説明

空気清浄フィルタ及びそれを具備する空気処理装置

【課題】 部品点数を抑えつつ,集塵,脱臭及び抗菌の各フィルタをそれらの分別回収が容易な構成で一体化した空気清浄フィルタを構成すること。
【解決手段】 集塵フィルタ2の周囲にその集塵フィルタの背面2aから脱臭フィルタ3の厚み以上の高さで突出した枠体5を設け,前記集塵フィルタの背面2a側の前記枠体5内に脱臭フィルタ3が収容された状態で,その収容部を塞ぐように抗菌フィルタ4が枠体5に接着されることにより,集塵フィルタ2と脱臭フィルタ3と抗菌フィルタ4との三層構造を有する一体の空気清浄フィルタXとして構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,集塵フィルタと脱臭フィルタと抗菌フィルタとの三層構造を有する空気清浄フィルタ及びそれを具備する空気処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,いわゆるエアコン(冷房機,暖房機或いは冷暖房機等)や空気清浄機等の空気処理装置では,集塵フィルタと脱臭フィルタと抗菌フィルタとの三層構造を有する空気清浄フィルタを備えたものがある。
このような空気清浄フィルタは,集塵,脱臭及び抗菌の各フィルタに,その各々を支持する枠状或いは格子状の骨格部材が設けられ,その各フィルタが接着剤で接着される,或いはその各フィルタが他の収納枠内に収納されること等により,一体の組品として構成される。
例えば,特許文献1〜3には,集塵フィルタ,脱臭フィルタ及び抗菌フィルタの各フィルタが重ね合わされた状態で接着剤で接着され,これにより一体に構成されている。これにより,空気清浄フィルタは,一体として取り扱うことができるので,空気処理装置への取り付け作業が容易となる。
一方,昨今,電化製品等を構成する部品のリサイクルが強く要請されており,空気清浄フィルタについてもその例外ではない。
【特許文献1】特開2002−95914号公報
【特許文献2】特開2002−95915号公報
【特許文献3】特開2002−95916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,特許文献1〜3に示されるように,集塵,脱臭及び抗菌の各フィルタが接着されて一体化された従来の空気清浄フィルタは,接着部分が多いため,その廃棄時に各フィルタを分別回収することが困難であるという問題点があった。また,各フィルタを収納する別個の収納枠を設けた場合,その収納枠が新たな廃棄物となる(部品点数が増える)ためリサイクル性の観点からは好ましくないという問題点があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,部品点数を抑えつつ,集塵,脱臭及び抗菌の各フィルタをそれらの分別回収が容易な構成で一体化した空気清浄フィルタ及びそれを具備する空気処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明は,複数のフィルタが空気の通過方向に重ねて配列されて複数層構造を有する空気清浄フィルタを構成する場合に,それら複数のフィルタの周囲に枠体を設け,前記空気の通過方向に対する入口側及び出口側の各々に位置する前記フィルタが,前記枠体における前記空気の通過方向に対する入口側及び出口側各々を塞ぐように前記枠体に取り付けられた構成を有するものである。
これにより,前記枠体から,空気の通過方向に対する入口側又は出口側のいずれかに取り付けられたフィルタを取り外すだけで,前記複数のフィルタ各々を分離できるので,分別回収が容易となる。
より具体的には,例えば,前記複数のフィルタが,集塵フィルタと脱臭フィルタと抗菌フィルタとからなる場合に,前記枠体が,前記集塵フィルタの周囲に該集塵フィルタの一方の面(例えば,前記空気の通過方向に対する下流側の面)から前記脱臭フィルタの厚み以上の高さで突出して設けられ,前記集塵フィルタの前記背面側の前記枠体内に前記脱臭フィルタが収容された状態でその収容部を塞ぐように前記抗菌フィルタが前記枠体に取り付けられた構成を有するものが考えられる。
これにより,前記枠体から前記抗菌フィルタを取り外すだけで,集塵,脱臭及び抗菌の各フィルタを分離できるので,それらの分別回収が容易となる。しかも,従来から前記集塵フィルタの周囲に設けられている枠体の奥行き寸法(背面からの高さ)を前記脱臭フィルタの厚み(奥行き寸法)分だけ伸ばすのみで,特に部品点数は増えない。
また,前記脱臭フィルタが前記集塵フィルタと前記枠体と前記抗菌フィルタとにより囲まれた(収容された)構成となるので,前記脱臭フィルタに担持されるカーボン等の粉粒体が飛散することもない。
ここで,前記抗菌フィルタの前記枠体への取り付け構造としては,前記枠体に対して前記抗菌フィルタの縁部が接着剤等により接着された構成が考えられる。
また,各フィルタの具体的構成として,例えば,前記集塵フィルタとして,シート状の濾材がプリーツ折りされた静電フィルタを用いることが,前記脱臭フィルタとして,カーボン成分が担持された発泡部材からなるものを用いることが,前記抗菌フィルタとして,抗菌性を有する不織布を用いることが各々考えられる。同様に,前記枠体として不織布を用いることが考えられる。また,前記枠体と前記集塵フィルタとを同種の材質で構成すれば,それらを分別(分解)する必要がなく好適である。もちろん,前記枠体に対して前記集塵フィルタの縁部が接着剤等により接着された構成であれば,それらの材質が異なっていても,接着部を剥がして分別(分解)することが容易である。
以上のような空気清浄フィルタは,吸入した空気を該空気清浄フィルタに対し前記集塵フィルタ側から通過させた後に排出する空気処理装置に設けられる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば,部品点数を抑えつつ,集塵,脱臭及び抗菌の各フィルタをそれらの分別回収が容易な構成で一体化した空気清浄フィルタ及びそれを具備する空気処理装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る空気清浄フィルタXの三面図及び部分拡大図,図2は空気清浄フィルタXの斜視図,図3は空気清浄フィルタXを備えた空気処理装置Yの斜視図,図4は空気処理装置Yの断面図である。
【0007】
まず,図1の三面図及び部分拡大図を用いて本発明の実施形態に係る空気清浄フィルタXについて説明する。ここで,図1(a)は空気清浄フィルタXの正面図,図1(b)は同平面図,図1(c)は同側面図(一部断面図),図1(d)は同断面図の一部を拡大した図である。
図1に示すように,空気清浄フィルタXは,集塵フィルタ2と脱臭フィルタ3と抗菌フィルタ4(制菌フィルタともいう)とが重ね合わされた三層構造を有している。
空気中の微細な塵埃を除去する前記集塵フィルタ2は,帯電繊維からなるシート状の不織布濾材がプリーツ折りされた構造を有する静電エアフィルタ(Elitolon)である(図1(c))。この静電エアフィルターは,ポリマーエレクトレットを応用したものであり,大気中の微粒子をフィルターの静電気力により捕集するものであり,大気中のサブミクロン微粒子を捕集するのに適している。その材質として,永久に帯電した状態となる高分子誘電体が用いられており,その静電気力は永久に維持される。
また,前記集塵フィルタ2は,その前面2a側において,プリーツ折された前記集塵フィルタ2のピッチ形状維持のためにホットメルト接着がなされている。図1において,格子状に形成された部分6が,固まったホットメルト接着材により形成されたホットメルト接着部である。このようなプリーツ折り構造を有することにより,空気の通過抵抗(圧力損失)を小さく抑えつつ,前記集塵フィルタ2の表面積を広く確保し,集塵性能の向上が図られている。
さらに,前記集塵フィルタ2の周囲には,プリーツ折りされた前記不織布濾材の形状維持のため,不織布等からなる枠体5が設けられている。
前記集塵フィルタ2は,前記ホットメルト接着部6と前記枠体5とにより,プリーツ折りされた状態が保持されている。
また,前記枠体5には,複数箇所(図1では2箇所)に帯状の薄い不織布からなる取手部7が設けられており,当該空気清浄フィルタXの取り扱い,例えば,当該空気清浄フィルタXをそれが組み込まれた空気処理装置から引っ張り出すこと等が容易な構成を有している。ここで,前記取手部7は,前記集塵フィルタ2と同じ材質で構成されているため,廃棄時に分解(分別)する必要はない。
【0008】
前記枠体5は,パルプ等の植物繊維やナイロン等の合成繊維等により構成される不織布や紙材等からなり,前記集塵フィルタ2の周囲に,前記集塵フィルタ2の背面2bから前記脱臭フィルタ3の厚みD(奥行き寸法)以上の高さで突出して設けられている。即ち,前記集塵フィルタ2の背面2bにおいて,該集塵フィルタ2の周囲を囲う塀状に前記枠体5が形成されている。前記枠体5は,前記集塵フィルタ2の周囲の端部(縁部)に接着材等により接着されている。
ここで,前記枠体5の材質を,前記集塵フィルタ2と同一またはグレードの異なる集塵フィルタ材料(同種の材質の一例)とすることにより,前記枠体5と前記集塵フィルタ2とを分別(分解)する必要がなく好適である。もちろん,前記枠体5の材質を,前記集塵フィルタ2の材質と異なる材質(例えば,紙材)としても,前記集塵フィルタ2の端面に対して接着されているだけであるので,それらの分別(分解)は容易である。
空気の臭気を除去する前記脱臭フィルタ3は,カーボン成分が担持された発泡部材からなり,前記集塵フィルタ2の背面2b側の前記枠体5内に収容されている。
さらに,空気中のかび菌等を除去する前記抗菌フィルタ4は,前記脱臭フィルタ3が前記集塵フィルタ2の背面2b側の前記枠体5内に収容された状態で,その収容部を塞ぐように前記枠体5に取り付けられている。ここでは,前記抗菌フィルタ4の縁部4aが,前記枠体5に接着剤で接着されることにより取り付けられている。この他,ホッチキス止め等,他の取り付け形態を採用することも考えられる。
前記抗菌フィルタ4は,抗菌処理が施された(抗菌性を有する)不織布からなり,その縁部4aが前記枠体5に接着されることにより,平面状の形状が保持されている。この他,前記抗菌フィルタ4としては,細かい目のネット状のフィルタ等を用いることも考えられる。
また,前記脱臭フィルタ3も,前記集塵フィルタ2と前記抗菌フィルタ4との間に挟まれるとともに,その周囲が前記枠体5で取り囲まれることにより,平面状の形状が保持されている。
図2に,図1に示した前記空気清浄フィルタXの斜視図(一部,透視図)を示す。図2において,白抜き矢印は,前記空気清浄フィルタXに対する空気の通過方向を表す。
【0009】
以上示した構造により,前記空気清浄フィルタXは,集塵,脱臭及び抗菌の各フィルタ2,3,4が一体化された組品として構成され,空気処理装置への組み付け等の取り扱いが容易である。また,前記抗菌フィルタ4を前記枠体5から取り外すだけで,集塵,脱臭及び抗菌の各フィルタ2,3,4を分離できるので,それらの分別回収が容易となる。さらに,前記係止部7により前記集塵フィルタ2を前記枠体5に保持する構造により,前記枠体5と前記集塵フィルタ2とを容易に分離できるので,より分別性が高まる。しかも,従来から前記集塵フィルタ2の周囲に設けられている枠体の奥行き寸法(背面2bからの高さ)を前記脱臭フィルタ3の厚みD(奥行き寸法)分だけ伸ばすのみで,特に部品点数は増えない。
また,前記脱臭フィルタ3が,前記集塵フィルタ2と前記枠体5と前記抗菌フィルタ4とにより囲まれた(収容された)構成となるので,前記脱臭フィルタ3に担持されるカーボン等の粉粒体が飛散することがない。
また,各フィルタ2,3,4が,それらの空気通過面において空気抵抗となるホットメルト接着部等によって接着されていないので,空気抵抗の小さい空気清浄フィルタを構成できる。これにより,当該空気清浄フィルタXに空気を通過させるための送風機の定格能力及び消費電力を抑えることができる。
【0010】
次に,図3に示す斜視図(一部透視図)及び図4に示す断面図を用いて,前記空気清浄フィルタXが組み込まれた空気処理装置Yについて説明する。
空気処理装置Yは,当該装置Yが設置された室内から吸い込んだ空気を前記空気清浄フィルタXに通過させて清浄化するとともに,その空気を冷却或いは昇温して排出する(室内へ戻す)エアコン(空気処理装置の一例)である。
空気処理装置Yは,空気を強制的に吸い込んで排出する送風機13と,空気中の大きめの埃や塵を除去するプレエアフィルタ15と,空気中の微細な塵埃,臭気,かび菌等を除去する前記空気清浄フィルタXと,空気を冷却若しくは昇温し,或いは空気の湿度調節する熱交換器16とを具備している。
前記空気処理装置Yでは,前記送風機13により,吸込口14から前記プレエアフィルタ15を通じて吸い込まれた空気は,前記空気清浄フィルタXを通過し,さらに前記熱交換器16を通過した後,吹出口17を通じて装置外へ排出される。前記プレエアフィルタ15を通じて吸い込まれた(吸入された)空気は,前記空気清浄フィルタXに対し前記集塵フィルタ2側(図4における下側)から通過した後に前記吹出口17を通じて排出される。
これにより,当該空気処理装置Yが設置された室内において,空気中の塵埃,臭気及びかび菌等が除去(ろ過)されるとともに,空気の温度や湿度が調節される。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は,空気処理装置に用いられる空気清浄フィルタへの利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る空気清浄フィルタXの三面図及び部分拡大図。
【図2】空気清浄フィルタXの斜視図。
【図3】空気清浄フィルタXを備えた空気処理装置Yの斜視図。
【図4】空気処理装置Yの断面図。
【符号の説明】
【0013】
X…空気清浄フィルタ
Y…空気処理装置
2…集塵フィルタ
3…脱臭フィルタ
4…抗菌フィルタ
5…枠体
6…ホットメルト接着部
7…取手部
13…送風機
14…吸込口
15…プレエアフィルタ
16…熱交換器
17…吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィルタが空気の通過方向に重ねて配列されて複数層構造を有する空気清浄フィルタであって,
前記複数のフィルタの周囲に枠体を備え,前記空気の通過方向に対する入口側及び出口側の各々に位置する前記フィルタが,前記枠体における前記空気の通過方向に対する入口側及び出口側各々を塞ぐように前記枠体に取り付けられてなることを特徴とする空気清浄フィルタ。
【請求項2】
前記複数のフィルタが,集塵フィルタと脱臭フィルタと抗菌フィルタとからなる請求項1に記載の空気清浄フィルタ。
【請求項3】
前記枠体が,前記集塵フィルタの周囲に該集塵フィルタの一方の面から前記脱臭フィルタの厚み以上の高さで突出して設けられ,前記集塵フィルタの前記背面側の前記枠体内に前記脱臭フィルタが収容された状態でその収容部を塞ぐように前記抗菌フィルタが前記枠体に取り付けられてなる請求項2に記載の空気清浄フィルタ。
【請求項4】
前記抗菌フィルタが,前記枠体にその縁部が接着されて取り付けられてなる請求項3に記載の空気清浄フィルタ。
【請求項5】
前記集塵フィルタが,プリーツ折りされたシート状の濾材を備えた静電フィルタである請求項2〜4のいずれかに記載の空気清浄フィルタ。
【請求項6】
前記脱臭フィルタが,カーボン成分が担持された発泡部材からなる請求項2〜5のいずれかに記載の空気清浄フィルタ。
【請求項7】
前記抗菌フィルタが,抗菌性を有する不織布からなる請求項2〜6のいずれかに記載の空気清浄フィルタ。
【請求項8】
前記枠体と前記集塵フィルタとが同種の材質からなる請求項2〜7のいずれかに記載の空気清浄フィルタ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の空気清浄フィルタを具備し,吸入した空気を前記空気清浄フィルタに対して通過させた後に排出してなることを特徴とする空気処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−57900(P2006−57900A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239320(P2004−239320)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】