説明

穴開け作業機

【課題】杭を土中深くまで差し込むのに適した作業機を提供する。
【解決手段】本願発明の穴開け作業機1は、ハウジング41と、ハウジング41内で回転する回転体と、上記回転体の回転によってハウジング41内で旋回する撃打体と、ハウジング41の先端側部位において軸線方向に往復移動可能に支持された撃打力伝達部材と、上記撃打力伝達部材の先端側にある穴開け作業体50とを備える。穴開け作業体50は、軸線方向に往復移動可能で上記撃打力伝達部材から撃打力を受けるシャフト部51と、軸線方向に一定外径の中空部53と、先端部54とを有する。穴開け作業体50が基端側に移動した時に上記撃打体から上記撃打力伝達部材を介して穴開け作業体50に先端側への撃打力が付与される。穴開け作業体50が先端側に移動した時に上記撃打体から基端側に向かう撃打力を受けて穴開け作業体50に伝達させる補助撃打力伝達機構60を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、穴開け作業機に関し、たとえば丸太やパイプ材などの杭を土中に差し込むための下穴を開ける作業に用いる穴開け作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
農業や建築業などの分野においては、土中に丸太やパイプ材などの杭を打ち込む作業が必要とされる場合がよくある。たとえば、農業においては、防獣ネットやビニールハウスのシートを張るために丸太やパイプ材などの支柱を土中に打ち込む必要がある。また、果樹園では、成熟して重量が増した果実が強風によって収穫前に落下するのを防止するべく、本願の図8に示すように、杭90を土中に打ち込んでこの杭90に果実が付いた枝91をくくり付ける場合がある。
【0003】
防獣ネットは、動物が飛び越えて侵入するのを防止するために、その高さを2m前後以上に設定する場合がある。ビニールハウスについても内部空間を大きく確保するために高さが2m以上に及ぶ場合がある。また、果実を付けた枝を支えるための杭としても、2m以上に及ぶ場合がある。このような場合、杭打ち作業を手作業で行うには、たとえば足場を設けて杭の上端をハンマなどを用いて撃打することにより土中に打ち込む必要があり、作業者への負担が大きい。また、1シーズン中に各農家が打ち込む杭の本数は数千本以上にも及ぶことがあり、この場合、杭打ち作業の負担は極めて大きく、作業性も悪い。
【0004】
これに対し、杭などの対象物に対して撃打力を付与するように構成された撃打作業機が知られている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1に開示された撃打作業機は、同文献の図1〜図3に示されるように、駆動源としてのエンジン(2)と、エンジン(2)からの回転出力を伝動するための伝動軸(30)が内部に嵌挿された筒状体(3)と、筒状体(3)の先端に設けられた撃打機構(4)とを備えている。この撃打機構(4)は、エンジン(2)からの回転出力によってハウジング(40)内で回転駆動される回転体(41)と、この回転体(41)の偏心位置に保持された撃打体(42)と、ハウジング(40)の先端側部位に往復運動可能に支持された撃打作業体(43)とを備えて構成されている。また、ハウジング(40)の先端部には筒状保持部材(48)が連結されている。この筒状保持部材(48)によって杭などの対象物(5)の上端が撃打作業体(43)と位置合わせされる。エンジン(2)の駆動により回転体(41)が回転すると、この回転に伴って撃打体(42)がハウジング(40)内で旋回させられ、撃打作業体(43)を介して対象物(5)に撃打力を連続的に付与することができる(本願の図9参照)。このような撃打作業機によれば、対象物の撃打すべき部位が比較的高所であっても、杭打ち作業を、作業者の負担を軽減しつつ効率よく行うことができる。
【0005】
長尺な杭を土中に打ち込む場合には、杭の転倒などの不具合を防止する観点から、土中への打ち込み深さを比較的深くすること(たとえば50cm程度の深さ)が要求される。しかしながら、上記構成の撃打作業機を用いてたとえば50cm程度の深さまで杭を打ち込むには、不都合があった。すなわち、50cm程度の深さになると土質が硬質になる場合があり、撃打作業機からの連続撃打力をもってしても丸太やパイプ材などの杭を適切に打ち込むことができないといった事態が生じ得た。また、このような場合に杭打ち作業を継続すると、繰り返し撃打力を受ける杭の上端部分が損傷したり、あるいは撃打作業機の筒状体などに無理な負荷が作用して撃打作業機が損傷するといった不都合も生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−231521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、丸太やパイプ材などの杭を土中の比較的深くまで差し込むのに適した作業機を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を採用している。
【0009】
すなわち、本願発明によれば穴開け作業機が提供される。この穴開け作業機は、ハウジングと、駆動源からの動力によって上記ハウジング内で回転駆動させられる回転体と、上記回転体の回転によって上記ハウジング内で旋回させられる撃打体と、上記ハウジングの先端側部位において先端側および基端側を結ぶ軸線方向に往復移動可能に支持された撃打力伝達部材と、上記撃打力伝達部材に対して上記ハウジングの先端側に位置する穴開け作業体と、を備えた穴開け作業機であって、上記穴開け作業体は、上記ハウジングに対して上記軸線方向に往復移動可能に支持されて上記撃打力伝達部材から撃打力を受けるシャフト部と、このシャフト部につながるとともに上記軸線方向において一定外径および所定長さを有する中空部と、この中空部につながる先細り状の先端部とを有し、上記穴開け作業体が上記ハウジングに対して基端側に移動した時に、上記撃打体から上記撃打力伝達部材を介して上記穴開け作業体に先端側への撃打力が付与されるように構成されており、上記穴開け作業体が上記ハウジングに対して所定距離先端側に移動した時に、上記撃打体から基端側に向かう撃打力を受けてその撃打力を上記穴開け作業体に伝達させる補助撃打力伝達機構をさらに備えることを特徴としている。
【0010】
本願発明の作業機によれば、杭を土中に直接打ち込むのではなく、杭を土中に差し込むための下穴を開けることができる。具体的には、地面への穴開け時には、作業者が作業機を支持して穴開け作業体の先端を地面に押し付けると、穴開け作業体およびこれに撃打力を与える撃打力伝達部材がハウジングに対して基端側に移動する。このとき、ハウジング内を旋回している撃打体から撃打力伝達部材を介して穴開け作業体に先端側への撃打力が周期的(連続的)に付与される状態にある。その結果、穴開け作業体は、振動を伴って土中に押し込まれていく。
【0011】
ここで、穴開け作業体は、その先端部が先細り状であるので、土質が硬質である場合でも撃打体から受ける連続的な撃打力によって土中を突き進むことができる。穴開け作業体が土中に押し込まれるのに伴い、一定外径および所定の軸線方向長さを有する中空部によって、土中には所定形状の穴(下穴)が形成される。中空部の外径および軸線方向の長さは、差し込むべき杭のサイズに対応した寸法とすればよい。中空部の外径および長さを比較的大きい寸法とすれば、比較的大きい平面サイズの下穴を土中深くまで形成することも可能である。また、穴開け作業体は、穴を形成するための部分が中空部であることから、外径および軸線方向長さを大きくしても重量化を抑制することができる。
【0012】
一方、穴開け作業体を土中から引き抜く時には、穴開け作業体に、土との摩擦力によって引き抜き方向すなわち基端側に向かう方向への移動を阻止する力が作用する。したがって、穴開け作業体は土中においてそのままの位置に拘束され、作業機を引き上げると、ハウジングのみが基端側に移動して、穴開け作業体はハウジングに対して先端側に移動することになる。そして、穴開け作業体がハウジングに対して所定距離先端側に移動した時点で、補助撃打力伝達機構が、撃打体からの基端側に向かう撃打力を受け、かつその撃打力を土中に拘束されている穴開け作業体に伝達させる。この場合、穴開け作業体はハウジングに対して先端側に移動していることから、撃打体から穴開け作業体に対する先端側への撃打力の付与は断たれた状態になる。
【0013】
このように、補助撃打力伝達機構の動作により、穴開け作業時には穴開け作業体に先端側への撃打力を作用させる撃打体が、引き抜き作業時には、補助撃打力伝達機構を介して土中に拘束されている穴開け作業体に基端側への撃打力を作用させることになる。したがって、作業者による通常の引き抜き力に加えて引き抜き方向への撃打力が穴開け作業体に作用することになり、土中への下穴の形成を適切に行った後に、穴開け作業体を円滑かつ容易に土中から引き抜くことが可能になる。
【0014】
穴開け作業体を土中から引き抜いた後は、地面には所望サイズの下穴が開いた状態となる。ここで、穴開け作業体は、穴を形成するための中空部が一定外径を有して軸線方向において一様であることから、穴開け作業体を土中から引き抜く際に当該穴開け作業体に同伴して土が持ち上げられることは抑制され、下穴の形成後に当該下穴に土が逆戻りするといった不都合は防止される。このようにして形成された下穴に対して、丸太やパイプ材などの杭をスムーズに差し込むことができる。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記補助撃打力伝達機構は、上記ハウジングの基端側部位において上記軸線方向に往復移動可能に支持されて先端側への移動時に上記撃打体から撃打力を付与される補助撃打力伝達部材と、上記ハウジングの基端側に配置されて上記補助撃打力伝達部材を先端側に移動させることにより上記補助撃打力伝達部材から基端側に対する振動を付与される振動付与体と、上記ハウジングの先端側に配置されて上記ハウジングに対して先端側に移動することにより上記穴開け作業体に対してその移動を阻止した状態で基端側への振動を伝達する振動伝達体と、上記ハウジングに対して上記軸線方向に沿って移動可能に支持されて上記振動付与体と上記振動伝達体とを連結する連結体と、上記補助撃打力伝達部材を上記ハウジングに対して基端側に付勢する弾性体と、を備えている。この場合において、好ましくは、上記連結体は少なくとも2個備えられており、これら連結体と上記振動付与体と上記振動伝達体とは、矩形枠状に組み立てられている。
【0016】
このような構成によれば、上記作業機の引き抜き時にハウジングに対して穴開け作業体が所定距離先端側に移動した場合には、補助撃打力伝達機構の構成要素である補助撃打力伝達部材に対して撃打体から基端側への撃打力が付与され、かつその撃打力は振動付与体に伝達される。そして、この振動付与体は連結体を介して振動伝達体に連結されていることから、振動付与体に付与された基端側への撃打力は、振動伝達体から穴開け作業体に伝達される。
【0017】
補助撃打力伝達部材は、弾性体によりハウジングに対して基端側に付勢されているので、作業機を地面に押し付けて行う穴開け作業時において穴開け作業体がハウジングに対して基端側に移動する場合には、弾性体の付勢力が勝ることによって補助撃打力伝達部材および振動付与体がハウジングに対して基端側に移動した状態になる。このとき、補助撃打力伝達部材が先端側に移動することはないので、撃打体から基端側への撃打力が補助撃打力伝達部材に付与されることはない。
【0018】
一方、上記作業機の引き抜き時において、穴開け作業体の基端側への移動が阻止された状態でハウジングのみが基端側に移動した場合には、振動伝達体ないし振動付与体がハウジングとの連係動を阻止された状態にある。このため、振動付与体は、補助撃打力伝達部材に当接しながら弾性体の付勢力に抗してハウジングに対して先端側に相対移動し、補助撃打力伝達部材を先端側に移動させる。この結果、補助撃打力伝達部材から振動付与体に対して基端側への撃打力が付与されるとともに、これに起因して振動伝達体から穴開け作業体に基端側への振動が伝達され、この振動によって穴開け作業体は容易に引き抜かれることになる。
【0019】
好ましい実施の形態においては、上記穴開け作業体は金属からなり、上記シャフト部と上記中空部と上記先端部とは、溶接によって一体接合されている。
【0020】
このような構成によれば、所定の強度および耐久性を有する穴開け作業体を、容易に作製することができる。
【0021】
本願発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明に係る穴開け作業機の一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示す穴開け作業機の部分拡大断面図である。
【図5】図1に示す穴開け作業機を使用している状態を説明するための図2と同様の断面図である。
【図6】図1に示す穴開け作業機を使用している状態の図である。
【図7】図1に示す穴開け作業機を使用している状態の図である。
【図8】杭の使用例を示す図である。
【図9】従来の撃打作業機を使用している状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1は、本願発明の一実施形態に係る穴開け作業機1の全体図であり、図2は、図1のII−II線に沿う断面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。なお、図2以降の図面においては、各図面における上側が基端側であり、下側が先端側である。
【0025】
図1〜図3に示すように、穴開け作業機1は、エンジン10と、このエンジン10からの回転出力を伝動するための伝動軸20が内部に収容された筒状体30と、この筒状体30の先端部に設けられた撃打機構40と、穴開け作業体50と、補助撃打力伝達機構60と、を備えて構成されている。穴開け作業機1は、丸太やパイプ材などの杭を地面に差し込むのに先立ち、地面に下穴を形成するのに使用されるものである。
【0026】
図1に良く表れているように、エンジン10は、筒状体30に取り付けられて枠状に形成された上部ハンドル31によって囲まれており、この上部ハンドル31には、エンジン10からの回転出力を制御するための操作レバー32が設けられている。上部ハンドル31よりも下方には、グリップハンドル33が設けられている。穴開け作業機1は、グリップハンドル33と上部ハンドル31とを作業者が把持した状態で操作レバー32を操作することにより、撃打機構40に伝達される回転出力を調整しながら作業を行うことができるように構成されている。
【0027】
図2および図3に示すように、撃打機構40は、エンジン10からの回転出力によってハウジング41の内部で回転させられる回転体42と、この回転体42に保持されて旋回させられる撃打体43と、ハウジング41にその先端側方向および基端側方向を結ぶ軸線方向に所定距離内で往復移動可能に支持された撃打力伝達部材44を備えて構成されている。
【0028】
図3に示すように、回転体42は、所定距離離間して配置された2つのフランジ421を有しており、このフランジ421は、連結部422によって一体に連結されている。また、各フランジ421の各外側面には、同一軸線をもった回転支軸423,424が突設されている。一方の回転支軸423はベアリング425を介して、もう一方の回転支軸424はベアリング426を介して、それぞれハウジング41の両側壁に対して回転可能に支持されており、回転支軸424の一端部には、傘歯車424Aが取り付けられている。すなわち、上記エンジン10からの回転出力は、上記伝動軸20を介して上記筒状体30の先端側まで伝動され、伝動軸20の先端部に取り付けられた傘歯車21と上記傘歯車424Aとの噛み合わせによって回転体42が回転駆動させられるように構成されている。
【0029】
図2に示すように、回転体42の2つのフランジ421には、外周縁において開口する切り欠き421aが形成されている。この切り欠き421aは、一定幅を有してフランジ421の半径方向内方にいたっており、かつ、底部421bは円弧内面状となっている。この切り欠き421aには、撃打体43の両端部が遊装保持されるが、この点については後述する。
【0030】
ハウジング41は、全体として、円筒状の内部空間を有するように、円筒状の周壁部材41Aと、この周壁部材41Aを両側から挟むように位置する略円形の側壁部材41Bとを有している。両側壁部材41Bには、上記したように、回転体42の回転支軸423,424が回転可能に支持されている。また、周壁部材41Aの内周には、回転体42の回転中心軸(回転支軸423,424の軸心)を中心とする円筒内面状のガイド面411,412が形成されている。
【0031】
撃打体43は、図3に示すように、上記2つのフランジ421間の寸法と対応した軸方向寸法を有する円柱状大径部431と、この円柱状大径部431の軸方向両端部から同軸状に延出する円柱状小径部432をもって形成されている。円柱状小径部432の外径は、フランジ421に形成した切り欠き421aの幅寸法と対応しており、この円柱状小径部432の軸方向長さは、ほぼフランジ421の厚み寸法と対応している。そしてこの撃打体43は、図2および図3に示すように、円柱状大径部431が両フランジ421間に位置するようにして、両円柱状小径部432が両フランジ421の切り欠き421aにそれぞれ係合させられる。なお、このように円柱状小径部432が切り欠き421aに係合させられた状態において、撃打体43は回転自由かつ、切り欠き421aの延びる方向に沿って移動自由である。
【0032】
ハウジング41の周壁部材41Aの内周面に形成されたガイド面411,412は、少なくとも、撃打体43の円柱状大径部431の軸方向両端部に接触可能な2つの帯状領域411a,412aを備える。また、この2つの帯状領域411a,412aを挟む領域には、ガイド面411,412より凹入する凹入部413が形成されている。この凹入部413は、周壁部材41Aの内周の全周にわたって連続的に形成されていてもよいし、周方向に分散させて形成してもよい。この凹入部413には、グリス等の潤滑剤が滞留保持される。
【0033】
図3に示すように、ハウジング41の周壁部材41Aには、その先端側位置において、外方に延出し、かつハウジング41の内部空間に連通する円筒ボス部414が形成されている。この円筒ボス部414の軸線は、ほぼ、回転体42の回転中心軸(回転支軸423,424)に対して直交する、回転体42の半径方向に延びるように形成されている。また、この円筒ボス部414は、撃打体43の円柱状大径部431の軸方向中心位置と対応するようにして形成されている。
【0034】
円筒ボス部414には、撃打力伝達部材44が軸線方向移動可能に保持されている。撃打力伝達部材44は、図2および図3に示すように、円筒ボス部414の内径と対応する外径をもつ円柱状のシャンク部441と、このシャンク部441の下部に形成された大径フランジ部442とを備える。この撃打力伝達達部材44の頂面44aは、平坦面とされているとともに、この頂面44aには、所定深さの円形孔の形態とされた凹陥部44bが形成されている。図3において符号414Aは、Oリングを示す。
【0035】
図3に示すように、撃打力伝達部材44は、大径フランジ部442が円筒ボス部414の底部に当接することにより、基端側への移動が規制されて上動位置が規定される。そうして、図2に良く表れているように、この撃打力伝達部材44の上動位置は、その平坦な頂面44aがガイド面411,412の弦をなすように設定される。
【0036】
穴開け作業体50は、撃打力伝達部材44の下方(先端側)に設けられ、図2〜図4に表れているように、撃打力伝達部材44から撃打力を受けるシャフト部51と、ジョイント部52と、中空部53と、先端部54とを備える。シャフト部51は、ハウジング41の円筒ボス部414の下端に固定されたホルダ415に対して軸線方向にスライド可能に挿通するとともに、後述する補助撃打力伝達機構60の振動伝達体623にも挿通している。シャフト部51の側面には、その軸方向所定長さにわたって凹部51aが形成されており、かつ、振動伝達体623には、凹部51a内に進入して凹部51aの長手方向両端壁に係合可能なストッパピン624が設けられている。このストッパピン624と凹部51aとにより、穴開け作業体50は、その回転動作が規制されるとともに、振動伝達体623に対する相対的な往復移動行程が一定距離に規制される。
【0037】
ジョイント部52は、シャフト部51と中空部53とを接続するためのものであり、基端側の開口52aにはシャフト部51の先端が嵌挿され、先端側の筒部52bには、中空部53の基端(上端)が外嵌されている。
【0038】
中空部53は、軸線方向において一定外径および所定の軸方向長さを有しており、たとえば鋼管などの金属製パイプからなる。中空部53の外径および軸方向長さは、地面に差し込むべき杭のサイズに対応した寸法とされている。中空部53の具体的な寸法を挙げると、たとえば外径がφ20〜70mm程度、軸方向長さが30〜70cm程度とされる。中空部53は、上記したようにジョイント部52を介してシャフト部51の先端側に接続されている。
【0039】
先端部54は、中空部53の先端(下端)に対してこの先端開口を塞ぐように接続されており、先細り状とされている。上記構成のシャフト部51、ジョイント部52、中空部53、および先端部54は、たとえば鉄系金属からなる鋼材であり、外周部を溶接することによって一体接合されている。
【0040】
なお、本実施形態では、撃打力伝達部材44と穴開け作業体50とは分離しているが、このような構成に代えて、撃打力伝達部材44と穴開け作業体50とが一体的に連結された構成を採用することもできる。
【0041】
補助撃打力伝達機構60は、図2および図3に示すように、ハウジング41に設けられた補助撃打力伝達部材61と、振動伝達用枠体62とを備える。ハウジング41の周壁部材41Aには、その基端側位置において、外方に延出し、かつハウジング41の内部空間に連通する、円筒ボス部416が形成されており、補助撃打力伝達部材61は、この円筒ボス部416に軸方向移動可能に保持されている。円筒ボス部416は、回転体42の回転支軸423,424を挟んで円筒ボス部414に対向する基端側位置に設けられている。また、この円筒ボス部416の軸線は、円筒ボス部414の軸線と略一致させられている。
【0042】
補助撃打力伝達部材61は、円筒ボス部416の内径と対応する外径をもつ円柱状のシャンク部611と、このシャンク部611の上部に形成された大径フランジ部612とを備える。この補助撃打力伝達部材61の頂面61aは、平坦面とされているとともに、この頂面61aには、円形状の形態とされた凹陥部61bが形成されている。図2において符号416Aは、Oリングを示す。
【0043】
図2に示すように、円筒ボス部416の上端と大径フランジ部612との間には、圧縮コイルバネからなるバネ部材63がシャンク部611の外周部に巻回された状態で介装されている。このバネ部材63は、補助撃打力伝達部材61を上方に付勢するためのものであり、通常時には、補助撃打力伝達部材61の頂面61aは、撃打体43と干渉しないように基端側に退避している。
【0044】
図5に示すように、補助撃打力伝達部材61は、大径フランジ部612とシャンク部611の間の段部が円筒ボス部416の上部に当接することにより、先端側への移動が規制されて下動位置が規定される。また、この補助撃打力伝達部材61の下動位置は、平坦な頂面61aが周壁部材41Aのガイド面411,412の弦をなすように設定される。したがって、この補助撃打力伝達部材61は、下動位置にあるときには、回転体42の回転動作にともなって旋回する撃打体43の外周面と干渉可能になっている。
【0045】
振動伝達用枠体62は、一対のロッドからなる連結体621と、各連結体621の上端どうしを連結する振動付与体622と、各連結体621の下端どうしを連結する振動伝達体623とを備え、矩形枠状とされている。一対の連結体621は、ハウジング41に設けられた一対の貫通孔417にそれぞれスライド移動可能に挿通している。振動伝達体623には、貫通孔623aが形成されており、この貫通孔623aに上述の穴開け作業体50のシャフト部51が挿通されている。また、振動伝達体623の適所には、貫通孔623aにつながる凹部623bが形成されており、この凹部623bに上述のストッパピン624が嵌合固定されている。
【0046】
上記構成の穴開け作業機1において、ハウジング41を構成する部材のうち内周にガイド面411,412をもつ周壁部材41A、回転体42、撃打体43、撃打力伝達部材44、補助撃打力伝達部材61は、鉄系の硬質材料によって形成し、表面に硬化処理を施すことが望ましい。ハウジング41を構成する部材のうち側壁部材41Bについては、直接衝撃が作用することがないため、アルミニウム等の軽量の材質で形成することができる。
【0047】
次に、上記構成の穴開け作業機1の使用方法および作用について説明する。
【0048】
地面に対して穴開け作業を行うに際しては、図6に示すように、まず、作業者が上部ハンドル31およびグリップハンドル33を握って穴開け作業機1全体を支持するとともに、穴開け作業体50の先端部54を穴開けの対象となる地面に突き当てる。
【0049】
このようにすると、ハウジング41は自重により先端側(下方)に沈み込むので、図2に表れているように、撃打力伝達部材44および穴開け作業体50は、ハウジング41に対して基端側に移動して往復移動行程の最上端に位置することになり、撃打力伝達部材44の大径フランジ部442の下端面と穴開け作業体50のシャフト部51の上端面とが当接する。この状態で操作レバー32を操作してエンジン10の回転数を上げていくと、図示しないクラッチ装置の作動により、エンジン10の回転出力が伝動軸20に伝達され、この伝動軸20の回転によってハウジング41内の回転体42が回転駆動される。この回転体42の回転数は、たとえば、5000rpm以上とすることができる。
【0050】
回転体42が回転すると、そのフランジ421に設けた切り欠き421aの内面が撃打体43の円柱状小径部432を押すことにより、撃打体43は、その円柱状大径部431がガイド面411,412を転動するようにして旋回移動する。
【0051】
撃打力伝達部材44は、その頂面44aがガイド面411,412の弦をなすように位置づけられているため、回転体42が1回転するごとに、上記のように高速旋回する撃打体43が撃打力伝達部材44の頂面44aに接触転動する。このとき、撃打体43には強大な遠心力が作用しているため、この遠心力の作用が助成されて、撃打力伝達部材44をその下方に向けて衝撃的に押下する。このようにして、撃打力伝達部材44には、下向きの高周波数の繰り返し撃打力が連続的に作用する。このような下向きの連続撃打力により、図7に示すように、穴開け作業体50の先端に位置する先端部54は、地中に打ち込まれる。
【0052】
ここで、穴開け作業体50の先端部54は先細り状とされている。このため、土質が硬質である場合でも、撃打体43から撃打力伝達部材44を介して受ける連続的な撃打力によって、穴開け作業体50は土中を突き進むことができる。そして、穴開け作業体50が土中に押し込まれるのに伴い、一定外径および所定の軸方向長さを有する中空部53によって、土中には所定形状の穴(下穴)が形成される。中空部53の外径および長さを比較的大きい寸法とすれば、比較的大きい平面サイズの下穴を土中深くまで形成することが可能である。なお、穴開け作業体50は、穴を形成するための部分が中空部53であることから、外径および軸方向長さを大きくしても重量化を抑制することができる。穴開け作業体50の重量化の抑制は、穴開け作業体50が受ける撃打力を効率よく土中に及ぼすことを可能にし、穴開け作業の効率向上に寄与する。
【0053】
このように地面に対して穴開け作業体50の打ち込み作業を行っている状態においては、補助撃打力伝達部材61は、バネ部材63の付勢力によりハウジング41に対して基端側(上方)に変位させられており、補助撃打力伝達部材61の頂面61aと撃打体43とは干渉しない。したがって、補助撃打力伝達部材61は、穴開け作業体50の打ち込み作業において何ら妨げとなることはない。
【0054】
なお、地面が硬質であるほど、撃打力伝達部材44の頂面44aに接触転動する撃打体43は反発力を受ける。このような反発力が作用しても、撃打体43は切り欠き421aに案内されて回転体42の半径方向内方に退避することができる。次の瞬間には遠心力によってこの撃打体43は、再度ガイド面411,412に衝突させられる。しかしながら、ガイド面411,412には、撃打体43の円柱状大径部431の両端部が接触する帯状領域411a,412aが形成され、両帯状領域411a,412a間には凹入部413が形成されているため、上記した撃打体43の再度のガイド面411,412に対する衝突による衝撃が緩和される。これにより、撃打体43が必要以上に異常振動したり、ガイド面411,412が衝撃によって破損するといった事態が回避され、回転体42の円滑な高速回転が維持される。
【0055】
一方、穴開け作業体50を土中の所望の深さまで打ち込んだ後に土中から引き抜く際には、穴開け作業体50に、土との摩擦力によって引き抜き方向すなわち基端側に向かう方向への移動を阻止する力が作用する。ここで、穴開け作業体50を地面から引き抜くために、作業者が上部ハンドル31やグリップハンドル33を持ち上げることによりハウジング41が引き上げられると、穴開け作業体50はハウジング41に対して先端側に移動し、振動伝達体623は、ストッパピン624によって穴開け作業体50との相対移動が阻止された状態で、穴開け作業体50とともにハウジング41に対して先端側に移動する。そうすると、振動伝達用枠体62を構成する振動付与体622は、補助撃打力伝達部材61に当接しながらハウジング41に対して先端側に移動する。その結果、補助撃打力伝達部材61は、バネ部材63の付勢力に抗してハウジング41に対して先端側に移動し、その頂面61aが撃打体43に干渉する状態となる(図5参照)。この状態においてエンジン10の回転数を上げると、打ち込み作業の場合と同様に、撃打体43は、ガイド面411,412を転動するように旋回移動する。
【0056】
補助撃打力伝達部材61は、その頂面61aがガイド面411,412の弦をなすように位置づけられているので、回転体42が1回転するごとに、高速旋回する撃打体43が補助撃打力伝達部材61の頂面61aに接触転動する。このとき、撃打体43には強大な遠心力が作用しているため、この遠心力の作用が助成されて、補助撃打力伝達部材61をその軸方向上方に向けて衝撃的に押し上げる。このようにして、補助撃打力伝達部材61には、上向きの高周波数の繰り返し撃打力が連続的に作用する。補助撃打力伝達部材61に作用する上向きの撃打力は、振動付与体622、各連結体621、および振動伝達体623を介して穴開け作業体50にも作用する。したがって、作業者による通常の引き抜き力に加えて引き抜き方向への撃打力が穴開け作業体50に作用することになり、その結果、穴開け作業体50を土中から引き抜く作業を容易に行うことができる。なお、この際、撃打力伝達部材44の頂面44aは、撃打体43とは干渉しないようになっている。
【0057】
穴開け作業体50を土中から引き抜いた後は、地面には所望サイズの下穴が開いた状態となる。ここで、穴開け作業体50は、穴を形成するための中空部53が一定外径を有して軸線方向において一様であることから、穴開け作業体50を土中から引き抜く際に穴開け作業体50に同伴して土が持ち上げられることは抑制され、下穴の形成後に当該下穴に土が逆戻りするといった不都合は防止される。このようにして形成された下穴に対して、丸太やパイプ材などの杭をスムーズに差し込むことができる。このようなことから理解されるように、本実施形態の穴開け作業機1は、丸太やパイプ材などの杭を土中の比較的深くまで差し込むのに適している。
【0058】
もちろん、この発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本願発明は、上記実施形態でいえば、穴開け作業体50や補助撃打力伝達機構60の構成に特徴を有するものであり、ハウジング41内の回転体42を回転させるための構成や、撃打体43を旋回させるための構成は種々変更が可能である。
【0059】
また、実施形態では、回転体42に対し、その周方向の1箇所に撃打体43を保持させているが、回転体42に対し、その周方向の複数箇所、たとえば、180°毎に2箇所、120°毎に3箇所に切り欠き421aを設け、その切り欠き421aのそれぞれに撃打体43を保持させるようにしてもよい。このようにすることにより、回転体42を同じ回転数で回転させても、2倍、あるいは3倍の高周波数で撃打力伝達部材44あるいは補助撃打力伝達部材61に軸方向の連続的な繰り返し撃打力を作用させることができ、作業効率をさらに高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1 穴開け作業機
10 エンジン
20 伝動軸
30 筒状体
40 撃打機構
41 ハウジング
42 回転体
43 撃打体
44 撃打力伝達部材
50 穴開け作業体
51 シャフト部
53 中空部
54 先端部
60 補助撃打力伝達機構
61 補助撃打力伝達部材
62 振動伝達用枠体
63 バネ部材(弾性体)
621 連結体
622 振動付与体
623 振動伝達体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
駆動源からの動力によって上記ハウジング内で回転駆動させられる回転体と、
上記回転体の回転によって上記ハウジング内で旋回させられる撃打体と、
上記ハウジングの先端側部位において先端側および基端側を結ぶ軸線方向に往復移動可能に支持された撃打力伝達部材と、
上記撃打力伝達部材に対して上記ハウジングの先端側に位置する穴開け作業体と、を備えた穴開け作業機であって、
上記穴開け作業体は、上記ハウジングに対して上記軸線方向に往復移動可能に支持されて上記撃打力伝達部材から撃打力を受けるシャフト部と、このシャフト部につながるとともに上記軸線方向において一定外径および所定長さを有する中空部と、この中空部につながる先細り状の先端部とを有し、
上記穴開け作業体が上記ハウジングに対して基端側に移動した時に、上記撃打体から上記撃打力伝達部材を介して上記穴開け作業体に先端側への撃打力が付与されるように構成されており、
上記穴開け作業体が上記ハウジングに対して所定距離先端側に移動した時に、上記撃打体から基端側に向かう撃打力を受けてその撃打力を上記穴開け作業体に伝達させる補助撃打力伝達機構をさらに備えることを特徴とする、穴開け作業機。
【請求項2】
上記補助撃打力伝達機構は、上記ハウジングの基端側部位において上記軸線方向に往復移動可能に支持されて先端側への移動時に上記撃打体から撃打力を付与される補助撃打力伝達部材と、上記ハウジングの基端側に配置されて上記補助撃打力伝達部材を先端側に移動させることにより上記補助撃打力伝達部材から基端側に対する振動を付与される振動付与体と、上記ハウジングの先端側に配置されて上記ハウジングに対して先端側に移動することにより上記穴開け作業体に対してその移動を阻止した状態で基端側への振動を伝達する振動伝達体と、上記ハウジングに対して上記軸線方向に沿って移動可能に支持されて上記振動付与体と上記振動伝達体とを連結する連結体と、上記補助撃打力伝達部材を上記ハウジングに対して基端側に付勢する弾性体と、を備えている、請求項1に記載の穴開け作業機。
【請求項3】
上記連結体は少なくとも2個備えられており、これら連結体と上記振動付与体と上記振動伝達体とは、矩形枠状に組み立てられている、請求項2に記載の穴開け作業機。
【請求項4】
上記穴開け作業体は金属からなり、
上記シャフト部と上記中空部と上記先端部とは、溶接によって一体接合されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の穴開け作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−242377(P2010−242377A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92234(P2009−92234)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(502038783)
【Fターム(参考)】