説明

積層型記録媒体

【課題】第1のシートと第2のシートとを張り合わせたままの状態で第1の記録面と第2の記録面とに別個独立した内容の情報を記録できるようにする。
【解決手段】第1のシート10とその表面に裏面が剥離可能に貼り合わされた第2のシート20とを設け、第1のシート10と第2のシート20との間に第1の記録面15、第2のシート20の表面に第2の記録面21をそれぞれ設け、第1の記録手段による第2のシート20の表面側からの記録動作に応じて第2の記録面21に影響を与えることなく第1の記録面15に画像を生成させ、第2の記録手段による第2のシート20の表面側からの記録動作に応じて第1の記録面15に影響を与えることなく第2の記録面21に画像を生成させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の独立した又は連続したシートを重ね合わせて剥離自在に貼り合わせ、一方のシートにおける綴じ込まれて外部から視認できない領域ともう一方のシートの表面領域とに情報の印字が可能な積層型記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受取人に郵送される郵便物の形態として、二つ折りメールフォーム又は三つ折りメールフォーム等のような形態が広く普及している。このような二つ又は三つ折りメールフォームを用いた郵便物の形態としては、例えば、金融機関から郵送される支払金額や残金残高の案内、公官庁等から郵送される年金の支払い金額案内、小売販売店から郵送されるセール案内等、列挙すればきりがないほど多岐に渡っている。もっとも、そのような二つ又は三つ折りメールフォームを用いる目的から考えると、情報自体に隠蔽性が要求される場合(金融機関から郵送される支払金額や残金残高の案内、公官庁等から郵送される年金の支払い金額案内等)と、受取人に開封行為に伴う期待感を抱かせる場合(小売販売店から郵送されるセール案内等)とに大別することができる。
【0003】
こうした二つ又は三つ折りメールフォームが郵便物の形態として広く普及した背景としては、封筒との比較においては記録媒体を封筒に封入する作業が不要で手間を省けること、郵政法に定める葉書の規定に収まるように加工することで郵便料を安くすることができること等が考えられる。
【0004】
ここで、二つ又は三つ折りメールフォームを用いた郵便物を作成するには、隠匿性情報が折り込まれて宛先が視認可能となるように、二ないし三の独立した又は連続したシートを折り込み、この際、それらのシートにおける必要な部分に感圧タイプの接着剤を予め塗布しておき、折り込んだシートを加圧する。これにより、感圧タイプの接着剤に接着力が生じ、二ないし三の独立した又は連続したシートが接着され、二つ又は三つ折りメールフォームが完成する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、郵便物の形態として考慮されたものではないが、複数枚のシートを重ね合わせた感熱タイプの複写伝票も従来から知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなものは、上位に位置するシートからの加熱動作に応じて下位に位置するシートを感熱発色させることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平08−175055号公報(段落[0002]〜[0004]、図1、図4、図5)
【特許文献2】特開2001−180123公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した二つ又は三つ折りメールフォームは、各シートに異なる印字内容を印字又は印刷することができるという利点があり、例えば隠匿性情報と宛先とを記録する必要がある郵便物への適用に最適である。しかしながら、そのような二つ又は三つ折りメールフォームを作成するには、折り込んだシートを加圧する必要があり、そのために大掛かりな専用装置を用いなければならないという問題がある。このようなことから、二つ又は三つ折りメールフォームによる郵便物を作成しようとする場合、専用設備を有する営業所に委託するのが一般的であり、この場合には、手間がかかるばかりか、秘密漏洩の可能性もある。
【0008】
これに対して、複数枚のシートを重ね合わせた感熱タイプの複写伝票の場合には、例えばサーマルプリンタ等を利用して手軽に複写伝票を作成することが可能である。しかしながら、このような感熱タイプの複写伝票は、全てのシートに印字する内容が同一内容となってしまうことから、例えば隠匿性情報と宛先とのような異なる情報を記録する必要がある郵便物へ適用することができない。
【0009】
本発明の目的は、第1のシートと第2のシートとを張り合わせたままの状態で第1の記録面と第2の記録面とに別個独立した内容の情報を記録できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層型記録媒体は、第1のシートとその表面に裏面が剥離可能に貼り合わされた第2のシートとによる基本構成を備え、前記第1のシートと前記第2のシートとの間(つまり、第1のシートの表面又は第2のシートの裏面)には第1の記録面、前記第2のシートの表面には第2の記録面がそれぞれ設けられ、第1の記録手段(例えば感熱型記録装置)による前記第2のシートの表面側からの記録動作に応じて前記第1の記録面に画像を生成させる第1の画像生成手段(例えば第2のシートの表面に形成された感熱発色層)が前記第1のシートと前記第2のシートとの間に介在し、第2の記録手段(例えば感熱転写型記録装置)による前記第2のシートの表面側からの記録動作に応じて前記第2の記録面に画像を生成させる第2の画像生成手段(例えば第2の記録面におけるインクの固着構造)を備える。そして、前記第1の画像生成手段は、前記第2の記録手段による記録動作によっては前記第1の記録面に画像を生成させず、前記第2の画像生成手段は、前記第1の記録手段による記録動作によっては前記第2の記録面に画像を生成させない。これにより、第1の記録面と第2の記録面とに別個独立した内容の情報を記録することが可能となる。なお、第1のシートと第2のシートとは別個独立のシート状部材により形成されていても良く、一枚のシート状部材を折り曲げて形成されていても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の画像生成手段は第2の記録手段による記録動作によっては第1の記録面に画像を生成させず、第2の画像生成手段は第1の記録手段による記録動作によっては第2の記録面に画像を生成させないので、第1のシートと第2のシートとを張り合わせたままの状態で第1の記録面と第2の記録面とに別個独立した内容の情報を記録することができ、したがって、一例として、第1のシートと第2のシートとの間に綴じ込まれた第1の記録面に隠匿性情報を記録して第2の記録面に宛名情報を記録したような郵便物を容易に生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は積層型記録媒体の横断平面図、図2は第1の記録面への印字例を示す第1のシートの正面図、図3は第2の記録面への印字例を示す第2のシートの正面図である。
【0014】
図1に示すように、積層型記録媒体1は、第1のシート10と第2のシート20とを基本構造として備える。そして、これらの第1のシート10と第2のシート20とは、剥離可能な接着剤30によってその四辺端部が接着された積層構造になっている。この場合、第1のシート10と第2のシート20とは、一枚のシート状部材が折り曲げられて構成されていても良く、それぞれ異なるシート状部材によって構成されていても良い。
【0015】
第1のシート10は、基材11の上にアンダーコート層12を介して感熱発色層13が形成され、その上に保護層14がコーティングされた感熱紙である。このような第1のシート10に対しては、第2のシート20を介してサーマルプリンタヘッドを用いた感熱印字方式による直接発色印字が可能である。したがって、本実施の形態の場合、第1のシート10と第2のシート20との間に設けられる第1の記録面15は、第1のシート10の表面に設けられている。そして、第1のシート10と第2のシート20との間に介在され、図19に基づいて後述する第1の記録手段としての第1の印字ユニット111による第2のシート20の表面側からの記録動作に応じて第1の記録面15に画像を生成させる第1の画像生成手段は、基材11の上に積層形成された感熱発色層13によって構成されることになる。参考として、第1のシート10には、例えばリコー社製の150LABを用いることが可能である。
【0016】
一方の第2のシート20は、表面が平滑な上質紙やグラシン紙等である。このような第2のシート20は、熱転写インクリボンによる熱転写方式等で印字することができる。したがって、第2のシート20の表面は、第2の記録面21を構成する。この意味で、熱転写インクリボンによる熱転写方式等での印字を可能とする平滑性を持った第2のシート20の構造、換言すると第2の記録面21が形成されたシート表面22は、図19に基づいて後述する第2の記録手段としての第2の印字ユニット121による第2のシート20の表面側からの記録動作に応じて第2の記録面21に画像を生成させる第2の画像生成手段を構成する。
【0017】
ここで、本実施の形態では、第1のシート10に対して、第2のシート20を介してサーマルプリンタヘッドを用いた感熱印字方式による直接発色印字が可能である。これを実現するために、第2のシート20は所定の厚さ以下に形成されていなければならない。第2のシート20の厚さが厚いと第1のシート10の表面を印字する際に断熱作用を及ぼし、第1のシート10に対する感熱印字方式による直接発色印字を妨げるからである。その反面、第2のシート20は、積層型記録媒体1の用途によっては、薄すぎると問題が生じる。このようなことから、第2のシート20は、平滑度200秒以上、坪量が25〜40g/m 、好ましくは30〜40g/m 、緊度が1.0〜1.3g/m 程度の基材23によって構成されることが好ましい。このような基材23は、一例として、特開2001−180123公報に記載されている製法で製作可能である。
【0018】
次に、積層型記録媒体1の印字のために用いられる印字装置について図19を参照して説明する。図19は、積層型記録媒体1に対して印字を行なう印字装置を例示する模式図である。この印字装置は、東芝テック社製のCl−200の印字ユニットを利用し、第1の印字ユニット111を直接発色方式に改造して構成することが可能である。
【0019】
印字装置101は、第1の印字ユニット111と第2の印字ユニット121とを案内経路131上に配置して構成されている。案内経路131の始端には、複数組の積層型記録媒体1を積層保持する搬出ホッパ132が配置され、案内経路131の終端には印字済みの積層型記録媒体1を収納保持する受入ホッパ133が配置されている。
【0020】
搬出ホッパ132は、複数組の積層型記録媒体1を積層収容するホッパケース134内に複数組の積層型記録媒体1を載置する給紙板135が昇降自在に設けられ、この給紙板135が図示しない駆動機構によって駆動されることで上昇し、最上位の積層型記録媒体1を給紙ローラ136に押し付ける構成となっている。搬出ホッパ132は、給紙ローラ136を回転駆動することによって、図示しない分離装置により最上位の積層型記録媒体1を下位の積層型記録媒体1から案内経路131に分離給送する。
【0021】
一方の受入ホッパ133は、複数組の積層型記録媒体1を積層収容可能なホッパケース137内によって形成され、このホッパケース137で、搬送された印字済みの積層型記録媒体1を次々と受け止めて積層保持するように構成されている。
【0022】
第1の印字ユニット111は、案内経路131を介して当接するサーマルプリンタヘッド112とプラテンローラ113とから構成された直接感熱発色方式の印字ユニットである。このような第1の印字ユニット111は、印字エネルギーが例えば7mW×600μsec、印字速度が2インチ/秒で印字動作を実行する。
【0023】
第2の印字ユニット121は、案内経路131を介して当接するサーマルプリンタヘッド122とプラテンローラ123とリボン搬送機構124とから構成された熱転写方式の印字ユニットである。リボン搬送機構124は、熱転写インクリボン125の巻出し装置126と印字後の熱転写インクリボン125の巻取り装置127とを主要な構成としている。このような第1の印字ユニット111は、印字エネルギーが例えば7mW×300μsec、印字速度が2インチ/秒で印字動作を実行する。
【0024】
もっとも、印字装置101における第1の印字ユニット111の印字エネルギーと第2の印字ユニット121の印字エネルギーとは、共に第2のシート20の表面側からエネルギーを付与した場合であっても、第1の記録面15に対する印字と第2の記録面21に対する印字とが別個独立して行なわれるように適宜設定される。
【0025】
このような構成において、搬出ホッパ132に収納保持された最上位の積層型記録媒体1は、給紙ローラ136が回転駆動されることによって案内経路131に下位の積層型記録媒体1から分離給送され、第1の印字ユニット111に搬送される。
【0026】
第1の印字ユニット111では、サーマルプリンタヘッド112における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第1のシート10の表面である第1の記録面15に情報を記録する。この際、第1の印字ユニット111は、第2のシート20を介して第1のシート10の感熱発色層13に熱エネルギーを付与し、この感熱発色層13を発色させるという直接感熱発色方式の印字を行なう。図2は、こうして記録された情報の一例を示す。図2に示すように、第1のシート10の表面に位置する第1の記録面15に記録される情報は、隠蔽性を有する情報である。
【0027】
このような第1の印字ユニット111による第1の記録面15に対する印字は、第2の記録面21に対して情報が記録されるというような影響を及ぼさない。
【0028】
第1の印字ユニット111は、印字後も積層型記録媒体1を搬送し続け、第2の印字ユニット121に搬送する。第2の印字ユニット121では、サーマルプリンタヘッド122における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第2のシート20の表面に情報を記録する。この際、第2の印字ユニット121では、サーマルプリンタヘッド122における図示しない発熱素子の発熱によって熱転写インクリボン125のインクが溶融し、溶融したインクが第2のシート20の表面である第2の記録面21に転移するという熱転写方式の印字を行なう。図3は、こうして記録された情報の一例を示す。図3に示すように、第2のシート20の表面に位置する第2の記録面21に記録される情報は、宛名という外部からの視認性が求められる情報である。
【0029】
このような第2の印字ユニット121による第2の記録面21に対する印字は、第1の記録面15に対して可視情報が記録されるというような影響を及ぼさない。
【0030】
第2の印字ユニット121は、印字後も積層型記録媒体1を搬送し続け、第1の記録面15及び第2の記録面21の両者に所定の情報が記録された後の積層型記録媒体1を受入ホッパ133に搬送する。これにより、印字済みの積層型記録媒体1が受入ホッパ133に積層収容されて蓄えられる。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1の印字ユニット111では、第2のシート20の表面に設けられた第2の記録面21に対して印字、つまり画像の生成をすることができず、逆に、第2の印字ユニット121では、第1のシート10の表面に設けられた第1の記録面15に対して印字、つまり画像の生成をすることができない。この場合、第1の印字ユニット111と第2の印字ユニット121という異なる印字ユニットを用いてそれぞれ印字するので、同一の印字データに基づいて印字を行なえば同一情報を第1の記録面15と第2の記録面21とにそれぞれ印字することができ、異なる印字データに基づいて印字を行なえば異なる情報を第1の記録面15と第2の記録面21とにそれぞれ印字することができる。つまり、同一内容及び異なる内容を混在させることができる。
【0032】
こうして、第1の記録面15と第2の記録面21とに同一又は異なる情報が記録された積層型記録媒体1は、第1のシート10と第2のシート20とが接着剤30によって接着された積層構造を維持している。そこで、例えば第1のシート10に図2に例示するような情報が記録されて第2のシート20に図3に例示するような情報が記録された積層型記録媒体1であれば、そのまま郵便による郵送が可能となる。そして、そのような積層型記録媒体1を受け取った受取人(図3の例では東京太郎)は、第1のシート10と第2のシート20とを剥離することにより、第1のシート10における第1の記録面15に記録された情報を閲読することが可能となる。
【0033】
本実施の形態では、第1の印字ユニット111としては直接感熱発色方式、第2の印字ユニット121としては熱転写方式による印字例を例示した。この場合、いずれの印字ユニット111、121も、プリンタヘッドとしてはサーマルプリンタヘッド112、122が使用される。このため、同一方式のプリンタヘッドを用いることができるため、印字制御の共通化を図れる等の利点がある。
【0034】
また、本実施の形態では、第1の印字ユニット111を用いて第1のシート10に対して印字した後、第2の印字ユニット121を用いて第2のシート20に対して印字を行なう。つまり、積層型記録媒体1として見た場合、内部に綴じ込まれた領域に印字を行なった後に外部に露出する部分に印字を行なうことになる。その理由は、最初に外部に露出する部分、つまり第2の記録面21に印字を行なった後に第1の記録面15に印字を行なうと、第2の記録面21に既に記録されたインクによって第2の記録面21が汚れてしまう可能性があるからである。特に、本実施の形態のように、第2の記録面21に対して熱転写方式の印字を行なう場合には、第2の記録面21に転移したインクが再溶解してインクが擦れ、記録内容が掠れてしまったり、サーマルプリンタヘッド122に再溶解したインキが付着してサーマルプリンタヘッド122の寿命が低下してしまったりすることが予想される。このようなことから、第1の印字ユニット111を用いて第1のシート10に対して印字した後、第2の印字ユニット121を用いて第2のシート20に対して印字を行なうという本実施の形態の印字順序が望ましい。
【0035】
さらに、本実施の形態では、第1の印字ユニット111を用いて第1のシート10に対して印字を行なう場合に、第2のシート20を介して第1のシート10の上に形成された感熱発色層13に熱エネルギーを付与する。このような印字を実現可能とする第2のシート20の構造は前述した通りであるが、本実施の形態のように、第2のシート20の基材23として上質紙やグラシン紙が用いられる場合、概ね、50μm程度の厚さであれば、第2のシート20の上から第1のシート10上の感熱発色層13を感熱発色させることが可能である。
【0036】
なお、本実施の形態では、2つの異なる印字方式(直接感熱発色方式と熱転写方式)が一体となった印字装置101を用いたのに対して、実施に際しては、このような印字装置101の構造は必ずしも必須ではなく、例えば、周知の感熱紙用サーマルプリンタで第1のシート10を印字した後、周知の熱転写インクリボンを用いるサーマルプリンタで第2のシート20を印字することも可能である。この場合、感熱紙用サーマルプリンタと熱転写インクリボンを用いるサーマルプリンタとは、同一の機器を用いても良く、別の機器を用いても良い。
【0037】
また、第2のシート20に対する印字方式としては、本実施の形態の熱転写方式の他、例えばインクジェット方式、インパクト方式等を用いることができる。
【0038】
[第1の実施の形態の変形例]
図4は、第1の実施の形態による積層型記録媒体1の変形例を示す横断平面図である。
【0039】
図4に示す例では、第2のシート20の表面に複写感熱発色層24が付加されている。この複写感熱発色層24は、第1の印字ユニット111によって第1のシート10における第1の記録面15に対して画像を生成可能な位置に重ねて形成されている。したがって、複写感熱発色層24が設けられている領域では、第1の印字ユニット111を用いた直接感熱発色方式による印字動作に伴い、第1の記録面15に形成された感熱発色層13と第2のシート20の表面に付加された複写感熱発色層24とに同一内容の情報が感熱記録されることになる。そして、第2のシート20の表面における複写感熱発色層24が設けられない領域は、第2の記録面21として機能し、第2の印字ユニット121を用いて感熱発色層13及び複写感熱発色層24とは別個独立して画像が生成可能である。
【0040】
[第2の実施の形態]
図5は、積層型記録媒体1の横断平面図である。
【0041】
本実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0042】
本実施の形態では、第1のシート10における第1の記録面15に対する印字方式、換言すると第1の画像生成手段の構成が第1の実施の形態とは異なる。つまり、本実施の形態の積層型記録媒体1は、第2のシート20の裏面に生成された熱転写インキ層25を、第2のシート20の表面側からの加熱によって溶解して熱転写インキ層25が含むインクを第1の記録面15に転写する構造を有する。したがって、熱転写インキ層25が第1の画像生成手段を構成することになる。
【0043】
そこで、第2のシート20における基材23の裏面に熱転写インキ層25が設けられている。そして、第1のシート10と第2のシート20とは、熱転写インキ層25が設けられていない部分の四辺端部を接着剤30により固定され、積層構造をなしている。第1のシート10は、上質紙またはグラシン紙によって構成され、第2のシート20の裏面に設けられた熱転写インキ層25が熱により溶解したときにその溶解したインクが表面に転写して印字がなされる程度の平滑性を有している。この意味で、第1のシート10では、その表面側、つまり第2のシート20で覆われて外部から視認できない側が第1の記録面15となる。
【0044】
ここで、第2のシート20の裏面に設けられた熱転写インキ層25は、第2のシート20の基材23を介した熱エネルギーによってワックスが溶解し、溶解したワックスによってインクを第1のシート10に転写する仕組みである。このような熱転写インキ層25は、ワックスタイプの熱転写インクリボンのインキ層と同じ構成で、着色剤、バインダー樹脂、ワックス及び添加剤から生成されている。そこで、熱転写インキ層25を生成するには、一般的なワックス系リボンの組成が使用可能である。例えば、
カーボンブラック…10重量部
カルナバワックス(1号)…30重量部
パラフィンワックス…30重量部
エチレン酢酸ビニル共重合体…10重量部
分散剤…5重量部
という材料を第2のシート20の基材23にホットメルトのグラビア印刷法で印刷形成することで、熱転写インキ層25が形成される。この場合、熱転写インキ層25の乾燥重量は、例えば4g/m である。
【0045】
ここで、本実施の形態の積層型記録媒体1では、第1の印字ユニット111によっては第2のシート20の表面に設けられた第2の記録面21に対して印字、つまり画像の生成をすることができず、逆に、第2の印字ユニット121によっては第1のシート10の表面に設けられた第1の記録面15に対して印字、つまり画像の生成をすることができないことが要求される。そこで、本実施の形態では、第1の印字ユニット111における印字のための熱エネルギー(E1)と第2の印字ユニット121における印字のための熱エネルギー(E2)とを参照して熱転写インキ層25の生成に用いるパラフィンワックスの融点を決める。すなわち、パラフィンワックスの融点は、第2のシート20の表面から熱エネルギー(E1)が付与されると溶解してカーボンブラック10重量部からなるインクを第1のシート10における第1の記録面15に転写するが、熱エネルギー(E2)ではそのような溶解が生じずにインクが第1の記録面15に転写しないように設定する。
【0046】
また、第2のシート20の裏面に対する熱転写インキ層25の塗布量に関しても、希望する印字濃度や第1の印字ユニット111及び第2の印字ユニット121が発生する熱エネルギーの関係等を考慮して決めれば良い。
【0047】
このような構成において、第1の印字ユニット111では、サーマルプリンタヘッド112における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第1のシート10の表面である第1の記録面15に情報を記録する。この際、第1の印字ユニット111は、第2のシート20の裏面に設けられた熱転写インキ層25に熱エネルギーを付与し、この熱転写インキ層25に含まれているインクを第1のシート10の表面に位置する第1の記録面15に転写する。これにより、第1の記録面15に印字、つまり画像の形成が行なわれる。
【0048】
本実施の形態によれば、他の全ての実施の形態及びその変形例と同様に、第1の印字ユニット111による第1の記録面15に対する印字は、第2の記録面21に対して可視情報が記録されるというような影響を及ぼさず、また、第2の印字ユニット121による第2の記録面21に対する印字は、第1の記録面15に対して可視情報が記録されるというような影響を及ぼさない。これを実現するために、印字装置101において、第1の印字ユニット111の印字エネルギーと第2の印字ユニット121の印字エネルギーとが適宜に設定される。
【0049】
[第2の実施の形態の変形例]
図6は、第2の実施の形態による積層型記録媒体1の変形例を示す横断平面図である。
【0050】
図6に示す例では、第2のシート20の表面に複写感熱発色層24が付加されている。この複写感熱発色層24は、第1の印字ユニット111によって第1のシート10における第1の記録面15に対して画像を生成可能な位置に重ねて形成されている。したがって、複写感熱発色層24が設けられている領域では、第1の印字ユニット111を用いた直接感熱発色方式による印字動作に伴い、第1の記録面15と第2のシート20の表面に付加された複写感熱発色層24とに同一内容の情報が記録されることになる。そして、第2のシート20の表面における複写感熱発色層24が設けられない領域は、第2の記録面21として機能し、第2の印字ユニット121を用いて第1の記録面15及び複写感熱発色層24とは別個独立して画像が生成可能である。
【0051】
[第3の実施の形態]
図7は、積層型記録媒体1の横断平面図である。
【0052】
本実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0053】
本実施の形態では、第1のシート10における第1の記録面15に対する印字方式、換言すると第1の画像生成手段の構成が第1及び第2の実施の形態とは異なる。つまり、本実施の形態では、染料を含むA層26が第2のシート20の裏面に、染料と会合することで反応しその染料を発色させる顕色剤を含むB層16が第1のシート10の表面にそれぞれ設けられ、A層26又はB層16に第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合にのみ染料と顕色剤とを会合させる会合手段が設けられ、会合した染料と顕色剤とを第1の記録面15に保持させる保持手段が設けられて形成されている。そこで、第2のシート20の表面側から第1の印字ユニット111によって印字のための熱エネルギーを付与すると、A層26に含まれている染料がB層16に運ばれ、このB層16で顕色剤と会合して反応することで発色する。これにより、第1のシート10の表面、つまり第1の記録面15に所定の情報が記録される。
【0054】
このような本実施の形態における第1の画像生成手段の内容を理解するためには、例えば特開2001−180123公報等の記載を参照することができる。
【0055】
より詳細に説明する。
【0056】
第2のシート20の裏面に形成されたA層26には、染料としてロイコ染料が含まれている。このようなA層26は、ワックスにロイコ染料を分散又は相溶させた状態でホットメルトによるフレキソ印刷またはグラビア印刷法により例えば5g/m 程度形成することによって構成されている。そして、A層26のワックスは、第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合に溶解し、ロイコ染料を第1のシート10の表面側に転移させることができる特性を有している。この意味で、本実施の形態におけるA層26は、熱エネルギーの付与に応じてロイコ染料を転移させる熱転写反応層として機能する。
【0057】
第1のシート10の表面に形成されたB層16は、ロイコ染料と会合して接触又は結合することによりロイコ染料を発色させることが可能な顕色剤とバインダー樹脂又はワックスとを含有している。このようなB層16は、例えば、バインダー樹脂に顕色剤を分散してロールコーター、グラビアコーター等により第1のシート10の表面に全面塗工して得ることができる。そして、B層16におけるバインダー樹脂又はワックスは、第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合に溶解するものであっても溶解しないものであってもいずれでも良い。つまり、B層16におけるバインダー樹脂又はワックスは多孔質に構成されているので、A層26のワックスが溶解してロイコ染料が第1のシート10の表面側に転移してきた場合、転移したロイコ染料はB層16におけるバインダー樹脂又はワックスの内部に浸透し、顕色剤と会合する。この意味で、本実施の形態におけるB層16は、ロイコ染料と反応する反応層として機能する。
【0058】
このようなことから、A層26における熱転写反応層としての機能及びB層16における反応層としての機能は、会合手段を構成する。そして、反応層として機能するB層16にロイコ染料及び顕色剤が保持され、このB層16の側に画像が形成される(保持手段)。したがって、B層16が設けられた第1のシート10の表面に第1の記録面15が形成されることになる。
【0059】
このような構成において、第1の印字ユニット111では、サーマルプリンタヘッド112における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第1のシート10の表面である第1の記録面15に情報を記録する。この際、第1の印字ユニット111は、第2のシート20の裏面に設けられたA層26に熱エネルギーを付与し、このA層26に含まれているワックスを溶解する。これによって、A層26に含まれているロイコ染料が第1のシート10の表面に位置する第1の記録面15に形成されたB層16に転移し、このB層16に含まれている顕色剤と会合する。すると、ロイコ染料は顕色剤と反応して発色し、B層16、つまり第1のシート10の表面に位置する第1の記録面15に印字、つまり画像の形成が行なわれる。
【0060】
なお、本実施の形態では、印字装置101の第1の印字ユニット111がサーマルプリンタヘッド112を用いて印字を行なう方式であることに対応させてA層26を構成した。つまり、A層26は、熱エネルギーが付与されることにより溶解してロイコ染料を第1の記録面15に転移させるように構成されている。これに対して、A層26は、熱エネルギーが付与されることにより溶解してロイコ染料を第1の記録面15に転移させる構造のものに限らず、例えば、ロイコ染料をオイルで溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造のものであっても良い。この場合には、マイクロカプセルを破壊することによりオイルが流れ出て、ロイコ染料を第1の記録面15に運び、顕色剤と会合させる。そこで、ロイコ染料をオイルで溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造のA層26を用いる場合には、印字装置101に、マイクロカプセルを破壊するための構成が求められる。その一例として、第1の印字ユニット111にインパクト方式の印字を行なうユニットを用いることが可能である。
【0061】
本実施の形態によれば、他の全ての実施の形態及びその変形例と同様に、第1の印字ユニット111による第1の記録面15に対する印字は、第2の記録面21に対して可視情報が記録されるというような影響を及ぼさず、また、第2の印字ユニット121による第2の記録面21に対する印字は、第1の記録面15に対して可視情報が記録されるというような影響を及ぼさない。これを実現するために、印字装置101において、第1の印字ユニット111の印字エネルギーと第2の印字ユニット121の印字エネルギーとが適宜に設定される。
【0062】
[第3の実施の形態の第1の変形例]
本発明の第3の実施の形態では、第2のシート20の裏面にロイコ染料を含むA層26を設け、第1のシート10の表面に顕色剤を含むB層16を設けた例を説明した。これに対して、第2のシート20の裏面に顕色剤を含むB層(16)を設け、第1のシート10の表面にロイコ染料を含むA層(26)を設けても良い。つまり、本変形例のA層(26)及びB層(16)は、第1のシート10及び第2のシート20に対する形成位置について、第3の実施の形態のA層26及びB層16と反対の関係となる。図7中、本変形例のA層(26)及びB層(16)は、括弧付きの符号で示す。
【0063】
より詳細に説明する。
【0064】
第2のシート20の裏面に形成されたB層16は、ロイコ染料と会合して接触又は結合することによりロイコ染料を発色させることが可能な顕色剤をワックスに分散又は相溶させた状態でホットメルトによるフレキソ印刷またはグラビア印刷法により例えば5g/m 程度形成することによって構成されている。そして、B層16のワックスは、第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合に溶解し、顕色剤を第1のシート10の表面側に転移させることができる特性を有している。この意味で、本変形例におけるB層16は、熱エネルギーの付与に応じて顕色剤を転移させる熱転写反応層として機能する。
【0065】
第1のシート10の表面に形成されたA層26は、ロイコ染料とバインダー樹脂又はワックスとを含有している。このようなA層26は、例えば、バインダー樹脂にロイコ染料を分散してロールコーター、グラビアコーター等により第1のシート10の表面に全面塗工して得ることができる。そして、A層26におけるバインダー樹脂又はワックスは、第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合に溶解するものであっても溶解しないものであってもいずれでも良い。つまり、A層26におけるバインダー樹脂又はワックスは多孔質に構成されているので、B層16のワックスが溶解して顕色剤が第1のシート10の表面側に転移してきた場合、転移した顕色剤はA層26におけるバインダー樹脂又はワックスの内部に浸透し、ロイコ染料と会合する。この意味で、本変形例におけるA層26は、顕色剤と反応する反応層として機能する。
【0066】
このようなことから、B層16における熱転写反応層としての機能及びA層26における反応層としての機能は、会合手段を構成する。そして、反応層として機能するA層26にロイコ染料及び顕色剤が保持され、このA層26の側に画像が形成される(保持手段)。したがって、A層26が設けられた第1のシート10の表面に第1の記録面15が形成されることになる。
【0067】
このような構成において、第1の印字ユニット111では、サーマルプリンタヘッド112における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第1のシート10の表面である第1の記録面15に情報を記録する。この際、第1の印字ユニット111は、第2のシート20の裏面に設けられたB層16に熱エネルギーを付与し、このB層16に含まれているワックスを溶解する。これによって、B層16に含まれている顕色剤が第1のシート10の表面に位置する第1の記録面15に形成されたA層26に転移し、このA層26に含まれているロイコ染料と会合する。すると、ロイコ染料は顕色剤と反応して発色し、A層26、つまり第1のシート10の表面に位置する第1の記録面15に印字、つまり画像の形成が行なわれる。
【0068】
なお、本変形例では、印字装置101の第1の印字ユニット111がサーマルプリンタヘッド112を用いて印字を行なう方式であることに対応させてB層16を構成した。つまり、B層16は、熱エネルギーが付与されることにより溶解して顕色剤を第1の記録面15に転移させるように構成されている。これに対して、B層16は、熱エネルギーが付与されることにより溶解して顕色剤を第1の記録面15に転移させる構造のものに限らず、例えば、顕色剤をオイルに溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造のものであっても良い。この場合には、マイクロカプセルを破壊することによりオイルが流れ出て、顕色剤を第1の記録面15に運び、ロイコ染料と会合させる。そこで、顕色剤をオイルに溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造のB層16を用いる場合には、印字装置101に、マイクロカプセルを破壊するための構成が求められる。その一例として、第1の印字ユニット111にインパクト方式の印字を行なうユニットを用いることが可能である。
【0069】
[第3の実施の形態の第2の変形例]
図8は、第3の実施の形態による積層型記録媒体1の変形例を示す横断平面図である。
【0070】
図8に示す例では、第2のシート20の表面に複写感熱発色層24が付加されている。この複写感熱発色層24は、第1の印字ユニット111によって第1のシート10における第1の記録面15に対して画像を生成可能な位置に重ねて形成されている。したがって、複写感熱発色層24が設けられている領域では、第1の印字ユニット111を用いた直接感熱発色方式による印字動作に伴い、第1の記録面15と第2のシート20の表面に付加された複写感熱発色層24とに同一内容の情報が記録されることになる。そして、第2のシート20の表面における複写感熱発色層24が設けられない領域は、第2の記録面21として機能し、第2の印字ユニット121を用いて第1の記録面15及び複写感熱発色層24とは別個独立して画像が生成可能である。
【0071】
[第4の実施の形態]
図9は積層型記録媒体の横断平面図、図10は第1の記録面への印字例を示す第1のシートの正面図、図11は第2の記録面への印字例を示す第2のシートの正面図である。
【0072】
本実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0073】
本実施の形態は、第1のシート10と第2のシート20との間に設けられる第1の記録面15を、第2のシート20の裏面に配置した例である。このような第1の記録面15に対する印字方式としては、第1の実施の形態と同様に、直接感熱発色方式である。
【0074】
本実施の形態の積層型記録媒体1が第1の実施の形態の積層型記録媒体1と異なる点は、感熱発色層13が第2のシート20の裏面に設けられている点である。つまり、第2のシート20の裏面には、感熱発色層13が形成され、その上に保護層14がコーティングされている。このような感熱発色層13は、周知の感熱紙に用いる感熱発色層であれば良く、例えば、ロイコ染料、顕色剤、増感剤、及び助剤とバインダー樹脂によって構成されている。
【0075】
このような構成において、搬出ホッパ132に収納保持された最上位の積層型記録媒体1は、給紙ローラ136が回転駆動されることによって案内経路131に下位の積層型記録媒体1から分離給送され、第1の印字ユニット111に搬送される。
【0076】
第1の印字ユニット111では、サーマルプリンタヘッド112における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第2のシート20の裏面である第1の記録面15に情報を記録する。この際、第1の印字ユニット111は、第2のシート20を介してその裏面に設けられた感熱発色層13に熱エネルギーを付与し、この感熱発色層13を発色させるという直接感熱発色方式の印字を行なう。図10は、こうして記録された情報の一例を示す。図10に示すように、第2のシート20の裏面に位置する第1の記録面15に記録される情報は、隠蔽性を有する情報である。
【0077】
ここで、本実施の形態で重要なことは、第1の記録面15は、第1のシート10と第2のシート20とを剥離することにより第2のシート20の裏面に出現する。これに対して、このような第1の記録面15に対する印字動作は、第2のシート20の表面側から行なう。そこで、第2のシート20の裏面を開けて図10に示すような記録がなされているためには、第1の印字ユニット111において、第1の記録面15に対する印字は逆さ文字により行なわれる。つまり、ミラー印字が行われることになる。これにより、第2のシート20の裏面を開けることにより、図10に示すような適切な記録がなされる。
【0078】
第1の印字ユニット111は、第1の記録面15に対する印字後も積層型記録媒体1を搬送し続け、第2の印字ユニット121に搬送する。第2の印字ユニット121では、サーマルプリンタヘッド122における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第2のシート20の表面に情報を記録する。この際、第2の印字ユニット121では、サーマルプリンタヘッド122における図示しない発熱素子の発熱によって熱転写インクリボン125のインクが溶融し、溶融したインクが第2のシート20の表面である第2の記録面21に転移するという熱転写方式の印字を行なう。図11は、こうして記録された情報の一例を示す。図11に示すように、第2のシート20の表面に位置する第2の記録面21に記録される情報は、宛名という外部からの視認性が求められる情報である。
【0079】
第2の印字ユニット121は、印字後も積層型記録媒体1を搬送し続け、第1の記録面15及び第2の記録面21の両者に所定の情報が記録された後の積層型記録媒体1を受入ホッパ133に搬送する。これにより、印字済みの積層型記録媒体1が受入ホッパ133に積層収容されて蓄えられる。
【0080】
本実施の形態によれば、他の全ての実施の形態及びその変形例と同様に、第1の印字ユニット111では、第2のシート20の表面に設けられた第2の記録面21に対して印字、つまり画像の生成をすることができず、逆に、第2の印字ユニット121では、第2のシート20の裏面に設けられた第1の記録面15に対して印字、つまり画像の生成をすることができない。これを実現するために、印字装置101において、第1の印字ユニット111の印字エネルギーと第2の印字ユニット121の印字エネルギーとが適宜に設定される。
【0081】
[第5の実施の形態]
図12は、積層型記録媒体の横断平面図である。
【0082】
本実施の形態において、第2の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0083】
本実施の形態は、第1のシート10と第2のシート20との間に設けられる第1の記録面15を、第2のシート20の裏面に配置した例である。このような第1の記録面15に対する印字方式、換言すると第1の画像生成手段の構成としては、第2の実施の形態と同様の印字方式及び構成が採用される。
【0084】
本実施の形態の積層型記録媒体1が第2の実施の形態の積層型記録媒体1と異なる点は、熱転写インキ層25が第1のシート10の表面に設けられている点である。つまり、本実施の形態の積層型記録媒体1は、第1のシート10の表面に生成された熱転写インキ層25を、第2のシート20の表面側からの加熱によって溶解して熱転写インキ層25が含むインクを第2のシート20の裏面に配置された第1の記録面15に転写する構造を有する。このため、第2のシート20は、上質紙またはグラシン紙によって構成され、第1のシート10の表面に設けられた熱転写インキ層25が熱により溶解したときにその溶解したインクが表面に転写して印字がなされる程度の平滑性を有している。
【0085】
ここで、本実施の形態で重要なことは、第1の記録面15は、第1のシート10と第2のシート20とを剥離することにより第2のシート20の裏面に出現する。これに対して、このような第1の記録面15に対する印字動作は、第2のシート20の表面側から行なう。そこで、第2のシート20の裏面を開けた状態で適正な記録がなされているためには、第1の印字ユニット111において、第1の記録面15に対する印字は逆さ文字により行なわれる。つまり、ミラー印字が行われることになる。これにより、第2のシート20の裏面を開けることにより、適切な記録がなされる。
【0086】
本実施の形態によれば、他の全ての実施の形態及びその変形例と同様に、第1の印字ユニット111による第1の記録面15に対する印字は、第2の記録面21に対して可視情報が記録されるというような影響を及ぼさず、また、第2の印字ユニット121による第2の記録面21に対する印字は、第1の記録面15に対して可視情報が記録されるというような影響を及ぼさない。
【0087】
[第6の実施の形態]
図13は、積層型記録媒体の横断平面図である。
【0088】
本実施の形態において、第3の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0089】
本実施の形態は、第1のシート10と第2のシート20との間に設けられる第1の記録面15を、第2のシート20の裏面に配置した例である。このような第1の記録面15に対する印字方式、換言すると第1の画像生成手段の構成としては、第3の実施の形態と同様の印字方式及び構成が採用される。
【0090】
本実施の形態では、染料を含むA層26が第1のシート10の表面に、染料と会合することで反応しその染料を発色させる顕色剤を含むB層16が第2のシート20の裏面にそれぞれ設けられ、A層26又はB層16に第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合にのみ染料と顕色剤とを会合させる会合手段が設けられて形成されている。そこで、第2のシート20の表面側から第1の印字ユニット111によって印字のための熱エネルギーを付与すると、A層26に含まれている染料がB層16に運ばれ、このB層16で顕色剤と会合して反応することで発色する。これにより、第2のシート20の裏面、つまり第1の記録面15に所定の情報が記録される。
【0091】
より詳細に説明する。
【0092】
第1のシート10の表面に形成されたA層26は、顕色剤と会合して接触又は結合することにより発色することが可能なロイコ染料をワックスに分散又は相溶させた状態でホットメルトによるフレキソ印刷またはグラビア印刷法により例えば5g/m 程度形成することによって構成されている。そして、A層26のワックスは、第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合に溶解し、ロイコ染料を第2のシート20の裏面側に転移させることができる特性を有している。この意味で、本変形例におけるA層26は、熱エネルギーの付与に応じて顕色剤を転移させる熱転写反応層として機能する。
【0093】
第2のシート20の裏面に形成されたB層16は、顕色剤とバインダー樹脂又はワックスとを含有している。このようなB層16は、例えば、バインダー樹脂に顕色剤を分散してロールコーター、グラビアコーター等により第2のシート20の裏面に全面塗工して得ることができる。そして、B層16におけるバインダー樹脂又はワックスは、第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合に溶解するものであっても溶解しないものであってもいずれでも良い。つまり、B層16におけるバインダー樹脂又はワックスは多孔質に構成されているので、A層26のワックスが溶解してロイコ染料が第2のシート20の裏面側に転移してきた場合、転移したロイコ染料はB層16におけるバインダー樹脂又はワックスの内部に浸透し、顕色剤と会合する。この意味で、本変形例におけるB層16は、ロイコ染料と反応する反応層として機能する。
【0094】
このようなことから、A層26における熱転写反応層としての機能及びB層16における反応層としての機能は、会合手段を構成する。そして、反応層として機能するB層16にロイコ染料及び顕色剤が保持され、このB層16の側に画像が形成される(保持手段)。したがって、B層16が設けられた第2のシート20の裏面に第1の記録面15が形成されることになる。
【0095】
このような構成において、第1の印字ユニット111では、サーマルプリンタヘッド112における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第2のシート20の裏面である第1の記録面15に情報を記録する。この際、第1の印字ユニット111は、第1のシート10の表面に設けられたA層26に熱エネルギーを付与し、このA層26に含まれているワックスを溶解する。これによって、A層26に含まれているロイコ染料が第2のシート20の裏面に位置する第1の記録面15に形成されたB層16に転移し、このB層16に含まれている顕色剤と会合する。すると、ロイコ染料は顕色剤と反応して発色し、B層16、つまり第1のシート10の表面に位置する第1の記録面15に印字、つまり画像の形成が行なわれる。
【0096】
ここで、本実施の形態で重要なことは、第1の記録面15は、第1のシート10と第2のシート20とを剥離することにより第2のシート20の裏面に出現する。これに対して、このような第1の記録面15に対する印字動作は、第2のシート20の表面側から行なう。そこで、第2のシート20の裏面を開けた状態で適正な記録がなされているためには、第1の印字ユニット111において、第1の記録面15に対する印字は逆さ文字により行なわれる。つまり、ミラー印字が行われることになる。これにより、第2のシート20の裏面を開けることにより、適切な記録がなされる。
【0097】
なお、本実施の形態では、印字装置101の第1の印字ユニット111がサーマルプリンタヘッド112を用いて印字を行なう方式であることに対応させてA層26を構成した。つまり、A層26は、熱エネルギーが付与されることにより溶解してロイコ染料を第1の記録面15に転移させるように構成されている。これに対して、A層26は、熱エネルギーが付与されることにより溶解してロイコ染料を第1の記録面15に転移させる構造のものに限らず、例えば、ロイコ染料をオイルに溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造のものであっても良い。この場合には、マイクロカプセルを破壊することによりオイルが流れ出て、ロイコ染料を第1の記録面15に運び、顕色剤と会合させる。そこで、ロイコ染料をオイルに溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造のA層26を用いる場合には、印字装置101に、マイクロカプセルを破壊するための構成が求められる。その一例として、第1の印字ユニット111にインパクト方式の印字を行なうユニットを用いることが可能である。
【0098】
本実施の形態によれば、他の全ての実施の形態及びその変形例と同様に、第1の印字ユニット111による第1の記録面15に対する印字は、第2の記録面21に対して可視情報が記録されるというような影響を及ぼさず、また、第2の印字ユニット121による第2の記録面21に対する印字は、第1の記録面15に対して可視情報が記録されるというような影響を及ぼさない。
【0099】
[第6の実施の形態の変形例]
本発明の第6の実施の形態では、第1のシート10の表面にロイコ染料を含むA層26を設け、第2のシート20の裏面に顕色剤を含むB層16を設けた例を説明した。これに対して、第1のシート10の表面に顕色剤を含むB層(16)を設け、第2のシート20の裏面にロイコ染料を含むA層(26)を設けても良い。つまり、本変形例のA層(26)及びB層(16)は、第1のシート10及び第2のシート20に対する形成位置について、第6の実施の形態のA層26及びB層16と反対の関係となる。図13中、本変形例のA層(26)及びB層(16)は、括弧付きの符号で示す。
【0100】
より詳細に説明する。
【0101】
第1のシート10の表面に形成されたB層16は、ロイコ染料と会合して接触又は結合することによりロイコ染料を発色させることが可能な顕色剤をワックスに分散又は相溶させた状態でホットメルトによるフレキソ印刷またはグラビア印刷法により例えば5g/m 程度形成することによって構成されている。そして、B層16のワックスは、第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合に溶解し、顕色剤を第1のシート10の表面側に転移させることができる特性を有している。この意味で、本変形例におけるB層16は、熱エネルギーの付与に応じて顕色剤を転移させる熱転写反応層として機能する。
【0102】
第2のシート20の裏面に形成されたA層26は、ロイコ染料とバインダー樹脂又はワックスとを含有している。このようなA層26は、例えば、バインダー樹脂にロイコ染料を分散してロールコーター、グラビアコーター等により第2のシート20の裏面に全面塗工して得ることができる。そして、A層26におけるバインダー樹脂又はワックスは、第1の印字ユニット111から印字エネルギーが付与された場合に溶解するものであっても溶解しないものであってもいずれでも良い。つまり、A層26におけるバインダー樹脂又はワックスは多孔質に構成されているので、B層16のワックスが溶解して顕色剤が第2のシート20の裏面側に転移してきた場合、転移した顕色剤はA層26におけるバインダー樹脂又はワックスの内部に浸透し、ロイコ染料と会合する。この意味で、本変形例におけるA層26は、顕色剤と反応する反応層として機能する。
【0103】
このようなことから、B層16における熱転写反応層としての機能及びA層26における反応層としての機能は、会合手段を構成する。そして、反応層として機能するA層26にロイコ染料及び顕色剤が保持され、このA層26の側に画像が形成される(保持手段)。したがって、B層16が設けられた第2のシート20の裏面に第1の記録面15が形成されることになる。
【0104】
このような構成において、第1の印字ユニット111では、サーマルプリンタヘッド112における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第2のシート20の裏面である第1の記録面15に情報を記録する。この際、第1の印字ユニット111は、第1のシート10の表面に設けられたB層16に熱エネルギーを付与し、このB層16に含まれているワックスを溶解する。これによって、B層16に含まれている顕色剤が第2のシート20の裏面に位置する第1の記録面15に形成されたA層26に転移し、このA層26に含まれているロイコ染料と会合する。すると、ロイコ染料は顕色剤と反応して発色し、A層26、つまり第2のシート20の裏面に位置する第1の記録面15に印字、つまり画像の形成が行なわれる。
【0105】
ここで、本変形例で重要なことは、第1の記録面15は、第1のシート10と第2のシート20とを剥離することにより第2のシート20の裏面に出現する。これに対して、このような第1の記録面15に対する印字動作は、第2のシート20の表面側から行なう。そこで、第2のシート20の裏面を開けた状態で適正な記録がなされているためには、第1の印字ユニット111において、第1の記録面15に対する印字は逆さ文字により行なわれる。つまり、ミラー印字が行われることになる。これにより、第2のシート20の裏面を開けることにより、適切な記録がなされる。
【0106】
なお、本変形例では、印字装置101の第1の印字ユニット111がサーマルプリンタヘッド112を用いて印字を行なう方式であることに対応させてB層16を構成した。つまり、B層16は、熱エネルギーが付与されることにより溶解して顕色剤を第1の記録面15に転移させるように構成されている。これに対して、B層16は、熱エネルギーが付与されることにより溶解して顕色剤を第1の記録面15に転移させる構造のものに限らず、例えば、顕色剤をオイルに溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造のものであっても良い。この場合には、マイクロカプセルを破壊することによりオイルが流れ出て、顕色剤を第1の記録面15に運び、ロイコ染料と会合させる。そこで、顕色剤をオイルに溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造のB層16を用いる場合には、印字装置101に、マイクロカプセルを破壊するための構成が求められる。その一例として、第1の印字ユニット111にインパクト方式の印字を行なうユニットを用いることが可能である。
【0107】
[第7の実施の形態]
図14は、積層型記録媒体の横断平面図である。
【0108】
本実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0109】
本実施の形態は、第2のシート20が複写印字可能な多部紙によって形成されている。その他の部分は、第1の実施の形態と同様である。
【0110】
ここで、第2のシート20の多部紙構造について説明する。本実施の形態では、第2のシート20が、下層シート201と上層シート211との二枚のシートから構成され、それらの下層シート201と上層シート211との四辺端部が剥離可能な接着剤30によって接着された積層構造になっている。そして、下層シート201には反応層202、上層シート211には感圧転写反応層212がそれぞれ膜状形成されている。
【0111】
第2のシート20における上層シート211に形成された感圧転写反応層212は、ロイコ染料をオイルで溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造を含んでいる。そして、第2のシート20における下層シート201に形成された反応層202は、ロイコ染料と会合して接触又は結合することによりロイコ染料を発色させることが可能な顕色剤とバインダー樹脂又はワックスとを含有している。このような反応層202は、例えば、バインダー樹脂に顕色剤を分散してロールコーター、グラビアコーター等により第1のシート10の表面に全面塗工して得ることができる。したがって、上層シート211において、マイクロカプセルが破壊されることでオイルが流出し、流出したオイルによってロイコ染料が下層シート201の反応層202に含まれている顕色剤と会合する。これにより、ロイコ染料と顕色剤との接触又は結合による反応が生じ、ロイコ染料が発色する。
【0112】
このような構成において、本実施の形態の積層型記録媒体1に対して印字を行なうには、印字装置101における第1の印字ユニット111に直接感熱発色方式の印字を実行する構造が求められ、第2の印字ユニット121はインパクトドットプリンタのようなインパクト方式の印字を実行する構造が求められる。つまり、第1の印字ユニット111を用いた第1のシート10の感熱発色層13に対する印字については第1の実施の形態と異なる点がないために説明を省略するが、第2の印字ユニット121を用いた第2のシート20に対しては、例えばインパクトドットプリンタヘッドがインクリボンを用いて選択的にインパクトドット印字を行なう。これにより、第2のシート20のシート表面22に形成された第2の記録面21に対しては、インクリボンのインクが付着して画像が形成される。そして、この時の衝撃力によって第2のシート20の上層シート211に形成された感圧転写反応層212が含むマイクロカプセルが破壊され、オイルが流出してロイコ染料を下層シート201に形成された反応層202に転移する。これにより、反応層202が含む顕色剤とロイコ染料とが会合し、その接触又は結合による反応が生じ、ロイコ染料が発色して下層シート201の表面に画像が形成される。この際、第2のシート20においては、下層シート201の表面に形成された画像と上層シート211における第2の記録面21に形成された画像とは、共に、インパクトドットプリンタヘッドによる同一のインパクトドット印字によって形成されるため、それらの情報内容は完全同一である。これにより、第2のシート20において複写が行なわれる。
【0113】
なお、本実施の形態では、感圧転写反応層212にロイコ染料を含ませ、反応層202に顕色剤を含ませた例を示したが、その関係は逆であっても良い。つまり、上層シート211に形成された感圧転写反応層212に、ロイコ染料と会合して接触又は結合することによりロイコ染料を発色させることが可能な顕色剤をオイルで溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造を持たせ、下層シート201に形成された反応層202に、ロイコ染料とバインダー樹脂又はワックスとを含有させた構造を持たせる。これにより、上層シート211においては、マイクロカプセルが破壊されることでオイルが流出し、流出したオイルによって顕色剤が下層シート201の反応層に含まれているロイコ染料と会合する。これにより、ロイコ染料と顕色剤との接触又は結合による反応が生じてロイコ染料が発色し、下層シート201の表面に画像が形成される。
【0114】
[第8の実施の形態]
図15は、積層型記録媒体の横断平面図である。
【0115】
本実施の形態において、第2の実施の形態及び第7の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0116】
本実施の形態は、第2のシート20が複写印字可能な多部紙によって形成されている。第2のシート20の多部紙構造は、第7の実施の形態と同一である。その他の部分は、第2の実施の形態と同様である。
【0117】
このような構成において、本実施の形態の積層型記録媒体1に対して印字を行なうには、印字装置101における第1の印字ユニット111に感熱発色方式の印字を実行する構造が求められ、第2の印字ユニット121はインパクトドットプリンタのようなインパクト方式の印字を実行する構造が求められる。つまり、第1の印字ユニット111を用いた第1のシート10に対する印字については第2の実施の形態と異なる点がないために説明を省略するが、第2の印字ユニット121を用いた第2のシート20に対しては、例えばインパクトドットプリンタヘッドがインクリボンを用いて選択的にインパクトドット印字を行なう。これにより、第2のシート20のシート表面22に形成された第2の記録面21に対しては、インクリボンのインクが付着して画像が形成される。そして、この時の衝撃力によって第2のシート20の上層シート211に形成された感圧転写反応層212が含むマイクロカプセルが破壊され、オイルが流出してロイコ染料を下層シート201に形成された反応層202に転移する。これにより、反応層202が含む顕色剤とロイコ染料とが会合し、その接触又は結合による反応が生じ、ロイコ染料が発色して下層シート201の表面に画像が形成される。この際、第2のシート20においては、下層シート201の表面に形成された画像と上層シート211における第2の記録面21に形成された画像とは、共に、インパクトドットプリンタヘッドによる同一のインパクトドット印字によって形成されるため、それらの情報内容は完全同一である。これにより、第2のシート20において複写が行なわれる。
【0118】
あるいは、上層シート211に形成された感圧転写反応層212に、ロイコ染料と会合して接触又は結合することによりロイコ染料を発色させることが可能な顕色剤をオイルで溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造を持たせ、下層シート201に形成された反応層202に、ロイコ染料とバインダー樹脂又はワックスとを含有させた構造を持たせた場合には、上層シート211において、マイクロカプセルが破壊されることでオイルが流出し、流出したオイルによって顕色剤が下層シート201の反応層に含まれているロイコ染料と会合する。これにより、ロイコ染料と顕色剤との接触又は結合による反応が生じてロイコ染料が発色し、下層シート201の表面に画像が形成される。
【0119】
[第9の実施の形態]
図16は、積層型記録媒体の横断平面図である。
【0120】
本実施の形態において、第3の実施の形態とその変形例、及び第7の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0121】
本実施の形態は、第2のシート20が複写印字可能な多部紙によって形成されている。第2のシート20の多部紙構造は、第7の実施の形態と同一である。その他の部分は、第3の実施の形態又はその変形例と同様である。
【0122】
このような構成において、本実施の形態の積層型記録媒体1に対して印字を行なうには、印字装置101における第1の印字ユニット111に感熱発色方式の印字を実行する構造が求められ、第2の印字ユニット121はインパクトドットプリンタのようなインパクト方式の印字を実行する構造が求められる。つまり、第1の印字ユニット111を用いた第1のシート10に対する印字については第3の実施の形態又はその変形例と異なる点がないために説明を省略するが、第2の印字ユニット121を用いた第2のシート20に対しては、例えばインパクトドットプリンタヘッドがインクリボンを用いて選択的にインパクトドット印字を行なう。これにより、第2のシート20のシート表面22に形成された第2の記録面21に対しては、インクリボンのインクが付着して画像が形成される。そして、この時の衝撃力によって第2のシート20の上層シート211に形成された感圧転写反応層212が含むマイクロカプセルが破壊され、オイルが流出してロイコ染料を下層シート201に形成された反応層202に転移する。これにより、反応層202が含む顕色剤とロイコ染料とが会合し、その接触又は結合による反応が生じ、ロイコ染料が発色して下層シート201の表面に画像が形成される。この際、第2のシート20においては、下層シート201の表面に形成された画像と上層シート211における第2の記録面21に形成された画像とは、共に、インパクトドットプリンタヘッドによる同一のインパクトドット印字によって形成されるため、それらの情報内容は完全同一である。これにより、第2のシート20において複写が行なわれる。
【0123】
あるいは、上層シート211に形成された感圧転写反応層212に、ロイコ染料と会合して接触又は結合することによりロイコ染料を発色させることが可能な顕色剤をオイルで溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造を持たせ、下層シート201に形成された反応層202に、ロイコ染料とバインダー樹脂又はワックスとを含有させた構造を持たせた場合には、上層シート211において、マイクロカプセルが破壊されることでオイルが流出し、流出したオイルによって顕色剤が下層シート201の反応層に含まれているロイコ染料と会合する。これにより、ロイコ染料と顕色剤との接触又は結合による反応が生じてロイコ染料が発色し、下層シート201の表面に画像が形成される。
【0124】
[第10の実施の形態]
図17は、積層型記録媒体の横断平面図である。
【0125】
本実施の形態において、第6の実施の形態とその変形例、及び第7の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0126】
本実施の形態は、第2のシート20が複写印字可能な多部紙によって形成されている。第2のシート20の多部紙構造は、第7の実施の形態と同一である。その他の部分は、第6の実施の形態又はその変形例と同様である。
【0127】
このような構成において、本実施の形態の積層型記録媒体1に対して印字を行なうには、印字装置101における第1の印字ユニット111に感熱発色方式の印字を実行する構造が求められ、第2の印字ユニット121はインパクトドットプリンタのようなインパクト方式の印字を実行する構造が求められる。つまり、第1の印字ユニット111を用いた第1のシート10に対する印字については第6の実施の形態又はその変形例と異なる点がないために説明を省略するが、第2の印字ユニット121を用いた第2のシート20に対しては、例えばインパクトドットプリンタヘッドがインクリボンを用いて選択的にインパクトドット印字を行なう。これにより、第2のシート20のシート表面22に形成された第2の記録面21に対しては、インクリボンのインクが付着して画像が形成される。そして、この時の衝撃力によって第2のシート20の上層シート211に形成された感圧転写反応層212が含むマイクロカプセルが破壊され、オイルが流出してロイコ染料を下層シート201に形成された反応層202に転移する。これにより、反応層202が含む顕色剤とロイコ染料とが会合し、その接触又は結合による反応が生じ、ロイコ染料が発色して下層シート201の表面に画像が形成される。この際、第2のシート20においては、下層シート201の表面に形成された画像と上層シート211における第2の記録面21に形成された画像とは、共に、インパクトドットプリンタヘッドによる同一のインパクトドット印字によって形成されるため、それらの情報内容は完全同一である。これにより、第2のシート20において複写が行なわれる。
【0128】
あるいは、上層シート211に形成された感圧転写反応層212に、ロイコ染料と会合して接触又は結合することによりロイコ染料を発色させることが可能な顕色剤をオイルで溶かした溶剤をマイクロカプセルに内包させた構造を持たせ、下層シート201に形成された反応層202に、ロイコ染料とバインダー樹脂又はワックスとを含有させた構造を持たせた場合には、上層シート211において、マイクロカプセルが破壊されることでオイルが流出し、流出したオイルによって顕色剤が下層シート201の反応層に含まれているロイコ染料と会合する。これにより、ロイコ染料と顕色剤との接触又は結合による反応が生じてロイコ染料が発色し、下層シート201の表面に画像が形成される。
【0129】
[第11の実施の形態]
図18は、積層型記録媒体の横断平面図である。
【0130】
本実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0131】
本実施の形態は、第1のシート10が複写印字可能な多部紙によって形成されている。その他の部分は、第1の実施の形態と同様である。
【0132】
ここで、第1のシート10の多部紙構造について説明する。本実施の形態では、第1のシート10が、下層シート301と上層シート311との二枚のシートから構成され、それらの下層シート301と上層シート311との四辺端部が剥離可能な接着剤30によって接着された積層構造になっている。
【0133】
下層シート301は、基材302の上にアンダーコート層303を介して感熱発色層304が形成され、その上に保護層305がコーティングされた感熱紙である。このような下層シート301に対しては、第2のシート20及び第1のシート10の上層シート311を介してサーマルプリンタヘッドを用いた感熱印字方式による直接発色印字が可能である。
【0134】
このような構成において、第1の印字ユニット111では、サーマルプリンタヘッド112における図示しない発熱素子の選択的な発熱によって積層型記録媒体1における第1のシート10の表面である第1の記録面15に情報を記録する。この際、第1の印字ユニット111は、第2のシート20を介して第1のシート10における上層シート311の表面に形成された感熱発色層13に熱エネルギーを付与し、この感熱発色層13を発色させるという直接感熱発色方式の印字を行なう。
【0135】
そして、このような感熱発色層13に対する熱エネルギーの付与に伴い、熱エネルギーは、第1のシート10における下層シート301の表面に形成された感熱発色層304にも伝達され、この感熱発色層304を発色させる。これにより、第1のシート10において複写が行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図2】第1の記録面への印字例を示す第1のシートの正面図である。
【図3】第2の記録面への印字例を示す第2のシートの正面図である。
【図4】第1の実施の形態による積層型記録媒体の変形例を示す横断平面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図6】第2の実施の形態による積層型記録媒体の変形例を示す横断平面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図8】第3の実施の形態による積層型記録媒体の変形例を示す横断平面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図10】第1の記録面への印字例を示す第2のシートの背面図である。
【図11】第2の記録面への印字例を示す第2のシートの正面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図13】本発明の第6の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図14】本発明の第7の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図15】本発明の第8の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図16】本発明の第9の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図17】本発明の第10の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図18】本発明の第11の実施の形態を示す積層型記録媒体の横断平面図である。
【図19】本発明の積層型記録媒体に対して印字を行なう印字装置を例示する模式図である。
【符号の説明】
【0137】
10 第1のシート
13 第1の画像生成手段(感熱発色層)
15 第1の記録面
16 A層
16及び26 第1の画像生成手段(A層及びB層)
20 第2のシート
21 第2の記録面
22 第2の画像生成手段(シート表面)
25 第1の画像生成手段(熱転写インキ層)
26 B層
111 第1の記録手段(第1の印字ユニット)
121 第2の記録手段(第2の印字ユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシートと、
前記第1のシートの表面に裏面が剥離可能に貼り合わされた第2のシートと、
前記第1のシートと前記第2のシートとの間に設けられた第1の記録面と、
前記第2のシートの表面に設けられた第2の記録面と、
前記第1のシートと前記第2のシートとの間に介在され、第1の記録手段による前記第2のシートの表面側からの記録動作に応じて前記第1の記録面に画像を生成させる第1の画像生成手段と、
第2の記録手段による前記第2のシートの表面側からの記録動作に応じて前記第2の記録面に画像を生成させる第2の画像生成手段と、
を具備し、前記第1の画像生成手段は、前記第2の記録手段による記録動作によっては前記第1の記録面に画像を生成させず、前記第2の画像生成手段は、前記第1の記録手段による記録動作によっては前記第2の記録面に画像を生成させないことを特徴とする積層型記録媒体。
【請求項2】
前記第1の記録面には、前記第1の記録手段の記録動作に応じて前記第1の画像生成手段によって生成された画像が設けられ、前記第2の記録面には、前記第2の記録手段の記録動作に応じて前記第2の画像生成手段によって生成された画像が設けられていることを特徴とする請求項1記載の積層型記録媒体。
【請求項3】
前記第1の画像生成手段は、前記第1のシートの表面に形成された感熱発色層であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層型記録媒体。
【請求項4】
前記第1の記録面は前記第1のシートの表面に形成され、前記第1の画像生成手段は、前記第2のシートの裏面に形成された熱により溶融して溶融したインクを前記第1の記録面に転写する熱転写インキ層であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層型記録媒体。
【請求項5】
前記第1の記録面は前記第2のシートの裏面に形成され、前記第1の画像生成手段は、前記第1のシートの表面に形成された熱により溶融して溶融したインクを前記第1の記録面に転写する熱転写インキ層であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層型記録媒体。
【請求項6】
前記第1の画像生成手段は、染料を含むA層と前記染料と会合することで反応しその染料を発色させる顕色剤を含むB層とが前記第1のシートの表面と前記第2のシートの裏面とにそれぞれ設けられ、前記A層又は前記B層に前記第1の記録手段から印字エネルギーが付与された場合にのみ前記染料と前記顕色剤とを会合させる会合手段が設けられ、会合した前記染料と前記顕色剤とを前記第1の記録面に保持させる保持手段が設けられて形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層型記録媒体。
【請求項7】
前記第1の記録面は、前記第1のシートの表面に設けられた前記A層によって形成されていることを特徴とする請求項6記載の積層型記録媒体。
【請求項8】
前記第1の記録面は、前記第1のシートの表面に設けられた前記B層によって形成されていることを特徴とする請求項6記載の積層型記録媒体。
【請求項9】
前記第1の記録面は、前記第2のシートの裏面に設けられた前記A層によって形成されていることを特徴とする請求項6記載の積層型記録媒体。
【請求項10】
前記第1の記録面は、前記第2のシートの裏面に設けられた前記B層によって形成されていることを特徴とする請求項6記載の積層型記録媒体。
【請求項11】
前記会合手段は、オイルに溶解した染料を内包するマイクロカプセルによって構成されていることを特徴とする請求項6記載の積層型記録媒体。
【請求項12】
前記会合手段は、オイルに溶解した顕色剤を内包するマイクロカプセルによって構成されていることを特徴とする請求項6記載の積層型記録媒体。
【請求項13】
前記第2の記録手段は、熱転写インクリボンを用いた熱転写方式の画像形成を行なうことを特徴とする請求項1ないし12の何れか一記載の積層型記録媒体。
【請求項14】
前記第1のシートは、複写印字可能な多部紙によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層型記録媒体。
【請求項15】
前記第2のシートは、複写印字可能な多部紙によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層型記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2007−38682(P2007−38682A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243475(P2006−243475)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【分割の表示】特願2002−263620(P2002−263620)の分割
【原出願日】平成14年9月10日(2002.9.10)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】