説明

積層型電子部品及びその製造方法

【課題】ビアホール導体とコイル電極との間の断線を防止できる積層型電子部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数のコイル電極8は、コイルLを構成している。複数の磁性体層4は、複数のコイル電極8と共に積層されて積層体2を構成している。コンタクト部Cは、複数のコイル電極8を接続し、かつ、一方の端部の面積が他方の端部の面積よりも大きい形状を有している。外部電極は、積層体の表面に形成され、かつ、前記コイルに接続されている。コイル電極8aは、コイル電極8fよりも長い。コイル電極8aは、コンタクト部B1の前記一方の端部に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品及びその製造方法に関し、絶縁層とコイル電極とが積層されてなる積層型電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に、コイルを内蔵した従来の積層型電子部品の構造について図面を参照しながら説明する。図9は、従来の積層型電子部品100の透視図である。図10は、従来の積層型電子部品100の積層体102の分解斜視図である。
【0003】
積層型電子部品100は、図9に示すように、内部にコイルを含む直方体状の積層体102と、積層体102の対向する側面に形成される2つの外部電極112a,112bとを備える。
【0004】
積層体102は、複数のコイル電極と複数の磁性体層とが積層されて構成されている。具体的には、以下の通りである。積層体102は、図10に示すように、強磁性のフェライト(例えば、Ni−Zn−Cuフェライト又はNi−Znフェライト等)からなる複数の磁性体層104a〜104f,106a〜106dが積層されることにより構成されている。磁性体層104a〜104fには、コイルを構成するコイル電極108a〜108fが形成されている。また、磁性体層104a〜104eには、ビアホール導体B1〜B5が形成されている。ビアホール導体B1〜B5は、例えば、レーザを照射してビアホールを形成し、該ビアホールに対して導体を充填して形成される。そのため、図9に示すように、ビアホール導体B1〜B5は、一端の面積が相対的に大きく、かつ、他端の面積が相対的に小さい形状を有している。
【0005】
コイル電極108a〜108fは、大略「コ」字状の形状を有し、略3/4ターンの長さを有する電極である。ビアホール導体B1〜B5はそれぞれ、各コイル電極108a〜108eの一端において磁性体層104a〜104eを上下方向に貫通するように設けられている。コイル電極108a〜108fは、ビアホール導体B1〜B5により互いに接続されることにより、螺旋状のコイルを構成する。更に、積層方向において最も上側及び最も下側に形成されたコイル電極108a,108fにはそれぞれ、引き出し電極110a,110bが設けられている。この引き出し電極110a,110bは、コイルと外部電極112a,112bとを接続する役割を果たす。
【0006】
以上のように構成された従来の積層型電子部品100では、以下に説明するように、コイル電極108fとビアホール導体B5との間において断線が発生し易いという問題がある。
【0007】
図10に示すように、コイル電極108fの長さは、コイル電極108aの長さよりも長い。そのため、コイルに電流を流した場合には、コイル電極108fにおける発熱量は、コイル電極108aにおける発熱量よりも多くなる。更に、コイル電極108fには、ビアホール導体B5の面積が小さい方の端部が接続されている。そのため、特に、コイル電極108fとビアホール導体B5との接続部分において集中的に発熱する。その結果、コイル電極108fとビアホール導体B5との間において、断線が発生し易い。
【0008】
なお、特許文献1には、最も上層のコイル導体と最も下層のコイル導体とが同じ形状を有する積層型電子部品が記載されている。しかしながら、特許文献1では、ビア導体とコイル導体との接続部分における断線の問題については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−167130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、ビアホール導体とコイル電極との間の断線を防止できる積層型電子部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、積層型電子部品において、コイルを構成している複数のコイル電極と、前記複数のコイル電極と共に積層されて積層体を構成している複数の絶縁層と、前記複数のコイル電極を接続し、かつ、一方の端部の面積が他方の端部の面積よりも大きい形状を有している接続部と、前記積層体の表面に形成され、かつ、前記コイルに接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備え、前記第1の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の前記一方の端部に接続され、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の前記他方の端部に接続され、前記第1の外部電極に接続されたコイル電極における該第1の外部電極との接続箇所から前記接続部までの直流抵抗は、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極における該第2の外部電極との接続箇所から前記接続部までの直流抵抗よりも大きいこと、を特徴とする。
【0012】
第1の発明によれば、第1の外部電極に接続されたコイル電極における該第1の外部電極との接続箇所から接続部までの直流抵抗は、第2の外部電極に接続されたコイル電極における該第2の外部電極との接続箇所から接続部までの直流抵抗よりも大きい。そのため、コイルに電流を流した場合には、第1の外部電極に接続されたコイル電極は、第2の外部電極に接続されたコイル電極よりも強く発熱する。したがって、第1の外部電極に接続されたコイル電極と接続部とは、熱によって断線するおそれがある。しかしながら、第1の発明では、第1の外部電極に接続されたコイル電極には、接続部の面積が大きい方の端部が接続されている。そのため、第1の発明では、第1の外部電極に接続されたコイル電極と接続部との接続部分において集中的に発熱することを防止できる。その結果、コイル電極と接続部との境界部分において断線が発生することが抑制される。
【0013】
第1の発明において、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、複数個所において前記接続部と接続可能に構成されていてもよい。
【0014】
第1の発明において、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部と接続可能な部分が、他の部分よりも太い形状を有していてもよい。
【0015】
第1の発明において、前記接続部は、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極の該第2の外部電極との接続箇所以外の部分であって、かつ、該接続箇所とは反対側の端部以外の部分に接続されていてもよい。
【0016】
第1の発明において、前記第1の外部電極に接続されたコイル電極及び前記接続部は、前記絶縁層において一体的に形成されていてもよい。
【0017】
第1の発明において、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極が形成された前記絶縁層には、前記接続部が形成されていなくてもよい。
【0018】
第1の発明において、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の前記他方の端部に接続されていてもよい。
【0019】
第2の発明は、コイルを内蔵すると共に、第1の外部電極及び第2の外部電極が表面に形成された積層体からなる積層型電子部品の製造方法において、一方の端部の面積が他方の端部の面積よりも大きい形状を有する接続部を、絶縁層に形成する工程と、前記第1の外部電極に接続される第1のコイル電極が前記接続部の前記一方の端部に接続されるように、該第1のコイル電極を前記絶縁層に形成する工程と、前記第2の外部電極に接続される第2のコイル電極を絶縁層に形成する工程と、前記第1のコイル電極における該第1の外部電極との接続箇所から前記接続部までの直流抵抗が、前記第2のコイル電極における該第2の外部電極との接続箇所から前記接続部までの直流抵抗よりも大きくなるように、該第1のコイル電極が形成された絶縁層及び該第2のコイル電極が形成された絶縁層を積層して、前記積層体を形成する工程と、を備えること、を特徴とする。
【0020】
第2の発明によれば、第1の外部電極に接続されたコイル電極における該第1の外部電極との接続箇所から接続部までの直流抵抗は、第2の外部電極に接続されたコイル電極における該第2の外部電極との接続箇所から接続部までの直流抵抗よりも大きい。そのため、コイルに電流を流した場合には、第1の外部電極に接続されたコイル電極は、第2の外部電極に接続されたコイル電極よりも強く発熱する。したがって、第1の外部電極に接続されたコイル電極と接続部とは、熱によって断線するおそれがある。しかしながら、第2の発明では、第1の外部電極に接続されたコイル電極には、接続部の面積が大きい方の端部が接続される。そのため、第2の発明では、第1の外部電極に接続されたコイル電極と接続部との接続部分において集中的に発熱することを防止できる。その結果、コイル電極と接続部との境界部分において断線が発生することが抑制される。
【0021】
第2の発明において、前記第2のコイル電極を形成する工程では、前記接続部が形成されていない前記絶縁層に対して、該第2のコイル電極を形成してもよい。
【0022】
第2の発明において、前記第2のコイル電極を形成する工程では、複数個所において前記接続部と接続可能な形状に該第2のコイル電極を形成してもよい。
【0023】
第2の発明において、前記第2のコイル電極を形成する工程では、前記接続部と接続可能な部分が、他の部分よりも太くなるように該第2のコイル電極を形成してもよい。
【0024】
第2の発明において、前記積層体を形成する工程では、前記接続部が、前記第2の外部電極に接続された前記コイル電極の該第2の外部電極との接続箇所以外の部分であって、かつ、該接続箇所とは反対側の端部以外の部分に接続されるように、前記絶縁層を積層してもよい。
【0025】
第3の発明は、コイルを構成している複数のコイル電極と、前記複数のコイル電極と共に積層されて積層体を構成している複数の絶縁層と、前記複数のコイル電極をそれぞれ接続し、かつ、一方の端部の面積が他方の端部の面積よりも大きい形状を有している複数の接続部と、前記積層体の表面に形成され、かつ、前記コイルに接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備え、前記第1の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の面積が大きい方の端部に接続され、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の面積が小さい方の端部に接続され、前記第1の外部電極に接続されたコイル電極の直流抵抗は、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極の直流抵抗よりも大きいこと、を特徴とする。
【0026】
第3の発明において、前記第1の外部電極に接続されたコイル電極の直流抵抗は、該第1の外部電極と該コイル電極との接続箇所から前記接続部までの電極長さにより定められ、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極の直流抵抗は、該第2の外部電極と該コイル電極との接続箇所から前記接続部までの電極長さにより定められていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1の外部電極に接続されたコイル電極における該第1の外部電極との接続箇所から接続部までの直流抵抗は、第2の外部電極に接続されたコイル電極における該第2の外部電極との接続箇所から接続部までの直流抵抗よりも大きい。更に、本発明では、第1の外部電極に接続されたコイル電極には、接続部の面積が大きい方の端部が接続されている。そのため、本発明では、第1の外部電極に接続されたコイル電極と接続部との接続部分において集中的に発熱することを防止できる。その結果、コイル電極と接続部との境界部分において断線が発生することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の外観斜視図。
【図2】図1に示す積層型電子部品の積層体の分解斜視図。
【図3】図1に示す積層型電子部品を側面方向(LT面)から見た透視図。
【図4】試験に用いた積層型電子部品のコイル電極を示した図。
【図5】試験に用いた積層型電子部品のコイル電極を示した図。
【図6】従来の積層型電子部品のコイル電極のその他の例を示した図。
【図7】実験に用いたセラミックグリーンシートを示した図。
【図8】コイル電極の変形例を示した図。
【図9】従来の積層型電子部品の透視図。
【図10】従来の積層型電子部品の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品及びその製造方法について説明する。該積層型電子部品は、例えば、インダクタ、インピーダ、LCフィルタに用いられる。図1は、積層型電子部品1の外観斜視図である。図2は、積層体2の分解斜視図である。図3は、積層型電子部品1を側面方向から見た透視図である。以下では、積層型電子部品1の形成時に、セラミックグリーンシートが積層される方向を積層方向と定義する。
【0030】
(積層型電子部品の構成について)
積層型電子部品1は、図1に示すように、内部にコイルLを含む直方体状の積層体2と、積層体2の対向する側面(表面)に形成され、コイルLに接続される2つの外部電極12a,12bとを備える。
【0031】
積層体2は、複数のコイル電極と複数の磁性体層とが共に積層されて構成されている。具体的には、以下の通りである。積層体2は、図2に示すように、強磁性のフェライト(例えば、Ni−Zn−Cuフェライト又はNi−Znフェライト等)からなる複数の磁性体層4a〜4f,6a〜6dが積層されることにより構成される。複数の磁性体層4a〜4f,6a〜6dは、それぞれ略同じ面積及び形状を有する絶縁層である。磁性体層4a〜4fの主面上にはそれぞれ、コイルLを構成するコイル電極8a〜8fが形成される。更に、磁性体層4a〜4eにはそれぞれ、ビアホール導体B1〜B5が形成される。一方、磁性体層4fには、ビアホール導体B1〜B5は形成されない。また、磁性体層6a〜6dの主面上には、コイル電極8a〜8f及びビアホール導体B1〜B5は形成されない。なお、フェライトからなる磁性体層4a〜4f,6a〜6dの代わりに、誘電体や他の絶縁体が用いられてもよい。以下では、個別の磁性体層4a〜4f,6a〜6d及びコイル電極8a〜8fを示す場合には、参照符号の後ろにアルファベットを付し、磁性体層4a〜4f,6a〜6d及びコイル電極8a〜8fを総称する場合には、参照符号の後ろのアルファベットを省略するものとする。また、個別のビアホール導体B1〜B5を示す場合には、Bの後ろに数字を付し、ビアホール導体B1〜B5を総称する場合には、Bの後ろの数字を省略するものとする。
【0032】
各コイル電極8は、Agからなる導電性材料からなり、環の一部が切り欠かれた形状を有する。本実施形態では、コイル電極8は、大略「コ」字状の形状を有する。これにより、各コイル電極8は、略3/4ターンの長さを有する電極を構成する。なお、コイル電極8は、Pd,Au,Pt等を主成分とする貴金属やこれらの合金などの導電性材料からなっていてもよい。なお、コイル電極8は、円又は楕円の一部が切り欠かれた形状であってもよい。以下に、コイル電極8a〜8fのそれぞれの構成について説明する。
【0033】
コイル電極8aは、磁性体層4a〜4fの内、積層方向の最も上側に配置された磁性体層4a上に形成される。コイル電極8aは、コイル電極8fよりも長く形成されている。該コイル電極8aの一端には、引き出し部10aが形成されており、該コイル電極8aの他端には、コンタクト部C1が形成されている。引き出し部10aは、外部電極12aに接続される。コンタクト部C1は、ビアホール導体B1と接続し易いように、コイル電極8aの他の部分よりも太く形成されており、ビアホール導体B1と一体的に形成されている。
【0034】
コイル電極8bは、磁性体層4b上に形成される。該コイル電極8bの一端には、コンタクト部C2が形成されており、該コイル電極8bの他端には、コンタクト部C3が形成されている。コンタクト部C2は、磁性体層4aと磁性体層4bとが積層されたときに、ビアホール導体B1と接続し易いように、コイル電極8bの他の部分よりも太く形成されている。また、コンタクト部C3は、ビアホール導体B2と接続し易いように、コイル電極8bの他の部分よりも太く形成されており、ビアホール導体B2と一体的に形成されている。
【0035】
コイル電極8cは、磁性体層4c上に形成される。該コイル電極8cの一端には、コンタクト部C4が形成されており、該コイル電極8cの他端には、コンタクト部C5が形成されている。コンタクト部C4は、磁性体層4bと磁性体層4cとが積層されたときに、ビアホール導体B2と接続し易いように、コイル電極8cの他の部分よりも太く形成されている。また、コンタクト部C5は、ビアホール導体B3と接続し易いように、コイル電極8cの他の部分よりも太く形成されており、ビアホール導体B3と一体的に形成されている。
【0036】
コイル電極8dは、磁性体層4d上に形成される。コイル電極8dは、磁性体層4bの中心点を中心にコイル電極8bを180度回転させたものと同じ形状である。該コイル電極8dの一端には、コンタクト部C6が形成されており、該コイル電極8dの他端には、コンタクト部C7が形成されている。コンタクト部C6は、磁性体層4cと磁性体層4dとが積層されたときに、ビアホール導体B3と接続し易いように、コイル電極8dの他の部分よりも太く形成されている。また、コンタクト部C7は、ビアホール導体B4と接続し易いように、コイル電極8dの他の部分よりも太く形成されており、ビアホール導体B4と一体的に形成されている。
【0037】
コイル電極8eは、磁性体層4e上に形成される。コイル電極8eは、磁性体層4cの中心点を中心にコイル電極8cを180度回転させたものと同じ形状である。該コイル電極8eの一端には、コンタクト部C8が形成されており、該コイル電極8eの他端には、コンタクト部C9が形成されている。コンタクト部C8は、磁性体層4dと磁性体層4eとが積層されたときに、ビアホール導体B4と接続し易いように、コイル電極8eの他の部分よりも太く形成されている。また、コンタクト部C9は、ビアホール導体B5と接続し易いように、コイル電極8eの他の部分よりも太く形成されており、ビアホール導体B5と一体的に形成されている。
【0038】
コイル電極8fは、磁性体層4a〜4fの内、積層方向の最も下側に配置された磁性体層4f上に形成される。コイル電極8fは、コイル電極8aよりも短く形成されている。該コイル電極8fの一端には、引き出し部10bが形成されており、該コイル電極8fの他端には、コンタクト部C10が形成されている。更に、コイル電極8fは、複数個所においてビアホール導体Bと接続可能とするために、複数のコンタクト部C11,C12を有する。引き出し部10bは、外部電極12bに接続される。コンタクト部C10は、磁性体層4eと磁性体層4fとが積層されたときに、ビアホール導体B5と接続し易いように、コイル電極8fの他の部分よりも太く形成されている。また、コンタクト部C11,C12は、コイル電極8fの途中の部分において、ビアホール導体Bと接続し易いように、コイル電極8fの他の部分よりも太く形成されている。以下では、個別のコンタクト部C1〜C12を示す場合には、Cの後ろに数字を付し、コンタクト部C1〜C12を総称する場合には、Cの後ろの数字を省略するものとする。
【0039】
以上のように、積層型電子部品1では、端部に位置する2種類の端部電極(コイル電極8a,8f)及び中間に位置する4種類の中間電極(コイル電極8b〜8e)によりコイルLが構成されている。そして、コイルLのターン数を調整する場合には、コイル電極8eとコイル電極8fとの間に、コイル電極8b〜8eの内の適切なコイル電極8を挿入する。この際、コイル電極8fとコイル電極8fの直上に位置するコイル電極8とは、互いに対向するコンタクト部C同士がビアホール導体Bを介して接続されることにより、接続される。すなわち、コイル電極8fの直上にコイル電極8cが位置する場合には、コンタクト部C12が用いられる。コイル電極8fの直上にコイル電極8dが位置する場合には、コンタクト部C11が用いられる。コイル電極8fの直上にコイル電極8eが位置する場合には、コンタクト部C10が用いられる。以上より、コイル電極8fは、コイル電極8c〜8eのいずれのものが直上に設けられても、該コイル電極8c〜8eと接続可能な構成を有している。
【0040】
次に、ビアホール導体Bについて説明する。ビアホール導体Bは、磁性体層4を積層方向の上下方向に貫通するように形成され、図3に示すように、積層方向から垂直な方向から見たときに、一方の端部t1の面積が他方の端部t2の面積よりも大きい形状を有している。より詳細には、積層方向の上側に位置する端部t1の面積は、積層方向の下側に位置する端部t2の面積より大きい。以下に、各ビアホール導体Bの接続関係について説明する。
【0041】
ビアホール導体B1の端部t1は、コイル電極8aに接続され、ビアホール導体B1の端部t2は、コイル電極8bに接続される。ビアホール導体B2の端部t1は、コイル電極8bに接続され、ビアホール導体B2の端部t2は、コイル電極8cに接続される。ビアホール導体B3の端部t1は、コイル電極8cに接続され、ビアホール導体B3の端部t2は、コイル電極8dに接続される。ビアホール導体B4の端部t1は、コイル電極8dに接続され、ビアホール導体B4の端部t2は、コイル電極8eに接続される。ビアホール導体B5の端部t1は、コイル電極8eに接続され、ビアホール導体B5の端部t2は、コイル電極8fに接続される。
【0042】
図2に示す分解斜視図の磁性体層6a,6b、磁性体層4a〜4f及び磁性体層6c,6dを積層方向の上側からこの順に重ねて積層体2を形成し、積層体2の表面に外部電極12a,12bを形成すると、図3に示すような構造を有する積層型電子部品1が得られる。
【0043】
以上のような積層型電子部品では、図2に示すように、コイル電極8aがコイル電極8fよりも長く形成されている。これにより、コイル電極8aと外部電極12aとの接続箇所からビアホール導体B1(図2では、コンタクト部C1)までの第1の直流抵抗は、コイル電極8fと外部電極12bとの接続箇所からビアホール導体B5(図2では、コンタクト部C10)までの第2の直流抵抗よりも大きくなる。ここでいう直流抵抗とは、コイル電極の先端から後端までの単純な直流抵抗ではなく、接続部の位置を考慮した実質的な直流抵抗である。
【0044】
ここで、コイル電極8aと外部電極12aとの接続箇所及びコイル電極8fと外部電極12bとの接続箇所とは、引き出し部10a,10bが積層体2から線状に露出する部分である。更に、第1の直流抵抗とは、抵抗測定器の一方の端子を引き出し部10aが積層体2から線状に露出する部分全体に接続し、抵抗測定器の他方の端子をコンタクト部C1に接続して得られる直流抵抗である。同様に、第2の直流抵抗とは、抵抗測定器の一方の端子を引き出し部10bが積層体2から線状に露出する部分全体に接続し、抵抗測定器の他方の端子をコンタクト部C10,C11,C12(図2では、コンタクト部C10)に接続して得られる直流抵抗である。
【0045】
(積層型電子部品の製造方法について)
以下に図2を参照しながら積層型電子部品1の製造方法について説明する。以下に説明する製造方法では、シート積層法により1つの積層型電子部品1を作製するものとする。
【0046】
まず、磁性体層4,6となるべきセラミックグリーンシートは、以下のようにして作製される。酸化第二鉄(Fe23)を48.0mol%、酸化亜鉛(ZnO)を25.0mol%、酸化ニッケル(NiO)を18.0mol%、酸化銅(CuO)を9.0mol%の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を750℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕し、フェライトセラミック粉末を得る。
【0047】
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可塑剤、湿潤材、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、シート状に形成して乾燥させ、所望の膜厚(例えば、35μm)のセラミックグリーンシートを作製する。
【0048】
磁性体層4a〜4eとなるべきセラミックグリーンシートには、ビアホール導体Bが形成される。具体的には、セラミックグリーンシートにレーザビームを用いて貫通孔を形成する。ここで、レーザビームは、減衰しながらセラミックグリーンシート内を通過する。そのため、貫通孔は、レーザビームが照射された側の開口部の面積が大きく、反対側の開口部の面積が小さいテーパ形状を有する。次に、この貫通孔にAg,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性ペーストを印刷塗布などの方法により充填する。これにより、図3に示すような、積層方向から垂直な方向から見たときに、一方の端部t1の面積が他方の端部t2の面積よりも大きい形状を有したビアホール導体Bが形成される。
【0049】
次に、磁性体層4a〜4fとなるべきセラミックグリーンシート上には、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などを主成分とする導電性ペーストがスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布されることにより、コイル電極8a〜8fが形成される。具体的には、以下の通りである。
【0050】
磁性体層4aとなるべきセラミックグリーンシートにおいて、ビアホール導体B1の端部t1側の主面に、コンタクト部C1とビアホール導体B1とが重なるようにコイル電極8aを形成する。磁性体層4b〜4eとなるべきセラミックグリーンシートにおいて、ビアホール導体Bの端部t1側の主面に、コンタクト部Cとビアホール導体Bとが重なるようにコイル電極8b〜8eを形成する。更に、ビアホール導体Bが形成されていない磁性体層4fとなるべきセラミックグリーンシートにおいて、コイル電極8fを形成する。なお、コイル電極8及びビアホール導体Bは、同時にセラミックグリーンシートに形成されてもよい。
【0051】
次に、各セラミックグリーンシートを積層して、未焼成の積層体2を形成する。具体的には、磁性体層6dとなるべきセラミックグリーンシートを配置する。次に、磁性体層6dとなるべきセラミックグリーンシート上に、磁性体層6cとなるべきセラミックグリーンシートの配置及び仮圧着を行う。この後、磁性体層4a〜4f,6a,6bとなるべきセラミックグリーンシートについても同様の手順により仮圧着を行う。これにより、未焼成の積層体2が形成される。この未焼成の積層体2には、静水圧プレスなどにより本圧着が施される。以上、積層体2の製造方法を図2に基づいて説明したが、実際には、多数個取りが可能なように、セラミックグリーンシートとしてマザーグリーンシートが用いられ、本圧着後に個別に分割するためにカット工程が行われる。
【0052】
次に、積層体2には、脱バインダー処理及び焼成がなされる。焼成温度は、例えば、900℃である。これにより、焼成された積層体2が得られる。積層体2の表面には、例えば、浸漬法等の方法により主成分が銀である電極ペーストが塗布及び焼き付けされることにより、外部電極12a,12bが形成される。外部電極12a,12bは、図1に示すように、積層体2の左右の端面に形成される。コイルLの引き出し部10a,10bはそれぞれ、外部電極12a,12bに電気的に接続されている。
【0053】
最後に、外部電極12a,12bの表面に、Niめっき/Snめっきを施す。以上の工程を経て、図1に示すような積層型電子部品1が完成する。
【0054】
(効果)
以上のように、積層型電子部品1によれば、以下に説明するように、ビアホール導体Bとコイル電極8との間の断線を防止できる。具体的には、図9及び図10に示す従来の積層型電子部品100では、コイル電極108fに対して、ビアホール導体B5の面積が小さい方の端部が接続されていた。コイル電極108fは、コイル電極108aよりも長く形成されているので、コイル電極108aよりも大きな直流抵抗を有し、コイルに電流を流した際に、強く発熱する。このように強く発熱するコイル電極108fに対して、ビアホール導体B5の面積が小さい方の端部が接続されると、ビアホール導体B5とコイル電極108fとの接続部分において特に集中的に発熱する。その結果、ビアホール導体B5とコイル電極108fとの接続部分において断線が発生してしまう。
【0055】
そこで、積層型電子部品1では、図2及び図3に示すように、コイル電極8a,8fの内、外部電極12との接続箇所からビアホール導体Bまでの直流抵抗が大きい方のコイル電極8aには、ビアホール導体B1の端部t1が接続されている。この端部t1は、端部t2よりも大きな面積を有する。そのため、積層型電子部品1では、積層型電子部品100に比べて、コイル電極8aとビアホール導体B1との接続部分において集中的に発熱することが抑制される。その結果、コイル電極8aとビアホール電極B1との境界部分において断線が発生することが抑制される。
【0056】
本願発明者は、前記効果をより明確なものとするために、以下に示す静電気放電試験を行って、断線発生率を評価した。図4及び図5は、試験に用いた積層型電子部品のコイル電極を示した図である。試験には、第1の試作品及び第2の試作品を用いた。第1の試作品は、従来の積層型電子部品100に相当する。具体的には、第1の外部電極に接続されるコイル電極108aとして、図4に示すコイル電極108aを用いた。このコイル電極108aは、ビアホール導体B1とGにおいて接続されている。すなわち、直流抵抗は、最上層のコイル電極108aより最下層のコイル電極108fの方が大きい。また、第2の試作品は、本実施形態に係る積層型電子部品1に相当する。具体的には、第2の外部電極に接続されるコイル電極8fとして、図5に示すコイル電極8fを用いた。このコイル電極8fは、ビアホール導体B5とHにおいて接続されている。すなわち、直流抵抗は、最上層のコイル電極8aの方が最下層のコイル電極8fより大きい。第1の試作品及び第2の試作品の詳細について以下に列挙する。
【0057】
サイズ:2.50mm×2.00mm×1.00mm
磁性体層の材質:Ni−Cu−Zn系フェライト
外部電極の材質:銀電極上にNi−Snめっき
コイル電極の材質:銀
コイル電極の長さ:7/8ターン
コイルのターン数:12.5ターン
製造方法:シート積層法
【0058】
第1の試作品及び第2の試作品をそれぞれ多数個作製し、このうち、Rdc≧平均+3σの条件(ただし、平均とは多数個のRdcの平均値である)に合致するものをそれぞれ100個抽出し、この100個ずつの第1の試作品及び第2の試作品に対して、正負方向に30回ずつ0.1秒間隔で、30kVの電圧を印加した。これにより得られた結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
以上のように、第1の試作品では、一部のものに断線が発生したが、第2の試作品では、全く断線が発生しなかった。従って、本実施形態に係る積層型電子部品1では、断線の発生を抑制できていることが理解できる。
【0061】
また、本実施形態に係る積層型電子部品1によれば、以下に説明するように、ビアホール導体Bの形成不良の発生を抑制できる。図6は、従来の積層型電子部品100のコイル電極108aのその他の例を示した図である。
【0062】
図10に示す従来の積層型電子部品100では、コイルのターン数を変更するためにコイル電極108の数を変更するにあたって、図6(a)、図6(b)又は図6(c)に示すコイル電極108aのいずれかを用いるとよい。図6(a)及び図6(b)に示すコイル電極108aでは、その途中にビアホール導体B1が形成されている。これは、コイル電極108aの直下にコイル電極108cやコイル電極108dが位置した場合であっても、コイル電極108aとコイル電極108cやコイル電極108dとを接続可能とするためである。
【0063】
ところが、図6(a)及び図6(b)に示すようなコイル導体の途中にビアホール導体B1が形成されたコイル導体108aでは、ビアホール導体B1の形成不良が発生してしまう可能性がある。具体的には、図6(a)及び図6(b)に示すコイル導体108aでは、ビアホール導体B1がコイル導体の途中に形成されているので、ビアホール導体B1から2方向にコイル電極108aの配線が延びている。そのため、スクリーン印刷法によりコイル導体108aを形成した場合には、導電性ペーストがコイル電極108aの配線の形成に使用されてしまい、ビアホール導体B1に十分な導電性ペーストが供給されない。その結果、図6(a)及び図6(b)に示すコイル導体108aでは、ビアホール導体B1の形成不良が発生するおそれがある。
【0064】
これに対して、本実施形態に係る積層型電子部品1では、コイル電極108aに対応するコイル電極8fにはビアホール導体Bが形成されない。そのため、積層型電子部品1では、全てのビアホール導体Bは、コイル電極8の端部に形成されている。従って、積層型電子部品1では、ビアホール導体Bの形成不良の問題が発生しにくい。
【0065】
本願発明者は、前記効果をより明確なものとするために、以下に示す実験を行って、ビアホール導体の形成不良率を評価した。図7は、実験に用いたセラミックグリーンシートを示した図である。実験では、3種類のセラミックグリーンシートに対して、導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布して、コイル電極を形成し、ビアホール導体の形成不良率を調べた。3種類のセラミックグリーンシートとして、図7(a)に示すように、コイル電極の端部であるXの位置に貫通孔を有するセラミックグリーンシート、図7(b)に示すように、コイル電極の途中であるYの位置に貫通孔を有するセラミックグリーンシート、及び、図7(c)に示すように、コイル電極の途中であるZの位置に貫通孔を有するセラミックグリーンシートを用いた。
【0066】
実験では、Xの位置に貫通孔を有する90mm×90mmのセラミックグリーンシートに、945個のコイル電極をスクリーン印刷により形成した。また、Yの位置に貫通孔を有する90mm×90mmのセラミックグリーンシートに、945個のコイル電極をスクリーン印刷により形成した。また、Zの位置に貫通孔を有する90mm×90mmのセラミックグリーンシートに、945個のコイル電極をスクリーン印刷により形成した。そして、945個のコイル電極中に1つでもビアホール導体の形成不良が発生した場合には、そのセラミックグリーンシートにビアホール導体の形成不良が発生したものとみなした。このような作業を、3種類のセラミックグリーンシートのそれぞれに対して200枚ずつ実行した。表2に実験結果を示す。
【0067】
【表2】

【0068】
表2に示すように、図7(a)に示す、コイル電極の端部に貫通孔が形成されたセラミックグリーンシートでは、ビアホール導体の形成不良率は、0%であった。一方、図7(b)及び図7(c)に示す、コイル電極の途中に貫通孔が形成されたセラミックグリーンシートでは、ビアホール導体の形成不良率は、14%〜25%となった。従って、ビアホール導体がコイル電極の途中に設けられた場合よりも、ビアホール導体がコイル電極の端部に設けられた場合の方が、ビアホール導体の形成不良率を低減できることが理解できる。すなわち、積層型電子部品1では、ビアホール導体Bがコイル電極8の端部にしか形成されていないので、ビアホール導体Bの形成不良が発生しにくいことが理解できる。
【0069】
また、積層型電子部品1によれば、少ない種類の磁性体層4(=コイル電極108が形成された磁性体層4)により、多種のターン数を有するコイルLを内蔵した積層型電子部品を得ることができる。以下に詳しく説明する。
【0070】
図10に示す従来の積層型電子部品100では、複数個所のコンタクト部を有するコイル電極108aとビアホール導体B1とが一体的に磁性体層104aに形成されている。そのため、コイルのターン数を変更するためにコイル電極108の数を変更した場合には、コイル電極108aの直下に位置するコイル電極108のコンタクト部の位置も変わってしまう。そこで、積層型電子部品100では、図6に示すように、ビアホール導体B1の位置が異なる複数パターンのコイル電極108aを予め準備しておく必要がある。そのため、従来の積層型電子部品100では、多種類のコイル電極108を管理する必要があった。具体的には、積層型電子部品100では、3種類のコイル電極108a、コイル電極108b〜コイル電極108e及びコイル電極108fの計8種類のコイル電極108を管理する必要があった。
【0071】
一方、積層型電子部品1では、複数個所のコンタクト部C10,C11,C12を有するコイル電極8fには、ビアホール導体Bが形成されていない。そのため、コイルLのターン数を変更するためには、コイル電極8aとコイル電極8fとの間に、コイル電極8b〜8eを挿入するだけでよい。すなわち、ビアホール導体Bの位置を設計変更することなく、コイル電極8fと該コイル電極8fの直上に位置するコイル電極8とを接続することができる。以上より、コイル電極8fは、1種類だけあれば足りる。従って、積層型電子部品1では、コイル電極8a〜8fの計6種類のコイル電極8を管理すれば足りる。その結果、積層型電子部品1によれば、少ない種類のコイル電極8により、多種のターン数を有するコイルLを内蔵した積層型電子部品を得ることができる。
【0072】
(その他の実施形態)
なお、本発明に係る積層型電子部品は前記各実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で変更することができる。例えば、図2では、コンタクト部Cは、コイル電極8の他の部分よりも太く形成されているが、コンタクト部Cは、必ずしも太く形成される必要はない。例えば、図8に示すコイル電極8fの変形例に示すように、十分にコイル電極8fの線幅が太い場合には、コンタクト部Cは、コイル電極8cの他の部分よりも太く形成されなくてもよい。
【0073】
ここで、図8のコイル電極8fが用いられた場合について説明する。図8のコイル電極8fは、図2のコイル電極8fと異なり、明確なコンタクト部Cを有さない。そのため、コイル電極8fが複数個所においてビアホール導体B5と接続可能に構成されていることは、コイル電極8f単体を見ただけでは判別が困難である。
【0074】
しかしながら、コイル電極8fの引き出し部10b(外部電極12bとの接続箇所)及び引き出し部10bとは反対側の端部以外の部分(例えば、図8の点M,N)にビアホール導体B5が接続されている場合には、ビアホール導体B5が接続された点から引き出し部10bが形成されていない方の端部までの間において、ビアホール導体B5が接続可能であると言える。そこで、コイル電極8fの引き出し部10bが形成されていない方の端部を余してビアホール導体B5がコイル電極8fに接続されている場合には、コイル電極8fが複数個所においてビアホール導体B5と接続可能に構成されていると判断する。
【0075】
なお、積層型電子部品1では、3/4ターンのコイル電極8が用いられているが、例えば、5/6ターンのコイル電極8や7/8ターンのコイル電極8が用いられてもよい。
【0076】
なお、積層型電子部品1の製造方法では、シート積層法によって積層型電子部品1を作製したが、該積層型電子部品1の製造方法はこれに限らない。例えば、積層型電子部品1は、印刷法により作製されてもよい。
【0077】
なお、積層型電子部品1では、図2に示すように、コイル電極8aをコイル電極8fよりも長く形成することにより、コイル電極8aと外部電極12aとの接続箇所からビアホール導体B1までの第1の直流抵抗を、コイル電極8fと外部電極12bとの接続箇所からビアホール導体B5までの第2の直流抵抗よりも大きくしている。しかしながら、第1の直流抵抗を第2の直流抵抗よりも大きくする方法はこれに限らない。例えば、コイル電極8aとコイル電極8fの線幅や厚さを調整することによって実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、積層型電子部品及びその製造方法に有用であり、特に、ビアホール導体とコイル電極との間の断線を防止できる点において優れている。
【符号の説明】
【0079】
B,B1,B2,B3,B4,B5 ビアホール導体
C,C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8,C9,C10,C11,C12 コンタクト部
L コイル
t1,t2 端部
1 積層型電子部品
2 積層体
4,4a,4b,4c,4d,4e,4f,6,6a,6b,6c,6d 磁性体層
8,8a,8b,8c,8d,8e,8f コイル電極
10a,10b 引き出し部
12a,12b 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを構成している複数のコイル電極と、
前記複数のコイル電極と共に積層されて積層体を構成している複数の絶縁層と、
前記複数のコイル電極を接続し、かつ、一方の端部の面積が他方の端部の面積よりも大きい形状を有している接続部と、
前記積層体の表面に形成され、かつ、前記コイルに接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、
を備え、
前記第1の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の前記一方の端部に接続され、
前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の前記他方の端部に接続され、
前記第1の外部電極に接続されたコイル電極における該第1の外部電極との接続箇所から前記接続部までの直流抵抗は、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極における該第2の外部電極との接続箇所から前記接続部までの直流抵抗よりも大きいこと、
を特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、複数個所において前記接続部と接続可能に構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部と接続可能な部分が、他の部分よりも太い形状を有すること、
を特徴とする請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記接続部は、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極の該第2の外部電極との接続箇所以外の部分であって、かつ、該接続箇所とは反対側の端部以外の部分に接続されていること、
を特徴とする請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1の外部電極に接続されたコイル電極及び前記接続部は、前記絶縁層において一体的に形成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第2の外部電極に接続されたコイル電極が形成された前記絶縁層には、前記接続部が形成されていないこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の前記他方の端部に接続されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項8】
コイルを内蔵すると共に、第1の外部電極及び第2の外部電極が表面に形成された積層体からなる積層型電子部品の製造方法において、
一方の端部の面積が他方の端部の面積よりも大きい形状を有する接続部を、絶縁層に形成する工程と、
前記第1の外部電極に接続される第1のコイル電極が前記接続部の前記一方の端部に接続されるように、該第1のコイル電極を前記絶縁層に形成する工程と、
前記第2の外部電極に接続される第2のコイル電極を絶縁層に形成する工程と、
前記第1のコイル電極における該第1の外部電極との接続箇所から前記接続部までの直流抵抗が、前記第2のコイル電極における該第2の外部電極との接続箇所から前記接続部までの直流抵抗よりも大きくなるように、該第1のコイル電極が形成された絶縁層及び該第2のコイル電極が形成された絶縁層を積層して、前記積層体を形成する工程と、
を備えること、
を特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記第2のコイル電極を形成する工程では、前記接続部が形成されていない前記絶縁層に対して、該第2のコイル電極を形成すること、
を特徴とする請求項8に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記第2のコイル電極を形成する工程では、複数個所において前記接続部と接続可能な形状に該第2のコイル電極を形成すること、
を特徴とする請求項8又は請求項9のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記第2のコイル電極を形成する工程では、前記接続部と接続可能な部分が、他の部分よりも太くなるように該第2のコイル電極を形成すること、
を特徴とする請求項10に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記積層体を形成する工程では、前記接続部が、前記第2の外部電極に接続された前記コイル電極の該第2の外部電極との接続箇所以外の部分であって、かつ、該接続箇所とは反対側の端部以外の部分に接続されるように、前記絶縁層を積層すること、
を特徴とする請求項10に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項13】
コイルを構成している複数のコイル電極と、
前記複数のコイル電極と共に積層されて積層体を構成している複数の絶縁層と、
前記複数のコイル電極をそれぞれ接続し、かつ、一方の端部の面積が他方の端部の面積よりも大きい形状を有している複数の接続部と、
前記積層体の表面に形成され、かつ、前記コイルに接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、
を備え、
前記第1の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の面積が大きい方の端部に接続され、
前記第2の外部電極に接続されたコイル電極は、前記接続部の面積が小さい方の端部に接続され、
前記第1の外部電極に接続されたコイル電極の直流抵抗は、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極の直流抵抗よりも大きいこと、
を特徴とする積層型電子部品。
【請求項14】
前記第1の外部電極に接続されたコイル電極の直流抵抗は、該第1の外部電極と該コイル電極との接続箇所から前記接続部までの電極長さにより定められ、前記第2の外部電極に接続されたコイル電極の直流抵抗は、該第2の外部電極と該コイル電極との接続箇所から前記接続部までの電極長さにより定められること、
を特徴とする請求項13に記載の積層型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−260266(P2009−260266A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23207(P2009−23207)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】