説明

空気浄化性に優れた照明器具

【課題】幅広い波長域を持つランプを使用することができ、かつ、光触媒効果を有する基体の近傍の換気を十分に行うことができる空気浄化性に優れた照明器具を提供する。
【解決手段】本発明の空気浄化性に優れた照明器具は、フルスペクトルの光を放出するランプと、このランプを囲繞し、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層が形成された1または2以上の透光性基体、または、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層が形成され、かつ赤外線の吸収機能を有する1または2以上の透光性基体を配置し、これらのランプと透光性基体との間に空気の流通が可能な空間が形成される。この構成により、ランプから放出された光が、二酸化チタンの光触媒を活性化させ、強い酸化力を発現させるとともに、透光性基体が有する赤外線吸収特性によって強制対流を発生させることにより、空気の浄化作用を促進できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明器具に関し、さらに詳しくは、光源として幅広い波長域を持つランプを用いることが可能であり、かつ、ランプから放出される光エネルギーを無駄なく利用できる空気浄化性に優れた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化チタンに代表される光半導体の微粒子による光触媒作用、特に、その強い酸化触媒作用に高い注目が集められている。
【0003】
二酸化チタンは、白色塗料や化粧品の顔料として広く使用されており、一方、その強い酸化力によって、汚れの分解、消臭、脱臭、抗菌、殺菌および有害物除去などの効果が得られることから、建材、照明製品、エアコンなど幅広い分野の製品へ応用がなされている。このため、二酸化チタンの光触媒を建材として用いる場合には、例えば、抗菌ガラスや衛生タイル等として、また、照明製品として用いる場合には、空気浄化機能を具備した照明器具等として利用されている。
【0004】
上記の空気浄化機能を具備した照明器具として用いる場合は、例えば、蛍光灯自体の外表面に二酸化チタンの光触媒を担持させた構造で使用される。蛍光灯は、ガラス管内の低圧水銀蒸気中のアーク放電により発生する紫外光を蛍光物質で可視光線に変換する光源である。すなわち、蛍光灯自体の外表面に二酸化チタンの光触媒を担持させた照明装置は、蛍光物質で紫外光を可視光に変換すると共に、蛍光物質を透過した紫外光によって二酸化チタンの光触媒を活性化させ、強い酸化力を発現させるものである。このように、活性化した光触媒に周囲の空気が触れることにより、周囲の空気に含まれる汚染物質が酸化除去され、空気の浄化が行われる。
【0005】
しかし、蛍光灯自体の外表面に二酸化チタンの光触媒を担持させた照明装置には、いくつかの問題点がある。蛍光物質は励起状態と基底状態を繰り返す度に、その蛍光性質を弱めていくことから、蛍光灯に用いられる蛍光物質の寿命は短く、また、蛍光灯にはガラス管が用いられることから、衝撃等により破損する可能性が高い。このように、蛍光灯自体が寿命や破損により廃棄処分される場合には、担持された光触媒も同時に廃棄されることになるので、光触媒が浪費されることになる。
【0006】
さらに、二酸化チタンの光触媒を活性化させる紫外光は、光源の周囲を覆うガラス管の内面に塗布した蛍光物質を透過した紫外光であることから強度が弱く、光触媒による充分な空気浄化機能を発現させることが困難である。このような問題を解決するために、光エネルギーおよび光触媒の有効利用を目的として、種々の装置が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、紫外線発光体が透光性を有するカバー体で覆われ、カバー体の内面上に蛍光物質と光触媒とが担持された担持層が形成され、カバー体と紫外線発光体の外面との間に空間部が形成される構造とすることにより、紫外線発光体より放出される紫外線エネルギーを無駄にすることなく、照明機能と空気浄化機能を発現させる空気浄化機能を有する照明装置が開示されている。さらに、特許文献1では、空間部の空気の換気については、送風機等による強制的な換気、および、紫外線発光体の放出する熱による対流を利用して換気する自然換気が提案されている。
【0008】
しかし、自然換気の場合、すなわち、紫外線発光体の放出する熱を利用する場合には、対流の発生はその紫外線発光体の近傍に限られ、光触媒効果を有する基体近傍では有効に対流が発生しないことから、空気浄化作用を効率よく行わせることは困難である。また、送風機等による強制的な換気の場合には、余分な電力が必要となることから、エネルギーを有効利用しているとは言い難い。さらに、特許文献1で開示される方法は、蛍光物質の寿命により基体が廃棄処分される場合には、担持された光触媒も同時に廃棄されることになるので、光触媒が浪費されることになる。
【0009】
また、特許文献2には、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒を担持し、空気と接触する光触媒反応表面を有する基体と、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオードとを具備することにより、太陽光等が当たらない場所にも適用することができ、さらに、消費電力が少なく、しかも有彩色に発光する空気の浄化装置が開示されている。
【0010】
特許文献2で開示される方法は、自然対流を利用して室内等の空気を浄化するものであり、その室内全体の空気を浄化するには長時間を要する。このため、比較的短時間で空気を浄化する方法として、外部と空気の出入りが可能な流通経路を形成し、ファン等によってその流通経路に空気を流通させると共に、光触媒反応基体をその流通経路内に配置して、浄化装置を形成することが開示されている。
【0011】
しかし、この方法はファンを作動させるために、余分な電力が必要となることから、発光ダイオードの利点とされる省電力が活かされているとは言い難い。
【0012】
このように、光源から放出される光エネルギーを無駄なく利用し、かつ、二酸化チタンの光触媒が有する空気浄化機能を発揮させることができる照明器具を開発するには、解決されねばならない問題が残されている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−151343号公報
【特許文献2】特開2004−000663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した通り、二酸化チタンの光触媒が有する空気浄化機能を発揮させることが可能な照明器具を開発するには、蛍光物質を透過した紫外光では強度が弱くなるといった問題や、自然対流を利用した換気では、光触媒効果を有する基体の近傍の換気が十分に行われないといった問題がある。
【0015】
このように、紫外光の強度が弱い場合や、光触媒効果を有する基体の近傍の換気が十分に行われない場合には、二酸化チタンの有する優れた空気浄化作用が発揮されないことになる。
【0016】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、幅広い波長域を持つランプを使用することができ、かつ、光触媒効果を有する基体の近傍の換気を十分に行うことができる空気浄化性に優れた照明器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、入手が容易であり、かつ、経済性にも優れた光源および透光性材料を用いることにより、空気浄化性に優れた照明器具を開発できるという観点に立って、二酸化チタンの有する優れた空気浄化作用を発揮させ、かつ、光源から放出される光エネルギーの無駄を少なくできる方法について種々の検討を行った。その結果、下記の(a)〜(c)に示す新たな知見を得た。
(a)ランプから放出される光エネルギーを無駄なく利用するには、それぞれの波長の有する作用、例えば、紫外線であれば空気浄化作用、可視光線であれば照明作用、および赤外線であれば加熱作用を発揮させることが有効である。
(b)光触媒効果を有する基体の近傍の換気を十分に行うため、光を熱エネルギーに変換できる薄膜または透光性基体を通過させることにより、これらの表面から放出される熱によって強制的に対流を発生させるのが有効である。
(c)光源であるランプを複数の透光性基体により囲繞する構成とすれば、最も外側の基体(以下、「外筒」ともいう)を装飾用または広告用として利用するとともに、それより内側の基体(以下、「内筒」ともいう)に光触媒を担持させることが可能となるため、外筒を交換または廃棄する際に、光触媒を廃棄する必要がなくなる。
【0018】
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(8)の空気浄化性に優れた照明器具を要旨としている。
(1)フルスペクトルの光を放出するランプと、このランプを囲繞し、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層が形成された1または2以上の透光性基体、または、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層が形成され、かつ赤外線の吸収機能を有する1または2以上の透光性基体を配置し、これらのランプと透光性基体との間に空気の流通が可能な空間が形成されることを特徴とする空気浄化性に優れた照明器具。
(2)上記(1)に記載の照明器具では、赤外線の吸収機能を有する1または2以上の透光性基体を、前記ランプを囲繞するように配置することにより、前記空気流通空間において対流の発生が促されるので望ましい。
(3)上記(1)および(2)に記載の照明器具では、前記ランプが少なくとも紫外スペクトルおよび可視スペクトルの波長範囲に含まれる光を放出することが望ましく、また、前記ランプが少なくとも赤外スペクトルおよび可視スペクトルの波長範囲に含まれる光を放出することが望ましい。さらに、前記ランプが紫外スペクトル、可視スペクトルおよび赤外スペクトルの波長範囲に含まれる光を放出することが望ましい。
(4)上記(1)〜(3)に記載の照明器具では、前記光触媒反応層が前記ランプから放出される光のうち、紫外光により光触媒活性を示すことにより、紫外光を有効に利用することができる。同様に、前記光触媒反応層が前記ランプから放出される光のうち、紫外光および可視光により光触媒活性を示すことにより、可視光によって紫外光の強度を補うことができるので望ましい。
(5)上記(1)〜(4)に記載の照明器具では、前記赤外線の吸収機能を前記透光性基体の表面に塗布された赤外線吸収物質によって発揮させることにより、前記空気流通空間において対流の発生が促されるので望ましい。また、前記赤外線の吸収機能を前記透光性基体が具備する機能によって発揮させることができる。これにより、同様に、前記空気流通空間において対流の発生が促されるので望ましい。
(6)上記(1)〜(5)に記載の照明器具では、前記空気流通空間が前記ランプと前記透光性基体との間、および前記透光性基体同士の間に設けられ、当該ランプの外部と空気の出入りが可能に形成されることにより、前記光触媒反応層と空気との接触が容易になる。また、この構成により、当該ランプの外部との空気の出入りが前記赤外線の吸収機能によって生じる上昇気流の作用により下方から上方へ進行する。
(7)上記(1)〜(6)に記載の照明器具では、前記ランプの放出する光のうち前記透光性基体を通過した可視光を照明に用いることにより、蛍光物質を必要としないので望ましい。
(8)上記(1)〜(7)に記載の照明器具では、前記透光性基体のうち最も外側の基体を装飾用または広告用として用いることができる。これにより、審美的および宣伝的な効果が発揮できるので望ましい。
【0019】
本発明において、「フルスペクトルの光」とは、通常、連続したスペクトルを有する光であって、2種以上の波長域を有する光を意味する。しかし、後述するように、本発明が対象とする「フルスペクトルの光」には、2種以上の波長範囲において非連続なスペクトルであって、ピークを有する光も包含するものである。
【0020】
また、本発明において、「紫外スペクトル」とは可視光線の短波長端360〜400nmを上限とし、下限は10nmくらいまでの波長範囲を、「可視スペクトル」とは下限は360〜400nm程度、上限は760〜830nm程度の波長範囲を、「赤外スペクトル」とは可視光線の長波長端760〜830nmを下限とし、上限は1mmくらいまでの波長範囲をそれぞれ意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の照明器具によれば、紫外光は空気浄化機能、可視光は照明機能、および赤外光は加熱機能というように、異なる波長を持つ光を、それぞれの特質に応じて有効に利用することにより、ランプから放出される光エネルギーの無駄を少なくできる。
【0022】
複数の透光性基体を用いる場合には、最も外側の基体を装飾用または広告用として用いることができ、宣伝広告等に利用可能となる。
【0023】
さらに、ランプから放出される光エネルギーによる加熱に加え、ランプから放出される赤外光による加熱の効果により、空気流通空間で強制対流が生じ、換気が十分に行われることから、空気の浄化作用を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の照明器具は、フルスペクトルの光を放出するランプと、このランプを囲繞し、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層が形成された1または2以上の透光性基体、または、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層が形成され、かつ赤外線の吸収機能を有する1または2以上の透光性基体を配置し、これらのランプと透光性基体との間に空気の流通が可能な空間が形成されることを特徴としており、これらの構成を採用することにより、優れた空気浄化機能を発揮することができる。
【0025】
本発明の実施態様としては、ランプが放出する光の波長に関し、フルスペクトルの光として単に連続したスペクトルを有する光に限定されず、非連続であっても、少なくとも紫外スペクトル範囲の紫外光および可視スペクトル範囲の可視光を含むことができ、また、少なくとも赤外スペクトル範囲の赤外光および可視スペクトル範囲の可視光を含むことができ。さらに、紫外スペクトル範囲の紫外光および可視スペクトル範囲の可視光に加えて赤外スペクトル範囲の赤外光を含むことができる。以下に、本発明の照明器具の構成を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の照明器具の構成例を模式的に示す図であり、同(a)は斜視図であり、同(b)は正面図である。図1に示す照明器具では、フルスペクトルの光を放出するランプ1が、透光性基体である内筒2と外筒3によって囲繞されており、内筒2の内表面および外表面並びに外筒3の内表面には、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層4が形成されている。また、必要に応じて、内筒2および外筒3は、赤外線の吸収特性を有する材質からなる透光性基体で構成し、さらに、ランプ1と内筒2との間、および内筒2と外筒3の間に空気の流通が可能な空間が形成されている。
【0027】
上記の構成とすることにより、ランプ1から放出されたフルスペクトルの光が、光触媒反応層4が形成された内筒2を透過することにより、二酸化チタンの光触媒を活性化させ、強い酸化力を発現させる。さらに、内筒2が赤外線の吸収特性を有する材質からなる透光性基体である場合には、光が熱エネルギーに変換され、基体表面から放出される熱により空気の対流が、図1中の破線矢印の方向5に生じる。これにより、空気流通空間の換気が十分に行われることから、空気の浄化作用が促進される。
【0028】
外筒3においても同様に、二酸化チタンによる強い酸化力を発現するとともに、外筒3を赤外線の吸収特性を有する材質からなる透光性基体で構成すると、基体表面から放出される熱により空気の対流が生じる。これにより、内筒2で発生する反応との相乗効果によって、空気の浄化作用がさらに促進される。光触媒作用および加熱作用に利用されなかった光、すなわち、内筒2および外筒3を透過した光は照明用の灯りとして使用される。
【0029】
前述の通り、本発明の照明器具が採用する「フルスペクトルの光」とは、種々の波長域を有する光を意味するものである。本発明ではフルスペクトルの光を放出するランプとして機種等を特に限定するものではないが、例えば、太陽の光に近い光を放出するといわれるトゥルーライト等を用いることができる。
【0030】
しかしながら、本発明の照明器具では、連続したスペクトルの光を放出するランプ、または2種以上の波長域の光を放出するランプであれば、如何なる波長域であっても本発明の空気浄化機能を達成できることを意思するものではない。
【0031】
すなわち、本発明の照明器具では、その実施形態として二酸化チタンによる空気浄化機能と照明機能を確保するために、光源として使用するランプが、少なくとも紫外スペクトル範囲の紫外光および可視スペクトル範囲の可視光を放出すること、また、少なくとも赤外スペクトル範囲の赤外光および可視スペクトル範囲の可視光を含むことを規定している。
【0032】
さらに、その他の実施形態として、上記の機能に加えて加熱機能を確保するために、光源として使用するランプが紫外スペクトル範囲の紫外光、可視スペクトル範囲の可視光および赤外スペクトル範囲の赤外光を放出することを規定している。
【0033】
本発明の照明器具では、透光性基体に形成される光触媒反応層の反応特性として、この光触媒反応層が紫外光により光触媒活性を示すことが望ましい。これにより、生物に有害な紫外光を有効に利用することができるからである。
【0034】
さらに、光触媒反応層の他の反応特性として、透光性基体に形成される光触媒反応層が、紫外光および可視光により光触媒活性を示すことが望ましく、可視光によって紫外光の強度を補うことが可能となる。
【0035】
本発明の照明器具は、赤外線の吸収機能を有する透光性基体を必須の構成要素としている。そして、この赤外線の吸収機能は、透光性基体の表面に塗布された赤外線吸収物質によって発揮させることができ、または透光性基体に赤外線の吸収機能を具備させることによって発揮させることができる。
【0036】
図2は、赤外線の吸収機能を有する透光性基体の一例を模式的に示す図であり、同(a)は赤外線吸収物質が透光性基体の表面に塗布される場合を示す図であり、同(b)は赤外線を吸収する基体に光触媒反応層が形成される場合を示す図であり、同(c)は赤外線を吸収する基体が他の基体の間に挿入される場合を示す図である。
【0037】
赤外線の吸収機能が透光性基体の表面に塗布された赤外線吸収物質によって発揮される場合には、図2(a)に示すように、ランプ1を透明ガラス製の円筒7で囲繞し、内筒および外筒の内表面には二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層4が形成され、外表面には赤外線吸収物質6が塗布されている。このように構成することにより、ランプ1から放出された光が赤外線吸収物質6によって熱エネルギーに変換され、基体表面から放出される熱により強制対流が生じることから、空気流通空間の換気が十分に行われる。
【0038】
また、赤外線の吸収機能が透光性基体が具備する機能によって発揮される実施形態として、図2(b)に示すように、ランプ1を赤外線の吸収機能を有するガラス製の円筒8で囲繞し、その表面に光触媒反応層4を形成する構成が適用でき、また、図2(c)に示すように、ランプ1を光触媒反応層4が形成された透明ガラス製の円筒7で囲繞し、内筒と外筒の間に赤外線の吸収機能を有するガラス製の円筒8を挿入する構成も採用できる。
【0039】
図2(b)および(c)に示すいずれの場合にも、ランプ1から放出された光が赤外線の吸収機能を有するガラス製の円筒8によって熱エネルギーに変換され、基体表面から放出される熱により強制対流が生じ、空気流通空間の換気を十分に促進できる。
【0040】
本発明の照明器具では、さらに空気流通空間を必須の構成要素とするが、ランプと透光性基体との間、および透光性基体同士の間に設けられ、ランプの外部と空気の出入りが可能に形成されるのが望ましい。このような構成とすれば、空気の流通経路を別途設ける必要がなく、製造が容易になるとともに、光触媒反応層と空気とが接触しやすくなる。また、この構成により、当該ランプの外部との空気の出入りが前記赤外線の吸収機能によって生じる上昇気流の作用により下方から上方へ進行することになる。
【0041】
本発明の照明器具は、ランプの放出する光のうち透光性基体を通過した可視光を照明として用いることが望ましい。これにより、蛍光物質を必須の構成要素としないことから、光触媒の耐用期間が蛍光物質の寿命に影響されることがなく、光触媒の浪費を防止できる。
【0042】
本発明の照明器具は、透光性基体のうち最も外側の基体を装飾用または広告用として用いることができる。
【0043】
図3は、本発明の照明器具に装飾をほどこした外観例を示す写真であり、同(a)は正面写真であり、同(b)は斜め上から撮影した写真である。本発明の照明器具は、優れた空気浄化機能を有することを特徴としているが、透光性基体のうち最も外側の基体に装飾を施すことによって、図3に示すように、非常に美しいインテリアとしても使用できる。
【0044】
このように、インテリアとして使用すれば、室内の空気清浄、脱臭等の作用のみならず、清掃が非常に容易になるという利点を有する。この他にも、広告用の看板や案内標識等にも利用可能であり、埃や排気ガス等による汚れを抑止できることから、維持管理費用を低減できる。
【0045】
また、内筒のみに光触媒を担持させる構成とすれば、装飾用または広告用として利用される外筒を交換または廃棄する際に、光触媒を廃棄する必要がない。なお、内筒がない場合には、外筒の内面に光触媒反応層が形成できることは言うまでもない。
【実施例】
【0046】
本発明の照明器具が空気浄化性に及ぼす効果を確認するため、アセトアルデヒドの分解試験を実施し、空気中の浄化性能を評価した。
(実施例1)
図4は、実施例1において使用した照明器具の構成を示す図である。実施例1は、ランプ1を囲繞する2枚の透光性基体10、11を、試験容器9内に配置して行った。ランプ1には、放射スペクトルが太陽光に近く、紫外線、可視光および赤外光を放射するSPIRAL VITA LITE PLUS(20W)を使用した。ランプ1の中心から40mmの位置におけるランプ側面の紫外線量は約400μW/cm2であり、さらに、ランプ1の中心から60mmの位置におけるランプ側面の紫外線量は約200μW/cm2であった。
【0047】
また、2枚の透光性基体のうち、内筒10には外径80mm、高さ240mm、厚み2mmの透明ガラス製の円筒を用いた。内筒10の内外両面に化学気相蒸着法(CVD法)により光触媒酸化チタン12をコーティングした。さらに、外筒11には外径80mm、高さ300mmの赤外線吸収特性を有するガラス製の円筒を用いた。外筒11の内面に光触媒酸化チタン12をコーティングし、外表面に色ガラスによる飾り絵柄を施した。
【0048】
内径550mm、高さ900mmで容量が約200Lの密閉可能なステンレス製試験容器9内に、空気浄化性に優れた照明器具を設置し、ステンレス製試験容器9内の空気を、アセトアルデヒドを25ppm含んだ合成空気と置換した。
【0049】
ランプ1を点灯しない状態で1時間保持し、ステンレス製試験容器9内のアセトアルデヒド濃度を測定したところ、試験容器9内のアセトアルデヒド濃度は22ppmであった。さらに1時間保持し、試験容器9内のアセトアルデヒド濃度を測定すると、その濃度は22ppmであり、ランプ1を点灯しない状態では濃度変化が生じないことを確認した。
【0050】
照明器具のランプ1を点灯し、ステンレス製試験容器9内のアセトアルデヒド濃度の経時変化をガスクロマトグラフで測定した。ランプ1を点灯してから1時間経過後の試験容器9内のアセトアルデヒド濃度は19ppmであった。ランプ1を点灯してから5時間後の試験容器9内のアセトアルデヒド濃度は10ppmであった。さらに、ランプ1を点灯してから10時間経過後のアセトアルデヒド濃度は4.5ppmであり、20時間経過後のアセトアルデヒド濃度は1ppm以下となった。これにより、本発明の照明器具が発揮することができる優れた浄化効果を確認することができた。
【0051】
上記のような優れた浄化効果を発揮できた要因としては、外部と空気流通空間との空気の温度差による効果的な対流の発生が考えられる。赤外線吸収特性を有するガラス製の円筒を用いた効果により、室温25℃に対して、ランプ点灯時の外筒ガラス側面温度は約38℃であった。また、外筒ガラス側面近傍における照度は、1000ルクス以上あり、インテリア照明として充分な明るさを確保できることも同時に確認できた。
(実施例2)
図5は、実施例2において使用した照明器具の構成を示す図である。実施例2では、透光性基体として、ランプ1を囲繞する3枚の内筒10a、10b、10cおよび外筒11を設け、試験容器9内に配置して行った。
【0052】
図5に示すように、内筒10aは外径80mm、内筒10bは外径120mmおよび内筒10cは外径150mmの透明ガラス製の円筒を用いた3重構造とし、高さはいずれも240mmとした。また、外筒11は外径180mm、高さ300mmの赤外線吸収特性を有するガラス製の円筒型とした。実施例1と同様に、内筒10a、10bおよび10cの内外両面並びに外筒11の内面に、化学気相蒸着法により光触媒酸化チタン12をコーティングした。
【0053】
アセトアルデヒドの分解試験は、実施例1と同様の試験方法にて行った。ランプ1を点灯しない状態で保持した際のアセトアルデヒド濃度は20ppmであった。ランプ1を点灯してから1時間経過後のステンレス製試験容器9内のアセトアルデヒド濃度は15ppmであった。さらにランプ1を点灯してから5時間後の試験容器9内のアセトアルデヒド濃度は4.3ppmであり、10時間経過後のアセトアルデヒド濃度は1ppm以下となった。
【0054】
実施例2では、実施例1よりも顕著な浄化効果が確認されたが、実施例1と実施例2との相違点は、内筒を3重構造としたことであった。したがって、外部の空気と接触する光触媒反応層の面積が広くなるほど、本発明の空気浄化性に優れた照明器具の浄化効果が向上することが確認された。
(実施例3)
図6は、実施例3において使用した照明器具の構成を示す図である。同図に示すように、実施例3では内筒13に赤外線吸収特性を有するガラスを用いること以外は実施例1と同様の装置構成とした。すなわち、内筒13の内外両面および外筒11の内面に、化学気相蒸着法により光触媒酸化チタン12をコーティングした。
【0055】
アセトアルデヒドの分解試験を実施例1と同様の試験方法にて行った。ランプ1を点灯しない状態で保持した際のアセトアルデヒド濃度は22ppmであった。ランプ1点灯後1時間経過後のステンレス製試験容器9内のアセトアルデヒド濃度は18ppmであった。ランプ1点灯後5時間後の試験容器9内のアセトアルデヒド濃度は8ppmであり、さらにランプ1点灯後10時間経過後のアセトアルデヒド濃度は3ppmであり、16時間経過後のアセトアルデヒド濃度は1ppm以下となった。
【0056】
実施例3では、実施例1よりも優れた浄化効果が確認されたが、実施例1と実施例3との相違点は、内筒13を赤外線吸収特性を有するガラス製にしたことであった。この結果、赤外吸収基体を用いることにより、基体表面から放出される熱によって発生する強制対流をさらに促進し、光触媒と空気の接触効率を高めることによって、本発明の照明器具の浄化効果が一層向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の照明器具によれば、紫外光は空気浄化機能、可視光は照明機能、および赤外光は加熱機能というように、異なる波長を持つ光を、それぞれの特質に応じて有効に利用することにより、ランプから放出される光エネルギーの無駄を少なくできる。
【0058】
複数の透光性基体を用いる場合には、最も外側の基体を装飾用または広告用として用いることができ、宣伝広告等に利用可能となる。
【0059】
さらに、ランプから放出される光エネルギーによる加熱に加え、ランプから放出される赤外光による加熱の効果により、空気流通空間で強制対流が生じ、換気が十分に行われることから、空気の浄化作用が促進できる。
【0060】
これにより、室内の空気清浄、脱臭等の作用に優れるインテリアとして、また、埃や排気ガス等による汚れを抑止できる広告用看板や案内標識として広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の照明器具の構成例を模式的に示す図であり、同(a)は斜視図であり、同(b)は正面図である。
【図2】赤外線の吸収機能を有する透光性基体の一例を模式的に示す図であり、同(a)は赤外線吸収物質が透光性基体の表面に塗布される場合を示す図であり、同(b)は赤外線を吸収する基体に光触媒反応層が形成される場合を示す図であり、同(c)は赤外線を吸収する基体が他の基体の間に挿入される場合を示す図である。
【図3】本発明の照明器具に装飾をほどこした外観例を示す写真であり、同(a)は正面写真であり、同(b)は斜め上から撮影した写真である。
【図4】実施例1において使用した照明器具の構成を示す図である。
【図5】実施例2において使用した照明器具の構成を示す図である。
【図6】実施例3において使用した照明器具の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1.ランプ
2.透光性基体(内筒)
3.透光性基体(外筒)
4.光触媒反応層(光触媒酸化チタン)
5.空気の流れの方向
6.塗布された赤外線吸収物質
7.透明ガラス製の円筒
8.赤外線吸収特性を有するガラス製の円筒
9.ステンレス製試験容器
10、10a、10b、10c.透明ガラス製の内筒
11.赤外線吸収特性を有するガラス製の外筒
12.光触媒酸化チタン
13.赤外線吸収特性を有するガラス製の内筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルスペクトルの光を放出するランプと、
このランプを囲繞し、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層が形成された1または2以上の透光性基体、または、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒が担持された光触媒反応層が形成され、かつ赤外線の吸収機能を有する1または2以上の透光性基体を配置し、
これらのランプと透光性基体との間に空気の流通が可能な空間が形成されることを特徴とする空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項2】
赤外線の吸収機能を有する1または2以上の透光性基体を、前記ランプを囲繞するように配置することを特徴とする請求項1に記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項3】
前記ランプが少なくとも紫外スペクトルおよび可視スペクトルの波長範囲に含まれる光を放出することを特徴とする請求項1または2に記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項4】
前記ランプが少なくとも赤外スペクトルおよび可視スペクトルの波長範囲に含まれる光を放出することを特徴とする請求項1または2に記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項5】
前記ランプが紫外スペクトル、可視スペクトルおよび赤外スペクトルの波長範囲に含まれる光を放出することを特徴とする請求項1または2に記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項6】
前記光触媒反応層が前記ランプから放出される光のうち、紫外光により光触媒活性を示すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項7】
前記光触媒反応層が前記ランプから放出される光のうち、紫外光および可視光により光触媒活性を示すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項8】
前記赤外線の吸収機能が前記透光性基体の表面に塗布された赤外線吸収物質によって発揮されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項9】
前記赤外線の吸収機能が前記透光性基体が具備する機能によって発揮されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項10】
前記空気流通空間が前記ランプと前記透光性基体との間、および前記透光性基体同士の間に設けられ、当該ランプの外部と空気の出入りが可能に形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項11】
当該ランプの外部との空気の出入りが前記赤外線の吸収機能によって生じる上昇気流の作用により下方から上方へ進行することを特徴とする請求項10に記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項12】
前記ランプの放出する光のうち前記透光性基体を通過した可視光が照明に用いられることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の空気浄化性に優れた照明器具。
【請求項13】
前記透光性基体のうち最も外側の基体が装飾用または広告用として用いられることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の空気浄化性に優れた照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−335164(P2007−335164A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163935(P2006−163935)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(397064944)株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ (133)
【Fターム(参考)】