説明

積層体

【課題】 用途に応じて界面剥離強度を調整することができる積層体を提供する。
【解決手段】 表面処理がされてない金属層と接着フィルムとの間に、ポリオレフィンと、環状オレフィンコポリマーとを所定の比率で混合した、押出しラミネート用樹脂からなる樹脂層を有し、金属層と樹脂層との界面が剥離面となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用途に応じて剥離面の強度を調節することが可能な樹脂を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミ箔と、ポリオレフィン系樹脂からなる接着フィルムとを積層する際、アルミ箔との界面で適当な剥離強度を持った押出しラミネート用樹脂がなかった。よって、例えば蓋材や医薬品用パウチ等において、樹脂層とアルミ箔層との界面剥離を利用した構成のものは作製できなかった。
従来技術例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ環状オレフィンを混合した樹脂層を備える多層フィルムがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−106514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明の混合樹脂は、シール強度の変動を抑制することができるものではあるが、最内層(シーラント)として同一樹脂同士の接着であり、別の素材、例えばアルミ箔との界面の剥離強度を調節することはできない。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面処理がされてないアルミ箔層と接着フィルムとの間に、ポリオレフィンと、環状オレフィンコポリマーとを所定の比率で混合した、押出しラミネート用樹脂からなる樹脂層を有することにより、用途に応じて界面剥離強度を調整することができる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、表面層と、金属層と、を有する積層体であって、表面層と金属層との間に、ポリオレフィンと、環状オレフィンコポリマーとを所定の比率で混合した樹脂層を有し、金属層と樹脂層との界面が剥離面となることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、表面層は、基材と、接着フィルムと、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、金属層は、樹脂層との界面が未処理であることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、接着フィルムは、ポリオレフィンで形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、用途に応じて界面剥離強度を調整することが可能な積層体を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本実施例の積層体の構成を模式的に示す側断面図である。図1に示すように、最外層となる基材フィルム1と、基材フィルム1の片面に設けられた接着フィルム2と、接着フィルム2と金属層4との間に設けられた押出しラミネート用樹脂3と、最内層となる金属層4と、が順次積層された構成となっている。
【0012】
基材1としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等のプラスチックフィルム又はシート、アルミニウム、鉄、銅、これらを主成分とする合金等の金属箔又は金属板、セロファン、紙、織布、不織布等が用いることができ、これらを単層、もしくは一種又は複数を選択して積層してもよい。また、寸法安定性、耐熱性、機械的強度、印刷適正などを考慮した場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ナイロン(Ny)を使用するのが好ましい。この基材1は、ウェットラミネート、ノンソルベントラミネート、ドライラミネート、押出ラミネート等の接着方法で、後述する接着フィルム2と合わせて表面層を形成する。
【0013】
接着フィルム2は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンを材料とし、基材フィルム1の片面側に形成され、押出しラミネート用樹脂3と接着するフィルムである。なお、材料としては、押出しラミネート用樹脂との接着強度を確保するため、押出しラミネート用の樹脂に使用する樹脂と同一系のものがよい。具体的には押出しラミネート用樹脂として環状オレフィンコポリマーとポリエチレン系樹脂を混合する場合は、接着フィルムとしてポリエチレン系樹脂を用い、押出しラミネート用樹脂として環状オレフィンコポリマーとポリプロピレン系樹脂を混合する場合は、接着フィルムとしてポリプロピレン系樹脂を用いると、接着フィルム2と押出しラミネート用樹脂3を充分な接着強度で積層することができる。また、接着フィルム2の役割としては上記の接着フィルム2と押出しラミネート樹脂の十分な接着強度を得る他にも、押出しラミネート用樹脂に混合する環状オレフィンコポリマーが有する縦裂き性を殺して、金属層から剥離する際の縦裂きを防止する役割を有する。
【0014】
金属層4は、アルミニウム、鉄、銅、これらを主成分とする合金等の金属箔又は金属板を用いることができ、表面粗さ(Ra)が0.40μm以下であることが好ましい。更に好ましくは、表面粗さ(Ra)が0.40μm以下のアルミニウム箔を用いることが望ましい。
【0015】
押出しラミネート用樹脂3は、基材1と、接着フィルム2とからなる表面層と、アルミ層4とを押出しラミネートする際に、表面層と、アルミ層4との間に流し込まれる樹脂である。押出しラミネート用樹脂3の厚さは、安定したピール性を得るために20μm〜40μmが好ましい。
【0016】
本実施例に係る押出しラミネート用樹脂3は、ポリオレフィンに環状オレフィンコポリマー(COC)を所定の比率で混合した樹脂である。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられるが、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いるのが好ましい。ここで、COCとは、α−オレフィンと環状オレフィンとを、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒中、いわゆるチーグラー触媒やメタロセン触媒等の触媒を調合することにより得ることができる共重合体であり、このような共重合体としては、三井化学社製の商品名「アペル」等がある。
【0017】
(実験)
次に、本実施例の積層体における押出しラミネート用樹脂3の界面剥離強度について、図2の実験結果を基に説明する。
【0018】
本実施例の押出しラミネート用樹脂3は、ポリオレフィンとしてLDPE「サンテックL1850K」(旭化成ケミカルズ(株)製)と、COCとして「APL6509」(三井化学(株)製)とを混合する。混合の比率は、「サンテックL1850K」に対して5%ずつ「APL6509」を配合する。本実験では、各混合比率の場合において、基材としてPET「東洋紡エステルE5100」(東洋紡績(株)製)、接着フィルム2としてLDPE「スズロンS−201」(アイセロ化学(株)製)を使用し、表面粗さが0.40μm以下のアルミニウム箔の金属層4から剥離面5で剥離して、押出しラミネート用樹脂3の界面剥離強度(接着フィルム2のはがしやすさ)を調べた。
【0019】
図2に示すように、押出しラミネート用樹脂3において、L1850Kが95%、APLが5%の場合の界面剥離強度は1.0kg、L1850Kが90%、APLが10%の場合の界面剥離強度は0.9kg、L1850Kが85%、APLが15%の場合の界面剥離強度は0.8kg、L1850Kが80%、APLが20%の場合の界面剥離強度は0.7kg、L1850Kが75%、APLが25%の場合の界面剥離強度は0.6kg、L1850Kが70%、APLが30%の場合の界面剥離強度は0.5kg、L1850Kが65%、APLが35%の場合の界面剥離強度は0.4kg、L1850Kが60%、APLが40%の場合の界面剥離強度は0.3kg、となった。このように、本実験の範囲内では、L1850K(LDPE)に対するAPL(COC)の割合を5%ずつ増加すると、界面剥離強度が0.1kgずつ減少するという結果が得られた。なお、COCの代わりにEMAAを使用してもCOCを用いたものに近い結果が得られた。
【0020】
以上のように、従来、積層体の中間層に位置する金属箔層界面での界面剥離強度をコントロールすることはできなかったが、本実施例の押出しラミネート用樹脂3は、低密度ポリエチレン(LDPE)と環状オレフィンコポリマー(COC)との混合比率を変えることにより金属箔層との界面剥離強度をコントロールできるので、用途に応じて界面剥離強度を調整することが可能となる。
【0021】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、食品、飲料、調味料、化粧品、医薬品等の蓋材や易開封包材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例である積層体の構成を模式的に示す側断面図である。
【図2】本発明の実施例に係るラミネート用樹脂の配合比率と界面剥離強度とを示す表である。
【符号の説明】
【0024】
1 基材
2 接着フィルム
3 押出しラミネート用樹脂
4 金属層
5 剥離面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、
金属層と、を有する積層体であって、
前記表面層と前記金属層との間に、ポリオレフィンと、環状オレフィンコポリマーとを所定の比率で混合した樹脂層とを有し、
前記金属層と前記樹脂層との界面が剥離面となることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記表面層は、基材と、接着フィルムと、を有することを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記金属層の表面粗さが0.40μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層体。
【請求項4】
前記接着フィルムは、ポリオレフィンで形成されることを特徴とする請求項2記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−123330(P2006−123330A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314260(P2004−314260)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】