説明

積層板の製造方法

【課題】金属箔とフィルム状基材の搬送経路周辺の空間領域を大きくすることなく、金属箔とフィルム状基材の干渉を防止する。
【解決手段】帯電ロール7a,7bによって帯電させたポリイミドフィルム6表面と銅箔5とを接触させることにより、銅箔5とポリイミドフィルム6とを分離しない程度に予備接着した後にダブルベルトプレス装置3に供給する。これにより、銅箔5とポリイミドフィルム6の搬送経路周辺の空間領域を大きくすることなく、銅箔5とポリイミドフィルム6の干渉を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔とフィルム状基材をダブルベルトプレス機を用いてラミネート成形加工することによりフィルム状基材に金属箔が接着された積層板を連続的に製造する積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダブルベルトプレス機を用いた積層板の製造工程は、(1)ロール状の長尺物の積層板材料を用意し、(2)ダブルベルトプレス機の挿入口手前に設けられた複数のシャフトに積層板材料を個別にセットし、(3)ダブルベルトプレス機のライン速度に合わせてシャフトから積層板材料を個別に巻き出し、(4)個別に巻き出された積層板材料を上下対称に配置されたダブルベルトプレス機の連続ベルト間に連続的に挿入することにより行われていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−42555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のダブルベルトプレス機を利用してフィルム状基材に金属箔が接着された積層板を製造する場合、金属箔とフィルム状基材がダブルベルトプレス機の挿入口に挿入される過程で互いに干渉することにより、静電気を帯電しやすいフィルム状基材が隣り合う金属箔に部分的に貼り付くことによって位置ずれが生じたり、干渉の衝撃によって破損が生じたりすることがある。従って、ダブルベルトプレス機を利用してフィルム状基材に金属箔が接着された積層板を製造する場合には、金属箔とフィルム状基材がダブルベルトプレス機の挿入口に挿入される過程で互いに干渉しないように、金属箔とフィルム状基材の搬送経路を互いに十分に離す必要がある。しかしながら、金属箔とフィルム状基材の搬送経路を十分に離す場合、金属箔とフィルム状基材の搬送経路の周囲に広い空間領域が必要となる。さらに金属箔とフィルム状基材の搬送経路の周囲に広い空間領域を形成する場合には、ダブルベルトプレス機を用いて多数の積層板を同時に成形したり、多重の積層板を製造したりする際、空間領域を確保することが困難になり、実質的に製造することができなくなる。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、金属箔とフィルム状基材の搬送経路周辺の空間領域を大きくすることなく、金属箔とフィルム状基材の干渉を防止可能な積層板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の積層板の製造方法は、金属箔とフィルム状基材をダブルベルトプレス機を用いてラミネート成形加工することによりフィルム状基材に金属箔が接着された積層板を連続的に製造する積層板の製造方法であって、ロール状の金属箔及びフィルム状基材からそれぞれ金属箔とフィルム状基材を個別に巻き出す工程と、巻き出された金属箔とフィルム状基材とを分離しない程度に予備接着する工程と、予備接着された金属箔とフィルム状基材をダブルベルトプレス機に供給する工程とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る積層板の製造方法によれば、金属箔とフィルム状基材とを分離しない程度に予備接着した後にダブルベルトプレス機に供給するので、金属箔とフィルム状基材の搬送経路周辺の空間領域を大きくすることなく、金属箔とフィルム状基材の干渉を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る積層板の製造方法は、例えば銅箔により熱圧着性又はエポキシ樹脂等の接着剤付きのポリイミドフィルムを挟持した両面銅箔積層板をダブルベルトプレス機を用いて複数同時に製造する工程に適用することができる。以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる積層板の製造システムについて説明する。なお、上記銅箔はアルミニウム箔やステンレス箔等の銅箔以外の金属箔であってもよく、また、ポリイミドフィルムは液晶ポリマーやアラミドフィルム等のポリイミドフィルム以外のフィルム状基材であってもよい。
【0008】
本発明の実施形態となる積層板の製造システム1は、図1に示すように、巻出装置2と、ダブルベルトプレス装置3とを備える。巻出装置2は、ロール状の長尺物の形態で用意された銅箔5がセットされるシャフト4a,4c,4d,4fと、ロール状の長尺物の形態で用意されたポリイミドフィルム6がセットされるシャフト4b,4eと、ポリイミドフィルム6の搬送経路に配設されたガラスやナイロン製の帯電ロール7a,7bとを備え、各シャフトから巻き出された銅箔5及びポリイミドフィルム6をダブルベルトプレス装置3のワーク挿入口に供給する。ダブルベルトプレス装置3は、公知のダブルベルトプレス装置3により構成され、巻出装置2の各シャフトから供給された銅箔5及びポリイミドフィルム6に対しラミネート成形(加熱圧着処理)を施すことにより複数の両面銅箔積層板を同時に製造する。なお、上記加熱圧着処理は、圧力20〜80[bar],温度180〜250[℃],時間1〜10[分]の範囲内で行うことが望ましい。
【0009】
このような構成を有する積層板の製造システム1では、両面銅箔積層板は(1)ダブルベルトプレス装置3のライン速度に合わせて各シャフトから銅箔5及びポリイミドフィルム6を個別に巻き出し、(2)巻き出されたポリイミドフィルム6の一方の表面に帯電ロール7a,7bに接触させることによりポリイミドフィルム6の一方の表面を摩擦によって帯電させ、(3)帯電したポリイミドフィルム6表面と銅箔5とを接触させることによりポリイミドフィルム6の一方の面に銅箔5を分離しない程度に予備接着し(図2参照)、(4)予備接着された銅箔5とポリイミドフィルム6を連続的にダブルベルトプレス装置3の連続ベルト間に挿入し、(5)銅箔5とポリイミドフィルム6をラミネート成形加工することにより製造される。なお、帯電ロール7a,7bの材質をポリイミドフィルム6に対して帯電列が離れている材質にすることにより、ポリイミドフィルム6の帯電量が得られやすい。
【0010】
このように本発明の実施形態となる積層板の製造システム1では、帯電ロール7a,7bによって帯電させたポリイミドフィルム6表面と銅箔5とを接触させることにより銅箔5とポリイミドフィルム6とを分離しない程度に予備接着した後にダブルベルトプレス装置3に供給するので、銅箔5とポリイミドフィルム6の搬送経路周辺の空間領域を大きくすることなく、銅箔5とポリイミドフィルム6の干渉を防止することができる。
【0011】
なお、上記実施形態では、ポリイミドフィルム6の一方の表面に帯電ロール7a,7bを接触させることによりポリイミドフィルム6の一方の表面に銅箔5を予備接着したが、図3に示すように、ポリイミドフィルム6の他方の表面に接触する帯電ロール7c,7dをさらに配設することにより、ポリイミドフィルム6の他方の表面も帯電させてポリイミドフィルム6の両面に銅箔5を予備接着するようにしてもよい。
【0012】
また両面銅箔積層板を複数同時に製造する場合、図4に示すように、両面銅箔積層板同士を接着シート11を介在させて予備接着してもよい。なお、両面銅箔積層板同士の接着面が銅箔5同士等接着しにくい場合、接着シート11としては、帯電ロール7e,7fによって帯電しやすい、又は表面張力を帯びやすい(詳しくは後述)樹脂シートを用いることが望ましい。
【0013】
また本実施形態では、静電気力を利用して銅箔5とポリイミドフィルム6とを予備接着したが、図5に示すように、液体供給管21を介してポリイミドフィルム6の一方の表面に霧状の液体22(例えば水やアルコール等)を吹き付け、液体22の表面張力によって銅箔5とポリイミドフィルム6とを予備接着してもよい。なお、ダブルベルトプレス装置3内は十分に高温であるので、ポリイミドフィルム6に液体22を吹き付けた場合であっても液体はラミネート成形加工の間に蒸発する。
【0014】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態となる積層板の製造システムの構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す積層板の製造システムの部分拡大図である。
【図3】図1に示す積層板の製造システムの応用例の構成を示す模式図である。
【図4】図1に示す積層板の製造システムの応用例の構成を示す模式図である。
【図5】本発明の他の実施形態となる積層板の製造システムの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0016】
1:積層板の製造システム
2:巻出装置
3:ダブルベルトプレス装置
4a,4b,4c,4d,4e,4f:シャフト
5:銅箔
6:ポリイミドフィルム
7a,7b:帯電ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔とフィルム状基材をダブルベルトプレス機を用いてラミネート成形加工することによりフィルム状基材に金属箔が接着された積層板を連続的に製造する積層板の製造方法であって、
ロール状の金属箔及びフィルム状基材からそれぞれ金属箔とフィルム状基材を個別に巻き出す工程と、巻き出された金属箔とフィルム状基材とを分離しない程度に予備接着する工程と、予備接着された金属箔とフィルム状基材をダブルベルトプレス機に供給する工程とを有することを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層板の製造方法において、前記フィルム状基材表面を帯電させ、帯電したフィルム状基材表面に金属箔を接触させることにより金属箔とフィルム状基材とを予備接着することを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の積層板の製造方法において、前記フィルム状基材と前記金属箔の間に液体を噴霧し、噴霧された液体の表面張力を利用して金属箔とフィルム状基材とを予備接着することを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれかに記載の積層板の製造方法において、フィルム状基材の両面に金属箔を予備接着することを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれかに記載の積層板の製造方法において、予備接着された金属箔とフィルム状基材の複数のセット同士を予備接着することを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の積層板の製造方法において、予備接着された金属箔とフィルム状基材の複数のセット同士を予備接着する際、セット間に接着シートを介在させることを特徴とする積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−155535(P2008−155535A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348288(P2006−348288)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】