、RAVG―ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
【0095】
斯くの如く各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口領域42の外接円直径(乃至は開口領域の面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
【0096】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口領域42の大きさを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口領域42の大きさを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口領域42の大きさを大きくすることができる。
【0097】
次に、図20に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図20に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0098】
図20のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、導電性メッシュ40の分岐点46をなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分48を設ける。この際、境界線分48は、図9に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分48と接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、図9に示された例のように、境界線分48がボロノイ点XPの間を直線状に結ぶように決定された場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分48を画成することになる。
【0099】
各境界線分48の経路を決定した後、各境界線分48の線幅(太さ)を決定する。境界線分48の線幅は、例えば、開口率が上述した範囲となるように、すなわち、導電性メッシュ40が所望の電気伝導度および可視光透過率を発現するように、決定される。以上のようにして、導電性メッシュ40のパターンを決定することができる。
【0100】
以上のような本実施の形態によれば、電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40が、二つの分岐点46の間を延びて開口領域42を画成する多数の境界線分48から形成されており、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満となっており、且つ、開口領域42が一定のピッチ、即ち一定の繰返ピッチで並べられた方向が存在しないようになっている。この結果、間隔をあけて配列された遮光部60を複数含む光学部材50に、この電磁波遮蔽材30を重ねてなる積層体20において、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。さらに、規則的(周期的)に画素Pが配列された画像形成装置15に、この積層体20を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0101】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
【0102】
例えば、上述した実施の形態において、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満である例、あるいは、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0より大きく4.0未満である例を示したが、これらの例に限られず、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0となるようにしてもよい。一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0とした場合、不規則的に配置された開口領域42が、導電性メッシュ40が形成されている領域内により一様に分散された状態とすることができ、これにより、電磁波遮蔽効率を向上させること及び濃淡のムラの発生をより効果的に防止することが可能となる。
【0103】
また、上述した実施の形態において、導電性メッシュ40の境界線分48が直線状に形成されている例を示したが、これに限られない。境界線分48が、前記の如く二つの分岐点46の間を、曲線状等の種々の経路に沿って延びていてもよい。
【0104】
さらに、上述した導電性メッシュ40のパターン設計方法は単なる一例に過ぎない。例えば、次の手順で母点を配置していってもよい。まず、図16と同様に、絶対座標系XYの任意の位置に一つめの母点BP1を配置する。次に、第1の母点BP1から距離r以上離れた任意の位置に第2の母BP2を配置する。その後、第1の母点BP1および第2の母点BP2のそれぞれから距離r以上離れた任意の位置に第3の母点BP3を配置する。その後、既に配置されている全ての母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を順に配置していく。以上の手順で、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。このような処理によっても、不規則的に配置された母点群が、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に一様に分散した状態とすることができる。
【0105】
さらに、上述した遮光性メッシュ40のパターン設計方法に於いては、先ず、平面内に特定の母点を作図し、ついで、該母点のボロノイ分割パターンとして導電性メッシュ40のパターンを形成する例を示したが、これには限られない。例えば、手作業にて、平面内に互いに大きさ及び形状の異なる5角形及び6角形の開口領域42をランダムに作図し、其の際に、何れの方向にも繰返し周期を持たず、各5角形及び6角形の大きさ(面積乃至外接円直径)が所定の範囲に收まるように留意して作図することによって、遮光性メッシュ40のパターンを作図しても良い。
【0106】
さらに、上述した実施の形態では、電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40の全領域において、開口領域42が一定のピッチで並べられている方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40の一部の領域において、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満であり且つ開口領域42が一定のピッチで並べられている方向が存在しないパターンが形成されるようにしてもよい。
【0107】
典型的な変形例として、その内部において複数の開口領域42が、所定の、繰返周期性の無い、パターンで配列されている領域(単位メッシュ領域)Sを用意し、該領域Sが複数集合して導電性メッシュ40の全領域が構成されているようにしてもよい。即ち、此の形態に於いては、導電性メッシュ40の全領域中に、局所的に観たときに、同一パターンで開口領域群42が配列されてなる単位メッシュ領域Sを2箇所以上含むようになる。此の場合でも、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、モアレ発生は実質上目立ち難く、無視し得る。この例において、一つの領域S内における導電性メッシュのパターンは、例えば、図16〜図20を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。特に最近では、プラズマディスプレイ装置に代表されるよう、画像表示装置10の表示面10aの大型化が進んでいる。とりわけこのような大型画像表示装置に対しては、導電性メッシュ40が、複数の単位メッシュ領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位メッシュ領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口領域42が配列されている構成とした場合、導電性メッシュ40のパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。この場合、単位メッシュ領域S内に含まれる開口領域42の数は、単位メッシュ領域Sの繰返しが実質上視認し難くする上で、出来るだけ多い方が好ましい。通常、単位メッシュ領域S内に含まれる開口領域42の数は300個以上、好ましくは500個以上とすることができる。
【0108】
なお、図21に示された例では、電磁波遮蔽材30が、同一の形状を有した六つの単位メッシュ領域Sに分割され、各領域R内で導電性メッシュ40が同一に構成されている。そして、六つの領域Rは、図21の縦方向に三つの領域が並ぶとともに、図21の横方向に二つの領域が並ぶように配列されている。
【0109】
なお、このような変形例では、例えば図21に示すように、開口領域42の配列が同一のパターンで配列されている領域Sが複数、規則的に配列されていると、導電性メッシュ40内において、開口領域42が一定の配列で並べられている範囲が、単位メッシュ領域Sの数だけ、当該領域の配列方向と平行な方向に繰り返し存在するようになる。すなわち、導電性メッシュ40内において、各開口領域42が所定の繰り返しピッチで並べられている直線方向が存在するようになる。この場合、領域Sの規則的な配列に起因して、縞状模様(モアレ、干渉縞)或いは濃淡ムラが発生する心配もある。但し、特定方向への同一単位メッシュ領域Sの繰返しが3箇所以下、さらに好ましくは2箇所以下であれば、斯かる縞状模様や濃淡ムラは無視し得る。これは、単に繰返し数が少ないことに加えて、領域Sの寸法が画素寸法と大幅に異なる結果、実質上モアレを生じる関係から外れる為でも在る。すなわち、図21に示すように、複数の単位領域Sがある方向に所定のピッチSP1,SP2で配列されている場合、当該所定のピッチSP1,SP2は、ある方向に沿った画像形成装置の寸法L1,L2の1/3以上となっていることが好ましく、ある方向に沿った画像形成装置の寸法L1,L2の1/2以上となっていることがさらに好ましい。
【0110】
尚、図21の形態に於いては、1画面内に於いて、単位メッシュ領域Sを(図21に於いて)左右方向に2領域、上下方向に3領域配列させた。但し、隣接する単位メッシュ領域同士の境界の継目の修整処理(継目が目立た無くするパターンの変形、修整処理)、単位メッシュ領域の形状(図21では長方形としたが、其の他、3角形、6角形、其の他形状も可能)、配列様式(図21では長方形の単位メッシュ領域を縦横に碁盤の目上に配列したが、単位メッシュ領域が長方形であっても、これを煉瓦積みの如き配列とすることも可能)等の工夫如何によっては、単位メッシュ領域Sの縦横の配列ピッチSP1、SP2は、1/10以上となっていれば、縞状模様や濃淡ムラを目立た無くすることは可能となることが知見された。
【0111】
(着色フィルタとの組み合わせ)
本発明に係わる特定の導電性メッシュ40を用いた電磁波遮蔽材30は、実質上、画素Pやストライプ遮光部60とのモアレを生じ無いとともに、濃淡のムラも生じ無いものである。しかしながら、原因は現在不明で有るが、画像形成裝置15の出光面上に設置した場合、条件如何によっては、画像に微細なチラツキを生じる場合が有る。斯かるチラツキを目立ち難くする為に、本発明の積層体20中の適宜位置に、可視光線中の特定波長域の中に吸収スペクトルを持つ着色フィルタを積層することが有効である。該着色フィルタとしては、無彩色(黒色乃至灰色)、有彩色(青、茶、緑等)何れでも良いが、画像の色彩に影響が少ない無彩色の方ものが好ましい。
【0112】
(用途)
以上に説明してきた積層体20は各種用途に使用可能である。特に、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類、各種事務用機器、各種医療機器、電算機器、電話機、電飾看板、各種遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)装置、ブラウン管ディスプレイ(CRT)装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)装置などの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にプラズマディスプレイ装置用として好適である。また、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車両、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジの窓等の等の各種家電製品の窓等に重ねて用いる積層体としての用途にも使用可能である。
【符号の説明】
【0113】
10 画像表示装置
10a 表示面
15 画像形成装置、画像表示パネル
15a 出光面、画像形成面
20 積層体
30 電磁波遮蔽材、電磁波遮蔽シート
35 基材、透明基材
40 導電性メッシュ
42 開口領域
44 ライン部
46 分岐点
48 境界線分
50 光学部材、光学シート
51 基材、透明基材
55 光学機能層
56 透明樹脂部、光透過部
57 ランド部、連通部
60 遮光部
61 母材、バインダー部
62 光吸収粒子
XA ボロノイ領域
XB ボロノイ境界
XP ボロノイ点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて配列された遮光部を複数含む光学部材と、
多数の開口領域を画成する導電性メッシュを有する電磁波遮蔽材と、を備え、
前記導電性メッシュは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
前記導電性メッシュは、一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が3.0以上4.0未満であり且つ前記開口領域が一定のピッチで並べられている方向が存在しないパターンからなる領域を含む、積層体。
【請求項2】
前記領域内において、一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0より大きい、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記領域内において、一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記電磁波遮蔽材は、前記導電性メッシュを支持する透明基材をさらに有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
画像形成装置と、
前記画像形成装置上に設けられた、請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体と、を備える、画像表示装置。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−4801(P2013−4801A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135520(P2011−135520)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】