説明

積層体

【課題】機械的強度が高く、かつ、屋外等の過酷な環境下で長期間使用しても層間剥離強度の低下及び表面の変色が抑制され、意匠性を低下させることがない積層体を提供する。
【解決手段】芳香族ビニル系樹脂、好ましくはゴム強化芳香族ビニル系樹脂からなる第一の樹脂層と飽和ポリエステル系樹脂からなる第二の樹脂層を、接着剤層を介して積層した積層体において、該接着剤層を、ポリエステルセグメントまたはポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)と硬化剤(c2)とを含有してなる二液性ポリウレタン系接着剤に、該成分(c1)と成分(c2)の合計100質量部に対して0.1〜8質量部のカルボジイミド変性イソシアナート化合物を配合してなる接着剤組成物で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期耐久性に優れる積層体に関し、さらに詳細には、飽和ポリエステル樹脂層と芳香族ビニル系樹脂層が特定の接着剤組成物を用いて積層され、機械的強度に優れ、屋外等の過酷な環境下で長期間使用しても層間の剥離強度が低下したり表面が変色せず、意匠性を低下させることもない積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因となる石油に代わるエネルギー供給手段として、太陽電池が注目を浴びており、その需要が高まっている。太陽電池の需要増に伴い、太陽電池用バックシートなどの部品の安定供給及び低コスト化が求められており、また、太陽電池の発電効率の向上や意匠性を付与させる要求も高まっている。
【0003】
一般的に太陽電池は、太陽光のあたる面からガラス面、シリコンセルをエチレン・酢酸ビニル樹脂(EVA)などの封止樹脂で封止したシリコンセルパッケージ、太陽電池用バックシートの順に積層した太陽電池モジュールとして構成されることが多い。
【0004】
かかる太陽電池モジュールは主に屋外で使用されるため、その構造や材質には十分な耐久性、耐候性が要求される他、意匠性も要求される。特に太陽電池用バックシートは、耐候性、水蒸気バリア性に優れることが要求され、これが不足すると長期に使用した際に剥離(デラミネーション)や変色を生じ、配線を腐食させたり、太陽電池の発電効率を低下させるおそれがある。
【0005】
従来、この太陽電池用バックシートの材質としては、耐候性、難燃性に優れるフッ素系樹脂が用いられている(特許文献1、2参照)。また、絶縁性に優れるポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムを用いた太陽電池用バックシートも開発されている(特許文献3参照)。しかしながら、フッ素系樹脂は、シリコンセルの充填材であるエチレン−酢酸ビニル樹脂との密着性が悪く価格も高価であり、一方、ポリエステルフィルムは耐候性(耐加水分解性)に劣るため、その使用に制限があった。
【0006】
また、太陽電池は、約20年間といった長期の使用が想定されるので、長期間にわたって使用してもフィルム強度が低下せず、フィルムの変色により太陽電池の発電効率の低下や意匠性の低下を防ぐ必要がある。そこで、少なくとも2層以上の基材を特定のポリウレタン系接着剤で積層し、強度及び耐候性を向上させた太陽電池裏面封止シートが提案されている(特許文献4参照)。
【0007】
一方、ポリカルボジイミド樹脂、フェノキシ樹脂及びシランカップリング剤を含んでなる、接着力と耐湿熱性に優れ、熱膨張性の低い接着剤組成物が開示されている(特許文献5参照)。また、イソシアナート末端カルボジイミド化合物とポリプロピレングリコールとのウレタン化反応により鎖伸長し、さらにノニオン性親水オリゴマーで分子末端を親水化した新規なカルボジイミド基含有硬化剤を配合することにより、塗膜の耐水性、密着性を向上させた水系塗料に関する技術が開示されている(非特許文献1)。
しかし、これらの文献は、接着性シートや水性塗料でのカルボジイミド化合物の使用に関するものであり、芳香族ビニル系樹脂とりわけゴム強化芳香族ビニル系樹脂からなる樹脂層を備えた積層体の接着については何ら言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平08−500214号公報
【特許文献2】特表2002−520820号公報
【特許文献3】特開2001−111073号公報
【特許文献4】特開2008−004691号公報
【特許文献5】特開2002−332471号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】TECHNO-COSMOS Vol.16, PP 8-13, Mar, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、機械的強度が高く、さらには、長期耐久性、具体的には屋外等の過酷な環境下で長期間使用しても層間剥離強度の低下及び表面の変色が抑制され、意匠性を低下させることなく維持することも可能な、太陽電池用バックシート等の屋外での使用に適した積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、芳香族ビニル系樹脂層と飽和ポリエステル系樹脂層を、特定の接着剤組成物を用いて積層することにより、機械的強度や長期耐久性に優れた積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、
第一の樹脂層、接着剤層及び第二の樹脂層がこの順で積層されてなる積層体において、
前記第一の樹脂層は、芳香族ビニル系樹脂(A)からなり、
前記第二の樹脂層は、飽和ポリエステル系樹脂(B)からなり、
前記接着剤層は、ポリエステルセグメントまたはポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)と硬化剤(c2)とを含有してなる二液性ポリウレタン系接着剤(C)に、前記成分(c1)と成分(c2)の合計100質量部に対して0.1〜8質量部のカルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)を配合してなる接着剤組成物(E)からなる、
ことを特徴とする積層体を提供する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記芳香族ビニル系樹脂(A)は、ゴム質重合体(a)の存在下に芳香族ビニル化合物及び所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体からなるビニル系単量体(b)を重合させてなるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)、及び、所望によりビニル系単量体(b)の(共)重合体(A−2)を含有してなり、該芳香族ビニル系樹脂(A)100質量%に対する、該ゴム質重合体(a)の含有量が5〜40質量%であり、好ましくは、上記ゴム質重合体(a)は、エチレン−α−オレフィン系ゴム、水添共役ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム及びシリコーン・アクリル複合ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の積層体は、芳香族ビニル系樹脂(A)からなる第一の樹脂層、接着剤層、飽和ポリエステル系樹脂からなる第二の樹脂層が順に積層されてなる積層体において、接着剤層を、ポリエステルセグメントまたはポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)と硬化剤(c2)とを含有してなる二液性ポリウレタン系接着剤(C)に、前記成分(c1)と成分(c2)の合計100質量部に対して0.1〜8質量部のカルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)を配合してなる接着剤組成物(E)から形成したので、機械的強度が高く、屋外等の過酷な環境下で長期間使用しても、層間の剥離(デラミネーション)や劣化を生じず、表面の変色(黄変)も抑制される。
【0015】
また、第一の樹脂層を形成する芳香族ビニル系樹脂(A)がゴム強化芳香族ビニル系樹脂である場合、積層体の可撓性及び機械的強度がさらに優れる。また、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂のゴム質重合体(a)が、エチレン−α−オレフィン系ゴム、水添共役ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム及びシリコーン・アクリル複合ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である場合、耐候性及び長期耐久性がさらに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、実施例で作製したA4サイズの積層体試験片の構造を概略的に示す平面図であり、(b)は(a)の側面図であり、(c)は(a)の積層体試験片から切り出した試験片の黄変観測部を概略的に示す平面図であり、(d)は剥離強度の試験方法を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において「(共)重合」とは、単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0018】
本発明の第一の樹脂層
本発明の積層体を構成する第一の樹脂層は、芳香族ビニル系樹脂(A)(以下、「成分(A)」ともいう)からなる。第一の樹脂層に芳香族ビニル系樹脂(A)を用いると、耐候性及び耐加水分解性に優れた積層体を得ることができる。
【0019】
芳香族ビニル系樹脂(A
本発明の第一の樹脂層で使用する芳香族ビニル系樹脂(A)は、芳香族ビニル化合物を必須の構成単量体単位として含むものであれば、特に限定はされないが、代表的には、ゴム質重合体(a)の存在下に芳香族ビニル化合物及び所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体からなるビニル系単量体(b)を重合させてなるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)、及び/又は、前記ビニル系単量体(b)の(共)重合体(A−2)である。後者の(共)重合体(A−2)は、ゴム質重合体(a)の非存在下に、前記ビニル系単量体(b)を重合して得られるものである。ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)には、通常、上記ビニル系単量体(b)がゴム質重合体(a)にグラフト共重合した共重合体とゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト成分〔上記(共)重合体(A−2)と同じ種類のもの〕が含まれる。
【0020】
本発明の芳香族ビニル系樹脂(A)は、耐衝撃性及び可撓性の面から、前記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)を少なくとも1種含むものが好ましく、所望により前記(共)重合体(A−2)を含有してもよい。芳香族ビニル系樹脂(A)におけるゴム質重合体(a)の含有量は、芳香族ビニル系樹脂(A)を100質量%として、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは8〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%、特に好ましくは12〜18質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量が40質量部を超えると、耐熱性が十分でなく、フィルム加工が困難となる場合がある。一方、ゴム質重合体(a)の含有量が5質量部未満となると、可撓性が十分でなくなる場合がある。
【0021】
前記ゴム質重合体(a)は、特に限定されないが、代表的には、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、ブタジエン・スチレンブロック共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体などの共役ジエン系ゴム及びその水素添加物(即ち、水添共役ジエン系ゴム)、及び、エチレン−α−オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、シリコーン・アクリル複合ゴムなどの非ジエン系ゴムが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、耐候性の観点から、エチレン−α−オレフィン系ゴム(a−1)、水添共役ジエン系ゴム(a−2)、アクリル系ゴム(a−3)、シリコーン系ゴム(a−4)及びシリコーン・アクリル複合ゴム(a−5)が好ましく、この中でも、アクリル系ゴム(a−3)、シリコーン系ゴム(a−4)及びシリコーン・アクリル複合ゴム(a−5)がより好ましく、シリコーン・アクリル複合ゴム(a−5)が可撓性の観点から特に好ましい。尚、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
前記エチレン−α−オレフィン系ゴム(a−1)としては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体が挙げられる。該エチレン−α−オレフィン系ゴム(a−1)を構成するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。α−オレフィンの炭素数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜8である。炭素数が20を超えると、共重合性が低下し、樹脂層の表面外観が十分でなくなる可能性がある。代表的なエチレン−α−オレフィン系ゴム(a−1)としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合体などが挙げられる。エチレン/α−オレフィンの質量比は、好ましくは5〜95/95〜5、より好ましくは50〜90/50〜10、さらにより好ましくは60〜88/40〜12、特に好ましくは70〜85/30〜15である。α−オレフィンの質量比が95を超えると、耐侯性が十分でなく、一方、5未満になるとゴム質重合体のゴム弾性が十分でなくなるため、フィルムとしての可撓性が十分でなくなる可能性がある。
【0023】
非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類などが挙げられ、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。これらの非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。非共役ジエンの、エチレン−α−オレフィン系ゴム(a−1)全量に対する割合は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらにより好ましくは0〜10質量%である。非共役ジエンの割合が30質量%を超えると、樹脂層の表面外観および耐侯性が十分でなくなる可能性がある。尚、該エチレン−α−オレフィン系ゴム(a−1)における不飽和基量は、ヨウ素価に換算して4〜40の範囲が好ましい。
また、前記エチレン−α−オレフィン系ゴム(a−1)のムーニー粘度(ML1+4、100℃;JIS K6300に準拠)は、好ましくは5〜80、より好ましくは10〜65、さらにより好ましくは15〜45である。該成分(a−1)のムーニー粘度が80を超えると重合が困難になり、一方、ムーニー粘度が5未満になると、フィルムとしての耐衝撃性、可撓性が不十分になる可能性がある。
【0024】
水添共役ジエン系ゴム(a−2)としては、例えば、下記の構造を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。すなわち、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロックA、1,2−ビニル結合含量が25モル%を超える共役ジエン系化合物単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックB、1,2−ビニル結合含量が25モル%以下の共役ジエン系化合物単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックC、および芳香族ビニル化合物単位と共役ジエン系化合物単位の共重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックDのうち、2種以上を組み合わせたものからなるブロック共重合体である。
【0025】
上記ブロック共重合体の分子構造は、分岐状、放射状またはこれらの組み合わせでもよく、さらにブロック構造としては、ジブロック、トリブロック、もしくはマルチブロック、またはこれらの組み合わせでもよい。上記ブロック共重合体は、例えば、A−(B−A)n 、(A−B)n 、A−(B−C)n 、C−(B−C)n 、(B−C)n 、A−(D−A)n 、(A−D)n 、A−(D−C)n 、C−(D−C)n 、(D−C)n 、A−(B−C−D)n 、(A−B−C−D)n 、(ただし、n=1以上の整数)で表されるブロック共重合体であり、好ましくは、A−B−A、A−B−A−B、A−B−C、A−D−C、C−B−C、C−D−Cの構造を有するブロック共重合体である。
【0026】
上記水添共役ジエン系ゴム(a−2)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜100万が好ましく、より好ましくは3万〜80万、さらにより好ましくは5万〜50万である。Mwが1万未満では、フィルムとしての可撓性が十分でなくなる可能性があり、一方、100万を超えると重合が困難となる。
【0027】
前記アクリル系ゴム(a−3)としては、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルの重合体であり、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上併用して使用することができる。好ましいアクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸(n−,i)−ブチル又はアクリル酸2−エチルヘキシルである。なお、アクリル酸アルキルエステルの一部は、最高20質量%まで、共重合可能な他の単量体で置換することが出来る。この他の単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸、アクリル酸、スチレン等が挙げられる。
【0028】
前記アクリル系ゴム(a−3)は、そのガラス転移温度が−10℃以下になるように、単量体の種類と共重合量を選ぶことが好ましい。また、アクリル系ゴムは、適宜、架橋性単量体を共重合することが好ましく、架橋性単量体の使用量は、アクリル系ゴム中の割合として、通常0〜10質量%、好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0029】
架橋性単量体の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等のモノ又はポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート等のモノ又はポリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルサクシネート、トリアリルトリアジン等のジ又はトリアリル化合物、アリルメタクリレート、アリルアクリレート等のアリル化合物、1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物などが挙げられる。上記アクリル系ゴムは、公知の重合法で製造されるが、好ましい重合法は乳化重合法である。
【0030】
前記シリコーン系ゴム(a−4)としては、公知の重合法で得られる全てのものが使用できるが、グラフト重合の容易さから、乳化重合でラテックスの状態で得られるポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体ラテックスが好ましい。
【0031】
前記ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体のラテックスは、公知の方法、例えば米国特許第2,891,920号明細書、同第3,294,725号明細書などに記載された方法で得ることが出来る。例えば、ホモミキサー又は超音波混合機を使用し、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸などのスルホン酸系乳化剤の存在下に、オルガノシロキサンと水とを剪断混合した後に縮合させる方法が挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸は、オルガノシロキサンの乳化剤として作用すると共に重合開始剤として作用するので好適である。この際、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸金属塩などを併用すると、グラフト重合を行う際に、ポリマーを安定に維持するのに効果があるので好ましい。また、必要により、本発明の目的の性能を損なわない範囲でグラフト交叉剤または架橋剤を共縮合させてもよい。
【0032】
使用されるオルガノシロキサンは、例えば、一般式RSiO(4−m)/2(式中、Rは置換または非置換の1価の炭化水素基であり、mは0〜3の整数を示す)で表される構造単位を有するものであり、直鎖状、分岐状または環状構造を有するものがあるが、好ましくは環状構造を有するオルガノシロキサンである。このオルガノシロキサンの有する置換または非置換の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、それらをシアノ基などで置換した置換炭化水素基などを挙げることができる。
【0033】
オルガノシロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン等の環状化合物の他に、直鎖状または分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
尚、前記オルガノシロキサンは、予め縮合された、例えばポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜10,000程度のポリオルガノシロキサンであってもよい。また、オルガノシロキサンがポリオルガノシロキサンである場合、その分子鎖末端は、例えば、水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基などで封鎖されていてもよい。
【0035】
グラフト交叉剤としては、例えば、不飽和基とアルコキシシリル基とを併せ持つ化合物が使用できる。かかる化合物の具体例としては、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシランが好ましく、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシランが更に好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
グラフト交叉剤の使用割合は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤および架橋剤の合計量100質量部に対し、通常0〜10質量部、好ましくは0.2〜10質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。グラフト交叉剤の使用量が多い場合は、グラフトしたビニル系ポリマーの分子量が低下し、その結果、充分な耐衝撃性が得られない。また、グラフト化後のポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体の2重結合より酸化劣化が進行し易く、耐候性の良好なグラフト共重合体が得られない。
【0037】
尚、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体ラテックスの粒子の平均粒子径は、通常0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下、更に好ましくは0.05〜0.4μmである。この平均粒子径は前記の乳化剤および水の量、ホモミキサー又は超音波混合機を使用して混合したときの分散の程度またはオルガノシロキサンのチャージ方法によって、容易に制御することが出来る。ラテックスの粒子の平均粒子径が0.5μmを超える場合は光沢が劣る。
【0038】
また、前記のようにして得られるポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、通常3万〜100万、好ましくは5万〜30万である。重量平均分子量が3万未満では、フィルムとしての可撓性が十分に得られない可能性がある。一方、重量平均分子量が100万を超える場合と、ゴムの高分子鎖間の絡み合いが強くなり、ゴム弾性が低下するため、フィルムとしての可撓性が低下したり、グラフト粒子が溶融しにくくなって、フィルム外観が損なわれる恐れがある。
【0039】
前記の重量平均分子量の調整は、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体調製時の縮重合温度と時間を変えることにより、容易に調整することが出来る。すなわち、縮重合温度が低いほど、及び/又は、冷却時間が長いほど、重合体は高分子量化する。また、架橋剤を少量添加することでも、重合体を高分子量化することが出来る。
【0040】
なお、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体の分子鎖末端は、例えば、水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基などで封鎖されていてもよい。
【0041】
前記乳化剤の使用量は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤および架橋剤の合計量100質量部に対し、通常0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜3質量部である。なお、この際の水の使用量は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤および架橋剤の合計量100質量部に対し、通常100〜500質量部、好ましくは200〜400質量部である。また、縮合温度は、通常5〜100℃である。
【0042】
なお、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体の製造に際し、得られるグラフト共重合体の耐衝撃性を改良するために、第3成分として架橋剤を添加することも出来る。この架橋剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン等の4官能性架橋剤を挙げることが出来る。これらは2種以上を併用することが出来る。また、これら架橋剤として、予め縮重合させた架橋プレポリマーを使用してもよい。この架橋剤の添加量は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤および架橋剤の合計量100質量部に対し、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、更に好ましくは0.01〜5質量部である。上記架橋剤の添加量が10質量部を超える場合は、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体の柔軟性が損なわれるため、フィルムの可撓性が低下する可能性がある。
【0043】
前記シリコーン・アクリル複合ゴム(a−5)とは、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムを含有するゴム質重合体をいう。好ましいシリコーン・アクリル複合ゴム(a−5)は、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムが分離できないように相互に絡み合った構造を有する複合ゴムである。
【0044】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート(単量体)を共重合して得られるものが挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
さらに前記アルキル(メタ)アクリレートの単量体中には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メタクリル酸変性シリコーン、フッ素含有ビニル化合物等の各種のビニル系単量体を30質量%以下の範囲で共重合成分として含んでいてもよい。
【0046】
上記ポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムとしては、2つ以上のガラス転移温度を有する共重合体であることが好ましい。このようなポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムは、フィルムに可撓性を発現させるのに好ましい。
【0047】
上記ポリオルガノシロキサンゴムとしては、オルガノシロキサンを共重合したものを用いることができる。上記オルガノシロキサンとしては、3員環以上の各種の還元体が挙げられ、好ましくはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。そして、これらのオルガノシロキサンは単独又は2種類以上を混合して用いることができる。これらのオルガノシロキサンの使用量はポリオルガノシロキサンゴム成分中50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
【0048】
シリコーン・アクリル複合ゴム(a−5)は、例えば、特開平4−239010号公報、特許第2137934号明細書等に記載された方法で製造することができる。かかるシリコーン・アクリル複合ゴムグラフト共重合体としては、例えば、三菱レイヨン社製の「メタブレン SX−006(商品名)」などが市販されている。
【0049】
前記ビニル系単量体(b)は、芳香族ビニル化合物及び所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体からなる。
【0050】
前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、トリブロムスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン又はα−メチルスチレンが好ましい。また、これらの芳香族ビニル化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、その他の官能基含有不飽和化合物(例えば、不飽和酸、エポキシ基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物等)等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。かかる他の化合物の使用量は、ビニル系単量体(b)を100質量%として、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、さらにより好ましくは1〜30質量%である。
【0052】
前記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらのシアン化ビニル化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
前記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0054】
前記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、共重合樹脂にマレイミド系化合物単位を導入するために、無水マレイン酸を(共)重合させ、後イミド化してもよい。ビニル系単量体(b)がマレイミド系化合物を含有することは、前記芳香族ビニル系樹脂(A)の耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0055】
前記不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
前記エポキシ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
前記オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
前記酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
前記ビニル系単量体(b)における芳香族ビニル化合物の含有量は、ビニル系単量体(b)全量を100質量%として、好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%である。
また、芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体は、シアン化ビニル化合物であることが好ましく、この場合の芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは50〜95質量%及び5〜50質量%、さらにより好ましくは60〜95質量%及び5〜40質量%、特に好ましくは65〜85質量%及び15〜35質量%である。
【0061】
本発明の好ましい実施形態によれば、芳香族ビニル系樹脂(A)として、アクリル系ゴム(a−3)、シリコーン系ゴム(a−4)及びシリコーン・アクリル複合ゴム(a−5)からなる群より選ばれたゴム質重合体(a)の存在下に芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合させてなるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)及び所望により該芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)の(共)重合体(A−2)からなるゴム強化芳香族ビニル系樹脂が使用される。そのうち、ゴム質重合体(a)としてシリコーン・アクリル複合ゴム(a−5)を使用したシリコーン・アクリル複合ゴム強化芳香族ビニル系樹脂、及び、ゴム質重合体(a)としてシリコーン系ゴム(a−4)を使用したシリコーン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂と、ゴム質重合体(a)としてアクリル系ゴム(a−3)を使用したアクリル系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂との混合物が好ましく、シリコーン・アクリル複合ゴム強化芳香族ビニル系樹脂が特に好ましい。
【0062】
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)は、公知の重合法である乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、または、これらを組み合わせた重合法によって得ることができる。
【0063】
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)のグラフト率は、好ましくは20〜170%であり、より好ましくは30〜170%、さらに好ましくは40〜150%である。このグラフト率が低すぎると、フィルムとしての可撓性が十分でなくなる場合がある。また、グラフト率が高すぎると、熱可塑性樹脂の粘度が高くなり、薄肉化が困難になる場合がある。
【0064】
グラフト率は、下記式(1)により求めることができる。
グラフト率(質量%)=((S−T)/T)×100 …(1)
上記式中、Sはゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)1グラムに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。このゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
【0065】
尚、グラフト率は、例えば前記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
【0066】
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、好ましくは0.1〜2.5dl/g、より好ましくは0.2〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.25〜1.2dl/gである。該極限粘度がこの範囲内であることは、フィルムの加工性、肉厚精度の高い積層体を得る観点から好ましい。
【0067】
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)のアセトン可溶分の極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、前記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
【0068】
尚、極限粘度[η]は、例えば前記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。また、異なる極限粘度[η]を持つ前記(共)重合体(A−2)を、適宜選択して配合することにより調整することができる。
【0069】
本発明の第一の樹脂層を構成する芳香族ビニル系樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ビニル系樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。
芳香族ビニル系樹脂以外の他の樹脂としては、飽和ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
本発明の第一の樹脂層を構成する芳香族ビニル系樹脂(A)が、芳香族ビニル系以外の他の樹脂を含む場合、その含有量は、芳香族ビニル系樹脂(A)100質量%に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0071】
芳香族ビニル系樹脂(A)は、あらかじめ各成分の必要部数を配合し、ヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機にて溶融、混練後、ペレット化して用いてもよいし、各成分をフィルム成形機又は押出成形機に直接供給し、フィルム加工又はシート加工を行ってもよい。この際、前記芳香族ビニル系樹脂(A)には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、老化防止剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、防かび剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤、黒鉛、カーボブラック、カーボンナノチューブ、顔料(たとえば、赤外線吸収、反射能力を有する、機能性を付与した顔料も含む。)等を本発明の目的を損なわない範囲で添加することもできる。
【0072】
本発明の第一の樹脂層を構成する芳香族ビニル系樹脂(A)は、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。したがって、芳香族ビニル系樹脂(A)は、着色剤を含有していてもよいし、含有しなくてもよい。第一の樹脂層の色は、白色等の明色系であっても、黒色、褐色、濃青色、緑色等の暗色系であってもよい。
【0073】
白色系の着色剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、シリカ、2PbCO・Pb(OH)、[ZnS+BaSO]、タルク、石膏等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
黒色系の着色剤としては、黒鉛、カーボンブラック、ペリレン系顔料等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
黒色系の着色剤が赤外線透過性を有する場合には、可視光線を吸収し、赤外線を透過させる性質を有するので、意匠性の付与や、蓄熱を防止できる。上記赤外線透過性を有する着色剤としては、ペリレン系顔料等が挙げられる。
【0075】
本発明の第二の樹脂層
本発明の積層体を構成する第二の樹脂層は、飽和ポリエステル系樹脂(B)(以下、「成分(B)」ともいう)からなる。第二の樹脂層に飽和ポリエステル系樹脂(B)を用いると、機械的強度、加工性、熱特性等に優れた積層体を得ることができる。
【0076】
上記飽和ポリエステル系樹脂は、好ましくは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを重縮合反応させることによって得られた樹脂である。
【0077】
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等が挙げられる。
【0078】
また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール等が挙げられる。
これらの、ジカルボン酸成分及びグリコール成分は、それぞれ、1種のみ用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
上記飽和ポリエステル系樹脂としては、テレフタル酸とエチレングリコールの脱水縮合反応により作られてエステル結合が連なったポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。また、このエステル結合の生成は、テレフタル酸ジメチルとのエステル交換反応でも可能である。上記飽和ポリエステル系樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることにより、機械強度、加工性、耐熱性に優れた第二の樹脂層を得ることができる。また、飽和ポリエステル樹脂は、微発泡タイプのものであってもよい。
【0080】
本発明の第二の樹脂層を構成する飽和ポリエステル系樹脂(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、飽和ポリエステル系樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。
飽和ポリエステル系樹脂以外の他の樹脂としては、芳香族ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
本発明の第二の樹脂層を構成する飽和ポリエステル系樹脂(B)が、飽和ポリエステル系以外の他の樹脂を含む場合、その含有量は、飽和ポリエステル系樹脂(B)100質量%に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0082】
飽和ポリエステル系樹脂(B)は、あらかじめ各成分の必要部数を配合し、ヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機にて溶融、混練後、ペレット化して用いてもよいし、各成分をフィルム成形機又は押出成形機に直接供給し、フィルム加工又はシート加工を行ってもよい。この際、前記飽和ポリエステル系樹脂(B)には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、老化防止剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、防かび剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤、黒鉛、カーボブラック、カーボンナノチューブ、顔料(たとえば、赤外線吸収、反射能力を有する、機能性を付与した顔料も含む。)等を本発明の目的を損なわない範囲で添加することもできる。
【0083】
本発明の第二の樹脂層を構成する飽和ポリエステル系樹脂(B)は、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。したがって、飽和ポリエステル系樹脂(B)は、着色剤を含有していてもよいし、含有しなくてもよい。第二の樹脂層の色は、白色等の明色系であっても、黒色、褐色、濃青色、緑色等の暗色系であってもよい。第二の樹脂層の着色には、前記第一の樹脂層に関して挙げた着色剤を用いることができる。
【0084】
本発明の接着剤層
本発明の接着剤層は、ポリエステルセグメントまたはポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)と硬化剤(c2)とを含有してなる二液性ポリウレタン系接着剤(C)に、前記成分(c1)と成分(c2)の合計100質量部に対して0.1〜8質量部のカルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)を配合してなる接着剤組成物(E)からなる。
【0085】
二液性ポリウレタン系接着剤(C)
前記二液性ポリウレタン系接着剤(C)は、ポリエステルセグメントまたはポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)と硬化剤(c2)とからなるものであり、公知の二液性ポリウレタン系接着剤と同様に、プレポリマー(c1)が一分子中に2以上の水酸基等の活性水素基を備えたポリオール等の化合物である場合は、硬化剤(c2)としては一分子中に2以上のイソシアナート基を備えたポリイソシアナート化合物が用いられ、プレポリマー(c1)が前記ポリイソシアナート化合物である場合、硬化剤(c2)としては一分子中に2以上の水酸基または活性水素を備えたポリオール等の化合物が使用される。
プレポリマー(c1)としては、ポリエステルセグメントまたはポリカーボネートセグメントを有するものが用いられる。
【0086】
ポリエステルセグメントを有するプレポリマー(c1)としては、二塩基酸とジオールとを重縮合反応させることによって得られたポリエステルポリオールが挙げられる。
二塩基酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などの脂肪族系二塩基酸;及びイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系二塩基酸が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
ジオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなど脂肪族系ジオール;シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリコールなどの脂環式系ジオール;及びキシリレングリコールなどの芳香族系ジオールが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0087】
また、ポリエステルセグメントを有するプレポリマー(c1)は、上記ポリエステルポリオールを、一分子中に2以上のイソシアナート基を備えたポリイソシアナート化合物により鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールであってもよい。
また、ポリエステルセグメントを有するプレポリマー(c1)は、上記ポリエステルポリオールの両末端の水酸基にポリイソシアナート化合物を付加したアダクト体、ビューレット体又はイソシアヌレート体であってもよい。
【0088】
前記ポリイソシアナート化合物としては、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、メチレンジイソシアナート、イソプロピレンジイソシアナート、リジンジイソシアナート、2,2,4−−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアナートなどから選ばれるジイソシアナート化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0089】
ポリエステルセグメントを有するプレポリマー(c1)が上記ポリエステルポリオール又は上記ポリエステルウレタンポリオールである場合に使用される硬化剤(c2)としては、上記ポリイソシアナート化合物を用いることが可能であるが、これらに限られるものではなく、活性水素基と反応性を有してポリオールを架橋する性質を有する硬化剤であれば種類は問わない。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる
【0090】
ポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)としては、カーボネート化合物とジオールとを重縮合反応させることによって得られたポリカーボネートポリオールが挙げられる。ポリカーボネートセグメントは、特に接着剤としての性能を考慮すると脂肪族ポリカーボネートからなるセグメントであることが好ましい
カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートなどが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
ジオールの具体例としては、ポリエステルポリオールに関して上記したものを使用でき、それらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0091】
また、ポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)は、上記ポリカーボネートポリオールを、一分子中に2以上のイソシアナート基を備えたポリイソシアナート化合物により鎖伸長したポリカーボネートウレタンポリオールであってもよい。
また、ポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)は、上記ポリカーボネートポリオールの両末端の水酸基にポリイソシアナート化合物を付加したアダクト体、ビューレット体又はイソシアヌレート体であってもよい。
前記ポリイソシアナート化合物としては、ポリエステルポリオールに関して上記したものを使用でき、それらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0092】
ポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)が上記ポリカーボネートポリオール又は上記ポリカーボネートウレタンポリオールである場合に使用される硬化剤(c2)としては、ポリエステルポリオール及びポリエステルウレタンポリオールに関して上記したものを使用でき、それらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0093】
カルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)
本発明において前記二液性ポリウレタン系接着剤(C)に混合して使用されるカルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)としては、例えば、下記式(2):
OCN−R−(NCN−R−NCO …(2)
で表されるものを挙げることができ、式(2)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、ジイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた残基を表わし、nは1〜50の整数を表わす。
【0094】
及びRのジイソシアナート化合物としては、例えば、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、トリジンジイソシアナートなどの芳香族又は脂環式ジイソシアナート化合物が挙げられるが、このうち、脂環式ジイソシアナート化合物が好ましい。
【0095】
上記式(2)で表されるカルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)は、前記ジイソシアナート化合物を原料化合物として、後述のカルボジイミド化反応に付すことにより合成することができる。
【0096】
カルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)は、上記原料化合物から、カルボジイミド化触媒を使用した反応により、合成することができる。
【0097】
上記カルボジイミド化触媒としては、有機リン系化合物が好適であり、特に活性の面でフォスフォレンオキシド類が好ましい。フォスフォレンオキシド類の具体例としては、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド及びこれらの二重結合異性体が挙げられる。これらの中、工業的に入手の容易であることとから、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドが好ましい。
【0098】
前記カルボジイミド化は、公知の方法により行うことができる。例えば、ジイソシアナート化合物に、不活性溶媒の存在下又は不存在下、窒素等の不活性気体の気流下又はバブリング下にて、所定量の上記触媒を加え、120〜200℃の反応温度範囲内で加熱及び撹拌することにより、脱二酸化炭素を伴う縮合反応を進めればよい。触媒の量は、経済性を問わなければ特に制限はないが、全イソシアナート化合物に対し通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0099】
前記反応の反応時間は、反応温度、触媒種や量等により変化するが、前記式(2)で表される化合物の生成は、赤外線吸収スペクトルや滴定法などにより重合度を計算することで確認できる。
【0100】
前記式(1)における平均重合度を表すnが50を超えると、合成に多くの時間を要し、粘度が上昇し、又は、接着剤組成物(E)への混合が困難となる可能性がある。
【0101】
前記カルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)の配合量は、前記二液性ポリウレタン系接着剤(C)の成分(c1)と成分(c2)の合計を100質量部として、0.1〜8質量部であり、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは1〜4質量部、さらにより好ましくは1.5〜3質量部である。カルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)の配合量が0.1質量部未満では、得られる積層体の長期耐久性が劣る。一方、配合量が8重量部を超えると、接着剤が増粘し、積層体の安定生産が困難となる。
【0102】
積層体の製造
本発明の積層体は、例えば、第一の樹脂層及び第二の樹脂層の夫々の単層フィルムを成形した後、少なくとも一方のフィルムの接着面に接着剤組成物(E)を塗布して、両フィルムを熱ラミネーションすることにより製造することができる。
【0103】
第一の樹脂層は、上記芳香族ビニル系樹脂(A)を、カレンダー成形、インフレーション成形、Tダイ押出成形等の各種成形方法により成形することで、製造することができる。その厚さは、本発明の積層体の強度、可撓性、耐熱性及び耐久性の観点から、通常50〜300μm、好ましくは70〜200μm、より好ましくは90〜180μmである。
第二の樹脂層は、上記飽和ポリエステル樹脂(B)を、カレンダー成形、インフレーション成形、Tダイ押出成形等の各種成形方法により成形することで、製造することができる。その厚さは、本発明の積層体の強度、可撓性、耐熱性及び耐久性の観点から、通常30〜300μm、好ましくは30〜200μm、より好ましくは30〜150μmである。
接着層の厚みは、積層体の強度、可撓性、密着性の観点から、通常5〜20μm、好ましくは5〜15μmである。
また、第一の樹脂層及び/又は第二の樹脂層の表面は、平滑面であってもよいし、ヘアライン加工、エンボス加工等により、規則模様又は不規則模様を有してもよい。
【0104】
第一の樹脂層及び第二の樹脂層は、両者の接着性向上の観点から、接着剤層が形成される側の表面に、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの表面処理が施されていることが好ましく、コロナ処理されていることが特に好ましい。このコロナ処理は、公知のコロナ処理装置を用いて行うことができる。このコロナ処理された表面は、未処理の表面に比べて、>C=O、−COOH等の官能基が増加しており、JIS K6768に準拠するぬれ指数は、通常40mN/m以上、好ましくは43mN/m以上、より好ましくは45mN/m以上である。このぬれ指数が小さすぎると、接着剤層の剥離をまねく場合がある。
【0105】
第一の樹脂層及び第二の樹脂層の何れか一方の樹脂層の上記表面処理を施した側の表面に、ダイコート、グラビアコート等の手法を用いて、ドライ固形分として0.1〜20g/mの範囲で前記接着剤組成物(E)を塗工し、80℃で1分間乾燥させ、次いで、他方の樹脂層の上記表面処理を施した側の表面を、塗工された前記接着剤組成物(E)の上に積層し、その後、熱ラミネーションすることにより、積層体を製造することができる。尚、接着剤を塗工するのは、第二の樹脂層であることが好ましい。
熱ラミネーションの方法としては、例えば、加熱された金属ロールとニップロールの間を加圧ニップして熱ラミネーションする方法が好ましい。ラミネートの金属ロール表面温度は、好ましくは230〜260℃、より好ましくは235〜260℃、さらにより好ましくは240〜260℃である。金属ロールの表面温度が230℃未満の場合、両樹脂層間の界面接着性が十分高められず、両樹脂層間の剥離強度が低下する場合がある。金属ロールの表面温度が260℃を超える場合、金属ロールとの粘着が発生し、フィルムの平滑性が悪化する場合がある。
【0106】
本発明の積層体の構成としては、代表的には、第一の樹脂層/接着剤層/第二の樹脂層の3層構成の積層体が挙げられる。また、前記積層体は、前記3層構造の組み合わせが複数あってもよく、例えば、第一の樹脂層/接着剤層/第二の樹脂層/接着剤層/第一の樹脂層の5層構造の積層体であってもよい。
【0107】
このようにして得られた本発明の積層体の全体の厚さは、好ましくは、80〜600μm、より好ましくは、100〜400μm、さらにより好ましくは、120〜300μmである。厚さが薄すぎると積層体の強度が不足し、使用時に積層体が破ける恐れがあり、一方、厚さが厚すぎると積層体の加工が困難となったり、積層体としての柔軟性が低下したり、折り曲げ白化する等の問題が生じる恐れがある。
【0108】
さらに、例えば積層体全体の厚みが200μmの場合、第一の樹脂層/接着剤層/第二の樹脂層の厚さは、好ましくは75〜165/5〜20/30〜120μm、より好ましくは95〜155/5〜20/40〜100μm、さらにより好ましくは115〜155/5〜20/40〜80μmである。各層の厚みが上記範囲内にあると、耐熱性、耐候性、フィルム強度が十分となる。
【0109】
本発明の積層体は、テープ類(粘着テープを含む)、フィルム類(粘着フィルム、ラミネートフィルム、マスキングフィルム等を含む)等の事務用品をはじめ、ペン類、ファイル類等の文具、冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、掃除機、扇風機、空調機、電話機、電気ポット、炊飯器、食器洗浄機、食器乾燥機、電子レンジ、ミキサー、テレビ、ビデオ、ステレオ、テープレコーダー、時計、コンピュータ、ディスプレイ、計算機等の家電製品、車両関連部材、医療機器、光学機器、スポーツ用品、日用品、各種容器等の内装用あるいは外装用フィルム及びシート、壁紙、化粧紙、化粧紙代替用フィルム、床材、インサート成型用フィルム等として好適で、特に太陽電池用バックシートなどの太陽電池用フィルムまたはシートなどの屋外等の過酷な環境下で使用される製品に好適に使用できる。
【0110】
また、本発明の積層体には、所望により保護層を、その外表面に積層することができる。
この保護層は、積層体の耐傷性、耐突き抜き性等の物理的性能、耐薬品性などの化学的性能、又は難燃性などの熱的性能を高めるためによく用いられるものであり、建材等の屋外用途では、積層体の難燃性及び耐傷性を向上させられるものが好ましい。
【0111】
さらに、積層体を水蒸気が通過するのを防止する為、水蒸気バリア層を設けることができる。
水蒸気バリア層としては、通常、金属及び/又は金属酸化物からなる薄膜層を使用することができる。金属としては、例えば、アルミニウムが挙げられ、金属酸化物としては、例えば、酸化珪素及び/又は酸化アルミニウムが挙げられる。この薄膜層は、上記金属又は金属酸化物を、第一の樹脂層及び/又は第二の樹脂層にメッキ、蒸着等の手法で形成してもよい。
【0112】
また、水蒸気バリア層は、上記薄膜層が予め合成樹脂フィルムに蒸着された水蒸気バリア性フィルムを用いて形成してもよい。コスト面からは、好ましくは厚さ5〜50μm、より好ましくは10〜15μm程度の合成樹脂フィルムに上記薄膜層が蒸着された水蒸気バリア性フィルムを用いることが好ましい。かかる樹脂フィルムは、着色剤を含むものであっても含まないものであってもよく、透明であっても透明でなくてもよい。また、樹脂フィルムを構成する合成樹脂としては、一般的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが使用される。かかる水蒸気バリア性フィルムとしては、市販品を使用することができ、例えば、三菱樹脂社製「テックバリアLX(商品名)」、凸版印刷社製「GXフィルム(商品名)」、東洋紡社製「エコシアールVE500(商品名)」等が挙げられる。
【0113】
この水蒸気バリア性フィルムは、第一の樹脂層、接着剤層および第二の樹脂層の3層を備えた積層体を得た後、第一の樹脂層または第二の樹脂層の外表面に積層してもよく、または、積層体を得る前に、予め第一の樹脂層、第二の樹脂層に積層しておいてもよし、または、第一の樹脂層、接着剤層および第二の樹脂層と同時に積層してもよい。積層方法は、接着剤を用いて熱ラミネート法によって積層する方法でも、接着剤を使用せずに、第一の樹脂層、及び第二の樹脂層の少なくとも1層の成形と同時に共押出によって積層する方法でもよい。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例において、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
【0115】
1.評価方法
下記の実施例及び比較例における、各種評価項目の測定方法を以下に示す。
【0116】
1−1.長期耐久性(密着性)
図1(a)に示すようにして、実施例または比較例で得られたA4サイズの積層体試験片の剥離しろが設けられた端部から、170mm×50mmの試験片を切り出し、温度115℃、湿度90%の条件下に120時間放置(プレッシャークッカー試験)した。その後、試験片を温度23℃、湿度50%で3日間放置し、試験片から170mm×15mmの180度剥離試験片を切り出した。180度剥離試験片の剥離しろの形成された端部は、第一の樹脂層と第二の樹脂層が接着されていないので、この端部の第一の樹脂層と第二の樹脂層を島津製作所製の引張試験機「AG−20kNX」(商品名)にセットし、図1(d)に示すように引張速度300mm/minで引張試験を行い、JIS K6854に準拠して最適直線法により剥離強度(剥離荷重)(N120)を求めた。さらに、プレッシャークッカー試験を行わない以外は、上記と同様の方法で、180度剥離試験片の剥離強度(剥離荷重)(N)を測定し、下記式(3)より剥離強度保持率を求めた。
剥離強度保持率 = (N120/N)×100 …(3)
【0117】
1−2.長期耐久性(黄変)
図1(a)に示すようにして、実施例または比較例で得られたA4サイズの積層体試験片の剥離しろが設けられた端部から、170mm×50mmの試験片を切り出し、温度115℃、湿度90%の条件下に120時間放置(プレッシャークッカー試験)した後、図1(c)に示した測定場所(上記A4サイズの積層体試験片のほぼ中央に相当)の黄色度(YI120)を、Gardner社製の分光測色計「TCS−II」(商品名)にて測定した。さらに、プレッシャークッカー試験を行わない以外は、上記と同様の方法で、同様の試験片の黄色度(YI0)を求めた、下記式(4)より120時間経過後の黄色度の差△YIを求めた。
△YI = YI120−YI0 …(4)
【0118】
1−3.剥離強度
図1(a)に示すようにして、実施例または比較例で得られたA4サイズの積層体試験片の剥離しろが設けられた端部から、170mm×50mmの試験片を切り出し、温度115℃、湿度90%の条件下に50時間放置(プレッシャークッカー試験)した。その後、試験片を温度23℃、湿度50%で3日間放置し、試験片から170mm×15mmの180度剥離試験片を切り出した。180度剥離試験片の剥離しろが形成された端部は、第一の樹脂層と第二の樹脂層が接着されていないので、この端部の第一の樹脂層と第二の樹脂層を島津製作所製の引張試験機「AG−20kNX」(商品名)にセットし、図1(d)に示すように引張速度300mm/minで引張試験を行い、JIS K6854に準拠して最適直線法により剥離強度(剥離荷重)(N50)を求めた。さらに、プレッシャークッカー試験を行わない以外は、上記と同様の方法で、180度剥離試験片の剥離強度(剥離荷重)(N)を測定し、下記式(5)より変化率を求めた。
変化率 = (N50−N)/N×100 …(5)
【0119】
1−4.接着剤組成物の経時変化
接着剤組成物をポリエチレン製のビンに入れて温度23℃で10時間放置した。その後、ビンを傾けて、接着剤組成物の粘度変化の有無を目視にて観察した。接着剤組成物の粘度が変化すると、接着剤組成物の塗布が困難になり、積層体の生産性が低下する。
【0120】
2.積層体の製造方法
2−1.芳香族ビニル系樹脂
2−1−1.シリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂(A−1)
三菱レイヨン社製「メタブレン SX−006(商品名)」(シリコーン・アクリル複合ゴムにアクリロニトリル・スチレン共重合体をグラフト重合したもの、ゴム量50%、グラフト率100%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)0.38dl/g、ガラス転移温度(Tg)135℃)を用いた。
2−1−2.アクリロニトリル・スチレン共重合体(A−2)
テクノポリマー社製のAS樹脂「SAN−H(商品名)」(スチレン/アクリロニトリルの共重合比は70/30、MFRは5g/10min(220℃、98N)であった)を用いた。
2−1−3.N−フェニルマレイミド・アクリロニトリル・スチレン共重合体(A−3)
日本触媒社製「ポリイミレックス PAS1460(商品名)」(N−フェニルマレイミド・アクリロニトリル・スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド単量体含有率40%)
【0121】
2−2.接着剤
2−2−1.接着剤(C−1)
本発明のポリエステルセグメントを有するプレポリマー(c1)に相当する三井化学社製の「タケラック A−1143」(商品名)を主剤とし、本発明のジイソシアネート化合物に相当する三井化学社製の「タケネート A−50」(商品名)を硬化剤とする二液性ポリウレタン系接着剤(C−1)を用いた。主剤と硬化剤の配合割合は、主剤/硬化剤=90/10%(ただし、主剤と硬化剤の合計を100%とする。)であった。
【0122】
2−2−2.接着剤(C−2)
本発明のポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)に相当する三井化学社製の「タケラック A−1102」(商品名)を主剤とし、本発明のジイソシアネート化合物に相当する三井化学社製の「タケネート A−3070」(商品名)を硬化剤とする二液性ポリウレタン系接着剤(C−2)を用いた。主剤と硬化剤の配合割合は、主剤/硬化剤=94/6%(ただし、主剤と硬化剤の合計を100%とする。)であった。
【0123】
2−2−3.接着剤(C−3)(対照)
ポリエーテルセグメントを有するプレポリマー(c1)に相当する東洋インキ社製のTM−320(商品名)を主剤とし、ジイソシアナート化合物に相当する東洋インキ社製のCAT−13B(商品名)を硬化剤とする二液性ポリウレタン系接着剤(C−3)(すなわち、ポリエステルセグメントまたはポリカーボネートセグメントの何れも有さない接着剤)を用いた。主剤と硬化剤の配合割合は、主剤/硬化剤=57/43%(ただし、主剤と硬化剤の合計を100%とする。)であった。
【0124】
2−3.接着剤添加剤
2−3−1.カルボジイミド変性イソシアナート化合物(D−1)
カルボジイミド変性イソシアナート化合物として、日清紡社製の両末端イソシアナート型ポリカルボジイミド「カルボジライト V−05S」(商品名)を用いた。
【0125】
2−3−2.カルボジイミド化合物(D−2)(対照)
イソシアナート基を持たない本発明の範囲外のカルボジイミド化合物として、ラインケミージャパン社製のジイソプロピルフェニルカルボジイミド「スタバクゾール1−LF」(商品名)を用いた。
【0126】
2−3−3.シランカップリング剤(対照)
カルボジイミド化合物の添加剤として、東レ・ダウコーニング社製のシランカップリング剤「Z−6040」(商品名)を用いた。
【0127】
2−4.積層体試験片の製造
2−4−1.第一の樹脂層の準備
上記成分(A−1)30部、上記成分(A−2)30部、上記成分(A−3)40部、アデカ社製「アデカスタブ LA−31」(商品名:高分子量型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)0.2部、及び、チバ・ジャパン社製「CHIMASSORB 119UV」(商品名:ヒンダードアミン系光安定剤)0.2部をヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44、バレル温度270℃)で溶融懇練し、ペレット化した。
【0128】
その後、Tダイ(ダイ幅:1400mm、リップ間隔:0.5mm)を備え、スクリュー径65mmの押出機を備えたフィルム成形機を用い、Tダイから、溶融温度270℃で樹脂を吐出させ、軟質フィルムとした。その後、この軟質フィルムをエアーナイフによりキャストロール(ロールの表面温度;95℃)に面密着させ、冷却固化しフィルムを得た。その際、押出機及びキャストロールの運転条件等を調整することで、肉厚150μmの第一の樹脂層を得た。その後、得られた第一の樹脂層のフィルムから、A4サイズの第一の樹脂層の試験片を切り出した。
【0129】
尚、フィルムの肉厚は、シックネスゲージ(型式「ID−C1112C、ミツトヨ社製)を用い、フィルム製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で肉厚を測定し、その平均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算から除去した。
【0130】
2−4−2.第二の樹脂層の準備
第二の樹脂層として、東レ株式会社製ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー X10S タイプ#50」(商品名)(肉厚:50μm)を用いた。第二の樹脂層から、A4サイズの第二の樹脂層の試験片を切り出した。
【0131】
2−4−3.コロナ処理
第一の樹脂層の試験片及び第二の樹脂層の試験片の両者の互いに接着を行う表面を、春日電機社製のラボコロナ処理機「AGI−021S」(商品名)を用い、0.5KW、5m/minの条件でコロナ処理を行った。
【0132】
2−4−4.接着剤組成物の調製
接着剤の主剤を酢酸エチルに希釈し、これに硬化剤を添加した。さらに、表1に示す配合比率で、上記接着剤添加剤を添加し、メカニカルスターラーを用い400rpmで3分間攪拌した。接着剤組成物の濃度は、酢酸エチルと主剤及び硬化剤の合計を100%として、主剤及び硬化剤の含有量が20%となるように調整した。
【0133】
2−4−5.ラミネート工程
上記接着剤組成物を、バーコーター#24を用いて、第二の樹脂層の試験片のコロナ処理を行った面に塗布した。接着剤の塗布量は、ドライ換算で10g/mとなるように調整した。次に、接着剤を塗布した第二の樹脂層の試験片のフィルムを、80℃に調節した乾燥機で1分間乾燥した。
【0134】
次に、MCK社製ラボドライラミ機「MRS−600A」(商品名)を用い、第二の樹脂層の試験片の接着剤組成物を塗布した面に、第一の樹脂層の試験片のコロナ処理を施した面を接触させる様に積層し、ロール圧着圧0.2MPa、2m/minの条件で貼り合わせて積層体試験片を製造した。尚、剥離しろを形成するために、図1(b)に示す様に、試験片端部に紙4を挟み込んで接着を行った。紙4は接着剤の塗布された第二の樹脂層2の試験片に接着されるが、接着剤の塗布されていない第一の樹脂層1の試験片には接着されない。
【0135】
実施例1〜4、比較例1〜5
上記方法により積層体試験片を製造し評価した。なお、比較例6では、第一の樹脂層及び第二の樹脂層の両方を、上記ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー X10S タイプ#50」(肉厚:50μm)とした以外は、上記方法と同様に、積層体試験片を製造し評価した。結果を表1に示す。なお、コロナ処理を行った表面のぬれ指数は総て45mN/m以上であり、コロナ処理を行わない表面は総て30mN/m以下であった。
【0136】
【表1】

【0137】
なお、表1中の下記化合物は下記の製品を意味する。
ポリエステル系プレポリマー:三井化学社製の「タケラック A−1143」(商品名)。
ポリカーボネート系プレポリマー:三井化学社製の「タケラック A−1102」(商品名)。
ポリエーテル系プレポリマー:東洋インキ社製のTM−320(商品名)。
ジイソシアネート化合物1:三井化学社製の「タケネート A−50」(商品名)。
ジイソシアネート化合物2:三井化学社製の「タケネート A−3070」(商品名)。
ジイソシアネート化合物3:東洋インキ社製のCAT−13B(商品名)。
カルボジイミド変性イソシアナート(D):日清紡社製の両末端イソシアナート型ポリカルボジイミド「カルボジライト V−05S」(商品名)。
フェニル基系イソシアナート:ラインケミージャパン社製のジイソプロピルフェニルカルボジイミド「スタバクゾール1−LF」(商品名)。
シランカップリング剤:東レ・ダウコーニング社製のシランカップリング剤「Z−6040」(商品名)。
【0138】
表1に示す結果から、以下のことが明らかである。
本発明に属する実施例1〜4は、積層体の長期耐久性、剥離強度に優れ、接着剤の粘度が長時間放置しても増粘しないので、積層体の生産性にも優れる。
比較例1は、カルボジイミド変性イソシアナート化合物を含有しないポリウレタン系接着剤を用いた例であるが、長期耐久性(密着性)及び50時間後の剥離強度の低下が大きかった。比較例2は、カルボジイミド変性イソシアナート化合物の配合量が多すぎる例であるが、接着剤が増粘した。比較例3は、カルボジイミド変性イソシアナート化合物の範疇に属さないカルボジイミド化合物を含有するポリウレタン系接着剤を用いた例であるが、積層体の黄変が激しかった。比較例4は、カルボジイミド変性イソシアナート化合物の代わりに、シランカップリング剤を用いた例であるが、長期耐久性に劣り、剥離試験で試験片が破断した為、密着性の評価が行えなかった。比較例5は、本発明の範囲外であるポリエーテルセグメントを持つポリウレタン系の接着剤を用いたものであるが、長期耐久性(密着性及び黄変)に劣り、50時間後の剥離強度の低下も大きかった。比較例6は、第一の樹脂層及び第二の樹脂層の両者をPETで構成したものであるが、剥離試験で試験片が破断した為、密着性の評価が行えなかった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の積層体は、スチレン系樹脂層と飽和ポリエステル系樹脂層を特定の接着剤層を介して積層した積層体からなり、耐久性と強度に優れるので、屋外等の過酷な環境下で使用される部材、例えば太陽電池の部材として有用である。
【符号の説明】
【0140】
1 第一の樹脂層
2 第二の樹脂層
3 接着剤層
4 紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の樹脂層、接着剤層及び第二の樹脂層がこの順で積層されてなる積層体において、
前記第一の樹脂層は、芳香族ビニル系樹脂(A)からなり、
前記第二の樹脂層は、飽和ポリエステル系樹脂(B)からなり、
前記接着剤層は、ポリエステルセグメントまたはポリカーボネートセグメントを有するプレポリマー(c1)と硬化剤(c2)とを含有してなる二液性ポリウレタン系接着剤(C)に、前記成分(c1)と成分(c2)の合計100質量部に対して0.1〜8質量部のカルボジイミド変性イソシアナート化合物(D)を配合してなる接着剤組成物(E)からなる、
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記芳香族ビニル系樹脂(A)が、ゴム質重合体(a)の存在下に芳香族ビニル化合物及び所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体からなるビニル系単量体(b)を重合させてなるゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A−1)、及び、所望によりビニル系単量体(b)の(共)重合体(A−2)を含有してなり、該芳香族ビニル系樹脂(A)100質量%に対する、該ゴム質重合体(a)の含有量が5〜40質量%である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ゴム質重合体(a)が、エチレン−α−オレフィン系ゴム、水添共役ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム及びシリコーン・アクリル複合ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記飽和ポリエステル樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)である請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−86363(P2012−86363A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232146(P2010−232146)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】