説明

積層型誘電体フィルタ

【課題】 薄型化してもVSWRの劣化が少ないマイクロストリップ構造の積層誘電体フィルタを得る。
【解決手段】 誘電体層を積み重ねた積層体20の内部に、グラウンド電極11と、共振器となる第一の線路14Aおよび該第一の線路14Aと対称形状である第二の線路14Bと、が形成されており、前記積層体20の前記第一の線路14A側の上面に導電膜からなるマーキング15が形成されているマイクロストリップライン型の積層誘電体フィルタ10において、前記第一の線路14Aは、前記マーキング15と重なる部分に幅広部16Aが形成されており、前記第二の線路14Bは、前記第一の線路14と略同じ形状で幅広部16Bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WiMAXや無線LANなどの無線通信用の機器において、不要な妨害波を除去する積層型誘電体フィルタに関するもので、特にマイクロストリップライン型の積層型誘電体フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
WiMAXや無線LANなどの無線通信に用いられる通信機器には、不要な電波を除去して必要な電波を通過させるフィルタが用いられている。フィルタは必要な電波のみを低損失で通過させる特性が要求される。このようなフィルタとして、例えば図1に示す等価回路図で表されるフィルタが挙げられる。このフィルタ1は次のような構成を有している。入力端子INから出力端子OUTの間の信号ラインに、直列に接続された結合容量3が形成されている。この結合容量3より入力端子IN側に、一方の端部が信号ラインに接続され他方の端部がグラウンドGNDに接続されている第一の共振器4Aと、この第一の共振器4Aに並列に接続された第一の接地容量2Aを有している。また結合容量3より出力端子OUT側に、一方の端部が信号ラインに接続され他方の端部がグラウンドGNDに接続されている第二の共振器4Bと、この第二の共振器4Bに並列に接続された第二の接地容量2Bとを有している。そして、入力端子IN側と出力端子OUT側は、結合容量3と、第一の共振器4Aと第二の共振器4Bとの間に形成される磁界結合Mと、によって結合される。このようなフィルタ1を実現する手段としては、安価で小型化が容易なことから積層型誘電体フィルタが広く用いられている。
【0003】
積層型誘電体フィルタは、共振器となる線路が形成された誘電体層を、グラウンド電極が形成された誘電体層で上下に挟んだ構造を有するものである。誘電体層には、誘電率が50以上の誘電体材料が用いられ、電波の波長を短縮させる。これにより小型で所望の特性を有するフィルタを実現できるものである。
【0004】
ところで近年、無線通信機器の薄型化が進んできている。例えば無線LAN用の通信機器では、PCカード等のようなカード型の機器が広く採用されている。このため、このような無線通信機器に用いられる積層型誘電体フィルタにも薄型化の要求が高まっている。積層型誘電体フィルタを薄型化するには、誘電体層の厚さを薄くする必要がある。しかし、上下をグラウンド電極に挟まれたストリップライン型のフィルタでは、誘電体層を薄くしていくと、共振器となる線路とグラウンド電極との間隔が近くなってきて、共振器の特性インピーダンスが低くなり、所望の特性を得ることが難しくなってくる。そこで、グラウンド電極を片面のみに形成し、誘電体層を介して共振器となる線路が形成されたマイクロストリップライン型の積層型誘電体フィルタとする方法がある。これにより共振器の特性インピーダンスを低下させずに薄型化することができる。
【0005】
このようなマイクロストリップライン型の積層型誘電体フィルタは、図10に示す斜視図、図11に示す分解斜視図および図12に示す平面図のようになる。なお、以後の説明に用いる平面図については、マーキングと第一の線路との位置関係および第二の線路の形状を明確にするため、容量電極等は省略している。グラウンド電極111を有する誘電体層121の上層に、第一の容量電極112Aと、該第一の容量電極112Aと対称形状に形成された第二の容量電極112Bと、を有する誘電体層122が積層されている。第一の容量電極112Aとグラウンド電極111とによって第一の接地容量2Aが形成される。第二の容量電極112Bとグラウンド電極111とによって第二の接地容量2Bが形成される。この誘電体層122の上層に、第三の容量電極113を有する誘電体層123が積層されている。この第三の容量電極123と前記第一の容量電極112Aとによって形成される容量と、第三の容量電極123と前記第二の容量電極112Bとによって形成される容量と、によって結合容量3が形成される。そしてこの誘電体層123の上層に、第一の共振器4Aを形成する第一の線路114Aと、第二の共振器4Bを形成しかつ該第一の線路114Aと対称形状に形成された第二の線路114Bと、を有する誘電体層124が積層されている。さらにこの誘電体層124の上に、保護層となる誘電体層125が積層される。このようにして積層体120が形成される。なお、誘電体124は、第一の線路114Aおよび第二の線路114Bと、グラウンド電極111と、の距離を大きく取るため、他の誘電体層よりも厚く形成される。誘電体層124は、他の誘電体層と同じ厚さの誘電体層を複数枚積層して厚く形成する方法か、一枚の誘電体層の厚さを厚く形成する方法で形成される。
【0006】
この積層体120の側面に外部電極が形成されて、積層型誘電体フィルタ100となる。入力端子INとなる第一の外部電極131Aが、第一の線路114Aの一方の端部と第一の容量電極112Aが露出している側面に形成されている。出力端子OUTとなる第二の外部電極131Bが、第二の線路114Bの一方の端部と第二の容量電極112Bが露出している側面に形成されている。第一の接地用外部電極132Aが第一の線路114Aの他方の端部と第二の線路114Bの他方の端部とグラウンド電極111の一方の端部が露出している側面に形成されている。第二の接地用外部電極132Bが、グラウンド電極111の他方の端部が露出している側面に形成されている。このような積層型誘電体フィルタ100は、共振器となる線路や容量電極等が、入力側と出力側とで対称になるように設計される。
【0007】
そして、この積層型誘電体フィルタ100の上面すなわち誘電体層125の上には、フィルタの方向を識別するマーキング115が形成されている。マイクロストリップライン型のフィルタの場合、基板に実装したときにグラウンド電極111が実装面側にある必要がある。そのため、どちらが実装面になるかを識別する必要がある。また、この積層型誘電体フィルタ100に限らず、フィルタ素子は、所望の特性を得るために入力側と出力側が決められている。そのため、どちらが入力側であるかを識別する必要がある。マーキング115は通常上面の入力側に寄った位置に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−032402号公報
【特許文献2】特開平5−327311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなマーキング115は、インクの他、導電ペーストを用いてスクリーン印刷によって形成される。導電ペーストを用いた場合、線路や容量電極等と同様のプロセスによってマーキングを形成することができる。マーキングを線路や容量電極と同時に形成することにより、製造コストを低減することができる。
【0010】
しかしながら、マーキング115を導電ペーストで形成した場合、次のような問題点がある。第一の線路114Aおよび第二の線路114Bは、グラウンド電極111から離すために、積層型誘電体フィルタ100の上面に近い位置に形成される。積層型誘電体フィルタ100の薄型化が進めば、第一の線路114Aおよび第二の線路114Bはさらに上面に近接した位置に形成される。ここで、マーキング115は、図12に示す透視図のように、第一の線路114Aと重なる状態になる。マーキング115が導電膜で形成されていると、第一の線路114Aの周囲に発生する磁界を妨げるようになる。この結果、第一の線路114Aと第二の線路114Bの電気的特性が変化する。そのため、通過帯域でのミスマッチが生じ、電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio:以後VSWRと略す。)の劣化が発生する。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決して、マイクロストリップ構造を有する薄型の積層型誘電体フィルタを得られるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では第一の解決手段として、誘電体層を積み重ねた積層体の内部に、グラウンド電極と、共振器となる第一の線路および該第一の線路と対称形状である第二の線路と、が形成されており、前記積層体の前記第一の線路側の上面に導電膜からなるマーキングが形成されているマイクロストリップライン型の積層誘電体フィルタにおいて、前記第一の線路は、前記マーキングと重なる部分が他の部分よりも幅広に形成されており、前記第二の線路は前記第一の線路と略同じ形状である積層誘電体フィルタを提案する。
【0013】
上記第一の解決手段のように、第一の線路のマーキングと重なる部分の幅を広くすることによって、マーキングが第一の線路の周囲に発生する磁界を妨げる作用を低減できる。そして、第一の線路と第二の線路を略同じ形状にすることによって、入力側と出力側との対称性を持たせることができる。これによって積層型誘電体フィルタのVSWRを改善することができる。
【0014】
なお、磁界を妨げる作用の低減という観点から、第二の解決手段として、第一の線路の幅広に形成された部分の幅寸法を、マーキングの幅寸法と同じかまたはそれよりも広くした積層誘電体フィルタを提案する。このような構造であれば、マーキングが磁界を妨げる作用をより低減できる。しかし、第一の線路のマーキングと重なる部分の幅が他の部分よりも広く形成されていれば、その寸法に関係なく、本発明の効果すなわちVSWRの改善がなされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薄型化してもVSWRの劣化が少ないマイクロストリップライン型の積層誘電体フィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】フィルタの等価回路図である。
【図2】本発明の積層型誘電体フィルタの第一の実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の積層型誘電体フィルタの第一の実施形態を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の積層型誘電体フィルタの第一の実施形態を示す平面図である。
【図5】本発明の効果を示すグラフである。
【図6】本発明の積層型誘電体フィルタの第二の実施形態を示す平面図である。
【図7】本発明の積層型誘電体フィルタの第一の実施形態の変形例を示す平面図である。
【図8】本発明の積層型誘電体フィルタの第一の実施形態の変形例を示す平面図である。
【図9】本発明の積層型誘電体フィルタの第一の実施形態の変形例を示す平面図である。
【図10】従来の積層型誘電体フィルタを示す斜視図である。
【図11】従来の積層型誘電体フィルタを示す分解斜視図である。
【図12】従来の積層型誘電体フィルタを示す平面図である。
【図13】参考例の積層型誘電体フィルタを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の積層型誘電体フィルタにかかる第一の実施形態について、図面に基づいて説明する。図2および図3に示す積層型誘電体フィルタ10は、次のような構成を有している。
【0018】
グラウンド電極11を有する誘電体層21の上に、該グラウンド電極11と第一の接地容量2Aを形成する第一の容量電極12A、および該グラウンド電極111と第二の接地容量2Bを形成しかつ該第一の容量電極12Aと対称形状に形成された第二の容量電極12Bを有する誘電体層22が積層されている。この誘電体層22の上に、前記第一の容量電極12Aおよび前記第二の容量電極12Bと結合容量3を形成する第三の容量電極13を有する誘電体層23が積層されている。そしてこの誘電体層23の上に、第一の共振器4Aを形成する第一の線路14Aと、第二の共振器4Bを形成しかつ該第一の線路14Aと対称形状に形成された第二の線路14Bと、を有する誘電体層24が積層されている。さらにこの誘電体層24の上に、保護層となる誘電体層25が積層される。このようにして積層体20が形成される。なお、誘電体24は、第一の線路14Aおよび第二の線路14Bと、グラウンド電極11と、の距離を大きく取るため、他の誘電体層よりも厚く形成される。誘電体層24は、他の誘電体層と同じ厚さの誘電体層を複数枚積層して厚く形成する方法か、一枚の誘電体層の厚さを厚く形成する方法で形成される。
【0019】
この積層体20の側面に外部電極を形成すると、積層型誘電体フィルタ10が得られる。すなわち、第一の線路14Aの一方の端部と第一の容量電極12Aが露出している側面に入力端子INとなる第一の外部電極31Aが形成され、第二の線路14Bの一方の端部と第二の容量電極12Bが露出している側面に出力端子OUTとなる第二の外部電極31Bが形成され、第一の線路14Aの他方の端部と第二の線路14Bの他方の端部とグラウンド電極11の一方の端部が露出している側面に第一の接地用外部電極32Aが形成され、グラウンド電極11の他方の端部が露出している側面に第二の接地用外部電極32Bが形成されている。こうして得られた積層型誘電体フィルタ10は、共振器となる線路や容量電極等が、入力側と出力側とで対称になるように設計される。
【0020】
そして、この積層型誘電体フィルタ10の上面すなわち誘電体層25の上には、フィルタの方向を識別するマーキング15が形成されている。さらに、第一の線路14Aは幅広部16Aを有しており、第二の線路14Bは幅広部16Bを有している。幅広部16Aは、図4に示すように、マーキング15と重なる位置に形成されている。幅広部16Bは、幅広部16Aと対称となる位置に形成されている。
【0021】
このような積層型誘電体フィルタ10は、例えば次のようにして得られる。まず、シート状の誘電体層21〜25を用意する。この誘電体層21〜25は、例えば誘電体セラミック粉末を有機バインダーと混合してスラリーを形成し、これをドクターブレード法等の方法でシート状に形成して得られる。誘電体セラミック粉末としては、チタン酸バリウムなどのペロブスカイト型誘電体セラミックスや、ディオプサイト結晶(CaMgSi)含有セラミックスなどの低温焼結性材料等が挙げられる。これらの材料は所望する特性に応じて選択される。得られたシート状の誘電体層は、長尺のシートのまま、あるいは所定形状に打ち抜いて金属性のフレーム等に貼り付けて、次の印刷工程に送られる。
【0022】
続いて、スクリーン印刷法等によって導電ペーストを塗布し、誘電体層に導体パターンおよびマーキングを形成する。ここで誘電体層21にはグラウンド電極11が形成され、誘電体層22には第一の容量電極12Aおよび第二の容量電極12Bが形成され、誘電体層23には第三の容量電極13が形成され、誘電体層24には第一の線路14Aおよび第二の線路14Bが形成され、誘電体層25にはマーキング15が形成される。導体パターンおよびマーキングを形成する金属としては、Ag、Pt、Cu、Ni、Au、Ag−Pd合金、Ag−Pt合金が挙げられる。これらは、誘電体層に用いる材料に応じて選択される。例えばNiやCuなどの卑金属を用いる場合は、誘電体層に耐還元性を有する材料が用いられる。また、AgやCuなどの比較的融点が低い金属を用いる場合は、誘電体層に焼結温度が1000℃以下の低温焼結性の材料が用いられる。
【0023】
続いて、導体パターンを形成した誘電体層21〜25を積層する。長尺のシートあるいは金属フレームに貼り付けられたシートから所定形状で打ち抜いて、これを順次積層する。なお、誘電体層24は、厚さの調整のため、導電パターンを印刷していない誘電体層を複数枚重ねても良い。積層した誘電体層21〜25を熱圧着して、積層体20を得る。
【0024】
積層体20を所定の焼成温度例えば1000℃で焼成したのち、導体パターンが露出しした側面に導電ペーストを塗布して外部電極を形成する。第一の線路14Aの一方の端部が露出する側面に第一の外部電極31Aが形成され、第二の線路14Aの一方の端部が露出する側面に第二の外部電極31Bが形成され、第一の線路14Aの他方の端部と第二の線路14Bの他方の端部とグラウンド電極11の一方の端部が露出している側面に第一の接地用外部電極32Aが形成され、グラウンド電極11の他方の端部が露出している側面に第二の接地用外部電極32Bが形成される。外部電極に用いる金属としては、Ag、Cu、Ni等が挙げられる。
【0025】
このようにして得られた積層型誘電体フィルタ10について、従来の積層型誘電体フィルタ100を比較例として、VSWRの測定を行った結果を図5に示す。なお、VSWRは、次式
VSWR=(1+|ρ|)/(1−|ρ|)
ρ=(Z−Z)/(Z+Z)=V/V
(Vは進行波の電圧、Vは反射波の電圧、Zは伝送線路の特性インピーダンス、Zは負荷インピーダンス、ρは電圧反射係数)
で表され、1に近いほど特性が良い。
【0026】
図5から、本発明の積層型誘電体フィルタ10は、従来の積層型誘電体フィルタ100と比較して、VSWRが改善されていることがわかる。このことから、共振器となる線路の幅広部分にVSWRの改善効果があることがわかる。
【0027】
次に本発明の積層型誘電体フィルタにかかる第二の実施形態について説明する。図6に示す積層型誘電体フィルタ10’は、第一の線路14A’に形成された幅広部16A’の幅寸法W1が、マーキング15の幅寸法W2よりも大きくなっている点で、第一の実施形態の積層型誘電体フィルタ10と異なる。
【0028】
この積層型誘電体フィルタ10’のように、第一の線路14A’の幅広部16A’の幅寸法がマーキング15の幅寸法と同じかまたは大きくなると、マーキング15に妨げられない磁界が存在するようになる。その結果、マーキング15が第一の線路14A’の周囲に発生する磁界を妨げる作用の低減効果がより大きくなる。
【0029】
なお、第二の線路14B’の幅広部16B’も、第一の線路14A’の幅広部16A’と略同じ形状とする。これにより入力側と出力側との対称性を持った積層型誘電体フィルタ10’を得ることができる。
【0030】
次に本発明の積層型誘電体フィルタの変形例について説明する。図7に示す積層誘電体フィルタ10aは、第二の線路14Bの他方の端部が第二の接地用外部電極32B接続されている点で図2に示す積層型誘電体フィルタ10と異なる。すなわち、図2に示す積層型誘電体フィルタ10は第一の線路14Aと第二の線路14Bとが線対称の関係にあるが、図7に示す積層型誘電体フィルタ10aは第一の線路14Aと第二の線路14Bとが点対称の関係にある。このような構造の積層型誘電体フィルタでも、本発明の効果を有している。
【0031】
他の変形例として、図8に示す積層型誘電体フィルタ50および図9に示す積層型誘電体フィルタ50’がある。図8に示す積層型誘電体フィルタ50は、マーキング55を境に第一の線路54Aの第一の外部電極71A側が幅広部56Aになっており、第二の線路54Bの第二の外部電極71B側が幅広部56Bになっている。一方、図9に示す積層型誘電体フィルタ50’は、マーキング55を境に第一の線路54A’の第一の接地用外部電極72A側が幅広部56A’になっており、第二の線路54B’の第一の接地用外部電極72A側が幅広部56B’になっている。
【0032】
これらの構成であっても、マーキングに重なる部分の第一の線路の幅が広く形成されているので、本発明のVSWRの改善効果を有している。また、第二の線路が第一の線路と略同じ形で線対称の位置にあるので、入力側と出力側との対称性を持った積層型誘電体フィルタを得ることができる。
【0033】
なおここで参考例として、図13に示す積層型誘電体フィルタ100’について説明する。積層型誘電体フィルタ100’は、マーキング115’を第一の線路114A’の幅W3よりも小さくした点が従来の積層型誘電体フィルタ100と異なる。
【0034】
このように、マーキングの大きさを第一の線路の幅よりも小さくすることで、本発明のVSWR改善の効果が得られる。しかし、マーキングを小さくすると、視認性が低下する場合があるので、あまり実用的ではない。なお、図13に示す積層誘電体フィルタ100’では、第一の線路114A’のマーキング115’に重なる部分の線幅W3を、その他の部分の幅W4よりも広くして、マーキング115’の大きさを視認性が確保できる大きさにすれば、本発明の効果が得られ、マーキングの視認性も低下させずにすむ。
【0035】
以上、本発明について説明してきたが、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 フィルタ
2A 第一の接地容量
2B 第二の接地容量
3 結合容量
4A 第一の共振器
4B 第二の共振器
10、10’、10a、50、50’、100、100’ 積層型誘電体フィルタ
11、51、111 グラウンド電極
12A、52A、112A 第一の容量電極
12B、52B、112B 第二の容量電極
13、53、113 第三の容量電極
14A、14A’、54A、54A’、114A、114A’ 第一の線路
14B、14B’、54B、54B’、114B、114B’ 第二の線路
15、55、115、115’ マーキング
16A、16B、16A’、16B’、56A、56B、56A’、56B’ 幅広部
20、20’、60、60’、120 積層体
21、22、23、24、25、121、122、123、124、125 誘電体層
31A、71A、131A 第一の外部電極
31B、71B、131B 第二の外部電極
32A、72A、132A 第一の接地用外部電極
32B、72B、132B 第二の接地用外部電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を積み重ねた積層体の内部に、グラウンド電極と、共振器となる第一の線路および該第一の線路と対称形状である第二の線路と、が形成されており、前記積層体の前記第一の線路側の上面に導電膜からなるマーキングが形成されているマイクロストリップライン型の積層誘電体フィルタにおいて、前記第一の線路は、前記マーキングと重なる部分が他の部分よりも幅広に形成されており、前記第二の線路は前記第一の線路と略同じ形状であることを特徴とする積層誘電体フィルタ。
【請求項2】
前記第一の線路および前記第二の線路の幅広部分の幅寸法は、前記マーキングの幅寸法と同じ、または前記マーキングの幅寸法よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の積層型誘電体フィルタ。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−252056(P2010−252056A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99472(P2009−99472)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】