説明

空気質成分供給装置

【課題】装置の大型化を抑えつつ、複数箇所に空気砲を供給すること。
【解決手段】顔位置Psが基準位置Pdよりも上側にある場合には(ステップS50で上側判定)、チャンバ内温度Tcが算出した空気砲温度Taよりも高くなるように(ステップS70でYesとなるように)、ペルチェ素子140を過熱動作させる(ステップS80)。一方、顔位置Psが基準位置Pdよりも下側にある場合には(ステップS50で下側判定)、チャンバ内温度Tcが算出した空気砲温度Taよりも低くなるように(ステップS100でYesとなるように)、ペルチェ素子140を冷却動作させる(ステップS110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気質成分を含んだ空気砲を外部に供給するための空気質成分供給装置に関し、特に、空気砲の放出方向を変更可能にしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の空気質成分供給装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。これは、芳香ユニット内の芳香成分を注入ダクトを介してケース内に供給し、ケース内に設けられた圧縮手段を作動させることで、当該ケース内に溜められた芳香成分を保持する空気を圧縮して放出孔から空気を吐出し、この吐出された空気によって生成された空気砲を所定方向へ向けて放出する構成である。
【特許文献1】特開2004−298607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の従来装置では、空気砲の進行方向は一定とされているため、この空気砲を供給できる位置は一箇所に限定される。従って、空気砲を複数箇所に供給したい場合であっても、これができないという問題がある。
【0004】
これに対して、ケースの姿勢を変更するためのアクチュエータを設け、空気砲の放出方向を変更する方法があるが、この場合には、アクチュエータ等の姿勢変更のための機構が別途必要となるため装置が大型化するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置の大型化を抑えつつ、複数箇所に空気砲を供給することができる空気質成分供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、空気質成分を含んだ空気砲を外部に供給するための空気質成分供給装置であって、空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、空気質成分チャンバから空気砲を放出する放出孔と、空気質成分チャンバを圧縮して前記放出孔から空気砲を放出させる圧縮手段と、空気質成分チャンバ内の温度(チャンバ内温度)を変更する温度変更手段と、温度変更手段の動作を制御する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明によれば、温度変更手段を制御することでチャンバ内温度を変更し、放出される空気砲の温度を変更できる。これにより、空気砲の放出方向(弾道)を上方向あるいは下方向に変更させることができるため、複数箇所に空気砲を放出することができる。また、空気砲の放出方向(弾道)を変更するために、アクチュエータ等の放出孔の開口方向を変更するための機構が不要であるため、装置の大型化を抑えることができる。
【0008】
請求項2の発明では、温度変更手段は、ペルチェ素子により構成されていることを特徴としている。
【0009】
これによれば、1つの素子で空気質成分チャンバ内を加熱及び冷却することができるため、加熱、冷却のためにそれぞれ個別に温度変更のための機構が不要となり、構成を簡素化することができる。
【0010】
請求項3の発明では、温度変更手段は、外部に備えられた空調装置で生成される空調空気を、空気質成分チャンバに案内するダクトと、ダクトを開閉する開閉部材とから構成されており、制御手段は、開閉部材を開閉制御することを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明によれば、既存の装置を利用して空気質成分チャンバ内の温度を変更するようにしているため、構成の簡素化を図ることができる。
【0012】
請求項4の発明では、空気砲を供給すべき位置(供給位置)を検出する位置検出手段を備え、制御手段は、供給位置に応じて温度変更手段を制御することを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明によれば、供給位置に応じて温度変更手段を制御することで、供給位置に到達できるように空気砲の弾道を変更することができる。これによって、供給位置が変化した場合でも、この供給位置に空気砲を確実に供給できる。
【0014】
請求項5の発明では、位置検出手段は、画像センサにより構成されており、供給位置として、乗員の顔位置を検出することを特徴としている。請求項5の発明によれば、撮像画像に基づいて供給位置を正確に検出することができる。通常、空気質成分は、鼻から吸引することで感知するものである。従って、本構成のように、乗員の顔位置を検出できれば、その顔位置へ向けて空気質成分を放出することができるため、放出した空気質成分を確実に乗員に吸引させることができる。
【0015】
請求項6の発明では、位置検出手段は、シートポジションを検出するシートポジションセンサ、ハンドルポジションを検出するハンドルポジションセンサ、及びバックミラーの姿勢を検出するミラーセンサーのうち少なくとも1つで構成されていることを特徴としている。請求項6の発明によれば、シートポジション、ハンドルポジション、バックミラーの姿勢により乗員の乗車位置を推定することができる。
【0016】
請求項7の発明では、チャンバ内温度を検出するチャンバ内温度検出手段と、前記空気砲が前記供給位置へ到達するために通過する領域内の雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段とを備え、制御手段は、供給位置が基準位置よりも上側であると判断したときには、温度変更手段をチャンバ内温度が雰囲気温度よりも高くなるように制御する一方、供給位置が基準位置よりも下側であると判断したときには、温度変更手段をチャンバ内温度が雰囲気温度よりも低くなるように制御することを特徴としている。
【0017】
請求項7の発明によれば、供給位置が基準位置よりも上側にあるときには、空気砲の温度(チャンバ内温度)が雰囲気温度よりも高くされることでその弾道が上方向とされる。また、供給位置が基準位置よりも下側にあるときには、空気砲の温度が雰囲気温度よりも低くされることでその弾道が下方向とされる。このように、供給位置と基準位置との位置関係に応じて雰囲気温度に対するチャンバ内温度を制御することで、空気砲を正確に供給位置に到達させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<第1の実施形態>
本発明に係る空気質成分供給装置の実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。本実施形態は車両に搭載される車両用空気質成分供給装置であり、自動車1の車内2に備えられた空気質成分放出手段10から所定の空気質成分を含んだ空気砲Fを放出することで、乗員3に対して個別に空気質成分を供給するものである。
【0019】
空気質成分放出手段10は、図1に示すように、乗員3に向けて空気砲Fを放出可能な位置に配置されており、インストルメントパネル70内に配置されており、前席乗員3の方向に空気砲Fを放出する。
【0020】
尚、本実施形態における空気砲Fは、ある空間に貯められた流体が圧縮されることにより、その空間に形成された放出口から押し出されて、流体の塊となって放出されるものを意図している。空気砲Fの形態としては、例えば、渦輪状の塊となって放出されるものをいう。この空気砲Fは、乗員3に到達して顔や肩などに当たると、空気砲Fの塊が崩れるとともに含有されている空気質成分が拡散する。
【0021】
本実施形態の車両用空気質成分供給装置の全体構成を図2に示す。空気質成分放出手段10の外観を構成する筐体110は、内部に空気質成分を含有する空気を保持するためのものであり、その一側面には、空気砲Fを放出するための放出孔110Aが形成されている。この筐体110は、放出孔110Aが乗員3の方向に向けられた姿勢で車両に搭載されている。
【0022】
筐体110内部には、空気質成分を含有した空気を保持する空気質成分チャンバ120となる空間が形成されている。この空気質成分チャンバ120は、放出孔110Aに連なっており、当該空気質成分チャンバ120が保持する空気を放出孔110Aから外部に放出可能となっている。
【0023】
また、筐体110内部には、空気質成分チャンバ120を介して放出孔110Aと対面する位置に圧縮手段130が配置されている。この圧縮手段130は、放出孔110Aに対して接離方向に移動するものである。従って、放出孔110Aに対して接近方向に移動することで空気質成分チャンバ120を圧縮し、放出孔110Aから空気質成分チャンバ120内の空気を吐出させることで空気砲Fが生成され、この空気砲Fが乗員に向けて放出される。
【0024】
空気質成分チャンバ120には、周知のペルチェ素子140(温度変更手段)が配置されている。このペルチェ素子140は、対となる側面のうち、一方の側面が外部に露出され、他方の側面が空気質成分チャンバ内に収められている。そして、一方の側面から吸収した外部の熱を他方の側面から空気質成分チャンバ120内に放熱する加熱動作と、他方の側面から吸収した空気質成分チャンバ120内の熱を一方の側面から外部に放熱する冷却動作とを行う。これら過熱動作と冷却動作とは、素子への通電方向を切り替えることで実現できる。
【0025】
尚、空気質成分チャンバ120には、図示しない芳香ユニットから連なるダクトが導入されており、このダクトを介して芳香ユニットからの芳香成分が適宜供給されるようになっている。
【0026】
空気質成分チャンバ120内には、第1温度センサ150(チャンバ内温度検出手段)が配置されている。この第1温度センサ150は、空気質成分チャンバ120内の温度(チャンバ内温度Tc)に応じた検出信号Scを出力する。
【0027】
一方、車内2には、乗員3の顔位置Ps(供給位置)を検出するための画像センサ160が配置されている。この画像センサ160は例えばCCDカメラにより構成されており、その撮像領域は、ヘッドレストを含む車内2の上側の領域とされている。そして、撮像した画像を画像データDとして出力する。
【0028】
同じく、車内2には、車内2(空気砲が供給位置へ到達するために通過する領域に相当)の雰囲気温度Tmを検出するための第2温度センサ170(雰囲気温度検出手段)が配置されている。この第2温度センサ170は、雰囲気温度Tmに応じた検出信号Smを出力するようになっている。尚、当該第2温度センサ170としては、空調装置に備えられる温度センサを流用するようにしても良い。
【0029】
制御手段180は、上述した各構成要素を制御するためのものであり、具体的には、圧縮手段130の動作タイミングを制御するとともに、第1温度センサ150及び第2温度センサ170からの検出信号Sc,Sm、画像センサ160からの画像データDを受信し、これらの情報に基づいてペルチェ素子140の動作を制御する。
【0030】
本実施形態の構成は以上であり、続いてその動作について制御手段180の動作を中心に説明する。制御手段180の動作は図3に示すフローチャートに基づく。まず、第1温度センサ170から受信した検出信号Smにより雰囲気温度Tmを検出する(ステップS10)。続いて、画像センサ160から受信した画像データDに基づいて、乗員3の顔位置Psを検出する(ステップS20)。乗員3の顔位置は、例えばパターンマッチング等の周知の手法によって撮像画像内における顔位置を特定する。
【0031】
次に、乗員3の顔位置Psが、空気砲Fを直進方向(放出孔110Aの開口面に対して垂直方向)へ放出したときに当該空気砲Fが供給される位置(基準位置Pd)と一致しているか否かを判断する(ステップS30)。ここで、顔位置Psが基準位置Pdに一致している場合には(ステップS30Yes)、圧縮手段130を作動させて空気質成分チャンバ120を圧縮し、放出孔110Aから空気砲Fを放出させる(ステップS40)。
【0032】
顔位置Psが、基準位置Pdから外れた位置にある場合には(ステップS30でNo)、当該顔位置Psが基準位置Pdよりも上側にあるか、あるいは下側にあるかを判断する(ステップS50)。
【0033】
顔位置Psが基準位置Pdよりも上側にある場合には(ステップS50で上側判定)、基準位置Pdと顔位置Psとの離間距離に応じて、放出する空気砲Fの温度(空気砲温度Ta)を算出する(ステップS60)。この空気砲温度Taは、先に検出した雰囲気温度Tmに上述の離間距離に応じて決定される温度差分を加えた温度に設定される。
【0034】
そして、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taよりも高いか否かを判断する(ステップS70)。チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taよりも高い場合には(ステップS70でYes)、圧縮手段130を作動させて空気砲Fを放出させる(ステップS40)。
【0035】
また、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taよりも低い場合には(ステップS70でNo)、ペルチェ素子140に対して発熱動作を行わせる(ステップ80)。この後、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taとなるまで(ステップS70でYesとなるまで)ペルチェ素子に対して発熱動作を行わせ(ステップS80)、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taに達したら(ステップS70でYes)、圧縮手段130を作動させて空気砲Fを放出させる(ステップS40)。
【0036】
一方、顔位置Psが基準位置Pdよりも下側にある場合には(ステップS50で下側判定)、基準位置Pdと顔位置Psとの離間距離に応じて、空気砲温度Taを算出する(ステップS90)。この空気砲温度Taは、先に検出した雰囲気温度Tmに上述の離間距離に応じて決定される温度差分を差し引いた温度に設定される。
【0037】
そして、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taよりも低いか否かを判断する(ステップS100)。チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taよりも低い場合には(ステップS100でYes)、圧縮手段130を作動させて空気砲Fを放出させる(ステップS40)。
【0038】
また、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taよりも高い場合には(ステップS100でNo)、ペルチェ素子140に対して冷却動作を行わせる(ステップS110)。この後、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taとなるまで(ステップS100でYesとなるまで)ペルチェ素子140に対して冷却動作を行わせ(ステップS110)、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taにまで低下したら(ステップS100でYes)、圧縮手段130を作動させて空気砲Fを放出させる(ステップS40)。
【0039】
例えば、乗員3の顔位置Psが基準位置Pdと一致しているときには(ステップS30でYes、図2中の(1)の位置)、空気砲Fを直進させれば良く、空気砲温度Taは雰囲気温度Tmと同一であれば良い。通常は、チャンバ内温度Tcと雰囲気温度Tmは略同一であるため、ペルチェ素子140の作動を省略し、圧縮手段130を作動させて空気砲Fを放出させる(ステップS40)。
【0040】
従って、空気砲温度Taは、雰囲気温度Tmと略同一となるため、空気砲Fの弾道は、直進方向となり(図2中の(A)の矢印方向)、乗員3の顔に向かって空気砲Fが放出されることとなる。
【0041】
一方、乗員3の顔位置Psが基準位置Pdよりも上側にあるときには(ステップS30でNo、ステップS50で上側判定。図2中の(2)の位置)、空気砲温度Taを算出し(ステップS60)、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taとなるように、ペルチェ素子140に対して発熱動作を行わせることで、チャンバ内温度を上昇させる(ステップS70及びステップS80)。そして、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taにまで上昇したら(ステップS70でYes)、空気砲Fを放出させる(ステップS40)。
【0042】
従って、空気砲温度Taは、雰囲気温度Tmよりも高くされているため、空気砲Fは徐々に上昇する。従って、空気砲Fの弾道は、直進方向に対して斜め上方向(図2中の(B)の矢印方向)となることで、基準位置Pdの上側に位置する乗員3の顔に向かって空気砲Fが放出されることとなる。
【0043】
逆に、乗員3の顔位置Psが基準位置Pdよりも下側に位置するときには(ステップS30でNo、ステップS50で下側判定。図2中の(3)の位置)、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taとなるように、ペルチェ素子140に対して冷却動作を行わせることで、チャンバ内温度を低下させる(ステップS100及びステップS110)。そして、チャンバ内温度Tcが空気砲温度Taにまで低下したら(ステップS110でYes)、空気砲Fを放出させる(ステップS40)。
【0044】
従って、空気砲温度Taは、雰囲気温度Tmよりも低くされているため、空気砲Fは徐々に下降する。従って、空気砲Fの弾道は、直進方向に対して斜め下方向(図2中の(C)の矢印方向)となることで、基準位置Pdの下側に位置する乗員3の顔に向かって空気砲Fが放出されることとなる。
【0045】
本実施形態によれば、乗員3の顔位置Psに応じてチャンバ内温度Tc(空気砲温度Ta)を調整し、これによって空気砲Fの弾道を変化させているため、体格差や乗員の乗車姿勢の変化等の要因によって乗員3の顔位置Psが基準位置Pdよりも上側あるいは下側に変化したとしても、確実に空気砲Fを乗員3の顔位置Psにめがけて放出することができる。
【0046】
また、チャンバ内温度Tc(空気砲温度Ta)を調整することで空気砲Fの弾道を変化させる構成としているため、アクチュエータ等により筐体110の姿勢を変化させる必要がない。このため、機械的な駆動機構が不要となり装置の小型化を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態のようにペルチェ素子140により空気質成分チャンバ120内を加熱・冷却する構成としているため、加熱、冷却のためにそれぞれ個別に温度変更のための機構が不要となり、構成を簡素化することができる。また、画像センサ160の撮像画像により乗員3の顔位置Psを検出するようにしているため、その位置を正確に検出できる。
【0048】
<第2の実施形態>
本発明に係る第2の実施形態について図4を参照して説明する。尚、上記実施形態と同一の部分についてはその説明を省略し、相違点のみを説明する。
【0049】
本実施形態では、乗員3の顔位置Psを検出するために、シートの高さ位置を検出するシートポジションセンサ200を用いている。本実施形態のシートポジションセンサ200は、シートの高さ位置に応じた検出信号Ssを出力するようになっている。
【0050】
制御手段180は、上述したステップS20の処理において、シートポジションセンサ200からの検出信号Ssに基づいて乗員3の顔位置Psを検出する。顔位置Psの検出方法としては、例えば、シートの高さ位置と顔位置Psとの関係を示したマップを予め記憶しておき、検出信号Ssにより得られた高さ位置に対応する顔位置Psをマップから読み出すという方法がある。あるいは、高さ位置と顔位置Psとの関係を予め数式化しておき、当該数式を用いて顔位置Psを算出するようにしても良い。
【0051】
<変形例1>
乗員3の顔位置Psを検出するために、ハンドルの高さ位置を検出するハンドルポジションセンサ210を用いても良い。このハンドルポジションセンサ210は、ハンドルの高さ位置に応じた検出信号Shを出力するようになっている。
【0052】
制御手段180は、上述したステップS20の処理において、ハンドルポジションセンサ210からの検出信号Shに基づいて乗員3の顔位置Psを検出する。顔位置Psの検出方法としては、上記と同様に、ハンドルの高さ位置と顔位置Psとの関係を示したマップを予め記憶しておき、検出信号Shにより得られた高さ位置に対応する顔位置Psをマップから読み出すという方法がある。あるいは、高さ位置と顔位置Psとの関係を予め数式化しておき、当該数式を用いて顔位置Psを算出するようにしても良い。
【0053】
<変形例2>
また、乗員3の顔位置Psを検出するための他の方法としては、バックミラー(ルームミラー)の上下方向の傾角を検出するミラーセンサ220を用いても良い。このミラーセンサ220は、ミラーの傾角に応じた検出信号Sθを出力するようになっている。
【0054】
制御手段180は、上述したステップS20の処理において、ミラーセンサ220からの検出信号Sθに基づいて乗員3の顔位置Psを検出する。顔位置Psの検出方法としては、上記と同様に、ミラーの傾角と顔位置Psとの関係を示したマップを予め記憶しておき、検出信号Sθにより得られた傾角に対応する顔位置Psをマップから読み出すという方法がある。あるいは、傾角と顔位置Psとの関係を予め数式化しておき、当該数式を用いて顔位置Psを算出するようにしても良い。
【0055】
尚、センサ200〜220のうちいずれか1つを用いて顔位置Psの検出する方法のほかに、複数を用いて顔位置Psを検出するようにしても良い。この場合には、例えば、各センサ200〜220により検出したそれぞれの顔位置Psの重心位置を顔位置Psとして決定することができる。
【0056】
<第3の実施形態>
本発明に係る第3の実施形態について図5を参照して説明する。尚、上記実施形態と同一の部分についてはその説明を省略し、相違点のみを説明する。
【0057】
本実施形態では、車両に搭載されている空調装置で生成された温風または冷風を選択的に空気質成分チャンバ120に導入することで、チャンバ内温度を変更する構成とされている。
【0058】
具体的には、空調装置300から冷風用ダクト310及び温風用ダクト320を導出し、これら2本のダクト310,320を空気質成分チャンバ120内に導入する。冷風用ダクト310は、空調装置300で生成された冷風を導入するものであり、温風用ダクト320は温風を導入するものである。
【0059】
冷風用ダクト310には、バルブ310A(開閉部材)が取り付けられており、バルブ310Aの開閉により空気質成分チャンバ120への冷風の導入・遮断が切り替えられるようになっている。また、温風用ダクト320には、バルブ320A(開閉部材)が取り付けられており、バルブ320Aの開閉により空気質成分チャンバ120への温風の導入・遮断が切り替えられるようになっている。
【0060】
制御手段180は、バルブ310A、320Aの開閉を制御することにより、空気質成分チャンバ120内のチャンバ内温度Tcを適宜変更する。具体的には、ステップS80の処理において、ダクト320Aを開制御することで温風を空気質成分チャンバ120内に導入し、チャンバ内温度Tcを上昇させる。また、ステップS110の処理では、ダクト310Aを開制御することで冷風を空気質成分チャンバ120内に導入し、チャンバ内温度Tcを低下させるのである。 本実施形態によれば、既存の装置を利用して空気質成分チャンバ120内の温度Tcを変更するようにしているため、構成の簡素化を図ることができる。
【0061】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0062】
上記実施形態では、画像センサ160あるいはセンサ200,210,220によって乗員3の顔位置Psを検出し、基準位置に対する顔位置Psに基づいてチャンバ内温度Tcを変更するようにしていたが、例えば、空気砲Fを放出する位置が確定している場合には、画像センサ160あるいはセンサ200,210,220を省略した構成としても良い。
【0063】
また、上記第1の実施形態では、雰囲気温度Tmを検出し、この雰囲気温度Tmに基づいて、設定すべき空気砲温度Taを算出するようにしていたが、雰囲気温度Tmを略一定温度と仮定して空気砲温度Taを算出するようにしても良い。この場合には、第2温度センサ170を省略することができる。
【0064】
また、上記第3の実施形態では、冷風用及び温風用のダクト310,320を設けた構成としていたが、例えば、空気砲Fの弾道が上方向あるいは下方向のいずれかに限定される場合には、冷風用及び温風用のダクト310,320のうちいずれか一方を用いる構成とすることができる。
【0065】
また、上記実施形態では、本発明の空気質成分供給装置を自動車に適用した例を示したが、例えば、鉄道車両、船舶、飛行機等にも適用できる。あるいは、屋内での使用にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施形態に係る車両用空気質成分供給装置の車内配置を示した図である。
【図2】車両用空気質成分の全体構成及び空気砲の弾道を示した概念図である。
【図3】制御手段が実行する制御内容を示したフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る車両用空気質成分供給装置の全体構成を示したブロック図である。
【図5】第3の実施形態に係る車両用空気質成分供給装置の全体構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
2…車内 3…乗員 110…筐体 110A…放出孔 120…空気質成分チャンバ 130…圧縮手段 140…ペルチェ素子(温度変更手段) 150…第1温度センサ(チャンバ内温度検出手段) 160…画像センサ(位置検出手段) 170…第2温度センサ(雰囲気温度検出手段) 180…制御手段 200…シートポジションセンサ 210…ハンドルポジションセンサ 220…ミラーセンサ 310…冷風用ダクト 320…温風用ダクト 310A、320A…バルブ(開閉部材) Pd…基準位置 Ps…顔位置(供給位置) Tc…チャンバ内温度 Tm…雰囲気温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気質成分を含んだ空気砲を外部に供給するための空気質成分供給装置であって、
前記空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、
前記空気質成分チャンバから前記空気砲を放出する放出孔と、
前記空気質成分チャンバを圧縮して前記放出孔から前記空気砲を放出させる圧縮手段と、
前記空気質成分チャンバ内の温度(チャンバ内温度)を変更する温度変更手段と、
前記放出孔からの前記空気砲の放出方向を変更可能なように前記温度変更手段の動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする空気質成分供給装置。
【請求項2】
前記温度変更手段は、ペルチェ素子により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気質成分供給装置。
【請求項3】
前記温度変更手段は、
外部に備えられた空調装置で生成される空調空気を、前記空気質成分チャンバに案内するダクトと、
前記ダクトを開閉する開閉部材とから構成されており、
前記制御手段は、前記開閉部材を開閉制御することを特徴とする請求項1に記載の空気質成分供給装置。
【請求項4】
前記空気砲を供給すべき位置(供給位置)を検出する位置検出手段を備え、
前記制御手段は、前記供給位置に応じて前記温度変更手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の空気質成分供給装置。
【請求項5】
前記位置検出手段は、画像センサにより構成されており、
前記供給位置として、乗員の顔位置を検出することを特徴とする請求項4に記載の空気質成分供給装置。
【請求項6】
前記位置検出手段は、シートポジションを検出するシートポジションセンサ、ハンドルポジションを検出するハンドルポジションセンサ、及びバックミラーの姿勢を検出するミラーセンサーのうち少なくとも1つで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の空気質成分供給装置。
【請求項7】
前記チャンバ内温度を検出するチャンバ内温度検出手段と、
前記空気砲が前記供給位置へ到達するために通過する領域内の雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記供給位置が基準位置よりも上側であると判断したときには、前記温度変更手段を前記チャンバ内温度が前記雰囲気温度よりも高くなるように制御する一方、
前記供給位置が基準位置よりも下側であると判断したときには、前記温度変更手段を前記チャンバ内温度が前記雰囲気温度よりも低くなるように制御することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の空気質成分供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−2445(P2008−2445A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175799(P2006−175799)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】