説明

空気調和機

【課題】最大使用時の消費電力制限及び節電を図りつつ、快適感が得られる空気調和機を提供する。
【解決手段】本発明は、室内へ空調した空気を吹出す送風機と、圧縮機と、吹出空気温度を算出する吹出温度算出部と、を備え、冷房運転時及び暖房運転時にそれぞれ省エネモードを選択可能であり、前記省エネモードは、前記冷房運転時に前記省エネモードを選択すると、設定温度を上げる変更を行い、前記暖房運転時に前記省エネモードを選択すると、前記設定温度を下げる変更を行い、前記圧縮機の能力の最大値を所定の値に制限し、前記吹出温度算出部により算出される吹出空気温度が変更後の前記設定温度に近づくよう前記送風機を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機の省エネ運転制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電力負荷の平準化を目的として、電流値の上限を下げることで、最大使用時の電流値を制限する空気調和機の運転制御が提案されている。又、最大使用時の電流値を制限するとともに、エネルギー消費量を抑える空気調和機の運転制御が提案されている。
【0003】
特許文献1は、電力会社からの電力制御信号を受信することなく、GPSの位置情報からあらかじめ定められた地域別の運転制限条件を適用することで、電力抑制を行う空気調和機について開示している。特許文献2は、設定温度を変えることで運転能力を低下させるとともに、抑制手段により最大使用時の電流値を制限する空気調和機について開示している。特許文献3は、設定温度を変えることで運転能力を低下させるとともに、温冷感の指標に基づいて風量を変えることで快適性を維持する空気調和機について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−304087号公報
【特許文献2】特許第4056146号公報
【特許文献3】特開2009−270764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は最大使用時の消費電力を抑制するものの、必ずしもエネルギー消費電力の抑制になるとは限らない。又、特許文献2や特許文献3は、運転開始時などの最大使用時から室温が設定温度に近づいた状態である安定運転時へ運転が切り替わる際などに、吹出空気温度が大きく変化し、快適感が損なわれる場合がある。
【0006】
本発明の目的は、最大使用時の電流値の制限及び節電を図りつつ、快適性を維持する空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、室内へ空調した空気を吹出す送風機と、圧縮機と、吹出空気温度を算出する吹出温度算出部と、を備え、冷房運転時及び暖房運転時にそれぞれ省エネモードを選択可能であり、前記省エネモードは、前記冷房運転時に前記省エネモードを選択すると、設定温度を上げる変更を行い、前記暖房運転時に前記省エネモードを選択すると、前記設定温度を下げる変更を行い、前記圧縮機の能力の最大値を所定の値に制限し、前記吹出温度算出部により算出される吹出空気温度が変更後の前記設定温度に近づくよう前記送風機を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、最大使用時の電流値の制限及び節電を図りつつ、快適性を維持する空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】空気調和機の構成図。
【図2】空気調和機室内機の断面図。
【図3】室内機の正面図。
【図4】室内機の制御部ブロック図。
【図5】従来の空気調和機における冷房運転時の消費電力の時間変化。
【図6】あらかじめ定められた2つの異なる削減率の制限モードの設定テーブル。
【図7】空気調和機における冷房運転時の消費電力の時間変化。
【図8】空気調和機における冷房運転時の室内温度の時間変化。
【図9】空気調和機における冷房運転時の吹出空気温度の時間変化。
【図10】空気調和機における冷房運転時の圧縮機の回転数の時間変化。
【図11】空気調和機における冷房運転時の吹出空気温度の時間変化。
【図12】空気調和機における冷房運転時の室内送風機の回転数の時間変化。
【図13】活動内容と活動量の関係を示す図。
【図14】温度シフト値の例。
【図15】風量シフト値の例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る空気調和機について、壁掛型の空気調和機を例にして説明する。まず、空気調和機の全体構成について図1〜図3を用いて説明する。図1は空気調和機の構成図である。図2は空気調和機室内機の断面図である。図3は室内機の正面図である。
【0011】
図1に示す空気調和機1は、室内機2と室外機3とを接続配管4で接続して構成される。室内機2は、別体のリモートコントローラ(以下「リモコン」という。)5からの赤外線の操作信号を受信する室内送受信部16を備える。
【0012】
図2に示すように、室内機2は、筐体ベース6の中央部に熱交換器7を備える。熱交換器7の下流には熱交換器7の幅と略等しい長さの軸流ファン方式の室内送風機8を配置する。又、熱交換器7の下方には露受皿9を配置する。熱交換器7及び室内送風機8等は、化粧枠10で覆われるとともに、化粧枠10の前面にはフロントパネル11が取り付けられる。
【0013】
室内機2の上面には、室内空気を吸込む空気吸込口12を備える。室内機2の下面には、温度が調整された空気を吹出す空気吹出口13を備える。室内送風機8により、空気吸込口12から吸込まれた室内空気は、熱交換器7及び室内送風機8を通って室内送風機8の長さに略等しい幅の吹出風路8aに流れ込む。その後、吹出風路8aの空気は、吹出風路8aに位置する左右風向板14により左右方向が偏向され、空気吹出口13に位置する上下風向板15により上下方向が偏向されて、空気吹出口13から室内に吹出される。図3に示すように上下風向板15の奥には、焦電型赤外線センサ17、サーモパイルを使用した輻射センサ18、及びマイクロフォン等を使用した音センサ19を搭載する。
【0014】
次に、本発明の空気調和機の制御の概要について、図4を用いて説明する。図4は室内機の制御部ブロック図である。図4において、空気調和機1は内部に制御部20を備え、各種センサからの情報やリモコン5からの指示に応じて、室内機2及び室外機3を制御する。室内900、室外901からの情報は、室温センサ25、湿度センサ26、輻射センサ18、リモコン周囲温度センサ27、リモコン位置センサ28、焦電型赤外線センサ17、音センサ19、全電流センサ60、外温センサ61等により制御部20内部のマイコン(図示せず)に取込まれる。これらのマイコンに取込まれた情報に基づいて、空気調和機1が制御される。焦電型赤外線センサ17及び音センサ19の情報から、活動量判定部35は、在室者の活動量を多段階に区分して、温度シフト値設定部36a、風量シフト値設定部36bに伝える。温度シフト値設定部36aは、活動量判定部35からの活動量情報の他、上述の各種センサや制御部20内部に備えられたカレンダー情報29からの情報に基づいて温度シフト値を演算し、目標室温設定部37に伝える。目標室温設定部37は、温度シフト値設定部36からの温度シフト値情報と室温設定部38からの設定室温情報に基づいて目標室温を演算し、空調能力制御部45に伝える。風量シフト値設定部36bは、活動量判定部35からの活動量情報の他、上述の各種センサや制御部20内部に備えられたカレンダー情報29からの情報に基づいて風量シフト値を演算し、直接空調能力制御部45に伝える。全電流センサ60及び外温センサ61の情報から、電力シフト設定部62は、あらかじめ定められている圧縮機の上限回転数及び電流値の上限電流を制限モードに応じて一定割合で上限値を下げて設定し、室外負荷に応じて電力制限運転時における室外回転数シフト値を演算し、直接空調能力制御部45に伝える。空調能力制御部45は、目標室温設定部37からの目標室温や室温センサ25からの吸込空気温度情報、風量シフト設定部や電力シフト設定部等から、圧縮機回転数設定部46、室内送風機回転数設定部47、室外送風機回転数設定部48で圧縮機回転数、室内送風機回転数、室外送風機回転数を設定し、圧縮機、室内送風機8、室外送風機56を制御する。
【0015】
まず、運転開始時などの空調負荷が大きい領域で電力制限を行うピークシフト運転について具体例を挙げ説明する。図5に横軸を経過時間、縦軸を消費電力とした、従来の空気調和機における冷房運転時の消費電力の時間変化の一例を示す。グラフより運転開始時から一定期間の空調負荷が大きい領域では、目標とする室温と実際の室温の差が大きいため、消費電力が大きい。この運転開始時から一定期間での消費電力を削減することで電力使用ピーク時の消費電力を大きく削減できる。
【0016】
本実施例では、全電流センサ60により検出される電流値と、圧縮機の回転数の上限を制限することで消費電力を削減する。図6はあらかじめ定められた2つの異なる削減率の制限モードの設定テーブルを示す。これらの制限モードはリモコンの特定のボタンに割り当てられ、ユーザは好みのモードを選択することができる。
【0017】
ここで制限モードにおける具体的な制御について説明する。例えば図6に示すように最大電力削減率15%の制限Aモードでは、圧縮機の上限回転数を通常の回転数の85%にする。加えて、全電流センサ60により検出される電流値の上限電流を通常の電流上限の85%にする。ここで、圧縮機の上限回転数及び電流値の上限電流はあらかじめ内外風量や外気温度などにより変化する空気調和機の負荷に応じて設定されている。制限された圧縮機の上限回転数で圧縮機が動作している場合に、電流値が上限電流を超えてしまう場合には、優先して電流値が制限され上限電流値になるように圧縮機の回転数が制御される。このように、空気調和機の負荷に応じて設定されている圧縮機あるいは全電流値の上限を一定割合で制限することで少なくとも運転開始時などの空調負荷の高い領域で消費電力の多い際に確実に消費電力を削減できる。
【0018】
次に、図7に通常の冷房運転100、冷房運転時に設定温度を上昇させた省エネ冷房運転101、冷房運転時に設定温度を上昇させ、且つ、最大消費電力を制限した省エネピークカット冷房運転102の経過時間に対する消費電力の変化を示す。図8に通常の冷房運転100、省エネ冷房運転101、省エネピークカット冷房運転102の経過時間に対する室内温度の変化を示す。図9に通常の冷房運転100、省エネ冷房運転101、省エネピークカット冷房運転102の経過時間に対する吹出し空気温度の変化を示す。図10に通常の冷房運転100、省エネ冷房運転101、省エネピークカット冷房運転102の経過時間に対する圧縮機の回転数の変化を示す。
【0019】
通常の冷房運転100、及び、省エネ冷房運転101は、最大消費電力を制限していないため、運転開始直後に最大消費電力で運転している。最大消費電力で運転する分、図9に示すように空気吹出口13から吹出す空気の温度は低くなる。そして、省エネ冷房運転101は、通常の冷房運転100に比べて、早く設定温度104付近に到達する。そのため、省エネ冷房運転101は最大消費電力で運転する時間が、通常の冷房運転100に比べて短い。そして、通常の冷房運転100、及び、省エネ冷房運転101は、ともに設定温度に到達した後は安定運転へとシフトしていく。
【0020】
ここで、省エネ冷房運転101の安定運転時の消費電力は、通常の冷房運転100の安定運転時の消費電力よりも低い値となっており、空気吹出口13から吹出す空気の温度も高い値となる。省エネ冷房運転101のほうが設定温度を維持するのに必要な電力が少ないからである。そのため、省エネ冷房運転101は、通常の冷房運転100に比べて、最大消費電力での運転時の吹出空気温度と安定運転時の吹出空気温度との温度差が大きく、快適性が損なわれる運転となる可能性がある。
【0021】
一方、省エネピークカット冷房運転102は、最大消費電力を制限しているため、通常の冷房運転100及び省エネ冷房運転101に比べて、運転開始直後における消費電力が抑えられている。最大消費電力が抑えられている分、空気吹出口13から吹出す空気の温度は低温になりづらい。その分、省エネピークカット冷房運転102は、省エネ冷房運転101に比べて、消費電力が高い値で運転する時間が長くなる。
【0022】
ここで、省エネ冷房運転101及び省エネピークカット冷房運転102の設定温度が同じ場合、省エネピークカット冷房運転102の安定運転時の消費電力は、省エネ冷房運転101の安定運転時の消費電力と近い値となる。つまり、省エネピークカット冷房運転102は、省エネ冷房運転101に比べて、最大消費電力での運転時の吹出空気温度と安定運転時の吹出空気温度との温度差が小さく、省エネ運転による吹出空気温度の変化の拡大を抑えることができるため、快適性を維持することができる。
【0023】
ここでは、空気吹出口13から吹出す空気の風量が一定について説明したが、吹出空気の風量を制御することで、さらに吹出空気の温度の変化を抑制し、ユーザの不快感を低減することができる。図11に省エネピークカット冷房運転102、及び、高負荷運転時の室内送風機8の回転数が低負荷運転時の室内送風機8の回転数より高めた省エネピークカット冷房運転103の経過時間に対する吹出空気温度の変化を示す。図12に省エネピークカット冷房運転102、及び、高負荷運転時の室内送風機8の回転数が低負荷運転時の室内送風機8の回転数より高めた省エネピークカット冷房運転103の経過時間に対する室内送風機の回転数の変化を示す。運転開始初期の高負荷運転時に、図12に示すように室内送風機8の回転数が低負荷運転時の室内送風機8の回転数より高めたことにより、より多くの室内の空気が空気調和機の熱交換器7を通過するため、単位体積当たりの室内の空気の冷却量は減少する。つまり、図11に示すとおり、高負荷運転時における吹出空気温度の低下を弱めることができ、高負荷時における吹出空気温度と低負荷時における吹出空気温度との温度差をより狭めることができる。
【0024】
又、省エネピークカット運転の安定運転時、体感温度を維持するため、所定の風量シフト値を風量に加える。例えば冷房運転時の温度シフト値が+1℃のとき、風速を+1m/s程度増速することで、おおむね体感温度が同等となる。暖房についても温度シフト値が−1℃で、風速を−1m/s程度減速することで、おおむね体感温度が同等となる。
【0025】
このとき、最大消費電力での運転時は、安定運転時に比べ吹出空気温度が低いので、風量シフトを行わない。このことで、最大消費電力での運転時の吹出空気温度と安定運転時の吹出空気温度との温度差が小さく、省エネ運転による吹出空気温度の変化の拡大を抑えることができるため、快適性を維持することができる。
【0026】
従って、室内へ空調した空気を吹出す室内送風機8と圧縮機を制御する空気調和機であって、省エネモードを含む複数の運転モードから所望の運転モードを選択する選択手段と、吹出空気温度を算出する吹出温度算出部と、を備え、省エネモードは、冷房運転時は設定温度を上げ、暖房運転時は設定温度を下げ、圧縮機の能力の最大値を所定の値に制限し、吹出温度算出部により算出される吹出空気温度が設定温度に近づくよう室内送風機8を制御する風量制御を行うことで、最大使用時の消費電力制限及び節電を図りつつ、吹出空気温度の変化を抑制し、ユーザの不快感を低減することができる。
【0027】
なお、吹出空気温度は吹出温度算出部により室内送風機8の回転数等から算出される。又、吹出温度算出部は空気吹出口13付近の空気を直接計測してもよい。
【0028】
なお、風量制御は、冷房運転時は室内送風機8を制御することにより吹出空気温度を設定温度よりも所定の温度低い値になるようにし、暖房運転時は室内送風機8を制御することにより吹出空気温度を設定温度よりも所定の温度高い値になるようにしてもよい。
【0029】
なお、省エネモードを選択した際に、設定温度を予め定めた所定の温度に変えるようにしてもよい。但し、冷房運転時に、省エネモードを選択する前の設定温度がすでに予め定めた所定の温度よりも高い場合は、設定温度を変えないようにしてもよい。一方、暖房運転時に、同様に省エネモードを選択する前の設定温度がすでに予め定めた所定の温度よりも低い場合は、設定温度を変えないようにしてもよい。
【0030】
又、吹出空気温度及び吹出風量により定まる体感温度を求める体感温度算出部を備え、省エネモードは、冷房運転時は設定温度を上げ、暖房運転時は設定温度を下げ、圧縮機の能力の最大値を所定の値に制限し、体感温度算出部により求めた体感温度が所定の値に近づくよう室内送風機8を制御する風量制御を行うことで、最大使用時の消費電力制限及び節電を図りつつ、体感温度の変化を抑制し、ユーザの不快感を低減することができる。
【0031】
又、本実施例の空気調和機は、電力制限値の設定値に応じて、冷房運転時の温度シフト値は正の値としその下限を定め、暖房運転時の温度シフト値は負の値としその上限を定める。このとき体感温度を維持するため、所定の風量シフト値を風量に加える。例えば冷房運転時の温度シフト値が+1℃のとき、風速を+1m/s程度増速することで、おおむね体感温度が同等となる。暖房についても温度シフト値が−1℃で、風速を−1m/s程度減速することで、おおむね体感温度が同等となる。
【0032】
このように、冷房運転時の温度シフト値に下限を設けることにより、確実に省エネ運転となり、風量シフト値を正の値として風量に加えることで体感温度が下がり快適性が維持される。例えば図6で冷房運転時最大15%制限のとき温度シフト値の下限は+1℃となり、このとき図15に示すように風速が+1m/s増速するように室内風量が制御される。又、暖房運転時の温度シフト値に上限を設けることにより、確実に省エネ運転となり、風量シフト値を負の値として風量に加えることで体感温度が上昇し、快適性が維持される。例えば図14で暖房運転時最大15%制限のとき温度シフト値の下限は−1℃となり、このとき図15に示すように風速が−1m/s減速するように室内風量が制御される。
【0033】
従って、吹出空気温度を算出する吹出温度算出部と、吹出温度及び吹出風量により定まる体感温度を算出又は選択する体感温度算出部と、を備え、省エネモードが選択された時に、所定温度にシフトする際に体感温度を維持する吹出風量を吹出すことにより、ユーザの不快感を低減することができる。
【0034】
さらに、空気調和機は室内の温度(及び湿度)及び風量を制御することにより快適性を保持する。人の温熱感覚は温度、湿度、気流、輻射、着衣量及び活動量の影響を受ける。室内に居る人の行動が変わると、湿度、気流、輻射、着衣量等の条件が同じでも、その人の温熱感覚は変わる。従って、快適性を維持するためには、温度(及び湿度)・風量等をその人の行動に応じて変える必要がある。
【0035】
空気調和機が備える人検知機能から在室者の活動量の情報を得ることができる。この在室者の活動量の情報に応じて室温を変更することにより、在室者の快適性を維持することができる。図13は活動内容と活動量の関係である。人の活動量を表す単位としてMETを用いており、活動内容とその活動内容に対応するMET値を示している。図13の右欄に、活動量の区分例を示す。METの大小により5つの区分に細分化している。又、図14は活動量の区分に応じた温度シフト値の例である。又、図15は消費電力の制限値に応じた風量シフト値の例である。
【0036】
本実施例では、在室者の動き量を検出する赤外線センサと、室内の音を検出する音センサの人検知機能、室内の床面温度及び壁面温度を検出する輻射温度センサ、リモコンの位置を検出する機能、カレンダー機能を用いて温度シフト値及び風量シフト値を設定し、制御する例について述べる。
【0037】
人の活動量は、在室者の動き量を検出する赤外線センサと、室内の音を検出する音センサにより把握する。例えば、同じ時刻に得られた焦電型赤外線センサによる在室者の動きの活発さの検出区分と音センサにより捉えられた音源の周波数による判定の結果を組み合わせて、在室者の活動量を5つに細分化する。活動量に応じた温度シフト値は例えば図14に示すように、冷房運転であれば、活動量最大で+0.3℃、最小で+1.2℃であり、活動量が大きいほどシフト値を小さく設定する。
【0038】
又、自動的に空気調和機の吹出風向をリモコン位置に向けるように制御する場合に、ゾーンシフト値を温度シフト値に加える。空調された快適な風を受けているときには、冷房運転時は吸込空気温度を上げ、暖房運転時は吸込空気温度を下げて、省エネ運転する。例えば図14の冷房運転で、シフト値を+0.6とする。
【0039】
又、室内の壁、床等が日光で暖められ、又、他の暖冷房機等により温度が室温と乖離すると、在室者の温熱感覚が変わってしまう。そこで輻射センサを用いて、室内の床面温度及び壁面温度を検出し、温熱感覚に影響する輻射温度を空気調和機の制御に取入れることにより、輻射温度−室内温度の違いに応じて輻射シフト値を変えることで、よりきめ細かな制御により省エネ運転をはかることができる。例えば、「輻射温度−(マイナス)室内温度」が小さいほど大きな輻射シフト値とし、輻射シフト値を温度シフト値に加える。あるいは、輻射温度−室内温度の値により「温度差正(図14冷房運転ではシフト値0)」、「温度差小(図14冷房運転ではシフト+0.3)」、「温度差負(図14冷房運転ではシフト値+0.6)」に分け、輻射温度−室内温度が大きいほど小さい値を輻射シフト値とし、この輻射シフト値を温度シフト値に加える。これにより、暖房時は輻射温度が高いほど吸込空気温度が設定温度より低めに調整され、冷房時は輻射温度が低いほど吸込空気温度が設定温度より高めに調整される。
【0040】
空気調和機本体と双方向に通信可能なリモコンと、被空調空間内の在室者の活動量を判定するための複数のセンサ及び活動量判定部と、を備え、活動量判定部で判定された在室者の活動判定量に応じて活動シフト値を定め、リモコンの位置に応じて位置シフト値を定め、活動シフト値及び位置シフト値より、設定温度の補正値を算出し、全電流の制限値に応じて設定風量の補正値を算出し、風量設定値及び吸込空気温度の目標温度を補正後の設定値として制御することにより、温度(及び湿度)・風量等をその人の行動に応じて変え、より快適性を高めることができる。
【0041】
又、冷房モードでの運転の際に温度シフトに下限値を設け、活動量より算出される温度シフトが下限値を下回る場合は定められている下限値とするとともに、温度シフト下限値に応じて室内送風機の回転数を大きく制御する。一方、暖房モードでの運転の際に温度シフトに下限値を設け、活動量より算出される温度シフトが下限値を下回る場合は定められている下限値とするとともに、温度シフト下限値に応じて室内送風機の回転数を小さく制御する。
【0042】
一方、人の温熱感覚には、気流も大きな影響を及ぼす。同じ温度でも、気流が強い場合は弱い場合よりも温熱感覚が増大され、気流を涼しく感じるときはより涼しく感じ、気流を暖かく感じるときにはより暖かく感じる。本実施例の空気調和機は、空気調和機本体と双方向に通信可能なリモコンに、位置を検出する機能をもたせ、空気調和機とリモコンとの距離を認識することができる。この機能を利用して、使用者の居るリモコン近くの気流の状態を推定する。リモコンの位置が空気調和機から遠い場合は、空気調和機からの気流は弱く、リモコンの近くに居る使用者も空気調和機からは弱い気流を感じる。反対に、リモコンの位置が空気調和機から近い場合は、空気調和機からの気流は強く、リモコンの近くに居る使用者も空気調和機からは強い気流を感じ、空気調和機からの冷温風を強く感じる。例えば、図14の冷房運転で、リモコン「近」ならば+0.3℃、「中」ならば+0.2℃、「遠」ならば0℃とする。つまり、冷房の場合は室温を若干上げても快適性は許容範囲内に留まり、又、暖房の場合は室温を若干下げても快適性の許容範囲内に留まるので、冷房、暖房ともに、空気調和機は省エネ運転になる。
【0043】
又、本実施例の空気調和機は、リモコン周囲温度から設定温度を減じた値に応じたリモコン温度シフト値を温度シフト値に加える。暖房運転時はリモコン周囲温度が高いほど吸込空気温度が設定温度より低めに調整され、冷房運転時はリモコン周囲温度が低いほど吸込空気温度が設定温度より高めに調整される。例えば図14の冷房運転で、「リモコン周囲温度−(マイナス)設定温度」が3℃以上なら補正シフト値0、−3〜3℃で+0.6℃、−3℃未満で+0.6℃となる。
【0044】
冷房モード、暖房モードでの運転の際に設定温度をあらかじめ定められた基準設定温度に設定するとともに、活動量判定部で判定された在室者の活動判定量に応じた活動シフト値及び位置シフト値により、リモコンの位置が空気調和機から遠いほど、且つ、在室者の前記活動判定量が大きいほど、室内送風機の回転数を大きくして、リモコンに向けて風向を制御する。一方、暖房モードでの運転の際に活動シフト値及び位置シフト値により、リモコンの位置が空気調和機から近いほど、且つ、在室者の活動判定量が大きいほど、室内送風機の回転数を小さく制御する。従って、リモコンの近くにいる在室者の快適性に配慮しつつ、きめ細かく空気調和機を制御することで省エネ運転することができる。
【0045】
又、本実施例の空気調和機は、冷房モードでの運転の際に前記活動シフト値及び前記位置シフト値により在室者の前記活動判定量があらかじめ定められた下限値より小さい場合に、冷房運転を停止し、送風運転に運転モードを切換えることができる。これにより、電力の最大使用時に消費電力制限を行いつつ、在室者の動きの量を組み合わせて在室者の活動量を精度よく判定し、適正に空気調和機を制御できる。
【0046】
又、本実施例の空気調和機は、外気負荷が小さい場合に室外ファン回転数を定められた回転数増速するように制御することができる。これにより、電力の最大使用時に消費電力制限を行いつつ、在室者の動きの量を組み合わせて在室者の活動量を精度よく判定し、適正に空気調和機を制御できる。従って、快適性を考慮しつつ、消費電力制限及び節電運転をすることができる。
【0047】
又、本実施例の空気調和機は、カレンダー機能に基づいて、厳寒期(例えば2月)に近いほど着衣の量が多く、盛夏(例えば8月)に近いほど着衣の量が少ないと判断する。このとき、着衣量が多いほど小さい値の補正シフト値を温度シフト値に加える。例えば図14の冷房運転で、8月はシフト値を+0.2℃、暖房運転で2月はシフト値を−0.2℃とする。従って、快適性に配慮しながら、省エネ運転を図ることができる。
【0048】
又、本実施例の空気調和機は、冷房運転時の温度シフト値は正の値としその上限を定め、暖房運転時の温度シフト値は負の値としその下限を定める。冷房運転時の温度シフト値に上限を設けることにより、省エネ運転を追及するあまり、設定温度から極端に室温が上がり過ぎて快適な空調から逸脱することを防ぐ。例えば図14で冷房運転時の温度シフト上限値を+3℃としている。又、暖房運転時も温度シフト値に下限を設けることにより、設定温度から極端に室温が下がり過ぎて快適な空調から逸脱することを防ぐ。例えば図14で暖房運転時の温度シフト上限値を−5℃としている。これらは、各々の補正シフト値を温度シフト値に加えると、温度シフト値が大きくなりすぎて、設定温度から乖離する可能性があるためである。このように、快適性に配慮しながら、冷房運転時は吸込空気温度を高めに調整し、暖房運転時は吸込空気温度を低めに調節することにより、省エネ運転を図る。
【0049】
なお、空気調和機の暖房能力及び冷房能力は、空気調和機の吸込空気温度と設定温度に基づいて制御される。しかしながら、一般に、室内の高所に据付けられた空気調和機の吸込空気温度は、使用者が位置する室内の床から顔の高さまでの居住空間の温度より高くなる。従って、この温度差を補正するため、設定温度に所定値(温度シフト値)を上乗せした上乗せ設定温度を目標温度にして、吸込空気温度が、上乗せ設定温度(目標温度)に近づくように空気調和機を制御する。所定値としては、空気調和機の構造や運転モード(暖房/冷房/除湿)により相違するが、−1〜5℃程度である。
【符号の説明】
【0050】
1 空気調和機
2 室内機
3 室外機
4 接続配管
5 リモコン
6 筐体ベース
7 熱交換器
8 室内送風機
8a 吹出風路
9 露受皿
10 化粧枠
11 フロントパネル
12 空気吸込口
13 空気吹出口
14 左右風向板
15 上下風向板
16 室内送受信部
17 焦電型赤外線センサ
18 輻射センサ(サーモパイル)
19 音センサ
20 制御部
25 室温センサ
26 湿度センサ
27 リモコン周囲温度センサ
28 リモコン位置センサ
29 カレンダー情報
35 活動量判定部
36a 温度シフト値設定部
36b 風量シフト値設定部
37 目標室温設定部
38 室温設定部
45 空調能力制御部
46、55 圧縮機回転数設定部
47 室内送風機回転数設定部
48 室外送風機回転数設定部
56 室外送風機
62 電力シフト設定部
63 時刻・タイマ設定部
100 通常の冷房運転
101 省エネ冷房運転
102 省エネピークカット冷房運転
103 高負荷運転時の室内送風機8の回転数が低負荷運転時の室内送風機8の回転数より高めた省エネピークカット冷房運転
104 設定温度
105 補正後の設定温度
900 室内
901 室外

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内へ空調した空気を吹出す送風機と、圧縮機と、吹出空気温度を算出する吹出温度算出部と、を備え、
冷房運転時及び暖房運転時にそれぞれ省エネモードを選択可能であり、
前記省エネモードは、
前記冷房運転時に前記省エネモードを選択すると、設定温度を上げる変更を行い、
前記暖房運転時に前記省エネモードを選択すると、前記設定温度を下げる変更を行い、
前記圧縮機の能力の最大値を所定の値に制限し、
前記吹出温度算出部により算出される吹出空気温度が変更後の前記設定温度に近づくよう前記送風機を制御する空気調和機。
【請求項2】
空気調和機の運転は、前記室内の温度を前記設定温度に近づける高負荷運転と、前記室内の温度を前記設定温度に維持する低負荷運転とから構成され、
前記省エネモードは、
前記高負荷運転時に前記圧縮機の能力の最大値を所定の値に制限し、
前記高負荷運転時から前記低負荷運転に切り替わる際、前記送風機の回転数を下げることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
室内へ空調した空気を吹出す送風機と、圧縮機と、吹出空気温度を算出する吹出温度算出部と、前記吹出空気温度及び吹出風量により算出される体感温度を算出する体感温度算出部と、を備え、
前記省エネモードは、
前記冷房運転時に前記省エネモードを選択すると、設定温度を上げる変更を行い、
前記暖房運転時に前記省エネモードを選択すると、前記設定温度を下げる変更を行い、
前記圧縮機の能力の最大値を所定の値に制限し、
前記体感温度算出部により算出される体感温度が変更後の前記設定温度に近づくよう前記送風機を制御する空気調和機。
【請求項4】
空気調和機の運転は、室内の温度を設定温度に近づける高負荷運転と、前記室内の温度を設定温度に維持する低負荷運転とから構成され、
前記省エネモードは、
前記高負荷運転時に前記圧縮機の能力の最大値を所定の値に制限し、
前記冷房運転時に前記省エネモードを選択すると、前記高負荷運転時から前記低負荷運転に切り替わる際、前記送風機の回転数を上げ、
前記暖房運転時に前記省エネモードを選択すると、前記高負荷運転時から前記低負荷運転に切り替わる際、前記送風機の回転数を下げることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
空気調和機本体と双方向に通信可能なリモコンと、を備え、
前記省エネモードは、
前記リモコンの位置が前記空気調和機本体から遠いほど、前記高負荷運転時から前記低負荷運転に切り替わる際の前記送風機の回転数の増減幅が大きいことを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記室内の在室者の活動量を判定するための複数のセンサ及び活動量判定部と、を備え、
前記活動量判定部で判定された在室者の活動判定量に応じて前記設定温度を変えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項7】
前記冷房運転時に在室者の活動判定量があらかじめ定められた下限値より小さい場合に、前記冷房運転を停止し、送風運転に切換えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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