説明

空気浄化方法及び空気浄化装置

【課題】エタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガスを有効に脱臭することができる、空気浄化方法及び空気浄化装置を提供する。
【解決手段】空気浄化方法は、光触媒に紫外線を照射するとともに、光触媒上でオゾンガスが濃度0.05ppm以上となるようにして、当該光触媒上で被処理空気をオゾンガスと接触させ、次いで、該被処理空気を活性炭に接触させる方法であり、空気浄化装置としては、被処理空気の流路Aの上流から下流に向けて、オゾンガス発生装置、光触媒装置4、紫外線発生装置5、活性炭装置6を配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化方法及び空気浄化装置に関し、特にエタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガスを有効に脱臭することができる、空気浄化方法及び空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、住宅環境問題が注目され、特に都市部では、臭気対策が大きな問題となっている。
大気中に含まれる臭気は、硫化水素、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル及びトリメチルアミン等、種々の臭気成分の複合臭気となっており、これらの臭気を効率よく簡便に除去するための技術が望まれているのが現状である。
【0003】
現在は、大気中に含まれる空気を、吸着法、触媒による脱臭法、薬剤による洗浄法等により脱臭しているが、薬剤による洗浄法等の湿式法は、装置が大規模なものとなってしまうため、一般家庭用のものとしては、物理的、化学的吸着法で吸着除去する方法、特にオゾン、紫外線、光触媒により臭気物質の脱臭機能を発揮しようとする方法が採用されている。
【0004】
例えば、特開平8−266854号公報(特許文献1)には、高電圧印加により放電を行う放電極と対極とを有する放電部を備えるとともに、放電部における放電によって生じるオゾン、熱、紫外線のうち少なくとも1つを利用してガス成分の吸着分解を行う機能材料を備えている消臭装置が開示されている。
【0005】
また、特開2001−9241号公報(特許文献2)には、一定の波長を発生する紫外線ランプを照射しつつ、触媒の存在下で被処理ガス中の臭気成分を除去する脱臭方法において、前記触媒は(1)光エネルギーにより臭気成分を酸化分解する光触媒機能、(2)オゾンと臭気成分の反応を促進するオゾン触媒機能、(3)反応により生成した被毒物質をトラップする触媒劣化抑制機能を有する多機能触媒である脱臭方法が記載されている。
【0006】
更に、特開2005−343427号公報(特許文献3)には、空気が吸入又は圧入される汚染空気の取入口と、清浄空気の排出口とを形成した装置本体の室内の通路に、紫外線等の光源と、光触媒フィルタと、活性炭フィルタとを備え、前記光触媒フィルタが互いに間隔を置いて重設した複数の波板状の部材からなり、触媒面を構成したこれら部材の凹凸面に対して、前記装置本体内に導入した汚染空気が前記部材の凹凸面を通過することで前記光源からの光束と汚染空気の干渉により触媒面での汚染空気の浄化を促進させるようにした空気清浄装置が開示されている。
【0007】
しかし、これらの従来の空気浄化装置は、種々の臭気成分を一度に有効に除去することは困難であり、特にエタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガスを有効に消臭除去することは、困難であった。
これらの空気浄化装置は、臭気成分の除去機構として光触媒、オゾン、活性炭、そして光触媒を活性化させるための光源である紫外線を単体もしくは複合化して利用している。
しかしながら複合化した空気浄化装置においても、脱臭機構はそれぞれ独立して機能しており、オゾン脱臭処理後に光触媒にて再脱臭し、余剰臭気成分を活性炭部で吸着という手法が一般的である。
【0008】
しかも、エタノールを光触媒により除去する場合には、ホルムアルデヒドが副生成物として発生する。このため、光触媒の下流側には、ホルムアルデヒド対策を行った活性炭が必要となり、空気浄化装置の製造コストが高価なものとなる。
【特許文献1】特開平8−266854号公報
【特許文献2】特開2001−9241号公報
【特許文献3】特開2005−343427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、被浄化空気中の臭気成分が酸性成分であるか、エタノールやメチルメルカプタン等の中性成分であるかにかかわらず、種々の臭気成分を有効に脱臭することができる空気浄化方法及び空気浄化装置を提供することである。
特に、エタノールやメチルメルカプタン等の、従来の脱臭装置では充分に脱臭できなかった中性の臭気ガス成分を、簡易に脱臭することができる、空気浄化方法及び空気浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、中性臭気ガス成分を有効に脱臭するために、光触媒上のオゾンガス濃度を一定濃度以上とすることで、エタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガス成分を簡便で効率よく脱臭することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、光触媒上のオゾンガス濃度を一定濃度以上とできるように、光触媒装置とオゾンガス発生装置とを設置するとともに、紫外線発生装置と活性炭装置とを特定の位置関係で組み合わせることにより、エタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガス成分を簡便で効率よく脱臭することができることを見出し、本発明に到達したものである。
【0011】
本発明においては、エタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガス成分に、オゾンが光触媒上で紫外線により分解し、発生したOH・等が、中性臭気ガス成分と効率よく結合して、当該中性臭気ガス成分を酸性ガス化することができ、これにより活性炭に吸着されることができるものと推測される。
【0012】
本発明の請求項1記載の空気浄化方法は、光触媒に紫外線を照射するとともに、光触媒上でオゾンガスが濃度0.05ppm以上となるようにして、当該光触媒上で被処理空気をオゾンガスと接触させ、次いで、該被処理空気を活性炭に接触させることを特徴とするものである。
【0013】
好適には、請求項2記載の空気浄化方法は、上記請求項1記載の空気浄化方法において、光触媒上のオゾンガス濃度を、0.1〜100ppmとなるようにすることを特徴とするものである。
更に好適には、請求項3記載の空気浄化方法は、上記請求項1又は2記載の空気浄化方法において、該光触媒上で被処理空気とオゾンガスとを接触させた後、活性炭に接触させる前に、更に被処理空気に紫外線を照射することを特徴とするものである。
【0014】
更に好適には、請求項4記載の空気浄化方法は、上記請求項1〜3いずれかの項記載の空気浄化方法において、上記活性炭は、酸性ガス吸着用活性炭であることを特徴とするものである。
更に好適には、請求項5記載の空気浄化方法は、上記請求項1〜4いずれかの項記載の空気浄化方法において、光触媒上で被処理空気とオゾンガスとを接触させる前に、被処理空気中の集塵を除去することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項6記載の空気浄化装置は、被処理空気の流路の上流から下流に向けて、オゾンガス発生装置、光触媒装置、紫外線発生装置、活性炭装置を備え、当該オゾンガス発生装置から発生されるオゾンガス濃度が該光触媒上で0.05ppm以上の濃度となる程度に該オゾンガス発生装置を光触媒装置の近傍に配置し、該光触媒装置には光触媒を担持させた少なくとも1層の光触媒フィルタが設置され、該紫外線発生装置は当該装置から発生した紫外線が前記光触媒装置中の光触媒フィルタを被処理空気の流路の下流側から照射するとともに、当該光触媒装置を透過した被処理空気に紫外線が照射されるように紫外線装置を配置し、また該活性炭装置を被処理空気の流路の最下流に配置したことを特徴とするものである。
【0016】
好適には、請求項7記載の空気浄化装置は、上記請求項6記載の空気浄化装置において、前記オゾンガス発生装置から発生されるオゾンガス濃度が該光触媒上で0.1〜100ppm以上の濃度となる程度に該オゾンガス発生装置を光触媒装置の近傍に配置することを特徴とするものである。
【0017】
更に好適には、請求項8記載の空気浄化装置は、上記請求項6または7記載の空気浄化装置において、オゾンガス発生装置よりも被処理空気の流路の上流側に、更に集塵除去装置を設置することを特徴とするものである。
更に好適には、請求項9記載の空気浄化装置は、請求項6〜8いずれかの項記載の空気浄化装置において、前記オゾンガス発生装置、光触媒装置、紫外線発生装置及び活性炭装置を、ハウジング内に収容してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空気浄化方法は、従来の空気浄化方法や装置では、脱臭が困難であったエタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガスを、効率よく吸着して脱臭することが可能となる。
また本発明の空気浄化装置は、上記本発明の空気浄化方法を効率よく実施できるものであり、コンパクトにかつ簡便に、エタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガス成分を脱臭することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図示された好適例を用いて説明するがこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の空気浄化装置を構成する主要要素を模式的に示したものであり、図2及び3は、これらの主要要素をハウジング10内に収容した空気浄化装置を示している。
ただし、集塵フィルタ7は、本発明において必要に応じて付加できる構成装置である。
図中、1は本発明の空気浄化装置を、2は被処理空気取り込み口を、3はオゾンガス発生装置を、4は光触媒装置を、5は紫外線装置を、6は活性炭装置を、7は集塵フィルタを、そしてAは被処理空気の流れを示すものである。
なお、図2は、本発明の空気浄化装置1の正面図を模式的に表したものであり、図3は図2の当該空気浄化装置の側面図を模式的に表したものである(但し、集塵フィルタは図示せず)。
【0020】
本発明の空気浄化装置1は、被処理空気の流路の上流から下流に向けて、オゾンガス発生装置3、光触媒装置4、紫外線発生装置5、活性炭装置6を備え、当該オゾンガス発生装置3から発生されるオゾンガス濃度が該光触媒上で0.05ppm以上の濃度となる程度に該オゾンガス発生装置3を光触媒装置4の近傍に配置し、該光触媒装置4には光触媒を担持させた少なくとも1層の光触媒フィルタが設置され、該紫外線発生装置5は当該装置から発生した紫外線が前記光触媒装置4中の光触媒フィルタを被処理空気の流路の下流側から照射するとともに、当該光触媒装置を透過した被処理空気に紫外線が照射されるように紫外線装置を配置し、また該活性炭装置を被処理空気の流路の最下流に配置したものである。
【0021】
ここで、本発明において、被処理空気としては、含まれる臭気成分が酸性臭気か中性臭気であるか、またはこれらの混合臭気であるか特に限定されないが、エタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガス成分が含まれるものを好適に適用することが可能である。
【0022】
まず、被処理空気を被処理空気取り込み口2から取り込むが、図1に示すように、予め被処理空気中の塵や埃を収集する集塵装置7を設けて、被処理空気中に含まれる花粉等の塵や埃等を除去するために、被処理空気を該集塵装置7に通過させてもよい(図2及び図3では図示せず)。
このように、被処理空気中の花粉等の塵や埃を集塵装置7により収集して、被処理空気中に含まれる花粉等の塵や埃を除去することで、粉塵の再飛散防止、被処理空気の流れの下流側に設置された装置の汚染防止という作用が得られ、本発明を実施するにあたり好適である。
本発明において好適に設置される集塵装置としては、特に限定されず、静電気による吸着法や集塵フィルタ、HEPAフィルタ等の市場で入手できる集塵手段が使用できる。
【0023】
このようにして、被処理空気取り込み口2から取り込まれた被処理空気、好適には、上記集塵装置を通過した被処理空気は、光触媒装置4を通過する。
光触媒装置4には、光触媒が担持された光触媒フィルタが少なくとも1個設置されており、必要に応じて、複数枚の光触媒フィルタが設置されていてもよい。
【0024】
当該光触媒フィルタ中の光触媒としては、例えば、酸化チタン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の光触媒機能を有する物質を含有するフィルタが挙げられるが、経済的なコスト面や人体に対する安全性から酸化チタン等が望ましく、またその結晶構造は、ルチア型、アナターゼ型、ブッカイト型があるが、特に触媒活性の高いアナターゼ型の結晶構造を有するものを好適に使用することができる。
また、これらの光触媒機能を有する物質が、活性炭や不織布、多孔質性無機材料のようなガス吸着されやすい物質等に担持されているものを、光触媒フィルタとして使用することができ、該フィルタの厚みは特に限定されない。
【0025】
当該光触媒装置4上では、オゾンガス発生装置3から発生したオゾンガスの濃度が、0.05ppm以上、好ましくは0.1〜100ppm濃度となるように、オゾンガス発生装置3を光触媒装置4の近傍に設置する。
但し、光触媒上のオゾンガス濃度は、オゾンガス濃度測定装置(荏原実業株式会社製:OZONE MONITOR EG−2001)を用いて測定した値である。
具体的には、空気浄化装置のハウジング側面に、前記オゾンガス濃度測定装置に予め配置されている吸い込みチューブを通す穴を開け、該チューブを当該穴に通した後、隙間からガスが漏れないよう、チューブ側からテフロン(登録商標)テープなどで穴とチューブとの間のシーリングを行う。サンプリング用のチューブ先端を光触媒上に配置し、オゾンガス濃度測定装置に設置されている吸い込みポンプを運転させて、光触媒上のガスを吸込み、光触媒上のオゾン濃度を測定する。なお、吸込み流量は、当該オゾンガス濃度測定装置に設置されている流量計にて測定した流量が1L/分となるように設定する。
【0026】
このようにして測定した光触媒上のオゾンガス濃度が0.05ppm以上、好ましくは0.1〜100ppmとなるようにすることで、オゾンガスが光触媒上に照射される紫外線により分解して発生したOH・などが、エタノール等の中性臭気ガス成分と効率よく結合して、当該中性臭気ガス成分にカルボキシル基が導入され、当該中性臭気ガス成分が酸性ガス化されることができ、この酸性ガスが、下流側の活性炭装置6に容易に吸着されることができるものと推測される。
例えば、エタノール臭気成分の場合には、分解して発生した副生成物には、主として酢酸が多く含まれ、ホルムアルデヒドは極めて微量となることを確認した。
より具体的には、光触媒上に吸着されたオゾンが紫外線により反応することで、極めて反応性の高い酸素活性種が生成される。
これらの酸素活性種は、現在HOOO・、HOO・、HO・等と考えられており、被処理空気に含まれるエタノール等の臭気成分の末端基と反応し、水素引き抜き、酸素導入し、カルボキシル基形成を行うものと考えられる。
【0027】
また、メチルカプタン等の中性臭気成分においても、上記エタノールと同様に、光触媒上のオゾンガス濃度が、0.05ppm以上、好ましくは0.1〜100ppmとなるようにすることで、オゾンガスが光触媒上に照射される紫外線により分解して発生したOH・などが、中性臭気ガス成分と効率よく結合して、当該中性臭気ガス成分を酸性ガス化(メタンスルフォン酸)することができ、この酸性ガスが、下流側の活性炭装置6に容易に吸着されることができるものと推測される。
より具体的には、光触媒上に吸着されたオゾンが紫外線により反応することで、極めて反応性の高い酸素活性種が生成される。これらの酸素活性種は、上記したものと同様のものが考えられる。
【0028】
一方、光触媒上のオゾンガス濃度が0.05ppm未満であると、オゾンガスが光触媒上に照射される紫外線により分解して発生したOH・などの酸素活性種の量が少なく、エタノールやメチルメルカプタン等の中性臭気ガス成分と効率よく結合せず、当該中性臭気ガス成分の酸性ガス化する割合が低くなり、当該中性臭気ガス成分を効率よく脱臭することが困難となる。
【0029】
光触媒装置4の光触媒フィルタには、紫外線発生装置5から発生された紫外線が、被処理空気の流路の下流側から照射されるように紫外線発生装置5を配置する。
その配置は、図2及び図3に示すように、光触媒装置に対して直角であっても、図1に示すように並行であっても、光触媒装置4に紫外線が照射されれば、その設置形態は特に限定されない。
その程度は、オゾンガスが分解して十分にHOOO・、HOO・、HO・などが生成して、光触媒上で被処理空気中の中性臭気ガス成分を酸性ガス化することができるものであればよい。
【0030】
紫外線発生装置5としては、特に限定されず、市販されている紫外線ランプの他、LED等を用いてもかまわないが、上述した酸素活性種がもっとも効率よく生成する紫外線波長である254nm付近の波長の光を発生することができる紫外線発生装置が望ましい。
光触媒装置4を通過した被処理空気には、更に紫外線発生装置5から発生する紫外線が照射されることで、被処理空気に含まれる細菌・ウィルスなどの殺菌、不活化効果という作用を有する。
【0031】
次いで、被処理空気の最下流側に、活性炭装置6が配置される。
活性炭装置6には、活性炭層が少なくとも1層含まれており、当該活性炭層において、上記酸性ガス化した中性臭気ガスが吸着され、脱臭できることとなる。
すなわち、被処理空気に含まれる臭気物質は、上述したように、酸性ガス化しているので、当該臭気物質は活性炭装置6により容易に化学吸着され、被処理空気から取り除かれることとなる。
【0032】
当該活性炭層としては、通常の酸性ガスを吸着することができる活性炭であれば好適に使用でき、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属元素の化合物や、鉄、マンガン、銅等の金属酸化物を添着した活性炭を例示することができる。
これらの酸性ガス吸着用活性炭は、被処理空気中に含まれる硫化水素等の酸性ガスも、有効に吸着脱臭することができるものである。なお、必要に応じて、金属フタロシアニンの中で特に硫化水素、メチルメルカプタンの脱臭に効果的なコバルトフタロシアニンを添着した活性炭を使用することも可能である。
【0033】
本発明においては、上記オゾンガス発生装置、光触媒装置、紫外線発生装置及び活性炭装置は、ハウジング内に一同に収容してなることが好ましく、これにより被処理空気をオゾンガス発生装置側から活性炭素装置側に向かって連続的に流すことが可能となると共に、特にオゾンが光触媒上に接触して、HOOO・、HOO・、HO・などといった活性種を生成し、効果的に臭気成分を酸性ガス化することができ、さらに、これらの酸性ガスを直ちに活性炭で吸着することが可能となる。
【実施例】
【0034】
本発明を以下の実施例及び比較例により説明する。
実験装置
図2及び図3に示す空気浄化装置を用いた。
金属ケース内に(高さH=550mm、幅W=500mm、奥行D=190mm)にオゾンガス発生装置、光触媒装置、紫外線発生装置、活性炭装置およびファンを収納し、脱臭評価を実施した。
【0035】
(オゾンガス発生装置)
16Wの冷陰低圧水銀紫外線ランプ(紫外線強度0.085mW/cm、オゾン発生量16mg/h)を用いた。またオゾンガス発生装置は光触媒装置の上流側50mmに設置し、高濃度のオゾンガスが光触媒装置に供給される構成とした。
【0036】
(光触媒装置)
堺化学工業株式会社製光触媒(高さH=15mm、幅W=386mm、奥行D=112mm)、コルゲート型ハニカム(セル数36セル/in)を用いた。
(紫外線発生装置)
殺菌用紫外線低圧水銀ランプ(殺菌線出力5.8W)を3本用いた。
【0037】
(活性炭装置)
シナノケンシ株式会社製カーボンシルクをプリーツ状に折りフィルタ化(高さH=15mm、幅W=386mm、奥行D=112mm、膜面積0.15m)したものを用いた。
(ファン)
ファンは軸流ファンを用い流量を制御できるよう外部調節機能を用いて流量2L/minとした。
また、比較例の実施のためにオゾンガス発生装置、紫外線発生装置は個別に出力調整できるように制御スイッチを設けた。
【0038】
オゾン濃度測定方法
光触媒上のオゾンガス濃度は、オゾンガス濃度測定装置(荏原実業株式会社製:OZONE MONITOR EG−2001)を用いて測定した値である。
具体的には上述したように、空気浄化装置のハウジング側面に、前記オゾンガス濃度測定装置に予め配置されている吸い込みチューブを通す穴を開け、該チューブを当該穴に通した後、隙間からガスが漏れないよう、チューブ側からテフロン(登録商標)テープなどで穴とチューブとの間のシーリングを行った。サンプリング用のチューブ先端を光触媒上に配置し、オゾンガス濃度測定装置に設置されている吸い込みポンプを運転させて、光触媒上のガスを吸込み、光触媒上のオゾン濃度を測定した。なお、吸込み流量は、当該オゾンガス濃度測定装置に設置されている流量計にて測定した流量が1L/分となるように設定した。
【0039】
臭気ガス測定方法1(エタノール)
臭気ガス(エタノール)の測定は、空気浄化装置をポリエチレン製グローブボックス(高さH=1000mm、幅W=1000mm、奥行D=1000mm、)の反応容器に設置して行った。
エタノール臭気除去試験では、反応容器内(大気:温度25℃、湿度60%)エタノール約200ppmを導入し、前述した脱臭装置構成にて所定時間ごとに反応器中のエタノール、酢酸、アルデヒド濃度を下部に設けられたサンプリングポートからガス検知管法にて測定した。
ガス検知管にはエタノール検出用に112L(株式会社ガステック社製、検出下限値5ppm)、ホルムアルデヒド測定用に91L(株式会社ガステック社製、検出下限値0.05ppm)、酢酸測定用に81L(株式会社ガステック社製、検出下限値0.05ppm)を用いた。
【0040】
臭気ガス測定方法2(メチルメルカプタン)
臭気ガス(メチルメルカプタン)の測定は、空気浄化装置をポリエチレン製グローブボックス(高さH=1000mm、幅W=1000mm、奥行D=1000mm、)の反応容器に設置して行った。
メチルメルカプタン臭気除去試験では、反応容器内(大気:温度25℃、湿度60%)メチルメルカプタン約10ppmを導入し、前述した脱臭装置構成にて所定時間ごとに反応器中のメチルメルカプタン濃度を下部に設けられたサンプリングポートからガス検知管法にて測定した。
ガス検知管にはメチルメルカプタン検出用に130U(光明理科工業株式会社製、検出下限値0.05ppm)を用いた。
【0041】
参照例1(エタノール)
本発明の空気浄化装置の効果を評価するため、空気浄化装置を使用しない場合の状態でのエタノール臭気ガスの変化を測定した。
上述した図2及び図3の空気浄化装置から光触媒装置、活性炭装置を取り外し、オゾンガス発生装置、紫外線発生装置を停止し、上述のグローブボックス内における所定時間毎の当該密閉容器中のエタノール、酢酸、アルデヒドの濃度を上記ガス検知管にて測定した。
測定結果を図4に示す。
図4のエタノール脱臭評価の結果より、壁面吸着によるエタノール濃度の減衰が認められる。
【0042】
参照例2(メチルメルカプタン)
本発明の空気浄化装置の効果を評価するため、空気浄化装置を使用しない場合の状態でのメチルメルカプタン臭気ガスの変化を測定した。
上述した図2及び図3の空気浄化装置から光触媒装置、活性炭装置を取り外し、オゾンガス発生装置、紫外線発生装置を停止し、上述のグローブボックス内における所定時間毎の当該密閉容器中のメチルメルカプタンの濃度を上記ガス検知管にて測定した。
測定結果を図11に示す。
図11のメチルメルカプタン脱臭評価の結果より、壁面吸着によるメチルメルカプタン濃度の減衰が認められる。
【0043】
次に、本発明の空気浄化装置を構成する主要な各装置の効果を評価するため、以下の比較例1〜4では、臭気ガスとして上記エタノール臭気ガス(約200ppm)を使用して、特定の構成素子装置を順次不作動状態として試験を行った。
比較例1
活性炭装置による効果を評価するため、上述した空気浄化装置から光触媒装置を取り外し、オゾンガス発生装置、紫外線発生装置を停止した。
測定結果を図5に示す。
図5のエタノール脱臭評価の結果より、エタノールの除去効率は低い。しかしながら、副生成物は認められない。この結果から、活性炭装置によるエタノールの物理吸着によりエタノールがわずかに脱臭されたことが理解される。
【0044】
比較例2
オゾンガス発生装置及び紫外線発生装置による効果を評価するため、上述した空気浄化装置から光触媒装置、活性炭装置を取り外し、オゾンガス発生装置、紫外線発生装置を作動させた。
測定結果を図6に示す。
図6のエタノール脱臭評価の結果より、エタノールの除去効率は実施例1及び比較例1〜4の中で最も低い。また、微弱であるがホルムアルデヒドの発生が確認された。また、比較例2において空気浄化装置内のオゾン濃度は0.4ppmであった。
【0045】
比較例3
光触媒装置及び紫外線発生装置による効果を評価するため、上述した空気浄化装置から活性炭装置を取り外し、オゾンガス発生装置を停止して、光触媒装置及び紫外線発生装置を作動させた。
測定結果を図7に示す。
図7のエタノール脱臭評価の結果より、4時間以上を経過するとエタノールの大部分を除去することが可能となっている。
しかしながら、副生成物としてホルムアルデヒドと酢酸が発生しており、実施例1及び比較例1〜4の中でも、ホルムアルデヒド発生量が最も多い。
【0046】
比較例4
オゾンガス発生装置、光触媒装置及び紫外線発生装置による効果を評価するため、上述した空気浄化装置から活性炭装置を取り外し、オゾンガス発生装置、紫外線発生装置及び光触媒装置を作動させた。
測定結果を図8に示す。
図8のエタノール脱臭評価の結果より、比較例1〜4の中では、実施例1と並んで最も高いエタノールの脱臭効率が観察される。また、副生成物はホルムアルデヒドと酢酸であるが、ホルムアルデヒドの発生量は低く、ほとんどが酢酸である。
なお、比較例4において空気浄化装置内の光触媒上でのオゾン濃度は5ppmであった。
【0047】
以上の比較例1〜4より、オゾン脱臭処理と光触媒処理とを個々独立に動作させた際(比較例2又は3)には、いずれの場合においてもエタノールの脱臭時に副生成物としてホルムアルデヒドが発生している。
ホルムアルデヒドはごく微量においても人体に悪影響を及ぼす物質であり、ホルムアルデヒドを空気浄化装置から排出することはきわめて重大な問題といえる。
【0048】
また、エタノールの酸化反応過程においては、エタノールはホルムアルデヒドを経て酢酸になることが知られており、オゾン、光触媒単独での脱臭過程では酢酸までエタノールが酸化されずにホルムアルデヒドで反応が停止しているといえる。特に光触媒のみで行う場合にはその傾向が顕著となっている。
一方、比較例4に示すように、オゾンが光触媒上に十分供給され、反応性の極めて高い活性種であるHOOO・、HOO・、HO・などが生成されている場合には、エタノールを酸化させることで酢酸まで酸化反応が進行している。
【0049】
次に、以下の比較例5では、臭気ガスとして上記メチルメルカプタン臭気ガス(約10ppm)を使用して、活性炭装置による試験を行った。
【0050】
比較例5
活性炭装置による効果を評価するため、上述した空気浄化装置から光触媒装置を取り外し、オゾンガス発生装置、紫外線発生装置を停止した。
測定結果を図12に示す。
図12のメチルメルカプタンの臭気評価の結果より、メチルメルカプタンの除去効率は低い。この結果から、活性炭装置によるメチルメルカプタンの物理吸着により、メチルメルカプタンがわずかに脱臭されたことが理解される。
【0051】
実施例1
本発明の空気浄化装置の効果を評価するため、臭気ガスとして上記エタノール臭気ガス(約200ppm)を適用して、上述した空気浄化装置(図2・図3)を用い、光触媒、オゾンガス発生装置、紫外線発生装置、活性炭装置を作動させた。
測定結果を図9に示す。
図9のエタノール脱臭評価の結果より、比較例1〜4及び参照例1と比べ、極めて高いエタノール脱臭性能を有することがわかる。
bまた副生成物は検出下限値以下であった。
このことからエタノールがオゾン雰囲気化の光触媒から発生したHOOO・、HOO・、HO・などにより酢酸にまで酸化され、後段に設けられた活性炭装置によって効率よく化学吸着されたことが確認できた。
なお、空気浄化装置内の光触媒上でのオゾン濃度は5ppmであった。
【0052】
実施例2〜18.比較例6及び7
本発明の空気浄化装置の効果を評価するため、臭気ガスとして上記エタノール臭気ガス(約200ppm)を適用して、上述した空気浄化装置(図2・図3)を用い、光触媒、オゾンガス発生装置、紫外線発生装置、活性炭装置を作動させ、その際に光触媒上のオゾン濃度を種々変化させて、該空気浄化装置作動5分後のエタノールの脱臭効果を測定した。
その結果を図10に示す。
【0053】
上記図10の結果より、光触媒上のオゾン濃度が0.05ppm以上となると、エタノールの脱臭効率が急激に良好となることが確認できた。
【0054】
実施例19
本発明の空気浄化装置の効果を評価するため、臭気ガスとして上記メチルメルカプタン臭気ガス(約10ppm)を適用して、上述した空気浄化装置(図2・図3)を用いて、光触媒、オゾンガス発生装置、紫外線発生装置、活性炭装置を作動させた。
測定結果を図13に示す。
図13のメチルメルカプタンの脱臭評価の結果より、比較例5及び参照例2と比べ、極めて高いメチルメルカプタン脱臭性能を有することがわかる。
このことからメチルメルカプタンがオゾン雰囲気下の光触媒から発生したHOOO・、HOO・OH・などにより、メタンスルフォン酸にまで酸化されて酸性ガス化したと考えられ、後段に設けられた活性炭装置によって効率よく化学吸着されたことが確認できた。
なお、空気浄化装置内の光触媒上でのオゾン濃度は0.1ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、硫化メチル、二硫化メチルやエタノール等の中性ガス成分を脱臭して浄化することに有効に適用することができ、工場、住居等の、種々の成分を複合的に含有する空気を清浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の空気浄化装置を構成する主要な要素を説明する図である。ただし、集塵フィルタは、必要に応じて付加される。
【図2】本発明の空気浄化装置の一例を示す正面を表す模式図である。
【図3】図2の本発明の空気浄化装置の側面を表す模式図である。
【図4】参照例1のエタノール脱臭評価の結果を示すグラフである。
【図5】比較例1のエタノール脱臭評価の結果を示すグラフである。
【図6】比較例2のエタノール脱臭評価の結果を示すグラフである。
【図7】比較例3のエタノール脱臭評価の結果を示すグラフである。
【図8】比較例4のエタノール脱臭評価の結果を示すグラフである。
【図9】実施例1のエタノール脱臭評価の結果を示すグラフである。
【図10】実施例2〜8及び比較例6及び7のエタノール脱臭評価の結果を示すグラフである。
【図11】参照例2のメチルメルカプタン脱臭評価の結果を示すグラフである。
【図12】比較例5のメチルメルカプタン脱臭評価の結果を示すグラフである。
【図13】実施例19のメチルメルカプタン脱臭評価の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1 空気浄化装置
2 被処理空気取り入れ口
3 オゾンガス発生装置
4 光触媒装置
5 紫外線発生装置
6 活性炭装置
10 ハウジング
A 被処理空気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒に紫外線を照射するとともに、光触媒上でオゾンガスが濃度0.05ppm以上となるようにして、当該光触媒上で被処理空気をオゾンガスと接触させ、次いで、該被処理空気を活性炭に接触させることを特徴とする、空気浄化方法。
【請求項2】
請求項1記載の空気浄化方法において、光触媒上のオゾンガス濃度を、0.1〜100ppmとなるようにすることを特徴とする、空気浄化方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の空気浄化方法において、該光触媒上で被処理空気とオゾンガスとを接触させた後、活性炭に接触させる前に、更に被処理空気に紫外線を照射することを特徴とする、空気浄化方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかの項記載の空気浄化方法において、上記活性炭は、酸性ガス吸着用活性炭であることを特徴とする、空気浄化方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかの項記載の空気浄化方法において、光触媒上で被処理空気とオゾンガスとを接触させる前に、被処理空気中の集塵を除去することを特徴とする、空気浄化方法。
【請求項6】
被処理空気の流路の上流から下流に向けて、オゾンガス発生装置、光触媒装置、紫外線発生装置、活性炭装置を備え、当該オゾンガス発生装置から発生されるオゾンガス濃度が該光触媒上で0.05ppm以上の濃度となる程度に該オゾンガス発生装置を光触媒装置の近傍に配置し、該光触媒装置には光触媒を担持させた少なくとも1層の光触媒フィルタが設置され、該紫外線発生装置は当該装置から発生した紫外線が前記光触媒装置中の光触媒フィルタを被処理空気の流路の下流側から照射するとともに、当該光触媒装置を透過した被処理空気に紫外線が照射されるように紫外線装置を配置し、また該活性炭装置を被処理空気の流路の最下流に配置したことを特徴とする、空気浄化装置。
【請求項7】
請求項6記載の空気浄化装置において、前記オゾンガス発生装置から発生されるオゾンガス濃度が該光触媒上で0.1〜100ppmの濃度となる程度に該オゾンガス発生装置を光触媒装置の近傍に配置することを特徴とする、空気浄化装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の空気浄化装置において、オゾンガス発生装置よりも被処理空気の流路の上流側に、更に集塵除去装置を設置することを特徴とする、空気浄化装置。
【請求項9】
請求項6〜8いずれかの項記載の空気浄化装置において、前記オゾンガス発生装置、光触媒装置、紫外線発生装置及び活性炭装置を、ハウジング内に収容してなることを特徴とする、空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−173632(P2008−173632A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330058(P2007−330058)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000120401)荏原実業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】