説明

積層板の連続製造方法および装置

【課題】本発明の目的は、成形性に優れ、反り等のバラツキが少なく、耐熱性、熱膨張性および難燃性に優れた積層板を、生産性が高く低コストで連続的に製造する方法および装置を提供することである。
【解決手段】シート状繊維基材供給部1から供給されたシート状繊維基材2は、送りロールを用いて予備加熱装置6で予備加熱されながら鉛直方向に移送される。また、金属箔供給部3から送りロールを用いて接着性樹脂層を有する金属箔4が供給される。シート状繊維基材2と接着性樹脂層を有する金属箔4とは、表面が弾性材料で構成されたラミネートロール5間を通過させることにより加熱加圧成形される。成形された積層板は、冷却ロール7により所定温度まで冷却され、巻き取りロール8で巻き取られる。これらの工程は減圧下で実施される。上記装置一式は真空ボックス中に設置され、好ましくは、台車10の上に設置される。このようにして積層板を連続的に製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板の連続製造方法およびこれに用いる連続製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路板については小型化、高機能化の要求が強くなる反面、価格競争が激しく、特にプリント回路板に用いられる多層積層板やガラス布基材エポキシ樹脂積層板、あるいはガラス不織布を中間層基材としガラス織布を表面層基材とした積層板は、いずれも価格の低減が大きな課題となっている。一方、半導体の分野においては高密度実装技術の進歩に伴い、従来の面実装からエリア実装へと移行しつつあり、BGAやCSPなどの新しいパッケ−ジの形態が増加してきている。そのため従来にもましてインターポーザー用リジッド基板が注目されており、高耐熱で且つ低熱膨張の要求が高まってきている。
【0003】
従来、プリント回路板に用いられる多層積層板やガラス布基材エポキシ樹脂積層板、あるいはガラス不織布を中間層基材としガラス織布を表面層基材とした積層板を積層成形する場合には、熱盤間に銅箔、プリプレグ、内層用プリント回路板、鏡面板等を何枚も重ねて加熱加圧成形する多段型のバッチプレスが一般的である(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、このような多段型のプレスでは、各積層板の熱盤内での位置により積層成形時に各積層板にかかる熱履歴が異なるため、成形性、反り、寸法変化率等の品質に於いて差が生じ、品質のバラツキの少ない製品を供給することは困難であった。
また、多段型プレスでは、熱盤、鏡面板、クッション材等の積層板を成形するに必要な冶具を加熱冷却するための膨大な熱量が必要であり、そのため近年の地球温暖化等の地球環境に対する省エネルギー化が困難な設備であった。
【0004】
前記品質バラツキの少ない積層板や省エネルギー化ができる設備として、横型の連続ベルトプレス等が開発された(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
しかし、横型の連続ベルトプレスによる方法でも、ベルトに挟んだ時の圧力むら、温度むらが発生しやすい問題や重力による密着や材料の進入角の違いにより成形性(特に、ボイドの発生)や銅箔接着力等で表裏のばらつきが生じたり、銅箔や基材のテンションの違いによる反りや寸法変化が大きくなったりする問題があった。
【0005】
前記横型連続ベルトプレスにおける成形性不良、反りおよび寸法変化ばらつきを解決する方法として、本出願人は縦型のラミネート装置を開発した(例えば、特許文献2参照)。
この装置はプリプレグと銅箔を大気圧下にてラミネートする。このため、成形性を維持するために金属箔として接着性樹脂層を有する金属箔を使用する、プリプレグ表面を平滑化して金属箔と貼り合せるなどの工夫が必要であり、これによって目標板厚が得られない、コスト高となるなどの問題があった。
【0006】
例えば、上記の縦型ラミネート装置による積層板の製造方法では、絶縁層厚み0.05mmの積層板を製造するために、厚み0.03mmのガラスクロスを使用したプリプレグにその両側から接着性樹脂層厚み0.01mmの金属箔を貼り合わせている。
一方、同じ厚みの積層板を多段型プレスで製造する場合、厚み0.05mmのガラスクロスを使用したプリプレグに金属箔を両側から貼り合せており、多段型プレスによる積層板の製造方法の方が原料コスト高となっていた。
【0007】
また、本出願人は縦型のラミネート装置で且つプリプレグの予熱部およびプリプレグと金属箔との接合部のみ真空ボックスで囲いラミネートする技術を開発した(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、上記設備は真空ボックス内へのプリプレグの挿入部および真空ボックス内からの排出部のシール性に問題があり、またこれら挿入部や排出部に使用するロールにおいてプリプレグおよび積層板にシワが発生するという問題があった。
【0008】
また、従来プリント配線板においては難燃性を求められているが、とりわけ半導体パッケ−ジにおいては強く要求されている。従来この難燃性を付与するため臭素化エポキシ樹脂などのハロゲン系難燃剤を用いることが一般的であった。しかしながら、ハロゲン含有化合物はダイオキシン発生の原因となるおそれがあることから、近年における地球規模での環境問題の深刻化に伴い、ハロゲン系難燃剤を使用することが回避されるようになってきた。このような状況下においてリン系難燃剤が一躍脚光を浴び、リン酸エステルや赤リン系での検討がなされてきたが、リン系難燃剤は加水分解しやすく且つ樹脂との反応性に乏しいため半田耐熱性が低下するなどの問題があった。
【0009】
【特許文献1】特公平3−44574号公報(2−3頁、第2図)
【特許文献2】特開2002−347172号公報
【特許文献3】特開2001−138437号公報
【非特許文献1】本田進、青木正光編集「高密度プリント配線板実装技術」(株)リアライズ社出版、1991年9月20日発行、66−72頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、成形性および板厚精度に優れ、かつ反り等のバラツキが少なく、耐熱性、低熱膨張性および難燃性に優れ、かつ高い生産性を有する積層板の連続製造方法、およびこれに用いる連続製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(7)記載の本発明により達成される。
(1)真空条件下にて、シート状繊維基材を鉛直方向に移送しながら積層板を連続的に製造する方法であって、
前記シート状繊維基材を予備加熱する工程と、
前記シート状繊維基材と接着性樹脂層を有する金属箔またはキャリアフィルムとを、表面が弾性材料で構成されたラミネートロールで加熱加圧成形する工程とを有することを特徴とする積層板の連続製造方法。
(2)前記シート状繊維基材の単位面積当りの重量が20〜110g/mである前記(1)に記載の積層板の連続製造方法。
(3)前記シート状繊維基材を予備加熱する工程において使用される加熱装置がフラットパネル状ヒ−タ−である前記(1)または(2)に記載の積層板の連続製造方法。
(4)前記接着性樹脂層の樹脂組成物がシアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーを必須成分とするものである前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の積層板の連続製造方法。
(5)前記工程を減圧にしたひとつの真空ボックス内で行う前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の積層板の連続製造方法。
(6)前記(1)に記載の積層板の連続製造方法を実施する装置であって、前記シート状繊維基材および金属箔またはキャリアフィルムをそれぞれ供給する供給装置、前記シート状繊維基材を予備加熱する加熱装置、前記シート状繊維基材と金属箔またはキャリアフィルムとを加熱加圧成形する、表面が弾性材料で構成されたラミネートロール、これらの装置一式を格納する、減圧化しうる真空ボックス、および、この真空ボックス内部を減圧にする減圧装置を有することを特徴とする積層板の連続製造装置。
(7)前記積層板製造の装置一式は可動式で、真空ボックス内に出し入れ可能である前記(6)に記載の積層板の連続製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、耐熱性、低熱膨張性、難燃性および生産性に優れた熱硬化性樹脂積層板の連続製造方法および装置を提供するものである。また、ラミネートロールは、表面を弾性材料で構成されているため、金属箔からシート状繊維基材に接着性樹脂によるシート状繊維基材とまたはキャリアフィルム(以下、金属箔等ということがある)との接合をより強固に均一に行うことができる。さらに、積層板を成形する工程などすべての工程を減圧条件下で行うことにより、成形性に優れた積層板を安定的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の積層板の連続製造方法および連続製造装置を図1に示す好適なひとつの実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の積層板の連続製造方法、およびそれに用いる装置を説明するための概略図である。図1に示すように、本発明の積層板の連続製造方法は、減圧化された真空ボックス9の中で実施される。
図1において、シート状繊維基材供給部1からシート状繊維基材2を供給し、送りロール(図示せず)を用いて、予備加熱部6で予備加熱されながら鉛直方向に移送する。同様に金属箔等の供給部3から送りロール(図示せず)を用いて金属箔等4を供給する。シート状繊維基材2と金属箔4とは、表面が弾性材料で構成されたラミネートロール5の間を通過させることにより加熱加圧成形する。成形された積層板を、好ましくは冷却ロール7により所定温度まで冷却し、巻き取り装置8で巻き取る。あるいは、所定長さに切断して積載する。これらの工程は、上記のように、すべて減圧化された真空ボックス9の中で実施される。このようにして、積層板を連続的に製造する。
なお、上記の工程において、各工程を実施するための装置一式は可動式の装置であり、通常台車10の上に設置されていて、真空ボックス9内から外部へ出し入れ自在である。
【0014】
本発明の積層板に使用されるシート状繊維基材としては、例えばガラス織布、ガラス不繊布、ガラスペーパー等のガラス繊維基材の他、紙、合成繊維等からなる織布や不織布、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げられ、これらの基材の原料は単独又は混合して使用してもよい。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、積層板の剛性、寸法安定性が向上する。
【0015】
前記シート状繊維基材の単位面積当りの重量は、特に限定されないが、20〜110g/mが好ましく、特に25〜90g/mが好ましい。これにより、前記シート状繊維基材を接着性樹脂層を有する金属箔等とラミネートロールにより加熱加圧した場合、良好な特性の積層板を得ることができる。前記シート状繊維基材の単位面積当りの重量が上記下限値未満であると積層板の剛性が低下する場合があり、上記上限値を超えると加熱加圧時に接着性樹脂層のシート状繊維基材中への含浸が不十分な場合がある。
【0016】
本発明の積層板の製造方法においては、接着性樹脂層の樹脂としてシアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーを必須成分とする樹脂組成物を用いることが好ましい。これにより、成形された積層板およびプリント回路板を高耐熱とすることができる。さらには、無機充填材を含有することが好ましい。これにより積層板およびプリント回路板を高耐熱性、難燃性且つ低熱膨張とすることができる。
前記シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーは、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを配合させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。具体的には、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。これにより、架橋密度増加による耐熱性と難燃性を向上させることができる。
【0017】
前記シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜4,500が好ましく、特に600〜3,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であるとプリプレグを作製した場合にタック性が生じ、プリプレグ同士が接触した時に互いに付着したり、樹脂の転写が生じたりする場合がある。また、重量平均分子量が前記上限値を超えると反応速度が増大し、積層板作製時に成形不良を生じたり、層間ピール強度が低下したりする場合がある。
なお、本発明において、重量平均分子量は、東ソー株式会社製HLC−8120GPC装置(使用カラム:SUPER H4000、SUPER H3000、SUPER H2000×2、溶離液:THF)を用いて、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定した値である。
【0018】
前記シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の5〜60重量%が好ましく、特に10〜50重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると耐熱性の向上や低熱膨張化する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると架橋密度が高くなり自由体積が増えるため耐湿性が低下する場合がある。
【0019】
前記シアネート樹脂組成物には、特に限定されないが、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。これにより、シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーとエポキシ樹脂との反応によって生成する硬化物の耐湿性を向上することができる。
前記エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂およびアリールアルキレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でもアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、更に吸湿半田耐熱性を向上することができる。
前記アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えばキシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸水率、弾性率および耐熱性を向上させることができる。
【0020】
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜20,000が好ましく、更に800〜15,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であるとプリプレグにタック性が生じる場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグ作製時基材への含浸性が低下し、均質な積層板が得られない場合がある。
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜55重量%が好ましく、更に2〜40重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であるとシアネート樹脂のエポキシ樹脂との反応性が低下したり、得られる積層板の耐湿性が低下したりする場合があり、前記上限値を超えると耐熱性を向上する効果が低下する場合がある。
【0021】
前記シアネート樹脂組成物には、特に限定されないが、さらにフェノール樹脂を含むことができる。これにより、耐熱性と吸湿性を向上することができる。前記フェノール樹脂としては、例えばノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でもアリールアルキレン型フェノール樹脂が好ましい。これにより、さらに耐熱性を向上することができる。前記アリールアルキレン型フェノール樹脂としては、例えばキシリレン型フェノール樹脂、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂等が挙げられる。
さらに、前述のシアネート樹脂及び/またはそのプレポリマー(特にノボラック型シアネート樹脂)とアリールアルキレン型フェノール樹脂とを併用することにより、架橋密度の制御が可能となり、金属と樹脂との密着性を向上することができる。
【0022】
前記フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、シアネート樹脂組成物全体の1〜55重量%が好ましく、特に5〜40重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると耐熱性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると低熱膨張化する効果が低下する場合がある。
前記フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、400〜18,000が好ましく、特に500〜15,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であるとプリプレグにタック性が生じる場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグ作製時に基材への含浸性が低下し、均一な製品が得られない場合がある。
【0023】
本発明に使用される上記シアネート樹脂組成物では、特に限定されないが、硬化促進剤を含有することが好ましい。前記硬化促進剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えばナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナ−トコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)などの有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノールなどのフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等、またはこの混合物が挙げられる。
【0024】
本発明における接着性樹脂層を構成する樹脂組成物は、シアネート樹脂、好ましくは、さらにエポキシ樹脂等ともに、ビニルエステル樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、およびポリフェニレンオキサイド樹脂等の熱可塑性樹脂を含有することができる。この中でも、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂から選ばれた熱可塑性樹脂、特に、重量平均分子量10,000以上のフェノキシ樹脂が好ましい。これにより、プリプレグと金属箔との接合時の密着性を向上することができ、ボイドおよびバンクの発生を効果的に防止することができる。上記熱可塑性樹脂の含有量は、前記樹脂組成物100重量部に対して、3〜30重量部、さらには5〜20重量部が好ましい。
【0025】
前記樹脂組成物は、無機充填材を含有することが好ましい。これにより、低熱膨張化および難燃性の向上を図ることができる。また、前述したシアネート樹脂及び/またはそのプレポリマー(特にノボラック型シアネート樹脂)と無機充填材を併用することにより、弾性率を向上することができる。
前記無機充填材としては、例えばタルク、アルミナ、シリカ、マイカ等を挙げることができる。これらの中でもシリカが好ましく、更に溶融シリカが低熱膨張性に優れる点で好ましい。その形状は破砕状、球状があるが、ガラス基材への含浸性を確保し、樹脂組成物の溶融粘度を下げるには球状シリカを使うなど、その目的に合わせた使用方法が採られる。
【0026】
前記無機充填材の粒径は、特に限定されないが、平均粒径0.01〜5μmの無機充填材が好ましく、特に0.2〜2μmの無機充填材が好ましい。無機充填材の粒径が前記下限値未満であるとワニス粘度が高くなるため、プリプレグ作製時の作業性が低下する場合がある。また、前記上限値を超えるとワニス中での無機充填材の沈降等の現象が起こる場合がある。また、上記平均粒径の球状溶融シリカを用いることによりその充填性を特に向上させることができる。
前記無機充填材の含有量は、樹脂組成物全体の20〜70重量%が好ましく、特に30〜60重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満である熱膨張率を低減する効果が低下する場合があり、且つ難燃性を向上する効果が低下する場合がある。また、前記上限値を超えるとワニス粘度が高くなるため、プリプレグ作製時の作業性が低下する場合がある。
【0027】
本発明に用いられる樹脂組成物は、特に限定されないが、無機充填材を用いる場合は、カップリング剤を併せて含有することが好ましい。前記カップリング剤は、樹脂と無機充填材の界面の濡れ性を向上することにより、基材に対して樹脂及び無機充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良するために配合する。カップリング剤としては特に限定されず、通常用いられているものなら何でも使用できるが、これらの中でもエポキシシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アミノシランカップリング剤およびシリコ−ンオイル型カップリング剤の中から選ばれる少なくとも1種類以上使用することが好ましい。これにより、樹脂と無機充填材の界面における濡れ性が高くなり、耐熱性向上が図れる。
前記カップリング剤の含有量は、特に限定されないが、無機充填材100重量部に対して0.05〜3重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると無機充填材を十分に被覆できず目標とする耐熱性が得られない場合があり、前記上限値を超えると樹脂の反応性に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
【0028】
これらの成分の配合割合についてみると、前記樹脂組成物100重量部に対して、シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーは、5〜60重量部、さらには10〜50重量部が好ましく、エポキシ樹脂とフェノール樹脂は、その合計量で、3〜30重量部、さらには5〜20重量部が好ましい。また、フェノキシ樹脂は3〜30重量部、さらには5〜20重量部が好ましい。これにより、プリプレグとの接着性がさらに向上する。また、無機充填材の配合割合は、前記樹脂組成物100重量部に対して、20〜70重量部、さらには30〜60重量部が好ましい。これにより、熱膨張率の低減や耐熱性、難燃性、弾性率をより向上することができる。
【0029】
本発明で用いる接着性樹脂層を有する金属箔およびキャリアフィルム(金属箔等)4について説明する。
前記金属箔は、特に限定されないが、例えば銅または銅系合金、アルミまたはアルミ系合金等の箔を挙げることができる。金属箔は、厚さ1〜70μmが好ましく、特に3〜35μmが好ましい。前記キャリアフィルムは、特に限定されないが、例えばPETフィルム、PBTフィルム、延伸ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等を用いることもできる。前記キャリアフィルムの厚さは、特に限定されないが、9〜50μmが好ましく、特に12〜35μmが好ましい。本実施形態では前記接着性樹脂層を有する金属箔等4は、前記シート状繊維基材2の両面へ連続的に供給され、ラミネートロールにより加熱加圧される。
【0030】
前記接着性樹脂層を有する金属箔等を作製する方法は、特に限定されないが、各種コ−タ−により前記樹脂組成物のワニス(以下、樹脂ワニスという)を金属箔等に塗布する方法が好ましい。これにより、金属箔等の上に均一な厚みの樹脂層を形成することができる前記金属箔等に前記樹脂ワニスを塗布し、所定温度、例えば80〜170℃で乾燥、硬化させることにより接着性樹脂層を有する金属箔等を得ることができる。
【0031】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても良い。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチアセトアミドおよびN−メチルピロリドンなどが挙げられる。
前記樹脂ワニスの固形分(無機充填材を含有する場合は、これを含む)は、特に限定されるものではないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。これにより、樹脂ワニスを金属箔等の上に均一に塗布することができる。次いで、加熱することにより、溶媒を蒸発させるとともに、必要により樹脂の硬化を進める。
【0032】
前記金属箔に塗布した接着性樹脂層の硬化度はフロー率を測定することにより簡易的に求めることができる。すなわち、接着性樹脂層を有する金属箔を所定のサイズ(100mm×100mm)に裁断後5〜7枚積層し、その重量を測定する。次に、内部温度を175℃に保持した熱盤間で5分間プレスした後冷却し、流れ出た樹脂を丁寧に落として再び重量を測定する。フロー率は次式(I)により求めることができる。
フロー率(%)=(測定前重量−測定後重量)/(測定前重量−金属箔重量) (I)
【0033】
前記金属箔等に塗布した接着性樹脂層のフロー率は、特に限定されないが、5〜20%であることが好ましく、特に10〜15%であることが好ましい。これにより、加熱加圧時に溶融した接着性樹脂層の粘性が低下し、ガラスクロスに充分含浸することができる。フロー率が前記下限値未満であると、接着性樹脂の粘性が高いためにガラスクロスへの含浸性が低下し、ガラスクロスと金属箔等との密着力が低下したり、ボイド発生が増加したりする。一方、フロー率が前記上限値を超えた場合、接着性樹脂の粘性が低くなりすぎ、加熱加圧時に接着性樹脂層が金属箔等からはみ出してしまい、連続的な製造が困難となる場合がある。
【0034】
本実施形態では前記シート状繊維基材2と接着性樹脂層を有する金属箔等4との加熱加圧成形は、少なくとも一対のラミネートロール5間にそれらを通過させることにより行う。
前記ラミネートロール5は、図2に示すように表面層53が弾性材料で構成されている。すなわちロール本体51の表面に弾性材料で構成される表面層53を有している。これにより、シート状繊維基材と金属箔等の加熱加圧をさらに均一に行うことができ、密着性を向上させることができる。前記弾性材料は、特に限定されないが、シリコンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等の各種ゴムやポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの中でも、シリコーンゴムが好ましい。
【0035】
前記表面層のゴムショア硬度は、特に限定されないが、50度以上が好ましく、特に70〜90度が好ましい。ゴムショア硬度が前記下限値未満であると弾性材料の耐久性が低下する場合がある。
前記表面層の厚さは、0.5mm以上が好ましく、特に0.5〜3.5mmが好ましい。表面層の厚さが、前記下限値未満であるとプリプレグと金属箔との均一な密着が困難になる場合あり、その結果として積層板表面の外観が低下する場合がある。
【0036】
前記表面層が弾性材料で構成されたラミネートロールによりシート状繊維基材と接着性樹脂層を有する金属箔等とを加熱加圧する場合、ロール間の面圧は、特に限定されないが、5〜30kg/cmが好ましく、特に20〜25kg/cmが好ましい。ラミネートロールの温度は、特に限定されないが、100〜200℃が好ましく、特に120〜160℃が好ましい。
【0037】
本発明の積層板の製造方法では、接着性樹脂層を有する金属箔等とを加熱加圧成形する前にシート状繊維基材を予備加熱する工程を有する。これにより、長時間安定して連続的に積層板を製造できる。
前記予備加熱温度は、特に限定されないが、100〜230℃が好ましく、特に150〜180℃が好ましい。これにより、シート状繊維基材の温度が接着性樹脂層を有する金属箔等と同程度の温度を保持するため、接着性樹脂が溶融状態のままラミネートされるので、密着性を向上することができる。また、シート状繊維基材の繊維間に接着性樹脂が浸透し易くなるためボイドをさらに低減することができる。前記加熱温度が前記下限値未満であると接着性樹脂の溶融状態が悪くなるため密着性が低下する場合があり、前記上限値を超えると余分なエネルギー放出によりエネルギーコスト増大となる可能性がある。
シート状繊維基材の移送速度は、特に限定されないが、0.5〜10m/分が好ましく、特に1〜5m/分が好ましい。これにより、生産性を低下することなく、均一に積層板を連続的に製造することができる。
【0038】
前記予備加熱工程で用いる加熱装置6の伝熱面積は、特に限定されないが、基材幅500mmに対して1m以上が好ましく、特に1.2〜1.5mが好ましい。伝熱面積が前記下限値未満であると、シート状繊維基材の加熱効果が低減し、加熱加圧時に接着性樹脂の溶融が不十分となる場合があり、前記上限値を超えると余分なエネルギー放出によりエネルギーコスト増大となる可能性がある。
前記加熱装置は、特に限定されないが、フラットパネル状であることが好ましい。これにより、鉛直方向に移動するシート状繊維基材に有効な熱量を与えることができる。また、前記加熱装置は、特に限定されないが、250℃まで加熱可能な遠赤外線パネルヒータであることが好ましい。これにより、シート状繊維基材に充分熱量を与えることができるため、ラミネートロールから接着性樹脂層を有する金属箔が受ける熱量を補い、成形不良(特に、ボイドの発生)を防止することができる。
【0039】
本発明の製造方法では、特に限定されないが、前記工程でシート状繊維基材と接着性樹脂を有する金属箔とが加熱加圧成形された後、得られた積層板を冷却ロール7に通す工程を有することが好ましい。これにより、巻き取る前の積層板の温度を適当な温度まで冷却して、巻き取り時の巻きシワの発生を防止することが出来る。前記冷却ロールの本数は、特に限定されないが、2〜10本が好ましく、特に4〜7本が好ましい。これにより、積層板を徐々に冷却することが可能となり、急激な冷却によるシワの発生等を防止することができる。
冷却ロールの本数が前記下限値未満であると、加熱加圧された積層板が充分に冷却されず、巻き取り時に巻きシワの発生する場合があり、前記上限値を超えた場合は設備コストが増大し、加えて設置スペ−スが増大することとなる。
【0040】
前記冷却ロールの温度は特に限定されないが、最初の冷却ロールはラミネートロールの温度より10〜15℃低い温度に設定することが好ましい。これにより、加熱加圧された積層板の急激な冷却を防止することができ、金属箔等のシワの発生を防ぐことが出来る。また、最終冷却ロールは温度を30〜40℃に設定することが好ましい。これにより、巻き取り時に巻きシワの発生を防止することができる。
前記ロールの接触伝熱面積は、特に限定されないが、基材幅500mmに対して、1本のロール当たり0.1m以上が好ましく、特に0.3〜0.6mが好ましい。接触伝熱面積が前記下限値未満であると、積層板の冷却効果が低下する場合があり、前記上限値を超えるとロール径が大きくなるために設備コストの増大となるばかりか設置スペ−スが増大することとなる。
しかる後、冷却された積層板は、巻き取り装置8で巻き取るか、あるいは所定長さに切断して積載する。
【0041】
本発明の積層板の連続製造方法において、上記の各工程は減圧下で行われるが、好ましくは減圧にした真空ボックス内で実施される。真空ボックス内の減圧度は、特に限定されないが、40Torr以下が好ましく、特に20Torr以下が好ましい。これにより、加熱加圧時のボイドの発生を抑制することが出来る。減圧度が前記上限値を超えると、減圧の効果が低減し、ボイドが発生する可能性がある。
【0042】
本発明の製造方法では、前記工程で得られた積層板を後加熱する工程を有することが好ましい。これにより、樹脂の硬化を進め、積層板の耐熱性、耐湿性など、諸特性を向上させ安定させることができる。後加熱工程は、減圧下で行わなくてもよい。
前記後加熱温度は、特に限定されないが、120〜250℃が好ましく、特に140〜230℃が好ましい。これにより、積層板を構成する樹脂の硬化を効果的に進めることができる。前記加熱温度が前記下限値未満であると硬化度不足により密着性が低下する場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグの樹脂成分が熱分解することによりピール強度が低下する場合がある。
この後加熱工程で用いる加熱装置は、特に限定されないが、巻き取りあるいは切断された積層板をそのまま収容し加熱する加熱炉、あるいは巻き取られた積層板を再び巻き出し、これを連続的に加熱するパネル状加熱機等がある。
【0043】
次に、本発明の積層板の連続製造装置について説明する。
本発明の積層板の連続製造装置は、これまで説明した積層板の連続製造方法を実施する装置であって、前記シート状繊維基材2および接着性樹脂層を有する金属箔またはキャリアフィルム4をそれぞれ供給する供給装置1,3、前記シート状繊維基材を予備加熱する加熱装置6、前記シート状繊維基材と金属箔またはキャリアフィルムとを加熱加圧成形する、表面が弾性材料で構成されたラミネートロール5、これらの装置一式を格納する、減圧化しうる真空ボックス9、および、この真空ボックス内部を減圧にする減圧装置を有することを特徴とするものである。
【0044】
本発明の積層板の連続製造装置は、特に限定されないが、成形された積層板を冷却する冷却ロール7を設けることが好ましく、さらには、前記冷却された積層板を巻き取る巻き取り装置8または所定長さに切断する切断装置を設けることが好ましい。
本発明の積層板の連続製造装置は、特に限定されないが、上記の積層板を製造する装置一式は可動式で、真空ボックス内に出し入れ可能であることが好ましい。即ち、これらの装置一式の下に台車10を設置し、真空ボックス9内への出し入れを可能とする。これにより、作業性が向上すると共に真空ボックスの容積を最小になる様に設計できるため低コスト化を達成できる。前記装置一式を真空ボックス内に固定した場合、原材料および製品の取り入れ、取り出しの作業スペ−スを確保する必要がある。そのため、作業スペ−スを考慮して真空ボックスの容積を大きく設計しなければならず、真空ボックスの設備費の増大および真空ポンプの能力を大きくする必要があるため装置費用の増加にもなる。
【0045】
前記シート状繊維基材の移送方向は、特に限定されないが、鉛直方向が好ましい。これにより、シート状繊維基材の撓みによるラミネートロール通過時のシワの防止および成形された積層板の撓みによる外観異常等を防止することができる。
以上のように、本発明の積層板の連続製造方法では、シート状繊維基材2を予備加熱した後、接着性樹脂層を有する金属箔等4と、表面が弾性材料で構成されたラミネートロール5で加熱加圧する。次いで、好ましくは冷却ロール7で冷却した後、積層板を巻き取り装置8で連続的に巻き取るか、または裁断機で所定の長さに切断することができる。その後、後加熱することにより、樹脂の硬化を進めることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限
定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
<接着性樹脂層を有する金属箔の作製>
(1)樹脂ワニスの調製
重量平均分子量700のノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−30)17.0重量%、重量平均分子量2600のノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−60)17.0重量%、重量平均分子量1200のビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC−3000P)15.0重量%、重量平均分子量60000のフェノキシ樹脂(ジャパンエポキシ株式会社製、EP−4275)15.0重量%、2−フェニルヒドロキシイミダゾール0.5重量%およびエポキシシランカップリング剤(日本ユニカ−株式会社製、A−187)0.5重量%をメチルエチルケトンとジメチルアセトアミドの混合溶剤に常温で溶解した後、平均粒径0.5μmの球状溶融シリカ(株式会社アドマテックス製、SO−25H)を35.0重量%添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌し接着性樹脂層用の樹脂ワニスを調製した。
【0048】
(2)金属箔への樹脂ワニスの塗布
上記の樹脂ワニスをロールコーターにより、厚さ18μmの銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC−M3−VLP−18、幅:560mm)に塗布し、150℃の乾燥炉中で5分間乾燥し、厚み25μmの接着性樹脂層を有する銅箔を作製した。
【0049】
(3)フロー率の確認
上記工程にて得られた接着性樹脂層を有する銅箔を100mm×100mmに裁断した後7枚積層して、内部温度175℃に保持した熱盤間に挟み、30kg/cmの圧力にて5分間プレスした後冷却した。その後流れ出た樹脂を切り落として、前述の計算式(I)に従って、フロー率を算出した結果、12%であった。
【0050】
<積層板の連続成形>
図1に示す装置を用いて連続成形を行った。シート状繊維基材として、単位面積当りの重量が50g/mであるガラスクロス(日東紡績株式会社製 WEA1035 幅530mm)をシート状繊維基材供給部1に装着し、図1に示すように上方から下方にほぼ垂直に巻きだし、1.0m/分の速度で移送しつつ、その両側から180℃の遠赤外線ヒーター(伝熱面積 1.2m)を用いて予備加熱した。また、上述のように作製した接着性樹脂層を有する銅箔を、ガラスクロスの移送方向に対して、水平方向から供給した。続いて、ガラスクロスと接着性樹脂層を有する銅箔とを140℃に加熱された一対のラミネートロール間(ロール面圧:20kg/cm)を通過させ、両者を加熱加圧し積層板を成形した。次に、この積層板を6本の冷却ロール(伝熱面積はそれぞれ0.3m)に沿わせる様に移送し、巻き取りロールにて巻き取った。この際、第1冷却ロールの温度は105℃に設定し、順次冷却ロールの設定温度を90℃、85℃、70℃、55℃と低くし、最終冷却ロールの温度は40℃に設定した。なお、ラミネートロールは、ゴムショア硬度80度のシリコーンゴム(明和ゴム工業(株)製:シリクッスーパーH80)で厚さ2mmの表面層を構成した。
上記条件にて上記一連の連続製造装置を稼動させながら真空ボックス内に移動させ、真空ボックス内が27kPaになるように真空ポンプを運転し、上記の積層板の連続製造を実施した。次に、真空ボックス内を減圧から大気圧に戻した後、連続製造装置を真空ボックス内から外部へ移動した。その後、巻き取りロールに巻き取られた積層板を巻き出しながら、180℃の温度で30分間後加熱し、次いで、1mの長さに裁断して、絶縁層厚さ0.05mmの両面銅張積層板を得た。
【0051】
(実施例2)
実施例1で調製した接着性樹脂層用の樹脂ワニスを銅箔に塗布する工程において、乾燥条件を170℃×5分間として、フロー率5%の接着性樹脂層を有する銅箔を得た。この点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0052】
(実施例3)
実施例1に示した積層板の連続成形の工程において、ラミネートロールの温度を120℃とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0053】
(実施例4)
実施例1に示した積層板の連続成形の工程において、ガラスクロス(シート状繊維基材)の予熱温度を120℃、ラミネートロールの温度を120℃とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0054】
(実施例5)
実施例1に示した積層板の連続成形の工程において、真空ボックス内の真空度を27kPaにした以外は実施例1と同様に実施した。
【0055】
(比較例1)
実施例1に示したガラスクロス(シート状繊維基材)の替わりに、ガラスクロスに樹脂を含浸したプリプレグを用い、且つ金属箔として接着性樹脂層を有する銅箔の替わりに銅箔を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0056】
<プリプレグの作製>
(1)樹脂ワニスの調製
重量平均分子量700のノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−30)22.3重量%、重量平均分子量1200のビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC−3000P)12.4重量%、重量平均分子量1300のビフェニルジメチレン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEH−7851−S)10.0重量%およびエポキシシランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、A−187)0.3重量%をメチルエチルケトンに常温で溶解した。次いで、平均粒径0.3μmの球状溶融シリカ(電気化学工業株式会社製、SFP−10X)11.0重量%と平均粒径0.6μmの球状溶融シリカ(株式会社アドマテックス製、SO−32R)を44.0重量%添加し、高速攪拌機を用いて10分間攪拌しプリプレグ用の樹脂ワニス(固形分65重量%)を調製した。
【0057】
(2)プリプレグの作製
単位面積当りの重量が50g/mのガラスクロス(日東紡社製、WEA1035、幅530mm)に上記樹脂ワニスを、ガラスクロス100重量部に対して樹脂ワニスの固形分が122重量部になるように含浸し、180℃の乾燥炉中で5分間乾燥し、熱硬化性樹脂組成物が含浸されたガラスクロスからなるプリプレグを作製した。
【0058】
<積層板の連続成形>
図1に示す装置を用いて連続成形を行った。上記プリプレグをプリプレグ供給部1に装着し、上方から下方にほぼ垂直に巻きだし、1.0m/分の速度で移送しつつ、その両側から180℃の遠赤外線ヒーター(伝熱面積 1.2m)を用いて予備加熱した。また、金属箔として厚さ18μmの銅箔(日本電解株式会社製、YGP−18、幅:560mm)を、プリプレグの移送方向に対して水平方向から供給した。続いて、プリプレグと銅箔とを140℃に加熱された一対のラミネートロール間(ロール面圧:15kg/cm)を通過させ、両者を加熱加圧し積層板を成形した。次に、この積層板を6本の冷却ロール(伝熱面積はそれぞれ0.3m)に沿わせる様に移送し、巻き取りロールにて巻き取った。この際、第1冷却ロールの温度は105℃に設定し、順次冷却ロールの設定温度を90℃、85℃、70℃、55℃と低くし、最終冷却ロールの温度は40℃に設定した。
上記条件にて上記一連の連続製造装置を稼動させながら真空ボックス内に移動させ、真空ボックス内が27kPaになるように真空ポンプを運転し、上記の積層板の連続製造を実施した。次に、真空ボックス内を減圧から大気圧に戻した後、連続製造装置を真空ボックス内から外部へ移動し、絶縁層厚さ0.05mmの両面銅張積層板を得た。なお、ラミネートロールは、ゴムショア硬度80度のシリコーンゴム(明和ゴム工業(株)製: シリクッスーパーH80)で厚さ2mmの表面層を構成した。
【0059】
(比較例2)
比較例1で得られたプリプレグ1枚の上下に厚さ18μmの銅箔(日本電解株式会社製、YGP−18)を重ねて1セットとし、それを200セット作製した。それらを多段型のバッチプレスを用い圧力40kgf/cm、温度200℃で60分間加熱加圧成形を行った。成形後各段の積層板をそれぞれ分離することにより、絶縁層厚さ0.05mmの両面銅張積層板を得た。
【0060】
上記の各実施例及び比較例により得られた積層板について、次の特性評価を行った。得られた結果を表1に示す。各評価は、以下の方法で行った。なお、成形性は、サイズ500mm×500mmの両面銅張積層板をエッチングにより銅箔を除去し、絶縁層のみとしたものを試験片とした。
【0061】
<積層板の特性評価>
1.成形性
成形性は、ボイドの有無、その他異常が見られないかを目視および光学顕微鏡により確認を行った。各符号は、以下の通りである。
◎:ボイド無し
○:10μm未満のボイド有るが、実用可能
×:ボイド多数有り
2.外観
サイズ500mm×500mmの基板について、目視によりシワ、打痕及びピット等(以下、シワ等という)の有無を確認した。
◎:シワ等無し
○:100μm未満のシワ等が有るが、実用可能
×:シワ等が多数有り
【0062】
3.銅箔ピール強度
銅箔ピール強度は、JIS C 6481に基づいて行った。
4.半田耐熱性
半田耐熱性は、片面のみをエッチングし、50mm×50mmのサイズに切断後、121℃、2.0気圧のプレッシャークッカー条件で1時間、および煮沸2時間の吸湿処理を行った。続いて、260℃半田槽に30秒浸漬した後、フクレ、ミーズリングの有無を目視および光学顕微鏡により観察した。
5.ガラス転移点(Tg)
TA Instruments社製DMA測定装置にて3℃/分の昇温条件にて昇温し、tanδのピ−ク位置を求め、これをガラス転移点とした。
【0063】
6.吸水率
吸水率は、JIS C 6481に基づいて行った。
7.熱膨張係数
TA Instruments社製TMA測定装置にて5℃/分の昇温条件にて昇温し、厚み方向(Z方向)の熱膨張係数を測定した。
8.難燃性
UL−94規格に従い、垂直法により測定した。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、実施例1〜実施例5は、成形性が良好であり、外観、銅箔ピール強度などの積層板特性において優れており、シート状繊維基材ではなくプリプレグを用いた比較例1、および従来の多段型のバッチプレスを用いた比較例3に比較しても遜色ない結果であった。また、実施例1は、特に成形性、積層板外観が他の実施例よりも優れていた。生産性については、各実施例は、連続の製造方式であるので、比較例3のようなバッチ式の多段型プレスに比較して、格段に優れた生産性を有していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、耐熱性、低熱膨張性、難燃性および生産性の高い積層板の製造方法および装置を提供するものである。また、シート状繊維基材を予備加熱し、かつラミネートロールの表面層を弾性材料で構成しているため、シート状繊維基材と接着性樹脂層を有する金属箔等との接合をより強固に均一に行うことができ、かつシート状繊維基材と接着性樹脂層を有する金属箔の積層成形を真空条件で行うことにより、成形性に優れた積層板を安定的に製造できる。従って、プリント回路板等の基板として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明における積層板の製造工程を示す概略図である。
【図2】本発明において用いられるラミネートロールの一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 シート状繊維基材供給部
2 シート状繊維基材
3 金属箔供給部
4 接着性樹脂層を有する金属箔
5 ラミネートロール
6 予備加熱装置
7 冷却ロール
8 巻き取りロール
9 真空ボックス
10 台車
21 ロール本体
22 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空条件下にて、シート状繊維基材を鉛直方向に移送しながら積層板を連続的に製造する方法であって、
前記シート状繊維基材を予備加熱する工程と、
前記シート状繊維基材と接着性樹脂層を有する金属箔またはキャリアフィルムとを、表面が弾性材料で構成されたラミネートロールで加熱加圧する工程とを有することを特徴とする積層板の連続製造方法。
【請求項2】
前記シート状繊維基材の単位面積当りの重量が20〜110g/mである請求項1に記載の積層板の連続製造方法。
【請求項3】
前記シート状繊維基材を予備加熱する工程において使用される加熱装置がフラットパネル状ヒ−タ−である請求項1または2に記載の積層板の連続製造方法。
【請求項4】
前記接着性樹脂層の樹脂組成物がシアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーと、無機充填材とを必須成分とするものである請求項1ないし3のいずれかに記載の積層板の連続製造方法。
【請求項5】
前記工程を減圧にしたひとつの真空ボックス内で行う請求項1ないし4のいずれかに記載の積層板の連続製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の積層板の連続製造方法を実施する装置であって、前記シート状繊維基材および金属箔またはキャリアフィルムをそれぞれ供給する供給装置、前記シート状繊維基材を予備加熱する加熱装置、前記シート状繊維基材と金属箔またはキャリアフィルムとを加熱加圧する、表面が弾性材料で構成されたラミネートロール、これら積層板製造の装置一式を格納する、減圧化しうる真空ボックス、および、この真空ボックス内部を減圧にする減圧装置を有することを特徴とする積層板の連続製造装置。
【請求項7】
前記積層板製造の装置一式は可動式で、真空ボックス内に出し入れ可能である請求項6に記載の積層板の連続製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−137389(P2008−137389A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335798(P2007−335798)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【分割の表示】特願2004−77396(P2004−77396)の分割
【原出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】