説明

空気浄化装置

【課題】酸化触媒により浄化を行う空気浄化装置において、従来よりも低温処理を可能にする。
【解決手段】本発明による空気浄化装置は、酸化チタンを主成分とする材料をアルカリ性水溶液中で水熱処理して得られる繊維形状の酸化チタンが密集して形成された不織布状担体に、触媒物質を担持させてなる酸化触媒6と、この酸化触媒6を加熱するためのヒータ5と、浄化対象の空気を取り入れる取入口1から酸化触媒6を経由し、浄化後の空気を排出する排出口8へ至る空気通路9と、を含んだ構成とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化触媒により空気の浄化を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研究室や実験室、あるいは喫煙室の換気用に、特許文献1にあるような、酸化触媒を用いてVOC等を浄化する空気浄化装置が使用されている。この空気浄化装置は、換気する空気を酸化触媒に通して一酸化炭素やホルムアルデヒド等の浄化対象物質を酸化することにより、浄化を行う機能をもつ。通常、その酸化触媒を活性化させるために、酸化触媒の上流側に電気ヒータを備えて200〜300℃ほどの高温とする仕組みを備えている(特許文献1の段落0006,0026)。いまのところ、200℃未満の温度では酸化触媒の活性が低く、十分な浄化能力を得られるに至らないことが知られている。
【特許文献1】特開2004−163055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、酸化触媒により浄化を行う従来の空気浄化装置は、その触媒活性化のために200℃以上の温度を要するので、その加熱のために運転コストがかかるという改善点がある。また、喫煙室の換気など、浄化後の空気を室内へ戻す循環型の空気浄化装置においては、加熱−浄化後の空気を冷却する必要があり、その冷却のためにさらに運転コストがかさむという改善点もある。
【0004】
本発明は、このような技術背景に鑑みたもので、従来よりも低温処理を可能とした空気浄化装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による空気浄化装置は、酸化チタンを主成分とする材料をアルカリ性水溶液中で水熱処理して得られる繊維形状の酸化チタンが密集して形成された不織布状担体に、触媒物質を担持させてなる酸化触媒と、この酸化触媒を加熱するためのヒータと、浄化対象の空気を取り入れる取入口から前記酸化触媒を経由し、浄化後の空気を排出する排出口へ至る空気通路と、を含んだ構成とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の空気浄化装置によれば、上記製法によって、繊維形状酸化チタンが密集して形成される不織布状担体を、酸化触媒に使用している。この繊維形状酸化チタン密集型の不織布状担体は、従来品では得られなかった大きな比表面積(BET)を備えており、これに触媒物質を担持させた酸化触媒は、接触面積が格段に拡がるので、酸化能力に優れている。その結果、従来の200〜300℃で活性化させた酸化触媒と同等の性能を、100℃以下の温度でも発揮する。したがって、空気浄化装置において触媒活性化のためにかかる加熱及び冷却に起因した運転コストを低減することが可能となり、装置の普及などに大きく貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に、本発明に係る空気浄化装置の実施形態について概略を示している。
【0008】
当空気浄化装置は、喫煙室の換気用に備えられたものを例として示してあり、空気中の一酸化炭素の浄化を目的としている。そのために、浄化対象の空気を取り入れるための取入口1が喫煙室に開口しており、当該取入口1から、フィルタ2、ファン3、熱交換器4(加熱)、ヒータ5、酸化触媒6、熱交換器4(冷却)、冷却器7を経て、浄化後の空気を喫煙室内へ排出する排出口8へ至るダクト等の空気通路9(矢印で示す)が形成されている。
【0009】
フィルタ2は、空気中の埃等を除去するために設けられており、当該フィルタ2の下流側に、喫煙室から空気を取り入れ、空気通路9において取入口1から排出口8へ向かう空気流を発生させるファン3が設けられている。すなわち、ファン3により、喫煙室から空気を取り入れて浄化後に戻す換気の循環流を自己生成する方式である。
【0010】
ファン3を経た空気は、熱交換器4において、酸化触媒6により浄化された後の空気がもつ熱を利用して予備加熱される。そして、熱交換器4を経た空気が、ヒータ5により90〜100℃程度(場合によっては90°以下もあり得る)に加熱された後、酸化触媒6へ送られる。本例のヒータ5は、酸化触媒6よりも上流側の空気通路9において空気を加熱して送り込むことにより、酸化触媒6を活性温度へ加熱する方式のものであるが、酸化触媒6を直接ヒートアップする方式とすることもできる。ただし、酸化触媒6の全体をできるだけ均一に加熱するには、本例の方式の方が優れていると言える。
【0011】
酸化触媒6は、酸化チタンを主成分とする材料をアルカリ性水溶液中で水熱処理して得られる繊維形状の酸化チタンが密集(凝集)して形成された不織布状(スポンジ状とも言える)担体に、触媒物質を担持させた構造である。このような不織布状担体は、本出願人による国際特許出願であるPCT/JP2005/22761に詳しい。当該技術を応用し、比表面積(BET)が1000m/gにも達する酸化チタンの不織布状担体を得ることができる。この不織布状担体を構成する酸化チタンの繊維は、ほぼ、直径が2〜100nm、軸方向長さが50nm〜10μmである。酸化チタンを主成分とする材料としては、主成分の酸化チタンの他に、シリカゲルやゼオライトなど微細孔をもつ多孔質物質を含ませたものを使用することも可能である。
【0012】
具体的製法として例をあげると、粉末状、あるいはゾル・ゲル状の酸化チタン含有材料を、濃度5〜25モル/kgのアルカリ性水溶液に入れて攪拌し、容器密閉後、乾燥器内において70〜150℃の温度で1〜30時間加熱する。この水熱処理後の生成物をイオン交換水で水洗し、希塩酸で中和して余剰アルカリ分を除去した後、遠心分離器で固形分を取り出して乾燥させると、繊維形状の酸化チタンが密集して形成された不織布状のものが得られる。このときのアルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウムを用いるとおおよそチューブ(中空)形の繊維形状となった酸化チタンが得られ、水酸化カリウムを用いるとおおよそワイヤ(中実)形の繊維形状となった酸化チタンが得られる。
【0013】
このようにして得られた不織布状担体に、触媒物質として、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Ag、Mn、Cu、Ni、Co、Cr、及びこれらの酸化物のいずれか又はそれらの組み合わせを担持させると、接触面積の広い酸化触媒6を得ることができる。このような酸化触媒6を通過することにより、空気中の一酸化炭素が酸化されて二酸化炭素となり、浄化が行われる。もちろん、ホルムアルデヒド等のVOC浄化にも有効である。
【0014】
酸化触媒6を経た空気は、熱交換器4において予備冷却される。すなわち、ヒータ5により加熱された下流側の空気の熱を、ヒータ5よりも上流側の空気の加熱に利用することによって、冷却器7へ入る前の空気の温度を予め下げておくことができる。当該予備冷却された空気は、下流側の冷却器7で冷却された後、排出口8を通して喫煙室内へ排出される。冷却器7としては、冷水等の冷媒を中に流す冷却コイルが使用される。
【0015】
以上の空気浄化装置によれば、繊維形状酸化チタンが密集して形成された不織布状担体による酸化触媒6を使用したことで、従来品では得られなかった大きな比表面積を備えて接触面積が格段に拡がり、酸化能力に優れる結果、従来の200〜300℃で活性化させた酸化触媒と同等の性能を、100℃以下の温度でも発揮することができる。したがって、触媒活性温度に係るヒータ5及び冷却器7に起因した運転コストを低減することが可能である。
【0016】
上記のような換気用の空気浄化装置の他、室内型水加熱器(給湯器)の排気管において一酸化炭素を浄化するための空気浄化装置として、酸化触媒6を利用することもできる。すなわち、上記製法同様にして、酸化チタンを主成分とする材料をアルカリ性水溶液中で水熱処理して得られる繊維形状の酸化チタンが密集して形成された不織布状担体に、触媒物質を担持させてなる酸化触媒6を、水加熱器10の排気通路11中に配設する構成である(図2)。
【0017】
この場合、水加熱器10の排気が90℃以上の温度を有しているので、ヒータ等を設けて排気を加熱したりする必要はなく、シンプルな構造の空気浄化装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る空気浄化装置の実施形態を示す概略図。
【図2】本発明に係る空気浄化装置の応用例を示す概略図。
【符号の説明】
【0019】
1 取入口
2 フィルタ
3 ファン
4 熱交換器
5 ヒータ
6 酸化触媒
7 冷却器
8 排出口
9 空気通路
10 水加熱器
11 排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンを主成分とする材料をアルカリ性水溶液中で水熱処理して得られる繊維形状の酸化チタンが密集して形成された不織布状担体に、触媒物質を担持させてなる酸化触媒と、
該酸化触媒を加熱するためのヒータと、
浄化対象の空気を取り入れる取入口から前記酸化触媒を経由し、浄化後の空気を排出する排出口へ至る空気通路と、
を含んで構成されることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
前記空気通路において前記取入口から前記排出口へ向かう空気流を発生させるファンをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記ヒータは、前記酸化触媒よりも上流側の前記空気通路において空気を加熱することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記酸化触媒よりも下流側の前記空気通路における空気の熱を利用して、前記ヒータよりも上流側の前記空気通路における空気を加熱する熱交換器をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記熱交換器よりも下流側の前記空気通路における空気を冷却する冷却器をさらに含むことを特徴とする請求項4記載の空気浄化装置。
【請求項6】
酸化チタンを主成分とする材料をアルカリ性水溶液中で水熱処理して得られる繊維形状の酸化チタンが密集して形成された不織布状担体に、触媒物質を担持させてなる酸化触媒を、水加熱器の排気通路中に配設したことを特徴とする空気浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−279112(P2008−279112A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126698(P2007−126698)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(599073490)株式会社アースクリーン東北 (25)
【Fターム(参考)】