説明

積層型電子部品

【課題】 一層のストレス緩和を達成して外部電極の損傷をより確実に回避できる積層型電子部品を提供する。
【解決手段】 略直方体形状のセラミック積層体(11)の両端に形成された外部電極(13)を有する積層型電子部品(10)において、前記外部電極は、最内層の下地電極(14)と、最外層のメッキ電極(16、17)と、を有すると共に、前記セラミック積層体の端面に略並行する、前記最外層メッキ電極の表面(13a)に突起部(18)を形成し、前記突起部は、前記最外層メッキ電極の表面の略中央部分に位置する交差中央部(18a)と、該交差中央部から前記最外層メッキ電極の表面の各コーナに指向して延長された4本の延長端部(18b〜18e)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサなどの積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a)は、従来技術(たとえば、下記の特許文献1参照。)における積層型電子部品の断面図である。この図において、積層型電子部品1は、ここでは、セラミック積層体2の両端(図では左端のみ示す。)に外部電極3を有する積層コンデンサを例にする。また、ここでは、4層構造の外部電極3、具体的には、セラミック積層体2の端面にCu等からなる下地電極層4を形成すると共に、その上に導電性樹脂からなるバッファ層5を形成し、さらに、その上にハンダ食われ防止のための第一のメッキ層6と良好なハンダ付け性を得るための第二のメッキ層7とを形成したものを例とするが、これに限定されない。バッファ層を有さない3層構造のものであってもよい。
【0003】
下地電極層4の上に形成されたバッファ層5は、図示のとおり、中央部が盛り上がった凸形状をなしている。そして、この従来技術にあっては、かかる凸形状を有するバッファ層5の存在により、基板等の撓みに起因する外部電極3へのストレス緩和を図ることができるとしている。なお、図示のバッファ層5は、略楕円状の断面になっているが、これは図示の都合である。実際には、略中央部の厚みが増した凸形状となっている。
【0004】
図5(b)は、外部電極3のストレス緩和の概念図である。この図において、積層型電子部品1の外部電極3は、基板8にハンダ9で固定されている。この基板8に、破線で示すような撓みが生じた場合、積層型電子部品1と基板8との接合部分に機械的なストレスが加わり、外部電極3にクラック等の損傷を生じさせることがあったが、上記のように、外部電極3に凸形状を有するバッファ層5を存在させておくことにより、このバッファ層5の変形によって機械的ストレスを緩和し、致命的なショートモードを回避できるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−197460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術は、バッファ層5の略中央部の厚みを増して凸状部とし、この凸状部によって、基板等の撓みに伴う機械的ストレスを緩和するとしているが、凸状部が局所的(バッファ層5の略中央部のみ)にしか存在しないため、大きなストレスに対しては、それを効果的に緩和することができず、依然として、外部電極3にクラック等の損傷を生じさせる可能性を否定できないという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、一層のストレス緩和を達成して外部電極の損傷をより確実に回避できる積層型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、略直方体形状のセラミック積層体の両端に形成された外部電極を有する積層型電子部品において、前記外部電極は、最内層の下地電極と、最外層のメッキ電極と、を有すると共に、前記セラミック積層体の端面に略並行する、前記最外層メッキ電極の表面に突起部を有し、前記突起部は、前記最外層メッキ電極の表面の略中央部分に位置する交差中央部と、該交差中央部から前記最外層メッキ電極の表面の各コーナに指向して延長された4本の延長端部と、を含むことを特徴とする積層型電子部品である。
請求項2記載の発明は、前記突起部の交差中央部付近が最も高く、前記4本の延長端部の先端に行くにつれてその高さが減少することを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品である。
請求項3記載の発明は、前記突起部の少なくとも前記交差中央部付近の高さが略5〜30ミクロンであることを特徴とする請求項1又は2いずれかに記載の積層型電子部品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一層のストレス緩和を達成して外部電極の損傷をより確実に回避できる積層型電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、積層型電子部品の一例として積層コンデンサへの適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る積層コンデンサ10の構造図である。この図において、積層コンデンサ10は、誘電体セラミック11aを積層した略直方体形状のセラミック積層体11と、このセラミック積層体11の内部に実装され、該内部の誘電体セラミック11aを介して対向するとともに、セラミック積層体11の両端面に交互に引き出された複数の内部電極12と、セラミック積層体11の両端面に形成された外部電極13とを有する。
【0012】
外部電極13は、セラミック積層体11の端面から順に配置された第一層〜第4層の多層構造を有しており、第一層はセラミック積層体11の内部電極12と電気的に接続する下地電極14、第二層はバッファ層15、第3層は第一のメッキ層16、第4層は第二のメッキ層17を構成する。
【0013】
ここで、各層の材料を例示すると、第一層の下地電極14は電気的良導電性を有する材料(Cu等)からなり、第二層のバッファ層15は柔軟性があり且つ電気的導電性を有する材料(たとえば、Ag、Ag−Pd、Cu、カーボンフィラーなどの導電性金属粉末を含有するエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂又はフェノール樹脂、それらの少なくとも2つ以上が混ぜ合わさったものなどの熱硬化性樹脂若しくは光硬化性樹脂)からなる。また、第一のメッキ層16はハンダ食われが起きにくいNiなどの材料からなり、第二のメッキ層17は良好なハンダ付け性を有する材料、たとえば、Sn、Sn−Pd合金などからなる。
【0014】
図2は、外部電極13の正面図及び斜視外観図である。この図に示すように、本実施形態に係る積層コンデンサ10は、その外部電極13の表面13aにクロス状突起部18を有していることがポイントである。
【0015】
詳細には、クロス状突起部18は、外部電極3の略矩形状の表面13aのほぼ中央部付近で交差すると共に、その交差中央部18aから放射方向に延長された4本の延長端部18b〜18dのそれぞれを表面13aの各コーナ方向に指向させて形成されている。したがって、クロス状突起部18は十文字状になる。なお、この交差中央部18aの“十文字”は、単に漢数字の十に似ていることから、便宜的にそのように表現しているに過ぎない。中央部付近で交差する他の形状表現、たとえば、X文字状部などの表現であってもよい。
【0016】
このクロス状突起部18は、外部電極3を形成する際に、たとえば、所定の金型もしくは型枠を使用して形成する。これらの金型もしくは型枠は、クロス状突起部18は十文字状になるようなフェース面の型を形成しておいて製造する。あるいは、このクロス状突起部18は、ゴム等の弾性体に十文字状の凹部彫り込みを入れた印章を用いて捺印のように形成してもよい。この場合、クロス状突起部18は、十文字状の痕跡が残る程度のものであってもよい。
【0017】
クロス状突起部18は、外部電極3の最外層(第4層)を図示のように盛り上げて形成したものであってもよく、あるいは、内部層(第一層〜第3層のいずれか一層又は複数層)を盛り上げて形成したものであってもよい。
【0018】
このように、外部電極13の表面13aにクロス状突起部18を有するようにすれば、クロス状突起部18の構造に依り、従来技術に比べてより一層のストレス緩和の効果を得ることができ、その結果、基板の撓みに起因する外部電極3の損傷を確実に回避することができる。
【0019】
加えて、本実施形態によれば、クロス状突起部18の存在によって、外部電極13の表面13aの実質的面積が増えるので、それだけ外部電極13のハンダ付け面積を増大して強固なハンダ付けを可能にし、実装不良の低減化を図ることができる。
【0020】
なお、以上の説明では、外部電極13の表面13aにクロス状突起部18を有することをポイントとしたが、このポイントには、以下の変形例も含まれる。
【0021】
図3は、外部電極3の二つの例の側面図である。(a)は第一の例であり、(b)は第二の例である。第一の例では、クロス状突起部18の交差中央部18aと4本の延長端部18b〜18eの高さHaが略一定になっているが、これに限らず、第二の例のように、交差中央部18aから4本の延長端部18b〜18eの先端に行くにつれて高さが減少する(Hb→Hc)ようにしてもよい。高さHa及びHbは5〜30ミクロンが望ましい。
【0022】
図4は、外部電極3の他の例(第三の例)の外観図である。この図において、外部電極13の表面13aに形成されたクロス状突起部18は、表面13aの中央部分に位置する交差中央部18aと、その交差中央部18aから表面13aの各コーナに向けて延在する4本の延長端部18b〜18eとが分離している点で、前記の実施形態の各例と相違する。また、前記の第二の例と同様に、4本の延長端部18b〜18eの先端にかけて高さが減少するようになっていてもよい。
【0023】
このような三つの例においても、前記形状と同様に、従来技術に比べてより一層のストレス緩和の効果を得ることができ、基板の撓みに起因する外部電極3の損傷を確実に回避することができるという効果が得られる。
【0024】
なお、以上の説明では、積層コンデンサへの適用を例にしたが、これに限定されないことはもちろんである。要は、本発明を適用できる積層型電子部品であればよく、たとえば、積層インダクタ、サーミスタ、LCノイズフィルタなどに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る積層コンデンサ10の構造図である。
【図2】外部電極13の正面図及び斜視外観図である。
【図3】外部電極3の二つの例の側面図である。
【図4】外部電極3の他の例(第三の例)の外観図である。
【図5】従来技術における積層型電子部品の断面図及び外部電極3へのストレス緩和の概念図である。
【符号の説明】
【0026】
10 積層コンデンサ(積層型電子部品)
11 セラミック積層体
13 外部電極
13a 表面
14 下地電極
16 メッキ電極(第一のメッキ層)
17 メッキ電極(第二のメッキ層)
18 クロス状突起部(突起部)
18a 交差中央部
18b〜18e 延長端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状のセラミック積層体の両端に形成された外部電極を有する積層型電子部品において、
前記外部電極は、最内層の下地電極と、最外層のメッキ電極と、を有すると共に、
前記セラミック積層体の端面に略並行する、前記最外層メッキ電極の表面に突起部を有し、
前記突起部は、前記最外層メッキ電極の表面の略中央部分に位置する交差中央部と、該交差中央部から前記最外層メッキ電極の表面の各コーナに指向して延長された4本の延長端部と、を含むことを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記突起部の交差中央部付近が最も高く、前記4本の延長端部の先端に行くにつれてその高さが減少することを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記突起部の少なくとも前記交差中央部付近の高さが略5〜30ミクロンであることを特徴とする請求項1又は2いずれかに記載の積層型電子部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−50332(P2010−50332A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214025(P2008−214025)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】