説明

空気調和機

【課題】 構成及び据付作業を簡単化でき、かつ、並列運転される複数の室外機の、各圧縮機に戻す冷凍機油の量を均一化できるオイルセパレータを備えた空気調和機を提供する。
【解決手段】 複数の圧縮機の並列に接続して冷凍サイクルを形成し、各圧縮機1の冷媒吐出管に、円筒容器22と、円筒容器22の頂部から同心状に挿入され円筒容器22内に開口された内筒23と、円筒容器22の接線方向にガス冷媒を導入するガス冷媒入口管27と、内筒23の内側に連通されたガス冷媒出口管35と、円筒容器22内に貯留された冷凍機油を抜き出して前記圧縮機に戻す戻し管を有するオイルセパレータ9を挿入接続し、円筒容器22と内筒23の間隔を、ガス冷媒入口管27の内径以下の大きさに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に係り、特に、複数の圧縮機の冷媒吸入管と冷媒吐出管を並列に接続して形成された冷凍サイクルを有する空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、複数の室外機に設けられた各圧縮機の冷媒吸入側の配管と冷媒吐出側の配管を並列に接続して、冷凍サイクルを形成した空気調和機(以下、マルチエアコンという。)が提案されている。また、各圧縮機の冷媒吐出側の配管にオイルセパレータを設け、圧縮機から吐出されたガス冷媒中に含まれる冷凍機油をオイルセパレータで分離して圧縮機に戻すようにしている。特に、同文献によれば、各圧縮機の運転状況によってオイルセパレータから各圧縮機に戻される冷凍機油の量が不均一になるから、オイルセパレータ同士を均油管で連通し、各圧縮機に戻される冷凍機油量のバランスを保つようにしている。
【0003】
一方、特許文献2には、空気調和機のオイルセパレータとして、圧縮機から吐出されたガス冷媒を円筒容器の内周面に沿って旋回させ、旋回流の遠心力でガス冷媒中に含まれる冷凍機油を分離するものが提案されている。そして、円筒容器の底部に貯留した冷凍機油を、円筒容器の底部に接続した戻し管を介して圧縮機に戻し、冷凍機油を分離したガス冷媒を、円筒容器の頂部から同心状に挿入した配管下端の開口から排出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−93561号公報
【特許文献2】特開平05−180539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、均油管で各圧縮機に戻される冷凍機油のバランスを保っているから、均油管によって構成が複雑になり、また、各オイルセパレータが同じ高さになるよう据付ける必要があるから、据付作業が複雑になるという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2の技術は、単一の室外機にとどまり、複数の室外機を並列運転する場合については配慮されていない。例えば、特許文献1のように、オイルセパレータ同士を均油管で接続すれば、上述したように、構成及び据付作業が複雑になる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、構成及び据付作業を簡単化でき、かつ、並列運転される複数の室外機の、各圧縮機に戻す冷凍機油の量を均一化できるオイルセパレータを備えた空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の空気調和機は、複数の圧縮機の冷媒吸入管と冷媒吐出管を並列に接続して形成された冷凍サイクルと、各圧縮機の冷媒吐出管に挿入接続されたオイルセパレータを有し、オイルセパレータは円筒容器と、円筒容器の頂部から同心状に挿入され円筒容器内に開口された内筒と、円筒容器の接線方向にガス冷媒を導入するガス冷媒入口管と、内筒の内側に連通されたガス冷媒出口管と、円筒容器内に貯留された冷凍機油を抜き出して圧縮機に戻す戻し管を有してなり、円筒容器と内筒の間隔を、ガス冷媒入口管の内径以下の大きさに形成したことを特徴とする。
【0009】
これによれば、円筒容器と内筒の間隔をガス冷媒入口管の内径以下にすることで、円筒容器内に導入されたガス冷媒の流速をガス冷媒入口管内の流速と同等もしくはその流速以上にすることができ、冷凍機油の分離性能を高くできる。つまり、ガス冷媒を旋回させて冷凍機油を分離するオイルセパレータは、流速が大きいほど旋回力を大きくでき、分離性能を確実に向上できる。本発明に反して、円筒容器と内筒の間隔をガス冷媒入口管の内径より大きくすると、円筒容器内でガス冷媒の流速が低下して、旋回による遠心力が低下するので、冷凍機油の分離性能が低下する。
【0010】
さらに、本発明者らは、本発明のオイルセパレータにおいて、冷凍機油の液面と内筒下端との間の距離が分離性能に影響することを知見した。すなわち、冷凍機油の貯留量が増加して、冷凍機油の液面と内筒下端との距離が小さくなると、ガス冷媒の旋回時間の低下や、排出されるガス冷媒に巻き上げられた冷凍機油がガス冷媒出口管に導入されるから、冷凍機油の貯留量が多いオイルセパレータでは分離性能が低下する。特に、冷凍機油の液面が上昇して内筒下端との距離が一定値以下に低下すると、冷凍機油の分離効率が著しく低下する現象を知見した。そこで、冷凍機油の初期充填量やオイルセパレータの寸法などを調整して、冷凍機油の液面の高さ(内筒下端との距離)を設定高さ以下にすることで、オイルセパレータのみで各圧縮機に戻される冷凍機油の量を均一化できることを見いだした。
【0011】
また、各圧縮機への負荷が異なると、各オイルセパレータで分離されて貯留される冷凍機油の量が変化して、液面が設定高さを越えることが考えられる。しかし、冷凍機油の貯留量が多いオイルセパレータでは冷凍機油の分離性能が低下し、分離されなかった冷凍機油はガス冷媒出口管から室外熱交換器を介して又は直接並列接続された室内機に導入される。各オイルセパレータから室内機に導入された液冷媒又はガス冷媒中の冷凍機油の含有率は、混合により均一化されて各圧縮機に戻り、再び各オイルセパレータに導入される。そして、冷凍機油の貯留量が少ないオイルセパレータは分離性能が高いので、より多くの冷凍機油を分離することになる。このようにして、運転を維持するうちに、各オイルセパレータの冷凍機油の貯留量が均一になる。これによれば、均油管を用いることなくオイルセパレータのみで、各圧縮機に戻される冷凍機油の量を均一化できるから、並列運転される複数の室外機を備えた空気調和機の構成及び据付作業を簡単化でできる。
【0012】
なお、各オイルセパレータで貯留できる最大油量を冷凍サイクル全体が保有する冷凍機油の量に基づいて予め決めておき、各オイルセパレータの大きさ及び冷凍機油の設定液面高さ(内筒下端との距離)を決める。この設定液面(設定油面)高さは、オイルセパレータでの冷凍機油の分離効率が、例えば、85%以上で且つ100%未満となるように決められ、この場合、分離効率が85%まで低下するときの液面高さまでの貯油量を貯留できる最大油量として設計する。設定液面高さは、オイルセパレータでの冷凍機油の分離性能が著しく低下する液面高さとなるよう実験して求めることができる。
【0013】
また、全てのオイルセパレータを同一形状にすることも可能になる。オイルセパレータを同一形状にした場合には、オイルセパレータの製造設計が容易になり、オイルセパレータのコストを低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構成及び据付作業を簡単化でき、かつ、並列運転される複数の室外機の、各圧縮機に戻す冷凍機油の量を均一化できるオイルセパレータを備えた空気調和機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のオイルセパレータの構成図である。
【図2】本発明の一実施形態の冷凍サイクルの系統図である。
【図3】図1のガス冷媒入口管の位置の水平断面図である。
【図4】冷凍機油の液面高さと内筒下端までの距離に対するオイルセパレータの分離性能を示す図である。
【図5】オイルセパレータ内の冷凍機油が偏った場合の冷凍機油の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。図1に、本発明の一実施形態の空気調和機に備えられるオイルセパレータの構成図を示し、図2に、本発明の一実施形態の空気調和機の冷凍サイクルの系統図を示す。図示のように本実施形態の空気調和機は、複数台(例えば、図示では2台)の室外機と、複数台(例えば、図示では3台)の室内機で構成されるマルチエアコンであり、各圧縮機1の冷媒吸入管2と冷媒吐出管3が並列に接続されて冷凍サイクルが形成されている。
【0017】
図2中の破線で囲まれた各室外機の筐体内には、圧縮機1、アキュムレータ7、オイルセパレータ9、四方弁11、室外熱交換器13、室外膨張弁15が設けられている。圧縮機1は、例えば、容量可変型の圧縮機1であり、求められる空調能力などに応じて圧縮室の容量を増減できるようになっている。圧縮機1には、冷媒吸入管2、冷媒吐出管3、配管17が接続されている。配管17の他端は冷媒吐出管3に接続され、圧縮機1内の冷凍機油が設定範囲を越えた場合に、圧縮機1内の冷凍機油を冷媒吐出管3に排出するようになっている。冷媒吸入管2にはアキュムレータ7が挿入接続され、ガス冷媒中に液冷媒が含まれている場合に、ガス冷媒から液冷媒を分離して液冷媒が圧縮機1に浸入しにくいようになっている。圧縮機1の冷媒吐出管3には、オイルセパレータ9が挿入接続され、ガス冷媒中に含まれる冷凍機油を分離して貯留し、貯留した冷凍機油を圧縮機1に戻すようになっている。オイルセパレータ9の後流側には、四方弁11が設けられている。四方弁11は、冷房運転時と暖房運転時で冷媒の流路を変えるようになっている。なお、図2の四方弁11の位置は暖房運転時の流路を示しているが、冷房運転時は四方弁11を時計回りに90°回転させた位置に調整される。
【0018】
室外熱交換器13には、冷媒を通流させる伝熱管が設けられ、図示していないファンで外気を伝熱管に向けて送風し、冷媒と外気を熱交換するようになっている。室外熱交換器13には、室外熱交換器13に導入される冷媒を減圧する室外膨張弁15が備えられ、図示していない開度制御手段により室外膨張弁15を設定開度に制御するようになっている。
【0019】
一方、図2中の破線で囲まれた各室内機の筐体内には、室内熱交換器19と室内膨張弁21が設けられている。室内熱交換器19には、冷媒を通流させる伝熱管が設けられ、図示していないファンで室内の空気を吸込んで伝熱管を通過させ、冷媒と室内の空気を熱交換するようになっている。室内熱交換器19には、室内熱交換器19に導入される冷媒を減圧する室内膨張弁21が備えられ、図示していない開度制御手段により室内膨張弁21を設定開度に制御するようになっている。
【0020】
次に、本実施形態の特徴構成を説明する。各室外機に設けられている各オイルセパレータ9は、円筒容器22と、円筒容器22の頂部から同心状に挿入され円筒容器22内に開口された内筒23が備えられている。円筒容器22には、ガス冷媒を円筒容器22内に導入するガス冷媒入口管27が接続されている。ガス冷媒入口管27の一端は円筒容器22の接線方向から接続され、他端は冷媒吐出管3と連通するようになっている。円筒容器22の底部には、円筒容器22内に貯留された冷凍機油を抜き出して圧縮機1に戻す戻し管29が接続されている。戻し管29の他端は、圧縮機1の吸入側に接続されている。戻し管29の管路には、電磁弁31とキャピラリーチューブ33が備えられ、運転状況に応じて冷凍機油を圧縮機1に戻すようになっている。電磁弁31の開閉は、例えば、空気調和機の運転中は開、停止中を閉となるよう図示していない制御手段で制御されている。内筒23の上端には、内筒23よりも管径の小さなガス冷媒出口管35が接続されている。ガス冷媒出口管35は、内筒23の内側に連通するようになっている。円筒容器22と内筒23の間隔は、図3に示すように間隔bがガス冷媒入口管27の内径a以下の大きさになるよう形成されている。なお、内筒23の長さdは分離性能などに応じて適宜選択でき、例えば、円筒容器22の上端からガス冷媒入口管27の中心までの距離eよりも大きくできる。
【0021】
このように構成される本実施形態の動作を暖房運転を例として説明する。各圧縮機1で圧縮したガス冷媒は、冷媒吐出管3を介して各オイルセパレータ9に導入されガス冷媒中に含まれる冷凍機油が分離される。冷凍機油が分離されたガス冷媒はオイルセパレータ9から排出され、四方弁11により弁37を通過して直接室内熱交換器19に導かれる。室内熱交換器19に導入されたガス冷媒は凝縮し、室内の空気に潜熱を放出して液冷媒となる。室内熱交換器19から排出された液冷媒は弁39を通過して、設定開度に絞られている室外膨張弁15で減圧され、室外熱交換器13に導入される。室外熱交換器13に導入された液冷媒は、外気と熱交換することで蒸発してガス冷媒となり、四方弁11を介してアキュムレータ7に導入される。アキュムレータ7に導入されたガス冷媒は、未蒸発の液冷媒が除去された後、冷媒吸入管2を介して圧縮機1に導入され圧縮される。なお、空気調和機の停止時は、弁37、39を閉じ、室外機と室内機間の冷媒の通流を阻止する。
【0022】
次に、本実施形態の特徴動作を説明する。圧縮機1から吐出されたガス冷媒は、ガス冷媒入口管27を介して円筒容器22の接線方向から円筒容器22内に導入される。この際、円筒容器22と内筒の間隔をガス冷媒入口管27の内径以下であるから、円筒容器22内に導入されたガス冷媒の流速をガス冷媒入口管27内の流速と同等もしくはその流速以上にすることができる。円筒容器22に導入されたガス冷媒は、円筒容器22と内筒23の間隔に沿って旋回する。この旋回の遠心力によりガス冷媒中の液状の冷凍機油が分離され、円筒容器22の内周面に付着し流下して円筒容器22の底部に貯留する。冷凍機油が分離されたガス冷媒は、ガス冷媒出口管35から排出されて室内熱交換器19に導かれる。円筒容器22の底部に貯留された冷凍機油は、適宜電磁弁31を開けることで戻し管29を介して圧縮機1に戻される。通常電磁弁31は、圧縮機の運転中は開、停止中は閉とされている。また、各オイルセパレータ9に貯留される冷凍機油の量が一定範囲になるよう、冷凍機油の初期充填量やオイルセパレータ9の寸法などを調整しておくと良い。なお、圧縮機1の吸入側とオイルセパレータ9内の差圧により分離された冷凍機油は圧縮機1に戻される。そして、冷凍機油の戻し量はキャピラリーチューブ33での抵抗の大きさで決定される。キャピラリーチューブ33の抵抗は、そのサイズ(通路面積)及び長さに相関して変わるから、差圧を考慮して決められる。オイルセパレータ9内には冷凍機油が常時貯留されている状態が維持されるよう、キャピラリーチューブ33を設計する。
【0023】
ここで、図4を用いて各圧縮機1に戻される冷凍機油の量を各オイルセパレータ9のみで均一化(均油)できる原理を説明する。図4の縦軸にオイルセパレータ9の分離性能(分離効率)を示し、横軸に冷凍機油の液面と内筒23下端との距離を示す。分離性能とは、言い換えるとオイルセパレータ9で分離されない冷凍機油の量であり、例えば、分離性能が高いとは、オイルセパレータ9で冷凍機油が多く分離されることを意味し、分離性能が低いとは、オイルセパレータ9で冷凍機油が殆ど分離されないことを意味する。図示のとおり、分離性能は円筒容器22内に貯留された冷凍機油の液面と内筒23下端との距離cに相関する。つまり、円筒容器22内の冷凍機油の貯留量が増加して、冷凍機油の液面と内筒23の下端との距離が小さくなると分離性能が低下する。さらに、冷凍機油の液面と内筒23の下端との距離が一定値以下になると、分離性能か急激に低下する。つまり、冷凍機油の液面と内筒23の下端との距離cが一定値以下(分離限界)になると、冷凍機油を分離できる領域(分離領域)から冷凍機油を殆ど分離できない領域(分離不可領域)になる。この特性を利用し、各オイルセパレータ9の冷凍機油の液面と内筒22下端との距離cが一定値以下になると分離限界に達するように、冷凍機油の初期充填量やオイルセパレータの寸法などを調整する。これにより、各オイルセパレータ9内の冷凍機油の分離性能を一定範囲(例えば、冷凍機油が貯留されていないオイルセパレータ9の分離性能を100%として、85%以上で且つ100%未満の範囲)にでき、各オイルセパレータ9の冷凍機油の貯留量を略均一化できる。なお、各オイルセパレータ9の設計ポイントは、同一である必要はなく、例えば、分離性能が85%以上で且つ100%未満の範囲で適宜設定して良い。例えば、分離性能が85%より低下すると、オイルセパレータ9の分離性能が急激に低下し、オイルセパレータ9からガス冷媒出口管35を介して冷凍サイクルに冷凍機油が放出されるように分離限界を設定することができる。
【0024】
また、空気調和機の運転状況などに応じて圧縮機1への負荷が異なると、各オイルセパレータ9で貯留される冷凍機油の量が変化する場合がある。例えば、図5に示すように室外機40aのオイルセパレータ9aの液面が分離限界を越えることが考えられる。しかし、オイルセパレータ9aは、冷凍機油の液面高さが分離限界を超えているから、分離されなかった冷凍機油やガス冷媒に巻き上げられ貯留されている冷凍機油がガス冷媒出口管35に導入される。そして、冷凍機油を多く含むガス冷媒が室外機40b、cから排出されたガス冷媒と混合して均一化し、ガス冷媒に含まれる冷凍機油の量が増加する。このガス冷媒が各室内機を通過して各室外機40a、b、cの各オイルセパレータ9a、b、cに導入される。分離性能が低いオイルセパレータ9aでは冷凍機油が殆ど分離されず、分離性能が高いオイルセパレータ9b、cで冷凍機油が多く分離される。このように、運転を維持するうちにオイルセパレータ9a、b、c間の冷凍機油の貯留量が均一化する。
【0025】
これによれば、円筒容器22内に導入されたガス冷媒の流速をガス冷媒入口管27内の流速と同等もしくはその流速以上にすることができるから、旋回による遠心力を大きくでき、オイルセパレータ9の分離性能を確実に向上できる。
【0026】
さらに、本実施形態のオイルセパレータ9において、冷凍機油の初期充填量やオイルセパレータ9の寸法などを調整し、冷凍機油の液面の高さ(内筒23下端との距離c)を設定高さ以下にすることで、オイルセパレータ9のみで各圧縮機に戻される冷凍機油の量を均一化できる。その結果、均油管を用いる必要がないから、並列運転される複数の室外機を備えた空気調和機の構成及び据付作業を簡単化できる。さらに、各圧縮機1に戻す冷凍機油の量を均一化することで、圧縮機1に冷凍機油不足が生じることを抑制できるから、空気調和機を安定運転できる。
【0027】
また、圧縮機の周波数を変動させることなく冷凍機油を均一化できることから、消費電力が過度に増加しない空気調和装置を得ることができる。さらに、冷凍機油を高圧である圧縮機1の吐出側に貯留して、圧縮機1の高速起動による冷媒吸入管2側の減圧の影響を受けないようにしたから、減圧沸騰によるオイルフォーミングを抑制できる。また、膨張弁の開度を決定する制御定数(指令から動作までの時間)は、冷媒と冷凍機油の溶解度で決定される。そして、冷媒と冷凍機油の溶解度は、圧力が低くなると変化するから、高圧になっている圧縮機1の吐出側にオイルセパレータ9を配置して冷凍機油を貯留することで、制御定数変更の必要が無くなり、空気調和機の信頼性を向上できる。
【0028】
なお、本実施形態は暖房運転を例として説明したが、四方弁11を切り換えて冷媒の通流方向を暖房運転と逆にすることで冷房運転できることは言うまでもない。
【0029】
また、各オイルセパレータ9は、冷凍機油の液面高さと内筒23下端との距離と分離性能が相関するものを用いることができればよく、特に、同一形状のオイルセパレータを用いることで、オイルセパレータの製造設計が容易になり、オイルセパレータのコストを低減できる。また、各オイルセパレータ9の外径を同一にして、圧縮機1又は室外機の容量に応じて全長のみを変えることで、各圧縮機1に戻される冷凍機油の量を略均一化できる。
【符号の説明】
【0030】
1 圧縮機
2 冷媒吸入管
3 冷媒吐出管
9 オイルセパレータ
22 円筒容器
23 内筒
27 ガス冷媒入口管
29 戻し管
35 ガス冷媒出口管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧縮機の冷媒吸入管と冷媒吐出管を並列に接続して形成された冷凍サイクルと、前記各圧縮機の前記冷媒吐出管に挿入接続されたオイルセパレータを有し、該オイルセパレータは円筒容器と、該円筒容器の頂部から同心状に挿入され前記円筒容器内に開口された内筒と、前記円筒容器の接線方向にガス冷媒を導入するガス冷媒入口管と、前記内筒の内側に連通されたガス冷媒出口管と、前記円筒容器内に貯留された冷凍機油を抜き出して前記圧縮機に戻す戻し管を有してなり、
前記円筒容器と前記内筒との間隔は、前記ガス冷媒入口管の内径以下の大きさに形成されていることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
前記各オイルセパレータは同一形状であることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
複数の圧縮機の冷媒吸入管と冷媒吐出管を並列に接続して形成された冷凍サイクルと、前記各圧縮機の前記冷媒吐出管に挿入接続されたオイルセパレータを有し、該オイルセパレータは円筒容器と、該円筒容器の頂部から同心状に挿入され前記円筒容器内に開口された内筒と、前記円筒容器の接線方向にガス冷媒を導入するガス冷媒入口管と、前記内筒の内側に連通されたガス冷媒出口管と、前記円筒容器内に貯留された冷凍機油を抜き出して前記圧縮機に戻す戻し管を有してなり、
前記オイルセパレータは、貯留された前記冷凍機油の油面高さが設定された油面高さ以上になった場合に、前記オイルセパレータから前記冷凍機油を前記冷凍サイクルに放出して前記複数の各圧縮機に戻される構成とすることで、冷凍機油が均油されることを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項3に記載の空気調和機において、
前記設定された油面高さは、前記オイルセパレータにおける分離効率が85%以上で且つ100%未満となる油面高さであることを特徴とする空気調和機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−276250(P2010−276250A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128180(P2009−128180)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】