説明

空気調和機およびそのドレンパン部品、並びにドレンパン部品成形用金型

【課題】入子やスライドコアピンを必要とすることなく良好な離型を可能にする形状のドレンパン部品と、これが設置された室内機を有する空気調和機と、これを成形するドレンパン部品成形用金型を得る。
【手段】ドレンパン部品200は、底板後方部220と底板前方部230とによって形成された上方に開口する断面略L字状の樋部分を有し、底板前方部230の底板前方部前縁232において、上方に向けて前方上部フランジ240が延設(一体成形)され、前方斜め下方に向けて段部250が接合(一体形成)されている。段部250は前方側スライドコア3000に彫り込まれた段差上面キャビ面3250によって成形され、段差上面キャビ面3250が成形体2の段部250を押え付けた状態で、可動側金型2000が固定側金型1000から離れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機およびそのドレンパン部品、並びにドレンパン部品成形用金型、特に、空気調和機および該空気調和機の室内機に設置されるドレンパン部品、並びに該ドレンパン部品を成形するドレンパン部品成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の室内機の内部には、熱交換器の下方に結露水等を受け止めるためのドレンパン部品が設置されている。
ドレンパン部品は、上方に開口する断面略L字状(開度が大きな略V字状に同じ)の樋であるドレン受け部分(貯め部分に同じ)が、底板前方部と底板後方部とから形成され、底板前方部の側縁から上方に延設された取付用前方上部フランジと、底板前方部の側縁から下方に延設された取付用前方下部フランジと、底板後方部の側縁から下方に延設された取付用後方下部フランジと、取付用前方上部フランジの前面に突出する係止部(以下「フック」と称す)と、を有している。
【0003】
このとき、取付用前方上部フランジの前面と取付用前方下部フランジの前面とは略同一面を形成するため、かかる同一面とフックとが、ドレンパン部品成形用金型を構成するスライドコア(スライド金型に同じ)によって形成される。そして、取付用前方上部フランジの前面と底板前方部の上面および底板後方部の上面とが、固定側金型によって形成され、取付用前方下部フランジの後面と底板前方部の下面および底板後方部の下面とが、可動側金型によって形成される。
このため、射出成形後に可動側金型を移動する(開く)際、成形体(ドレンパン部品に相当する)が固定側金型に貼り付き易いという問題があった。
【0004】
なお、樹脂製品(成形体に同じ)は、射出成形機に固定された固定側金型と、固定側金型に対して一方向に移動自在な可動側金型とを当接した際に形成され閉鎖空間(以下「キャビティ」と称す)に、熱可塑性樹脂を射出して形成されている。また、可動側金型と固定側金型との当接面(以下「パ−テインクライン」と称す)から離れた位置に、パ−テインクラインに略平行な凸部や凹部(以下「アンダーカット部」と称す)を有する樹脂製品は、かかる凸部や凹部が可動側金型とは相違する方向に移動するスライドコアによって形成されている。
そして、成形後の樹脂製品は、可動側金型に付着した状態で、固定側金型から引き離され、その後、可動側金型からはエジェクタ機構によって押し出されて離脱する。
このとき、可動側金型を移動した際、成形後の樹脂製品が固定側金型から引き離されるようにするため(いわゆる「離型性」を改善する)発明が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−281716号公報(第2−3頁、第2図)
【特許文献2】特開平8−1680号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、可動側金型に設置されたスライドコアにパ−テインクラインと平行に移動する入子を配置して、可動側金型の移動初期に、入子が成形後の樹脂製品を可動側金型に押し付けるようにしたものであるため、金型の構造が複雑になり、金型コストが高くなると共に、成形能率が悪化する(成形サイクルタイムが長くなる)という問題があった。
また、特許文献2に開示された発明は、前記入子と同様な構成で、同様な作用効果を奏するスライドコアピンを配置したものであるため、前記と同様の問題があった。
したがって、特許文献1または特許文献2に開示された発明によって、ドレンパン部品を成形したのでは、離型性は改善されるものの、金型コストの上昇や成形能率の悪化によって、ドレンパン部品の価格が高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、前記入子やスライドコアピンを必要とすることなく良好な離型を可能にする形状のドレンパン部品と、該ドレンパン部品が室内機に設置された空気調和機と、該ドレンパン部品を成形する金型(以下「ドレンパン部品成形用金型」と称す)を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るドレンパン部品は、底板前方部と底板後方部とによって形成された上方に開口する断面略L字状のドレン受け部分と、
前記底板前方部の前縁から上方に向けて延設された前方上部フランジと、
前記底板前方部の前縁に繋がって、底板前方部の前方に突出する段部と、
該段部の前縁に繋がって、前記前方側底板との間に所定の空間を形成する前方下部フランジと、を有し、
空気調和機の室内機に収納された熱交換器の下方に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドレンパン部品は、底板前方部の前縁に繋がって、底板前方部の前方に突出する段部と、これに繋がって前方側底板との間に所定の空間(以下「前方側中空部」と称す)を形成する前方下部フランジと、を有している。
したがって、これをドレンパン部品成形用金型において成形する際、段部の上面等を前方側スライドコアによって成形することができるから、前方側スライドコアが段部を押さえた状態(キャビティの一部を形成した状態に同じ)で、可動側金型を移動させる(開く)ことができるため、成形体(ドレンパン部品に同じ)は固定側金型から引き離される。よって、離型性が改善される。
このとき、特許文献1に記載された入子や特許文献2に記載されたスライドコアピンのような部材を必要としないから、ドレンパン部品成形用金型の構造が簡素になると共に、その動きが迅速になりサイクルタイムが短縮されるから、ドレンパン部品が安価になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施の形態1:空気調和機]
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る空気調和機を説明するものであって、図1は室内機を示す外観斜視図、図2は室内機を示す側面視の断面図である。
図1および図2において、空気調和機1は、室内機100と、図示しない室外機と、室内機100と室外機とを連結する図示しない連結手段とを、有している。
【0011】
(室内機)
室内機100は、本体110と、本体110の内部に設置された断面略Λ(ラムダ)状の室内熱交換器120と、室内熱交換器120によって上方および前方が包囲された状態で、本体110に設置された送風機130と、を有している。
本体110は、上面に吸込口111と、後面に据付板112と、下面に吹出口113と、前面(図2において左側)に前面枠体114とを具備し、前面枠体114には前面パネル115が取り付けられている。
また、送風機130の後方には、室内熱交換器120の一部に略連なるように(正確には隙間を介して)、風路部材116が設けられ、風路部材116の下方範囲と略平行で所定の間隔の吹出口113を形成するケーシング140が設置されている。
【0012】
ケーシング140には、左右風向板117と上下風向板118a、118bとが設置され、吹出口113を通過する風流れの方向を変更可能にしている。
また、ケーシング140の上方にはドレンパン部品200が配置され、ドレンパン部品200の後方下部フランジ210がケーシング140の後方係止部141に密着して係止し、ドレンパン部品200の前方下部フランジ260がケーシング140の前方係止部142に密着して係止し、ドレンパン部品200のフック270が前面枠体104に設けられて係止部(図示しない)に係止している。
そして、ドレンパン部品200の底板後方部220と底板前方部230とによって形成された上方に開口する断面略L字状の樋状の凹部に、室内熱交換器120の前方側の下端部が侵入している。
【0013】
(室外機)
図示しない室外機は、圧縮機と、室外熱交換器と、膨張手段と、を有し、室内機と連結手段(冷媒、電力、制御情報等を交換する)によって連結されている。そして、室外機に設置された圧縮機、室外熱交換器および膨張手段と、室内機100に設置された室内熱交換器120と、によって冷凍サイクルが形成されている。
【0014】
[実施の形態2:ドレンパン部品]
図3および図4は本発明の実施の形態2に係るドレンパン部品を説明するものであって、図3はドレンパン部品を示す外観斜視図、図4は側面視の断面を示す部分斜視図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各図は模式的に示すものであって、それぞれの厚さや相互の寸法の大小関係、あるいは数量は一例である。
図3および図4において、ドレンパン部品200は、底板後方部220と底板前方部230とによって形成された上方に開口する断面略L字状の樋部分を有し、該樋の幅方向の両端は、端部部材290a、290bによって閉じられている。
【0015】
(底板後方部)
底板後方部220の底板後方部後縁221には、下方に向けて後方下部フランジ210が延設(一体形成)され、底板後方部前縁223には、上方に向けて底板前方部230が延設(一体形成)されている。なお、底板後方部220の底板後方部後縁221と底板後方部前縁223との底板中間位置222(正確には底板後方部前縁223に近い位置)において、底板後方部220は屈曲しているが、本発明はこれに限定するものではなく、屈曲に替えて底板後方部前縁223に近い範囲が断面円弧状であっても、屈曲しなくてもよい。また、底板後方部220は平面であるものに限定するものではなく、断面円弧状であってもよい。
【0016】
(後方下部フランジ)
後方下部フランジ210の後縁(下端に同じ)211には、後方下部フランジ凹部213が形成され、後方下部フランジ凹部213がケーシング140の後方係止部141に密着することによって、ドレンパン部品200とケーシング140とによって形成される空間(閉鎖空間)内への空気の侵入を防止している。
【0017】
(底板前方部、前方上部フランジ)
底板前方部230は、その底板前方部後縁221が底板後方部220の底板後方部前縁223に接合した状態で一体成形されている。そして、その底板前方部前縁232において、上方に向けて前方上部フランジ240が延設(一体成形)され、前方斜め下方に向けて段部250が接合(一体形成)されている。
すなわち、底板後方部220と前方上部フランジ240と段部250とが、底板前方部前縁232において、断面略ト字状(図4においては、「ト」の鏡文字)を呈している。
【0018】
なお、底板後方部220と底板前方部230とは、説明の便宜上分けて説明してたものであって、その境界(底板後方部前縁223、底板前方部後縁221)を明瞭にするものではない。したがって、底板後方部220と底板前方部230とを滑らかに接合して、断面略円弧や断面略楕円の一部を形成し、実質的に、底板後方部220と底板前方部230とを区分けすることを不能にしてもよい。
そして、前方上部フランジ240は平面状であって、その前面(図4において左側の面)には、幅方向の複数箇所に前方に向けて横突起243が設けられている。
【0019】
(段部、前方下部フランジ)
さらに、段部250の前縁(下端に同じ)252には、下方に向けて前方下部フランジ260が延設(一体形成)されている。したがって、段部250の下面と、前方下部フランジ260の後面と、前方側底板23の前面とによって、下方が開口した所定の空間(以下「前面側中空部280」と称す)が形成されている。
そして、段部250の上面には、幅方向の複数箇所に上方に向けて縦突起253が設けられている。
また、前方下部フランジ260の前方下部フランジ下端262の近傍には、前方下部フランジテーパ部263が形成され、前方下部フランジテーパ部263がケーシング140の前方係止部142に密着することによって、ドレンパン部品200とケーシング140とによって形成される空間(閉鎖空間)内への空気の侵入を防止している。
【0020】
(フック)
前方下部フランジ260の前面(図4において左側の面、以下「下面」と称す場合がある)には、幅方向の複数箇所にフック270が設けられている。
フック270は上方が開口した箱状であって、平面視で略コ字状を形成するフック前板部271および一対のフック側板部272と、これらの下端に接合されたフック底板部273とを、有している。
【0021】
(端部部材)
端部部材290a、290bは、底板後方部220と底板前方部230とによって形成された樋の幅方向の両端を閉じて、ドレン水を受け止め一次的に貯めるものであって、ドレン水を排出するためのドレンパイプ(図示しない)に連通する排水口や、空気調和機1の室内機100に設置された機器類との干渉を避けるための凹凸部を有している。なお、本発明は、端部部材290a、290bの形状を、図示するものに限定するものではない。
【0022】
[実施の形態3:ドレンパン部品成形用金型]
図5〜図9は本発明の実施の形態3に係るドレンパン部品成形用金型を説明するものであって、図5〜図7は側面視の断面図、図8および図9は一部を示す外観斜視図である。なお、実施の形態2と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各図は模式的に示すものであって、その寸法や大小関係は図示するものに限定するものではない。
図5〜図9において、ドレンパン部品成形用金型(以下「成形用金」と称す)3は、実施の形態2において説明したドレンパン部品200を成形するものであって、固定側金型1000と、可動側金型2000と、前方側スライドコア3000と、後方側スライドコア4000と、を有している。
【0023】
(固定側金型)
固定側金型1000は直方体ブロックから形成され、側面視の断面において、ドレンパン部品200の底板後方部220の上面形状に対応した形状の後方底上面キャビ面1220と、底板前方部230の上面形状に対応した形状の前方底上面キャビ面1230と、前方上部フランジ24の上面形状に対応した形状の前方上部フランジキャビ面1240と、を有している。
また、前記直方体ブロックの幅方向の両端には、端部部材290a、290bの上面形状(懐の内面形状に同じ)に対応した形状にキャビティ面(「キャビ面」と称している)が形成されている。
そして、後方側に後方側スライドコア4000が摺動する固定側後方摺動面1400と、前方側に前方側スライドコア3000が摺動する固定側前方摺動面1300と、を有している。
【0024】
さらに、固定側前方摺動面1300には、段部250に形成された縦突起253を成形するための縦突起用ブロック部1000C(図6の(c)参照)と、前方下部フランジ260に形成されたフック270を成形するためのフック用ブロック部1000D(図7の(d)および(e)参照)と、が前方に突出する形で形成されている。
【0025】
(縦突起用ブロック部)
固定側金型1000の縦突起用ブロック部1000Cは、縦突起253と同じ幅であって、側面視の断面において、前方上部フランジ240の上面形状および下面形状に対応した形状の前方上部フランジキャビ溝1240C(所定の間隔を空けて配置された2面を有する)と、段部250の上面形状に対応した形状の段差下面キャビ面1250と、前方下部フランジ260の下面(前面)の上範囲を成形する前方下部フランジ下面キャビ面1260と、が形成されている。
また、段差下面キャビ面1250には、縦突起253の全体形状に対応した形状の縦突起キャビ溝1253Cが、形成されている。そして、縦突起用ブロック部1000Cの下面は、前方側スライドコア3000が摺動する固定側下方摺動面1300Cになっている(図6の(c)および図8等参照)。
【0026】
(フック用ブロック部)
フック用ブロック部1000Dは、フック270と同じ幅であって、側面視の断面において、前方上部フランジ24の上面形状および下面形状に対応した形状の前方上部フランジキャビ溝1240D(所定の間隔を空けて配置された2面を有する)と、段部250の上面形状に対応した形状の段差下面キャビ面1250Dと、前方下部フランジ260の下面(前面)の上範囲を成形する前方下部フランジ下面キャビ面1260Dと、フック270のフック前板部271の上面および一対のフック側板部272の上面を成形するためのフック上面キャビ面1270Dと、が形成されている。
さらに、フック上面キャビ面1270Dには、フック前板部271およびフック側板部272の内面形状と、フック底板部273の上面形状とに対応した形状のフック懐キャビ突起1270Eが、突出して形成されている。なお、フック270のフック前板部271およびフック側板部272の外面形状と、フック底板部273の下面形状とは、前方側スライドコア3000によって形成されるものである(図6の(d)および図9等参照)。また、フック上面キャビ面1270Dは、前方側スライドコア3000が摺動する固定側下方摺動面1300Dになっている(図7の(e)参照)。
【0027】
(可動側金型)
可動側金型2000は直方体ブロックから形成され、側面視の断面において、後方下部フランジ210の下面形状に対応した形状の後方下部フランジ下面キャビ面2210と、底板後方部220の下面形状に対応した形状の底板後方部下面キャビ面2220と、底板前方部230の下面形状に対応した形状の底板前方部下面キャビ面2230と、段部250の下面形状に対応した形状の段差上面キャビ面2250と、前方下部フランジ260の上面(後面)形状に対応した形状の前方下部フランジ下面キャビ面2260と、を有している。
また、後方下部フランジ下面キャビ面2210の下端から後方に向かって後方側スライドコア4000が摺動するための可動側後方摺動面2400と、前方下部フランジ下面キャビ面2260の下端から前方に向かって前方側スライドコア3000が摺動するための可動側前方摺動面2300と、が形成されている。
【0028】
(前方側スライドコア)
前方側スライドコア3000は直方体ブロックから形成され、側面視の断面において、前方上部フランジ240の下面形状に対応した形状の前方上部フランジ下面キャビ面3240と、段部250の上面形状に対応した形状の段差上面キャビ面3250と、前方下部フランジ260の下面(前面)形状に対応した形状の前方下部フランジ下面キャビ面3260と、を有している。
また、前方上部フランジ下面キャビ面3240の幅方向で、横突起243に対応した位置に、横突起243の全体形状に対応した形状の横突起キャビ溝3243Bが形成されている。
そして、前記直方体ブロックの後面が、固定側金型1000と摺動する前方側スライドコア後方摺動面3100になり、前記直方体ブロックの下面が、可動側金型2000と摺動する前方側スライドコア下方摺動面3200になっている。
【0029】
さらに、前記直方体ブロックには、固定側金型1000の縦突起用ブロック部1000Cおよびフック用ブロック部1000Dがそれぞれ侵入して摺動する縦突起用ブロック溝3000Cおよびフック用ブロック溝3000D(上方が開口した断面矩形状)が形成されている。
【0030】
(縦突起用ブロック溝)
縦突起用ブロック溝3000Cは正面視において矩形であって、ブロック溝側面3102Cは縦突起用ブロック部1000Cの側面に摺動し、その間隔が縦突起253の幅寸法に対応している。また、そのブロック溝底3101Cが縦突起用ブロック部1000Cの底面に摺動する前方側スライドコア上方摺動面になっている(図6の(c)および図9等参照)。そして、底部の後方側には、前方下部フランジ260の下方範囲の下面(前面)の形状に対応した形状の前方下部フランジ下面キャビ面3260が形成されている。
【0031】
(フック用ブロック溝)
フック用ブロック溝3000Dは正面視において矩形であって、ブロック溝側面3202Dはフック用ブロック部1000Dの側面に摺動し、その間隔がフック270の外面の幅寸法に対応している。また、そのブロック溝底3101Dがフック用ブロック部1000Dの底面に摺動する前方側スライドコア上方摺動面になっている(図6の(c)および図9等参照)。
そして、ブロック溝部3101D(前方側スライドコア上方摺動面に同じ)の後方側には、フック270のフック前板部271の外面形状(前面形状に同じ)およびフック底板部273の外面形状(下面形状に同じ)に対応した形状のフック前面キャビ面3271Dおよびフック底面キャビ面3273Dが形成されている。
すなわち、ブロック溝側面3202Dと、フック前面キャビ面3271Dおよびフック底面キャビ面3273Dと、固定側金型1000のフック上面キャビ面1270Dおよびフック懐キャビ突起1270Eと、によって、ドレンパン部品200のフック270の形状に対応してキャビティが形成される。
【0032】
(後方側スライドコア)
後方側スライドコア4000は直方体ブロックから形成され、側面視の断面において、後方下部フランジ210の上面(後面)形状に対応した形状の後面下部フランジ上面キャビ面4210が形成されている。
なお、図中、後面下部フランジ上面キャビ面4210では、アンダーカット形状4214、4215が、幅方向の全長に渡って形成されているが、本発明はこれに限定するものではなく、幅方向の所定範囲に限定して形成された1つであっても、幅方向で所定の間隔を空けて配置された複数であってもよい。さらに、仮に、後面下部フランジ上面キャビ面4210にアンダーカット形状が存在しないときには、固定側金型1000に後面下部フランジ上面キャビ面4210を形成して、後方側スライドコア4000を撤去してもよい。
【0033】
(ドレンパン部品成形用金型の動き)
図10および図11は本発明の実施の形態3に係るドレンパン部品成形用金型の動きを説明する側面視の断面図である。なお、図10および図11は成形用金型3の幅方向の位置B(図6の(b)に同じ)におけるものを示しているが、その他の位置についても同様に図示されるものである。また、図5〜図9と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各図は模式的に示すものであって、その寸法や大小関係は図示するものに限定するものではない。
【0034】
図10の(a)において、成形用金型3は、固定側金型1000と可動側金型2000と前方側スライドコア3000と後方側スライドコア4000とが、閉じた状態であって、ドレンパン部品200の全体形状に対応したキャビティ(閉鎖空間)が形成されている。
【0035】
図10の(b)において、可動側金型2000が移動して、固定側金型1000から離れている。このとき、前方側スライドコア3000と後方側スライドコア4000とは可動側金型2000に対して移動していない。すなわち、前方側スライドコア3000は、段差上面キャビ面3250が成形体2を押さえ付けた状態で移動するから、成形体2は固定側金型1000から確実に引き離される。
【0036】
図11の(c)において、前方側スライドコア3000は前方側に、後方側スライドコア4000は後方側に、それぞれ移動している。したがって、前方側スライドコア3000では、横突起243は横突起キャビ溝3243Bから完全に抜け出し、フック270(図示しない)は、固定側金型1000のフック上面キャビ面1270Dと、前方側スライドコア3000のフック前面キャビ面3271Dおよびフック底面キャビ面3273Dと、から形成されるキャビティから完全に抜け出している。
同様に、後方側スライドコア4000では、後方下部フランジアンダーカット形状214、215が、対応するキャビティ(溝)から完全に抜け出している。
【0037】
図11の(d)において、可動側金型2000がさらに移動している。このとき、成形体2は、図示しないエジェクタピンによって、移動不能に支持されるから、成形体2は可動側金型2000から引き離されている。
よって、成形用金型3は、前記入子やスライドコアピンを必要としない簡素な構成でありながら、成形体2(ドレンパン部品200に同じ)を確実に離型することができる。
すなわち、ドレンパン部品200は、前方上部フランジ240の前面側に突出する段部250を具備することによって、成形用金型3によって成形することが可能になるから、製品コストに占める金型コスト分が安価になる。また、成形用金型3によると離型が容易かつ確実になるから、成形時のサイクルタイムの短縮によって、製造コストはさらに安価になる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、ドレンパン部品やこれを成形する成形用金型の製造コストが安価になるから、家庭用および業務用の各種空気調和機に設置されるドレンパン部品として、また、かかるドレンパン部品を成形する成形用金型として、広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の室内機を示す外観斜視図。
【図2】図1に示す室内機を示す側面視の断面図。
【図3】本発明の実施の形態2に係るドレンパン部品を示す外観斜視図。
【図4】図3に示すドレンパン部品の側面視の部分斜視図。
【図5】本発明の実施の形態3に係る成形用金型を示す側面視の断面図。
【図6】本発明の実施の形態3に係る成形用金型を示す側面視の断面図。
【図7】本発明の実施の形態3に係る成形用金型を示す側面視の断面図。
【図8】本発明の実施の形態3に係る成形用金型の一部を示す外観斜視図。
【図9】本発明の実施の形態3に係る成形用金型の一部を示す外観斜視図。
【図10】図5〜図9に示す成形用金型の動きを説明する側面視の断面図。
【図11】図5〜図9に示す成形用金型の動きを説明する側面視の断面図。
【符号の説明】
【0040】
1:空気調和機(実施の形態1)、2:成形体(実施の形態2)、3:ドレンパン部品成形用金型(実施の形態3)、100:室内機、104:前面枠体、110:本体、111:吸込口、112:据付板、113:吹出口、114:前面枠体、115:前面パネル、116:風路部材、117:左右風向板、118a:上下風向板、118b:上下風向板、120:室内熱交換器、130:送風機、140:ケーシング、141:後方係止部、142:前方係止部、200:ドレンパン部品、210:後方下部フランジ、213:後方下部フランジ凹部、214:後方下部フランジアンダーカット形状、215:後方下部フランジアンダーカット形状、220:底板後方部、221:底板後方部後縁、222:底板中間位置、223:底板後方部前縁、230:底板前方部、231:底板前方部後縁、232:底板前方部前縁、240:前方上部フランジ、243:横突起、250:段部、253:縦突起、260:前方下部フランジ、262:前方下部フランジ下端、263:前方下部フランジテーパ部、270:フック、271:フック前板部、272:フック側板部、273:フック底板部、280:前面側中空部、290a:端部部材、290b:端部部材、1000:固定側金型、1000C:縦突起用ブロック部、1000D:フック用ブロック部、1220:後方底上面キャビ面、1230:前方底上面キャビ面、1240:前方上部フランジキャビ面、1240C:前方上部フランジキャビ溝、1240D:前方上部フランジキャビ溝、1250:段差下面キャビ面、1250D:段差下面キャビ面、1253C:縦突起キャビ溝、1260:前方下部フランジ下面キャビ面、1260D:前方下部フランジ下面キャビ面、1270D:フック上面キャビ面、1270E:フック懐キャビ突起、1300:固定側前方摺動面、1300C:固定側下方摺動面、1300D:固定側下方摺動面、1400:固定側後方摺動面、2000:可動側金型、2210:後方下部フランジ下面キャビ面、2220:底板後方部下面キャビ面、2230:底板前方部下面キャビ面、2250:段差上面キャビ面、2260:前方下部フランジ下面キャビ面、2300:可動側前方摺動面、2400:可動側後方摺動面、3000:前方側スライドコア、3000C:縦突起用ブロック溝、3000D:フック用ブロック溝、3100:前方側スライドコア後方摺動面、3101C:ブロック溝底、3101D:ブロック溝底(前方側スライドコア上方摺動面)、3102C:ブロック溝側面、3200:前方側スライドコア下方摺動面、3202D:ブロック溝側面、3240:前方上部フランジ下面キャビ面、3243B:横突起キャビ溝、3250:段差上面キャビ面、3260:前方下部フランジ下面キャビ面、3271D:フック前面キャビ面、3273D:フック底面キャビ面、4000:後方側スライドコア、4210:後面下部フランジ上面キャビ面、4214:アンダーカット形状。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板前方部と底板後方部とによって形成された上方に開口する断面略L字状のドレン受け部分と、
前記底板前方部の前縁から上方に向けて延設された前方上部フランジと、
前記底板前方部の前縁に繋がって、底板前方部の前方に突出する段部と、
該段部の前縁に繋がって、前記前方側底板との間に所定の空間を形成する前方下部フランジと、を有し、
空気調和機の室内機に収納された熱交換器の下方に取り付けられることを特徴とするドレンパン部品。
【請求項2】
前記前方下部フランジの前面に、上方が開口した箱状のフックが形成されていることを特徴とする請求項1記載のドレンパン部品。
【請求項3】
底板前方部の上面、底板後方部の上面、および前記前方上部フランジの上面が、ドレンパン部品成形用金型を構成する固定側金型によって成形され、
前記底板前方部の下面、前記底板後方部の下面、前記段部の下面、前記前方上部フランジの上面、および前記後方下部フランジの下面が、前記ドレンパン部品成形用金型を構成する可動側金型によって成形され、
前記前方上部フランジの下面、前記段部の上面、および前記前方上部フランジの下面が、前記ドレンパン部品成形用金型を構成する前方側スライドコアによって成形されることを特徴とする請求項1または2記載のドレンパン部品。
【請求項4】
前記底板後方部の後縁に下方に向けて延設された後方下部フランジと、
を有することを特徴とする請求項1または2記載のドレンパン部品。
【請求項5】
底板前方部の上面、底板後方部の上面、および前記前方上部フランジの上面が、ドレンパン部品成形用金型を構成する固定側金型によって成形され、
前記底板前方部の下面、前記底板後方部の下面、前記段部の下面、前記前方上部フランジの上面、および前記後方下部フランジの下面が、前記ドレンパン部品成形用金型を構成する可動側金型によって成形され、
前記前方上部フランジの下面、前記段部の上面、および前記前方上部フランジの下面が、前記ドレンパン部品成形用金型を構成する前方側スライドコアによって成形され、
前記後方下部フランジの上面が、前記ドレンパン部品成形用金型を構成する後方側スライドコアによって成形されることを特徴とする請求項4記載のドレンパン部品。
【請求項6】
本体と、該本体の内部に設置された室内熱交換器および送風機と、前記本体に取り付けられた請求項1乃至5の何れかに記載のドレンパン部品と、を具備する室内機と、
圧縮機と、室外熱交換器と、膨張手段と、を具備する室外機と、
前記室内機と前記室外機とを連結する連結手段と、
を有し、
前記圧縮機と、前記室外熱交換器と、前記膨張手段と、前記室内熱交換器とによって冷凍サイクルが構成されることを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
底板前方部と底板後方部とによって成形された上方に開口する断面略L字状のドレン受け部分と、
前記底板前方部の前縁から上方に向けて延設された前方上部フランジと、
前記底板前方部の前縁に繋がって、底板前方部の前方に突出する段部と、
該段部の前縁に繋がって、前記前方側底板との間に所定の空間を成形する前方下部フランジと、
を具備し、空気調和機の室内機に収納された熱交換器の下方に取り付けられるドレンパン部品、を成形するドレンパン部品成形用金型であって、
底板前方部の上面、底板後方部の上面、および前記前方上部フランジの上面を成形する固定側金型と、
前記底板前方部の下面、前記底板後方部の下面、前記段部の下面、前記前方上部フランジの上面、および前記前方下部フランジの下面を成形する可動側金型と、
前記前方上部フランジの下面、前記段部の上面、および前記前方下部フランジの下面を成形する前方側スライドコアと、
を有することを特徴とするドレンパン部品成形用金型。
【請求項8】
底板前方部と底板後方部とによって成形された上方に開口する断面略L字状のドレン受け部分と、
前記底板前方部の前縁から上方に向けて延設された前方上部フランジと、
前記底板前方部の前縁に繋がって、底板前方部の前方に突出する段部と、
該段部の前縁に繋がって、前記前方側底板との間に所定の空間を成形する前方下部フランジと、
前記底板後方部の後縁に下方に向けて延設された後方下部フランジと、
を具備し、空気調和機の室内機に収納された熱交換器の下方に取り付けられるドレンパン部品を成形するドレンパン部品成形用金型であって、
底板前方部の上面、底板後方部の上面、および前記前方上部フランジの上面を成形する固定側金型と、
前記底板前方部の下面、前記底板後方部の下面、前記段部の下面、前記前方上部フランジの上面、および前記前方下部フランジの下面を成形する可動側金型と、
前記前方上部フランジの下面、前記段部の上面、および前記前方上部フランジの下面を成形する前方側スライドコアと、
前記後方下部フランジの上面を成形する後方側スライドコアと、
を有することを特徴とするドレンパン部品成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−82914(P2010−82914A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252994(P2008−252994)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】