説明

積層方法及び積層プレス

【課題】分離シートを用いた積層プレスにおいて、積層さるべき加工物にかかる機械的負荷に関する問題を解決することである。
【解決手段】プレスチャンバ1を開閉するために相対運動する上側ハーフチャンバ2及び下側ハーフチャンバ3と、上側ハーフチャンバ体2に取り付けられプレスチャンバ1を気密分割する膜体9と、加熱手段6とからなる積層プレスを用いる。開放された前記プレスチャンバ1内に加工物8を搬入し、膜体9に対して押し付けるように加工物8に覆い被さる分離シート10をプレスチャンバ1内に導入する。プレスチャンバ1が最終段階まで閉じられる前に分離シート10の張力を緩める張力解放を行う。次いで、プレスチャンバ1を最終段階まで閉じ、膜体9の下側に位置しているプレスチャンバの内部空間を排気して、加工物を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの熱活性接着剤層を含んだ加工物を熱圧作用下で積層するための積層方法、およびこの方法を実施するための積層プレスに関する。
【背景技術】
【0002】
したがって、上記タイプの方法に使用される上記タイプの積層プレスは、気密閉鎖可能なプレスチャンバを開閉するために相対運動する上側ハーフチャンバ体および下側ハーフチャンバ体と、前記上側ハーフチャンバ体と前記下側ハーフチャンバ体との間に配置された一部材構成または多部材構成の周回シールと、前記上側ハーフチャンバ体に直接的にまたは間接的に取り付けられるとともに前記プレスチャンバを気密分割する膜体とを有する。上側ハーフチャンバ体に上記膜体が配置されているため、プレスチャンバが閉じられると、このプレスチャンバは、下側ハーフチャンバ体と前記膜体との間に位置する製品側空間と、前記の膜体と上側ハーフチャンバ体との間に位置する加圧側空間とに分割される。膜体の下側に位置する製品側空間は排気可能である。
【0003】
ここで、本発明では、必ずしも上記膜体が弾性材料であることに限定されていない。膜体が使用される必要はないことに留意されたい。上記の膜体用には、むしろ、非弾性材料つまり非張弾性ダイヤフラム材料ないし非高張力ダイヤフラム材料の使用も可能である。重要なのは、膜体がプレスチャンバを気密分割することである。
【0004】
さらに、積層プレスは加工物に熱を付与する加熱手段を備えている。加工物の積層に必要な加工熱を加工物に付与するため、積層プレスは、加工物に熱を付与する加熱手段を含んでおり、該手段は、通例、下側ハーフチャンバ体および/または上側ハーフチャンバ体の一部を形成する加熱盤からなっている。
【0005】
加工物または、ほとんどの場合、同時に複数の加工物(ただし、理解しやすさを優先させて以下では加工物と単数扱いの表現とする)を積層するため、加工物はプレスチャンバの製品側空間内に導入され、プレスチャンバが閉じられる。この時点では、加工物の加熱は、極力抑えられなければならない。なぜなら、加工物に含まれた接着剤層または複数の接着剤層(ここでも、理解しやすさを優先させ、単に接着剤層と表現する)の溶融温度ないしは軟化温度ないしそれ以上への加工物の加熱は、万一空気が混入したりあるいは万一加熱時にガスが形成されたりした場合に、それらを接着剤層の接着剤が硬化ないし架橋を開始する前に除去するため、真空下で行われなければならないからである。こうした空気混入またはガス形成は、積層済みの加工物に不密性を生み出すことがあり、そのために、防止されなければならない。
【0006】
上記の周辺条件を満たすために、通例、プレスチャンバの加圧側空間が排気されて、膜体は、上側ハーフチャンバ体方向に向かって上方に引っ張り上げられる。その後、一般にある程度時間をずらして、いうまでもなくプレスチャンバの閉後に、製品側空間も排気されるが、その際、プレスチャンバの双方の空間の排気は、加圧側空間と製品側空間との間に常に圧力差が存続し、膜体が上側ハーフチャンバ側に保持されて、膜体と加工物との早期の接触が阻止されるように制御される。
【0007】
プレスチャンバの製品側空間が、通例1mbar以下である目標圧力に達するまで排気された後、加圧側空間には、加圧側空間と製品側空間との間の圧力差が逆転して、膜体が加工物に接するようになるまで、給気が行われる。膜体の圧接力は、圧力チャンバ内の圧力の制御によって調節される。この場合、膜体によって加工物に及ぼされる圧力は、加工物への加工熱の付与と一体になって、接着剤層の溶融化つまり活性化と、場合によっては、接着剤層の硬化とに寄与する。
【0008】
本発明の好ましい適用分野は、ソーラ電池層がその電気的接触手段ともども防湿シールされると共に耐候被覆され、なお、透光性を確保してカプセル被覆される太陽電池モジュールの積層である。
【0009】
同様な積層プレスは、特許文献1から公知である。この積層プレスでは、さらに、加工物を膜体に対して上方向に覆い被さる分離シートが使用されており、その際、分離シートは、開放されたプレスチャンバ内に、加工物と共にもたらされることができる。この分離シートの役割は、太陽電池モジュールに通例使用される非常に強力な粘着性を有する接着剤が上記の膜体と接触して、この膜体を汚損し、その結果、優れた加工結果の達成を目的とした上記の膜体の使用が制限されあるいは使用不能とさえされることを防止することである。
【0010】
この種の分離シートは、プレスチャンバが閉じられる際に、上側ハーフチャンバ体と下側ハーフチャンバとの間に挟み付けされる。ただし、上側ハーフチャンバ体と下側ハーフチャンバとの間の分離線は、ほとんどの場合に、正確に加工物の上側境界面の高さにはなく、むしろそれより下に位置していることから、分離シートは、上側ハーフチャンバ体と下側ハーフチャンバとの間に挟み付けされた箇所から出発し、加工物を経て、方向転換される結果、分離シートに縦引張り応力が生ずる。これにより、分離シートの方向転換を生ずる加工物の辺縁に高い荷重がもたらされる。
【0011】
この作用は、プレスチャンバが閉じられた後に加工物が持ち上げられる場合には、さらに何倍かに増強される。このような持ち上げは、上記タイプの積層プレスにおいて一般的に行われる。なぜなら、一般に、加工に必要な加熱のための熱は、下側ハーフチャンバ体に組み込まれた加熱盤によってプレスチャンバ内部にもたらされるが、加工物は、上述したように、膜体下方の製品側空間が排気されるまでの間、極力加熱を抑制しなければならためである。したがって、プレスチャンバが閉じられている際、分離シートが挟み付けられている際の上記加工物の持ち上げは、加工物の辺縁にかかる荷重を大幅に増強することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2008−542071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、分離シートを用いた、加工物積層方法及び積層プレスを、積層さるべき加工物にかかる機械的負荷に関する、上述した問題点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明による積層方法では、気密閉鎖可能なプレスチャンバを開閉するために相対運動する上側ハーフチャンバ体および下側ハーフチャンバ体と、前記上側ハーフチャンバ体と前記下側ハーフチャンバ体との間に配置された一部材構成または多部材構成の周回シールと、前記上側ハーフチャンバ体に直接的にまたは間接的に取り付けられるとともに前記プレスチャンバを気密分割する膜体と、加工物に熱を付与する加熱手段とからなる積層プレスを用い、以下のステップを実行する;
開放された前記プレスチャンバ内に少なくとも1つの加工物を搬入するステップ、
前記膜体に対して押し付けるように上方向で前記加工物に覆い被さる分離シートを前記積層プレスの前記プレスチャンバ内に導入するステップと、
前記プレスチャンバが最終段階まで閉じられる前に前記分離シートの張力を緩める張力解放ステップ、
前記プレスチャンバを最終段階まで閉じるステップ、
少なくとも、前記加工物を取り囲むように前記膜体の下側に位置している前記プレスチャンバの内部空間を排気するステップ、
前記加工物に熱を付与するステップ。
【0015】
加工物辺縁にかかる荷重等の機械的負荷、例えば、プレスチャンバ内側周縁近傍に位置する加工物辺縁にかかる荷重は、複数の加工物がプレスチャンバ内で同時に積層される場合に、多数の瑕疵積層品の発生ならびに障害の原因となることが見出された。
【0016】
従来の技術による積層プレスの稼動に際しては、製品の品質低下または全面的な破棄処分さえももたらす製品欠陥が比較的頻繁に生ずる。太陽電池モジュールの場合、その原因はガラス破損であることが多く、結果として、モジュールの製品損失がもたらされるだけでなく、ガラス破片の清掃除去に必要とされる手間に起因する不要な生産中断が生ずる。さらに、ガラス破損は、例えば、膜体の損傷などのさらなる二次的損害リスクを起こす。
【0017】
また、たとえガラス破損が生じない場合でも、例えば、加工物の互いに積層さるべき個々の層が、接着剤層の溶融化時に、互いに位置ずれを生ずることにより、製品欠陥が生ずることがある。
【0018】
プレスチャンバの2つのハーフチャンバ体間に挟み付けされた分離シートが、加工物またはプレスチャンバ内側周縁近傍に位置する加工物上側辺縁を経て方向転換される場合(コーナー部に沿って湾曲していく場合)には、その箇所に曲げ荷重が生ずるのみならず、かなりのせん断荷重も生ずることになる。このことから、これらの曲げモーメントならびにせん断荷重が、上述した製品欠陥およびガラス破損の原因であることが見つけ出された。
【0019】
したがって、本発明によって提案される技術では、前記分離シートを前記プレスチャンバが完全に閉じられる前に張力解放することがその解決の重要な特徴構成である。さらに、前記プレスチャンバの製品側空間の排気が行われる間に加工物の持ち上げが行われる場合、加工物を前記プレスチャンバが気密閉鎖される前に持ち上げること、つまり、前記分離シートが前記2つのハーフチャンバ体の間にまだ挟み付けられていない間に加工物を持ち上げることが提案される。この方策によって、しわ形成の回避を目的として通例プレストレス(予めの張力付与)されている前記分離シートの張力を緩める張力解放がなされたのち、前記プレスチャンバが完全に閉じられて前記分離シートが挟み込みプレスされても、前記分離シートが延伸されることなく加工物の被覆が達成される。
【0020】
前記プレスチャンバ内で加工物が持ち上げられる場合には、前記分離シートは、加工物の持ち上げ前または持ち上げ時に張力解放されるのが好ましい。これによって、加工物上でのしわ形成が回避される。いずれにしても、前記分離シートは、前記プレスチャンバが最終段階まで閉じる直前に、張力解放されるのが好都合であり、つまり、前記プレスチャンバが、好ましくは最初にほぼ閉じられ、その際に、前記分離シートは、張力解放され、次いでその後に、前記プレスチャンバが、最終段階まで閉じるのが有利である。この措置によって、またも、前記分離シートが、しわ形成なしに加工物を被覆し、しかも、その後に前記プレスチャンバが完全に閉じられる際の閉ストロークは、ごく僅かでしかなく、したがって、前記分離シートの延伸も同じくごく僅かでしかないために、加工物への荷重の回避が保証されることになる。
【0021】
加工物は、前記プレスチャンバを通過して延びる、基本的に前記分離シートと同期して移動するコンベヤベルトによって前記プレスチャンバ内に搬入され、同所から再び搬出されるようにするのが好ましい。
【0022】
前記分離シートの張力解放は、分離シート案内機構、特に方向転換ローラとしての案内ローラまたは分離シート駆動手段のシートテンション調整方向への変位によって行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による積層プレスを概略的に示す側面模式図であり、(a)は実際の積層プレス過程において分離シートが張力解放された段階を示す図であり、(b)実際の積層プレス過程ではなく、単に分離シートが張力解放された状態を説明するための図である。
【図2】従来の技術による積層方法における方法初期段階の積層プレスの様子を示す側面模式図である。
【図3】従来の技術による積層方法における方法中間段階の積層プレスの様子を示す側面模式図である。
【図4】従来の技術による積層方法における方法最終段階の積層プレスの様子を示す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明に基づく積層プレスの一実施形態を記述するとともに、本発明によって認識された上述の問題を引き起こす従来技術での積層方法の段階を比較説明する。プロセスを説明する。図1は本発明による積層プレスを概略的に示す側面模式図であり、(a)は実際の積層プレス過程において分離シートが張力解放された段階を示す図であり、(b)実際の積層プレス過程ではなく、単に分離シートが張力解放された状態を説明するための図である。
【0025】
図1(a)に概略的な側面模式図によって示した積層プレス装置は、上側ハーフチャンバ体2と下側ハーフチャンバ体3とを有したプレスチャンバ1ならびに、上側ハーフチャンバ体2に取り付けられた、周回シール5を設けたシーリングフレーム4を備えている。上側ハーフチャンバ体2は、プレスチャンバを開閉可能とすべく、上下動することができる。下側ハーフチャンバ体3は、プレスチャンバ1内に加工に必要に熱を付与できるように、加熱盤6が配設されている。加工物8は、周回式コンベヤベルト7上に載置されて、プレスチャンバ1内に搬入され、再び、同所から搬出される。これらの加工物8は、本実施例の太陽電池モジュールにおいて、ガラス板と、接着剤層に埋め込まれたソーラ電池層と、裏面シートとからなっている。これらの層は、本装置において、熱圧作用下で互いに貼り合せされて、積層されなければならない。
【0026】
上側ハーフチャンバ体2には、柔軟な(弾性を有する)膜体9が張設されており、この膜体は、図1(a)で図示した方法段階において、膜体9の上側に位置する空間の排気によって上側ハーフチャンバ体2に引き付けられている。膜体9は、プレスチャンバ1を全面にわたって、気密式に分割している。この膜体9の保護を目的として、コンベヤベルト7に同期して、分離シート10が、加工物8と共にプレスチャンバ1内にもたらされ、同所から再び送出される。分離シート10は、加工物8と膜体9との間に配設されている。これにより、例えば、加工物8から接着剤が万一流れ出ることがある場合に、該接着剤から膜体9が保護される。ばね12は、プレスチャンバ1を通して分離シートが搬送される間に、分離シートにしわが形成されるのを防止すべく、分離シート10に張力を与えることで分離シート10を全面にわたって緊張させている。
【0027】
下側ハーフチャンバ体3には、持ち上げ装置11が支持されており、該持ち上げ装置によって、加工物8を持ち上げ、下側ハーフチャンバ体3内に嵌め込まれた加熱盤6から引き離すことができる。この持ち上げによって、加熱盤6の熱が早期に加工物8に伝達されることが防止される。
【0028】
以上に述べたところでは、図1(a)に示した、本発明によって構成された装置は、図2,3および4に示したタイプの、従来技術による装置と実質的には同じである。したがって、互いに一致する部材は、すべての図面において、同一の符号で表されている。以下、図2〜4を参照して、従来の技術による方法プロセスを説明することとする。
【0029】
図2に示した初期段階で実施される、開放されたプレスチャンバ1内への加工物8の装入は、持ち上げ装置11が降下されている場合に行われる。さもなければ、コンベヤベルト7は持ち上げ装置11越しに引っ張られなければならず、加工物8の前縁が持ち上げ装置11との衝突によって損傷を受ける可能性がある。
【0030】
図3が示しているように、従来の技術において、続いて、上側ハーフチャンバ体2が下側ハーフチャンバ体3上に降下させられることにより、プレスチャンバ1が閉じられる。この場合、プレスチャンバ1を気密閉鎖することが不可欠であるために、コンベヤベルト7ならびに分離シート10は、いずれも、上側ハーフチャンバ体2ないし同所に固定されているシーリングフレーム4と下側ハーフチャンバ体3との間で、シール5の箇所でしっかりと挟み付けられる。分離シート10は、しわが生じないように、ばね12によって緊張保持されているために、すでに前記挟み付けの瞬間に、コンベヤベルト7上に隆起して載置されている加工物8によって上方に引っ張られる。搬送方向で見て外側に位置している加工物辺縁は、これによって、分離シート10の引張り応力に由来する力の成分の作用を受けることになる。この引張り荷重は、搬送方向に沿って、外側から内側に向かい、外側に位置している加工物8の横辺縁に作用する。この場合、加工物8がプレスチャンバ1のシーリングフレーム4に近接していればいるほど、結果する力の成分はいっそう強く、かつ、激しい勾配で作用する。
【0031】
図4が示しているように、従来の技術において、プレスチャンバ1が閉じられた直後に、加工物8を持ち上げて加熱盤6から引き離すべく、持ち上げ装置11が作動させられる。この措置の目的は、加工物8に含まれている接着剤層の、早期の、望ましくない高い加熱を回避することである。通例、12〜15mmのリフトが実施される。
【0032】
加工物8の持ち上げに際して、上記のように挟み付けられている分離シート10はさらなる荷重をうける。外側に位置する加工物8とシーリングフレーム4との間の通例、約50〜80mmの端縁間隔にて、かなりの曲げモーメントが生じ、その結果として、高い曲げ荷重ならびにせん断荷重が加工物8に作用し、これによって、ガラスが破損することが十分に考えられる。この場合、ばね12は、気密密閉されたプレスチャンバのシール部に分離シート10がしっかりと挟み付けられているため、張力解放の機能を果たすことができない。
【0033】
図1(a)に再び戻り、本発明によって実現する従来の問題を解決するための本発明による技術を説明する。
図1に示すように、先ず、従来に較べ本発明の積層方法では工程順序が変更される。つまり、持ち上げ装置11による加熱盤6からの加工物8の持ち上げは、プレスチャンバ1がまだ完全に閉じきらないうちに行われる。したがって、この時点において、分離シート10は、まだ、周縁がしっかりと挟み付けられていない。それゆえ、加工物8の上方運動は、しっかり挟み付けられていない分離シート10をシール5越しに引っ張り上げる。そのために必要な引張り力は、分離シート10がその付着防止機能からして極めて低摩擦で、かつ、ばね12の張力が予め緩和されているために、ごく僅かである。こうして、分離シート10は、縦引張り応力を生ずることなく、加熱盤6から持ち上げられた加工物8を被覆する。続いて行われる、上側ハーフチャンバ体2の残りのごく僅かな閉ストロークは、もはや、分離シートの縦引っ張り応力を造成することはなく、したがって、加工物8は、応力を生ずることなく、持ち上げ装置11上に位置している。
【0034】
図1(a)に示されているように、本発明による補助的な対策として、分離シート10の張力解放を能動的に行うべく、周回(巻き掛け)式分離シート10の方向転換ならびに案内を行う方向転換ユニット13は、案内輪回転軸などの方向転換軸に対して垂直に変位する。これにより、特に、加工物8の搬入中における分離シート10のしわ形成の防止を保証するばね力12が、相殺ないし過剰相殺される結果、分離シート10は、いずれにせよ、張力解放された状態で加工物8を覆うことができ、したがって、加工物8は実質的に荷重(機械的負荷)をうけることがない。なお、分離シート10が張力解放された状態の積層プレスの状態を図で説明するために図1(b)が添付されている。
【0035】
分離シート10が周回式に形成されていない場合には、分離シートの能動的な張力解放は、例えば、分離シートのテンションユニットを反作用方向に少々変位させることによって行なわれる。
【0036】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対象を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1: プレスチャンバ
2:上側ハーフチャンバ体
3:下側ハーフチャンバ体
5:周回シール
6:加熱手段
8:加工物
9:膜体
10:分離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密閉鎖可能なプレスチャンバ(1)を開閉するために相対運動する上側ハーフチャンバ体(2)および下側ハーフチャンバ体(3)と、前記上側ハーフチャンバと前記下側ハーフチャンバ(2,3)との間に配置された一部材構成または多部材構成の周回シール(5)と、前記上側ハーフチャンバ体(2)に直接的にまたは間接的に取り付けられるとともに前記プレスチャンバ(1)を気密分割する膜体(9)と、加工物(8)に熱を付与する加熱手段(6)とからなる積層プレスを用いて、少なくとも1つの熱活性接着剤層を含んだ加工物を熱圧作用下で積層するための方法であって、
開放された前記プレスチャンバ(1)内に少なくとも1つの加工物(8)を搬入するステップと、
前記膜体(9)に対して押し付けるように上方向で前記加工物(8)に覆い被さる分離シート(10)を前記積層プレスの前記プレスチャンバ(1)内に導入するステップと、
前記プレスチャンバ(1)が最終段階まで閉じられる前に前記分離シート(10)の張力を緩める張力解放ステップと、
前記プレスチャンバ(1)を最終段階まで閉じるステップと、
少なくとも、前記加工物(8)を取り囲むように前記膜体(9)の下側に位置している前記プレスチャンバの内部空間を排気するステップと、
前記加工物(8)に熱を付与するステップと
をからなることを特徴とする積層方法。
【請求項2】
前記加工物(8)が、前記プレスチャンバ(1)が気密密閉される前に持ち上げられることを特徴とする請求項1に記載の積層方法。
【請求項3】
前記分離シート(10)が、前記加工物(8)の持ち上げ前または持ち上げ時に張力解放されることを特徴とする請求項2に記載の積層方法。
【請求項4】
前記プレスチャンバ(1)を閉じる工程が開始され、その閉じ工程において前記分離シート(10)は張力解放され、その後に、前記プレスチャンバ(1)の最終段階までの閉じ工程が完了することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層方法。
【請求項5】
前記プレスチャンバ(1)を通過して延びる、前記分離シート(10)と同期して移動するコンベヤベルト(7)によって、前記プレスチャンバ(1)内への前記加工物(8)の搬入が行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層方法。
【請求項6】
前記分離シート(10)が、前記プレスチャンバ(1)内への導入時に、しわ形成を回避すべく、全面にわたって張力をかけられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層方法。
【請求項7】
前記分離シート(10)の張力解放が、分離シート案内機構の変位によって行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層方法。
【請求項8】
少なくとも1つの熱活性接着剤層を含んだ加工物を熱圧作用下で積層するための積層プレスであって、プレスチャンバ(1)を開閉するために相対運動する上側ハーフチャンバ体(2)および下側ハーフチャンバ体(3)とからなる気密閉鎖可能な少なくとも1つのプレスチャンバと、前記の上側ハーフチャンバ体と下側ハーフチャンバ(2,3)の間に配置された一部材構成または多部材構成の周回シール(5)と、前記上側ハーフチャンバ体(2)に直接または間接に取付けられて前記プレスチャンバ(1)を気密分割する膜体(9)と、前記加工物(8)に熱を付与する加熱手段(6)とからなり、少なくとも前記下側ハーフチャンバ体(3)には閉じられた前記プレスチャンバ(1)を排気するための手段が配備されており、開放された前記プレスチャンバ(1)内に少なくとも1つの加工物(8)と共に導入可能で、前記膜体に対して押し付けるように上方向で前記加工物に覆い被さる分離シート(10)が設けられ、さらに前記分離シート(10)の張力を緩める張力解放手段が設けられていることを特徴とする積層プレス。
【請求項9】
前記張力解放手段が、前記分離シート(10)の案内機構と組み合わされていることを特徴とする請求項8に記載の積層プレス。
【請求項10】
前記案内機構が、前記分離シート(10)の方向転換ユニットとして、または張力を付与するテンションユニットとして形成されていることを特徴とする請求項9に記載の積層プレス。
【請求項11】
前記分離シート(10)が巻き掛けられている少なくとも1つの方向転換ユニットが、前記分離シート(10)の張力を調整するために方向転換軸に対して垂直方向に変位することを特徴とする請求項10に記載の積層プレス。
【請求項12】
しわ形成を回避すべく、前記分離シート(10)の緊張手段(12)が設けられていることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の積層プレス。
【請求項13】
前記プレスチャンバ(1)を通過して延びるコンベヤベルト(7)が設けられており、前記コンベヤベルト(7)が前記分離シートと同期して移動することを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の積層プレス。
【請求項14】
前記加工物(8)を前記下側ハーフチャンバ体(3)に対して相対的に持ち上げるための持ち上げ手段(11)が設けられていることを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項に記載の積層プレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−52431(P2010−52431A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196294(P2009−196294)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(599098714)ロベルト・ビュルクレ・ゲー・エム・ベー・ハー (15)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BUERKLE GMBH
【住所又は居所原語表記】STUTTGARTER STRASSE 123, D‐72250 FREUDENSTADT, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】