説明

積層体の製造方法

【課題】親水性に優れる積層体を提供する。
【解決手段】下記の工程(1)〜(5)を含む積層体の製造方法である。
工程(1):平均粒径が5〜100nmであるシリカ粒子と、平均粒径が5〜200nmであるアルミナ粒子と、分散媒とを含む第一の分散液を支持体の表面に塗布する工程。
工程(2):工程(1)で支持体の表面に塗布された第一の分散液から分散媒を除去し、表面粗さRaが25〜100nmである第一の層を形成する工程。
工程(3):工程(2)で形成された第一の層の表面に活性化処理を施し、第一の層の接触角を10°以下にする工程。
工程(4):工程(3)で活性化処理が施された第一の層の表面に、平均粒径が3〜500nmであるシリカ粒子と分散媒を含む第二の分散液を塗布する工程。
工程(5):工程(4)で第一の層の表面に塗布された第二の分散液から分散媒を除去し、第二の層を形成する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性に優れる積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅、倉庫、ビル、輸送機材、道路・鉄道関連施設、農業用施設、太陽電池パネル、架空送電設備などで使用されている資材には、屋外で長時間使用しても汚れにくいことが要求されている。さらにこれらの資材を積雪地域で使用する場合には、積雪荷重による倒壊、破損、変形といった問題が発生するため、雪が資材に積もりにくいこと、すなわち滑雪性が要求される。
【0003】
資材に汚れ防止性や滑雪性を付与する手法はこれまでにいくつか考案されているが、その一つに資材表面を親水性が高い塗膜で覆うことが行われている。例えば特許文献1には、界面活性剤を塗布して親水性を付与する方法が開示されている。特許文献2には、光触媒性微粒子を利用した滑雪用塗膜形成コーティング組成物、滑雪用塗膜および滑雪用部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭52−47926
【特許文献2】特開2006−111680
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法は、界面活性剤が徐々に失われるため長期の使用には適さないことがある。特許文献2に記載されているような、紫外線により親水化する光触媒性微粒子を利用する方法では日陰や降雪量が多い場合には光触媒微粒子に到達する紫外線が少なくなるために、本来の機能が発揮されにくく、親水性はさらに改良が求められていた。本発明は、親水性に優れる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の工程(1)、工程(2)、工程(3)、工程(4)および工程(5)を含む積層体の製造方法である。
工程(1):平均粒径が5〜100nmであるシリカ粒子と、平均粒径が5〜200nmであるアルミナ粒子と、分散媒とを含む第一の分散液を支持体の表面に塗布する工程。
工程(2):工程(1)で支持体の表面に塗布された第一の分散液から分散媒を除去し、表面粗さRaが25〜100nmである第一の層を形成する工程。
工程(3):工程(2)で形成された第一の層の表面に活性化処理を施し、第一の層の接触角を10°以下にする工程。
工程(4):工程(3)で活性化処理が施された第一の層の表面に、平均粒径が3〜500nmであるシリカ粒子と分散媒を含む第二の分散液を塗布する工程。
工程(5):工程(4)で第一の層の表面に塗布された第二の分散液から分散媒を除去し、第二の層を形成する工程。
上記の積層体の製造方法の一つの好ましい態様において、上記第一の分散液に用いられるシリカ粒子がコロイド状シリカであり、上記第一の分散液に用いられるアルミナ粒子がコロイド状アルミナであり、第一の分散液中のシリカ粒子とアルミナ粒子の合計量を100重量%とするとき、シリカ粒子の量が10〜40重量%であり、アルミナ粒子の量が90〜60重量%である。
他の面において本発明は、受光面を有する太陽電池パネルであって、上記受光面が上記第二の層である太陽電池パネルである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、親水性に優れる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における支持体を構成する材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、繊維強化プラスチック、金属、ガラス、窯業系建材用資材等から適宜選択して用いることができる。例えば、太陽電池パネルの受光面は通常、ガラスで構成されている。したがって、ガラス製支持体を用い、本発明の製造方法により得られる積層体は、太陽電池パネルの受光部に好適に適用することができる。
また本発明における支持体の形状も特に限定されるものではなく、フィルム、シート、板等が挙げられる。なお、本発明では、フィルム、シートおよび板を、以下、まとめてフィルム類と称することもある。
【0009】
樹脂製支持体としては、例えば熱可塑性樹脂を溶融押出成形等の方法で成形して得られるフィルム類を用いてもよいし、糸状の樹脂を織成して得られる織布フィルム類を用いることもできる。
支持体を構成する熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、塩素含有樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素含有樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
オレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体、2種類以上のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体、α−オレフィンを主成分とし、α−オレフィンと他の単量体とを共重合して得られる共重合体等が挙げられる。
α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン−1、オクテン−1等が挙げられる。
α−オレフィンと共重合する他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸メチル、ビニル基含有芳香族系単量体、環状単量体等が挙げられる。
α−オレフィンの単独重合体としては、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体等が挙げられる。
2種類以上のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体としては、例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体等が挙げられる。
α−オレフィンを主成分とし、α−オレフィンと他の単量体とを共重合して得られる共重合体としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂、α−オレフィンとビニル基含有芳香族系単量体とを共重合して得られる共重合体、α−オレフィンと環状単量体とを共重合して得られる共重合体等が挙げられる。
α−オレフィンと環状単量体とを共重合して得られる共重合体としては、例えば、エチレン/ノルボルネン共重合体、エチレン/スチレン/ノルボルネン共重合体等が挙げられる。
塩素含有樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/メタクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
セルロース系樹脂としては、例えば、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性樹脂からなるフィルムは、柔軟性に優れるため、例えば農業用フィルムとして用いられる積層体の支持体として好適である。
【0010】
支持体を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0011】
支持体として使用できる繊維強化プラスチックとしては、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、ガラス長繊維強化プラスチック(GMT)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)、ザイロン強化プラスチック(ZFRP)、ポリエチレン繊維強化プラスチック(DFRP)などが挙げられる。
【0012】
支持体として使用できるガラスとしては、好ましくは、平滑性が良く、透視像の歪が少なく、ある程度の剛性をもって風や外力による歪が少なく、可視光領域の透過に優れ、かつ、比較的低コストで得られるフロート法による、酸化金属などの着色成分を少なくした、透明タイプあるいはクリアタイプと呼ばれるソーダライムガラスが挙げられる。
【0013】
支持体として使用できる金属としては、建築用金属材料が挙げられ、具体的には、圧延鋼材、金属板などがあげられる。圧延鋼材としては、例えば、H形鋼、丸型鋼管、角型鋼管、山型鋼、I型鋼などが挙げられる。金属板としては、めっき鋼板、意匠性を付与するためにめっき鋼板に塗装したカラー鋼板、ステンレス鋼板、銅板などが挙げられる。めっき鋼板としては、例えば亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板、ガルファン鋼板等が挙げられる。
【0014】
本発明における支持体がフィルムまたはシートである場合、その厚みは通常、10〜2000μmである。
本発明における支持体は、単層であってもよく、多層であってもよい。
【0015】
本発明の積層体は、支持体と、第一の層と、第二の層とを有する積層体である。第一の層は平均粒径が5〜100nmであるシリカ粒子と、平均粒径が5〜200nmであるアルミナ粒子と、分散媒とを含む第一の分散液を支持体の表面に塗布し、分散媒を除去することによって形成される表面粗さRaが25〜100nm、好ましくは31〜60nmである上記シリカ粒子と上記アルミナ粒子を含む層である。第二の層は第一の層の表面に活性化処理を施し、接触角を10°以下にした後、平均粒径が3〜500nmであるシリカ粒子と分散媒を含む第二の分散液を塗布し、分散媒を除去することによって形成される上記シリカ粒子を含む層である。
【0016】
本発明で用いられるシリカ粒子およびアルミナ粒子は分散媒中での分散性を考慮してコロイド状であることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられるアルミナ粒子としては、酸化アルミニウムの他、水酸化アルミニウムなどが含まれる。水酸化アルミニウムには結晶構造の違いからギブス石、バイヤライトと呼ばれるものや、式AlO(OH)で表されるベーム石などがある。また、一般式Alx(OH)yCl3x-yで表される塩基性塩化アルミニウムもAl/Clモル比が大きくなるとコロイドを作りやすい性質があり、コロイド状アルミナの原料として一般に用いられるものである。
【0018】
本発明に用いられるシリカ粒子としては、式SiO2で表され、二酸化珪素、無水ケイ酸、または単にケイ酸などと呼ばれるもの全般を用いることができる。
【0019】
本発明の第一の分散液に含まれる分散媒および第二の分散液に含まれる分散媒としては、水の他、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、キシレンなど、コロイド化できるものであれば特に限定されないが、安全性等を考慮すれば水がより好ましい。塗布時の濡れを調整するため、必要に応じて水にエチルアルコールやイソプロピルアルコールなどの水溶性有機溶媒を添加したものを分散媒として用いても良い。
【0020】
本発明におけるコロイド状アルミナは、上記分散媒中にアルミナ粒子をコロイド状に分散したものである。陽性に帯電したアルミナ粒子は、分散媒中の陰イオンを安定剤とすることができ、その陰イオンとしてはCl-、NO3-、CH3COO-などが好ましく用いられる。コロイド状アルミナはpH2〜6の酸性であることが、安定性の面からは好ましい。アルミナ水和物は基本的に結晶性であるため、アルミナ水和物コロイドは重合して大きくなることはなく、一般には微小コロイドが方向性を持ち強く凝集結合する。コロイドの見かけの粒子形状は製造方法、製造条件により異なるが、繊維状または羽毛状になることが多く、コロイドの平均粒径が5〜200nmであるコロイド状アルミナが用いられる。また、コロイド状アルミナはチキソトロピックな粘性が見られることがある。このようなアルミナ粒子としては市販品を使用することができ、その例としては、日産化学工業株式会社製のアルミナゾル520(平均粒径20nm、アルミナ粒子の濃度20重量%)を挙げることができる。
【0021】
本発明におけるコロイド状シリカは、上記分散媒中にシリカをコロイド状に分散させたものである。シリカ粒子は一般には陰性に帯電しているため、適当な対カチオンが安定化に用いられることが多い。対カチオンとしてはアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、1〜4級アンモニウムイオンなどが好ましい。コロイド状シリカはpH9〜11であることが、安定性の面からは好ましい。シリカ粒子はネットワークフォーマーであるため、生成したコロイド状シリカはアモルファスとなり球状粒子となるものが多い。
【0022】
本発明の第一の層を形成するシリカ粒子は平均粒径が5〜100nmのものが用いられる。その例としては、日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)20(平均粒径20nm、シリカ粒子の濃度20重量%)を挙げることができる。
【0023】
本発明の第二の層を形成するシリカ粒子は平均粒径が3〜500nmであるシリカ粒子が用いられる。シリカ粒子の形状は球状、球状粒子が複数個連なったネックレス状、棒状粒子が枝分かれした構造の粒子を単独で、または複数種混合して用いても良い。このようなシリカ粒子としては市販品を使用することができ、球状粒子の例としては日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)XS、OXS、S、OS、O、N、C、AK、XL、YL、ZL(これらは、水を分散媒とするシリカゾルである)などを挙げることができる。ネックレス状粒子の例としては日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)PS−S、PS−Mなどを挙げることができる。枝分かれした棒状粒子の例としては日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)UP、OUP、(これらは、水を分散媒とするシリカゾルである)などを挙げることができる。
太陽電池パネル等、第二の層に透明性が求められる場合には、球状粒子の平均粒径が3〜100nmであることが好ましい。同様に、球状粒子が複数個連なったネックレス状粒子や枝分かれした棒状粒子は、動的光散乱法により求めた平均粒径が30〜500nmであることが好ましい。ネックレス状粒子の場合、ネックレス状粒子を形成する個々の球状粒子の球の直径が3〜100nmであることが好ましい。枝分かれした棒状粒子の場合、枝分かれした棒状粒子を形成する棒の直径が3〜100nmであることが好ましい。ネックレス状粒子を形成する個々の球状粒子の球の直径や、枝分かれした棒状粒子を形成する棒の直径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の画像解析結果から求めるものである。
【0024】
本発明で用いられるシリカ粒子のうち、球状シリカ粒子であって、粒径が8nm未満のものはシアーズ法により平均粒径を測定する。球状シリカ粒子であって、粒径が8nm以上のものはBET法による球相当径を平均粒径とする。シリカ粒子のうち、ネックレス状、枝分かれした棒状粒子に関しては動的光散乱法による測定結果を平均粒径とする。アルミナ粒子に関しては透過型電子顕微鏡(TEM)の画像解析結果から平均粒径を求める。
【0025】
第一の分散液中のシリカ粒子とアルミナ粒子の合計量を100重量%とするとき、シリカ粒子の量が10〜40重量%であり、アルミナ粒子の量が90〜60重量%であると、第一の層の均一性やコロイド分散液の安定性が向上するため好ましい。また、上記の量のシリカ粒子とアルミナ粒子を含む第一の分散液を用いて形成された第一の層の表面粗さRaは25〜100nm、好ましくは31〜60nmである。ここで表面粗さRaはJIS−B0601に記載の算術平均粗さであり、原子間力顕微鏡を用いて測定する。
【0026】
本発明の第一の分散液および第二の分散液は、界面活性剤や有機系電解質、無機層状化合物などを含有してもよい。
【0027】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性などの各種界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、具体的には、カプリル酸ナトリウム、カプリル酸カリウム、デカン酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸テトラメチルアンモニウム、ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられ、特に、炭素数6〜10のアルキル鎖を有するカルボン酸のアルカリ金属塩が好ましい。
【0028】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、臭化−N−オクタデシルピリジニウム、臭化セチルトリエチルホスホニウムが挙げられる。
【0029】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0030】
第一の分散液を支持体に均一に塗布しやすいという観点から、アニオン性界面活性剤が第一の分散液に含まれることが好ましく、第一の分散液の分散媒の量を100重量部とするときに、アニオン性界面活性剤が0.001〜0.1重量部含まれることがより好ましい。
【0031】
有機系電解質とは、電離性イオン性基を有する有機化合物を指す。例えば、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルスルホン酸カリウム、フェニルホスフィン酸ナトリウム、ジエチルリン酸ナトリウムなどが挙げられ、特に、ベンゼンスルホン酸誘導体が好ましい。有機系電解質のうち、高い界面活性効果を示すものは界面活性剤と呼ばれることもある。
第一の分散液を支持体に均一に塗布しやすいという観点から、有機系電解質が第一の分散液に含まれることが好ましく、第一の分散液の分散媒の量を100重量部とするときに、有機系電解質が0.0001〜0.01重量部含まれることがより好ましい。
【0032】
無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有している無機化合物であり、粒径が5μm以下であることが好ましい。特に、粒径が3μm以下であることが、透明性の面で好ましい。なお、無機層上化合物の粒径はレーザー回折散乱法により測定する。
【0033】
無機層状化合物としては、分散液に含まれる分散媒に膨潤・へき開するものが好ましく、中でも、膨潤性を有する粘土系鉱物が好ましい。粘土系鉱物はシリカの4面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウムなどを中心金属にした8面体層を有する2層構造からなる化合物と、アルミニウムやマグネシウムなどを中心金属にした8面体層を2つのシリカ4面体層が両側から挟んだ3層構造からなる化合物に分類される。前者としては、カオリナイト族、アンチゴライト族などを挙げることができ、後者としては、層間のカチオンの数によって、スメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族を挙げることができる。特に、水を分散媒とした場合にチキソトロピックな粘性を与えることを特徴とするスメクタイト族が好ましい。分散液の粘度は、当該分散液に無機層状化合物を混合することにより制御することができ、無機層状化合物の混合による粘度の制御には、分散液の樹脂製支持体への塗布性、定着性を向上させる効果がある。
第一の分散液を樹脂製支持体に均一に塗布しやすく、第一の層を樹脂製支持体に定着しやすくするという観点から、無機層状化合物が第一の分散液に含まれることが好ましく、第一の分散液の分散媒の量を100重量部とするときに、無機層状化合物が0.01〜0.5重量部含まれることがより好ましい。
【0034】
支持体の表面に第一の分散液を塗布する方法は特に限定されず、例えば、グラビアコーティング、リバースコーティング、刷毛ロールコーティング、スプレーコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、ディッピング、バーコーティングなどの方法で塗布することができる。
【0035】
支持体に第一の分散液を塗布して形成された分散液層から分散媒を除去することにより第一の層を形成することが出来る。上記分散液層から分散媒を除去する方法としては、例えば、常圧下または減圧下で加熱する方法が挙げられる。分散媒を除去する際の圧力、加熱温度は、使用する分散媒や支持体の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、分散媒が水であるときは、一般的には50〜80℃で、好ましくは約60℃で乾燥することができる。
【0036】
支持体が、ガラス、セラミックスなどの耐熱性を有するものであれば、第一の分散液の塗布後に焼付け処理を行うことにより、支持体との密着性をさらに向上させることが可能である。
【0037】
支持体に第一の分散液を塗布する前に、支持体の表面に活性化処理を施すことが好ましい。活性化処理としては、例えば、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線処理、アンカーコート処理、洗浄処理などが挙げられる。
【0038】
本発明の第一の層の表面に第二の分散液を塗布する前に、第一の層の表面に前記第一の層の接触角が10°以下となるように活性化処理を施す。活性化処理としては、例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線処理、洗浄処理などが挙げられる。第一の層の表面に活性化処理を施して接触角を10°以下とした後に第二の層を形成することにより、第二の層の均一性が向上し、親水性が向上する。
【0039】
第一の層の表面に第二の分散液を塗布する方法は特に限定されず、例えば、グラビアコーティング、リバースコーティング、刷毛ロールコーティング、スプレーコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、ディッピング、バーコーティングなどの方法で塗布することができる。
【0040】
第一の層の表面に第二の分散液を塗布して形成された分散液層から分散媒を除去することにより第二の層を形成することが出来る。上記分散液層から分散媒を除去する方法としては、例えば、常圧下または減圧下で加熱する方法が挙げられる。分散媒を除去する際の圧力、加熱温度は、使用する分散媒などに応じて適宜選択することができる。例えば、分散媒が水であるときは、一般的には50〜80℃で、好ましくは約60℃で乾燥することができる。
【0041】
本発明の積層体は、支持体の少なくとも片面に、上記第一の層と第二の層を有していればよい。本発明の積層体が支持体の片面に上記第一の層と第二の層を有する場合、第二の層が汚れ防止や滑雪性が求められる側となるようにして使用すればよい。例えば本発明の積層体を屋外で使用する場合には、前記第二の層が雨や雪に直接接する側となるように、施工して使用すればよい。
本発明の積層体は、農業用ハウス、畜舎、簡易倉庫、ガレージ、全天候型スポーツ施設、住宅、倉庫、ビル、輸送機材、橋梁、道路・鉄道関連施設、架空送電設備、太陽電池パネルなどの耐久性や易施工性を必要とする被覆資材や、瓦、スレート、タイル等窯業系建材用資材に好適に使用できる。また本発明の積層体は、汚れ防止性に優れるため、道路標識等、その外観が重要である屋外用看板用途にも好適である。屋外用看板として用いられる本発明の積層体においては、その支持体が屋外用看板である。本発明の積層体は、透明性にも優れるため、採光性の求められる用途、例えば農業用ハウスの被覆材に好適である。
また、本発明の積層体は親水性を有するため、該積層体表面に散水処理することで簡易に冷房機能を付与することができ、採光材料の過昇温防止効果も期待できる。
【0042】
本発明の積層体を農業用フィルムとして用いる場合、その厚みは50〜200μmであることが好ましい。また、本発明の積層体を畜舎、簡易倉庫やガレージなどの長期間にわたって使用する被覆用資材として用いる場合、その厚みは50〜2000μmであることが好ましい。
【0043】
本発明の積層体の好ましい一つの用途は、受光面を有する太陽電池パネルであって、上記受光面が、本発明の積層体の第二の層である太陽電池パネルである。太陽電池パネルの受光面とは、太陽電池パネルの最表面であって、太陽光を受光する面のことである。
この場合、上記積層体の支持体としては、ガラス製支持体が好ましく採用される。
本発明の積層体を農業用フィルムや太陽電池パネルの部材として使用する場合、透明性を確保するため、積層体の全光線透過率は50%以上、好ましくは80%以上、が好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[支持体]
ユニチカ社製ポリエチレンテレフタレートフィルム(EMBLET−S:厚み25μm)を支持体に用いた。塗布は上記フィルムの易接着面側に行った。
[第一の分散液Aの調製]
イオン交換水99重量%、無機層状化合物(商品名:スメクトンSA;クニミネ工業社製)1重量%を混合、撹拌して無機層状化合物分散液を調製した。
イオン交換水79.584重量%、上記無機層状化合物分散液9.000重量%、コロイド状アルミナ水分散液(商品名:アルミナゾル520、透過型電子顕微鏡(TEM)の画像解析結果から求めた平均粒径:20nm、コロイド状アルミナ水分散液中のアルミナ粒子の濃度20重量%;日産化学工業社製を使用)9.000重量%、コロイド状シリカ水分散液(商品名:スノーテックス20、シリカ粒子の形状:球状、平均粒径:20nm、コロイド状シリカ水分散液中のシリカ粒子の濃度20重量%;日産化学工業社製を使用)2.400重量%、カプリル酸ナトリウム(試薬;東京化成社製)0.014重量%、p−トルエンスルホン酸ナトリウム(試薬;ナカライテスク社製)0.002重量%を混合、撹拌して、分散液Aを得た。
[第二の分散液B調製]
分散液Bにおいて、平均粒径が78nmであるシリカ粒子の濃度が5重量%となるように、イオン交換水とコロイド状シリカ水分散液(商品名:スノーテックスST−ZL、シリカ粒子の形状:球状、BET法により求めた平均粒径78nm、コロイド状シリカ水分散液中のシリカ粒子の濃度40重量%;日産化学工業社製を使用)を混合、撹拌して、分散液Bを得た。
[第二の分散液Cの調製]
分散液Cにおいて、棒状粒子が枝分かれした構造のシリカ粒子の濃度が2重量%、平均粒径4〜6nmであるシリカ粒子の濃度が1重量%、平均粒径が78nmであるシリカ粒子の濃度が2重量%となるように、イオン交換水と、コロイド状シリカ水分散液「スノーテックス(登録商標)UP」(シリカ粒子の形状:枝分かれした棒状粒子、動的光散乱法により求めた平均粒径:40〜300nm、枝分かれした棒状粒子を構成する各粒子棒の直径:5〜20nm(これは、透過型電子顕微鏡観察で求めた)、;コロイド状シリカ水分散液中のシリカ粒子の濃度:20重量%;日産化学工業社製を使用)と、コロイド状シリカ水分散液「スノーテックス(登録商標)ST−XS」(シリカ粒子の形状:球状、シアーズ法により求めた平均粒径4〜6nm;シリカ粒子の濃度20重量%;日産化学工業社製を使用)と、コロイド状シリカ水分散液「スノーテックス(登録商標)ST−ZL」(シリカ粒子の形状:球状、BET法により求めた平均粒径78nm、コロイド状シリカ水分散液中のシリカ粒子の濃度40重量%;日産化学工業社製を使用)とを混合、撹拌して、分散液Cを得た。
【0045】
[接触角]
接触角の測定は協和界面化学社製自動接触角計CA−Z型を用いJIS−R3257に準拠し静滴法にて行った。測定には水を用い、接触角の値が小さいほど、親水性が高いことを示す。
【0046】
[表面粗さ]
表面粗さは、原子間力顕微鏡を用いてJIS−B0601に記載の方法で測定した算術平均粗さとした。
【0047】
[実施例1]
支持体の表面に対して650W・min/m2の出力でコロナ処理を施した。コロナ処理を施した上記支持体の表面に分散液Aを#16のマイヤーバーで塗布後、乾燥して水を除去し、第一の層を形成した。乾燥は熱風乾燥機を用い、60℃にて実施した。第一の層の表面粗さRaは38nmであった。
次に、第一の層の表面に対して650W・min/m2の出力でコロナ処理を施した。コロナ処理後の第一の層表面の接触角は5°であった。コロナ処理を施した第一の層の表面に分散液Bを#16のマイヤーバーで塗布後、乾燥して水を除去し、第二の層を形成した。乾燥は熱風乾燥機を用い、60℃にて実施した。第二の層の接触角を測定したところ、1°であり高い親水性を示した。
【0048】
[実施例2]
実施例1と同様に支持体の表面に第一の層を形成後、第一の層の表面に対して650W・min/m2の出力でコロナ処理を施した。コロナ処理後の第一の層表面の接触角は5°であった。コロナ処理を施した第一の層の表面に分散液Cを#16のマイヤーバーで塗布後、乾燥して水を除去し、第二の層を形成した。乾燥は熱風乾燥機を用い、60℃にて実施した。第二の層の接触角を測定したところ、2°であり高い親水性を示した。
【0049】
[比較例1]
実施例1と同様に支持体の表面に第一の層を形成した。第一の層の接触角は17°であった。上記第一の層の表面に分散液Bを#16のマイヤーバーで塗布後、乾燥して水を除去し、第二の層を形成した。乾燥は熱風乾燥機を用い、60℃にて実施した。第二の層の接触角を測定したところ、4°であった。
【0050】
[比較例2]
支持体の表面に対して650W・min/m2の出力でコロナ処理を施した。コロナ処理後の支持体表面の接触角は41°であった。上記支持体の表面に分散液Bを#16のマイヤーバーで塗布後、乾燥して水を除去し、第二の層を形成した。乾燥は熱風乾燥機を用い、60℃にて実施した。第二の層の接触角を測定したところ、5°であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)、工程(2)、工程(3)、工程(4)および工程(5)の工程を含む積層体の製造方法。
工程(1):平均粒径が5〜100nmであるシリカ粒子と、平均粒径が5〜200nmであるアルミナ粒子と、分散媒とを含む第一の分散液を支持体の表面に塗布する工程。
工程(2):工程(1)で支持体の表面に塗布された第一の分散液から分散媒を除去し、表面粗さRaが25〜100nmである第一の層を形成する工程。
工程(3):工程(2)で形成された第一の層の表面に活性化処理を施し、第一の層の接触角を10°以下にする工程。
工程(4):工程(3)で活性化処理が施された第一の層の表面に、平均粒径が3〜500nmであるシリカ粒子と分散媒を含む第二の分散液を塗布する工程。
工程(5):工程(4)で第一の層の表面に塗布された第二の分散液から分散媒を除去し、第二の層を形成する工程。
【請求項2】
上記第一の分散液に用いられるシリカ粒子がコロイド状シリカであり、上記第一の分散液に用いられるアルミナ粒子がコロイド状アルミナであり、
第一の分散液中のシリカ粒子とアルミナ粒子の合計量を100重量%とするとき、シリカ粒子の量が10〜40重量%であり、アルミナ粒子の量が90〜60重量%である請求項1記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
受光面を有する太陽電池パネルであって、上記受光面が請求項1または2のいずれかに記載の製造方法により得られる積層体の第二の層である太陽電池パネル。

【公開番号】特開2012−135944(P2012−135944A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289620(P2010−289620)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】