説明

空気輸送装置の分離装置

【課題】コンパクトでかつ分離用の排風等の調整が簡単で、しかも衛生的な空気輸送装置の分離装置を提供する。
【解決手段】搬送始端側にブロワ11を接続した輸送管10と、該輸送管10に米Gを供給する供給部12,12aと、該輸送管10の他端側と搬送先タンク14との間に配置して輸送空気と搬送粒状物Gとを分離する分離装置13と、該分離装置13で分離した輸送空気が供給される集塵機とを有する空気輸送装置8の分離装置13において、分離装置13は、前記輸送管10に接続し輸送管10よりも径を大きくした大径管15と、該大径管15に接続し大径管15よりも径を小さくするとともに内部に抵抗蓋20を設て搬送先タンク14に接続した小径管16と、大径管15始端側と搬送先タンク14との間を短絡したバイパス管17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物や樹脂ペレットなどの粒状物を空気によって輸送する空気輸送装置に係り、特にその分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気輸送装置は、例えば精米工場50に用いられている(図6)。精米工場50において空気輸送装置100は、粗選工程、搗精工程、調質工程、精選工程及び計量・包装工程等の工程間(輸送区間)に適宜設けられている。この空気輸送装置100はブロワやコンプレッサを用いて輸送管内に輸送空気(輸送気流)を供給し、該輸送空気によって米の輸送を行い、搬送先(以下「搬送先タンク」という)の直前の輸送管に設けたサイクロン式分離装置(以下「サイクロン」という)110により、輸送空気と米とを分離し搬送先タンクに米を搬送する構成になっている。
【0003】
しかし、上記空気輸送装置100にはサイクロン110が必要なので、工程間が長くなり設備をコンパクトにできない等の問題があった。そこで、以前からサイクロンに替わる分離装置が使用されている。この分離装置は、輸送管の搬送終端を搬送先タンクの供給口上方に位置し、輸送空気のみを吸引排気する排気管を接続した構成としてある(特許文献1、2)。この分離装置は、米が落下する方向とは異なる方向に輸送空気を吸引排気し、米を自然落下により搬送先タンクに供給する仕組みとなっている。
【0004】
【特許文献1】特許第3419246号公報
【特許文献2】特開2002-336794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記分離装置には以下の問題点があった。すなわち、分離した輸送空気に米が混じる懸念である。分離装置は米と輸送空気とを分離するために排風量などの調整が必要であり、この調整は輸送空気に米が混入しないような微妙な調整となる。また、吸引排気される輸送空気に米を混入させないために吸引排気口にフィルター(網)を配設することも可能であるが、フィルター目詰まりの懸念があり点検・清掃の煩雑性の問題がある。また、前記分離装置は、輸送空気を排気するため、輸送管搬送終端とタンク供給口との間に隙間を設けて外気取り入れ口を構成する必要があった。このため、前記隙間からタンク内に粉塵や害虫等が侵入する懸念があった。
そこで本発明はこの問題点にかんがみ、コンパクトでかつ分離用の排風等の調整が簡単で、しかも衛生的な空気輸送装置の分離装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1によると、
搬送始端側に輸送空気発生装置を接続した輸送管と、該輸送管に搬送粒状物を供給する供給部と、該輸送管の他端側と搬送先タンクとの間に配置して輸送空気と搬送粒状物とを分離する分離装置と、該分離装置で分離した輸送空気が供給される集塵機とを有する空気輸送装置の分離装置において、
前記分離装置は、輸送管に接続し該輸送管よりも径を大きくした大径管と、該大径管に接続し大径管よりも径を小さくするとともに内部に抵抗蓋を設けて搬送先タンクに接続した小径管と、前記大径管始端側と搬送先タンクとの間を短絡したバイパス管とを有するという技術的手段を講じるものである。
【0007】
これにより、搬送元の粒状物は、輸送空気発生装置(ブロワ)が輸送管内に供給した輸送空気によって分離装置に空気輸送される。分離装置では、輸送された粒状物は、大径部を通り流速低下しながら抵抗蓋の抵抗により小径部内に滞留する。この滞留した粒状物は、滞留量が任意量に増えた時点でその荷重により抵抗蓋が開かれ搬送先タンクに供給(搬送)される。一方、分離装置に入った輸送空気は、前記滞留粒状物による管路内抵抗によりバイパス管に入り、その後搬送先タンクに供給され、この後集塵機に吸引排風される。よって、空気輸送された粒状物は、サイクロンを使用することなく輸送空気から分離し搬送先タンクに供給される。また、前記抵抗蓋の抵抗調節や混合比などが調節不十分で、輸送空気に粒状物が混じってバイパス管に入っても、バイパス管は搬送先タンクに接続しているので、混じった粒状物は搬送先タンクに供給される。このため前記抵抗蓋の抵抗調節や混合比などの調節が簡単である。
【0008】
また、請求項2によると、前記大径管終端側及び小径管は、搬送先タンクに向かって下方傾斜状に形成したという技術的手段を講じるものである。これにより、前記大径管終端側(下方傾斜管)及び小径管に滞留した粒状物は自然流下によって搬送先タンクに供給されるので、粒状物に大きな衝撃が加わらない。
【0009】
さらに、請求項3によると、前記大径管始端側は略水平方向に延設した水平管とし、前記バイパス管は、その始端側を前記水平管の上部に接続して上方に立ち上がる立上り部と該立上り部に接続して終端側に向かって下方傾斜する流下部とを有するという技術的手段を講じるものである。これにより、バイパス管の入口に粒状物が衝突して損傷することが防止され、万一、輸送空気とともに粒状物がバイパス管に吸引された場合でも粒状物は流下部に沿って流下するのでバイパス管内に滞留することがない。
【0010】
また、請求項4によると、前記抵抗蓋は、大径管内に滞留する一定量の粒状物の重量に抗する付勢力を有するという技術的手段を講じるものである。これによれば、空気輸送開始後、抵抗蓋の付勢力により大径管に滞留粒状物が形成されるので、後続して空気輸送された粒状物がぶつかって停止する際に受ける衝撃が小さい。また、大径管内に滞留した粒状物が一定量になると抵抗蓋が開いて滞留粒状物が搬送先タンクに供給される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分離装置によれば、輸送された粒状物は、大径部を通り流速低下して抵抗蓋の抵抗により小径部内に滞留し、滞留量が任意量に増えた時点でその荷重により抵抗蓋が開き搬送先タンクに供給(搬送)される。そして後続して空気輸送された粒状物は前記滞留粒状物に当たって止る(滞留する)ので大きな衝撃を受けない。一方、分離装置に入った輸送空気は、前記滞留粒状物による管路内抵抗によりバイパス管に入り、その後搬送先タンクに供給された後集塵機に吸引・排風される。よって、サイクロンを用いることなく輸送空気と粒状物とを分離して搬送先タンクに供給できるので、輸送区間が短くなり空気輸送装置及び設備がコンパクト化し、構造も簡単なので設備コストが低減する。また、混合比等の設定が不十分でバイパス管に誤って米が輸送空気とともに入っても、バイパス管が搬送先タンクに接続しているので、混じった米は搬送先タンクに供給される。このため、混合比等の微妙な設定を必要としない。さらに、分離装置は搬送先タンクに間隙を設けることなく接続しているので、搬送先タンク内に、粉塵や害虫等の侵入がなく衛生的な空気輸送装置にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を説明する。図1は、精米工場1における工程の一例を示した模式図である。この精米工場1のラインは、原料玄米を荷受する荷受工程に続き、粗選工程2、搗精工程3、調質工程4、精選工程5、計量・包装工程6及び出荷工程の順で構成される。簡単に各工程を説明すると、荷受工程は搬入された原料玄米を荷受ホッパー7により荷受する工程。精選工程2は原料玄米に混入した石を石抜機2aにより除去する工程。搗精工程3は原料玄米を精米機3aで搗精する工程。調質工程4は前工程で搗精された精米を調質機4aにて加湿し水分調整する工程。精選工程5は混入した異物や砕米などを色彩選別機5aやシフター(篩い機)5b、金属検出機5cなどにより選別除去する工程。計量・包装工程6は精米を計量包装機6aにて計量し袋詰めする工程である。本発明における空気輸送装置8は、精選工程2と搗精工程3との工程間(輸送区間)、調質工程4と精選工程5との輸送区間及び精選工程5と計量・包装工程6との輸送区間に配設した。その他の輸送区間は昇降機9を配設した。
【0013】
前記空気輸送装置8は、輸送管10の搬送始端にブロワ11(輸送空気発生装置)を接続し該ブロア11よりも下流側に米を輸送管10に供給するホッパー(供給部)12を構成する(図2参照)。ホッパー12の排出口には米の排出量か調整可能な排出量調節弁12aを構成する。一方、輸送管10の搬送終端側には分離装置13を構成する。該分離装置13は搬送先となるタンク14に接続してある。該分離装置13は、前記輸送管10よりも径を大きくした大径管15、該大径管15より径を小さくした供給管16(小径管)及び大径管15からタンク14にバイパスするバイパス管17から構成する(図3参照)。
【0014】
前記大径管15は、輸送管10から水平方向に延設した水平管18と、該水平管18との接続部からタンク14上側部に向かって下方傾斜した下方傾斜管19とから構成する。該下方傾斜管19は米を自然流下させるために傾斜角度範囲を45度〜60度とする(本実施例図4では約50度とした)。
【0015】
前記供給管16(小径管)は前記タンク14上側部と下方傾斜管19との間に配設し、内部には抵抗蓋20を設ける。該抵抗蓋20は、供給管16及び/又は下方傾斜管19内に滞留する一定量の粒状物の重量に抗する付勢力を備え、その付勢調節(抵抗調節)は、抵抗蓋20上端の回動軸に分胴やバネなどを用いて行う(分胴、バネは図示せず)。また、抵抗蓋20は該抵抗蓋20の下端部と供給管16内底部との間に間隙を形成すうようにし、供給管16内の米が少なくなった際に、米を残すことなく前記間隙を通ってタンク14に供給するようにしてある。
【0016】
前記バイパス管17は、その入口17a(始端側)を前記水平管18の始端側の上部(上半分)に接続して上方(斜め上方)に延設した立上り部17bを有し、該立上り部17bからタンク14の天井部14aに向かって傾斜する流下部17cを有する。前記バイパス管17の管径は前記輸送管10と同等にする。前記天井部14aには集塵機に通じる管路21を接続する(図1及び図3参照)。なお、タンク14は排出口に開閉調節弁14bを構成し、天井部14aには集塵機の吸引風量に合わせるための外気取入口(図示せず)を設ける。
【0017】
次に、本発明の作用を説明する。以下、代表して、空気搬送装置8により、粗選工程から搗精工程に米(搬送粒状物)を搬送する作用を説明する。本実施例は、いわゆる低濃度高速輸送方式であり、ブロア11等の設定は、輸送空気と米(搬送物)との混合比は3〜20、風速15〜34m/s、輸送圧力0.2〜0.6kg/cmの範囲内とする。粗選工程の石抜機2aから米が排出されると、該米は前記ホッパー12に供給され前記排出量調節弁12aの調節量に従って輸送管10に供給される。前記ブロア11は輸送管10に輸送空気(輸送気流)を供給し、該輸送空気によって米は輸送管10内を介して前記分離装置13に空気輸送される。輸送空気及び米は前記分離装置13に入り、米は水平管18を通過して下方傾斜管19の管上部19aに沿って供給管16に向かい抵抗蓋20の手前(供給管16内)に滞留していく。一方、前記水平部18に入った輸送空気は、供給管16内の米滞留により、入口17aから前記バイパス管17に入り、その後タンク14にいったん入った後管路21から集塵機に吸引排気される。なお、水平管18を通過する際米は、輸送空気がバイパス管17から吸引・排気されるので流速が低下し、停止(滞留)する際に受ける衝撃が小さい。
【0018】
空気輸送された米が前記供給管16からさらに下方傾斜管19内に滞留し始めると、滞留した米の荷重により抵抗蓋20が押し開けられ、滞留した米がタンク内に供給開始される(図4参照)。このとき、前記抵抗蓋20の付勢調節(抵抗調節)は、前記混合比等の条件も考慮しながら、稼動中、下方傾斜管19に米が常に滞留するように行う。この下方傾斜管19に滞留した米は、後続輸送される米が当たって停止する衝撃を和らげる作用を有する。また、下方傾斜管19に滞留した米は自然流下により順次タンク14に供給されるので、受ける衝撃が少ない。
【0019】
また、本発明によれば、輸送空気とともに米がバイパス管17に吸い込まれることがあっても、該米は、輸送空気とともに前記流下部17cを流下して前記タンク14内に供給される。よって、前記抵抗蓋20の抵抗調節又は混合比等の調節幅が広く微妙な設定を必要とせず、誤って米が輸送空気とともに集塵機に輸送されることがない。
【0020】
さらに本発明によれば、前記バイパス管17の入口17aが水平管18の上部(上半分)に接続してあるので、入口17aの位置が、米の輸送方向(移送軌跡L)より径方向に離れた位置(図4では上方)となり空気輸送の米が入口17aに高速・衝突することがない。また、水平管18内部における前記入口17aの下方位置まで輸送管10を延設した延長管10aを構成すると、バイパス管17への米の侵入をより確実に防止することができる(図5参照)。このように延設管10aを設ける際には、前記バイパス管17の入口17aは水平管18の上部ではなく、水平管18の側部又は底部であってもよい。しかし、入口17aの接続先は、前記流下部17cを形成しやすいので前述の上部の方が好ましい。
【0021】
なお、本発明において大径管15及び供給管16を接続するタンク14(搬送先)の部分は、上述のタンク14側面ではなく天井部14aであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】精米工場における工程の模式図である。
【図2】空気輸送装置の側面図である。
【図3】分離装置と搬送先タンクの構成を示した縦側断面図である。
【図4】分離装置の作用説明図である。
【図5】分離装置の変形例を示す。
【図6】従来の精米工場における工程の模式図である。
【符号の説明】
【0023】
1 精米工場
2 粗選工程
2a 石抜機
3 搗精工程
3a 精米機
4 調質工程
4a 調質機
5 精選工程
5a 色彩選別機
5b シフター
5c 金属検出機
6 計量・包装工程
6a 計量・包装機
7 荷受ホッパー
8 空気輸送装置
9 昇降機
10 輸送管
10a 延長管
11 ブロワ(輸送空気発生装置)
12 ホッパー
12a 排出量調節弁
13 分離装置
14 タンク(搬送先)
14a 天井部
14b 開閉調節弁
15 大径管
16 供給管(小径管)
17 バイパス管
17a 入口
17b 立上り部
17c 流下部
18 水平管
19 下方傾斜管
20 抵抗蓋
21 管路
50 精米工場
100 空気輸送装置
110 サイクロン式分離装置(サイクロン)
G 米(搬送粒状物)
L 米の輸送方向(移送軌跡)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送始端側に輸送空気発生装置を接続した輸送管と、該輸送管に搬送粒状物を供給する供給部と、該輸送管の他端側と搬送先タンクとの間に配置して輸送空気と搬送粒状物とを分離する分離装置と、該分離装置で分離した輸送空気が供給される集塵機とを有する空気輸送装置の分離装置において、
前記分離装置は、輸送管に接続し該輸送管よりも径を大きくした大径管と、該大径管に接続し大径管よりも径を小さくするとともに内部に抵抗蓋を設けて搬送先タンクに接続した小径管と、前記大径管始端側と搬送先タンクとの間を短絡したバイパス管とを有することを特徴とする空気輸送装置の分離装置。
【請求項2】
前記大径管終端側及び小径管は、搬送先タンクに向かって下方傾斜状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の空気輸送装置の分離装置。
【請求項3】
前記大径管始端側は略水平方向に延設した水平管とし、前記バイパス管は、その始端側を前記水平管の上部に接続して上方に立ち上がる立上り部と該立上り部に接続して終端側に向かって下方傾斜する流下部とを有することを特徴とする請求項2に記載の空気輸送装置の分離装置。
【請求項4】
前記抵抗蓋は、大径管内に滞留する一定量の粒状物の重量に抗する付勢力を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気輸送装置の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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