説明

空気分配装置構造

【課題】主に、別体の側板部と、その取付けの問題を解消し得るようにする。
【解決手段】二種類の開口部15,16を有するドアケース17と、このドアケース17の一面に沿って二種類の開口部15,16間を移動自在に配置されたドア部材18と、このドア部材18をドアケース17に対して移動自在に保持可能なドア取付部21とを備えている。
上記したドア取付部21は、ドア部材18の両側部に位置し、ドア部材18の移動方向へ延びて、ドア部材18の移動を案内可能な一対の側板部24,25を備えている。
そして、側板部24,25のうちの少なくとも一つを、ドアケース17とは別体に構成する。更に、この別体の側板部51と、ドアケース17との間に、別体の側板部51を、ドア部材18の移動方向へスライドさせてドアケース17に係止可能なスライド係止部52を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置などに用いられる空気分配装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の温度調整を行うための空調設備が設けられている。この空調設備の主要部を構成する空調装置(いわゆるHVACユニット)には、その内部に、空調用空気を冷風側と温風側とに分配するための空気分配装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図25、図26に示すように、上記した空気分配装置12は、二種類の開口部15,16を有するドアケース17と、このドアケース17の一面に沿って上記した二種類の開口部15,16間を移動自在に配置されたドア部材18と、このドア部材18を上記ドアケース17に対して移動自在に取付可能なドア取付部21と、上記ドア部材18のドアケース17に対する上記移動を駆動するドア駆動機構部22とを備えている。なお、二種類の開口部15,16の間には、両者の境界線となる横桟部23が形成される。
【0004】
上記ドア取付部21は、ドア部材18の両側部に位置し、ドア部材18の移動方向へ延びて、ドア部材18の上記した移動を案内可能な一対の側板部24,25(ガイド部材)を備えている。
【0005】
そして、側板部24,25とドア部材18との間には、それぞれガイド機構26が設けられる(図26参照)。このガイド機構26は、この場合、一対の側板部24,25におけるドア部材18の両側部とほぼ対向する位置に、上記ドア部材18の移動方向へ向けて延設されたガイド溝27と、ドア部材18の両側部の両端位置(図中上下位置)からガイド溝27へ向けて突設されたガイドピン29とを有している。そして、ガイド溝27に沿ってガイドピン29がスライド自在に嵌合されることにより、ドア部材18のガイドが行われるようになっている。
【0006】
また、上記ドア駆動機構部22は、ドア部材18の一面(ドアケース17とは反対側の面)に設けられてドア部材18の移動方向へ延びるラック部34と、このラック部34に噛み合う出力ギア35とを備えている。この出力ギア35は、通常、一対の側板部24,25間に、出力軸36を用いて軸支される。
【0007】
なお、ドア駆動機構部22は、上記したラック部34をドア部材18の両側部に一対設け、上記した出力ギア35を一対のラック部34のそれぞれに対して計一対設け、一対の出力ギア35の間を出力軸36で連結して連動させるようにするのが、一般的である。
【0008】
そして、この出力軸36に対して、モータなどの図示しない駆動装置が接続される。
【0009】
このような構成によれば、空気分配装置12では、ドア駆動機構部22を作動して、ドア取付部21に取付・保持されたドア部材18を移動することにより、開口部15,16の開度を調整することができる。
【0010】
即ち、ドア部材18を移動して、開口部15を開いたり、ドア部材18を上記とは反対側へ移動して、開口部16を開いたり、ドア部材18を上記の中間位置へ移動することにより、ドアケース17の両方の開口部15,16をそれぞれ所望の配分で部分的に開いたりすることができる。これにより、空調装置の内部を流れる空調用空気を、冷風側と温風側とに分配することができる。
【0011】
この際、ドア部材18は、ドア駆動機構部22を構成する図示しないモータなどの駆動装置を駆動して、出力軸36を介し、出力ギア35を回転させて、この出力ギア35と、ドア部材18の一面に設けられたラック部34との噛み合い位置を変化させることにより、移動される。
【0012】
また、ドア部材18は、ドア取付部21の一対の側板部24,25に沿うようにして、その移動を案内される。
【0013】
この際、側板部24,25とドア部材18との間に設けられたガイド機構26では、ガイド溝27に沿ってガイドピン29がスライドされることにより、ドア部材18のガイドが行われる。
【0014】
そして、上記した空調装置では、仕様によって、内部を幅方向(上記移動方向と直交する方向)に対し複数のゾーンに分割することが行われている。
【0015】
上記したゾーンの分割を行う場合、空気分配装置12も、ゾーンに応じて分けられることになるので、分けられた各ゾーン(例えば、ゾーンA、B、C)ごとに上記した各構造がそれぞれ別個独立に必要になる。なお、ドアケース17については共通で良いが、ドアケース17に設けられる二種類の開口部15,16は、ドア部材18の移動方向へ延びる縦棧部37を仕切りとして、ゾーンに応じた数だけ幅方向に隣接して設けられることになる。
【0016】
また、複数のゾーンに分割する場合、各ゾーン(A、B、C)のドア駆動機構部22は、図25に示すように、出力軸36の軸線を互いに一致させて設置するのが、構造上および機能上、最も合理的で好ましいものと考えられる。
【0017】
そのため、中間のゾーン(C)については、隣接するゾーン(A,B)の出力軸36が同一軸線上に存在することから、出力軸36に対し直接的に駆動装置を接続することができなくなるので、入力ギア38や入力軸39などを追設し、入力軸39を介して間接的にモータなどの駆動装置を接続するなどの対策が取られる。
【0018】
この際、入力ギア38は、出力ギア35に直接噛み合わせるようにしても良いし、入力ギア38と出力ギア35との間に中間ギア41を介在させるようにしても良い。なお、入力軸39は、隣接するゾーン(AまたはB、この場合にはA)などの側板部24,25を貫通させてドアケース17のどちらか一方の端まで導くようにする。また、図中符号42,43は、入力軸39を、当該側板部24,25に対して軸支するための軸受部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2001−270317号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記空気分配装置には、以下のような問題があった。
【0021】
即ち、例えば、上記したようにゾーン分割を行う場合、ドアケース17には、各ゾーンごとに一対の側板部24,25が設けられることになるが、この側板部24,25は、ガイド溝27が設けられるなどにより形状が複雑となっているため、また、側板部24,25は数が多いため、ドアケース17に対して一体に成形するのが難しい。
【0022】
そこで、少なくとも一部の側板部24,25をドアケース17とは別体に設けて、この別体の側板部45をドアケース17に対して後付けし得るようにすることが検討されているが、このように、別体の側板部45をドアケース17に対して後付けする場合、ドアケース17と別体の側板部45との取付部が、上記したガイド溝27に干渉しないようにする必要がある。
【0023】
ここで、ガイド溝27は、上記したドア部材18の必要十分な移動範囲を確保するために、上記した側板部24,25や別体の側板部45の長手方向のほぼ全域に亘って設けられるので、例えば、上記した取付部を、図26に示すように、別体の側板部45を、縦棧部37に対し、他面側(ドア部材18とは反対側)からビス46などで直接面直方向に固定するようなものにすると、ガイド溝27が必要な長さよりも短くなってしまい、機能に制限が生じる。そのため、取付部には、このような機能上の制限の生じない別の手段が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、二種類の開口部を有するドアケースと、該ドアケースの一面に沿って前記二種類の開口部間を移動自在に配置されたドア部材と、該ドア部材を前記ドアケースに対して移動自在に保持可能なドア取付部とを備え、該ドア取付部が、前記ドア部材の両側部に位置し、前記ドア部材の移動方向へ延びて、前記ドア部材の移動を案内可能な一対の側板部(ガイド部材)を備えた空気分配装置構造において、前記側板部のうちの少なくとも一つを、前記ドアケースとは別体に構成し、当該別体の側板部と、前記ドアケースとの間(当接部分)に、前記別体の側板部を、前記ドア部材の移動方向へスライドさせて前記ドアケースに係止可能なスライド係止部を備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項2に記載された発明は、上記において、前記ドアケースと、前記別体の側板部との間に、前記スライド係止部が外れるのを防止可能な、脱落防止部を設けたことを特徴とする。
【0026】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記ドア部材の前記ドアケースに対する上記移動を駆動するドア駆動機構部が設けられ、前記脱落防止部が、上記移動方向における、前記ドア駆動機構部を構成する入力軸の側に設けられたことを特徴とする。
【0027】
請求項4に記載された発明は、上記において、前記ドアケースと、前記別体の側板部との間に、ドアケースと別体の側板部との当接面の間に隙間が形成されるのを防止可能な隙間防止部を設けたことを特徴とする。
【0028】
請求項5に記載された発明は、上記において、前記ドアケースが、側面視ほぼ円弧状または直線状をしていると共に、前記別体の側板部と前記ドアケースとの当接面が、前記ドアケースの側面形状に合わせたほぼ円弧状または直線状とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、別体の側板部とドアケースとの間にスライド係止部を設けることにより、別体の側板部を、ドア部材の移動方向へスライドさせることで、簡単にドアケースに係止固定させる、或いは、取付けることが可能となる。これにより、側板部を、ドアケースに対して一体に形成する必要がなくなり、ドアケースの形状を単純化して、ドアケースを容易に成形することができるようになる。
【0030】
請求項2の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、ドアケースと、別体の側板部との間に脱落防止部を設けることにより、スライド係止部が不用意に解除方向へスライドして、別体の側板部がドアケースから外れてしまうことを、確実に防止することができる。
【0031】
請求項3の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、上記した脱落防止部を、ドア部材の移動方向における、ドア駆動機構部の入力軸の側に設けることにより、入力軸による押え力やドア駆動機構部の重さなどを利用して、脱落防止部による外れ止め効果をより大きくすることができる。
【0032】
請求項4の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、隙間防止部を設けることにより、ドアケースと別体の側板部との当接面の間に隙間が形成されるのを防止することができる。これにより、当接面からの風漏れを防止することができる。
【0033】
請求項5の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、別体の側板部とドアケースとの当接面を、ほぼ円弧状または直線状として、互いに合致させることにより、両者を隙間なく合せることができる。そして、別体の側板部とドアケースとの当接面をほぼ円弧状とすることにより、スライド係止部を、円弧状にスライドさせて係止および解除するものとすることができるので、スライド係止部自体をより外れ難いものとすることができる。また、別体の側板部とドアケースとの当接面をほぼ直線状とすることにより、スライド係止部を、シンプルでより成形し易いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる空調装置の側方断面図である。
【図2】本発明の実施例1にかかる空気分配装置を正面側から見た斜視図である。
【図3】図2の空気分配装置のドアケースからシール部材を除去した状態を示す正面側から見た斜視図である。
【図4】図3の空気分配装置を背面側から見た斜視図である。
【図5】図4のドアケースを背面側から見た斜視図である。
【図6】図2のドア部材を正面側から見た斜視図である。
【図7】図6のドア部材を背面側から見た斜視図である。
【図8】図4の側板部(別体型側板部)を背面側から見た斜視図である。
【図9】図8の側板部の側面図である。
【図10】図8の側板部を正面側から見た斜視図である。
【図11】本発明の実施例2にかかる空気分配装置を背面側から見た図4と同様の斜視図である。
【図12】図11の空気分配装置を背面側から見た斜視図である。
【図13】図11の側板部(別体型側板部)を背面側から見た斜視図である。
【図14】図13の側板部を正面側から見た斜視図である。
【図15】図14の側板部の正面図である。
【図16】本発明の実施例3にかかる空気分配装置を正面側から見た斜視図である。
【図17】図16の空気分配装置のドアケースからシール部材を除去した状態を示す正面側から見た斜視図である。
【図18】図17の空気分配装置を背面側から見た斜視図である。
【図19】図18のドアケースを背面側から見た斜視図である。
【図20】図16のドア部材を正面側から見た斜視図である。
【図21】図20のドア部材を背面側から見た斜視図である。
【図22】図18の側板部(別体型側板部)を背面側から見た斜視図である。
【図23】実施例3の変形例を示す部分拡大斜視図である。
【図24】平板状の空気分配装置に実施例1の構造を適用した状態を示す分解側面図である。
【図25】従来例における空気分配装置の背面図である。
【図26】図25を背面側から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、上記した各問題点を解決することを目的として、主に、別体の側板部と、その取付けの問題を解消し得るようにしている。
【0036】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0037】
図1〜図24は、この発明の実施例およびその変形例を示すものである。このうち、図2〜図10は実施例1、図11〜図15は実施例2、図16〜図22は実施例3、図23は実施例3の変形例、図24は、実施例1〜実施例3に共通の変形例である。なお、実施例2および実施例3やその変形例などにおいて、図面の都合により符号が省略されている場合には、実施例1と同じ符号が付されているものとして取扱うものとする。
【0038】
<構成>まず、各実施例に共通の構成について説明する。
【0039】
自動車などの車両には、車室内の温度調整を行うための空調設備が設けられている。この空調設備の主要部を構成する空調装置(いわゆるHVACユニット)は、車室内の前部に設けられた樹脂製のインストルメントパネルの内部に設置されている。
【0040】
先ず、図1を用いて上記した車両用の空調装置1を説明する。この空調装置1は、空気取入口2と、複数の空気取出口3(3a〜3c)とを有する本体ケーシング4を備えている。この本体ケーシング4の内部には、上記した空気取入口2と各空気取出口3(3a〜3c)との間を結んで延びる空気流路5が設けられている。そして、この空気流路5の内部には、空気取入口2の側から順に、空気導入ファン(図示せず)と、冷却用熱交換器7とが設けられている。空気流路5は、この冷却用熱交換器7の出側で、バイパス流路8と温風流路9とに分岐されている。このうち、温風流路9には、加熱用熱交換器11が設けられている。また、バイパス流路8と温風流路9との分岐部分(入側部分)には、空調用空気をバイパス流路8と温風流路9とに対して分配可能な空気分配装置12が設けられている。また、バイパス流路8と温風流路9との合流部分(出側部分)には、各空気取出口3(3a〜3c)を選択して切替えるための複数の出口ドア部13(13a〜13c)が設けられている。
【0041】
ここで、上記した「冷却用熱交換器7」は、車両の空調設備で使用される冷媒の蒸発潜熱を利用して空調用空気を冷却するようにした蒸発器(エバポレータ)とされている。また、「加熱用熱交換器11」は、エンジンの冷却水によって空調用空気を加熱するようにしたヒータコアとされている。
【0042】
次に、図2〜図4(主に図4参照)などを用いて上記した空気分配装置12を説明する。この空気分配装置12は、図1のバイパス流路8と温風流路9とに対してそれぞれ連通する二種類の開口部15,16を有するドアケース17(図5参照)と、このドアケース17の一面に沿って上記した二種類の開口部15,16間を移動自在に配置されたドア部材18(図6、図7参照)と、このドア部材18を上記ドアケース17に対して移動自在に取付可能なドア取付部21(図4参照)と、上記ドア部材18のドアケース17に対する上記移動を駆動するドア駆動機構部22とを備えている。
【0043】
上記ドア取付部21は、ドア部材18の両側部に位置し、ドア部材18の移動方向(この場合には、図中、ほぼ上下方向となっている)へ延びて、ドア部材18の移動を案内可能な一対の側板部24,25(ガイド部材)を備えている。
【0044】
そして、側板部24,25とドア部材18との間には、それぞれガイド機構26が設けられる。このガイド機構26は、この場合、一対の側板部24,25におけるドア部材18の両側部とほぼ対向する位置に、上記ドア部材18の移動方向へ向けて延設されたガイド溝27と、ドア部材18の両側部の両端位置(図中上下位置)からガイド溝27へ向けて幅方向に突設されたガイドピン29とを有している。そして、ガイド溝27に沿ってガイドピン29がスライド自在に嵌合されることにより、ドア部材18のガイドが行われるようになっている。
【0045】
また、上記ドア駆動機構部22は、ドア部材18の一面(ドアケース17とは反対側の面)に設けられてドア部材18の移動方向へ延びるラック部34と、このラック部34に噛み合う出力ギア35とを備えている。
【0046】
ここで、補足説明をすると、上記した「ドアケース17」は、上記した空気流路5の流路断面とほぼ等しい大きさおよび形状のほぼ矩形枠状をした樹脂製の板状体とされている。このほぼ矩形枠状のドアケース17は、図中、上下の縁部(または上下辺部)と、左右の縁部(または両側辺部)とを、主に有している。ドアケース17には、その周縁部などに、空気流路5に対してシールを行わせるためのシール部材32が取付けられる(図2参照)。
【0047】
二種類の「開口部15,16」は、それぞれ、ドアケース17の左右の縁部の長さのほぼ半分程度の大きさの矩形状をしている。二種類の開口部15,16の間には、両者の境界線となる横桟部23が形成される(図11参照)。この「横桟部23」は、ドアケース17の面に対して面一状態で一体成形される。
【0048】
一方、「ドア部材18」は、上記した開口部15,16をそれぞれ塞ぎ得る大きさのほぼ矩形状をした樹脂製の板状体とされる。ドア部材18には、そのドアケース17側の面の周縁部などに、ドアケース17に対してシールを行わせるためのシール部材33が取付けられる。この場合、ドア部材18の移動方向は、図中ほぼ上下方向とされている。
【0049】
「側板部24,25」は、ドアケース17の面に対しほぼ面直に立設される。側板部24,25は、通常の場合、ドアケース17に対して一体成形される。
【0050】
「ガイド溝27」は、ドア部材18の一端側(例えば、上端部)のガイドピン29に対応するもの(例えば、上端側ガイド溝)と、ドア部材18の他端側(例えば、下端部)のガイドピン29に対応するもの(例えば、下端側ガイド溝)とが設けられる。
【0051】
「ラック部34」は、ドア部材18に一体に成形される。また、通常の場合、ラック部34は、ドア部材18のほぼ両側部に沿って一対設けられる。
【0052】
「出力ギア35」は、樹脂製のものとされる。通常、出力ギア35は、ラック部34に合わせて、左右一対設けられる。そして、一対の出力ギア35の間は、出力軸36によって連動可能および相互保持可能に連結される。
【0053】
「出力軸36」は、通常、一対の側板部24,25間に、その両端部などを、直接、または、軸受部材などを介して間接的に軸支される。出力軸36は、出力ギア35の共廻りを防止するために、例えば、角型断面のものなどとされる。この出力軸36に対し、モータなどの駆動装置(図示せず)が、直接または間接的に接続される。この出力ギア35の出力軸36は、二種類の開口部15,16の中間の位置などに配置される。
【0054】
そして、上記した空調装置1では、仕様によって、空気流路5を幅方向(上記移動方向と直交する方向)に対し複数のゾーンに分割することが行われている。以下、ゾーン分割について説明する。
【0055】
例えば、車室内の空調環境を1つにする場合には、空気流路5のゾーン分割は特に行われないが、車室内の空調環境を左右(運転席側と助手席側と)に分ける場合には、空気流路5を2つのゾーンに分割し、また、車室内の空調環境を左右と後部(運転席用と助手席用と後部座席用)とに分ける場合には、空気流路5を3つのゾーンに分割することになる。この場合は、3つのゾーン(例えば、ゾーンA、B、C)に分割しているが、更に、空気流路5をこれ以上のゾーンに細かく分割することも可能である。
【0056】
そして、上記したゾーンの分割を行う場合、空気分配装置12も、ゾーンに応じて分けられることになるので、空気分配装置12には、分けられた各ゾーン(A、B、C)ごとに上記した各構造がそれぞれ別個独立に必要になる。なお、ドアケース17については共通で良いが、ドアケース17に設けられる二種類の開口部15,16は、ドア部材18の移動方向へ延びる縦棧部37を仕切りとして、ゾーンに応じた数だけ幅方向に隣接して設けられることになる。なお、縦棧部37は、通常、ドアケース17に対して面一状態で一体成形される。
【0057】
また、空気流路5を複数のゾーンに分割する場合には、各ゾーン(A、B、C)のドア駆動機構部22は、図4に示すように、出力軸36の軸線を互いに一致させて設置するのが、構造上および機能上、最も合理的で好ましい。
【0058】
そのため、中間のゾーン(C)については、隣接するゾーン(A,B)の出力軸36が同一軸線上に存在することから、出力軸36(但し、この実施例のものでは、中間のゾーン(C)の出力軸36は、出力ギア35の支持構造を工夫することによって廃止されている)に対し直接的に駆動装置を接続することができないので、通常は、入力ギア38と入力軸39とを追設して、入力軸39を介して間接的にモータなどの駆動装置を接続する構成を採用する。この際、入力ギア38は、出力ギア35に直接噛み合わせるようにしても良いし、間に中間ギアを介在させるようにしても良い。なお、入力軸39は、隣接するゾーン(AまたはB、この場合にはA)の側板部24,25を貫通させてドアケース17のどちらか一方の端まで導くようにする。なお、図中符号42は、入力軸39を軸支するための軸受部材である。また、この場合、中間のゾーン(C)については、両端のゾーン(A,B)と比べて、幅方向の寸法が小さくなっているため、ラック部34と出力ギア35とを、それぞれ1つずつに減らすように構造変更している。
【実施例】
【0059】
そして、以上のような共通の構成に対し、以下の各実施例は、それぞれ以下のような構成を備えている。
【0060】
(1)各実施例(実施例1〜3)に共通の構成
側板部24,25のうちの少なくとも一つを、ドアケース17とは別体に構成する(図8〜図10参照)。そして、別体の側板部51(別体型側板部)と、ドアケース17との間に、取付部として、別体の側板部51を、ドア部材18の移動方向へスライドさせてドアケース17に係止可能なスライド係止部52を備えるようにする(図3参照)。
【0061】
ここで、「別体の側板部51」は、全ての側板部24,25を別体化したものとしても良いし、側板部24,25のうちの少なくとも一つを別体化したものとしても良い。この場合には、ゾーン分割されたドアケース17の縦棧部37の位置に設けられる中間の側板部24,25を、着脱可能な別体の側板部51としている。この際、更に、別体の側板部51を、隣接する中間の側板部24,25の両機能を具有するものとして一体化している(共通側板部)。そのために、別体の側板部51には、その両面に、隣接するゾーンのドア部材18のためのガイド溝27が、互いに干渉しないよう、別体の側板部51の立設方向に対し、それぞれ位置をズラせて形成されている(高位ガイド溝27a(ゾーンC)および低位ガイド溝27b(ゾーンA,B)、図18参照)。これに対応させて、隣接するゾーンのドア部材18に設けられるガイドピン29も別体の側板部51の立設方向に対して、それぞれ位置をズラせて設けられている。
【0062】
なお、ドアケース17の左右の縁部の位置に設けられる側板部24,25については、ドアケース17と一体に成形された通常のものとしている。
【0063】
「スライド係止部52」は、別体の側板部51と、ドアケース17との当接部分の間に設けられる。スライド係止部52は、別体の側板部51とドアケース17との一方に設けられた係止爪部54(図9参照)と、他方に設けられた爪受部55(図5参照)とを備えている。この場合、係止爪部54は別体の側板部51に対して設けられ、爪受部55はドアケース17に対して設けられている。係止爪部54と爪受部55とは、上記した移動方向へのスライドにより、相互に係止可能なものである。
【0064】
「係止爪部54」(図9参照)は、例えば、別体の側板部51における、ドアケース17との当接面に一体に成形されたフック状部とされている。このフック状部は、例えば、ドアケース17とほぼ面直方向へドアケース17のほぼ厚み分だけ延びる縦腕部と、この縦腕部の先端からドアケース17の面とほぼ平行で且つ上記したスライド方向(ドア部材18の移動方向)へ延びる横腕部とを一体に有する側面視ほぼL字状を呈している。なお、縦腕部には、別体の側板部51の板面との連結部分の強度を向上するため、縦腕部とは反対側の側面に、別体の側板部51の板面に近接するに従って幅広くなるテーパ形状などを設けても良い。
【0065】
「爪受部55」(図5参照)は、ドアケース17の別体の側板部51が設けられる縦棧部37(の別体の側板部51との当接面)における、各係止爪部54と対応する位置にそれぞれ設けられている。爪受部55は、係止爪部54を上記スライド方向へ移動させることによって係止可能な切欠部または長孔部などの係止形状部とされている。爪受部55を長孔部とする場合には、上記スライド方向へ、横腕部の長さよりも若干長く延びるものなどとする。
【0066】
そして、スライド係止部52は、少なくとも一箇所以上、好ましくは二箇所以上設けるようにする。例えば、スライド係止部52は、取付点の個数削減や配置均等化などを考慮して、実施例1(図2〜図10)のように、ほぼ、ドアケース17の上側の縁部の位置と、横桟部23の位置と、下側の縁部の位置との三箇所に設けるのが好ましい(スライド係止部52のみの構成)。また、実施例2(図11〜図15)および実施例3(図16〜図22)のように、ドアケース17の上側の縁部の位置と、横桟部23の位置との二箇所に設けて、ドアケース17の下側の縁部の位置には、後述するような取付補助部を設けるようにしても良い(スライド係止部52と取付補助部とを併用した構成)。なお、スライド係止部52の設置箇所は、上記のようにするのが最も適しているが、これに限るものではない。
【0067】
各実施例の場合、ドアケース17の上側の縁部の位置に設けられる爪受部55は切欠部とされ、横桟部23の位置や、下側の縁部の位置に設けられる爪受部55は長孔部とされている。また、ドアケース17の上側の縁部の位置に設けられる係止爪部54は、ドアケース17の上側の縁部からハミ出さないように、上記した縦腕部と横腕部とを有さない比較的小さ目の爪部とされ、横桟部23の位置や、下側の縁部の位置に設けられる係止爪部54は係止強度が高くなるように、上記した縦腕部と横腕部とを有する比較的大き目のものとされている。即ち、爪受部55や係止爪部54は、設置位置の特性に合わせて最適となるように、形状や大きさなどを個別に調整している。
【0068】
また、この場合、スライド係止部52の係止方向は、別体の側板部51の自重などを係止に利用できるようにするために、ほぼ下側とされ、解除方向は自重に抗する動きが加わらないと解除されないようにするために、ほぼ上側とされている。
【0069】
(2)実施例2または実施例3に対する構成
ドアケース17と、別体の側板部51との間に、スライド係止部52が(不用意に)外れるのを防止可能な、脱落防止部57(例えば、図11、図18参照)を設けるようにする。
【0070】
この「脱落防止部57」は、上記した取付部(スライド係止部52)と共に設けられて、取付部を補助する取付補助部(例えば、ロック部)である。例えば、脱落防止部57は、実施例2(図11〜図15)のような嵌合固定部58とすることや、または、実施例3(図16〜図22)のようなネジ固定部59などとすることができる。この場合、脱落防止部57は、ほぼドアケース17の下側の縁部の位置に設けられる。
【0071】
実施例2の「嵌合固定部58」は、例えば、別体の側板部51における、ドアケース17との当接面に一体に成形された嵌合凸部61(図12参照)と、ドアケース17の別体の側板部51が設けられる縦棧部37における、嵌合凸部61と対応する位置に設けられた嵌合孔部62または嵌合凹部(以下、単に嵌合孔部62という、図14参照)などとすることができる。この嵌合固定部58は、スライド係止部52によって、ドアケース17に別体の側板部51をスライド係止させる際に、嵌合凸部61と嵌合孔部62とが無理嵌め状態で嵌合されると共に、嵌合後には容易に外れないようなものとする。なお、ドアケース17の側に嵌合孔部62を設け、縦棧部37の側に嵌合凸部61を設けることも、構造的には可能である。
【0072】
嵌合凸部61と嵌合孔部62とは、ほぼ同じ形状および大きさのものとするのが好ましい。例えば、嵌合凸部61を円柱状とし、嵌合孔部62を嵌合凸部61と同径の円形孔などとすることができる。また、嵌合凸部61を角柱状とし、嵌合孔部62を嵌合凸部61と同形の角形孔などとすることができる。或いは、嵌合凸部61と嵌合孔部62とは、上記以外の形状とすることができる。この場合には、嵌合凸部61を図中下端側に尖った三角柱状とし、嵌合孔部62を嵌合凸部61と同形の三角孔などとしている。
【0073】
また、嵌合固定部58を、抜け止め機能を有する形状(例えば、テーパ形状)などとすることができる。
【0074】
なお、特に図示しないが、脱落防止部57はスライド係止部52に対して(一体に)設けることができる。この場合には、例えば、スライド係止部52の係止爪部54と爪受部55との一方に対し、嵌合凸部61を設け、他方に対して嵌合孔部62を設けるようにする。
【0075】
一方、実施例3の「ネジ固定部59」は、別体の側板部51に一体に成形されたネジ止用のボス部64(図18参照)と、ドアケース17のボス部64と対応する位置に、ボス部64と当接するよう面外方向(一面側)へ一体に突出形成されたネジ止め用の舌片部65などとすることができる。この場合、ネジ固定部59は、ほぼドアケース17の下側の縁部の位置に設けられる。また、ボス部64と舌片部65とは、図中下側から上側へ向けネジ66を螺着して、締結固定し得るものなどとしている。
【0076】
より具体的には、ボス部64は、別体の側板部51の、上記した高位ガイド溝27aが形成された面における、高位ガイド溝27aよりもドアケース17に近い部分(低位部分)に設けられている。或いは、ボス部64は、別体の側板部51の、上記した低位ガイド溝27bが形成された面とは反対側の面における、低位ガイド溝27bと反対側の位置に設けられている。
【0077】
この際、ドアケース17の下側の縁部と縦棧部37との、ボス部64と対応するコーナー部分には、ボス部64を形成するためのコーナー張出部67が、ドアケース17と一体に面一状態で形成されている。
【0078】
更に、ドア部材18のボス部64と対応するコーナー部分には、ボス部64との干渉を防止するためのコーナー切欠部68(図20参照)が設けられる。更に、図中上側の開口部15の下側のコーナー部分には、全閉時にドア部材18のコーナー切欠部68によって隙間ができるのを防止するためのコーナー張出部69(図16参照)が、ドアケース17と一体に面一状態で形成される。このコーナー張出部69は、上記したコーナー張出部67と同じ形状および大きさとされている。
【0079】
なお、上記の変形例として、図23に示すように、別体の側板部51における、図中下端側の頂部の位置にボス部64を一体に成形し、ドアケース17の別体の側板部51が設けられる縦棧部37の図中下端位置からボス部64へ向けて面外方向(一面側)へ舌片部65を一体に突出形成するようにすることにより、上記したコーナー張出部67や、コーナー切欠部68や、コーナー張出部69をなくすと共に、低位ガイド溝27bを避ける必要をなくすことも可能となる。但し、この場合には、舌片部65の面外方向への張出量が大きくなって強度低下や応力集中による破損が問題となるため、舌片部65の基部を幅広くしたり、先端側へ向かって幅が狭くなるテーパ形状にするなどの補強構造や応力集中防止構造などを採用して破損防止を図るようにするのが好ましい。
【0080】
(3)実施例2または実施例3(特に、実施例2)に対する構成
上記したような、ドア部材18のドアケース17に対する上記移動を駆動するドア駆動機構部22が設けられている場合に、脱落防止部57が、上記移動方向における、ドア駆動機構部22を構成する入力軸39の側に設けられるようにする(図11参照)。
【0081】
この場合、入力軸39は、ドア部材18の中央よりも下側の位置に設けられている。そして、脱落防止部57(実施例2の嵌合固定部58および実施例3のネジ固定部59)を、ドア部材18の中央よりも下側の位置に設けるようにしている。この場合、脱落防止部57は、ドアケース17の下側の縁部近傍の位置としている。
【0082】
なお、脱落防止部57が、実施例3のようなネジ固定部59である場合には、十分な脱落防止効果が得られるので、このような構造は、特に採用しなくても良い。
【0083】
(4)各実施例(実施例1〜実施例3)に共通の構成
ドアケース17と、別体の側板部51との間に、ドアケース17と別体の側板部51との当接面の間に隙間が形成されるのを防止可能な隙間防止部71を設けるようにする(図5、図10参照)。
【0084】
この「隙間防止部71」は、別体の側板部51における、ドアケース17(の縦棧部37)との当接面に一体に成形された凹溝部72(図5)と、ドアケース17の別体の側板部51が設けられる縦棧部37における、凹溝部72と対応する位置に設けられた突条部73などとすることができる。これら凹溝部72と突条部73とは、上記したスライド方向へ延びて、相互に嵌合されるものとする。この凹溝部72と突条部73とは、ドアケース17に対する別体の側板部51の幅方向の位置を規制可能な位置規制部としても機能するものとなる。
【0085】
凹溝部72と突条部73とは、上記したスライド係止部52と干渉しないように設けるようにする。実施例1ないし実施例3では、ドアケース17の上側の縁部のスライド係止部52と、横桟部23の位置のスライド係止部52との間の部分、および、横桟部23の位置のスライド係止部52と、下側の縁部との間の部分との二箇所に分けてそれぞれ設けるようにしている。但し、スライド係止部52との干渉が起こらない位置に対して、ドアケース17の上側の縁部から下側の縁部まで連続して延びるように形成することもできる。
【0086】
更に、実施例2のように、下側の凹溝部72に脱落防止部57の嵌合凸部61を一体に設け、また、下側の突条部73に脱落防止部57の嵌合孔部62を一体に設けることもできる。
【0087】
凹溝部72と突条部73とは、別体の側板部51のガイド溝27に達しない高さおよび深さに形成する。また、凹溝部72は、その両端部に、突条部73を嵌合し易いように角取り用の傾斜部(高さ減少部)を形成しても良い。これに対応して、突条部73の両端部の内部にも、凹溝部72の両端部の傾斜部に応じた、傾斜溝形状部(深さ減少部)を形成するようにしても良い。
【0088】
(5)各実施例(実施例1〜実施例3)に共通の構成およびその変形例
ドアケース17が、側面視ほぼ円弧状(部分円筒状)または直線状(平板状)をしている場合に、別体の側板部51とドアケース17との当接面が、ドアケース17の側面形状に合わせたほぼ円弧状または直線状とされるようにする。
【0089】
上記した各実施例では、ドアケース17は、バイパス流路8および温風流路9の側へ突出する部分円筒状とされている(図1参照)。また、ドア部材18は、ドアケース17の面形状に合わせて、部分円筒状とされている。そして、別体の側板部51とドアケース17との当接面が、側面視ほぼ円弧状をしている(円弧状当接面)。
【0090】
また、特に明確には図示しないが、ドアケース17およびドア部材18を平板状状とし、上記した当接面を側面視ほぼ直線状としても良い(直線状当接面)。この場合、別体の側板部51は、例えば、図24に示すような側面形状となる。
【0091】
なお、図24では、上記した実施例1のものを平板化したものとなっているが、実施例2または実施例3のものを平板化するようにしても良い。
【0092】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
【0093】
まず、図1に示す車両用の空調装置1の作用について説明する。上記した車両用の空調装置1は、図示しない空気導入ファンを駆動することにより、空気取入口2から空気流路5へ空調用空気を導入することができる。空気流路5へ導入された空調用空気は、先ず、冷却用熱交換器7で冷却される。そして、冷却用熱交換器7で冷却された空調用空気は、空気分配装置12によってバイパス流路8と温風流路9とに分配される。バイパス流路8へ分配された空調用空気は、そのまま流れ、また、温風流路9へ分配された空調用空気は、加熱用熱交換器11で加熱される。バイパス流路8と温風流路9とを流れた空調用空気は、その後、合流され、出口ドア部13(13a〜13c)によって、選択された空気取出口3(3a〜3c)から車室内へ吹出され、車室内の空調に利用される。
【0094】
次に、図2、図3に示す空気分配装置12の作用について説明する。上記した空気分配装置12では、ドア駆動機構部22を作動して、ドア取付部21に取付・保持されたドア部材18を移動することにより、バイパス流路8と温風流路9とに対する開口部15,16の開度を調整する。
【0095】
即ち、ドア部材18を移動して、ドアケース17のバイパス流路8と連通する開口部15を開く(全開する)ことにより、全ての空調用空気をバイパス流路8へ流すことができる(この時、開口部16は全閉となる)。また、ドア部材18を上記とは反対側へ移動して、ドアケース17の温風流路9と連通する開口部16を開く(全開する)ことにより、全ての空調用空気を温風流路9へ流して加熱用熱交換器11で加熱することができる(この時、開口部15は全閉となる)。更に、ドア部材18を上記の中間位置へ移動することにより、ドアケース17の両方の開口部15,16をそれぞれ所望の配分で部分的に開いて、空調用空気をバイパス流路8と温風流路9との両方に分配し、加熱用熱交換器11で加熱する空調用空気の量を調節することができる。
【0096】
この際、ドア部材18は、ドア駆動機構部22を構成する図示しないモータなどの駆動装置を駆動して、出力軸36を介し、出力ギア35を回転させて、この出力ギア35と、ドア部材18の一面に設けられたラック部34との噛み合い位置を変化させることにより、移動される。
【0097】
また、ドア部材18は、ドア取付部21の一対の側板部24,25(または別体の側板部51であっても良い。以下、同様)に沿うようにして、その移動を案内される。
【0098】
この際、側板部24,25とドア部材18との間に設けられたガイド機構26では、ガイド溝27に沿ってガイドピン29がスライドされることにより、ドア部材18のガイドが行われる。
【0099】
そして、この実施例では、以下のようにして、別体の側板部51をドアケース17に取付ける。
【0100】
即ち、ドアケース17に対して、別体の側板部51を当接させた状態にして、ドア部材18の移動方向へスライドさせるようにする。これによりスライド係止部52の係止爪部54が爪受部55に係止され、別体の側板部51が、ドアケース17に対して係止される。
【0101】
この際、脱落防止部57が設けられている場合には、脱落防止部57をセットする。脱落防止部57が嵌合固定部58である場合には、嵌合凸部61と嵌合孔部62とを嵌合させる。また、脱落防止部57がネジ固定部59である場合には、ボス部64と舌片部65とをネジ66で締結固定する。
【0102】
更に、隙間防止部71が設けられている場合には、凹溝部72と突条部73とを嵌合させる。
【0103】
こうして、別体の側板部51をドアケース17に取付けられたら、ドアケース17に、ドア部材18を取付けると共に、ドア駆動機構部22を組付ける。この際、脱落防止部57が、ドア部材18の移動方向における、ドア駆動機構部22の入力軸39の側に設けられるようにする。
【0104】
<効果>最後に、この実施例の効果ついて説明する。
【0105】
(1)別体の側板部51とドアケース17との間にスライド係止部52を設けることにより、別体の側板部51を、ドア部材18の移動方向へスライドさせることで、簡単にドアケース17に係止固定させる、或いは、取付けることが可能となる。これにより、側板部24,25を、ドアケース17に対して一体に形成する必要がなくなり、ドアケース17の形状を単純化して、ドアケース17を容易に成形することができるようになる。
【0106】
また、上記したスライド係止部52は、構造上、別体の側板部51のガイド溝27と干渉せずに設けることができるので、ほとんど制限を受けずに、別体の側板部51に対して設けることができる。加えて、スライド係止部52は、開口部15,16の側へハミ出さないように形成することができるので、その分、開口部15,16を広く確保することができる。
【0107】
しかも、空気分配装置12を組立てた状態にすると、ドア駆動機構部22の出力軸36や入力軸39などによって別体の側板部51がドアケース17へ向けて押え付けられると共に、別体の側板部51にドア駆動機構部22の重さが作用するので、スライド係止部52は外れ難くなる。更に、空調装置1の本体ケーシング4内の空気流路5に空気分配装置12を設置した状態にすると、別体の側板部51が空気流路5の内面によって動きを規制されるため、スライド係止部52は、外れなくなる。
【0108】
(2)ドアケース17と、別体の側板部51との間に脱落防止部57を設けることにより、スライド係止部52が不用意に解除方向へスライドして、別体の側板部51がドアケース17から外れてしまうことを、確実に防止することができる。
【0109】
脱落防止部57は、嵌合固定部58やネジ固定部59などとすることができる。脱落防止部57を嵌合固定部58とした場合には、ワンタッチでセットすることができる。脱落防止部57をネジ固定部59とした場合には、確実に脱落防止を行わせることができる。
【0110】
なお、脱落防止部57は、スライド係止部52から切離して設けることや、スライド係止部52に対して(一体に)設けることができる。脱落防止部57をスライド係止部52から切離して設ける場合には、スライド係止部52をより小さなものとすることができる。また、脱落防止部57をスライド係止部52に対して(一体に)設ける場合には、スライド係止部52の係止動作と同時に脱落防止部57のセットを行わせることができる。
【0111】
(3)上記した脱落防止部57を、ドア部材18の移動方向における、ドア駆動機構部22の入力軸39の側に設けることにより、入力軸39による押え力やドア駆動機構部22の重さなどを利用して、脱落防止部57による外れ止め効果をより大きくすることができる。
【0112】
(4)隙間防止部71を設けることにより、ドアケース17と別体の側板部51との当接面の間に隙間が形成されるのを防止することができる。これにより、当接面からの(隣接するゾーンへの)風漏れを防止することができる。
【0113】
(5)別体の側板部51とドアケース17との当接面を、ほぼ円弧状または直線状として、互いに合致させることにより、両者を隙間なく合せることができる。
【0114】
そして、別体の側板部51とドアケース17との当接面をほぼ円弧状とすることにより、スライド係止部52を、円弧状にスライドさせて係止および解除するものとすることができるので、スライド係止部52自体を、一方向の動きによっては外れ難いものとすることができる。また、別体の側板部51とドアケース17との当接面をほぼ直線状とすることにより、スライド係止部52を、シンプルでより成形し易いものとすることができる。
【0115】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0116】
15 開口部
16 開口部
17 ドアケース
18 ドア部材
21 ドア取付部
22 ドア駆動機構部
24 側板部
25 側板部
39 入力軸
51 別体の側板部
52 スライド係止部
57 脱落防止部
71 隙間防止部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二種類の開口部を有するドアケースと、
該ドアケースの一面に沿って前記二種類の開口部間を移動自在に配置されたドア部材と、
該ドア部材を前記ドアケースに対して移動自在に保持可能なドア取付部とを備え、
該ドア取付部が、前記ドア部材の両側部に位置し、前記ドア部材の移動方向へ延びて、前記ドア部材の移動を案内可能な一対の側板部(ガイド部材)を備えた空気分配装置構造において、
前記側板部のうちの少なくとも一つを、前記ドアケースとは別体に構成し、
当該別体の側板部と、前記ドアケースとの間(当接部分)に、前記別体の側板部を、前記ドア部材の移動方向へスライドさせて前記ドアケースに係止可能なスライド係止部を備えたことを特徴とする空気分配装置構造。
【請求項2】
前記ドアケースと、前記別体の側板部との間に、前記スライド係止部が外れるのを防止可能な、脱落防止部を設けたことを特徴とする請求項1記載の空気分配装置構造。
【請求項3】
前記ドア部材の前記ドアケースに対する上記移動を駆動するドア駆動機構部が設けられ、
前記脱落防止部が、上記移動方向における、前記ドア駆動機構部を構成する入力軸の側に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の空気分配装置構造。
【請求項4】
前記ドアケースと、前記別体の側板部との間に、ドアケースと別体の側板部との当接面の間に隙間が形成されるのを防止可能な隙間防止部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気分配装置構造。
【請求項5】
前記ドアケースが、側面視ほぼ円弧状または直線状をしていると共に、
前記別体の側板部と前記ドアケースとの当接面が、前記ドアケースの側面形状に合わせたほぼ円弧状または直線状とされたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気分配装置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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