説明

空気調和装置及び空気調和方法

【課題】 蒸発器や放熱器で送風機の風量が変動しても、調和空気の温度を安定させる。
【解決手段】 冷媒の吐出量を電気的手段3によって制御できる圧縮機5と、圧縮機5で圧縮された冷媒を液化する放熱器9と、液化した冷媒を膨張させて気化する膨張弁11,13と、気化した冷媒を空気と熱交換して調和空気を作り出す蒸発器15と、空気を蒸発器15へ送る送風機17とを有する空気調和装置において、送風機17の風量変化に応じて、圧縮機5の冷媒吐出量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられる空気調和装置及び空気調和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に「電気自動車の空調装置」が記載されている。
【0003】
これは圧縮機で圧縮した冷媒を放熱させて液化し、断熱膨張させて気化し、送風機の空気と蒸発器で熱交換して調和空気を作り出す空調装置であり、送風機の回転数(風量)に応じて、圧縮機の回転数(冷媒の吐出量)の上限値を制御するように構成されている。
【特許文献1】特許3316014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、蒸発器から吹き出される調和空気の温度は、外気温度、日射量、車室温度などの条件によって大きく変動することがあり、上記のように蒸発器を通過する空気量(風量)に応じて冷媒の吐出量を制限するように構成すると、調和空気の温度が想定値より低すぎる場合は、この構成に基づいて送風機の風量に応じて、圧縮機の冷媒吐出量の上限を設けるだけでは、圧縮機の冷媒吐出量を減らしきれずに、蒸発器が凍結する恐れがある。また、調和空気の温度が想定値より高い場合は、風量と冷媒吐出量を減らすと、調和空気の温度分布が不均一になり、例えば、運転席側の吹き出し口と助手席側の吹き出し口とで吹き出し温度が不均一になり、快適性が損なわれる恐れがあるから、調和空気の温度が想定値に達するまでは、風量と冷媒吐出量の上記のような制限は避けるべきである。
【0005】
そこで、この発明は、送風機の風量の変動に対応して調和空気の温度を安定させる空気調和装置及び空気調和方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の空気調和装置は、冷媒の吐出量を電気的手段によって制御できる圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を液化する放熱器と、液化した前記冷媒を膨張させて気化する膨張弁と、気化した前記冷媒を空気と熱交換して調和空気を作り出す蒸発器と、前記空気を前記蒸発器へ送る送風機とを有する空気調和装置であって、前記送風機の風量変化に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御(増減)することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載された空気調和装置であって、前記蒸発器を通過した空気の温度を検知する空気温度検知手段を設け、前記空気温度検知手段が検知した空気温度に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載された空気調和装置であって、前記蒸発器を通過した空気の温度を検知する空気温度検知手段と、前記蒸発器を通過した空気の温度を目標値に設定する目標温度設定手段とを設け、前記空気温度検知手段が検知した空気温度と、前記目標温度設定手段が設定した目標値との差に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御するか否かを決定することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の空気調和装置は、冷媒の吐出量を電気的手段によって制御できる圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を空気と熱交換して調和空気を作り出す放熱器と、前記放熱器から流出した前記冷媒を膨張させて気化する膨張弁と、前記空気を前記放熱器へ送る送風機とを有する空気調和装置であって、前記送風機の風量変化に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御(増減)することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載された空気調和装置であって、前記放熱器を通過した空気の温度を検知する空気温度検知手段を設け、前記空気温度検知手段が検知した空気温度に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載された空気調和装置であって、前記放熱器を通過した空気の温度を検知する空気温度検知手段と、前記放熱器を通過した空気の温度を目標値に設定する目標温度設定手段とを設け、前記空気温度検知手段が検知した空気温度と前記目標温度設定手段が設定した目標値との差に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御するか否かを決定することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の空気調和方法は、冷媒を、圧縮機で圧縮し、放熱器で放熱させて液化し、膨張弁で断熱膨張させ、蒸発器で送風機から送られる空気と熱交換して調和空気を作り出す空気調和方法であって、前記送風機の風量変化に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御(増減)することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載された空気調和方法であって、前記蒸発器を通過した空気の温度を検知し、検知した空気温度に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載された空気調和方法であって、前記蒸発器を通過した空気の温度を検知し、前記空気温度の目標値を設定し、検知した前記空気温度と、前記目標値との差に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御するか否かを決定することを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の空気調和方法は、冷媒を、圧縮機で圧縮し、放熱器で送風機から送られる空気と熱交換させて調和空気を作り出し、膨張弁で断熱膨張させる空気調和方法であって、前記送風機の風量変化に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御(増減)することを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載された空気調和方法であって、前記放熱器を通過した空気の温度を検知し、検知した空気温度に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項10に記載された空気調和方法であって、前記放熱器を通過した空気の温度を検知し、前記空気温度の目標値を設定し、検知した前記空気温度と、前記目標値との差に応じて、前記圧縮機の冷媒吐出量を制御するか否かを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の空気調和装置は、冷房モードにおいて、蒸発器に空気を送る送風機の風量変化に応じて圧縮機の冷媒吐出量を制御するように構成したので、蒸発器から吹き出される調和空気の風量変化に対して迅速に応答することが可能になり、調和空気の温度を安定させることができる。
【0019】
従って、蒸発器の通過空気量に応じて冷媒吐出量を制限する従来例と異なり、送風機の風量が減った際に、圧縮機の吐出量の上限値のみを設定する制御を行わないから、調和空気の温度が想定値より低くなっても蒸発器が凍結することはない。また、調和空気の温度が想定値より高くても調和空気の温度分布が不均一になることはなく、運転席側の吹き出し口と助手席側の吹き出し口とで吹き出し温度が均一になって、快適性が高く維持される。
【0020】
請求項2に記載の空気調和装置は、温度検知手段で測定した調和空気(蒸発器を通過した空気)の温度に応じて圧縮機の冷媒吐出量を制御するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、その温度を安定させることができる。
【0021】
請求項3に記載の空気調和装置は、圧縮機の冷媒吐出量を制御するか否かを、目標温度設定手段が設定した調和空気の目標値(目標温度)と、温度検知手段が測定した調和空気温度との差に応じて決定するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、その温度を安定させることができる。
【0022】
請求項4に記載の空気調和装置は、暖房モードにおいて、放熱器に空気を送る送風機の風量変化に応じて圧縮機の冷媒吐出量を制御するように構成したので、放熱器から吹き出される調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、調和空気の温度を安定させることができる。
【0023】
請求項5に記載の空気調和装置は、温度検知手段で測定した調和空気(放熱器を通過した空気)の温度に応じて圧縮機の冷媒吐出量を制御するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、その温度を安定させることができる。
【0024】
請求項6に記載の空気調和装置は、圧縮機の冷媒吐出量を制御するか否かを、目標温度設定手段が設定した調和空気の目標値(温度)と、温度検知手段が測定した調和空気温度との差に応じて決定するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、その温度を安定させることができる。
【0025】
請求項7に記載の空気調和方法によれば、冷房モードにおいて、蒸発器に空気を送る送風機の風量変化に応じて圧縮機の冷媒吐出量を制御するように構成したので、蒸発器から吹き出される調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、調和空気の温度を安定させることができる。
【0026】
従って、蒸発器の通過空気量に応じて冷媒吐出量を制限する従来例と異なり、送風機の風量が減った際に、圧縮機の吐出量の上限値のみを設定する制御を行わないから、調和空気の温度が想定値より低くなっても蒸発器が凍結することはない。また、調和空気の温度が想定値より高くても調和空気の温度分布が不均一になることはなく、運転席側の吹き出し口と助手席側の吹き出し口とで吹き出し温度が均一になって、快適性が高く維持される。
【0027】
請求項8に記載の空気調和方法によれば、温度検知手段で測定した調和空気(蒸発器を通過した空気)の温度(温度変化)に応じて圧縮機の冷媒吐出量を制御するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、その温度を安定させることができる。
【0028】
請求項9に記載の空気調和方法によれば、圧縮機の冷媒吐出量を制御するか否かを、目標温度設定手段が設定した調和空気の目標値(目標温度)と、温度検知手段が測定した調和空気温度との差に応じて決定するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、その温度を安定させることができる。
【0029】
請求項10に記載の空気調和方法によれば、暖房モードにおいて、放熱器に空気を送る送風機の風量変化に応じて圧縮機の冷媒吐出量を制御するように構成したので、放熱器から吹き出される調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、調和空気の温度を安定させることができる。
【0030】
請求項11に記載の空気調和方法によれば、温度検知手段で測定した調和空気(放熱器を通過した空気)の温度(温度変化)に応じて圧縮機の冷媒吐出量を制御するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、その温度を安定させることができる。
【0031】
請求項12に記載の空気調和方法によれば、圧縮機の冷媒吐出量を制御するか否かを、目標温度設定手段が設定した調和空気の目標値(目標温度)と、温度検知手段が測定した調和空気温度との差に応じて決定するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、その温度を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<実施形態>
図1〜図6を参照しながら本発明の空気調和装置1及び空気調和方法を説明する。図1は冷房モードでの空気調和装置1の構成を示すブロック図、図2は暖房モードでの空気調和装置1の構成を示すブロック図、図3は空気調和装置1のシステム図、図4と図5と図6はブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御するフローチャートである。
【0033】
空気調和装置1は、図1と図2のように、電動モータ3(電気的手段)によって駆動され冷媒(例えば、炭酸ガス:R744)を圧縮する圧縮機5と、圧縮された冷媒を空気と熱交換して調和空気(暖気)を作り出す室内放熱器7と、熱交換後の冷媒を放熱させて液化する室外熱交換器9(放熱器:コンデンサ)と、液化した冷媒を断熱膨張して気化させる減圧器11,13(膨張弁)と、気化した冷媒を空気(外気)と熱交換して空調空気(冷気)を作り出す室内熱交換器15(蒸発器:エバポレータ)と、室内熱交換器15へ空気を送るブロワー17(送風機)とを有し、ブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御するように構成され、
また、室内熱交換器15を通過した空気の温度を検知する空気温度センサ19(空気温度検知手段)を設け、圧縮機5による前記冷媒吐出量の制御は、空気温度センサ19が検知した空気温度に応じて行われ、
あるいは、室内熱交換器15を通過した空気の温度を目標値に設定する目標温度設定手段21と、コントローラ23を設け、空気温度センサ19が検知した空気温度と、目標温度設定手段21が設定した目標値(目標温度)との差に応じてコントローラ23が圧縮機5の冷媒吐出量を制御するか否かを決定する。
【0034】
また、ブロワー17は電動モータ25と電動モータ25によって回転駆動されるファン27とからなり、目標温度設定手段21はコントローラ23の内部に、その機能の一部として組み込まれている。
【0035】
また、図示されていないが、空気調和装置1には、上記の各センサに加えて、日射量を検知するセンサと、車室内の温度を検知する車室温度センサが設けられており、コントローラ23には各センサからの情報が入力される。
【0036】
コントローラ23は、車室内の温度設定が行われると、各センサからの外気温度(空気温度センサ41から入力)、日射量、車室温度、室内熱交換器15の通過空気温度などの情報に基づいて、例えば、車室温度と設定温度の差(車室温度−設定温度)に応じてブロワー17(電動モータ25)と圧縮機5(電動モータ3)に必要な電力(電圧)を出力する。
【0037】
空気調和装置1は、車両用の空調システムに用いられており、図3は冷房モードと暖房モードでの冷媒の流れを示している。
【0038】
冷房モードでは、暖房モード用の減圧器13が閉止されており、実線の矢印が示すように、圧縮機5で圧縮され高圧高温の気体になった冷媒は、冷媒温度センサ29による温度測定と圧力センサ31による圧力測定の後、室内放熱器7で車室内に供給される空気と熱交換して適度に冷却され、冷媒温度センサ33によって温度が測定され、また、室内放熱器7の出口側で空気温度センサ35により空気温度が測定される。室内放熱器7から流出した冷媒は、電磁弁37を閉止し三方弁39を切り替えることによって室外熱交換器9に導かれ、外気と熱交換して液化し、ここで、外気の温度が空気温度センサ41によって測定され、液化した冷媒は冷媒温度センサ43による温度測定の後、逆止弁45を通って内部熱交換器47まで移動し、さらに減圧器11で断熱膨張して気化し、室内熱交換器15でブロワー17によって送られた外気と熱交換して冷気を作り出し、室内熱交換器15を通過した空気の温度が空気温度センサ19で測定される。室内熱交換器15で作り出された冷気はエアミックスドア49の開度調整により外気との混合比を0%〜100%の範囲で調整されて調和空気になり、ブロワー17の風力によって車室内に吹き出される。また、室内熱交換器15から流出した冷媒はアキュムレータ51で気体と液体とが分離され、内部熱交換器47で上記断熱膨張前後の高圧ラインの冷媒と低圧ラインの冷媒とで熱交換した後、圧縮機5に戻り、以下、このサイクルを繰り返す。
【0039】
また、コントローラ23は空気温度センサ19が検知した室内熱交換器15の通過空気温度に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御し、あるいは、コントローラ23内の目標温度設定手段21は室内熱交換器15を通過する空気温度の目標値を設定し、コントローラ23は空気温度センサ19が検知した空気温度と目標温度設定手段21が設定した目標値との差に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御するか否かを決定する。
【0040】
また、暖房モードでは、冷房モード用の減圧器11が閉止されており、一点鎖線の矢印が示すように、圧縮機5で圧縮され高圧高温の気体になった冷媒は、室内放熱器7で車室内に供給される空気と熱交換して暖気を作り出し、この暖気は、エアミックスドア49により室内熱交換器15からの空気との混合比を0%〜100%の範囲で調整されて調和空気になり車室内に吹き出される。室内放熱器7で冷却された冷媒は電磁弁37の開放と三方弁39の閉止と逆止弁45の逆流防止機能によって内部熱交換器47に導かれ、さらに減圧器13で断熱膨張して気化し、逆止弁53を通って室外熱交換器9に導かれ、外気と熱交換して吸熱し、三方弁39と逆止弁55を通り、アキュムレータ51で気体と液体とが分離され、内部熱交換器47で上記断熱膨張前後の高圧ラインの冷媒と低圧ラインの冷媒とで熱交換した後、圧縮機5に戻り、以下、このサイクルを繰り返す。
【0041】
また、コントローラ23は空気温度センサ35が検知した室内放熱器7の通過空気温度に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御し、あるいは、コントローラ23内の目標温度設定手段21は室内放熱器7を通過する空気温度の目標値を設定し、コントローラ23は空気温度センサ35が検知した空気温度と目標温度設定手段21が設定した目標値との差に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御するか否かを決定する。
【0042】
次に、空気調和装置1及び空気調和方法の実施例1と実施例2と実施例3を説明する。これらの実施例は冷房モードでの制御であり、ブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を温度変化に先行して制御し、室内熱交換器15の通過空気温度を安定させる(通過空気温度の変化を未然に防ぐ)。
【0043】
(実施例1)
実施例1は、本発明の空気調和装置1及び空気調和方法により、ブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御する例であり、以下、図4のフローチャートに基づいてその制御手順(ステップ:S)を説明する。各ステップ(S)での判断と制御はコントローラ23によって行われる。
【0044】
S0では、空気調和装置1(圧縮機5)が稼働中であるか否かを判断し、稼働中であればS11へ進み、稼働中でなければ、空気調和装置1が停止していると判断して制御を中止する。
【0045】
S11では、空気温度センサ19から読み込んだ室内熱交換器15の通過空気温度が変化したか否かによって、ブロワー17の風量が変化しているか否かを判定し、変化していればS12へ進み、変化していなければS33へ進む。
【0046】
S12では、上記のように通過空気の温度変化によって、ブロワー17の風量が増加中であるか減少中であるかを判定し、増加中であればS13へ進み、減少中であればS23へ進む。
【0047】
S13では、電動モータ3を介して圧縮機5の回転数を5Hzだけ増加させ、制御を終了する。
【0048】
S23では、電動モータ3を介して圧縮機5の回転数を5Hzだけ減少させ、制御を終了する。
【0049】
S33では、S11でブロワー17の風量が変化していないという判断の下に、圧縮機5に対して通常の回転数制御を行った後、制御を終了する。
【0050】
なお、S13とS23において、圧縮機5に与える回転数の変化量(増減数)は、圧縮機5の性能、室内熱交換器15の性能、車両のサイズなどによって任意に設定してよい。例えば、上記の5Hzは、空気調和装置1において、ブロワー17の風量が変化しても室内熱交換器15の通過空気温度を実質的に一定に保つために選択され、設定された値である。
【0051】
この実施例1が示すように、空気調和装置1及び空気調和方法は、ブロワー17の回転数変化を検知し、室内熱交換器15の通過空気温度(調和空気の温度)が変化する前に、圧縮機5の回転数(冷媒吐出量)を先行して増減することにより、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、調和空気の温度を安定させることができる。
【0052】
また、上記のように圧縮機5の増減回転数を5Hzに留めていると共に、従来例と異なって圧縮機の吐出量の上限値のみを設定する制御を行わない。
【0053】
従って、調和空気の温度が想定値より低くなっている場合でも室内熱交換器15が凍結することはなく、また、調和空気の温度が想定値より高くても調和空気の温度分布が不均一にならず、運転席側の吹き出し口と助手席側の吹き出し口とで吹き出し温度が均一になって快適性が高く維持される。
【0054】
(実施例2)
実施例2は、本発明の空気調和装置1及び空気調和方法により、ブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御する例であり、以下、図5のフローチャートに基づいて説明する。各ステップ(S)での判断と制御はコントローラ23によって行われる。また、S121とS221で“Tint”は空気温度センサ19が検知した室内熱交換器15の通過空気温度である。
【0055】
S0では、空気調和装置1(圧縮機5)が稼働中であるか否かを判断し、稼働中であればS11へ進み、稼働中でなければ、空気調和装置1が停止していると判断して制御を中止する。
【0056】
S11では、空気温度センサ19から読み込んだ室内熱交換器15の通過空気温度が変化したか否かによって、ブロワー17の風量が変化しているか否かを判定し、変化していればS12へ進み、変化していなければS33へ進む。
【0057】
S12では、上記のように通過空気の温度変化によって、ブロワー17の風量が増加中であるか減少中であるかを判定し、増加中であればS121へ進み、減少中であればS221へ進む。
【0058】
S121では、空気温度センサ19が検知した室内熱交換器15の通過空気温度であるTintが3℃より高い(Tint>3℃)か否かを判定し、Tintが3℃より高ければ、室内熱交換器15の通過空気温度が高すぎると判断してS13へ進み、Tintが3℃以下であれば、室内熱交換器15の通過空気温度が適正であると判断してS122へ進む。
【0059】
S221では、Tintが3℃より低い(Tint<3℃)か否かを判定し、Tintが3℃より低ければ、室内熱交換器15の通過空気温度が低すぎると判断してS23へ進み、Tintが3℃以上であれば、室内熱交換器15の通過空気温度が適正であると判断してS222へ進む。
【0060】
S13では、電動モータ3を介して圧縮機5の回転数を5Hzだけ増加させ、制御を終了する。
【0061】
S23では、電動モータ3を介して圧縮機5の回転数を5Hzだけ減少させ、制御を終了する。
【0062】
S122とS222とS33では、室内熱交換器15の通過空気温度が適正であるとの判断の下に、圧縮機5に対して通常の回転数制御を行った後、制御を終了する。
【0063】
なお、S121とS221のように、圧縮機5の回転数制御を行うか否かの基準値を3℃に設定した理由は、室内熱交換器15(蒸発器)から吹き出される空気の温度が3℃を境にして変動すると、車室内で人間がこれを快適か否かと感知するとされているからである。
【0064】
この実施例2が示すように、空気調和装置1及び空気調和方法は、ブロワー17の回転数変化を検知し、室内熱交換器15の通過空気温度(調和空気の温度)が3℃を境にして変化する前に、圧縮機5の回転数(冷媒吐出量)を先行して増減することにより、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、調和空気の温度を安定させることができる。
【0065】
また、上記のように圧縮機5の増減回転数を5Hzに留めていると共に、空気温度3℃を境にして回転数の前記増減を行っており、さらに、従来例と異なって圧縮機の吐出量の上限値のみを設定する制御を行わない。
【0066】
従って、調和空気の温度が想定値(3℃)より低くい場合でも、室内熱交換器15の凍結が防止される。また、調和空気の温度が想定値(3℃)より高い場合でも、調和空気の温度分布が不均一にならず、運転席側の吹き出し口と助手席側の吹き出し口とで吹き出し温度が均一になり、快適性が高く維持される。
【0067】
(実施例3)
実施例3は、本発明の空気調和装置1及び空気調和方法により、ブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御する例であり、以下、図6のフローチャートに基づいて説明する。各ステップ(S)での判断と制御はコントローラ23によって行われる。また、“Tint”は空気温度センサ19が検知した室内熱交換器15の通過空気温度であり、“Ttarget_int”は目標温度設定手段21が設定した前記通過空気温度の目標値(目標温度)である。
【0068】
S0では、空気調和装置1(圧縮機5)が稼働中であるか否かを判断し、稼働中であればS11へ進み、稼働中でなければ、空気調和装置1が停止していると判断して制御を中止する。
【0069】
S11では、空気温度センサ19から読み込んだ室内熱交換器15の通過空気温度が変化したか否かによって、ブロワー17の風量が変化しているか否かを判定し、変化していればS12へ進み、変化していなければS33へ進む。
【0070】
S12では、上記のように通過空気の温度変化によって、ブロワー17の風量が増加中であるか減少中であるかを判定し、増加中であればS141へ進み、減少中であればS251へ進む。
【0071】
S141では、空気温度センサ19によって検知された室内熱交換器15の通過空気温度であるTintが目標温度設定手段21によって設定された前記通過空気温度の目標値であるTtarget_intより高い(Tint>Ttarget_int)か否かを判定し、TintがTtarget_intより高ければ、室内熱交換器15の通過空気温度が高すぎると判断してS43へ進み、TintがTtarget_int以下であれば、室内熱交換器15の通過空気温度が適正であると判断してS122へ進む。
【0072】
S251では、TintがTtarget_intより低い(Tint<Ttarget_int)か否かを判定し、TintがTtarget_intより低ければ、室内熱交換器15の通過空気温度が低すぎると判断してS53へ進み、TintがTtarget_jnt以上であれば、室内熱交換器15の通過空気温度が適正であると判断してS222へ進む。
【0073】
S43では、電動モータ3を介して圧縮機5の回転数を(Tint−Ttarget_int)Hzだけ増加させた後、制御を終了する。なお、ここで一定の定数を乗算してもよい。
【0074】
S53では、電動モータ3を介して圧縮機5の回転数を(Ttarget_int−Tint)Hzだけ減少させた後、制御を終了する。なお、ここで一定の定数を乗算してもよい。
【0075】
S122とS222とS33では、室内熱交換器15の通過空気温度が適正であるとの判断の下に、圧縮機5に対して通常の回転数制御を行った後、制御を終了する。
【0076】
この実施例3が示すように、空気調和装置1及び空気調和方法は、ブロワー17の回転数変化を検知し、室内熱交換器15の通過空気温度Tintと通過空気温度の目標値Ttarget_intとの差に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、調和空気の温度を安定させることができる。
【0077】
また、上記のように室内熱交換器15の通過空気温度とその目標値との差に基づいて圧縮機5の回転数増減を行っており、さらに、従来例と異なって圧縮機の吐出量のみを設定する制御を行わない。
【0078】
従って、調和空気の温度が想定値より低い場合でも、必要に応じて圧縮機の吐出量を減らすことができ、室内熱交換器15の凍結が防止される、また、調和空気の温度が想定値より高い場合でも、必要に応じて圧縮機の吐出量を増やすことができ、調和空気の温度分布が不均一にならず、運転席側の吹き出し口と助手席側の吹き出し口とで吹き出し温度が均一になり、快適性が高く維持される。
【0079】
次に、空気調和装置1及び空気調和方法の実施例4と実施例5と実施例6を説明する。これらの実施例は暖房モードでの制御であり、ブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を温度変化に先行して制御し、室内放熱器7の通過空気温度を安定させる(通過空気温度の変化を未然に防ぐ)。
【0080】
(実施例4)
実施例4の制御は、図4に示す実施例1のフローチャートにおいて、室内熱交換器15の通過空気温度を室内放熱器7の通過空気温度に置き換えたものに相当する。
【0081】
この実施例4のように、空気調和装置1及び空気調和方法は、室内放熱器7に空気を送るブロワー17の回転数変化を検知し、室内放熱器7の通過空気温度(調和空気の温度)が変化する前に、圧縮機5の回転数(冷媒吐出量)を先行して増減することにより、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、調和空気の温度を安定させることができる。
【0082】
(実施例5)
実施例5の制御は、図5に示す実施例2のフローチャートにおいて、(Tint>3℃)を(Tsgc<55℃)に置き換え、(Tint<3℃)を(Tsgc>55℃)に置き換えたものに相当する。なお、“Tsgc”は空気温度センサ35が検知した室内放熱器7の通過空気温度である。
【0083】
この実施例5のように、空気調和装置1及び空気調和方法は、室内放熱器7に空気を送るブロワー17の回転数変化を検知し、室内放熱器7の通過空気温度(調和空気の温度)が55℃を境にして変化する前に、圧縮機5の回転数(冷媒吐出量)を先行して増減することにより、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、調和空気の温度を安定させることができる。
【0084】
なお、上記のように、圧縮機5の回転数制御を行うか否かの基準値を55℃に設定した理由は、室内放熱器7から吹き出される空気の温度が55℃を境にして変動すると、車室内で人間がこれを快適か否かと感知するとされているからである。
【0085】
(実施例6)
実施例6の制御は、図6に示す実施例3のフローチャートにおいて、(Tint>Ttarget_int)を(Tsgc<Ttarget_sgc)に置き換え、(Tint<Ttarget_int)を(Tsgc>Ttarget_sgc)に置き換えたものに相当する。なお、“Tsgc”は空気温度センサ35が検知した室内放熱器7の通過空気温度であり、“Ttarget_sgc”は目標温度設定手段21が設定した室内放熱器7の通過空気温度の目標値である。
【0086】
この実施例6のように、空気調和装置1及び空気調和方法は、ブロワー17の回転数変化を検知し、室内放熱器7の通過空気温度Tsgcと通過空気温度の目標値Ttarget_sgcとの差に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御するので、調和空気の風量変化に対して迅速に応答し、調和空気の温度を安定させることができる。
【0087】
[本発明の範囲に含まれる他の態様]
なお、本発明は上述した実施形態に限定解釈されるものではなく、本発明の技術的な範囲内で様々な変更が可能である。
【0088】
例えば、風量変化に応じて圧縮機の冷媒吐出量の制御を開始する基準温度は、実施例での設定温度である3℃や55℃に限らず、必要に応じて任意に設定してよく、また、圧縮機の回転数の増減数である5Hzも必要に応じて任意に設定してよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】冷房モードでの空気調和装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】暖房モードでの空気調和装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】空気調和装置1のシステム図である。
【図4】ブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御するフローチャートである。
【図5】ブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御するフローチャートである。
【図6】ブロワー17の風量変化に応じて圧縮機5の冷媒吐出量を制御するフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1 空気調和装置
3 電動モータ(電気的手段)
5 圧縮機
7 室内放熱器
9 室外熱交換器(放熱器:コンデンサ)
11,13 減圧器(膨張弁)
15 室内熱交換器(蒸発器:エバポレータ)
17 ブロワー(送風機)
19 空気温度センサ(空気温度検知手段)
21 目標温度設定手段
23 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の吐出量を電気的手段(3)によって制御できる圧縮機(5)と、前記圧縮機(5)で圧縮された冷媒を液化する放熱器(9)と、液化した前記冷媒を膨張させて気化する膨張弁(11)と、気化した前記冷媒を空気と熱交換して調和空気を作り出す蒸発器(15)と、前記空気を前記蒸発器(15)へ送る送風機(17)とを有する空気調和装置(1)であって、
前記送風機(17)の風量変化に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御することを特徴とする空気調和装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載された空気調和装置(1)であって、
前記蒸発器(15)を通過した空気の温度を検知する空気温度検知手段(19)を設け、
前記空気温度検知手段(19)が検知した空気温度に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御することを特徴とする空気調和装置(1)。
【請求項3】
請求項1に記載された空気調和装置(1)であって、
前記蒸発器(15)を通過した空気の温度を検知する空気温度検知手段(19)と、前記蒸発器(15)を通過した空気の温度を目標値に設定する目標温度設定手段(21)とを設け、
前記空気温度検知手段(19)が検知した空気温度と、前記目標温度設定手段(21)が設定した目標値との差に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御するか否かを決定することを特徴とする空気調和装置(1)。
【請求項4】
冷媒の吐出量を電気的手段(3)によって制御できる圧縮機(5)と、前記圧縮機(5)で圧縮された冷媒を空気と熱交換して調和空気を作り出す放熱器(7)と、前記放熱器(7)から流出した前記冷媒を膨張させて気化する膨張弁(13)と、前記空気を前記放熱器(7)へ送る送風機(17)とを有する空気調和装置(1)であって、
前記送風機(17)の風量変化に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御することを特徴とする空気調和装置(1)。
【請求項5】
請求項4に記載された空気調和装置(1)であって、
前記放熱器(7)を通過した空気の温度を検知する空気温度検知手段(35)を設け、
前記空気温度検知手段(35)が検知した空気温度に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御することを特徴とする空気調和装置(1)。
【請求項6】
請求項4に記載された空気調和装置(1)であって、
前記放熱器(7)を通過した空気の温度を検知する空気温度検知手段(35)と、前記放熱器(7)を通過した空気の温度を目標値に設定する目標温度設定手段(21)とを設け、
前記空気温度検知手段(35)が検知した空気温度と前記目標温度設定手段(21)が設定した目標値との差に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御するか否かを決定することを特徴とする空気調和装置(1)。
【請求項7】
冷媒を、圧縮機(5)で圧縮し、放熱器(9)で放熱させて液化し、膨張弁(11)で断熱膨張させ、蒸発器(15)で送風機(17)から送られる空気と熱交換して調和空気を作り出す空気調和方法であって、
前記送風機(17)の風量変化に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御することを特徴とする空気調和方法。
【請求項8】
請求項7に記載された空気調和方法であって、
前記蒸発器(15)を通過した空気の温度を検知し、検知した空気温度に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御することを特徴とする空気調和方法。
【請求項9】
請求項7に記載された空気調和方法であって、
前記蒸発器(15)を通過した空気の温度を検知し、前記空気温度の目標値を設定し、
検知した前記空気温度と、前記目標値との差に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御するか否かを決定することを特徴とする空気調和方法。
【請求項10】
冷媒を、圧縮機(5)で圧縮し、放熱器(7)で送風機(17)から送られる空気と熱交換させて調和空気を作り出し、膨張弁(13)で断熱膨張させる空気調和方法であって、
前記送風機(17)の風量変化に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御することを特徴とする空気調和方法。
【請求項11】
請求項10に記載された空気調和方法であって、
前記放熱器(7)を通過した空気の温度を検知し、検知した空気温度に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御することを特徴とする空気調和方法。
【請求項12】
請求項10に記載された空気調和方法であって、
前記放熱器(7)を通過した空気の温度を検知し、前記空気温度の目標値を設定し、
検知した前記空気温度と、前記目標値との差に応じて、前記圧縮機(5)の冷媒吐出量を制御するか否かを決定することを特徴とする空気調和方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−166805(P2009−166805A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10319(P2008−10319)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】