説明

積層体

【課題】ポリプロピレン樹脂層およびポリエチレン樹脂層双方に対して高い接着強度を有するポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層を有する積層体を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン樹脂(A)を含有する層、ポリエチレン樹脂(B)を含有する層、およびポリプロピレン樹脂(A)を含有する層とポリエチレン樹脂(B)を含有する層との間に配された接着層を有し、当該接着層が特定のプロピレン系ランダム共重合体(C)80〜20質量%と、特定のエチレン系共重合体(D)80〜20質量%からなるポリオレフィン樹脂組成物(樹脂組成物中のプロピレンランダム共重合体(C)の含有量とエチレン系共重合体(D)の含有量の和を100質量%とする)を含有する層である積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂層とポリエチレン樹脂層との間に接着層を配してなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、耐熱性や剛性等に優れていることから、包装用フィルムに供されている。低温ヒートシール性が求められる包装用フィルムには、エチレンおよび/またはα−オレフィンをランダム共重合させたプロピレンランダム共重合体が使用されているのが一般的であり、特にプロピレンと1−ブテンを必須成分とするプロピレン・1−ブテン共重合体もしくはプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
更には、低温ヒートシール性をより改良する目的で、上記プロピレンランダム共重合体に、1−ブテン成分含有量が50質量%以上である1−ブテン・エチレン共重合体や、1−ブテン成分含有量が35〜65質量%であるプロピレン・1−ブテン共重合体を配合してなるプロピレン系樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0004】
しかしながら、上記のプロピレンランダム共重合体やプロピレン系樹脂組成物は、耐熱性や剛性と低温ヒートシール性とのバランスについて、満足のいくものではなかった。
【0005】
また、低温ヒートシール性を向上させるために、ポリプロピレン樹脂からなるフィルムにポリエチレンからなる層を積層させることも検討されている。例えば、エチレン成分とブテン成分との含有量が15質量%であるポリプロピレン樹脂からなる層の両側に密度900kg/mの直鎖状低密度ポリエチレンからなる層を有する多層フィルム、ポリプロピレン樹脂からなる層とポリエチレン樹脂からなる層との間に設けた多層フィルムが提案されている(例えば、特許文献4、5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−73132号公報
【特許文献2】特開昭61−108647号公報
【特許文献3】特開平8−12828号公報
【特許文献4】特開平1−195043号公報
【特許文献5】特開平9−48099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記多層フィルムのポリプロピレン樹脂層とポリエチレン樹脂層との接着性は、必ずしも満足できるものではなかった。
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、ポリプロピレン樹脂層およびポリエチレン樹脂層双方に対して高い接着強度を有するポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層を有する積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、ポリプロピレン樹脂(A)を含有する層、ポリエチレン樹脂(B)を含有する層、およびポリプロピレン樹脂(A)を含有する層とポリエチレン樹脂(B)を含有する層との間に配された接着層を有し、当該接着層が下記プロピレン系ランダム共重合体(C)80〜20質量%と、下記エチレン系共重合体(D)80〜20質量%からなるポリオレフィン樹脂組成物(樹脂組成物中のプロピレンランダム共重合体(C)の含有量とエチレン系共重合体(D)の含有量の和を100質量%とする)を含有する層である積層体に係る。
プロピレン系ランダム共重合体(C):プロピレンと炭素原子数が4〜20のα−オレフィンとを重合して得られ、プロピレン系ランダム共重合体(C)中のプロピレン成分含有量が80〜70質量%、炭素原子数が4〜20のα−オレフィン成分含有量が20〜30質量%である共重合体(プロピレン系ランダム共重合体(C)中のプロピレン成分含有量と炭素原子数が4〜20のα−オレフィン成分含有量の和を100質量%とする。)。
エチレン系共重合体(D):エチレンと炭素原子数が4〜20のα−オレフィンとを重合して得られ、密度が870〜910kg/mである共重合体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂が強固に接着されたポリオレフィン樹脂組成物からなる積層体を得ることができ、例えば食品もしくは日用品等の包装用フィルムやシート、これらを賦形、成形してなる容器、中空成形容器、太陽電池用バックシート基材等の工業用フィルム・シート等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂(A)としては、例えばプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・環状オレフィン共重合体、これらの無水マレイン酸等の酸変性物や、これらにエチレン系、スチレン系、アクリル系、ウレタン系等各種エラストマーを混合した組成物を挙げることができる。好ましくはプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、および/またはこれらと各種エラストマーとの組成物である。
【0011】
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂(A)の融点は、好ましくは130℃以上170℃以下であり、より好ましくは135℃以上165℃以下である。ポリプロピレン樹脂の融点は、下記の(i)の方法により測定する。
(i)示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC)を用いて、試片約10mgを窒素雰囲気下で220℃で溶融させた後、急速に150℃まで冷却する。次に、150℃で1分間保持した後、5℃/分の降温速度で50℃まで降温する。その後に50℃で1分保持した後、5℃/分で昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークの温度を融点(Tm)とする。
【0012】
本発明に用いられるポリエチレン樹脂(B)としては、例えば低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・グリシジル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・グリシジル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・グリシジル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、またはこれらの無水マレイン酸等の酸変性物等が挙げられる。これらは単独だけでなく複数用いても構わない。好ましくは低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体等である。
【0013】
本発明に用いられるプロピレン系ランダム共重合体(C)は、プロピレンと炭素原子数が4〜20のα−オレフィンとを重合して得られるプロピレン系ランダム重合体である。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等の直鎖状のα−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィンなどが例示され、好ましくは1−ブテンである。
【0014】
本発明に用いられるプロピレン系ランダム共重合体(C)は、プロピレン系ランダム共重合体(C)中のプロピレン成分含有量が80〜70質量%、炭素原子数4〜20のα−オレフィン成分含有量が20〜30質量%である(プロピレン系ランダム共重合体(C)中のプロピレン成分含有量と炭素原子数が4〜20のα−オレフィン成分含有量の和を100質量%とする)。プロピレン系ランダム共重合体(C)に含有されるプロピレン成分含有量、およびα−オレフィン成分含有量は、“新版 高分子分析ハンドブック”(日本化学会、高分子分析研究懇談会編 紀伊国屋書店(1995))に記載されているIR法を用いて測定する。
【0015】
本発明に用いられるプロピレン系ランダム共重合体(C)を製造する方法としては、一般的には、いわゆるチタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いるチーグラー・ナッタ型触媒、特には遷移金属成分が、チタン、マグネシウム及びハロゲンを必須成分とし、電子供与性化合物を任意成分とする固体成分又は三塩化チタンであり、有機金属成分がアルミニウム化合物である触媒を用いた、スラリー重合、気相重合、バルク重合、溶液重合等又はこれらを組み合わせた重合法をあげることができる。また、市販の該当品を用いてもよい。
【0016】
本発明に用いられるエチレン系共重合体(D)は、エチレンと炭素原子数が4〜20のα−オレフィンとを重合して得られるエチレン系共重合体である。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等の直鎖状のα−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィンなどが例示され、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、更に好ましくは1−ブテンである。
【0017】
本発明に用いられるエチレン系共重合体(D)の密度は870〜910kg/mである。プロピレン系ランダム共重合体(C)との親和性の観点から、密度は、好ましくは890〜910kg/mである。密度は、JIS K 7112に従い測定する。ただし100℃以上に融点を有するエチレン系共重合体については、JIS K 6760(1983)に従い、アニーリングを行った後に、密度を測定する。エチレン系共重合体の融点は、下記の(ii)の方法により測定する。
(ii)示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC)を用いて、試片約10mgを窒素雰囲気下において150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで降温した。その後に40℃で5分保持した後、10℃/分で150℃まで昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークの温度を融点(Tm)とする。
【0018】
本発明に用いられるエチレン系共重合体(D)の製造方法としては、例えば、高圧イオン重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等により、チーグラー系触媒もしくは、メタロセン系触媒の存在下で、30〜300℃、常圧〜300MPa、溶媒の存在下または無溶媒下、エチレンとα−オレフィンを共重合することにより得られる。これらの中では、製造プロセスとしては、高圧イオン重合法が好ましい。
【0019】
上記チーグラー系触媒は、例えば遷移金属を含む固体系触媒成分、有機アルミニウム化合物からなる助触媒成分、必要に応じて担体から形成される。チーグラー系触媒としては、例えば、酸化クロムとアルキルアルミニウムからなる触媒系、酸化モリブデンとアルキルアルミニウムからなる触媒系、三塩化チタンとアルキルアルミニウムからなる触媒系、四塩化チタン等のチタン化合物と塩化マグネシウム化合物等のマグネシウム化合物と(塩化)アルキルアルミニウムからなる触媒系等があげられる。
【0020】
上記メタロセン系触媒としては、例えば、メタロセン錯体とアルミノキサンとからなる触媒、メタロセン錯体と有機アルミニウム化合物および/またはホウ素化合物からなる触媒等があげられる。具体的には、特開平9−87313号公報に記載されているジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドと、トリイソブチルアルミニウムと、N,N−ジメチルアニリニウム(ペンタフルオロフェニル)ボレートとからなる触媒系や、特開平10−259211号公報に記載されているジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジメトキシドと、トリイソブチルアルミニウムと、N,N−ジメチルアニリニウム(ペンタフルオロフェニル)ボレートからなる触媒系があげられる。
【0021】
本発明に用いられるプロピレン系ランダム共重合体(C)の230℃、21.2Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.5〜100g/10分が好ましく、フィルムやシート等に押出成形する観点からは0.5〜20g/10分、射出成形する観点からは3〜100g/10分が好ましい。MFRは、JIS K7210に従って測定する。重合して得られた重合体パウダーに有機過酸化物を添加して溶融混練することにより分子量を減成してMFRを調整することもできる。
【0022】
本発明に用いられるプロピレン系ランダム共重合体(C)の分子量分布は、2より大きく6以下であり、好ましくは3以上5以下である。該分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)であり、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンを分子量標準物質として測定される。
【0023】
本発明のエチレン系共重合体(D)の190℃、21.2NにおけるMFRは、0.5〜50g/10分が好ましく、フィルムやシート等に押出成形する観点からは0.5〜20g/10分、射出成形する観点からは3〜50g/10分が好ましい。MFRは、JIS K7210に従って測定する。
【0024】
本発明に用いられるエチレン系共重合体(D)の分子量分布は、2より大きく6以下であり、好ましくは3以上5以下である。該分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)であり、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンを分子量標準物質として測定される。
【0025】
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂組成物は、プロピレン系ランダム共重合体(C)が80〜20質量%、(D)エチレン系共重合体が20〜80質量%である(樹脂組成物中のプロピレンランダム共重合体(C)の含有量とエチレン系共重合体(D)の含有量の和を100質量%とする)。プロピレン系ランダム共重合体(C)が20質量%よりも少ない場合には、ポリプロピレン樹脂との接着力が低下するため好ましくない。またエチレン系共重合体(D)が20質量%よりも少ない場合には、ポリエチレン樹脂との接着力が低下するため好ましくない。ポリプロピレン樹脂およびポリエチレン樹脂との接着力の観点から、プロピレン系ランダム共重合体(C)が70〜30質量%、エチレン系共重合体(D)が30〜70質量%であることが好ましい。更に好ましくはプロピレン系ランダム共重合体(C)が60〜40質量%、エチレン系共重合体(D)が40〜60質量%である。
【0026】
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂組成物の230℃、21.2NにおけるMFRは、0.5〜100g/10分が好ましく、フィルムやシート等に押出成形する観点からは0.5〜20g/10分、射出成形する観点からは3〜50g/10分が好ましい。MFRは、JIS K7210に従って測定する。
【0027】
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂組成物には、その特徴を妨げない範囲において、その他の樹脂・エラストマーを添加することもできる。例えば、低密度ポリエチレン、密度が910を超えて940kg/mまでの線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・グリシジル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・グリシジル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・グリシジル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィンエラストマー、スチレン・ブタジエンランダム共重合体エラストマーまたはその水添物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体エラストマーまたはその水添物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体エラストマーまたはその水添物、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン・ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル樹脂またはこれらの無水マレイン酸等の酸変性物等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂組成物およびポリプロピレン樹脂(A)、ポリエチレン樹脂(B)には、必要に応じて耐熱安定剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、オゾン劣化防止剤、耐候性安定剤、結晶核剤、透明化剤、防曇剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、帯電防止剤、内部剥離剤、分散剤、アンチブロッキング剤、滑剤、抗菌剤、石油樹脂、発泡剤、発泡助剤、高周波加工助剤、有機顔料、無機顔料等の各種添加剤を加えることができる。各成分を前記した配合割合に調製し、その後各種の公知の方法、たとえばヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法; あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して、一旦、成形用樹脂組成物を製造することができる。
【0029】
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練する場合の押出機、混練機等の設定温度は、通常180〜300℃であり、樹脂組成物の物性および色相を高める観点から、好ましくは190〜250℃である。
【0030】
本発明の積層体は、ポリプロピレン樹脂(A)を含有する層とポリエチレン樹脂(B)を含有する層との間に、上記ポリオレフィン樹脂組成物を含有する層を配してなる積層体である。当該ポリオレフィン樹脂組成物からなる層は、ポリプロピレン樹脂(A)を含有する層とポリエチレン樹脂(B)を含有する層との接着層である。
【0031】
本発明の積層体としては、例えば、ポリプロピレン樹脂層、接着層、ポリエチレン樹脂層がこの順に積層された積層体をあげることができる。また、当該積層体は、ポリプロピレン樹脂層の外側(接着層とは反対側)に、ポリエステル樹脂層やポリアミド樹脂層を有していてもよい。
【0032】
本発明の積層体は、フィルム、シート、容器等、さまざまな形状の成形品として使用される。当該成形品を成形するための成形技術としては、例えば、多層共押出型のTダイフィルム成形、延伸フィルム成形、インフレーションフィルム成形、シート成形、中空成形、異型押出成形などが挙げられる。また単層のTダイフィルム成形、延伸フィルム成形、インフレーションフィルム成形、シート成形、中空成形、異型押出成形により各層を別々に作製してから圧縮成形、熱ラミネート成形などしてもよく、また一部の層をTダイフィルム成形、延伸フィルム成形、インフレーションフィルム成形、シート成形、異型押出成形した直後に、予め作製しておいた残りの層を熱融着して得ることもでき、中空成形時に金型内にラベルを配してなるインモールド成形なども挙げられる。特に、本発明の積層体を成形する方法としては、ポリプロピレン樹脂層、接着層、ポリエチレン樹脂層の3層を、多層共押出型のTダイフィルム成形法により成形することが好ましい。また、ポリプロピレン樹脂層、接着層、ポリエチレン樹脂層からなるフィルムに、必要に応じてポリエステル樹脂層やポリアミド樹脂層を熱ラミネート成形法などにより積層することもできる。
【0033】
また、本発明の積層体の成形技術としては、例えば、多色射出成形、多層射出中空成形、多層射出延伸中空成形なども挙げることができる。また一部の樹脂層にて射出成形、射出中空成形、射出延伸中空成形する際に金型内にラベルを配してなるインモールド成形なども挙げられる。
【0034】
これら積層体には、その特徴を妨げない範囲において、その他の樹脂・エラストマーを積層することもできる。例えば、エチレン・α−オレフィンエラストマー、スチレン・ブタジエンランダム共重合体エラストマーまたはその水添物、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体エラストマーまたはその水添物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体エラストマーまたはその水添物、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン・ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル樹脂またはこれらの無水マレイン酸等の酸変性物等が挙げられる。
【0035】
ポリオレフィン樹脂組成物からなる接着層の厚みとしては、特に制限はないが、例えば、フィルム成形、シート成形、中空成形等の押出成形や圧縮成形、熱ラミネート成形などにおいては、好ましくは全層厚みの1/10〜1/2の比率である。
【0036】
本発明の積層体は、食品もしくは日用品等の包装用フィルムやシート;これらを賦形、成形してなる容器;中空成形容器等に好適に用いることができる。例えば、ポリエチレン樹脂(B)からなる層をヒートシール層とした積層体は、低温ヒートシール性に優れた包装材料として好適に用いることができ、当該積層体のヒートシール層同士をヒートシールすることにより、スタンディングパウチやピロータイプ包装袋などの包装体を得ることができる。また、本発明の積層体は太陽電池用バックシート基材等の工業用フィルム、シートにも、好適に用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて説明するが、本発明の範囲は実施例のみに限定されるものではない。なお、発明の詳細な説明および実施例および比較例における各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
(1)透明性(ヘイズ)(単位:%)
JIS K7105に従い接着層フィルム(厚み50μm)の全光線透過率及びヘイズを測定した。
(2)ヒートシール強度(単位:N/15mm巾)
フィルム同士を所定の順序にて重ね合わせ、ヒートシーラー(東洋精機製)で150℃にて1kg/cm2Gの荷重で3秒間、もしくは1秒間圧着してヒートシールした。23℃、50%RHの条件下において一晩放置後、23℃で剥離速度200mm/分、剥離角度180度で剥離した時の、シール温度が150℃における強度を求め、ヒートシール強度とした。
【0038】
実施例1
[接着層用フィルムの作製]
プロピレン系ランダム共重合体(C)として、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体であるSPX78J1(住友化学株式会社製、1−ブテン含有量=25質量%、MFR=8g/10分)70質量%、およびエチレン系共重合体(D)として、エチレン・1−ブテン共重合体VL200(住友化学株式会社製、密度=900kg/m、MFR=2g/10分)30質量%をペレット同士混合させたものを、株式会社プラスチック工学研究所製20mmφ単軸Tダイフィルム成形機(ダイリップ幅=150mm、リップ開度=0.5mm)へ投入し、シリンダ設定温度=200℃、スクリュー回転数=60rpmの条件にて押出し、冷却ロール温度=30℃、引取速度を調整して、50μm厚みのフィルムを作製した。
[積層体の作製]
プロピレン・エチレンブロック共重合体であるKS23F8(住友化学株式会社製、エチレン含有量=7質量%、MFR=2、Tm=164℃)からなる60μm厚みの未延伸Tダイフィルム(ポリプロピレン(A)層用フィルム)に15μm厚みの延伸ナイロンフィルムをドライラミネーションした多層フィルム(以下、多層フィルム(1)と記す。)と、低密度ポリエチレンであるF218(住友化学株式会社製、密度=919kg/m、MFR=1)からなる120μm厚みの未延伸Tダイフィルム(ポリエチレン(B)層用フィルム)に15μm厚みの延伸ナイロンフィルムをドライラミネーションした多層フィルム(以下、多層フィルム(1)と記す。)とを用意した。
多層フィルム(1)と、上記にて得られた接着層用フィルムと、多層フィルム(2)とを、延伸ナイロン//ポリプロピレン樹脂//接着層//ポリエチレン樹脂//延伸ナイロンとなるように重ね合わせ、所定の条件にてヒートシールを行い、積層体を作製した。なお、ヒートシールにおける加熱圧着時間は3秒とした。
[各種特性評価]
接着層用フィルムの透明性を測定したところ、全光線透過率=91%、全ヘイズ=13%であった。また、ヒートシールした積層体の多層フィルム(1)と多層フィルム(2)を掴み、所定の条件で剥離することにより、積層体のヒートシール強度を測定したところ、34N/15mm巾であった。
【0039】
実施例2〜5
プロピレン系ランダム共重合体(C)とエチレン系共重合体(D)の比率をそれぞれ表1に示したものに変更した以外は、実施例1と同様に行った。各種特性評価の結果を表1に示した。
【0040】
比較例1、2
プロピレン系ランダム共重合体(C)とエチレン系共重合体(D)の比率をそれぞれ表1に示したものに変更した以外は、実施例1と同様に行った。各種特性評価の結果を表1に示した。
【0041】
比較例3
プロピレン系ランダム共重合体(C)をSPX78J1からプロピレン・エチレンランダム共重合体W151(住友化学株式会社製、エチレン含有量=4.5質量%、MFR=8g/10分)に変更した以外は実施例3と同様に行った。各種特性評価の結果を表1に示した。
【0042】
比較例4
エチレン系共重合体(D)をVL200からエチレン・1−ブテン共重合体FV201(住友化学株式会社製、密度=916kg/m、MFR=2g/10分)に変更した以外は実施例3と同様に行った。各種特性評価の結果を表1に示した。
【0043】
比較例5
接着層組成を、プロピレン系ランダム共重合体SPX78J1を100質量%に変更した以外は実施例1と同様に行った。各種特性評価の結果を表1に示した。
【0044】
比較例6〜8
接着層組成を表1のように変更した以外は実施例1と同様に行った。各種特性評価の結果を表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例6
[ヒートシール試験用積層フィルムの作成]
ポリプロピレン樹脂(A)からなる層(ラミ層)、プロピレン系ランダム共重合体(C)と、エチレン系共重合体(D)からなるポリオレフィン樹脂組成物からなる層(中間層)、及びポリエチレン樹脂(B)からなる層(シール層)が、この順にそれぞれ30μm、10μm、10μmの厚みで積層された3種3層の積層フィルムを、以下に述べる方法で製造した。
ラミ層を構成するポリプロピレン樹脂(A)としては、プロピレン・エチレン・1−ブテンの三元系共重合体であるFL6632G(住友化学株式会社製、MFR=6g/10分、Tm=136℃)を用いた。シール層を構成するポリエチレン樹脂(B)としては、エチレン・1−ブテン共重合体であるCL2089(住友化学株式会社製、密度=921kg/m、MFR=1.4g/10分)を用いた。中間層を構成するポリオレフィン樹脂組成物として、40質量%のSPX78J1(プロピレン系ランダム共重合体(C)に相当)と、及び60質量%のVL200(エチレン系共重合体(D)に相当)とを、ペレット同士混合してなる組成物を用いた。これらの各層を構成する樹脂及び樹脂組成物を、それぞれ田辺プラスチック(株)社製30mmΦ3種3層多層Tダイフィルム成形機(ダイリップ幅=250mm、リップ開度=0.9mm)に供給し、シリンダ温度250℃、冷却ロール温度30℃にて製膜した。
次に、得られた3種3層の積層フィルムのラミ層側に、15μm厚みの延伸ナイロンフィルムをドライラミネーションし、ヒートシール試験用の積層フィルムを得た。
[ヒートシール性評価]
得られたヒートシール試験用の積層フィルム2枚をポリエチレン樹脂(B)からなる層同士が接するように重ねて、所定の条件でヒートシールした。なお、加熱圧着時間は1秒とした。ヒートシール後、2枚の積層フィルムをそれぞれ掴んで、所定の条件で剥離することによりヒートシール強度を測定したところ40N/15mm巾であった。
【0047】
実施例7
ポリエチレン樹脂(B)を、CL2089から、エチレン・1−ヘキセン共重合体であるFX301(住友化学株式会社製、密度=898kg/m、MFR=3.5g/10分)に変更した以外は実施例6と同様に行った。ヒートシール強度は33N/15mm巾であった。
【0048】
比較例9
中間層を構成する樹脂組成物として、50質量%のFL6632Gと、50質量%のCL2089とを、ペレット同士混合してなる組成物を用いた以外は、実施例6と同様に行った。ヒートシール強度は20N/15mm巾であった。
【0049】
比較例10
中間層を、FL6632Gのみからなる層とした以外は実施例6と同様に行った。ヒートシール強度は13N/15mm巾であった。
【0050】
比較例11
中間層を、FL6632Gのみからなる層とした以外は実施例7と同様に行った。ヒートシール強度は23N/15mm巾であった。
【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂(A)を含有する層、ポリエチレン樹脂(B)を含有する層、およびポリプロピレン樹脂(A)を含有する層とポリエチレン樹脂(B)を含有する層との間に配された接着層を有し、当該接着層が下記プロピレン系ランダム共重合体(C)80〜20質量%と、下記エチレン系共重合体(D)80〜20質量%からなるポリオレフィン樹脂組成物(樹脂組成物中のプロピレンランダム共重合体(C)の含有量とエチレン系共重合体(D)の含有量の和を100質量%とする)を含有する層である積層体。
プロピレン系ランダム共重合体(C):プロピレンと炭素原子数が4〜20のα−オレフィンとを重合して得られ、プロピレン系ランダム共重合体(C)中のプロピレン成分含有量が80〜70質量%、炭素原子数が4〜20のα−オレフィン成分含有量が20〜30質量%である共重合体(プロピレン系ランダム共重合体(C)中のプロピレン成分含有量と炭素原子数が4〜20のα−オレフィン成分含有量の和を100質量%とする。)。
エチレン系共重合体(D):エチレンと炭素原子数が4〜20のα−オレフィンとを重合して得られ、密度が870〜910kg/mである共重合体。
【請求項2】
プロピレン系ランダム共重合体(C)が、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体である請求項1記載の積層体。
【請求項3】
エチレン系共重合体(D)が、エチレン・1−ブテン共重合体である請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
ポリプロピレン樹脂(A)の融点が130℃以上170℃以下である請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
ポリエチレン樹脂(B)を含有する層がヒートシール層である請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体のヒートシール層同士をシールして得られる包装体。

【公開番号】特開2012−66574(P2012−66574A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155569(P2011−155569)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】