空気弁のメンテナンス方法
【課題】メンテナンス作業を含む組立や分解作業がより容易に迅速に行うことができる空気弁のメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】この空気弁のメンテナンス方法は、上方端部に通気口2aを有してその下方内部に中空部2cを有する弁箱2と、通気口2aに臨む大空気孔3aを有して弁箱2に装着される蓋体3と、中空部2cに配設された弁体案内5と、弁体案内5の内方に配されたフロート弁体6と、その上方に配され、大空気孔3aに臨む小空気孔7aを有した遊動弁体7と、を備える空気弁1Xのメンテナンス方法であって、前記蓋体を取り外す前に、中空部2cと外部を連通できる孔により空気又は水を中空部から噴出させることによって、空気弁1Xが正常動作しているか否かを外部からの観察で判断し、正常動作していなければ、空気弁1Xを分解することを特徴とする。
【解決手段】この空気弁のメンテナンス方法は、上方端部に通気口2aを有してその下方内部に中空部2cを有する弁箱2と、通気口2aに臨む大空気孔3aを有して弁箱2に装着される蓋体3と、中空部2cに配設された弁体案内5と、弁体案内5の内方に配されたフロート弁体6と、その上方に配され、大空気孔3aに臨む小空気孔7aを有した遊動弁体7と、を備える空気弁1Xのメンテナンス方法であって、前記蓋体を取り外す前に、中空部2cと外部を連通できる孔により空気又は水を中空部から噴出させることによって、空気弁1Xが正常動作しているか否かを外部からの観察で判断し、正常動作していなければ、空気弁1Xを分解することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通水管の内部に溜まる空気を管外に排出する空気弁のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水道管、農業用水管などの通水管には、内部に空気(本明細書では空気に混じって存在するその他の気体も含むものとする。)が溜まって通水の障害とならないように、所定の箇所に空気を管外に排出する空気弁が設けられる。図11に示すものは従来の一般的な空気弁であって、本願発明者が発明者となっている特許文献1において従来技術として説明しているものと同様のものである。図11の(a)は正面図、(b)は断面図である。この空気弁101は、上方端部に通気口102a、下方端部に通水口102bを有し、通気口102aの下方内部に中空部102c、その下方に導水部102dを有して通水口102bにて通水管100に連結される弁箱102と、弁箱102の通気口102aに臨んで空気を排出するための大空気孔103aを有して弁箱102に装着される蓋体103と、弁箱102の中空部102cに配設された弁体案内105と、弁体案内105の内方に配された球体状のフロート弁体106と、弁体案内105の内方であってフロート弁体106の上方に配され、蓋体103の大空気孔103aに臨む小空気孔107aを有した遊動弁体107と、を備えている。更に詳しくは、弁箱102は、導水部102dの中間部にコック124を有している。また、蓋体103は、別体の外蓋体103Aと上側内蓋体103Baと下側内蓋体103Bbとよりなり、蓋体固定ボルト141、141、・・・とナット142、142、・・・によって弁箱102に固定されている。また、弁体案内105は、側部上側と底部の適宜位置に、空気や水の流通が可能な窓孔を有している。また、遊動弁体107は、中央においてわずかに下方に突出する弁座171を有しており、これに小空気孔107aが形成されている。なお、特許文献1は、球体状のフロート弁体106を柱状のフロート弁体とする等の工夫により、小型化等の効果を得ることを提案したものである。
【0003】
空気弁101の動作は、以下のとおりである。すなわち、弁箱102に取り付けられたコック124が開かれると、通水管100及び弁箱102の中の空気は、水圧に推されて大空気孔103aから急速に排気(多量排気)される。通水管100から弁箱102の中空部102cへ水が侵入すると、遊動弁体107及びフロート弁体106は水位の上昇に従って浮き上がる。これにより、図12(a)に示すように、遊動弁体107が下側内蓋体103Bbに密着して大空気孔103aを塞ぎ、更にフロート弁体106が遊動弁体107に密着してその小空気孔107aを塞ぐため、弁箱102の中空部102cは上下に空気溜まりAと水溜まりWができて完全に密封状態となる。このような密閉状態の後に、通水管100から弁箱102の中空部102cへ空気が水に混じって侵入すると、弁箱102の中空部102cの空気溜まりAの圧力が高くなり、水が退けられて水位が下降する。フロート弁体106はこの水位の下降に伴って下降し、他方、遊動弁体107は空気溜まりAによる内圧によって押し上げられたままとなる。そうすると、図12(b)に示すように、フロート弁体106は遊動弁体107から下方へ離反し、空気は小空気孔107aと大空気孔103aを経て、弁箱102の外方へ放出(圧力下排気)される。そして、再び、水位が上昇して弁箱102の中空部102cは、図12(a)に示すように、完全に密封状態となる。
【0004】
このような空気弁101では、ゴミ等の付着により、小空気孔107aがフロート弁体106により閉塞されずに開いたままとなって漏水したり、逆に、遊動弁体107とフロート弁体106とが固着し、水位が下がってもフロート弁体106が下降せずに小空気孔107aが塞がれたままとなって空気が排出されなくなったりする場合がある。このため、定期的に或いは障害が起こったときは緊急にメンテナンス作業が行われ、そのときは、空気弁101を分解することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−61618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、外蓋体104は弁箱102に複数の蓋体固定ボルト141、141、・・・を用いて固定されているため、その都度、工具を用いて、図13に示すようにして、空気弁101を分解しなければならない。すなわち、図13(a)に示すように、蓋体固定ボルト141、141、・・・からナット142、142、・・・を外してから外蓋体103Aを取り外し、更に、図13(b)に示すように、蓋体固定ボルト141、141、・・・を緩めて取り外し、上側内蓋体103Baと下側内蓋体103Bbを取り外す。そして、図13(c)に示すように、弁箱102の中空部102cから弁体案内105、フロート弁体106、遊動弁体107を取り出す。その後、点検、清掃、或いは補修の作業が完了すると、弁体案内105、フロート弁体106、遊動弁体107を弁箱102の中空部102cに戻し、下側内蓋体103Bbと上側内蓋体103Baと外蓋体103Aを弁箱102に取付け、蓋体固定ボルト141、141、・・・で固定する。このように、メンテナンス作業で空気弁101を分解することは、非常に作業が煩雑であった。
【0007】
一方、空気弁101は道路におけるマンホールや水管橋などに設置されるが、マンホール内での作業では交通を一時止めて行うので、メンテナンス作業は、上記のように煩雑でありながらも迅速に行う必要がある。
【0008】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンス作業を含む組立や分解作業がより容易に迅速に行うことができる空気弁のメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の空気弁のメンテナンス方法は、上方端部に通気口、下方端部に通水口を有し、通気口の下方内部に中空部、その下方に導水部を有する弁箱と、前記弁箱の通気口に臨む大空気孔を有してそれに装着される蓋体と、前記弁箱の中空部に配設された弁体案内と、前記弁体案内の内方に配されたフロート弁体と、前記弁体案内の内方であって前記フロート弁体の上方に配され、前記蓋体の大空気孔に臨む小空気孔を有した遊動弁体と、を備える空気弁のメンテナンス方法であって、前記蓋体を取り外す前に、中空部と外部を連通できる孔により空気又は水を中空部から噴出させることによって、空気弁が正常動作しているか否かを外部からの観察で判断し、正常動作していなければ、空気弁を分解することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の空気弁のメンテナンス方法は、請求項1に記載の空気弁のメンテナンス方法において、前記蓋体を取り外す前に、中空部と外部を連通できる孔から空気が噴出したならば、正常動作していないと判断して空気弁を分解することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空気弁のメンテナンス方法によれば、蓋体の取り外しの前に中空部と外部を孔を介して連通させて、正常動作しているか否かを外部からの観察で判断するので、容易に迅速にメンテナンス作業を含む組立や分解作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空気弁の(a)正面図、(b)断面図である。
【図2】同上の空気弁のカバー固定用の螺子等を説明する断面図である。
【図3】同上の空気弁の動作を説明する断面図である。
【図4】同上の空気弁のフロート弁体の動きを説明する拡大部分断面図である。
【図5】同上の空気弁の分解手順を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る空気弁の(a)正面図、(b)断面図である。
【図7】同上の空気弁のカバー固定用の螺子等を説明する断面図である。
【図8】同上の空気弁の蓋体の装着操作を説明する平面図である。
【図9】同上の空気弁の分解手順を示す断面図である。
【図10】同上の空気弁を臨時の消火栓として利用する場合を説明する断面図である。
【図11】従来の空気弁の(a)正面図、(b)断面図である。
【図12】同上の空気弁の動作を説明する断面図である。
【図13】同上の空気弁の分解手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る空気弁1Xの(a)正面図、(b)断面図(正面視の断面図)、図2(a)、(b)は空気弁1Xのカバー固定用の螺子(ねじ)41等を説明する側面視の断面図、図3(a)、(b)は空気弁1Xの動作を説明する断面図、図4(a)、(b)は空気弁1Xのフロート弁体6の動きを説明する拡大部分断面図、図5(a)〜(c)は空気弁1Xの分解手順を順に示す断面図である。この空気弁1Xは、上方端部に通気口2a、下方端部に通水口2bを有し、通気口2aの下方内部に中空部2c、その下方に導水部2dを有して通水口2bにて通水管100に連結される弁箱2と、弁箱2の通気口2aに臨んで空気を排出するための大空気孔3aを有して弁箱2に装着される蓋体3と、弁箱2の中空部2cに配設された弁体案内5と、弁体案内5の内方に配されたフロート弁体6と、弁体案内5の内方であってフロート弁体6の上方に配され、蓋体3の大空気孔3aに臨む小空気孔7aを有した遊動弁体7と、を備えるものである。また、弁箱2に着脱可能に取着されるレバーカバー4を更に備えている。以下、順に、これらの部品の構造についてその機能とともに説明する。
【0014】
先ず、弁箱2を説明する。弁箱2は、全体的にはワイングラスに似た外郭形状を成している。弁箱2の中空部2cは上方端部の通気口2aから上下方向の真中付近までの比較的広い空間を有している。導水部2dは中空部2cに連通しており、中空部2cより小径の略円筒状の管路となっている。
【0015】
この弁箱2は、その外側面に、一方に操作部22a、他方に後述する蓋体3の係合溝3bに対し圧接し得る係合部22bを有したレバー22を回動可能に設けている。具体的には、弁箱2の通気孔2a近傍の外側面に2個の支軸体21、21を設け、これにレバー22の操作部22aと係合部22bの中間部が回動可能に支持されている。また、弁箱2の外側面を形成する側壁には、係合部22bが回動して中空部2cに突出することを可能にするレバー用開口2eが設けてある。なお、レバー用開口2eは、上側の側壁を取り除いて窪みの形状としても構わない。レバー22の係合部22bは、いわゆる偏心カムの形状をしており、支軸体21から水平方向内方の周面までの距離は、操作部22aが略鉛直方向である第1の位置(レバー22を倒した状態)では長く、操作部22aが略水平方向となるレバー22の第2の位置(レバー22を起こした状態)では短く、回動に応じて徐々に変化するようになっている。なお、支軸体21やレバー22は2個に限らず、3個以上でも構わない。
【0016】
弁箱2のレバー用開口2eの下方では、側壁の内側面が少し内方に屈曲しており、後述する蓋体3の内蓋部3Bの下端が当接する蓋体受部2fとなっている。この蓋体受部2fには、内蓋部3Bが弁箱2の通気口2aから嵌め込まれて下端が当接する際の衝撃を緩和するとともに、密着性を良くするように、弾性のあるパッキンリング23を嵌着している。
【0017】
また、レバー22が第1の位置(レバー22を倒した状態)にあるときの操作部22aの先端の少し下方では、弁箱2の外側面が外方に鍔状に突出しており、後述する円筒状のレバーカバー4の下端面が当接する複数個(例えば4個)のレバーカバー受部2g、2g、・・・となっている。レバーカバー受部2gの鍔状に突出した先端部は、レバーカバー4を正しい位置に据え易いように、上方部分を切除した段状に形成するのが好ましい。更に、弁箱2の外側面には、レバーカバー受部2gとは別に、レバーカバー4の内側面に当接する程度外方に突出したカバー固定部2g’を設けている。このカバー固定部2g’は、外部から中空部2cに連通する螺子孔2hが形成され(図2参照)、その内周面には雌ねじが刻設されている。このカバー固定部2g’は、レバーカバー受部2gの1個が兼用することも可能である。
【0018】
また、中空部2cの下方付近の内側面が部分的に内方に突出しており、後述する有底円筒状の弁体案内5の下端部を受け止める複数個(例えば4個)の弁体案内受部2i、2i、・・・となっている。
【0019】
中空部2cの下方の導水部2dの中間部には、コック24が取り付けられ、このコック24の開閉により通水管100から弁箱2の中空部2cへの水の流入と流入停止を制御する。また、この部分の外方は、横からの衝撃加重でコック24や弁箱2が破損するのを防ぐために、円筒状のコックカバー25で覆われている。弁箱2は、下方端部の通水口2bの周辺に鍔部2jを有しており、通水口2bが通水管100の内部に連通するよう鍔部2jが通水管100に接合される。
【0020】
次に、蓋体3を説明する。蓋体3は、薄皿を伏せたような形状の外蓋部3Aと、大略円筒状であって上部に大空気孔3aを有する内蓋部3Bと、これらを一定の隙間Gを介在させて連結する複数本(例えば3本)の柱部3Cと、を一体的に形成してなる。内蓋部3Bの下方に延出する下方円筒部3bは、弁箱2のレバー22、22が第2の位置(レバー22、22を起こした状態)で弁箱2の通気口2aから中空部2cに嵌まり込み、その下端が弁箱2の蓋体受部2fに当接することとなる。この下方円筒部3bの外側面には、前述したレバー22の係合部22bが圧接し得る凹状の係合溝3cを形成している。外蓋部3Aは、雨水等が大空気孔3aから弁箱2の中空部2cに侵入するのを阻止するもので、内蓋部3Bより大径になっている。そして、弁箱2の中空部2cの空気は、大空気孔3a、隙間Gを通って外部に流出する。
【0021】
内蓋部3Bが嵌め込まれた状態で、レバー22、22が第2の位置から第1の位置(レバー22、22を倒した状態)に回動すると、その係合部22b、22bがレバー用開口2e、2eを通過して係合溝3cを両側から圧接し、これにより蓋体3が水や空気による内圧によって外れることのないように弁箱2にかたく結合して装着される。従って、係合溝3cは、係合部22b、22bによる両方からの圧接が可能なように、上下方向が緩やかな凹曲線でもって環状に形成されている。また、再度、レバー22、22の第2の位置(レバー22、22を起こした状態)に回動すると、係合部22b、22bが係合溝3cから離反して圧接状態が解除され、蓋体3と弁箱2が分離できる状態になる。なお、内蓋部3Bの大空気孔3aの周辺部には、遊動弁体7と弁体案内5が密着性良く当接するように、弾性のある2重のOリング31、32が嵌め込まれている。
【0022】
円筒状のレバーカバー4は、その下端をレバーカバー受部2g、2g、・・・に当接させて弁箱2に取着したとき、カバー固定部2g’の螺子孔2hに対応する位置にカバー固定孔4aが形成されている(図2参照)。また、レバーカバー4は、その下端をレバーカバー受部2g、2g、・・・に当接させた状態で、第1の位置にあるレバー22、22がほぼ完全に収まるような高さと内径を有している。また、図2(a)に示すように、レバーカバー4或いは弁箱2にワイヤやチェーンなどで連結された付属のカバー固定用の螺子41が設けられている。螺子41により、レバーカバー4は、弁箱2に着脱可能に取着されることとなる。レバーカバー4を弁箱2に取着するときは、図2(b)に示すように、螺子41をレバーカバー4のカバー固定孔4aに通し、弁箱2の螺子孔2hに螺合させる。なお、螺子41は、工具が無くても螺合ができる図のような蝶ボルトやハンドル付きボルトのようなものが望ましい。また、螺子孔2hの中空部2c側を狭くし、ゴミ等が付着し難いように、螺子41の先端が少し内方に突出するようにするのが望ましい。
【0023】
このレバーカバー4は、マンホール内などではなく、空気弁1Xが露出して設置されているような場合に、不測の外力によりレバー22、22が誤って第2の位置になるのを防止することができ、また、美観も良くする。また、螺子41と弁箱2の螺子孔2hは、空気弁1Xの分解作業時に優れた効果を奏するが、これについては後述する。
【0024】
有底円筒状の弁体案内5は、側部上側と底部の適宜位置に、空気や水の流通が可能な窓孔5a、5bを有している。側部上側の窓孔5aは、弁体案内5の上端からの切り欠けであってもよい。弁体案内5は、その上端が蓋体3のOリング32に当接し、弁体案内5の下端部は弁箱2の弁体案内受部2iに当接することにより、位置が固定される。
【0025】
フロート弁体6は、水よりも比重が小さく軽量である。フロート弁体6は、長尺の略円柱状をなしており、その上端部6aは円錐台状に先細りになっている。その先端は、鉛直方向から傾斜して空気弁1Xを設置した場合の密着性や弁座71との固着のし難さなどを考慮した曲面となっている。このように、先端の曲面を自由に設計できる点は、背景技術の欄で述べた図11の空気弁101のフロート弁体106と異なるところである。
【0026】
遊動弁体7は、大略円板状であり、下面にフロート弁体6の円錐台状の上端部6aに対応した逆円錐台状の凹部7bが形成されている。その中央には、フロート弁体6に密着可能なようにわずかに下方に突出して表面が平坦であり、弾性を有する弁座71を有しており、小空気孔7aが弁座71の中心に上下に貫通して形成されている。また、遊動弁体7の外周面と凹部7bとの間に、空気の通過のための小孔7cが形成されている。遊動弁体7は、フロート弁体6よりも更に軽量である。遊動弁体7からフロート弁体6が離反しているときは、小空気孔7aから弁箱2の中空部2cの空気が排出される。遊動弁体7にフロート弁体6が接触しているときは、凹部7bにフロート弁体6の上端部6aが嵌まり込み、小空気孔7aを塞ぐ。また、遊動弁体7は、その上面に凸部7dが形成されている。この凸部7dは、蓋体3の大空気孔3aより小さくなっていて、遊動弁体7が上昇して行くと、大空気孔3aに緩く嵌合し、凸部7dの周辺部は蓋体3の0リング31に密着性良く当接することになる。
【0027】
この空気弁1Xは、以下のように動作する。すなわち、コック24が開かれ、通水管100から弁箱2の中空部2cへ水が侵入すると、弁箱2の中空部2cの空気は、水圧に推されて大空気孔3aから急速に排気される。同時に、遊動弁体7及びフロート弁体6は水位の上昇に従って浮き上がる。これにより、図3(a)のように、遊動弁体7が内蓋部3Bの上面に密着して大空気孔3aを塞ぎ、更にフロート弁体6が遊動弁体7に密着してその小空気孔7aを塞ぐため、弁箱2の中空部2cは上下に空気溜まりAと水溜まりWができて完全に密封状態となる。このような密閉状態の後に、通水管100から弁箱2の中空部2cへ空気が水に混じって侵入すると、弁箱2の中空部2cの空気溜まりAの圧力が高くなり、水が退けられて水位が下降する。フロート弁体6はこの水位の下降に伴って下降し、他方、遊動弁体7は空気溜まりAによる内圧によって押し上げられたままとなる。そうすると、図3(b)のように、フロート弁体6は遊動弁体7から下方へ離反し、空気は小空気孔7aと大空気孔3aを経て、弁箱2の外方へ放出される。そして、再び、水位が上昇して弁箱2の中空部2cは完全に密封状態となる。
【0028】
ここで、背景技術の欄で述べた図11の空気弁101など通常のものは、一般に、鉛直方向から2度以上に傾斜すると正常な動作が難しく、それ以内で設置される。本発明の実施形態に係る空気弁1Xのフロート弁体6は、鉛直方向に設置されると、図4(a)に示すように、遊動弁体7の弁座71の表面に密着する。鉛直方向から傾斜して設置されたものでは、図4(b)に示すように、フロート弁体6は、長尺であるために通常、上側となる側壁の内側面に円柱側面が接しながら水位の上昇に従って浮き上がり、その先端が遊動弁体7の弁座71の表面に密着する。図4(b)のフロート弁体6と弁座71の相対的な位置関係は、図4(a)におけるフロート弁体6を径方向に、フロート弁体6と側壁の内側面との隙間gだけ平行移動したものとなっている。従って、遊動弁体7の逆円錐台状の凹部7bはその平行移動を妨げないような大きさになっている。また、フロート弁体6の上端部6aの先端は、弁座71に良く密着するのは、平坦に近い方であるが、平坦だとその間の固着が起こり易い。本願発明者の実験では、フロート弁体6の丈(高さ)Lの1〜3倍までの曲率半径の曲面が望ましく、空気弁1Xは鉛直方向から30度傾斜した場合でも問題なく動作することが確認されている。従って、上りであっても下りであっても、メンテナンス作業を容易に迅速に行える場所に空気弁1Xを設置することが可能になる。
【0029】
次に、空気弁1Xのメンテナンス作業の手順について説明する。まず、必要に応じマンホールの蓋等を取り外して空気弁1Xが現れるようにする。このとき、水が溢れて出ていれば、ゴミ等の付着により、小空気孔7aがフロート弁体6により閉塞されずに開いたままとなって漏水している可能性がある。次に、コック24を閉めて通水管100と弁箱2の中空部2cとの連通を遮り、作業中に水が流入するのを防ぐようにする。
【0030】
次に、カバー固定用の螺子41の螺合を緩めて、それを取り外す。このとき、通常は、弁箱2の螺子孔2hから水が噴出するが、その水圧により空気弁1Xの正常動作が確認できる。仮に、遊動弁体7とフロート弁体6とが固着し、水位が下がってもフロート弁体6が下降せずに小空気孔7aが塞がれたままとなって空気が排出されなくなっていた場合には、空気が噴出する。このようにして、空気弁1Xを分解しなくても、空気弁1Xが正常動作しているか否かを外部からの観察で判断できる。また、正常動作していなければ、空気弁1Xを分解することになるが、その際、溜まった圧縮空気による内圧を減らしてから蓋体3の取り外しなどの分解作業に入ることができるので、レバー22、22を第2の位置にした瞬間などに異常な内圧によって蓋体3が吹き飛ぶ等の可能性を回避しながら迅速に作業を行うことが可能になる。なお、背景技術の欄で述べた図11の空気弁101においても、外部から中空部102cに連通する螺子孔を形成して螺子を螺合しておれば、空気弁101を分解しなくても、螺合を緩めて行き、水が噴出するか空気が噴出するかを観察することにより、遊動弁体107とフロート弁体106との固着を判断することができる。
【0031】
次に、図5(a)に示すように、レバーカバー4を取り外し、蓋体3の取り外し作業に入る。図5(b)に示すように、レバー22、22を第2の位置にして、蓋体3とレバー22、22との圧接状態を解除する。そして、図5(c)に示すように、蓋体3を引き上げて取り外す。ここで、外蓋部3Aと内蓋部3Bが一体となっており、背景技術の欄で述べた図11の空気弁101の外蓋体103Aと上側内蓋体103Baと下側内蓋体103Bbのように別体となっていないので、弁箱2から蓋体3を容易に迅速に取り外すことができる。
【0032】
点検、清掃、或いは補修の作業が完了すると、弁体案内5、フロート弁体6、遊動弁体7を弁箱2の中空部2cに戻し、蓋体3を嵌め込み、レバー22、22を第1の位置にして蓋体3とレバー22、22とを圧接状態にして取着する。そして、レバーカバー4を据え、弁箱2の螺子孔2hに螺子41を螺合する。必要に応じ、マンホールの蓋等を元に戻す。このように、容易に迅速に空気弁1Xを組み立てることができる。
【0033】
つまり、この空気弁1Xは、弁箱2のレバー22、22を回動操作することにより蓋体3の固定や固定解除が行われるので、工具を用いず、容易に迅速にメンテナンス作業を含む組立や分解作業が可能となるのである。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る空気弁1Yについて説明する。この空気弁1Yは、空気弁1Xと同様に、弁箱2、蓋体3、弁体案内5、フロート弁体6、遊動弁体7、レバーカバー4、を備えており、空気弁1Xの部位に相当する部位が多い。以下の説明において、空気弁1Xの部位に相当する部位には同じ符号を付している。図6は空気弁1Yの(a)正面図、(b)断面図(正面視の断面図)である。図7(a)、(b)は空気弁1Yのカバー固定用の螺子41等を説明する側面視の断面図であって、(a)は弁箱2に蓋体3を嵌め込んだ直後の状態、(b)はその後、蓋体3を回転しレバーカバー4を装着した状態を示している。図8(a)、(b)は空気弁1Yの蓋体3の装着操作を説明する平面図である。図9(a)〜(c)は空気弁1Yの分解手順を順に示す断面図である。なお、図9(c)以外の断面図では、弁体案内5の断面背景部分は省略している。空気弁1Yは、コック24がないタイプのものであって、通常は、空気弁1Yと通水管100の間に、コック24の部分を有する別体の補修弁100’が連接されて用いられるものである。以下、順に、空気弁1Yの部品の構造についてその機能とともに説明する。なお、空気弁1Xのものと同様のところは当業者が容易に理解できるので、説明は省略している。
【0035】
空気弁1Yの弁箱2は、導水部2dに上記のコック24を有しておらず、短い導水部2dの端の通水口2bにて、補修弁100’の導水部100dに連通される。弁箱2の中空部2cは、導水部2dが短いために、上方端部の通気口2aから下方端部近傍までの空間を有することになる。通気口2a近傍の内側面には、蓋体3の後述の2個の差し込み部3D、3Dを差し込むための差し込み溝2k、2kが円周方向に形成されている(図9(c)参照)。差し込み溝2k、2kの入口の蓋体載置部は、差し込み部3D、3Dが差し込み溝2k、2kに確実に差し込まれないうちは蓋体3がレバー22、22により圧接できないように、下り斜面の部分2ka、2kaを有している(図9(c)参照)。弁箱2の側壁の上部には、ナットによって手締め等でレバーカバー4を取り付けるためのカバー取着用雄ねじ2mが設けられている。蓋体受部2fの下方には、側壁の内側面が少し内方に屈曲しており、弁体案内5の鍔部を当接して支持する弁体案内支持部2nが形成されている。導水部2dは、中空部2cより少し小さいが、比較的大きな直径の略円筒状の短い管路となっている。なお、図では、正面視と側面視で導水部2dの直径は異なっている。螺子孔2hが形成されているカバー固定部2g’は、図7では、空気弁1Xのものよりも大きいが、基本構造は同様である。カバー固定部2g’は、弁箱2の外側面とレバーカバー4の内側面が当接する程度の大きさならば、外方に突出しなくてもよい場合もある。従って、弁箱2は、空気弁1Xにおけるレバーカバー受部2g、弁体案内受部2i、コック24、コックカバー25は有していない。空気弁1Yの弁箱2において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0036】
空気弁1Yの蓋体3は、内蓋部3Bと、内蓋部3Bの上面の周縁に設けられた2個の差し込み部3D、3Dと、を一体的に形成してなる。従って、蓋体3は、空気弁1Xにおける外蓋部3Aと柱部3Cは有していない。差し込み部3Dは、端部3Daが薄くなるように段差が形成されており、端部3Daは内蓋部3Bの外側面よりも外方に突出している(図7(a)参照)。蓋体3の装着は、図8(a)に示すように、2個の差し込み部3D、3Dを、弁箱2の差し込み溝2k、2kの入口の蓋体載置部に載置して、内蓋部3Bを嵌め込む。そして、同図(b)に示すように時計方向に回転させて2個の差し込み部3D、3Dを差し込み溝2k、2kに差し込み、それからレバー22、22を回動する。これは、誤ってレバーカバー4を装着しないでカバー固定用の螺子41を螺子孔2hに螺合して組み立てた万一の場合に、メンテナンス作業の際に蓋体3とレバー22、22との圧接状態を解除したときに蓋体3が吹き飛ぶ等の可能性を多重に回避するためである。空気弁1Yの蓋体3には、空気弁1XにおけるOリング31、32は設けられていない。空気弁1Yの蓋体3において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0037】
空気弁1Yのレバーカバー4は、頂部を有した円筒状である。レバーカバー4の頂部4bは、空気弁1Xの外蓋部3Aの代わりの働きをし、そこには、レバーカバー4を取着したときに弁箱2のカバー取着用雄ねじ2mが挿通するような孔が形成されている。レバーカバー4は、第1の位置にあるレバー22、22の大部分が収まるような高さと内径を有している。カバー固定用の螺子41は、図7では、ハンドル付きボルトの形状であり、空気弁1Xのものよりも大きいが、基本構造は同様である。また、螺子41は、図7では、ワイヤやチェーンなどでレバーカバー4等に連結されていないが、連結することも可能である。空気弁1Yのレバーカバー4において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0038】
空気弁1Yの弁体案内5には、その底部に固定されて下方に、中央に整流孔5Aaを有する円板状の整流板5Aが取り付けられている。整流板5Aは、整流孔5Aaの直径が導水部2dの直径よりも小さくなっており、また、整流孔5Aaの周囲の本体部5Abが弁体案内5の底部の窓孔5bの位置に重合する。従って、整流板5Aは、導水部2dの直径の大きさに係わらず、導水部2dからの空気(多量排気の場合)や水(圧力下排気の場合)がそのままの流速で窓孔5bに流れ込んでフロート弁体6の正常な動作を妨げることのないように、空気や水の流れを整えることができる。なお、空気弁1Yの弁体案内5の側部上側の窓孔5aは、上端からの切り欠けになっている(図9(c)参照)。空気弁1Yの弁体案内5において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0039】
空気弁1Yのフロート弁体6は、空気弁1Xのものと同様である。
【0040】
空気弁1Yの遊動弁体7には、空気弁1Xにおいて蓋体3に設けられていたOリング31の代りに、Oリング72が設けられている。空気弁1Yの遊動弁体7において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0041】
空気弁1Yの動作は、上記した空気弁1Xの動作と同様である。空気弁1Yのメンテナンス作業の手順は、レバーカバー4の着脱の際にカバー取着用雄ねじ2mにナットを手で螺合させたり外したりする作業と、蓋体3の着脱の際に弁箱2の差し込み溝2k、2kへの差し込み部3D、3Dの差し込みの操作以外は、図9(a)〜(c)に示すように、空気弁1Xの場合と同様であり、工具を用いず、容易に迅速にメンテナンス作業を含む組立や分解作業が可能となる。なお、図9(b)と同図(c)の間で、蓋体3は回転している。
【0042】
また、空気弁1Yは、臨時の消火栓としての利用が可能である。図10は、レバーカバー4、蓋体3、弁体案内5、フロート弁体6、遊動弁体7を取り外し、弁箱2の中空部2cに差し込み式(町野式)の口金8を差し込んでレバー22、22を第1の位置にした状態を示す断面図である。口金8には、蓋体3の凹状の係合溝3cと同様の係合溝3c’が形成されており、弁箱2のレバー22、22の係合部22b、22bが係合溝3c’に両側から圧接し、弁箱2に口金8がかたく結合している。この状態で、消火ホースを接続し、消火が可能である。導水部2dは比較的大きな直径なので、多量の水の供給が可能となっている。口金8を取り外すときは、レバー22、22を第2の位置にする。また、図10に示す状態でアングルバルブを取り付け、災害時の給水に利用することも可能である。更には、通水管100の内部に管路内調査カメラや圧力計などを進入させて調査を行うために、図10に示す状態にしておくことも可能である。
【0043】
以上、本発明の実施形態に係る空気弁について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、かかる空気弁を通常の消火栓に一体に取り付けることも可能である。また、実施形態に記載した弁箱、蓋体、弁体案内、フロート弁体、遊動弁体などの形状や構造は適宜変形できることは勿論である。また、空気弁1Xをコック24がないタイプにしたり、空気弁1Yをコック24があるタイプにしたりすることも容易に可能である。
【符号の説明】
【0044】
1X、1Y 空気弁
2 弁箱
2a 弁箱の通気口
2b 弁箱の通水口
2c 弁箱の中空部
2d 弁箱の導水部
2g’ カバー固定部
2h 弁箱の螺子孔
22 レバー
22a レバーの操作部
22b レバーの係合部
3 蓋体
3B 蓋体の内蓋部
3a 蓋体の大空気孔
3b 蓋体の下方円筒部
3c 蓋体の係合溝
4 レバーカバー
41 螺子
5 弁体案内
5A 整流板
5Aa 整流孔
6 フロート弁体
7 遊動弁体
7a 遊動弁体の小空気孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、通水管の内部に溜まる空気を管外に排出する空気弁のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水道管、農業用水管などの通水管には、内部に空気(本明細書では空気に混じって存在するその他の気体も含むものとする。)が溜まって通水の障害とならないように、所定の箇所に空気を管外に排出する空気弁が設けられる。図11に示すものは従来の一般的な空気弁であって、本願発明者が発明者となっている特許文献1において従来技術として説明しているものと同様のものである。図11の(a)は正面図、(b)は断面図である。この空気弁101は、上方端部に通気口102a、下方端部に通水口102bを有し、通気口102aの下方内部に中空部102c、その下方に導水部102dを有して通水口102bにて通水管100に連結される弁箱102と、弁箱102の通気口102aに臨んで空気を排出するための大空気孔103aを有して弁箱102に装着される蓋体103と、弁箱102の中空部102cに配設された弁体案内105と、弁体案内105の内方に配された球体状のフロート弁体106と、弁体案内105の内方であってフロート弁体106の上方に配され、蓋体103の大空気孔103aに臨む小空気孔107aを有した遊動弁体107と、を備えている。更に詳しくは、弁箱102は、導水部102dの中間部にコック124を有している。また、蓋体103は、別体の外蓋体103Aと上側内蓋体103Baと下側内蓋体103Bbとよりなり、蓋体固定ボルト141、141、・・・とナット142、142、・・・によって弁箱102に固定されている。また、弁体案内105は、側部上側と底部の適宜位置に、空気や水の流通が可能な窓孔を有している。また、遊動弁体107は、中央においてわずかに下方に突出する弁座171を有しており、これに小空気孔107aが形成されている。なお、特許文献1は、球体状のフロート弁体106を柱状のフロート弁体とする等の工夫により、小型化等の効果を得ることを提案したものである。
【0003】
空気弁101の動作は、以下のとおりである。すなわち、弁箱102に取り付けられたコック124が開かれると、通水管100及び弁箱102の中の空気は、水圧に推されて大空気孔103aから急速に排気(多量排気)される。通水管100から弁箱102の中空部102cへ水が侵入すると、遊動弁体107及びフロート弁体106は水位の上昇に従って浮き上がる。これにより、図12(a)に示すように、遊動弁体107が下側内蓋体103Bbに密着して大空気孔103aを塞ぎ、更にフロート弁体106が遊動弁体107に密着してその小空気孔107aを塞ぐため、弁箱102の中空部102cは上下に空気溜まりAと水溜まりWができて完全に密封状態となる。このような密閉状態の後に、通水管100から弁箱102の中空部102cへ空気が水に混じって侵入すると、弁箱102の中空部102cの空気溜まりAの圧力が高くなり、水が退けられて水位が下降する。フロート弁体106はこの水位の下降に伴って下降し、他方、遊動弁体107は空気溜まりAによる内圧によって押し上げられたままとなる。そうすると、図12(b)に示すように、フロート弁体106は遊動弁体107から下方へ離反し、空気は小空気孔107aと大空気孔103aを経て、弁箱102の外方へ放出(圧力下排気)される。そして、再び、水位が上昇して弁箱102の中空部102cは、図12(a)に示すように、完全に密封状態となる。
【0004】
このような空気弁101では、ゴミ等の付着により、小空気孔107aがフロート弁体106により閉塞されずに開いたままとなって漏水したり、逆に、遊動弁体107とフロート弁体106とが固着し、水位が下がってもフロート弁体106が下降せずに小空気孔107aが塞がれたままとなって空気が排出されなくなったりする場合がある。このため、定期的に或いは障害が起こったときは緊急にメンテナンス作業が行われ、そのときは、空気弁101を分解することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−61618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、外蓋体104は弁箱102に複数の蓋体固定ボルト141、141、・・・を用いて固定されているため、その都度、工具を用いて、図13に示すようにして、空気弁101を分解しなければならない。すなわち、図13(a)に示すように、蓋体固定ボルト141、141、・・・からナット142、142、・・・を外してから外蓋体103Aを取り外し、更に、図13(b)に示すように、蓋体固定ボルト141、141、・・・を緩めて取り外し、上側内蓋体103Baと下側内蓋体103Bbを取り外す。そして、図13(c)に示すように、弁箱102の中空部102cから弁体案内105、フロート弁体106、遊動弁体107を取り出す。その後、点検、清掃、或いは補修の作業が完了すると、弁体案内105、フロート弁体106、遊動弁体107を弁箱102の中空部102cに戻し、下側内蓋体103Bbと上側内蓋体103Baと外蓋体103Aを弁箱102に取付け、蓋体固定ボルト141、141、・・・で固定する。このように、メンテナンス作業で空気弁101を分解することは、非常に作業が煩雑であった。
【0007】
一方、空気弁101は道路におけるマンホールや水管橋などに設置されるが、マンホール内での作業では交通を一時止めて行うので、メンテナンス作業は、上記のように煩雑でありながらも迅速に行う必要がある。
【0008】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンス作業を含む組立や分解作業がより容易に迅速に行うことができる空気弁のメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の空気弁のメンテナンス方法は、上方端部に通気口、下方端部に通水口を有し、通気口の下方内部に中空部、その下方に導水部を有する弁箱と、前記弁箱の通気口に臨む大空気孔を有してそれに装着される蓋体と、前記弁箱の中空部に配設された弁体案内と、前記弁体案内の内方に配されたフロート弁体と、前記弁体案内の内方であって前記フロート弁体の上方に配され、前記蓋体の大空気孔に臨む小空気孔を有した遊動弁体と、を備える空気弁のメンテナンス方法であって、前記蓋体を取り外す前に、中空部と外部を連通できる孔により空気又は水を中空部から噴出させることによって、空気弁が正常動作しているか否かを外部からの観察で判断し、正常動作していなければ、空気弁を分解することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の空気弁のメンテナンス方法は、請求項1に記載の空気弁のメンテナンス方法において、前記蓋体を取り外す前に、中空部と外部を連通できる孔から空気が噴出したならば、正常動作していないと判断して空気弁を分解することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空気弁のメンテナンス方法によれば、蓋体の取り外しの前に中空部と外部を孔を介して連通させて、正常動作しているか否かを外部からの観察で判断するので、容易に迅速にメンテナンス作業を含む組立や分解作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空気弁の(a)正面図、(b)断面図である。
【図2】同上の空気弁のカバー固定用の螺子等を説明する断面図である。
【図3】同上の空気弁の動作を説明する断面図である。
【図4】同上の空気弁のフロート弁体の動きを説明する拡大部分断面図である。
【図5】同上の空気弁の分解手順を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る空気弁の(a)正面図、(b)断面図である。
【図7】同上の空気弁のカバー固定用の螺子等を説明する断面図である。
【図8】同上の空気弁の蓋体の装着操作を説明する平面図である。
【図9】同上の空気弁の分解手順を示す断面図である。
【図10】同上の空気弁を臨時の消火栓として利用する場合を説明する断面図である。
【図11】従来の空気弁の(a)正面図、(b)断面図である。
【図12】同上の空気弁の動作を説明する断面図である。
【図13】同上の空気弁の分解手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る空気弁1Xの(a)正面図、(b)断面図(正面視の断面図)、図2(a)、(b)は空気弁1Xのカバー固定用の螺子(ねじ)41等を説明する側面視の断面図、図3(a)、(b)は空気弁1Xの動作を説明する断面図、図4(a)、(b)は空気弁1Xのフロート弁体6の動きを説明する拡大部分断面図、図5(a)〜(c)は空気弁1Xの分解手順を順に示す断面図である。この空気弁1Xは、上方端部に通気口2a、下方端部に通水口2bを有し、通気口2aの下方内部に中空部2c、その下方に導水部2dを有して通水口2bにて通水管100に連結される弁箱2と、弁箱2の通気口2aに臨んで空気を排出するための大空気孔3aを有して弁箱2に装着される蓋体3と、弁箱2の中空部2cに配設された弁体案内5と、弁体案内5の内方に配されたフロート弁体6と、弁体案内5の内方であってフロート弁体6の上方に配され、蓋体3の大空気孔3aに臨む小空気孔7aを有した遊動弁体7と、を備えるものである。また、弁箱2に着脱可能に取着されるレバーカバー4を更に備えている。以下、順に、これらの部品の構造についてその機能とともに説明する。
【0014】
先ず、弁箱2を説明する。弁箱2は、全体的にはワイングラスに似た外郭形状を成している。弁箱2の中空部2cは上方端部の通気口2aから上下方向の真中付近までの比較的広い空間を有している。導水部2dは中空部2cに連通しており、中空部2cより小径の略円筒状の管路となっている。
【0015】
この弁箱2は、その外側面に、一方に操作部22a、他方に後述する蓋体3の係合溝3bに対し圧接し得る係合部22bを有したレバー22を回動可能に設けている。具体的には、弁箱2の通気孔2a近傍の外側面に2個の支軸体21、21を設け、これにレバー22の操作部22aと係合部22bの中間部が回動可能に支持されている。また、弁箱2の外側面を形成する側壁には、係合部22bが回動して中空部2cに突出することを可能にするレバー用開口2eが設けてある。なお、レバー用開口2eは、上側の側壁を取り除いて窪みの形状としても構わない。レバー22の係合部22bは、いわゆる偏心カムの形状をしており、支軸体21から水平方向内方の周面までの距離は、操作部22aが略鉛直方向である第1の位置(レバー22を倒した状態)では長く、操作部22aが略水平方向となるレバー22の第2の位置(レバー22を起こした状態)では短く、回動に応じて徐々に変化するようになっている。なお、支軸体21やレバー22は2個に限らず、3個以上でも構わない。
【0016】
弁箱2のレバー用開口2eの下方では、側壁の内側面が少し内方に屈曲しており、後述する蓋体3の内蓋部3Bの下端が当接する蓋体受部2fとなっている。この蓋体受部2fには、内蓋部3Bが弁箱2の通気口2aから嵌め込まれて下端が当接する際の衝撃を緩和するとともに、密着性を良くするように、弾性のあるパッキンリング23を嵌着している。
【0017】
また、レバー22が第1の位置(レバー22を倒した状態)にあるときの操作部22aの先端の少し下方では、弁箱2の外側面が外方に鍔状に突出しており、後述する円筒状のレバーカバー4の下端面が当接する複数個(例えば4個)のレバーカバー受部2g、2g、・・・となっている。レバーカバー受部2gの鍔状に突出した先端部は、レバーカバー4を正しい位置に据え易いように、上方部分を切除した段状に形成するのが好ましい。更に、弁箱2の外側面には、レバーカバー受部2gとは別に、レバーカバー4の内側面に当接する程度外方に突出したカバー固定部2g’を設けている。このカバー固定部2g’は、外部から中空部2cに連通する螺子孔2hが形成され(図2参照)、その内周面には雌ねじが刻設されている。このカバー固定部2g’は、レバーカバー受部2gの1個が兼用することも可能である。
【0018】
また、中空部2cの下方付近の内側面が部分的に内方に突出しており、後述する有底円筒状の弁体案内5の下端部を受け止める複数個(例えば4個)の弁体案内受部2i、2i、・・・となっている。
【0019】
中空部2cの下方の導水部2dの中間部には、コック24が取り付けられ、このコック24の開閉により通水管100から弁箱2の中空部2cへの水の流入と流入停止を制御する。また、この部分の外方は、横からの衝撃加重でコック24や弁箱2が破損するのを防ぐために、円筒状のコックカバー25で覆われている。弁箱2は、下方端部の通水口2bの周辺に鍔部2jを有しており、通水口2bが通水管100の内部に連通するよう鍔部2jが通水管100に接合される。
【0020】
次に、蓋体3を説明する。蓋体3は、薄皿を伏せたような形状の外蓋部3Aと、大略円筒状であって上部に大空気孔3aを有する内蓋部3Bと、これらを一定の隙間Gを介在させて連結する複数本(例えば3本)の柱部3Cと、を一体的に形成してなる。内蓋部3Bの下方に延出する下方円筒部3bは、弁箱2のレバー22、22が第2の位置(レバー22、22を起こした状態)で弁箱2の通気口2aから中空部2cに嵌まり込み、その下端が弁箱2の蓋体受部2fに当接することとなる。この下方円筒部3bの外側面には、前述したレバー22の係合部22bが圧接し得る凹状の係合溝3cを形成している。外蓋部3Aは、雨水等が大空気孔3aから弁箱2の中空部2cに侵入するのを阻止するもので、内蓋部3Bより大径になっている。そして、弁箱2の中空部2cの空気は、大空気孔3a、隙間Gを通って外部に流出する。
【0021】
内蓋部3Bが嵌め込まれた状態で、レバー22、22が第2の位置から第1の位置(レバー22、22を倒した状態)に回動すると、その係合部22b、22bがレバー用開口2e、2eを通過して係合溝3cを両側から圧接し、これにより蓋体3が水や空気による内圧によって外れることのないように弁箱2にかたく結合して装着される。従って、係合溝3cは、係合部22b、22bによる両方からの圧接が可能なように、上下方向が緩やかな凹曲線でもって環状に形成されている。また、再度、レバー22、22の第2の位置(レバー22、22を起こした状態)に回動すると、係合部22b、22bが係合溝3cから離反して圧接状態が解除され、蓋体3と弁箱2が分離できる状態になる。なお、内蓋部3Bの大空気孔3aの周辺部には、遊動弁体7と弁体案内5が密着性良く当接するように、弾性のある2重のOリング31、32が嵌め込まれている。
【0022】
円筒状のレバーカバー4は、その下端をレバーカバー受部2g、2g、・・・に当接させて弁箱2に取着したとき、カバー固定部2g’の螺子孔2hに対応する位置にカバー固定孔4aが形成されている(図2参照)。また、レバーカバー4は、その下端をレバーカバー受部2g、2g、・・・に当接させた状態で、第1の位置にあるレバー22、22がほぼ完全に収まるような高さと内径を有している。また、図2(a)に示すように、レバーカバー4或いは弁箱2にワイヤやチェーンなどで連結された付属のカバー固定用の螺子41が設けられている。螺子41により、レバーカバー4は、弁箱2に着脱可能に取着されることとなる。レバーカバー4を弁箱2に取着するときは、図2(b)に示すように、螺子41をレバーカバー4のカバー固定孔4aに通し、弁箱2の螺子孔2hに螺合させる。なお、螺子41は、工具が無くても螺合ができる図のような蝶ボルトやハンドル付きボルトのようなものが望ましい。また、螺子孔2hの中空部2c側を狭くし、ゴミ等が付着し難いように、螺子41の先端が少し内方に突出するようにするのが望ましい。
【0023】
このレバーカバー4は、マンホール内などではなく、空気弁1Xが露出して設置されているような場合に、不測の外力によりレバー22、22が誤って第2の位置になるのを防止することができ、また、美観も良くする。また、螺子41と弁箱2の螺子孔2hは、空気弁1Xの分解作業時に優れた効果を奏するが、これについては後述する。
【0024】
有底円筒状の弁体案内5は、側部上側と底部の適宜位置に、空気や水の流通が可能な窓孔5a、5bを有している。側部上側の窓孔5aは、弁体案内5の上端からの切り欠けであってもよい。弁体案内5は、その上端が蓋体3のOリング32に当接し、弁体案内5の下端部は弁箱2の弁体案内受部2iに当接することにより、位置が固定される。
【0025】
フロート弁体6は、水よりも比重が小さく軽量である。フロート弁体6は、長尺の略円柱状をなしており、その上端部6aは円錐台状に先細りになっている。その先端は、鉛直方向から傾斜して空気弁1Xを設置した場合の密着性や弁座71との固着のし難さなどを考慮した曲面となっている。このように、先端の曲面を自由に設計できる点は、背景技術の欄で述べた図11の空気弁101のフロート弁体106と異なるところである。
【0026】
遊動弁体7は、大略円板状であり、下面にフロート弁体6の円錐台状の上端部6aに対応した逆円錐台状の凹部7bが形成されている。その中央には、フロート弁体6に密着可能なようにわずかに下方に突出して表面が平坦であり、弾性を有する弁座71を有しており、小空気孔7aが弁座71の中心に上下に貫通して形成されている。また、遊動弁体7の外周面と凹部7bとの間に、空気の通過のための小孔7cが形成されている。遊動弁体7は、フロート弁体6よりも更に軽量である。遊動弁体7からフロート弁体6が離反しているときは、小空気孔7aから弁箱2の中空部2cの空気が排出される。遊動弁体7にフロート弁体6が接触しているときは、凹部7bにフロート弁体6の上端部6aが嵌まり込み、小空気孔7aを塞ぐ。また、遊動弁体7は、その上面に凸部7dが形成されている。この凸部7dは、蓋体3の大空気孔3aより小さくなっていて、遊動弁体7が上昇して行くと、大空気孔3aに緩く嵌合し、凸部7dの周辺部は蓋体3の0リング31に密着性良く当接することになる。
【0027】
この空気弁1Xは、以下のように動作する。すなわち、コック24が開かれ、通水管100から弁箱2の中空部2cへ水が侵入すると、弁箱2の中空部2cの空気は、水圧に推されて大空気孔3aから急速に排気される。同時に、遊動弁体7及びフロート弁体6は水位の上昇に従って浮き上がる。これにより、図3(a)のように、遊動弁体7が内蓋部3Bの上面に密着して大空気孔3aを塞ぎ、更にフロート弁体6が遊動弁体7に密着してその小空気孔7aを塞ぐため、弁箱2の中空部2cは上下に空気溜まりAと水溜まりWができて完全に密封状態となる。このような密閉状態の後に、通水管100から弁箱2の中空部2cへ空気が水に混じって侵入すると、弁箱2の中空部2cの空気溜まりAの圧力が高くなり、水が退けられて水位が下降する。フロート弁体6はこの水位の下降に伴って下降し、他方、遊動弁体7は空気溜まりAによる内圧によって押し上げられたままとなる。そうすると、図3(b)のように、フロート弁体6は遊動弁体7から下方へ離反し、空気は小空気孔7aと大空気孔3aを経て、弁箱2の外方へ放出される。そして、再び、水位が上昇して弁箱2の中空部2cは完全に密封状態となる。
【0028】
ここで、背景技術の欄で述べた図11の空気弁101など通常のものは、一般に、鉛直方向から2度以上に傾斜すると正常な動作が難しく、それ以内で設置される。本発明の実施形態に係る空気弁1Xのフロート弁体6は、鉛直方向に設置されると、図4(a)に示すように、遊動弁体7の弁座71の表面に密着する。鉛直方向から傾斜して設置されたものでは、図4(b)に示すように、フロート弁体6は、長尺であるために通常、上側となる側壁の内側面に円柱側面が接しながら水位の上昇に従って浮き上がり、その先端が遊動弁体7の弁座71の表面に密着する。図4(b)のフロート弁体6と弁座71の相対的な位置関係は、図4(a)におけるフロート弁体6を径方向に、フロート弁体6と側壁の内側面との隙間gだけ平行移動したものとなっている。従って、遊動弁体7の逆円錐台状の凹部7bはその平行移動を妨げないような大きさになっている。また、フロート弁体6の上端部6aの先端は、弁座71に良く密着するのは、平坦に近い方であるが、平坦だとその間の固着が起こり易い。本願発明者の実験では、フロート弁体6の丈(高さ)Lの1〜3倍までの曲率半径の曲面が望ましく、空気弁1Xは鉛直方向から30度傾斜した場合でも問題なく動作することが確認されている。従って、上りであっても下りであっても、メンテナンス作業を容易に迅速に行える場所に空気弁1Xを設置することが可能になる。
【0029】
次に、空気弁1Xのメンテナンス作業の手順について説明する。まず、必要に応じマンホールの蓋等を取り外して空気弁1Xが現れるようにする。このとき、水が溢れて出ていれば、ゴミ等の付着により、小空気孔7aがフロート弁体6により閉塞されずに開いたままとなって漏水している可能性がある。次に、コック24を閉めて通水管100と弁箱2の中空部2cとの連通を遮り、作業中に水が流入するのを防ぐようにする。
【0030】
次に、カバー固定用の螺子41の螺合を緩めて、それを取り外す。このとき、通常は、弁箱2の螺子孔2hから水が噴出するが、その水圧により空気弁1Xの正常動作が確認できる。仮に、遊動弁体7とフロート弁体6とが固着し、水位が下がってもフロート弁体6が下降せずに小空気孔7aが塞がれたままとなって空気が排出されなくなっていた場合には、空気が噴出する。このようにして、空気弁1Xを分解しなくても、空気弁1Xが正常動作しているか否かを外部からの観察で判断できる。また、正常動作していなければ、空気弁1Xを分解することになるが、その際、溜まった圧縮空気による内圧を減らしてから蓋体3の取り外しなどの分解作業に入ることができるので、レバー22、22を第2の位置にした瞬間などに異常な内圧によって蓋体3が吹き飛ぶ等の可能性を回避しながら迅速に作業を行うことが可能になる。なお、背景技術の欄で述べた図11の空気弁101においても、外部から中空部102cに連通する螺子孔を形成して螺子を螺合しておれば、空気弁101を分解しなくても、螺合を緩めて行き、水が噴出するか空気が噴出するかを観察することにより、遊動弁体107とフロート弁体106との固着を判断することができる。
【0031】
次に、図5(a)に示すように、レバーカバー4を取り外し、蓋体3の取り外し作業に入る。図5(b)に示すように、レバー22、22を第2の位置にして、蓋体3とレバー22、22との圧接状態を解除する。そして、図5(c)に示すように、蓋体3を引き上げて取り外す。ここで、外蓋部3Aと内蓋部3Bが一体となっており、背景技術の欄で述べた図11の空気弁101の外蓋体103Aと上側内蓋体103Baと下側内蓋体103Bbのように別体となっていないので、弁箱2から蓋体3を容易に迅速に取り外すことができる。
【0032】
点検、清掃、或いは補修の作業が完了すると、弁体案内5、フロート弁体6、遊動弁体7を弁箱2の中空部2cに戻し、蓋体3を嵌め込み、レバー22、22を第1の位置にして蓋体3とレバー22、22とを圧接状態にして取着する。そして、レバーカバー4を据え、弁箱2の螺子孔2hに螺子41を螺合する。必要に応じ、マンホールの蓋等を元に戻す。このように、容易に迅速に空気弁1Xを組み立てることができる。
【0033】
つまり、この空気弁1Xは、弁箱2のレバー22、22を回動操作することにより蓋体3の固定や固定解除が行われるので、工具を用いず、容易に迅速にメンテナンス作業を含む組立や分解作業が可能となるのである。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る空気弁1Yについて説明する。この空気弁1Yは、空気弁1Xと同様に、弁箱2、蓋体3、弁体案内5、フロート弁体6、遊動弁体7、レバーカバー4、を備えており、空気弁1Xの部位に相当する部位が多い。以下の説明において、空気弁1Xの部位に相当する部位には同じ符号を付している。図6は空気弁1Yの(a)正面図、(b)断面図(正面視の断面図)である。図7(a)、(b)は空気弁1Yのカバー固定用の螺子41等を説明する側面視の断面図であって、(a)は弁箱2に蓋体3を嵌め込んだ直後の状態、(b)はその後、蓋体3を回転しレバーカバー4を装着した状態を示している。図8(a)、(b)は空気弁1Yの蓋体3の装着操作を説明する平面図である。図9(a)〜(c)は空気弁1Yの分解手順を順に示す断面図である。なお、図9(c)以外の断面図では、弁体案内5の断面背景部分は省略している。空気弁1Yは、コック24がないタイプのものであって、通常は、空気弁1Yと通水管100の間に、コック24の部分を有する別体の補修弁100’が連接されて用いられるものである。以下、順に、空気弁1Yの部品の構造についてその機能とともに説明する。なお、空気弁1Xのものと同様のところは当業者が容易に理解できるので、説明は省略している。
【0035】
空気弁1Yの弁箱2は、導水部2dに上記のコック24を有しておらず、短い導水部2dの端の通水口2bにて、補修弁100’の導水部100dに連通される。弁箱2の中空部2cは、導水部2dが短いために、上方端部の通気口2aから下方端部近傍までの空間を有することになる。通気口2a近傍の内側面には、蓋体3の後述の2個の差し込み部3D、3Dを差し込むための差し込み溝2k、2kが円周方向に形成されている(図9(c)参照)。差し込み溝2k、2kの入口の蓋体載置部は、差し込み部3D、3Dが差し込み溝2k、2kに確実に差し込まれないうちは蓋体3がレバー22、22により圧接できないように、下り斜面の部分2ka、2kaを有している(図9(c)参照)。弁箱2の側壁の上部には、ナットによって手締め等でレバーカバー4を取り付けるためのカバー取着用雄ねじ2mが設けられている。蓋体受部2fの下方には、側壁の内側面が少し内方に屈曲しており、弁体案内5の鍔部を当接して支持する弁体案内支持部2nが形成されている。導水部2dは、中空部2cより少し小さいが、比較的大きな直径の略円筒状の短い管路となっている。なお、図では、正面視と側面視で導水部2dの直径は異なっている。螺子孔2hが形成されているカバー固定部2g’は、図7では、空気弁1Xのものよりも大きいが、基本構造は同様である。カバー固定部2g’は、弁箱2の外側面とレバーカバー4の内側面が当接する程度の大きさならば、外方に突出しなくてもよい場合もある。従って、弁箱2は、空気弁1Xにおけるレバーカバー受部2g、弁体案内受部2i、コック24、コックカバー25は有していない。空気弁1Yの弁箱2において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0036】
空気弁1Yの蓋体3は、内蓋部3Bと、内蓋部3Bの上面の周縁に設けられた2個の差し込み部3D、3Dと、を一体的に形成してなる。従って、蓋体3は、空気弁1Xにおける外蓋部3Aと柱部3Cは有していない。差し込み部3Dは、端部3Daが薄くなるように段差が形成されており、端部3Daは内蓋部3Bの外側面よりも外方に突出している(図7(a)参照)。蓋体3の装着は、図8(a)に示すように、2個の差し込み部3D、3Dを、弁箱2の差し込み溝2k、2kの入口の蓋体載置部に載置して、内蓋部3Bを嵌め込む。そして、同図(b)に示すように時計方向に回転させて2個の差し込み部3D、3Dを差し込み溝2k、2kに差し込み、それからレバー22、22を回動する。これは、誤ってレバーカバー4を装着しないでカバー固定用の螺子41を螺子孔2hに螺合して組み立てた万一の場合に、メンテナンス作業の際に蓋体3とレバー22、22との圧接状態を解除したときに蓋体3が吹き飛ぶ等の可能性を多重に回避するためである。空気弁1Yの蓋体3には、空気弁1XにおけるOリング31、32は設けられていない。空気弁1Yの蓋体3において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0037】
空気弁1Yのレバーカバー4は、頂部を有した円筒状である。レバーカバー4の頂部4bは、空気弁1Xの外蓋部3Aの代わりの働きをし、そこには、レバーカバー4を取着したときに弁箱2のカバー取着用雄ねじ2mが挿通するような孔が形成されている。レバーカバー4は、第1の位置にあるレバー22、22の大部分が収まるような高さと内径を有している。カバー固定用の螺子41は、図7では、ハンドル付きボルトの形状であり、空気弁1Xのものよりも大きいが、基本構造は同様である。また、螺子41は、図7では、ワイヤやチェーンなどでレバーカバー4等に連結されていないが、連結することも可能である。空気弁1Yのレバーカバー4において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0038】
空気弁1Yの弁体案内5には、その底部に固定されて下方に、中央に整流孔5Aaを有する円板状の整流板5Aが取り付けられている。整流板5Aは、整流孔5Aaの直径が導水部2dの直径よりも小さくなっており、また、整流孔5Aaの周囲の本体部5Abが弁体案内5の底部の窓孔5bの位置に重合する。従って、整流板5Aは、導水部2dの直径の大きさに係わらず、導水部2dからの空気(多量排気の場合)や水(圧力下排気の場合)がそのままの流速で窓孔5bに流れ込んでフロート弁体6の正常な動作を妨げることのないように、空気や水の流れを整えることができる。なお、空気弁1Yの弁体案内5の側部上側の窓孔5aは、上端からの切り欠けになっている(図9(c)参照)。空気弁1Yの弁体案内5において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0039】
空気弁1Yのフロート弁体6は、空気弁1Xのものと同様である。
【0040】
空気弁1Yの遊動弁体7には、空気弁1Xにおいて蓋体3に設けられていたOリング31の代りに、Oリング72が設けられている。空気弁1Yの遊動弁体7において、以上の他、説明を省略したところは、空気弁1Xのものと同様である。
【0041】
空気弁1Yの動作は、上記した空気弁1Xの動作と同様である。空気弁1Yのメンテナンス作業の手順は、レバーカバー4の着脱の際にカバー取着用雄ねじ2mにナットを手で螺合させたり外したりする作業と、蓋体3の着脱の際に弁箱2の差し込み溝2k、2kへの差し込み部3D、3Dの差し込みの操作以外は、図9(a)〜(c)に示すように、空気弁1Xの場合と同様であり、工具を用いず、容易に迅速にメンテナンス作業を含む組立や分解作業が可能となる。なお、図9(b)と同図(c)の間で、蓋体3は回転している。
【0042】
また、空気弁1Yは、臨時の消火栓としての利用が可能である。図10は、レバーカバー4、蓋体3、弁体案内5、フロート弁体6、遊動弁体7を取り外し、弁箱2の中空部2cに差し込み式(町野式)の口金8を差し込んでレバー22、22を第1の位置にした状態を示す断面図である。口金8には、蓋体3の凹状の係合溝3cと同様の係合溝3c’が形成されており、弁箱2のレバー22、22の係合部22b、22bが係合溝3c’に両側から圧接し、弁箱2に口金8がかたく結合している。この状態で、消火ホースを接続し、消火が可能である。導水部2dは比較的大きな直径なので、多量の水の供給が可能となっている。口金8を取り外すときは、レバー22、22を第2の位置にする。また、図10に示す状態でアングルバルブを取り付け、災害時の給水に利用することも可能である。更には、通水管100の内部に管路内調査カメラや圧力計などを進入させて調査を行うために、図10に示す状態にしておくことも可能である。
【0043】
以上、本発明の実施形態に係る空気弁について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、かかる空気弁を通常の消火栓に一体に取り付けることも可能である。また、実施形態に記載した弁箱、蓋体、弁体案内、フロート弁体、遊動弁体などの形状や構造は適宜変形できることは勿論である。また、空気弁1Xをコック24がないタイプにしたり、空気弁1Yをコック24があるタイプにしたりすることも容易に可能である。
【符号の説明】
【0044】
1X、1Y 空気弁
2 弁箱
2a 弁箱の通気口
2b 弁箱の通水口
2c 弁箱の中空部
2d 弁箱の導水部
2g’ カバー固定部
2h 弁箱の螺子孔
22 レバー
22a レバーの操作部
22b レバーの係合部
3 蓋体
3B 蓋体の内蓋部
3a 蓋体の大空気孔
3b 蓋体の下方円筒部
3c 蓋体の係合溝
4 レバーカバー
41 螺子
5 弁体案内
5A 整流板
5Aa 整流孔
6 フロート弁体
7 遊動弁体
7a 遊動弁体の小空気孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方端部に通気口、下方端部に通水口を有し、通気口の下方内部に中空部、その下方に導水部を有する弁箱と、前記弁箱の通気口に臨む大空気孔を有してそれに装着される蓋体と、前記弁箱の中空部に配設された弁体案内と、前記弁体案内の内方に配されたフロート弁体と、前記弁体案内の内方であって前記フロート弁体の上方に配され、前記蓋体の大空気孔に臨む小空気孔を有した遊動弁体と、を備える空気弁のメンテナンス方法であって、
前記蓋体を取り外す前に、中空部と外部を連通できる孔により空気又は水を中空部から噴出させることによって、空気弁が正常動作しているか否かを外部からの観察で判断し、正常動作していなければ、空気弁を分解することを特徴とする空気弁のメンテナンス方法。
【請求項2】
請求項1に記載の空気弁のメンテナンス方法において、
前記蓋体を取り外す前に、中空部と外部を連通できる孔から空気が噴出したならば、正常動作していないと判断して空気弁を分解することを特徴とする空気弁のメンテナンス方法。
【請求項1】
上方端部に通気口、下方端部に通水口を有し、通気口の下方内部に中空部、その下方に導水部を有する弁箱と、前記弁箱の通気口に臨む大空気孔を有してそれに装着される蓋体と、前記弁箱の中空部に配設された弁体案内と、前記弁体案内の内方に配されたフロート弁体と、前記弁体案内の内方であって前記フロート弁体の上方に配され、前記蓋体の大空気孔に臨む小空気孔を有した遊動弁体と、を備える空気弁のメンテナンス方法であって、
前記蓋体を取り外す前に、中空部と外部を連通できる孔により空気又は水を中空部から噴出させることによって、空気弁が正常動作しているか否かを外部からの観察で判断し、正常動作していなければ、空気弁を分解することを特徴とする空気弁のメンテナンス方法。
【請求項2】
請求項1に記載の空気弁のメンテナンス方法において、
前記蓋体を取り外す前に、中空部と外部を連通できる孔から空気が噴出したならば、正常動作していないと判断して空気弁を分解することを特徴とする空気弁のメンテナンス方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−211699(P2012−211699A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−144605(P2012−144605)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2008−273627(P2008−273627)の分割
【原出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(397007066)協和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2008−273627(P2008−273627)の分割
【原出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(397007066)協和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]