説明

空気輸送装置

【課題】 圧送タンクから、水平輸送管、垂直輸送管を経て送り先へと粒体を輸送する空気輸送装置において、粒体の粉化や破損が防ぐ事が可能な輸送を実現すると共に、部品点数を減らし省スペース性を確保したした粒体の空気輸送装置を提供する。
【解決手段】 垂直輸送管下部に接続された縮径管および補助空気導入手段とを備え、さらに垂直輸送管先端部にセパレータを接続することによって、垂直輸送管先端部の粒体の流出速度を遅らせ、セパレータ内部での粒体の粉化や破損が防ぐことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒体を輸送する空気輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は一般的に用いられる輸送管内を空気により粒体を輸送する装置である。圧送タンク1内の粒体は、圧縮エア供給源3から空気配管2を介して送られる輸送空気により、圧送タンク1から水平輸送管4と垂直輸送管5で構成される輸送管内をプラグ流となって輸送される。輸送管の送り先の先端にはサイクロン6が設置されており、サイクロン6内に流入した粒体はサイクロン6下部より排出され、輸送空気2はサイクロン6の上部から排気として放出される。
【0003】
上記の粒体を輸送する空気輸送装置において、輸送する粒体が粉化や破砕の恐れのない硬い材料の場合は問題が生じないが、米粒やペレット状の顆粒物などの場合はその材料特性により粉化や破損が起きやすくなる。これは、垂直輸送管において粒体を上方へ押し上げるには、プラグ流で形成された塊状粒体の下部の内圧を上昇させる必要があることに起因するためである。内圧が上昇しているため、粒体が輸送管先端部からサイクロンに向かって輸送される際に内圧が一気に開放され、塊状の粒体が輸送管先端部からサイクロンに向かって強い力で噴出し、サイクロンの壁面に強い衝撃で衝突することになる。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1には、輸送管に接続された流体の流入口の直径をサイクロン側に拡径することで粒体の流入速度を低下させ、サイクロンの外筒内面に衝突する際の衝撃を和らげることにより、粒体が破砕されることを防止するという粒体輸送分離装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−324077号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の輸送管先端は横向きである為、サイクロン型セパレータへ到達した粒体の速度を低下させる力は、円筒状の内壁と接触する事による衝撃力のみであり、粒体の粉化や破損を防ぐには十分ではなかった。また、サイクロンを設置するスペースと粒体をサイクロンに導入するための水平管が必要となり、狭い場所に設置することは困難であった。本発明は、輸送中の粉化や破損により品質低下が問題となるような粒体において、その粒体の粉化や破損を防ぎ、狭い場所でも設置できるような空気輸送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明における粒体を輸送する空気輸送装置は、垂直輸送管下部に接続された縮径管および補助空気導入手段と、垂直輸送管先端部に接続されたセパレータと、によって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、垂直輸送管下部に接続された縮径管および補助空気導入手段とにより、垂直輸送管内での粒体の流れがプラグ流から浮遊流へと変換され、垂直輸送管出口での粒体の噴出速度を抑制することができ、さらに垂直輸送管先端部に接続されたセパレータ内で円弧状の内壁に沿って粒体が接触する事で衝撃力が吸収される。その結果、衝撃による粒体の粉化や破損が防ぐことが可能となる。また、サイクロン手前の水平管やベンド管が不要となり、狭い場所でも設置可能となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一般的に用いられる輸送管内を空気により粒体を輸送する装置の概略図である。
【図2】本発明の輸送管内を空気により粒体を輸送する装置の概略図である。
【図3】本発明の垂直輸送管下部に接続された縮径管および補助空気導入手段の概略図である。
【図4】本発明のセパレータの断面概略図である。
【図5】本発明のセパレータの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図2は、本発明の輸送管内を空気により粒体を輸送する装置の概略図である。
圧送タンク1に投入された粒体は、圧縮エア供給源3から空気配管2を介して送られる輸送空気により、圧送タンク1より排出され水平輸送管4から垂直輸送管5の下端部までプラグ流で輸送される。プラグ流により塊状となった粒体は、補助空気導入手段8から投入される補助空気により分散され、縮径管7で配管径を縮径させる事でプラグ流から浮遊流へと変換される。粒体は、浮遊流として垂直輸送管5内を通りセパレータ10へ到達する。
【0011】
図3は垂直輸送管における縮径管接続部の断面概略図である。
垂直輸送管5の下部には、縮径管7と補助空気導入手段8が接続されている。補助空気導入手段8には、補助空気を導入するための補助空気配管9が接続されている。縮径管7と補助空気導入手段8は、垂直輸送管5における流体の流れをプラグ流から浮遊流に変換し、垂直輸送管出口から排出される際の粒体の流出速度を抑制する役割を果たしている。粒体が垂直輸送管内をプラグ流で輸送される時、粒体の管内流速は低速度となるが、垂直輸送管出口から排出される際、内圧が一気に開放される為に粒体の流出速度は非常に速くなる。これに対し、本発明では、プラグ流を浮遊流に変換することにより、プラグ流に比べ管内流速は速くなるが、一気に開放されることはないため、輸送管先端部から排出される際の粒体の流出速度を遅くすることができる。
【0012】
垂直輸送管の内径は、小さいほど輸送管内での粒体濃度が均一になりやすいため安定した状態で輸送できる。しかし、垂直輸送管の内径が小さすぎると輸送効率が落ちるため、水平輸送管との関係において、垂直輸送管の内径は、水平輸送管の内径に対し3/5〜9/10倍の範囲となるよう設定されることが望ましい。
【0013】
縮径管の高さは、垂直輸送管の内径に対して、小さすぎると浮遊流に変換する際に不均一になりやすく、大きすぎるとコスト的に不利となるため、2〜5倍であることが望ましい。
【0014】
補助空気導入手段は、補助空気を垂直輸送管内に均一に導入できるものであれば種類を問わないが、一般的にはリングノズルが使用される。
【0015】
図4および図5は、本発明のセパレータの断面概略図である。
セパレータ10は、長方形状の一端に穴を備えた底板11と、底板11の長辺を底辺として底板11に対し垂直に立ち上がった同一形状の二枚の側板12と、底板11に相対し前記二枚の側板12に沿わせて湾曲している長方形状の天井板13と、セパレータ10内部に天井板13と相似形状であり天井板13より一定の距離を離した隔壁板14とを備えている。天井板13の形状は、図4のように、その二本の長辺が、底板11の短辺に接している側から上方へ向かう直線で始まり円弧を経て直線へつながり、前記円弧の中心点が該円弧と底板11との間にある複合線を有する形状、もしくは、図5のように、その二本の長辺が、底板11の短辺に接している側から上方へ直線で始まり、円弧、直線を経て、さらに二番目の円弧へつながり、前記円弧の中心点が該円弧と底板11との間にあり、前記二番目の円弧の中心が該二番目の円弧を境にして底板11と反対側にある複合線を有する形状を備えている。
【0016】
垂直輸送管5の先端に接続したセパレータ10は、垂直輸送管内断面積より大きな断面積を有するため、垂直輸送管5の先端から流出した粒体は、空気抵抗と重力の影響を受け減速し、さらに円弧状の天井板13と隔壁板14との間の空間に沿って衝突することにより減速し、セパレータの排出口まで到達する。ただし、天井板13と隔壁板14との間の空間により排出口15まで到達できなかった粒体は、開口部16を抜けて底板11の上を滑り落ち、排出口15まで到達する。
【0017】
セパレータ10の天井板13と隔壁板14との距離、およびセパレータの2枚の側板12間の距離は、垂直輸送管5の内径に対し小さいと粒体が減速せず大きいと省スペースの目的から外れるため、その距離は2〜5倍であることが望ましい。
【0018】
セパレータの隔壁板の湾曲部円弧半径は、垂直輸送管内径に対し小さいとセパレータの天井板および隔壁板への衝突角度が大きくなり、粒体への衝撃力が大きくなる。また、湾曲部円弧半径が垂直輸送管内径に対し大きいと、省スペースの目的から外れることとなる。これらのことより、セパレータの隔壁板の湾曲部円弧半径は、垂直輸送管内径に対し、8〜25倍であることが望ましい。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
図2に示した空気輸送装置を用いて粒体の輸送試験を行った。空気輸送装置の仕様は次の通りである。入口圧送タンク容積20L、水平輸送管口径50A、垂直輸送管口径32A、垂直輸送管入口の縮径管長さは100mmである。該垂直輸送管下部には縮径管と補助空気導入手段であるリングノズルを設置し、水平輸送管の距離は12m、垂直輸送管の距離は24mとした。セパレータの隔壁板の中心円弧半径は400mm、合計円弧角度225度、断面積は150cmとした。輸送用空気は、圧送タンクおよび圧送タンク出口部より導入した。また、垂直輸送管下部のリングノズルより補助空気を導入した。
【0020】
試験に用いた粒体は、直径2mm、長さ2〜8mmの円柱形状をした樹脂ペレットである。輸送中の粉化や破損を評価する方法として粉化率を用いて評価を行った。粉化率の測定方法は、輸送前と輸送後の粒体を円形篩(晃栄産業製 円形篩400D−1S)により1mm網で篩分け、輸送前と輸送後における1mm以下の微粉量を求め、{(輸送後の微粉量)−(輸送前の微粉量)}/(輸送量)×100 の計算式により、粉化率(%)を算出した。
【0021】
(比較例1)
図1に示した空気輸送装置を用いて粒体の輸送試験を行った。空気輸送装置の仕様は次の通りである。圧送タンク容積20L、水平輸送管口径50A、垂直輸送管口径50A、水平輸送管の距離は合計で12m、垂直輸送管の距離は24mとした。なお、試験に用いた粒体は、実施例1と同じ仕様のものである。
【0022】
実施例1及び比較例1の結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表1に示されるように、本発明の空気輸送装置を用いることで、粒体の輸送における粉化率を大幅に低減でき、輸送中の粉化や破損が少なくなったことを確認できた。
【符号の説明】
【0025】
1 圧送タンク
4 水平輸送管
5 垂直輸送管
7 縮径管
8 補助空気導入手段
10 セパレータ
11 底板
12 側板
13 天井板
14 隔壁板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧送タンクから、水平輸送管、垂直輸送管、セパレータを経て送り先へと粒体を輸送する空気輸送装置において、
前記垂直輸送管先端部に接続された前記セパレータと、該垂直輸送管下部に接続された縮径管および補助空気導入手段と、を備えたことを特徴とする空気輸送装置。
【請求項2】
前記セパレータは、長方形状の一端に穴を備えた底板と、前記底板の長辺を底辺として該底板に対し垂直に立ち上がった同一形状の二枚の側板と、該底板に相対し前記二枚の側板に沿わせて湾曲している長方形状の天井板と、該セパレータ内部に前記天井板と相似形状であり該天井板より一定の距離を離した隔壁板と、を備え、
前記天井板は、該底板の穴を有する側の短辺に接し、該天井板を形成する二本の長辺は、該底板の短辺に接している側から上方へ向かう直線で始まり円弧を経て直線へつながり、前記円弧の中心点が該円弧と該底板との間にある形状を備え、
前記二枚の側板は、前記底板の長辺と前記天井板の長辺とに接する面で構成されている形状を備え、
該セパレータの該底板の穴に前記垂直輸送管先端部が接続されており、該セパレータの該底板と該記垂直輸送管との成す角度が鋭角であることを特徴とする請求項1に記載の空気輸送装置。
【請求項3】
前記縮径管の高さが、前記垂直輸送管の内径に対し2〜5倍であることを特徴とする請求項1に記載の空気輸送装置。
【請求項4】
前記垂直輸送管の内径が、前記水平輸送管の内径に対し3/5〜9/10倍であることを特徴とする請求項1に記載の空気輸送装置。
【請求項5】
前記セパレータの前記天井板の二本の長辺が、該底板の短辺に接している側から上方へ向かう直線で始まり、円弧、直線を経て、さらに二番目の円弧へつながり、前記円弧の中心点が該円弧と該底板との間にあり、前記二番目の円弧の中心が該二番目の円弧を境にして前記底板と反対側にある形状を備えたことを特徴とする請求項2に記載の空気輸送装置。
【請求項6】
前記セパレータの前記天井板の二本の長辺において、長辺を構成する円弧の円弧角度が120〜180度であることを特徴とする請求項2に記載の空気輸送装置。
【請求項7】
前記セパレータの前記天井板の二本の長辺において、上方へ向かう直線で始まり円弧へ接続する円弧における円弧角度が180度であり、前記二番目の円弧の円弧角度が0〜90度であることを特徴とする請求項2に記載の空気輸送装置。
【請求項8】
前記セパレータの前記天井板から前記隔壁板までの距離と、前記2枚の側板間の距離とが、前記垂直輸送管内径に対し2〜5倍であることを特徴とする請求項2に記載の空気輸送装置。
【請求項9】
前記隔壁板の長辺を構成する円弧半径が、前記垂直輸送管内径に対し、8〜25倍であることを特徴とする請求項2に記載の空気輸送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35644(P2013−35644A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172175(P2011−172175)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】