説明

空気感受性ステロイドの精製

本発明は、アミノ酸またはそのアナローグを空気感受性ステロイドの21-アルデヒド酸化生成物と反応させて付加物を形成し、精製された空気感受性ステロイドから前記付加物を分離することによって、空気感受性ステロイドを精製する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係する出願に対する相互参照
本発明は、下記の米国仮特許出願No. 61/069,994、提出2008年3月18日、および61/060,638、提出2008年6月11日の利益を主張する。これらの出願の内容は引用することによって本明細書の一部とされる。
本発明は、空気感受性ステロイドをそれらの対応する酸化不純物から精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステロイドは多数の異なる化学的実在物を包含する化合物の1つの広いクラスである。ステロイドはヒトの健康管理に適用される化学における一里塚の1つを表す。ステロイドの構造は式Iの骨格を共有する:
【0003】
【化1】

【0004】
最も普通に使用されているステロイドのいくつかを表1に列挙する。
【表1】

【0005】
下記の文献には、アルコールを21炭素 (“21-OH”) において酸化して対応するアルデヒド (“21-CHO”) にすることが記載されている: Archiv for Pharmaci og Chemi、Scientific Edition 8、1980、187-206およびthe Journal of Organic Chemistry、1963、28、2001。これらの参考文献に報告されているように、ステロイドのα-ケトール側鎖は空気により対応する21-デヒドロ誘導体 (ステロイド-グリオキサール) に容易に酸化され、この誘導体はさらに酸化分解する。この酸化はほとんど中性またはアルカリ性条件下に起こり、そして微量の金属、例えば、鉄により触媒される。
【0006】
こうして、ステロイドを究極的に汚染する21-アルデヒド不純物の生成を抑制および/または回避するとは困難である。
【0007】
ステロイド中の不純物は望ましくなく、極端な場合において、ステロイドを含有する投与形態で治療される患者とって毒性であることさえある。ステロイドの21-アルデヒド不純物の毒性のために、APIにおいて確立されたそれらの限界はしばしば0.10%より低くあるべきことが述べられており、例えば、下記の文献を参照のこと: 2008 U. S. Pharmacopoeia、ここでブデソニド中の21-デヒドロブデソニドについての限界は0.07%であると定義されている (参照: USP 31、Vol. 2、p. 1565-6) 。
【0008】
当業者に知られているように、プロセス不純物の化学構造および合成経路を理解し、最終生成物中の不純物の量に影響を及ぼすパラメーターを同定することによって、プロセス不純物の管理は大きく向上される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうして、21-アルデヒド不純物からのステロイドの精製を容易にしかつそれ以上の酸化に対してステロイドを安定化させる方法が必要とされている。本発明は、これらの必要性を扱い、21-アルデヒド酸化生成物を含まないステロイドおよびそれらの製造手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、本発明は、下記の工程を含んでなる、下記式I:
【化2】

【0011】
の空気感受性ステロイドを、下記式:
【化3】

【0012】
の水和形態または非水和形態の21-アルデヒドステロイド不純物から、精製する方法を提供する:
空気感受性ステロイドを式II:
【0013】
【化4】

【0014】
のアミノ酸またはそのアナローグと組み合わせて混合物を形成し、そして
空気感受性ステロイドを前記混合物から回収して、精製された空気感受性ステロイドを得る、式中
AおよびBは各々Hであるか、あるいは一緒になって二重結合を表し、
CはH、F、ClまたはOHであり、
DはH、CH3、ClまたはFであり、
EはH、OHまたはカルボニルであり、
GはH、OH、CH3、またはMと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
【0015】
MはH、OH、C1-C6直鎖状または分枝鎖状モノまたはジカルボン酸または安息香酸でエステル化されたOH、またはGと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
QはOHまたはC1-C6直鎖状または分枝鎖状カルボン酸でエステル化されたOHであり、
A1はSHまたはOHであり、
B1はNHR2またはNHCOR4であり、
R1はH、COOHまたはCOR5であり、
R2およびR3は各々独立してH、CH3またはC2H5であり、
R4は直鎖状または分枝鎖状C1-C4アルキルであり、
R5は下記式:
【0016】
【化5】

【0017】
のペプチドであり、
式中XおよびYは各々独立してアミノ酸の置換基であり、N1およびN2は各々独立してNHであるか、あるいはN1はXと一緒におよび/またはN2はYと一緒にアミノ酸置換基を形成し、そして
mは0または1または2であり、そして
nは0または1である。
【0018】
他の態様において、本発明は、式IIIの付加物を提供する:
【化6】

【0019】
式中、
A2はSまたはOであり、
B2はNR2またはNCOR4であり、
AおよびBは各々Hであるか、あるいは一緒になって二重結合を表し、
CはH、F、ClまたはOHであり、
DはH、CH3、ClまたはFであり、
EはH、OHまたはカルボニルであり、
GはH、OH、CH3、またはMと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
MはH、OH、C1-C6直鎖状または分枝鎖状モノまたはジカルボン酸または安息香酸でエステル化されたOH、またはGと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
R1はH、COOHまたはCOR5であり、
R2およびR3は各々独立してH、CH3またはC2H5であり、
R4は直鎖状または分枝鎖状C1-C4アルキルであり、
R5は下記式:
【0020】
【化7】

【0021】
のペプチドであり、
式中XおよびYは各々独立してアミノ酸の置換基であり、N1およびN2は各々独立してNHであるか、あるいはN1はXと一緒におよび/またはN2はYと一緒にアミノ酸置換基を形成し、そして
mは0または1または2であり、そして
nは0または1である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ステロイド、ことに空気感受性ステロイドをそれらの対応する酸化不純物、21-アルデヒド誘導体から精製する方法を提供する。
これらのステロイド生成物の合成、ことに工業的合成の間、下記の2つの重大な問題が発生する:
【0023】
1. ステロイド生成物を製造するプロセス操作の間に不活性雰囲気を使用する場合でさえ、製造プロセスにおいて普通に使用される水および有機溶媒中に酸素が溶解するために、酸素が存在する。ステロイドが空気に暴露される普通の工業的プロセスは、例えば、次の通りである: 結晶化後の固体の濾過、ブフナー漏斗または遠心機からの排出、真空炉中の装入、乾燥した生成物の収集および包装、および閉じた容器中の貯蔵; さらに、生成物を微小化する場合、包装を開き、引き続いて装入し、そして排出および包装を再び空気の存在下に実施する。その上、微小化は固体の表面積を大きくし、これにより粒子中のステロイドが空気および酸化に暴露される可能性が増加する。
【0024】
2. 微量の金属、例えば、クロム、ニッケル、モリブデンおよび鉄がステロイド生成物の製造に使用される原料および装置中に存在することがある。これらの金属はステロイドの酸化を触媒する (実施例16参照) 。
こうして、慣用法 (例えば、実施例2および9参照) により精製が困難である21-アルデヒド不純物は、ステロイドの製造、包装および貯蔵の任意の段階において形成することがある。
【0025】
アルデヒド不純物とステロイドとの間で構造が類似するために、反復精製工程を必要とする。しかしながら、これは収率を減少させ、酸素に対する生成物の暴露に導くことがあり、これにより21-アルデヒド不純物が部分的に再形成する可能性が存在する。
ステロイドおよびステロイドの製造の分野において知られているように、ステロイドに関する用語 「空気感受性」 はα-ケトール側鎖 (表1においてQ = OH) をもつステロイドまたはα-ケトール側鎖をもつ中間体から製造されたエステルを意味し、それらは下記式を有する:
【0026】
【化8】

【0027】
式中
AおよびBは各々Hであるか、あるいは一緒になって二重結合を表し、
CはH、F、ClまたはOHであり、
DはH、CH3、ClまたはFであり、
EはH、OHまたはカルボニルであり、
GはH、OH、CH3、またはMと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
【0028】
MはH、OH、C1-C6直鎖状または分枝鎖状モノまたはジカルボン酸または安息香酸でエステル化されたOH、またはGと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、そして
QはOHまたはC1-C6直鎖状または分枝鎖状カルボン酸でエステル化されたOHである、
これらは、微量の空気に暴露されるときでさえ、21-OH基 (Q = OH) は酸化されて、21-アルデヒドステロイドアナローグを生成する。このようなステロイドの例は表1に列挙されている。
【0029】
この分野において知られているように、用語 「アミノ酸置換基」 はアミノ酸の側鎖である。
本明細書において使用するとき、用語 「室温」 は約20℃〜約30℃、より好ましくは約20℃〜約25℃である。
本明細書において使用するとき、用語 「パーセント」 または 「%」 は、特記しない限り、HPLCにより測定した面積のパーセントである。
本明細書において使用するとき、双極性非プロトン性溶媒は酸性水素を欠如し、炭素と異種原子との間に少なくとも1つの極性化した結合、典型的には炭素と酸素または窒素との間に多重結合を含有する溶媒を意味する。
本明細書において使用するとき、極性溶媒は低い誘電率を有し、水と混和性ではない溶媒を意味する。
【0030】
1つの態様において、本発明は、下記の工程を含んでなる、式I
【化9】

【0031】
の空気感受性ステロイドを、下記式:
【化10】

【0032】
の水和形態または非水和形態の21-アルデヒドステロイド不純物から、精製する方法を提供する:
空気感受性ステロイドを式II:
【0033】
【化11】

【0034】
のアミノ酸またはそのアナローグと組み合わせて混合物を形成し、そして
空気感受性ステロイドを前記混合物から回収して、精製された空気感受性ステロイドを得る、式中
AおよびBは各々Hであるか、あるいは一緒になって二重結合を表し、
CはH、F、ClまたはOHであり、
DはH、CH3、ClまたはFであり、
EはH、OHまたはカルボニルであり、
GはH、OH、CH3、またはMと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
【0035】
MはH、OH、C1-C6直鎖状または分枝鎖状モノまたはジカルボン酸または安息香酸でエステル化されたOH、またはGと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
QはOHまたはC1-C6直鎖状または分枝鎖状カルボン酸でエステル化されたOHであり、
A1はSHまたはOHであり、
B1はNHR2またはNHCOR4であり、
R1はH、COOHまたはCOR5であり、
R2およびR3は各々独立してH、CH3またはC2H5であり、
R4はC1-C4直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、
R5は下記式:
【0036】
【化12】

【0037】
のペプチドであり、
式中XおよびYは各々独立してアミノ酸の置換基であり、N1およびN2は各々独立してNHであるか、あるいはN1はXと一緒におよび/またはN2はYと一緒にアミノ酸置換基を形成し、そして
mは0、1または2であり、そして
nは0または1である。
【0038】
典型的には、GおよびM、N1およびX、N2およびYは互いに直接にまたは少なくとも1つの原子を介して結合し、こうして一緒にそれぞれケタールまたはアセタール (GおよびM) またはアミノ酸置換基 (N1およびX、N2およびY) を形成する。
典型的には、空気感受性ステロイドは、その対応する21-アルデヒド不純物で汚染されたステロイド、例えば、表1に列挙されているステロイドの1つである。
【0039】
好ましくは、空気感受性ステロイドはフルニソリド、16-α-ヒドロキシプレドニソロン、ブデソニドまたはデオキシメタゾンである。より好ましくは、ステロイドは16-α-ヒドロキシプレドニソロンまたはブデソニドであり、最も好ましくはステロイドはブデソニドである。
好ましくは、式II中のAはSHである。
好ましくは、B1はNHR2、より好ましくはNH2である。
好ましくは、R1はCOOHまたはCOR5、より好ましくはCOOHである。
好ましくは、R2およびR3はHまたはCH3、より好ましくはHである。
好ましくは、R4はCH3である。
【0040】
好ましくは、XおよびYは下記のアミノ酸の置換基である: アラニン、アスパラギン、アスパルテート、アルギニン、システイン、グルタメート、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびプロリン。
好ましくは、置換基はグリシンまたはアラニンの置換基、より好ましくはグリシンの置換基である。
【0041】
アルデヒドは、条件に依存して、カルボニル形態または水和形態で存在することができ、例えば、カルボニル形態は無水条件下により優勢を占める。
式IIのアミノ酸またはそのアナローグは光学的に活性であるか、あるいは光学的に不活性である、すなわち、キラル中心をもたないか、あるいはラセミ混合物であることができる。また、商業的塩を、例えば、塩酸塩を塩基と反応させることによって、アミノ酸およびそのアナローグの源として使用することができる。
式IIのアミノ酸またはそのアナローグをアルデヒド不純物 (水和またはカルボニル形態) と反応させて式IIIの付加物を発生させる:
【0042】
【化13】

【0043】
式中、
A2はSまたはOであり、
B2はNR2またはNCOR4であり、そして
R1、R2、R3、R4、A、B、C、D、E、MおよびGは上に記載した通りである、
これは、収量損失を小さくして、抽出および/または結晶化により容易に取出すことができる。
さらに、式IIのアミノ酸またはそのアナローグは金属と錯体を形成し、こうして金属の遊離形態で実行される酸化反応の触媒反応の回避を促進する。
好ましくは、式III中のA2はSである。
【0044】
ステロイドがブデソニドでありかつ式IIのアミノ酸またはそのアナローグがL-システインである式IIIの付加物は、慣用法により対応する21-アルデヒドから純粋なサンプルとして製造され、下記から成る群から選択されるデータにより特徴づけられる: 1H NMR (DMSO、400.13 MHz、DMSO、303°K); ジアステレオイソマー1: δ 7.301 (d、1H) 、6.158 (dd、J 10.1、1.9、1H) 、5.916 (dd、J 1.9、1.2、1H) 、2.518 (m、1H) 、2.287 (dd、J 13.5、3.2、1H) 、1.968 (m、1H) 、1.111 (m、1H) 、2.012 (m、1H) 、1.027 (dd、J 11.3、3.4、1H) 、4.285 (m、1H) 、1.864 (dd、J 13.7、3.7、1H) 、1.768 (dd、J 13.7、2.5、1H) 、1.569 (m、1H) 、1.779 (m、1H) 、1.601 (m、1H) 、5.023 (d、J 7.5、1H) 、0.865 (s、3H) 、1.375 (s、3H) 、4.872 (d、J 4.0、1H) 、5.149 (t、J 5.3、1H) 、1.595 (m、2H) 、1.356 (m、2H) 、0.875 (t、J 7.4、3H) 、5.241 (s、1H) 、2.974 (d、J 5.6、2H) 、4.409 (t、J 5.6、1H) 、12.746 (br s、1H) ; ジアステレオイソマー2: 7.313 (d、J 10.1、1H) 、6.163 (dd、J 10.1、1.9、1H) 、5.917 (dd、J 1.9、1.1、1H) 、2.526 (m、1H) 、2.294 (ddd、J 13.5、4.7、1.7、1H) 、2.001 (m、1H) 、1.023 (m、1H) 、2.089 (m、1H) 、0.963 (m、1H) 、4.134 (m、1H) 、1.851 (dd、J 13.5、3.4、1H) 、1.760 (dd、J 13.5、2.4、1H) 、1.554 (m、1H) 、1.630 (m、1H) 、1.519 (m、1H) 、4.737 (d、J 4.5、1H) 、0.815 (s、3H) 、1.381 (s、3H) 、4.929 (d、J 4.1、1H) 、4.809 (t、J 4.6、1H) 、1.546 (m、2H) 、1.364 (m、2H) 、0.874 (t、J 7.4、3H) 、5.266 (s、1H) 、3.020 (dd、J 10.2、4.2、1H) 、2.957 (dd、J 10.2、6.6、1H) 、4.424 (dd、J 6.6、4.2、1H) 、12.835 (br s、1H); およびLC/MS: m/z 532において、分子のイオンが存在する。
【0045】
好ましくは、式IIのアミノ酸またはそのアナローグは、下記表に描写するように、L-システイン、システアミン、ペニシラミン、システイル-グリシン (Cys-Gly) 、ホモシステインおよびL-セリンから成るリストから選択される。
【化14】

【0046】
式IIの好ましいアミノ酸またはそのアナローグはL-システインである。
好ましくは、精製は空気感受性ステロイド、式IIのアミノ酸またはそのアナローグおよびアルコール、エステル、ケトン、ハロアルカン、双極性非プロトン性溶媒、ニトリル、エーテルおよびそれらの混合物、およびそれらと水との混合物から成る群から選択される溶媒を組み合わせて、式IIIの付加物をも含んでなる溶液を形成し、これから空気感受性ステロイドを回収して、このような精製されたステロイドを得ることを含んでなる。
【0047】
式IIのアミノ酸またはそのアナローグは、21-アルデヒド不純物を除去するために十分な過剰量で溶液中に存在する。好ましくは、式IIのアミノ酸またはそのアナローグ/アルデヒドのモル比は、それぞれ、約2:1〜約10:1、より好ましくは約3:1〜約5:1、最も好ましくは約4:1である。
好ましくは、アルコールは直鎖状または分枝鎖状C1-C5アルコール、より好ましくはC1-C4アルコール、さらにより好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノールまたはイソブタノール、最も好ましくはメタノールである。
【0048】
好ましくは、エステルはC2-C5エステル、より好ましくはC3-C5エステル、最も好ましくは酢酸エチルである。
好ましくは、ケトンはC2-C5ケトン、より好ましくはアセトン、ブタノンまたはイソプロピルメチルケトン、最も好ましくはアセトンである。
好ましくは、ハロアルカンはC1-C5ハロアルカン、より好ましくはC1-C2ハロアルカン、最も好ましくはジクロロメタンである。
【0049】
好ましくは、双極性非プロトン性溶媒はC2-C5双極性非プロトン性溶媒、より好ましくはジメチルスルホキシド (DMSO) 、ジメチルホルムアミド (DMF) またはジメチルアセトアミド (DMA) 、最も好ましくはジメチルホルムアミドである。
好ましくは、ニトリルはC1-C5ニトリル、より好ましくはC1-C3ニトリル、最も好ましくはアセトニトリルである。
好ましくは、エーテルはC4-C6エーテル、より好ましくはテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランまたはジオキサン、最も好ましくはテトラヒドロフランである。
【0050】
好ましくは、水との混合物はアルコール、ハロアルカンおよび水、双極性非プロトン性溶媒および水、エーテルおよび水、ケトンおよび水、およびアルコールおよび水の混合物であり、より好ましくは混合物はメタノール、ジクロロメタンおよび水、DMFおよび水、THFおよび水、ジオキサンおよび水、メタノールおよび水またはアセトンおよび水の混合物であり、最も好ましくは混合物はメタノール、ジクロロメタンおよび水の混合物である。
【0051】
必要に応じて、溶液はアルデヒドと式IIのアミノ酸またはそのアナローグとの反応において付加物の生成を触媒できる酸を含有することができる。好ましくは、酸は有機酸、より好ましくは酢酸、ギ酸またはパラトルエンスルホン酸 (PTSA) 、最も好ましくは酢酸である。
触媒:式IIのアミノ酸またはそのアナローグの比は約1:10〜約5:1、より好ましくは4:1、さらにより好ましくは2:1である。
空気感受性ステロイドと溶媒との組み合わせは、溶媒に依存して、溶液または懸濁液を形成することができる。
溶解を促進するために、懸濁液を加熱することができる。
【0052】
好ましくは、溶解は、溶媒に依存して、約室温〜約70℃、より好ましくは約40℃〜約60℃、最も好ましくは約60℃の温度において実施する。好ましくは、溶解は約30分〜約2時間、より好ましくは約1時間実施する。
反応の完結は、付加物の量の増加またはアルデヒドの消失をHPLCにより監視することによって決定できる。
好ましくは、溶媒中の空気感受性ステロイドの濃度は約10 g/l〜200 g/l、より好ましくは約100 g/lである。
ステロイドを回収する前に、反応混合物を濃縮することができる。好ましくは、反応混合物は溶液である。
【0053】
精製されたステロイドの回収は、空気感受性ステロイドを式IIIの付加物から分離することによって実施することができる。好ましくは、回収は精製されたステロイドを反応溶液から沈殿させ、次いで残留する可溶性付加物からの分離により精製されたステロイドを得るか、あるいは得られた付加物を反応溶液から抽出することによって実施できる。
好ましくは、反応溶液を抗溶媒と組合わせて第2混合物を形成し、次いで必要に応じて得られた第2混合物を冷却するか、あるいは濃縮および冷却することによって沈殿を実施する。
【0054】
好ましくは、抗溶媒は水である。
濃縮は約40℃〜約80℃、より好ましくは約60℃〜約70℃、最も好ましくは約70℃の温度において実施する。
好ましくは、冷却は約室温〜約0℃の温度、より好ましくは約0℃で実施する。
次いで沈殿した精製ステロイドを濾過し、すなわち、式IIIの付加物を含有する残留溶液から沈殿した精製ステロイドを分離し、次いで濾過した精製ステロイドを洗浄することができる。
【0055】
好ましくは、抽出は次のようにして実施される: 反応溶液を酸性または塩基性水溶液と組み合わせ、得られた相を分離し、ここで有機相は精製されたステロイドを含有し、そして水性相は付加物および/またはその分解生成物および塩基または酸を含有し、有機相を水で洗浄し、そして精製されたステロイドを有機相から単離する。好ましくは、単離は溶媒の除去または結晶化により実施することができる。
【0056】
好ましくは、塩基性水溶液は炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム、好ましくは炭酸水素ナトリウムの水溶液である。
好ましくは、塩基性水溶液のpHは7より高く、より好ましくは7〜約8である。
好ましくは、酸性水溶液のpHは7より低く、より好ましくは7〜約5であり、最も好ましくは7〜約6である。好ましくは、酸はHClである。
好ましくは、結晶化は有機相を抗溶媒と組み合わせ、こうして結晶質ステロイドを含んでなる懸濁液を形成する。次いで、沈殿したステロイドを懸濁液から濾過する。
【0057】
好ましくは、抗溶媒は水またはC4-C8非極性溶媒であり、より好ましくは非極性溶媒はC5-C8アルカンまたはC4-C6エーテルである。好ましくは、C5-C8アルカンはヘキサンまたはヘプタンである。好ましくは、C4-C6エーテルはジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテルまたはメチルt-ブチルエーテルである。最も好ましくは、抗溶媒は水である。
好ましくは、本発明の精製法により得られる精製されたステロイド中の21-アルデヒド不純物のレベルは約0.15%より低いか、あるいはそれに等しく、より好ましくは約0.10%より低いか、あるいはそれに等しく、最も好ましくは0.01%より低いか、あるいはそれに等しく、例えば、約0.005%〜約0.10%、約0.008%〜約0.07%、約0.009%〜約0.05%である。
【0058】
ある種の好ましい態様を参照して本発明を説明してきたが、明細書を考慮して他の態様は当業者に明らかとなるであろう。アミノ酸またはそのアナローグを使用する空気感受性ステロイドの精製を詳細に記載する下記の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。当業者にとって明らかなように、本発明の範囲から逸脱しないで、材料および方法の両方に関して多数の変更を行うことができる。
【実施例】
【0059】
使用した分析法
HPLC
HPLCを使用して、空気感受性ステロイドおよび/またはその21-アルデヒド不純物の量を測定した。これらのステロイドおよびそれらの21-アルデヒド不純物について普通のHPLC法は種々のモノグラフにおいて見出され、例えば、ブデソニドおよびその21-アルデヒド不純物について、HPLC法はUSP31-NF26、p. 1565 (検出限界0.02%) に報告され、フルオシノロンアセトニドについて、HPLC法はEuropean Pharmacopoeia (EP) 6.0、p. 1915に報告され、そしてメチルプレドニソロンについて、HPLC法はEuropean Pharmacopoeia (EP) 6.0、p. 2393に報告されている。
【0060】
質量分析
計装: フィンニガン (Finnigan) LCQ (イオントラップ)
方法: ESI、陽イオンモード
条件: 源電圧 (kV) 3.50、源電流 (μA) 1.85、毛管電圧 (V) 17.86、毛管温度 (℃) 190.00。移動相 70%の水性メタノール中の10 mMのギ酸アンモニウム。
【0061】
実施例1.システインを使用するフルニソリドの精製
0.15%の21-デヒドロ不純物 (アルデヒド) を含有する20 gのフルニソリド (6α-フルオロ-11β,16α,17,21-テトラヒドロキシ-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン16,17-アセトニド) (0.046 mol) を40℃において225 mlのアセトン中に溶解した。27 mgのL-システイン (0.22 mmol) を添加し、この溶液を攪拌しながら1時間放置した。次いでこの混合物を水 (500 ml) 中に注ぎ、減圧下に濃縮し、室温に冷却し、濾過し、水で洗浄した。結晶化した生成物は0.09%のデヒドロ誘導体 (21-アルデヒド) を含有した。
【0062】
比較例2.システインを使用しないフルニソリドの精製
0.15%の21-デヒドロ不純物 (アルデヒド) を含有する20 gのフルニソリド (6α-フルオロ-11β,16α,17,21-テトラヒドロキシ-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン16,17-アセトニド) (0.046 mol) を40℃において225 mlのアセトン中に溶解し、この溶液を攪拌しながら1時間放置した。次いでこの混合物を水 (500 ml) 中に注ぎ、減圧下に濃縮し、室温に冷却し、濾過し、水で洗浄した。結晶化した生成物は0.15%のデヒドロ誘導体 (21-アルデヒド) を含有した: 精製は起こらなかった。
【0063】
実施例3.システインを使用するフルニソリドの精製
0.15%の21-デヒドロ不純物 (アルデヒド) を含有する25 gのフルニソリド (6α-フルオロ-11β,16α,17,21-テトラヒドロキシ-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン16,17-アセトニド) (0.057 mol) を40℃において350 mlのメタノール中に溶解した。40 mgのL-システイン (0.33 mmol) を添加し、この溶液を40℃において1時間攪拌した。水 (585 ml) を添加し、結晶化が起こった; この混合物を0℃に冷却し、固体を濾過し、洗浄した。結晶化した生成物は0.07%のデヒドロ誘導体 (21-アルデヒド) を含有した。
【0064】
実施例4.L-システインを使用する16-α-ヒドロキシプレドニソロンの精製
20 gの16-α-ヒドロキシプレドニソロン (0.053 mol) を40℃において80 mlのメタノール、40 mlのジクロロメタンおよび40 mlの水の混合物中に溶解した。この溶液は0.11% (HPLC面積) の21-デヒドロ化合物 (アルデヒド) を含有することが見出された。次いで30 mgのL-システイン (0.25 mmol) を添加し、この溶液を40℃において1時間攪拌した。処理した溶液は減少した量の21-デヒドロ誘導体 (0.03% HPLC面積) を含有することが見出された。減圧下に濃縮し、水を添加した後、生成物を濾過し、洗浄した。結晶化した生成物は<0.01%の21-デヒドロ誘導体 (21-アルデヒド) を含有した。
【0065】
実施例5.L-システインを使用するブデソニドの精製
0.20%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する20 gのブデソニド (0.046 mol) および50 mgのL-システイン (0.41 mmol) を60℃において250 mlのメタノール中に溶解した。室温において1時間攪拌した後、生成物を420 mlの水の添加により結晶化させた。次いでこの混合物を0℃に冷却し、固体を濾過し、水で洗浄し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体 (21-アルデヒド) は検出されなかった。
【0066】
実施例6.N-アセチル-システインを使用するデオキシメタゾンの精製
0.61%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する15 gのデオキシメタゾン (9-フルオロ-11-β,12-ジヒドロキシ-16-α-メチルプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン) (0.040 mol) を150 mlのジクロロメタン中に溶解し、75 mgのN-アセチル-システイン (0.46 mmol) で処理した。室温において30分間攪拌した後、この溶液を水 (100 ml) 中2%の炭酸水素ナトリウムで洗浄し、次いで水 (50 ml) で洗浄した。有機相を減圧下に濃縮し、75 mlのメタノールを添加し、70℃において減少した容積に濃縮し、冷却し、最後に150 mlの水で処理して生成物を結晶化させた。固体を濾過し、乾燥し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体 (21-アルデヒド) の含有率は0.28%であった。
【0067】
実施例7.D,L-システインを使用するデオキシメタゾンの精製
0.61%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する15 gのデオキシメタゾン (9-フルオロ-11-β,12-ジヒドロキシ-16-α-メチルプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン) (0.040 mol) を150 mlのジクロロメタン中に溶解し、102 mgのD,L-システイン (0.84 mmol) で処理した。室温において30分間攪拌した後、この溶液を水 (100 ml) で洗浄し、次いで水性炭酸水素ナトリウム (100 ml) で洗浄し、次いで水 (150 ml) で洗浄した。有機相を減圧下に濃縮し、75 mlのメタノールを添加し、70℃において減少した容積に濃縮し、冷却し、最後に150 mlの水で処理して生成物を結晶化させた。固体を濾過し、乾燥し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体 (21-アルデヒド) の含有率は0.06%であった。
【0068】
実施例8.D,L-システインを使用するデオキシメタゾンの精製
0.19%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する15 gのデオキシメタゾン (9-フルオロ-11-β,12-ジヒドロキシ-16-α-メチルプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン) (0.040 mol) を60 mlのメタノール中に溶解し、100 mgのD,L-システイン (0.83 mmol) で処理した。45℃において30分間攪拌した後、溶媒を蒸発させて小さい容積にした。残留物を室温に冷却し、ジクロロメタン (150 ml) 中に溶解し、水性炭酸水素ナトリウム (150 ml) で洗浄し、次いで水 (150 ml) で洗浄した。有機相を減圧下に濃縮し、75 mlのメタノールを添加し、70℃において減少した容積に濃縮し、冷却し、最後に150 mlの水で処理して生成物を結晶化させた。固体を濾過し、乾燥し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体 (21-アルデヒド) の含有率は0.02%であった。
【0069】
一般的手順:
実施例9−15.システイン-アナローグを使用するおよび使用しないブデソニドの精製
1 gのブデソニド (「ブデソニド開始」) を12.5 mlのメタノール中で0.05 gの対応する21-アルデヒドと混合して、0.36%のアルデヒド不純物を有するブデソニドを生成した; システイン-アナローグを4 mol/molのアルデヒドの量で添加した。60℃において1時間後、21 mlの水を添加し、この混合物を0℃に冷却し、生成物を濾過し、水で洗浄し、乾燥し、HPLCにより分析した。
【0070】
比較例9.L-システインを使用しないブデソニドの精製
0.36%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する1 gのブデソニド (2.32 mmol) を60℃において12.5 mlのメタノール中に懸濁させた。加熱後、懸濁液は溶液に転化した。1時間後、21 mlの水の添加により生成物を結晶化させた。次いでこの混合物を0℃に冷却し、固体を濾過し、水で洗浄し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体は0.29%であった。
【0071】
実施例10.L-システインを使用するブデソニドの精製
0.36%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する1 gのブデソニド (2.32 mmol) および6 mgのL-システイン (0.049 mmol) を60℃において12.5 mlのメタノール中に懸濁させた。加熱後、懸濁液は溶液に転化した。1時間後、21 mlの水の添加により生成物を結晶化させた。次いでこの混合物を0℃に冷却し、固体を濾過し、水で洗浄し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体は0.07%であった。
【0072】
実施例11.D,L-ペニシラミンを使用するブデソニドの精製
0.36%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する1 gのブデソニド (2.32 mmol) および8 mgのD,L-ペニシラミン (0.054 mmol) を60℃において12.5 mlのメタノール中に懸濁させた。加熱後、懸濁液は溶液に転化した。1時間後、21 mlの水の添加により生成物を結晶化させた。次いでこの混合物を0℃に冷却し、固体を濾過し、水で洗浄し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体は0.04%であった。
【0073】
実施例12.cys-glyを使用するブデソニドの精製
0.36%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する1 gのブデソニド (2.32 mmol) および12 mgのcys-gly (0.057 mmol) を60℃において12.5 mlのメタノール中に懸濁させた。加熱後、懸濁液は溶液に転化した。1時間後、21 mlの水の添加により生成物を結晶化させた。次いでこの混合物を0℃に冷却し、固体を濾過し、水で洗浄し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体は検出されなかった。
【0074】
実施例13.D,L-ホモシステインを使用するブデソニドの精製
0.36%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する1 gのブデソニド (2.32 mmol) および7.7 mgのD,L-ホモシステイン (0.054 mmol) を60℃において12.5 mlのメタノール中に懸濁させた。加熱後、懸濁液は溶液に転化した。1時間後、21 mlの水の添加により生成物を結晶化させた。次いでこの混合物を0℃に冷却し、固体を濾過し、水で洗浄し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体は0.03%であった。
【0075】
実施例14.L-セリンを使用するブデソニドの精製
0.36%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する1 gのブデソニド (2.32 mmol) および7 mgのL-セリン (0.067 mmol) を60℃において12.5 mlのメタノール中に懸濁させた。加熱後、懸濁液は溶液に転化した。1時間後、21 mlの水の添加により生成物を結晶化させた。次いでこの混合物を0℃に冷却し、固体を濾過し、水で洗浄し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体は0.08%であった。
【0076】
実施例15.システアミンおよび酢酸を使用するブデソニドの精製
0.36%の21-デヒドロ誘導体 (HPLC面積) を含有する1 gのブデソニド (2.32 mmol) 、4.3 mgのシステアミン (0.053 mmol) および1.1 mgの酢酸 (0.017 mmol) を60℃において12.5 mlのメタノール中に懸濁させた。加熱後、懸濁液は溶液に転化した。1時間後、21 mlの水の添加により生成物を結晶化させた。次いでこの混合物を0℃に冷却し、固体を濾過し、水で洗浄し、HPLCにより分析した: 21-デヒドロ誘導体は0.12%であった。
【0077】
実施例16.ブデソニドの安定性
ステンレス鋼製反応器中で製造した3つの製造ロットからのブデソニドを、このような反応器中で製造しかつ実施例5に従いシステインで精製したブデソニドのロットと比較した。すべての試料は二重プラスチック容器中で貯蔵した。システインで処理しなかった試料を25℃±2℃の温度および60%の相対湿度に保持した。システインで処理した試料は、約0℃〜約40℃で変化する温度において湿度をコントロールしないで貯蔵した。下記表に示すように、実施例5に従い精製したブデソニド中の21-アルデヒド不純物の量は、6年間の貯蔵後でさえ、0.07%より低い。すべての試料のアルデヒド含有率はHPLCにより測定した。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含んでなる、式I
【化1】

の空気感受性ステロイドを、下記式:
【化2】

の水和形態または非水和形態の21-アルデヒドステロイド不純物から、精製する方法を提供する:
空気感受性ステロイドを式II:
【化3】

のアミノ酸またはそのアナローグと組み合わせて混合物を形成し、そして
空気感受性ステロイドを前記混合物から回収して精製された空気感受性ステロイドを得る、式中
AおよびBは各々Hであるか、あるいは一緒になって二重結合を表し、
CはH、F、ClまたはOHであり、
DはH、CH3、ClまたはFであり、
EはH、OHまたはカルボニルであり、
GはH、OH、CH3、またはMと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
MはH、OH、C1-C6直鎖状または分枝鎖状モノまたはジカルボン酸または安息香酸でエステル化されたOH、またはGと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
QはOHまたはC1-C6直鎖状または分枝鎖状カルボン酸でエステル化されたOHであり、
A1はSHまたはOHであり、
B1はNHR2またはNHCOR4であり、
R1はH、COOHまたはCOR5であり、
R2およびR3は各々独立してH、CH3またはC2H5であり、
R4は直鎖状または分枝鎖状C1-C4アルキルであり、
R5は下記式:
【化4】

のペプチドであり、
式中XおよびYは各々独立してアミノ酸の置換基であり、N1およびN2は各々独立してNHであるか、あるいはN1はXと一緒におよび/またはN2はYと一緒にアミノ酸置換基を形成し、そして
mは0または1または2であり、そして
nは0または1である。
【請求項2】
空気感受性ステロイドがベタメタゾン、ベタメタゾンプロピオネート、ベタメタゾンアセテート、ベタメタゾン17バレレート、ベクロメタゾンジプロピオネート、ジフロラゾンジアセテート、フルドロコルチゾンアセテート、ジフルプレドネート、フルメタゾンピバレート、フルオロメトロン、フルオロメトロン17アセテート、デオキシメタゾン、アムシノニド、デソニド、ブデソニド、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、トリアムシノロンアセトニドおよび16-α-ヒドロキシプレドニソロンから成るリストから選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
空気感受性ステロイドがフルニソリド、16-α-ヒドロキシプレドニソロン、ブデソニドおよびデオキシメタゾンから成るリストから選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
空気感受性ステロイドがその対応する21-アルデヒド不純物で汚染されているステロイドである、請求項1〜3のいずれか1つの方法。
【請求項5】
式II中のAがSHである、前記請求項のいずれか1つの方法。
【請求項6】
式II中のB1がNHR2である、前記請求項のいずれか1つの方法。
【請求項7】
式II中のB1がNH2である、請求項6の方法。
【請求項8】
式II中のR1がCOOHまたはCOR5である、前記請求項のいずれか1つの方法。
【請求項9】
式II中のR1がCOOHである、請求項8の方法。
【請求項10】
式II中のR2およびR3がHまたはCH3である、前記請求項のいずれか1つの方法。
【請求項11】
式II中のR2およびR3がHである、請求項10の方法。
【請求項12】
式II中のR4がCH3である、前記請求項のいずれか1つの方法。
【請求項13】
XおよびYが各々独立してアラニン、アスパラギン、アスパルテート、アルギニン、システイン、グルタメート、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンおよびプロリンから成るリストから選択されるアミノ酸の置換基である、前記請求項のいずれか1つの方法。
【請求項14】
XおよびYが各々独立してアラニンまたはグリシンの置換基である、請求項13の方法。
【請求項15】
XおよびYがグリシンの置換基である、請求項14の方法。
【請求項16】
式IIのアミノ酸またはそのアナローグがシステイン、システアミン、ペニシラミン、システイル-グリシン (Cys-Gly) 、ホモシステインおよびL-セリンから成るリストから選択される、前記請求項のいずれか1つの方法。
【請求項17】
アミノ酸またはそのアナローグがシステインである、請求項16の方法。
【請求項18】
システインがL-システインである、請求項17の方法。
【請求項19】
精製が空気感受性ステロイド、式IIのアミノ酸またはそのアナローグおよび溶媒を組み合わせて反応溶液を形成し、前記溶液から空気感受性ステロイドを回収して精製されたステロイドを得ることを含んでなる、前記請求項のいずれか1つの方法。
【請求項20】
溶媒がアルコール、エステル、ケトン、ハロアルカン、双極性非プロトン性溶媒、ニトリル、エーテルおよびそれらと水との混合物から成る群から選択される、請求項19の方法。
【請求項21】
アルコールが直鎖状または分枝鎖状C1-C5アルコールであり、エステルがC2-C5エステルであり、ケトンがC2-C5ケトンであり、ハロアルカンがC1-C5ハロアルカンであり、双極性非プロトン性溶媒がC2-C5双極性非プロトン性溶媒であり、ニトリルがC1-C5ニトリルであり、そしてエーテルがC4-C6エーテルである、請求項20の方法。
【請求項22】
C1-C5アルコールが直鎖状または分枝鎖状C1-C4アルコールであり、C2-C5エステルがC3-C5エステルであり、C1-C5ハロアルカンがC1-C2ハロアルカンであり、そしてC1-C5ニトリルがC1-C3ニトリルである、請求項21の方法。
【請求項23】
直鎖状または分枝鎖状C1-C4アルコールがメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびイソブタノールから成るリストから選択され、C2-C5ケトンがアセトン、ブタノン、メチルエチルケトンおよびイソプロピルメチルケトンから成るリストから選択され、C2-C5双極性非プロトン性溶媒がジメチルスルホキシド (DMSO) 、ジメチルホルムアミド (DMF) またはジメチルアセトアミド (DMA) から成るリストから選択され、そしてC4-C6エーテルがテトラヒドロフラン (THF) 、2-メチルテトラヒドロフランおよびジオキサンから成るリストから選択される、請求項22の方法。
【請求項24】
C1-C4アルコールがメタノールであり、C3-C5エステルが酢酸エチルであり、C2-C5ケトンがアセトンであり、C1-C2ハロアルカンがジクロロメタンであり、C2-C5双極性非プロトン性溶媒がDMFであり、C2-C5ニトリルがアセトニトリルであり、そしてC4-C6エーテルがTHFである、請求項23の方法。
【請求項25】
水との混合物がアルコール、ハロアルカンおよび水、双極性非プロトン性溶媒および水、エーテルおよび水、ケトンおよび水、およびアルコールおよび水から成るリストから選択される、請求項20の方法。
【請求項26】
混合物がメタノール、ジクロロメタンおよび水、DMFおよび水、THFおよび水、ジオキサンおよび水、メタノールおよび水、およびアセトンおよび水の混合物から成るリストから選択される、請求項25の方法。
【請求項27】
混合物がメタノール、ジクロロメタンおよび水の混合物である、請求項26の方法。
【請求項28】
溶液が触媒をさらに含有する、請求項20〜27のいずれか1つの方法。
【請求項29】
触媒が酢酸、ギ酸またはパラトルエンスルホン酸 (PTSA) から成るリストから選択される有機酸である、請求項28の方法。
【請求項30】
式IIIの付加物から空気感受性ステロイドを分離することによって、空気感受性ステロイドの回収を実施する、請求項20〜29のいずれか1つの方法:
【化5】

式中、
A2はSまたはOであり、
B2はNR2またはNCOR4であり、
AおよびBは各々Hであるか、あるいは一緒になって二重結合を表し、
CはH、F、ClまたはOHであり、
DはH、CH3、ClまたはFであり、
EはH、OHまたはカルボニルであり、
GはH、OH、CH3、またはMと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
MはH、OH、C1-C6直鎖状または分枝鎖状モノまたはジカルボン酸または安息香酸でエステル化されたOH、またはGと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
R1はH、COOHまたはCOR5であり、
R2およびR3は各々独立してH、CH3またはC2H5であり、
R4はC1-C4直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、
R5は下記式:
【化6】

のペプチドであり、
式中XおよびYは各々独立してアミノ酸の置換基であり、N1およびN2は各々独立してNHであるか、あるいはN1はXと一緒におよび/またはN2はYと一緒にアミノ酸置換基を形成し、そして
mは0、1または2であり、そして
nは0または1である。
【請求項31】
ステロイドを回収する前に、反応溶液を濃縮する、請求項30の方法。
【請求項32】
精製されたステロイドを反応溶液から沈殿させ、次いで精製されたステロイドを残留する可溶性付加物から分離するか、あるいは得られた付加物を反応溶液から抽出することによって、回収を実施する、請求項30および31のいずれか1つの方法。
【請求項33】
反応溶液を抗溶媒と組合わせて第2混合物を形成することによって、沈殿を実施する、請求項32の方法。
【請求項34】
反応溶液を酸性または塩基性水溶液と組み合わせ、得られた相を分離し、有機相を水で洗浄し、そして精製されたステロイドを有機相から単離することによって、抽出を実施する、請求項32の方法。
【請求項35】
塩基性水溶液が炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムの水溶液である、請求項34の方法。
【請求項36】
塩基性水溶液が炭酸水素ナトリウムの水溶液である、請求項35の方法。
【請求項37】
塩基性水溶液のpHが7より高い、請求項36の方法。
【請求項38】
酸性水溶液のpHが7より低い、請求項34の方法。
【請求項39】
抗溶媒を添加して精製されたステロイドを結晶化させた後、沈殿により単離を実施する、請求項34〜38のいずれか1つの方法。
【請求項40】
抗溶媒が水またはC4-C8非極性溶媒である、請求項39の方法。
【請求項41】
C4-C8非極性溶媒がC5-C8アルカンまたはC4-C6エーテルである、請求項40の方法。
【請求項42】
C5-C8アルカンがヘキサンまたはヘプタンであり、そしてC4-C6エーテルがジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテルまたはメチルt-ブチルエーテルである、請求項41の方法。
【請求項43】
抗溶媒が水である、請求項42の方法。
【請求項44】
式IIIの付加物:
【化7】

式中、
A2はSまたはOであり、
B2はNR2またはNCOR4であり、
AおよびBは各々Hであるか、あるいは一緒になって二重結合を表し、
CはH、FまたはOHであり、
DはH、CH3またはFであり、
EはH、OHまたはカルボニルであり、
GはH、OH、CH3、またはMと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
MはH、OH、C1-C6直鎖状または分枝鎖状モノまたはジカルボン酸または安息香酸でエステル化されたOH、またはGと一緒にC1-C6直鎖状または分枝鎖状または環状カルボニルを有するケタールまたはアセタールを形成する酸素原子であり、
QはOHまたはC1-C6直鎖状または分枝鎖状カルボン酸でエステル化されたOHであり、
R1はH、COOHまたはCOR5であり、
R2およびR3は各々独立してH、CH3またはC2H5であり、
R4は直鎖状または分枝鎖状C1-C4アルキルであり、
R5は下記式:
【化8】

のペプチドであり、
式中XおよびYは各々独立してアミノ酸の置換基であり、N1およびN2は各々独立してNHであるか、あるいはN1はXと一緒におよび/またはN2はYと一緒にアミノ酸置換基を形成し、そして
mは0または1または2であり、そして
nは0または1である。
【請求項45】
A2がSである、請求項44の付加物。

【公表番号】特表2010−515777(P2010−515777A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504315(P2010−504315)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/001731
【国際公開番号】WO2009/117120
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(505216117)シコール インコーポレイティド (35)
【Fターム(参考)】