説明

空気供給排出装置

【課題】ポンプから生じる振動や電磁弁から発生する異音を低減しつつ、装置空間の有効活用を図って小型化を容易に可能とする空気供給排出装置を提供する。
【解決手段】底面と側壁により区画され、上方が開放した複数の電磁弁収納部に、胴部外周に緩衝材を巻回した電磁弁を胴部外周の緩衝材が底面と側壁にそれぞれ対向するように区画内に遊嵌状態で並べて収納し、上方から押圧片により複数の電磁弁の緩衝材を一括して押圧し固定した電磁弁ユニットに、ポンプ2からの空気が供給される供給路8と空気供給対象物にポンプ2からの空気を送り出す送気路10を接続し、上記電磁弁の開閉により上記空気供給対象物への空気の分配を制御した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気供給対象物に対し、必要に応じて空気の分配を制御する空気供給排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気供給排出装置としては、特開2001−314464号公報に開示されるのがあり以下図9及び図10に基づいて説明する。
従来の空気供給排出装置は、ポンプ107と、供給口101及び分配口102並びに排出口103をそれぞれ有する電磁弁104と、制御部105と、筐体106とを備え、前記電磁弁104が、ソレノイドにより駆動される弁体の移動方向を前記筐体106の天地方向に一致させ、且つ各分配口102を前記筐体106の所定側面側に向けた状態で、筐体106の前記所定側面に沿って配設される構成を有するものである。
【0003】
この従来の空気供給排出装置によれば、電磁弁104をその弁体移動方向を上下方向とする向きで筐体106内に配設し、上下方向に所定寸法を有するポンプ107と並置すると共に、筐体106の所定側面に接続コネクタ108を配設し、電磁弁104の分配口102を筐体106側部に近接配置して接続コネクタ108と直結させることから、筐体106内の上下方向の空間を有効利用すると共に、筐体106内で電磁弁104の占める平面領域を小さくでき、筐体106の上下寸法の増大を抑えつつ筐体106横方向の寸法を抑えて大幅なコンパクト化が図れる上、筐体106内の構造も大幅に簡略化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−314464号公報
【特許文献2】特開平11−19145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の空気供給排出装置は以上のように構成されていたことから、電磁弁をその弁体移動方向を上下方向とする向きで筐体内に配設することで筐体内の上下方向の空間を有効利用ができると共に、上下方向に所定寸法を有するポンプと並置することで筐体内で電磁弁の占める平面領域を小さくできることとなるが、通常空気供給対象物であるエアセルに給気するための供給路である外部ホースを装置の接続コネクタに容易に着けることができるように、また、小型に形成することができるように電磁弁は密接に接合し若しくは一体形に形成されており、この状態でポンプが動作して空気を生成すると生成時に生じる振動が電磁弁に伝わり外部ホース等にも伝わって振動が生じるだけでなく、電磁弁の駆動時にカチカチという異音が生じ、イス式やマット式のマッサージ機や褥瘡防止マット等のリラックスして使用するのが望ましい機器においてかかる異音は商品価値の低減に繋がり、また、産業機器等であっても異音は安全上及び仕事効率上出来る得る限り排除すべきものである。
【0006】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、ポンプから生じる振動や電磁弁から発生する異音を低減しつつ、装置空間の有効活用を図って小型化を容易に可能とする空気供給排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気供給排出装置は、底面と側壁により区画され、上方が開放した複数の電磁弁収納部に、胴部外周に緩衝材を巻回した電磁弁を胴部外周の緩衝材が底面と側壁にそれぞれ対向するように区画内に遊嵌状態で並べて収納し、上方から押圧片により複数の電磁弁の緩衝材を一括して押圧し固定した電磁弁ユニットに、ポンプからの空気が供給される供給路と空気供給対象物にポンプからの空気を送り出す送気路を接続し、上記電磁弁の開閉により上記空気供給対象物への空気の分配を制御することに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明においては、複数の電磁弁をユニット化するにあたり区画された収納部に緩衝材が巻回された電磁弁を遊嵌することで、立壁と緩衝材の適度な接触で仮固定が簡単に行え、その後押圧片が緩衝材を介して電磁弁を一括して押圧するので押圧された側はもちろん、押圧されない残りの三面も緩衝材が変形することで側壁や底部に圧接され簡単に防音効果の高い組み付けを実現できる。
【0009】
また、本発明に係る空気供給排出装置は必要に応じて、緩衝材は帯状で複数枚が離間して平行に電磁弁に巻回される。このように本発明においては緩衝材が帯状で離間しているので押圧片で押圧した状態でも緩衝材の存在しない電磁弁の胴部で放熱を促進することができる。
【0010】
また、本発明に係る空気供給排出装置は必要に応じて、押圧片が一方の緩衝材にのみ当接する。このようにすることで緩衝材の間の電磁弁の胴部が全て押圧片で覆われずに放熱をより促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置の筐体内部の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁ユニットの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置の電磁弁の内部を示す一部断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁の緩衝材の巻回状態を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁ユニットの上面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁ユニットの正面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁ユニットの側面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置の空気の流れを示す模式図である。
【図9】従来の空気供給排出装置を示す断面図である。
【図10】従来の空気供給排出装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置を図1ないし図8に基づいて説明する。図1は本実施の形態に係る空気供給排出装置の筐体内部の分解斜視図、図2は本実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁ユニットの分解斜視図である。図3は本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置の電磁弁の内部を示す一部断面図であり、図4は本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁の緩衝材の巻回状態を示す説明図である。図5は本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁ユニットの上面図であり、図6は本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁ユニットの正面図である。図7は本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置における電磁弁ユニットの側面図である。図8は本発明の実施の形態に係る空気供給排出装置の空気の流れを示す模式図である。
【0013】
[全体構成]
本実施の形態に係る空気供給排出装置1は、図8に示すように、例えばエアーマット32のような空気供給対象物に内蔵されるエアセルに対し外部ホース14で連結され、空気を給排気させるために使用される。
【0014】
図1に示すように、空気供給排出装置1は筐体6内にポンプ2と電磁弁ユニット3とトランス4などの構成部品が防音ケース5に囲まれて収納されている。
36は載置足であり、図1の状態で床等に載置する場合に利用される。
【0015】
この空気供給排出装置1は、図1のように載置して使用する方法以外に例えばベッドの手摺に掛けて使用することも想定される。手摺に掛ける場合、引っ掛けフックを取り付けるが、引っ掛けフックは図1における筐体6の側面のいずれの位置に形成されても良い。
【0016】
筐体6の所定側面には空気供給対象物と接続される外部ホース14との接続口7が開口されており、この接続口7を介して空気が給排気される。
【0017】
電磁弁ユニット3にはポンプ2側からのエアタンク9を介して空気が供給される供給路8と外部ホース14との接続口7へ空気を送る送気路10が接続されている。
【0018】
11は電源コード、12はスイッチパネル、13は制御部であり、スイッチパネル12により使用者が指示した内容を制御部13でポンプ2と電磁弁ユニット3の動作制御を行い適切に外部ホース14への給排気を実行する。
【0019】
[電磁弁ユニット]
電磁弁ユニット3には電磁弁15が備えられ、該電磁弁15は、ソレノイドにより駆動される弁体16の移動方向を前記筐体6の載置足36を床に接したときの天地方向に一致させ、且つ弁体16の移動方向に沿って上方に延出する第1の管部17と該第1の管部と直交する第2の管部18を備えている。
【0020】
図2に示すように、電磁弁ユニット3は、底面19と側壁20により区画された複数の電磁弁収納部21に電磁弁15の第2の管部18を前記筐体6の所定側面側に向けた状態で収納され4個を一体形にしている。
【0021】
なお、電磁弁ユニット3の上下方向は空気供給排出装置1の載置方向により天地方向が変わるので一概には言えないが、便宜上電磁弁収納部21の底面19に立設された側壁20の立設方向を上方とする。
【0022】
図3に示すように前記電磁弁15は、マグネットワイヤ22に電流を流すことでプランジャ23の弁体16を上下に動かすことが可能で、マグネットワイヤ22を保護するように外周をヨーク24でU字状に取り囲んで構成されているが、マグネットワイヤ22、ヨーク24は露呈し収納ケース等は存在しない。弁ケース25は、上述のように弁体16の移動方向に沿った上方に延出する第1の管部17と該第1の管部17と直交する第2の管部18を備え、第1の管部17と第2の管部18は弁体16で開閉自在となる。本実施形態では電磁力がON状態で弁体16が開となり、第1の管部17と第2の管部18が連通し、OFF状態で閉となる。
【0023】
図4に示すように、ヨーク上端には第1の緩衝材26が配置され、ヨーク下端には第2の緩衝材27が配置されている。それぞれの緩衝材は帯状であって、ヨーク24に巻回されるが、上端の緩衝材26は電磁弁15のリード線28を上端から延出できるようリード線28とともに巻回し固定している。各緩衝材26、27の帯の幅はヨーク24の高さの1/3程度であり、したがって上端と下端に巻回された状態でなお中央部分に緩衝材の巻回されていない露呈部分rが1/3程度存在し、ヨークとマグネットワイヤの一部は露呈されたままとなっている。
【0024】
電磁弁収納部21には側壁20が立設し、側壁20の間隔は各電磁弁15の緩衝材26、27が巻回されていない状態の幅よりやや広く、側壁20で区画された区画内に電磁弁15を収納すると巻回された緩衝材26、27が側壁20とわずかに接する。緩衝材と側壁が接するか否かは厳密に規定する必要はなく、いわゆる遊嵌状態であることが望ましい。
このような幅関係だと、各電磁弁15が区画内で自由に移動可能でありながら適度な側壁との摩擦力で位置決めしやすく仮収納が容易となる。
【0025】
なお、本実施例の側壁20は収納時の作業のしやすさを考慮して先端側がやや細い先細り状に形成されているが、均一の厚さでも良く、逆に先端側を厚くすれば仮収納時の保持力が高まる効果がある。
【0026】
このように各区画に電磁弁を配設した状態で、電磁弁15の露呈側となる上方から押圧片29により4つの電磁弁15を一括して押さえ、押圧片29の両端を電磁弁収納部21にネジ30により固定する。
【0027】
この時、図5の拡大図示でわかるように電磁弁29は収納時において側壁20より高さを有しているので押圧片29が直接緩衝材26に当接し、緩衝材26が圧力を受け変形し、4つの電磁弁15が、巻回された緩衝材26と側壁20を介して隣接していることとも相まってユニットとしてしっかりと固定される。
【0028】
つまり、電磁弁収納部21に4つの電磁弁を固定するのに2つのネジ30だけで良好におこなえる。
【0029】
これは、
電磁弁収納部21が底面19と側壁20により区画されていること、
緩衝材26、27が巻回された電磁弁15が収納時においてほぼ間隙なく側壁20を介して隣接していること、
少なくとも緩衝材の一部が上方から押圧されること、
という構成がゆえに、押圧片29による上方からの押圧で電磁弁15、緩衝材26、側壁20の間の隙間が完全に無くなり、適度な圧力で密接するので、ガタつきがなく、防音、防振性にすぐれた組み付けが行えるのである。
【0030】
なお、本実施形態における押圧片29には電磁弁15との当接面側に緩衝材31を貼着している。これによりさらにしっかりと固定することが出来る。
【0031】
また、電磁弁15の緩衝材26、27は帯状であり、2箇所に巻回されているため中央部分rは露呈状態となっているが押圧片29は緩衝材26を押圧することでこの露呈部分rの当接を回避できるため、電磁弁15の動作による昇温に対し放熱効果を発揮出来る。
【0032】
特に本実施形態では図6、7で示されているように押圧片29が一方の緩衝材26にしか当接しないようにしているので露呈部分rが全面にわたって覆われることもなく、より放熱効果にすぐれたものとなる。
【0033】
図5において本実施形態につき更に説明すると、緩衝材26、27、31は例えば発泡ウレタンからなり、押圧片29の押圧力により変形するため、側壁20側に押されることになり、側壁20の存在する位置では側壁20との接触力が増大し、側壁20の上方では場合によっては側壁20を覆うようにせり出して変形することもあり、電磁弁収納部21内での固定が更に良好になる。
【0034】
[給排気制御]
次に以上のように構成された電磁弁ユニット3の給排気制御につき説明する。
本実施形態では電磁弁ユニット3の中央よりの2つの電磁弁15の第1の管部17はポンプ2とエアタンク9を介して供給路8で連結され、給気用電磁弁となり、両端の2つの電磁弁15は、その第1の管部17が外部に開放され排気用電磁弁となっている。
【0035】
各電磁弁15の第2の管部18は例えば床ずれ防止マットのような空気により膨縮するエアセル群を内蔵するエアーマット32と連結しており、本実施形態では中央よりの2つの電磁弁15の第2の管部18がエアセル群への給気用として送気路10と接続され、両端の第2の管部18がエアーマット32の排気用に排気路33に接続されているがこのレイアウトについてはこれに限定されず、全ての電磁弁15が給排気を兼ねたものであってももちろん良い。
【0036】
なお、34は制御部13に備えた圧力センサ35と連通する連通路であり、排気路33を介してエアセルの圧力を計測する。
【0037】
更に具体的な例として、図8に示す模式図を参照しながら本実施形態に係る空気の流れについて説明する。
【0038】
2はエアセル群に給気するポンプであり、同ポンプ2は空気の給排を交互のタイミングで行わせるように2系統に区分した第1のエアセル群と第2のエアセル群とにそれぞれ第1の給気用電磁弁15、第2の給気用電磁弁15を介して連通連結している。
【0039】
これら第1の給気用電磁弁15、第2の給気用電磁弁15は、前記ポンプ2と第1のエアセル群及び第2のエアセル群とを接続する送気路10に取付けられている。また、第1の排気用電磁弁15と第1の圧力センサ35及び第2の排気用電磁弁15と第2の圧力センサ35は、それぞれ連通路34により連通している。
【0040】
これら各電磁弁15、前記圧力センサ35及びポンプ2は、リード線28により制御部13に接続される。
【0041】
すなわち、制御部13からの制御信号に基づいて、ポンプ2の駆動・駆動停止、及び各電磁弁15の開閉動作をタイミングを計りながら実行して、エアーマット内の第1のエアセル群と第2のエアセル群とを交互に給排するようにしている。
【符号の説明】
【0042】
2 ポンプ
3 電磁弁ユニット
8 供給路
10 送気路
15 電磁弁
19 底面
20 側壁
21 電磁弁収納部
26、27、31 緩衝材
29 押圧片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と側壁により区画され、上方が開放した複数の電磁弁収納部に、胴部外周に緩衝材を巻回した電磁弁を胴部外周の緩衝材が底面と側壁にそれぞれ対向するように区画内に遊嵌状態で並べて収納し、上方から押圧片により複数の電磁弁の緩衝材を一括して押圧し固定した電磁弁ユニットに、ポンプからの空気が供給される供給路と空気供給対象物にポンプからの空気を送り出す送気路を接続し、上記電磁弁の開閉により上記空気供給対象物への空気の分配を制御する空気供給排出装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の空気供給排出装置において、緩衝材は帯状で複数枚が離間して平行に電磁弁に巻回されることを特徴とする空気供給排出装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の空気供給排出装置において、押圧片が一方の緩衝材にのみ当接することを特徴とする空気供給排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−35008(P2012−35008A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180438(P2010−180438)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】