説明

空気のうのエア漏れの検出方法及び検出装置

【課題】生産性を阻害することなく、簡易かつ迅速に空気のうのエア漏れを検出できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】空気のうのエア漏れ検出装置1は、気体の温度を周囲温度と異なる温度に調温する手段2と、調温した気体を空気のう3に充填する手段4と、空気のうの周囲温度の乱れを感知する手段6とを具える。空気のう3に破損部5がある場合には、破損部5から周囲温度と異なる温度を有する気体が漏れ出し、空気のうの周囲温度に乱れを生ずる。これを感知して、空気のうのエア漏れを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部に加圧空気を保持するための空気のう、特にはチューブ入りタイヤ用チューブ、チューブレスタイヤ車輪及び安全タイヤ用空気のう等を含む車両用空気のうの、ピンホール等によるエア漏れの検出方法及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ用チューブ等の車両用空気のうのエア漏れは、空気のうの中に空気を充填して膨らませたものを水中に沈め、気泡の発生の有無を調べることにより、検出を行っている。しかし、製造された空気のうを全数検査するには、水没するための装置が大掛かりになり、その設置位置が限定されるという問題がある。さらに、検査を終えた空気のうは、乾燥された状態でタイヤ等に組み込まれるが、自然乾燥には時間とスペースを必要とし、布で拭く等の強制乾燥には手間がかかり、いずれの乾燥法を採用するにしても、生産性が大幅に阻害されるという問題がある。
【0003】
また、特許文献1には、空気のうを水没することなくピンホールを検出するため、空気のうの内面に予め導電性ゴムを内張りし、この導電性ゴムと、空気のう外周面に摺動可能に接触させた外部電極との間に所定の電圧を印加しつつ、外部電極を摺動させ、導電性ゴムと外部電極との間の放電を検知することでピンホールの検出を行うことが記載されている。しかし、この方法は、空気のうの内面に予め導電性ゴムを内張りしなければならないため、適用可能な空気のうの種類が限定され上、空気のうの全外周面を検査するには比較的長い時間を要し、やはり生産性を阻害するという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平7−55628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、この発明の目的は、生産性を阻害することなく、簡易かつ迅速に空気のうのエア漏れを検出できる方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、この発明に従う空気のうのエア漏れ検出方法は、周囲温度と異なる温度を有する気体を空気のう内に充填し、漏れ出した気体によって生ずる空気のうの周囲温度の乱れを感知して、空気のうのエア漏れを検出することを特徴とする。
【0007】
なお、ここでいう「周囲温度と異なる温度」には周囲温度よりも低い温度及び高い温度の双方を含むものとし、「周囲温度の乱れ」とは、本来ならば一様な温度となっている周囲雰囲気中に、周囲温度と異なる温度を有する、すなわち周囲温度よりも低温又は高温の気体が漏れ出すことにより、局所的な低温部又は高温部が形成されている状態をいうものとする。
【0008】
また、周囲温度との温度差が20℃以上の気体を用いること、赤外線サーモグラフィ法を用いて周囲温度の乱れを感知することが好ましい。
【0009】
そして、この発明に従う空気のうのエア漏れ検出装置は、気体の温度を周囲温度と異なる温度に調温する手段と、調温した気体を空気のうに充填する手段と、空気のうの周囲温度の乱れを感知する手段とを具えることを特徴とする。
【0010】
なお、ここでいう「調温」には、加温及び冷却の双方を含むものとする。
【0011】
また、調温手段は気体の温度と周囲温度との温度差を20℃以上にすること、周囲温度の乱れを感知する手段は赤外線サーモグラフィ装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、生産性を阻害することなく、簡易かつ迅速に空気のうのエア漏れを検出できる方法及び装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明に従う代表的な空気のうのエア漏れ検出装置の構成を概略的に示す。
【0014】
図1に示すエア漏れ検出装置1は、外気を導入し、導入した外気の温度を周囲温度と異なる温度に加温又は冷却する、例えばヒーター、クーラー又は熱交換器等の調温手段2と、検査に供する空気のう3に調温した気体を送り込む、例えばコンプレッサ等の充填手段4と、空気のう3に生じたピンホール等の破損部5から漏れ出した気体によって生ずる空気のう3の周囲温度の乱れを感知する、例えば温度センサ等の温度感知手段6とを具える。図示の態様では、空気のう3に充填する気体として空気を用いているが、窒素ガス等の他の気体を用いてもよい。また、コンプレッサ等の機械的加圧機器に代えて、充填手段4として加圧気体の入ったボンベを用いてもよい。さらに、充填手段4としてコンプレッサ等の機械的加圧機器を用いる場合であって、加圧することにより気体の温度が十分に上昇するような場合には、機械的加圧機器が調温手段2を兼ねることもできる。さらにまた、調温手段2と充填手段4の配設順序は、調温された気体が空気のう3に充填される限り、いずれが空気のう3側にあってもよい。
【0015】
次に、かかる装置1を用いて、空気のう3のエア漏れを検出する方法について説明する。
まず、空気のう3に設けられた充填バルブ8に気体の供給路7を接続する。次いで、装置1の調温手段2及び充填手段4を作動させ、空気のう3内に調温された気体を充填する。これにより空気のう3の内部には周囲よりも高い圧力が発生する。ここで、空気のう3に破損がなく完全な気密性が保たれている場合には、空気のう3は変形により生ずる張力と内圧が平衡するまで膨張を続けるが、空気のう3内に充填された気体が外部に漏れ出すことはないので、空気のう3の周囲温度は略一様のままに保たれる。一方、空気のう3にピンホール等の破損部5があり気密性が破られている場合には、空気のう3はある程度は膨張するが、同時に破損部5から充填された気体が外部に漏れ出すため、破損部5の周囲に局所的に低温部又は高温部が形成される。この低温部又は高温部を温度感知手段6により感知することにより、破損部5の存在、すなわちエア漏れを検出することができるのである。
【0016】
このように、この発明では、供試空気のうへの導電性ゴムの内張り等の前処理、及び検査後の空気のうの乾燥等の後処理の必要がないため、生産性に与える影響が極めて少なく、かつ検査が容易となる。加えて、空気のう自体には加工を要しないので、空気のうのサイズや材質に関わらず汎用的に使用することが可能であり、また、新品の空気のうだけでなく、使用中の空気のうのエア漏れの検出にも適用可能である。
【0017】
また、充填する気体と周囲温度との温度差は、検出精度を高め、かつ検出を迅速にする観点からは、好ましくは20℃以上、さらに好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上とする。この温度差が大きければ大きいほど、周囲温度の乱れが大きく、かつ乱れが生じるまでの時間が短くなるからである。しかし、充填する気体として加温した気体を用いる場合には、空気のう自体の熱変質や作業者の安全を配慮して、温度差を100℃以下とすることが好ましい。
【0018】
検査時の空気のう3の内圧については、検査中にさらなる破損部5が発生することを防止する観点からは、空気のう3の使用時の内圧以下とすることが好ましく、充填した気体の破損部5から漏出量を確保し、検出精度と検出速度の向上を図る観点からは、0.7kPa(相対圧)以上とすることが好ましく、より好ましくは約70kPa(相対圧)である。
【0019】
空気のう3の周囲温度の乱れは、図示は省略するが、熱電対等の温度センサをグリッド状に配列し、これを用いて空気のう3を包囲したり、複数個の温度センサを直線状に配列し、これを空気のう3の外周上を移動させたりすることによっても感知できる。また、温度感知手段6として赤外線サーモグラフィ装置を用いれば、低温部及び高温部を容易に可視化できるので、検出が簡易かつ迅速になる上、検出の自動化も可能となる。
【0020】
空気のう3の周囲温度の乱れを検出する範囲としては、空気のう3の外周面の直上から、好ましくは10cm以内、より好ましくは5cm以内を測定する。空気のう3に近いほど充填した空気の漏出による温度変化が大きく、検出精度が向上するからである。また、赤外線サーモグラフィ装置を用いる場合には、空気のうを表示する領域の面積が全画像領域の面積の60〜90%となるようにすることが好ましく、より好ましくは全画像領域の面積の約80%である。
【0021】
図1では、チューブ状の空気のうのエア漏れを検出する態様を示したが、チューブレスタイヤをホイールに組み付けてタイヤ車輪としたものに対しても、同様の操作によりエア漏れを検出できる。また、ピンホール等の破損部からのエア漏れだけでなく、タイヤとリムとの組み付け不良によるエア漏れや、充填バルブの故障によるエア漏れも検出できる。
【0022】
なお、上述したところは、この発明の実施態様の一部を示したにすぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を相互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。
【実施例】
【0023】
次に、この発明に従う方法及び装置を用いてエア漏れの検出を行ったので、以下に説明する。
【0024】
サイズが495/45R22.5の安全タイヤに用いる空気のうを準備し、この空気のうに直径1.5mmの針を用いてピンホールを開けた。これを周囲温度が20℃の室内に置き、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃及び70℃の空気を充填し、内圧を0.7kPa(相対圧)に保持した。空気のうから約2m離して赤外線サーモグラフィ装置(日本アビオニクス株式会社製、スーパーファインサーモTVS−8500、測定レンジ:−40〜900℃)を設置し、内圧充填開始と同時に、空気のうの周囲温度を観察した。
【0025】
その結果、20℃の空気を充填した場合には、周囲温度の乱れが発生せず、エア漏れを検出することはできなかったが、30℃、40℃、50℃、60℃及び70℃の空気を充填した場合には、周囲温度の乱れが感知され、エア漏れを検出することができた。特に、40℃、50℃、60℃及び70℃の空気を充填した場合には、周囲温度の乱れが良好に感知され、感知までに要した時間は充填した空気の温度が高いほど短かった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明により、生産性を阻害することなく、簡易かつ迅速に空気のうのエア漏れを検出できる方法及び装置を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に従う代表的な空気のうのエア漏れ検出装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1 エア漏れ測定装置
2 調温手段
3 空気のう
4 充填手段
5 空気のうの破損部
6 温度感知手段
7 気体供給路
8 空気のうの充填バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度と異なる温度を有する気体を空気のう内に充填し、
漏れ出した気体によって生ずる空気のうの周囲温度の乱れを感知して、空気のうのエア漏れを検出することを特徴とする空気のうのエア漏れ検出方法。
【請求項2】
周囲温度との温度差が20℃以上の気体を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
赤外線サーモグラフィ法を用いて周囲温度の乱れを感知する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
気体の温度を周囲温度と異なる温度に調温する手段と、
調温した気体を空気のうに充填する手段と、
空気のうの周囲温度の乱れを感知する手段とを具えることを特徴とする空気のうのエア漏れ検出装置。
【請求項5】
前記調温手段は、気体の温度と周囲温度との温度差を20℃以上にする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記周囲温度の乱れを感知する手段は赤外線サーモグラフィ装置である、請求項4又は5に記載の装置。

【図1】
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