説明

空気溜まり袋付き計量容器

【課題】ポンプの流量の計量に伴う計量容器内外への空気の出入りを、大気から完全に遮断された状態で行うことができ、大気中の細菌のみならず、より微小なウィルス等の混入をも防ぐことができるような計量容器を提供する。
【解決手段】液体移送用のポンプの流量を計量するために使用される、上端と下端とにそれぞれチューブを接続するための開口部11、13が設けられた筒状の計量容器3と、少なくとも計量容器3と同じ容量を持ち、計量容器3の上端の開口部11に接続したチューブ7を介して、計量容器3の内部と連通するよう計量容器3と接続された軟質の袋からなる空気溜まり袋5とを具備した空気溜まり袋付き計量容器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置等において液体移送手段として用いられるポンプの流量を計量するための計量容器に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブを通じて液体を移送するための液体移送手段として、ポンプが広く使用されている。例えば、特許文献1、2に示すような血液浄化装置においては、透析液、補液(透析やろ過により患者の血液中から除去された電解質などの体液成分を補給するための液体)、ろ液(廃液)の移送に、それぞれポンプが用いられている。この血液浄化装置における透析液、補液、ろ液の移送のように、厳密な流量管理の下で液体の移送を行う場合には、ポンプの流量を所定時間毎に計量し、その実測の流量値と、予め設定した流量値との誤差が所定範囲内に収まるようポンプの出力(回転数)をフィードバック制御する必要がある。
【0003】
一般に、ポンプの流量の計量には、超音波流量計、重量計、容量計、回転計等が用いられるが、比較的低流量の計量においては、主に、重量計方式や容量計方式が使用される。これら重量計方式や容量計方式の流量の計量は、所定の容量を持った計量容器を用いて行われる。特許文献1、2に示すように、液体移送用のポンプの流量を計量するために使用される計量容器は、上端と下端とにそれぞれチューブを接続するための開口部が設けられた筒状の容器であり、下端側の開口部に接続されたチューブを通じて、計量容器内外への液体の出入りが行われ、上端側の開口部に接続されたチューブ部を通じて、前記液体の出入りに伴う計量容器内外への空気の出入りが行われる。
【0004】
具体的な計量方法としては、まず、所定の容量を持つ計量容器内を液体で満たした状態としてから、計量容器の下端側の開口部に接続されたチューブ上に配置されたポンプを駆動させて、計量容器内の液体を吸引させ、計量容器内の液体がすべて排出されるまでに要する時間を測定し、当該時間と計量容器の容量とからポンプの流量を算出する。あるいは、まず、所定の容量を持つ計量容器内を空の状態とし、計量容器の下端側の開口部に接続されたチューブ上に配置されたポンプを駆動させて、計量容器内へ液体を送り込み、計量容器内が液体で満たされるまでに要する時間を測定し、当該時間と計量容器の容量とからポンプの流量を算出する。
【0005】
このような計量容器を用いたポンプの流量の計量においては、計量容器内に液体が送り込まれた際には、計量容器内の空気が、計量容器の上端側の開口部に接続されたチューブを通じて容器外(大気中)に排出され、また、計量容器内から液体が排出される際には、計量容器の上端側の開口部に接続されたチューブを通じて、大気中から計量容器内に空気が取り込まれることになり、計量容器内外の空気の出入りが生じる。
【0006】
そこで、従来、血液浄化装置等の医療用途に用いるポンプの流量を計量する際には、計量容器の上端側の開口部に接続されたチューブに、細菌を遮断可能な保護フィルタ(除菌用フィルタ)を取り付け、計量容器内外の空気の出入りによって、大気中の細菌が計量容器内に混入し、液体が汚染されるのを防止している。しかしながら、除菌用フィルタは、細菌は遮断できても、より微小なウィルス等は通過してしまうため、ウィルス感染等を引き起こす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−191889号公報
【特許文献2】特開平11−276578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ポンプの流量の計量に伴う計量容器内外への空気の出入りを、大気から完全に遮断された状態で行うことができ、大気中の細菌のみならず、より微小なウィルス等の混入をも防ぐことができるような計量容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の空気溜まり袋付き計量容器が提供される。
【0010】
[1] 液体移送用のポンプの流量を計量するために使用される、上端と下端とにそれぞれチューブを接続するための開口部が設けられた筒状の計量容器と、少なくとも前記計量容器と同じ容量を持ち、前記計量容器の上端の開口部に接続したチューブを介して、前記計量容器の内部と連通するよう前記計量容器と接続された軟質の袋からなる空気溜まり袋とを具備した空気溜まり袋付き計量容器。
【0011】
[2] 前記計量容器の上端に接続されたチューブの一部分であって、前記計量容器の上端の開口部に接続されていない方の端部を含む部分が、前記空気溜まり袋の内部にまで延出しているとともに、その延出したチューブの一部分の周面に当該チューブの内部と外部とを連通する貫通孔が穿設されている[1]に記載の空気溜まり袋付き計量容器。
【発明の効果】
【0012】
ポンプの流量の計量に、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を用いれば、計量に伴う計量容器の内外への空気の出入りが、大気から遮断された空気溜まり袋との間でのみ行われるので、大気中の細菌のみならず、より微小なウィルス等の混入も防ぐことができ、液体を汚染させることなく計量を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の空気溜まり袋付き計量容器の実施形態の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の空気溜まり袋付き計量容器の実施形態の他の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の空気溜まり袋付き計量容器を用いた血液浄化装置の概略図である。
【図4】血液浄化装置において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を、透析液(又は補液)の移送に用いるポンプの流量の計量に使用した場合の計量方法を示す説明図である。
【図5】血液浄化装置において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を、透析液(又は補液)の移送に用いるポンプの流量の計量に使用した場合の計量方法を示す説明図である。
【図6】血液浄化装置において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を、透析液(又は補液)の移送に用いるポンプの流量の計量に使用した場合の計量方法を示す説明図である。
【図7】血液浄化装置において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を、ろ液の移送に用いるポンプの流量の計量に使用した場合の計量方法を示す説明図である。
【図8】血液浄化装置において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を、ろ液の移送に用いるポンプの流量の計量に使用した場合の計量方法を示す説明図である。
【図9】血液浄化装置において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を、ろ液の移送に用いるポンプの流量の計量に使用した場合の計量方法を示す説明図である。
【図10】血液浄化装置において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を、ろ液の移送に用いるポンプの流量の計量に使用した場合の計量方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0015】
図1は、本発明の空気溜まり袋付き計量容器の実施形態の一例を示す概略図である。本発明の空気溜まり袋付き計量容器1は、液体移送用のポンプの流量を計量するために使用されるものであり、計量容器3と空気溜まり袋5とを具備する。
【0016】
計量容器3は、筒状を呈しており、その上端と下端とにそれぞれチューブを接続するための開口部11、13が設けられている。この計量容器3の材質としては、ポンプによる移送の対象となる液体と容易に反応したり、当該液体により腐食したりするものでなければ特に制限は無く、例えば、ポリメチルメタアクリレート等のポリアクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン系樹脂等のプラスチックを好適に用いることができる。計量容器の作製方法としては、例えば、前記プラスチックを原料に用いた射出成型、ブロー成型等の従来公知の成型方法が好適な作製方法として挙げられる。
【0017】
計量容器3の容量(内容積)は特に限定はされないが、容量が小さすぎると精度良く計量することが難しくなり、また、容量が大きすぎると計量に要する時間が長くなるので、0.1〜60cmとすることが好ましく、1〜50cmとすることがより好ましい。
【0018】
空気溜まり袋5は、計量容器3の上端の開口部11に接続したチューブ7を介して、計量容器3の内部と連通するよう計量容器3と接続されている。この空気溜まり袋5は、ポンプの流量を測定する過程において、計量容器3内に液体が無く、計量容器3内が空気で満たされている時は、扁平にしぼんだ状態となり、計量容器3内が液体で満たされた時は、元々計量容器3内に有った空気が入り込んで膨らんだ状態となるような軟質の袋からなる。
【0019】
空気溜まり袋5の材質や厚さは特に制限はされないが、強度、柔軟性、成形性等を考慮すると、ポリメチルメタアクリレート等のポリアクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル等のポリハロゲン化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン系樹脂等を、厚さ0.01〜1mm程度に成型したものが好ましく、厚さ0.1〜0.8mm程度に成型したものがより好ましい。厚さが0.01mm未満では強度が不十分となる場合があり、厚さが1mmを超えると柔軟性が損なわれる場合がある。
【0020】
空気溜まり袋5は、ポンプの流量を計量するに際して、計量容器3の下端の開口部13に接続されたチューブを通じて、計量容器3内に液体が流入してきた時に、元々計量容器3内に存在していた空気を受け入れて貯留するためのものであるので、少なくとも計量容器3と同じ容量を持つことを要する。
【0021】
チューブ7は、計量容器3の上端の開口部11に接続され、計量容器3の内部と空気溜まり袋5の内部とを連通させるものある。このチューブ7の材質としては、ポンプによる移送の対象となる液体と容易に反応したり、当該液体により腐食したりするものでなければ特に制限は無く、例えば、ポリメチルメタアクリレート等のポリアクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル等のポリハロゲン化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン系樹脂等を好適に用いることができる。
【0022】
チューブ7の内径は、計量容器3と空気溜まり袋5との間の空気の移動がスムーズに行われるような内径であれば良く、例えば1.5〜5mm程度の内径とすることが好ましい。また、このチューブ7には、ポンプの流量を計量する際に、チューブ7内の液体の通過を検知するためのセンサが装着されるので、当該センサが装着できる程度の長さとする。
【0023】
なお、本発明の必須の構成要素ではないが、図1に示す実施形態のように、空気溜まり袋5の上部に大きめの封着部15を形成し、この封着部15に空気溜まり袋5の内部とは連通しない固定穴17を設け、この固定穴17を用いて、空気溜まり袋5をフック等に吊り下げ固定できるようにしてもよい。また、同様に本発明の必須の構成要素ではないが、ポンプの流量を計量する際に、何らかのトラブルにより、空気溜まり袋5内の圧力が急激に上昇した場合に、その圧力を開放して空気溜まり袋の破裂を回避し、安全に計量が行えるように、空気溜まり袋5にエアーベント栓19を取り付けるようにしてもよい。
【0024】
後述の計量方法の説明において詳しく述べるが、ポンプの流量の計量に、本発明の空気溜まり袋付き計量容器1を用いると、計量容器3の下端の開口部13に接続されたチューブを通じて、計量容器3内に液体が流入してきた時には、計量容器3内に元々存在していた空気が空気溜まり袋5内に移動し、一方、計量容器3の下端の開口部13に接続されたチューブを通じて、計量容器3内から液体が排出された時には、空気溜まり袋5内の空気が計量容器3内に移動する。
【0025】
そして、空気溜まり袋5の内部は、計量容器3の内部とのみ連通し、周囲の大気からは遮断された閉鎖空間であり、計量に伴う計量容器3の内外への空気の出入りは、空気溜まり袋5との間でのみ行われるので、大気中の細菌のみならず、より微小なウィルス等の混入も防ぐことができ、液体を汚染させることなく、ポンプの流量の計量を行うことができる。
【0026】
本発明の空気溜まり袋付き計量容器は、種々の分野において液体移送手段として用いられているポンプの流量を計量するために使用でき、流量の計量対象となるポンプの用途は限定されないが、大気中の細菌や、より微小なウィルス等の液体への混入を確実に防止できることから、医療機器に用いられるポンプの流量の計量に特に有用であり、例えば、図3に示すような血液浄化装置100において、透析液を移送するためのポンプ(透析液ポンプ)55、補液を移送するためのポンプ(補液ポンプ)74、ろ液を移送するためのポンプ(ろ液ポンプ)56の流量の計量に好適に使用することができる。また、流量の計量対象となるポンプの種類も特に限定されず、血液浄化装置等における液体移送手段として広くに使用されているローラーポンプの他、例えばフィンガーポンプ、遠心ポンプ等の各種ポンプの流量についても、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を使用して計量することができる。
【0027】
ここで、図3に示す血液浄化装置100の構成について簡単に説明すると、Aは患者からの血液を流入させる部分(脱血部)、Bは浄化された血液を患者の体内に戻す部分(返血部)である。脱血部Aは、ろ過器31の血液流入部31aに接続されるチューブ32に連結されている。チューブ32の途中には、上流側から、シリンジポンプ33、ピロー34、血液ポンプ35、第1チャンバ36が配置されている。シリンジポンプ33は、血液中に抗凝固剤などを添加するために設けられている。第1チャンバ36には、保護フィルタ37を介して圧力計38が接続されており、第1チャンバ36上部の空気層の圧力を測定し、血液ポンプ35を制御することにより、ろ過器31への送液圧力を調整するようにしている。
【0028】
チューブ32を通ってろ過器31に流入した血液は、ろ過器31内の中空糸(図示せず)内を通過し、血液流出部31bからチューブ39を通じて返血部Bへ送られる。チューブ39の途中には、第2チャンバ40が配置されている。第2チャンバ40には、第1チャンバ36と同様に、保護フィルタ41を介して圧力計42が連結されており、患者への送液圧力を検出できるようにしている。
【0029】
一方、透析液を供給するラインとして、透析液を充填した透析液パック51がチューブ52を介して、ろ過器31の透析液流入部31cに接続され、透析液は、ろ過器31内の中空糸の外側空間を通過し、透析液流出部31dからチューブ53を通じて取り出される。チューブ52の途中には、透析液を移送するためのポンプ(透析液ポンプ)55と、この透析液ポンプ55の流量を計量するための空気溜まり袋付き計量容器1(1a)とが配置されている。また、チューブ53には、第3チャンバ59と、ろ液を移送するためのポンプ(ろ液ポンプ)56と、このろ液ポンプ56の流量を計量するための空気溜まり袋付き計量容器1(1c)とが配置されている。第3チャンバ59には、保護フィルタ60を介して圧力計61が接続されており、ろ液の送液圧力を検出できるようにしている。ろ液は、廃液容器58等に回収される。
【0030】
更に、補液を供給するラインとして、補液を充填した補液パック71が、チューブ72を介して、第2チャンバ40の上部に連結されている。そして、チューブ72の途中には、補液を移送するためのポンプ(補液ポンプ)74と、この補液ポンプ74の流量を計量するための空気溜まり袋付き計量容器1(1b)とが配置されている。
【0031】
このような構成を有する血液浄化装置100の基本的な動作については、既に周知であるため、ここではその詳細な説明を省略するが、その概略を説明すると、脱血部Aにて患者の体内から取り出された血液が、血液ポンプ35により、チューブ32を通じて、第1チャンバ36に供給され、この第1チャンバ36からろ過器31の中空糸内に流入する。
【0032】
一方、透析液は、透析液パック51からチューブ52を通り、透析液ポンプ55によって、ろ過器31の下部より中空糸の外側空間に流入する。そして、ろ過器31内にて、中空糸膜を通して、血液中の老廃物が透析液側に移行し、血液が浄化される。
【0033】
ろ過器31を通過して浄化された血液は、チューブ39を通り、第2チャンバ40に流入する。また、補液パック71からチューブ72を通じて、補液ポンプ74によって供給される補液が、第2チャンバ40に流入し、浄化された血液に補液が添加される。こうして浄化された血液は、チューブ39を通じて返血部Bに送られ、患者の体内へと戻される。
【0034】
本発明の空気溜まり袋付き計量容器を用いたポンプの流量の計量方法は、従来の計量容器を用いたポンプの流量の計量方法と基本的に同様である。例えば、容量計方式の計量方法の場合は、まず、所定の容量を持つ計量容器内を液体で満たした状態としてから、計量容器の下端側の開口部に接続されたチューブ上に配置されたポンプを駆動させて、計量容器内の液体を吸引させ、計量容器内の液体がすべて排出されるまでに要する時間を測定し、当該時間と計量容器の容量とからポンプの流量を算出する。あるいは、まず、所定の容量を持つ計量容器内を空の状態とし、計量容器の下端側の開口部に接続されたチューブ上に配置されたポンプを駆動させて、計量容器内へ液体を送り込み、計量容器内が液体で満たされるまでに要する時間を測定し、当該時間と計量容器の容量とからポンプの流量を算出する。なお、本発明の空気溜まり袋付き計量容器は、このような容量計方式の計量方法に使用が限定されるものではなく、重量計方式の計量方法等、計量容器を使用して計量を行う従来公知の各種計量方法に使用することが可能である。
【0035】
以下、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を用いたポンプの流量の具体的な計量方法について、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を、図3に示すような血液浄化装置100に適用した場合を例に説明する。
【0036】
図4〜6は、図3に示す血液浄化装置100において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器1(1a)を、透析液ポンプ55の流量の計量に使用した場合の計量方法を示す説明図である。これらの図において、ハッチング(斜線)を施した部分は、内部に液体が存在している部分である。
【0037】
これらの図に示すように、透析液ポンプ55の流量の計量においては、透析液の移送元である透析液パック51から透析液を移送するラインとなるチューブ52上に配置された透析液ポンプ55の吸引側(上流側)にて、チューブ52を分岐させ、分岐させたチューブの端部を、本発明の空気溜まり袋付き計量容器1(1a)を構成する計量容器3の下端の開口部13に接続する。計量容器3の位置は、透析液パック51よりも低い位置となるようにする。透析液パック51とチューブ52の分岐部83との間には、クランプ81が設けられる。また、計量容器3の上端の開口部11に接続されたチューブ7上、及び計量容器3の下端の開口部13に接続されたチューブ上の、それぞれ開口部11、13に近い位置に、超音波センサや光センサのようなチューブ内の液体の有無を検知できる上部センサ25、下部センサ27が装着される。なお、透析液ポンプ55の流量の計量とは直接的には関係はないが、透析液ポンプ55の吸引側(上流側)においては、チューブ52上に気泡センサ23が装着されており、透析液ポンプ55の吸引不良の原因となる透析液中への気泡の混入を検知できるようにしている。
【0038】
このような構成において、透析液ポンプ55を駆動させ、クランプ81を開くと、図4に示すように、透析液ポンプ55により透析パック51内の透析液が移送先へ移送されるとともに、透析液パック51と計量容器3との高低落差によって、分岐部83を経て計量容器3内にも透析液が流入する。そして、計量容器3内に流入した透析液が、計量容器3内を満たし、その液面がチューブ7内において上部センサ25の装着位置に到達すると、上部センサ25が反応し、この上部センサ25の反応から僅かに遅れてクランプ81が閉じられる。この時点で、チューブ7内の液面は上部センサ25の装着位置より若干高い位置にある。また、前記のように計量容器3内に透析液が流入することにより、計量容器3内に元々存在していた空気は、空気溜まり袋5内へと移動し、空気溜まり袋5が膨らんだ状態となる。
【0039】
こうしてクランプ81が閉じられると、透析液ポンプ55は計量容器3内に満たされた透析液の吸引を開始する。図5に示すように、この吸引により、上部センサ25の装着位置より若干高い位置にあった透析液の液面が下降し始める。下降する液面は、まず上部センサ25の装着位置を通過し、次いで計量容器3内を通過し、更に図6に示すように、下部センサ27の装着位置を通過する。液面が上部センサ25の装着位置を通過した時点と、下部センサ27の装着位置を通過した時点とは、それぞれのセンサの反応により把握され、上部センサ25が反応してから下部センサ27が反応するまでの時間が、所定容量の計量容器3に満たされた透析液の排出に要する時間として測定される。そして、計量容器3の容量を、この時間にて除することにより、透析液ポンプ55の流量が算出される。この流量が、予め設定した流量値より低い場合は、透析液ポンプ55の出力(回転数)を上げ、高い場合は透析液ポンプ55の出力(回転数)を下げることで、設定値により近い流量となるよう制御する。
【0040】
なお、前記のように、透析液ポンプ55の吸引によって計量容器3内から透析液が排出されることにより、排出前に空気溜まり袋5内へ移動していた空気は、計量容器3内に戻り、空気溜まり袋5は扁平にしぼんだ状態となる。また、液面が下部センサ27の装着位置を通過し、それに下部センサが反応27すると、当該反応に連動してクランプ81が開かれ、透析液パック51と計量容器3との高低落差によって、再び計量容器3内に透析液が流れ込んで、図4の状態に戻る。
【0041】
この計量方法の例は、図3に示すような構成の血液浄化装置100において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器1(1a)を、透析液ポンプ55の流量の計量に使用した場合についてのものであるが、本発明の空気溜まり袋付き計量容器1(1b)を、補液ポンプ74の流量の計量に使用する場合も、同様の方法で計量を行うことができる。
【0042】
図7〜10は、図3に示す血液浄化装置100において、本発明の空気溜まり袋付き計量容器1(1c)を、ろ液ポンプ56の流量の計量に使用した場合の計量方法を示す説明図である。なお、これらの図において、ハッチング(斜線)を施した部分は、内部に液体が存在している部分である。
【0043】
これらの図に示すように、ろ液ポンプ56の流量の計量においては、ろ液の移送元である第3チャンバ59からろ液を移送するラインとなるチューブ53上に配置されたろ液ポンプ56の供給側(下流側)にて、チューブ53を分岐させ、分岐させたチューブの端部を、本発明の空気溜まり袋付き計量容器1(1c)を構成する計量容器3の下端の開口部13に接続する。チューブ53の分岐部93の下流側には、クランプ91が設けられる。また、計量容器3の上端の開口部11に接続されたチューブ7上、及び計量容器3の下端の開口部13に接続されたチューブ上の、それぞれ開口部11、13に近い位置に、超音波センサや光センサのようなチューブ内の液体の有無を検知できる上部センサ25、下部センサ27が装着される。
【0044】
このような構成において、ろ液ポンプ56を駆動させ、クランプ91を閉じると、図7に示すように、ろ液は分岐部93を経て計量容器3の下端の開口部13に接続されたチューブに流れ込み、更に、図8に示すように、液面が上昇して下部センサ27の装着位置を通過し、計量容器3内に流入し始める。そして、計量容器3内に流入したろ液は、徐々に計量容器3内を満たし、図9に示すように、やがてその液面がチューブ7内において上部センサ25の装着位置に到達する。また、このように計量容器3内にろ液が流入することにより、計量容器3内に元々存在していた空気は、空気溜まり袋5内へと移動し、空気溜まり袋5が膨らんだ状態となる。
【0045】
液面が下部センサ27の装着位置を通過した時点と、上部センサ25の装着位置を到達した時点とは、それぞれのセンサの反応により把握され、下部センサ27が反応してから上部センサ25が反応するまでの時間が、ろ液が所定容量の計量容器3を満たすのに要する時間として測定される。そして、計量容器3の容量を、この時間にて除することにより、ろ液ポンプ56の流量が算出される。この流量が、予め設定した流量値より低い場合は、ろ液ポンプ56の出力(回転数)を上げ、高い場合はろ液ポンプ56の出力(回転数)を下げることで、設定値により近い流量となるよう制御する。
【0046】
なお、液面が上部センサ25の装着位置に到達し、上部センサ25が反応すると、その反応に連動して、クランプ91が開かれ、図10のように、計量容器3内に流入していたろ液が高低落差により排出されて、次回の計量への待機状態となる。また、このように、計量容器3内からろ液が排出されることにより、排出前に空気溜まり袋5内へ移動していた空気は、計量容器3内に戻り、空気溜まり袋5は扁平にしぼんだ状態となる。
【0047】
また、この計量方法の例で使用している空気溜まり袋付き計量容器1(1c)においては、図2に示すように、計量容器3の上端に接続されたチューブ7の一部分であって、計量容器3の上端の開口部に接続されていない方の端部を含む部分7aが、空気溜まり袋5の内部にまで延出しているとともに、その延出したチューブ7の一部分7aの周面に当該チューブの内部と外部とを連通する貫通孔21が穿設されている。
【0048】
空気溜まり袋付き計量容器をこのような構成とすると、計量容器3内に液体が流入しておらず、空気溜まり袋5がしぼんだ状態にあるときでも、空気溜まり袋5の内部にまで延出しているチューブ7の一部分7aにより、空気溜まり袋5の内部に事前に空間(チューブ7の一部分7aの内部空間)を形成して、当該空間の容量分の空気を、空気溜まり袋5内に確保しておくことができ、図10のように、計量容器3内に流入していた液体が高低落差により排出(落差排液)される際に、当該液体の液面が、下部センサ27の下方まで降下して、残液が生じることなく計量容器3内から完全に排出される。また、上部センサ25や下部センサ27に不具合が発生して、液体が空気溜まり袋5内にまで侵入してしまった場合でも、その侵入した液体を、貫通孔21を通じ、高低落差にて容易に排液することができる。
【0049】
以上のように、ポンプの流量の計量に、本発明の空気溜まり袋付き計量容器を用いれば、計量に伴う計量容器の内外への空気の出入りが、大気から遮断された空気溜まり袋との間でのみ行われるので、大気中の細菌のみならず、より微小なウィルス等の混入も防ぐことができ、液体を汚染させることなく計量を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、血液浄化装置等において液体移送手段として用いられるポンプの流量を計量するための計量容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:空気溜まり袋付き計量容器、3:計量容器、5:空気溜まり袋、7:チューブ、11:開口部、13:開口部、15:封着部、17:固定穴、19:エアーベント栓、21:貫通孔、31:ろ過器、32:チューブ、33:シリンジポンプ、34:ピロー、35:血液ポンプ、36:第1チャンバ、37:保護フィルタ、38:圧力計、39:チューブ、40:第2チャンバ、41:保護フィルタ、42:圧力計、51:透析液パック、52:チューブ、53:チューブ、55:透析液ポンプ、56:ろ液ポンプ、58:廃液容器、59:第3チャンバ、60:保護フィルタ、61:圧力計、71:補液パック、72:チューブ、74:補液ポンプ、81:クランプ、82:、83:分岐部、91:クランプ、92:、93:分岐部、100:血液浄化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体移送用のポンプの流量を計量するために使用される、上端と下端とにそれぞれチューブを接続するための開口部が設けられた筒状の計量容器と、少なくとも前記計量容器と同じ容量を持ち、前記計量容器の上端の開口部に接続したチューブを介して、前記計量容器の内部と連通するよう前記計量容器と接続された軟質の袋からなる空気溜まり袋とを具備した空気溜まり袋付き計量容器。
【請求項2】
前記計量容器の上端に接続されたチューブの一部分であって、前記計量容器の上端の開口部に接続されていない方の端部を含む部分が、前記空気溜まり袋の内部にまで延出しているとともに、その延出したチューブの一部分の周面に当該チューブの内部と外部とを連通する貫通孔が穿設されている請求項1に記載の空気溜まり袋付き計量容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−115612(P2012−115612A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270755(P2010−270755)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(394023241)JUNKEN MEDICAL株式会社 (13)
【Fターム(参考)】