説明

空気調和方法および空気調和装置

【課題】 本発明は、室内等の空気を空調する空気調和方法および空気調和装置に関し、被空調者に極端な温冷感を感じさせることなく室内温度を被空調者の快適温度にすることを目的とする。
【解決手段】 被空調者の現在の皮膚温と現在の室内温度との温度差から、前記被空調者の皮膚温の変化を予測し、予測された皮膚温の変化に基づいて前記室内温度が前記被空調者の快適温度になるように前記室内温度を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内等の空気を空調する空気調和方法および空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調室内の人間(以下被空調者という)の空調環境を改善したものとして、例えば、特開2003−120989号公報(以下特許文献1という)、特開平5−99476号公報(以下特許文献2という)に開示されるものが知られている。
特許文献1には、生理計測(体温,心拍等)をセンシングして室内環境(睡眠環境)を調節する空気調和装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、天候や季節を考慮し、より快適な空調および生活環境を目指す空気調和装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−120989号公報
【特許文献2】特開平5−99476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空気調和装置では、人間の温冷感を積極的に考慮していないため、被空調者が空気調和装置の設定温度を頻繁に調整する必要があるという問題があった。
すなわち、従来の空気調和装置では、例えば気温30℃を超す暑い室外から室内に入った直後には、できるだけ早く室内の温度を下げようとして強めの冷房を入れるが、その後時間の経過とともに室温が低下し、今度は逆に寒さを感じ冷房をゆるめることになる。しかし、次にまた少し暑さを感じ、冷房の程度をわずかに強めたりする。このように、従来の技術では冷房の設定温度の調整を繰り返し人間が行わなければならないものとなっている。
【0005】
本発明者は、かかる従来の問題を解決すべく鋭意研究した結果、以下の点を見出した。
すなわち、通常、室内の温度は空調によって一定の環境温度に保たれている。しかし、人間の身体はこの一定の環境温度に対して血管の拡張といったような様々な反応を示し、そのため、一定の環境温度が最初は「涼しい」と感じるが、やがて「寒い」と感じるようになり、何度も空調の設定温度を変えることになる。
【0006】
また、環境温度と体温とに大きな差がある場合、図9に示すように、人間の深部体温および心拍数はあまり大きな変化を示さないが、皮膚温が大きな変化を示すことを見出した。すなわち、図9は、環境温度を5℃に設定した時の深部体温、心拍数および皮膚温の変化を示している。より具体的には、環境温度と体温との差を100%とすると10分間に17%皮膚温が低下する。また、脳の体温中枢(視床下部)における神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン)の変化もほぼ同様の変化を示すことを見出した。
【0007】
そして、これらの情報をデータベース化し、個人毎の快適温度を設定し10分間に17%皮膚温が変化することを考慮して、最初の皮膚温が設定した快適温度に至る時間を予測し、この予測に基づいて室温を調整するようにした。
データベースを利用して環境温度を調整した時と、環境温度を一定にした時との「快適性」について主観的評価を求めたところ、一定の場合よりも、データべースを利用して環境温度を調整した時の方が統計的に有意に「快適性」が高かった。
【0008】
また、特に5歳以下の子供では、環境温度の影響を早く受けることを見出した。すなわち、図10は、環境温度を20℃から35℃に変化させた時の3歳の幼児と40歳の大人との皮膚温の変化を示しており、特に、3歳の幼児では足指先の皮膚温の変化が大きいことがわかる。これにより、幼児を対象とした場合には、10分間に17%の設定よりも設定を大きくすることが有効である。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、被空調者に極端な温冷感を感じさせることなく室内温度を被空調者の快適温度にすることができる空気調和方法および空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の空気調和方法は、被空調者の現在の皮膚温と現在の室内温度との温度差から、前記被空調者の皮膚温の変化を予測し、予測された皮膚温の変化に基づいて前記室内温度が前記被空調者の快適温度になるように前記室内温度を制御することを特徴とする。
請求項2の空気調和装置は、室外温度と室内温度との温度差を求める温度差測定手段と、被空調者の快適温度および前記温度差に対する前記被空調者の皮膚温の変化または変化式を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶される前記被空調者の皮膚温の変化または変化式に基づいて前記被空調者の皮膚温が所定の温度に到達する到達時間を予測する予測手段と、前記到達時間に基づいて前記快適温度になるように前記室内温度を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項3の空気調和装置は、請求項2記載の空気調和装置において、複数の年齢モードを入力する入力手段を備え、前記記憶手段には、前記温度差に対する前記被空調者の皮膚温の変化が前記年齢モードに対応して記憶され、前記予測手段は、入力された年齢モードに対応する皮膚温の変化に基づいて前記到達時間を予測することを特徴とする。
請求項4の空気調和装置は、請求項3記載の空気調和装置において、前記年齢モードは、子供モードおよび大人モードであることを特徴とする。
【0012】
請求項5の空気調和装置は、請求項2記載の空気調和装置において、複数の識別モードを入力する入力手段を備え、前記記憶手段には、前記被空調者の快適温度が前記識別モードに対応して記憶され、前記制御手段は、入力された識別モードに対応する快適温度になるように前記室内温度を制御することを特徴とする。
請求項6の空気調和装置は、請求項5記載の空気調和装置において、前記識別モードは、個人を区別するモードであることを特徴とする。
【0013】
請求項7の空気調和装置は、請求項5記載の空気調和装置において、前記識別モードは、性別を区別するモードであることを特徴とする。
請求項8の空気調和装置は、請求項5記載の空気調和装置において、前記識別モードは、体格を区別するモードであることを特徴とする。
請求項9の空気調和装置は、請求項2ないし請求項8のいずれか1項記載の空気調和装置において、前記記憶手段に記憶される変化式は、前記温度差をT、この温度差Tにおける単位時間の皮膚温の変化をH、所定の係数をaとすると、H=T×aで表されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気調和方法および空気調和装置では、予測された皮膚温の変化に基づいて室内温度が被空調者の快適温度になるように室内温度を制御するようにしたので、被空調者に極端な温冷感を感じさせることなく室内温度を被空調者の快適温度にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の空気調和装置の第1の実施形態を示している。
この実施形態の空気調和装置は、圧縮機1の吐出口に四方弁2を介して室外熱交換器3が接続され、その室外熱交換器3に膨張弁4を介して室内熱交換器5が接続されている。そして、室内熱交換器5に四方弁2を介して圧縮機1の吸込口が接続されている。これらの接続により、冷房運転および暖房運転が可能なヒートポンプ式冷凍サイクルが構成されている。
【0016】
すなわち、冷房運転時は、圧縮機1から吐出される冷媒が実線矢印の方向に流れ、室外熱交換器3が凝縮器、室内熱交換器5が蒸発器として機能する。暖房運転時は、四方弁2の切換により、圧縮機1から吐出される冷媒が破線矢印の流れ、室内熱交換器5が凝縮器、室外熱交換器3が蒸発器として機能する。
室外熱交換器3に対し室外ファン6が設けられ、室内熱交換器5に対し室内ファン7が設けられている。また、室内ファン7によって吸込まれる室内空気の流路に室内温度センサ8および室内湿度センサ9が設けられている。
【0017】
室外側の圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、膨張弁4、および室外ファン6は、室外ユニットに設けられている。室内側の室内熱交換器5、室内ファン7、室内温度センサ8、および室内湿度センサ9は、室内ユニットに設けられている。
圧縮機1は回転数可変型(能力可変型)で、インバータ11から供給される交流電力の周波数に応じた回転数で動作する。インバータ11は、商用交流電源10の電圧を整流し、その整流後の直流電圧を制御部12からの指令に応じた周波数の交流電圧に変換し、出力する。
【0018】
制御部12は、空気調和装置の全体を制御する。この制御部12に、四方弁2、室外ファン6、室内ファン7、室内温度センサ8、室内湿度センサ9、インバータ11が接続されている。また、室外の温度を測定する室外温度センサ13が接続されている。
そして、制御部12には、運転条件等を設定するための入力部15が接続されている。
図2は、制御部12の詳細を示すブロック図である。
【0019】
この実施形態では、マイクロコンピュータのCPU17により空気調和装置の全体が制御される。
入力部15には、運転モード選択ボタン19、年齢モード選択ボタン21および温度設定ボタン23が設けられている。運転モード選択ボタン19を押圧することにより、冷房モード、暖房モードおよび快適モードのいずれか1つを選択することが可能である。運転モード選択ボタン19で快適モードを選択し、年齢モード選択ボタン21を押圧することにより、子供モードまたは大人モードのいずれか1つを選択することが可能である。運転モード選択ボタン19で冷房モードまたは暖房モードを選択し、温度設定ボタン23を押圧することにより、冷房温度または暖房温度を設定することが可能である。
【0020】
ここで、快適モードは、被空調者の現在の皮膚温と現在の室内温度との温度差から、被空調者の皮膚温の変化を予測し、予測された皮膚温の変化に基づいて室内温度が被空調者の皮膚温の快適温度になるように室内温度を制御するモードである。
メモリカード25は、インターフェース(I/F)27を介してCPU17に接続されている。このメモリカード25には、図3に示すように、被空調者の皮膚温の単位時間(分)当たりの変化予測値a1〜anおよびb1〜bnが室外温度と室内温度との温度差に対応して記憶されている。この実施形態では、足指先の皮膚温が対象となる皮膚温とされている。皮膚温の変化予測値は、室外温度と室内温度との温度差が大きくなる程大きくなる。また、皮膚温の変化予測値は、子供と大人に分けて記憶されており、大人の変化予測値b1〜bnに比較して子供の変化予測値a1〜anは大きくなっている。そして、子供と大人に分けて皮膚温の快適温度が記憶されており、大人に比較して子供の皮膚温の快適温度は高くなっている。この実施形態では、快適温度は、足指先の皮膚温が最も快適な温度になる温度とされている。
【0021】
上述した空気調和装置では、運転モード選択ボタン19により冷房モードまたは暖房モードを選択している時には、温度設定ボタン23に設定された温度になるように通常の制御が行われる。
一方、運転モード選択ボタン19により快適モードを選択した時には、子供モードまたは大人モードによる制御が行われる。
【0022】
図4は、快適モード時の動作を示すフローチャートである。
ステップS1では、室外温度センサ13と室内温度センサ8からの信号に基づいて、室外温度と室内温度との温度差を求める。例えば図5に示すように、現在の室内温度が20℃で、室外温度が30℃の時には、温度差は10度となる。ここで、室内に入って来た人間の足指先の皮膚温は、室外温度と同等になっているとみなす。
【0023】
ステップS2では、年齢モード選択ボタン21によるモードが子供モードか大人モードかを判断する。なお、子供モードは、例えば室内に大人が既にいて子供が学校から帰って来た時に大人により設定される。
子供モードの時には、ステップS3において、メモリカード25に記憶されるデータから温度差に対応する子供の変化予測値および快適温度を取得する。
【0024】
そして、ステップS4において、子供の皮膚温が、予め定められた所定の温度、例えば20℃に到達するまでの到達時間が求められる。例えば図5に点線で示すように、子供の皮膚温が15分後に20℃に到達するものとする。この20℃の皮膚温は、子供が「寒い」と感じる直前の温度である。
次に、ステップS5において、到達時間が経過したか否かを判断する。
【0025】
到達時間が経過した時には、ステップS6において、子供の快適温度側に室内温度を変化させる。例えば図5に点線で示すように、子供の快適温度26℃になるように制御する。
次に、ステップS7において、子供の皮膚温の快適温度と現在の室内温度との温度差を求める。
【0026】
そして、ステップS3からステップS7を繰り返すことにより、室内温度が子供の皮膚温の快適温度に収束していく。
大人モードの時には、ステップS8において、メモリカード25に記憶されるデータから温度差に対応する大人の変化予測値および快適温度を取得する。
そして、ステップS9において、大人の皮膚温が現在の室内の温度において予め定められた所定の温度、例えば20℃に到達するまでの到達時間が求められる。例えば図5に実線で示すように、大人の皮膚温が30分後に20℃に到達するものとする。この20℃の皮膚温は、大人が「寒い」と感じる直前の温度である。
【0027】
ステップS10では、到達時間が経過したか否かを判断する。
到達時間が経過した時には、ステップS11において、大人の快適温度側に室内温度を変化させる。例えば図5に実線で示すように、大人の快適温度25℃になるように室内温度を制御する。
次に、ステップS12において、ステップS11から所定時間経過後に大人の皮膚温の快適温度と現在の室内温度との温度差を求める。
【0028】
そして、ステップS8からステップS12を繰り返すことにより、室内温度が大人の快適温度に収束していく。
上述した空気調和方法および空気調和装置では、予測された皮膚温の変化に基づいて室内温度が被空調者の快適温度になるように室内温度を制御するようにしたので、被空調者に極端な温冷感を感じさせることなく室内温度を被空調者の快適温度にすることができる。
【0029】
すなわち、例えば室外温度が高い夏場では、外にいる時には皮膚温が例えば30℃と高くなっており、例えば室内温度が20℃の室内に入った時には快適と感じるが、一定の時間を経過して皮膚温が低下して20℃になった時には、「寒い」と感じるようになる。そこで、「寒い」と感じる前に、室内温度を高め被空調者の皮膚温の快適温度に自動的に変更することにより、被空調者が温度設定ボタン23により温度を変更することなく、室内温度を被空調者の快適温度にすることができる。
【0030】
また、上述した空気調和装置では、年齢モード選択ボタン21により子供モードまたは大人モードを選択することにより、子供または大人に最適な制御を行うことができる。
(第2の実施形態)
図6は、本発明の空気調和装置の第2の実施形態を示すブロック図である。
なお、この実施形態において第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
この実施形態では、入力部15には、年齢モード選択ボタン21に替えて識別モード選択ボタン31が設けられている。運転モード選択ボタン19で快適モードを選択し、識別モード選択ボタン31を押圧することにより、Aさんモード、Bさんモード、CさんモードまたはDさんモードのいずれか1つを選択することが可能である。
そして、メモリカード25には、図7に示すように、Aさんモード、Bさんモード、CさんモードおよびDさんモードに対応して、Aさん、Bさん、CさんおよびDさんの皮膚温の単位時間(分)の変化予測値A1〜An、B1〜Bn、C1〜Cn、D1〜Dnが、室外温度と室内温度との温度差に対応して記憶されている。
【0032】
この実施形態では、Aさん、Bさん、CさんおよびDさんは家族であり、Aさんは父親、Bさんは母親、Cさんは8歳の男の子供、Dさんは3歳の女の子供である。また、Aさん、Bさん、CさんおよびDさんの皮膚温の変化予測値は、予め実測して得られた足指先の皮膚温の変化に基づいている。従って、変化予測値は非常に信頼性の高いものとなっている。そして、Aさん、Bさん、CさんおよびDさんの皮膚温の快適温度がそれぞれ記憶されている。この快適温度は、Aさん、Bさん、CさんおよびDさんの足指先の皮膚温が最も快適な温度になる温度とされている。
【0033】
図8は、快適モード時の動作を示すフローチャートである。
ステップS1では、室外温度センサ13と室内温度センサ8からの信号に基づいて、室外温度と室内温度との温度差を求める。
ステップS2では、識別モード選択ボタン31によりAさん、Bさん、CさんおよびDさんのうち誰のモードが選択されているかを識別する。例えば室内にBさんが既にいて、Cさんが学校から帰って来た時に、BさんによりCさんが設定される。
【0034】
ステップS3では、メモリカード25に記憶されるデータから温度差に対応する選択されているモードの人の変化予測値および快適温度を取得する。
ステップS4では、選択されているモードの人の皮膚温が、予め定められた所定の温度、例えば20℃に到達するまでの到達時間が求められる。
次に、ステップS5において、到達時間が経過したか否かを判断する。
【0035】
到達時間が経過した時には、ステップS6において、選択されているモードの人の快適温度側に室内温度を変化させる。
次に、ステップS7では、ステップS6から所定時間経過後に選択されているモードの人の快適温度と現在の室内温度との温度差を求める。
そして、ステップS3からステップS7を繰り返すことにより、室内温度が選択されているモードの人の快適温度に収束していく。
【0036】
この実施形態においても第1の実施形態と略同様の効果を得ることができるが、この実施形態では、Aさん、Bさん、CさんおよびDさんの各個人に最適な制御を行うことができる。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上述した実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような形態でも良い。
【0037】
(1)上述した第1の実施形態では、年齢モード選択ボタン21により大人モードと子供モードとを選択可能にした例について説明したが、例えば、幼児モード、子供モード、成人モード、中年モード、高齢者モード等を設け、これ等を選択可能にしても良い。また、入力部に直接年齢を入力可能にし、メモリカードに年齢に対応して変化予測値および快適温度を記憶するようにしても良い。
【0038】
(2)上述した第2の実施形態では、識別モード選択ボタン31によりAさん、Bさん、CさんおよびDさんを識別可能にした例について説明したが、例えば、識別モード選択ボタンにより性別を識別させるようにし、メモリカードに性別に対応して変化予測値および快適温度を記憶するようにしても良い。すなわち、一般に女性は男性に比較して「寒い」と感じ易いが、メモリカードに性別に対応して変化予測値および快適温度を記憶することにより、男性と女性に最適な快適温度を設定することができる。
【0039】
(3)上述した第2の実施形態では、識別モード選択ボタン31によりAさん、Bさん、CさんおよびDさんを識別可能にした例について説明したが、例えば、識別モード選択ボタンにより体格を識別させるようにし、メモリカードに体格に対応して変化予測値および快適温度を記憶するようにしても良い。すなわち、一般に「痩せている人」は「太っている人」に比較して「寒い」と感じ易いが、メモリカードに体格に対応して変化予測値および快適温度を記憶することにより、「痩せている人」と「太っている人」に最適な快適温度を設定することができる。
【0040】
(4)上述した実施形態では、テーブルにより被空調者の皮膚温の変化を求めた例について説明したが、例えば、変化式により皮膚温の変化を求めるようにしても良い。そして、本発明者の実験によれば、温度差をT、この温度差Tにおける10分間の皮膚温の変化をHとすると、変化式をH=T×0.17で表すのが最適である。
(5)上述した実施形態では、建屋の室内の空気調和に本発明を適用した例について説明したが、例えば、車等の空気調和に広く適用することができる。
【0041】
(6)上述した実施形態では、メモリカード25に変化予測値および快適温度を記憶させた例について説明したが、例えば、パソコン等に記憶させても良い。このようにメモリカード25等を利用することにより各モードのデータの書き換え(更新)を容易に行うことができる。また、メモリの種類もカードタイプやUSBキータイプのものを利用可能である。そして、メモリカード等に生理学的なデータベースを搭載することにより、データバンクを容易に構築することが可能になる。
【0042】
(7)上述した実施形態では、室内に入って来た人間の温度を室外温度とした例について説明したが、例えば、室内に人間の皮膚温を測定する赤外線センサ等の非接触型のセンサを設け、センサにより皮膚温を直接測定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の空気調和装置の第1の実施形態を示す説明図である。
【図2】図1の空気調和装置の制御部12を示すブロック図である。
【図3】図2のメモリカード25に記憶されるテーブルを示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態による室内温度の制御例を示す説明図である。
【図6】本発明の空気調和装置の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図7】図6のメモリカード25に記憶されるテーブルを示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明者が実験で求めた皮膚温の変化を示す説明図である。
【図10】本発明者が実験で求めた幼児と大人の皮膚温の変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
8 室内温度センサ
13 室外温度センサ
15 入力部
19 運転モード選択ボタン
21 年齢モード選択ボタン
31 識別モード選択ボタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被空調者の現在の皮膚温と現在の室内温度との温度差から、前記被空調者の皮膚温の変化を予測し、予測された皮膚温の変化に基づいて前記室内温度が前記被空調者の快適温度になるように前記室内温度を制御することを特徴とする空気調和方法。
【請求項2】
室外温度と室内温度との温度差を求める温度差測定手段と、
被空調者の快適温度および前記温度差に対する前記被空調者の皮膚温の変化または変化式を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶される前記被空調者の皮膚温の変化または変化式に基づいて前記被空調者の皮膚温が所定の温度に到達する到達時間を予測する予測手段と、
前記到達時間に基づいて前記快適温度になるように前記室内温度を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
請求項2記載の空気調和装置において、
複数の年齢モードを入力する入力手段を備え、
前記記憶手段には、前記温度差に対する前記被空調者の皮膚温の変化が前記年齢モードに対応して記憶され、
前記予測手段は、入力された年齢モードに対応する皮膚温の変化に基づいて前記到達時間を予測することを特徴とする空気調和装置。
【請求項4】
請求項3記載の空気調和装置において、
前記年齢モードは、子供モードおよび大人モードであることを特徴とする空気調和装置。
【請求項5】
請求項2記載の空気調和装置において、
複数の識別モードを入力する入力手段を備え、
前記記憶手段には、前記被空調者の快適温度が前記識別モードに対応して記憶され、
前記制御手段は、入力された識別モードに対応する快適温度になるように前記室内温度を制御することを特徴とする空気調和装置。
【請求項6】
請求項5記載の空気調和装置において、
前記識別モードは、個人を区別するモードであることを特徴とする空気調和装置。
【請求項7】
請求項5記載の空気調和装置において、
前記識別モードは、性別を区別するモードであることを特徴とする空気調和装置。
【請求項8】
請求項5記載の空気調和装置において、
前記識別モードは、体格を区別するモードであることを特徴とする空気調和装置。
【請求項9】
請求項2ないし請求項8のいずれか1項記載の空気調和装置において、
前記記憶手段に記憶される変化式は、前記温度差をT、この温度差Tにおける単位時間の皮膚温の変化をH、所定の係数をaとすると、H=T×aで表されることを特徴とする空気調和装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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