説明

空気除菌装置及び制御方法

【課題】電極や気液接触部材の好適なメンテナンス時期を報知することができる空気除菌装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】電極32、33のメンテナンス時期を検出する場合には、電極32、33に供給される電力の電流値Iを性能劣化要素として取得しA(ステップSa3)、取得した電流値Iに応じて予め設定された時間係数k1で使用時間t1の重み付けを行い(ステップSa4〜Sa7)、積算時間T1に積算するようにした(ステップSa9)。また、気液接触部材5のメンテナンス時期を検出する場合には、送風ファン7から気液接触部材5に供給される空気の風速νを性能劣化要素として取得し(ステップSb3)、取得した風速νに応じて予め設定された時間係数k2で使用時間t2の重み付けを行い(ステップSb4〜ステップSb7)、積算時間T2に積算するようにした(ステップSb9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中浮遊微生物ウィルス等の除去が可能な空気除菌装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空中浮遊微生物ウィルス等の除去を目的として、電極を備え、空気中に電解水ミストを拡散させて、この電解水ミストを空中浮遊微生物に直接接触させ、ウィルス等を不活化する空気除菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−181358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来のものは、電極が使用に伴って劣化し、かつ、スケールが付着して、性能が低下したままとなってしまう場合があった。また、電解水ミストを拡散させるものは、電解水ミストの拡散範囲が制限され、大空間、例えば幼稚園や小・中・高等学校等や、介護保険施設や病院等の広い部屋では効力を発揮しにくいという問題がある。
一方、大空間の除菌を図るべく、気液接触部材を備え、この部材に電解水を滴下または浸透させて、この気液接触部材に室内の空気を送り、この電解水に接触させた空気を室内に吹き出す構成を備えたものが提案される。この構成の場合、気液接触部材がメンテナンスを必要とする部品であり、かかる部品のメンテナンス時期を正確に特定して検知することが望まれる。
そこで、本発明の目的は、電極や気液接触部材の好適なメンテナンス時期を報知することができる空気除菌装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、一対以上の電極により電気分解された電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材に室内の空気を送風し、電解水に接触させた空気を室内に吹き出す空気除菌手段と、前記電極或いは前記気液接触部材の使用時間以外の性能劣化要素を取得し、この性能劣化要素により使用時間を重み付けした総量に基づき、前記電極或いは前記気液接触部材のメンテナンス時期を検出する検出手段と、前記検出手段がメンテナンス時期を検出した場合にメンテナンス時期を報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0005】
この場合において、前記性能劣化要素に基づき、その性能劣化要素による性能低下度に対応する時間係数を設定し、この時間係数と使用時間との乗算値の累積加算値を前記総量として算出してもよい。前記電極の前記性能劣化要素は、前記電極に供給する電力値であり、この電力値により使用時間を重み付けした総量に基づき、前記電極のメンテナンス時期を検出してもよい。前記気液接触部材の前記性能劣化要素は、前記気液接触部材への送風量であり、この送風量により使用時間を重み付けした総量に基づき、前記気液接触部材のメンテナンス時期を検出してもよい。
【0006】
本発明は、一対以上の電極により電気分解された電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材に室内の空気を送風し、電解水に接触させた空気を室内に吹き出す空気除菌装置の制御方法において、前記電極或いは前記気液接触部材の使用時間以外の性能劣化要素を取得し、この性能劣化要素により使用時間を重み付けした総量に基づき、前記電極或いは前記気液接触部材のメンテナンス時期を検出し、メンテナンス時期を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、性能劣化要素により使用時間を重み付けした総量に基づき、電極或いは気液接触部材のメンテナンス時期を検出するため、電極や気液接触部材の好適なメンテナンス時期を報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
床置き式空気除菌装置1を図1に示す。この床置き式空気除菌装置1は、箱形の筐体2を備え、この筐体2は、脚片2Aと、前パネル2Bと、天パネル2Cとを含み、この天パネル2Cの両側には、操作蓋2D、開閉蓋2Eがそれぞれ横並びに配置されている。また、前パネル2Bの左側上部には、各種情報を報知するための複数のLED50を備える報知パネル39が配置されている。
この筐体2の下部には、図2に示すように、矩形の吸込口3が配置され、この吸込口3の上方にはプレフィルタ3Aが配置されている。このプレフィルタ3Aの上方には送風ファン7が支持板8を介して筐体2に支持されている。この支持板8の上方には、保水性の高い気液接触部材5が、図3に示すように斜めに配置されている。この気液接触部材5と送風ファン7との間には水受皿9が配置され、気液接触部材5の上方には、横長の吹出口4が配置されている。
【0009】
この気液接触部材5は、図4に示すように、空気が流通するエレメント部Eと、このエレメント部Eを支持するフレーム部Fとで形成されている。
エレメント部Eは、波板状の波板素材5Aと平板状の平板素材5Bとが積層されて構成される。このため、波板素材5Aと平板素材5Bとの間に略三角形状の複数の開口5Fが形成される。
フレーム部Fは、気液接触部材5の両端枠を構成する一対の枠素材5Dと、一方の枠素材5Dの上部を貫通して他方の枠素材5Dに先端が固定される電解水供給管17と、この電解水供給管17を覆うように一対の枠素材5Dの上端部間に固定されて気液接触部材5の上枠を構成するカバー5Gとを備え、このカバー5Gは、電解水供給管17の下方に配置される第1分流シート5Cを支持している。また、上記エレメント部Eは、一対の枠素材5D間に配置され、このエレメント部Eの上面には、複数枚の第2分流シート5Eが配置されている。
【0010】
上記波板素材5A、平板素材5B、第1分流シート5C及び第2分流シート5Eは、液体の浸透性を有する繊維素材により形成されている。第1分流シート5Cには、電解水供給管17に形成された多数の散水孔(図示せず)から吐出される電解水が滴下され、これにより、電解水が第1分流シート5C全体に拡散し、電解水がエレメント部Eの上面全体に落下する。この落下した電解水は第2分流シート5Eに浸透して第2分流シート5E全体に拡散し、エレメント部Eの上部全体に電解水を供給し、これによって、電解水がエレメント部Eの波板素材5A及び平板素材5Bの隅々に浸透するようになっている。
【0011】
ここで、波板素材5A、平板素材5B、第1分流シート5C及び第2分流シート5Eの素材には、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)またはセラミックス系材料等の素材が使用され、本構成では、PET樹脂が使用されている。なお、電解水は防かび性を発揮するため、気液接触部材5には防かび剤の塗布が不要である。
【0012】
気液接触部材5の傾斜角θは、図3に示すように、30°以上であることが望ましい。それ以下の傾斜角θの場合、滴下した電解水が、気液接触部材5の傾斜に沿って流れず、下方に落下する。また、傾斜角θが90°に近づいた場合、気液接触部材5を通過する送風経路が水平に近くなり、その分だけ上方への吹き出しが困難になる。この吹き出し方向を水平に近付けた場合、吹き出し空気を遠くに送風できなくなり、後述するように、大空間の除菌に適した装置とならない。傾斜角θは、80°>θ>30°が好ましく、さらに好ましくは、75°>θ>55°であり、本構成では約57°である。
【0013】
図5A〜図5Bは、気液接触部材5に電解水を滴下する電解水供給機構を示す。
気液接触部材5の下方には、水受皿9が配置され、この水受皿9には、給水タンク支持皿10が連接されている。この給水タンク支持皿10には、当該支持皿10内に塩素イオンを含む水道水を供給する給水タンク11と、循環ポンプ13とが配置されている。この循環ポンプ13には電解槽31が接続され、この電解槽31には電解水供給管17が接続されている。
【0014】
図5Aに示すように、電解槽31は、水受皿9及び給水タンク支持皿10より上方に配置され、電解槽31には循環ポンプ13が運転を開始すると、給水タンク支持皿10から吸い上げられた水が貯留され、循環ポンプ13が運転を停止すると、電解槽31内の水は重力により給水タンク支持皿10に自然落下し、電解槽31が空になる。
【0015】
この電解槽31には、図5Bに示すように、一方が正、他方が負となる対の電極32、33を交互に備え、電極32、33は、通電された場合、電解槽31に流入した水道水を電気分解して活性酸素種を生成させる。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは過酸化水素といった、いわゆる狭義の活性酸素に、オゾン、次ハロゲン酸等といった、いわゆる広義の活性酸素を含めたものとする。電解槽31は、気液接触部材5に接近して配置され、水道水を電気分解して生成された活性酸素種を、ただちに気液接触部材5に供給できるように構成される。
【0016】
電極32、33は、例えばベースがTi(チタン)で皮膜層がIr(イリジウム)、Pt(白金)から構成された電極板であり、この電極32、33に流れる電流値は、電流密度で数mA(ミリアンペア)/cm2(平方センチメートル)〜数十mA/cm2になるように設定され、所定の遊離残留塩素濃度(例えば1mg(ミリグラム)/l(リットル))を発生させる。
【0017】
詳述すると、上記電極32、33により水道水に通電すると、カソード電極では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
の反応が起こり、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こると同時に、
水に含まれる塩素イオン(水道水に予め添加されているもの)が、
2Cl-→Cl2+2e-
のように反応し、さらにこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+HCl
となる。
【0018】
従って、電極32、33に通電することにより、殺菌力の大きいHClO(次亜塩素酸)を発生させ、この次亜塩素酸が供給された気液接触部材5に空気を通過させることにより、この気液接触部材5で雑菌が繁殖することを防止でき、気液接触部材5を通過する空気中に浮遊するウィルスを不活化することができる。また、空気中の臭気も気液接触部材5を通過する際に、次亜塩素酸と反応し、イオン化して溶解するので、空気が脱臭される。すなわち、電解槽31、気液接触部材5、送風ファン7、循環ポンプ13は空気除菌機構(空気除菌手段)12を構成している。
【0019】
床置き式空気除菌装置1は、この床置き式空気除菌装置1の各部を中枢的に制御する制御部30を備えている。図6は、制御部30とその周辺構成を示すブロック図である。
制御部30は、マイコン34、記憶部35、入力部36及び出力部37を備え、操作蓋2Dを開くと露出する操作パネルと遠隔操作用のリモートコントローラ40(以下、「リモコン」という。)を介して、ユーザから各種指示を入力する。
マイコン34は、ユーザからの各種指示等に従い、EEPROM等の不揮発性メモリである記憶部35に予め記憶されている制御プログラムに基づいて、電解槽31、送風ファン7、循環ポンプ13等を制御するものである。また、制御部30は、電解槽31が電気分解しているときに電極32、33に供給される電流値I及び電気分解する時間である電解時間(使用時間)t1、送風ファン7の送風する風速ν及び送風時間t2を取得し、記憶部35に記憶する。本実施形態では、風速νは、強風と弱風との二つの風速がある。
【0020】
入力部36は、電極32、33、槽温度センサ44、電解槽フロートスイッチ42及び水受皿フロートスイッチ43からの検出信号が入力されるインタフェースであり、出力部37は、電極32、33に電力を出力するものである。
マイコン34は、入力部36を介して水受皿フロートスイッチ43から水無しの検出信号を入力すると給水要求を発行し、報知パネル39に配置された給水報知ランプ(図示せず)を点灯させる。
なお、マイコン22、記憶部35、入力部36及び出力部37は、基板に実装され、図示しない電装ボックスに収納されている。
【0021】
次に、この制御部30に接続される電源41、槽温度センサ44、電解槽フロートスイッチ42、水受皿フロートスイッチ43、電極32、33及び報知パネル39を説明する。
電源41は、床置き式空気除菌装置1を動作させるための電源であり、操作パネルの電源スイッチが投入されると、制御部30に接続された機器に電力を供給する。
槽温度センサ44は、電解槽31内に配置される温度センサが適用され、電解槽31内の電解水の温度を検出する。
【0022】
電解槽フロートスイッチ42は、電解槽31内に予め定められた許可水位以上の電解水が有るか否かを検出する。
水受皿フロートスイッチ43は、水受け皿9内に予め定められた許可水位以上の電解水が有るか否かを検出する。
電解槽31に設けられた電極32、33は、水道水の電気分解に使用されるだけでなく、電解水の導電率を検出するための検出用電極としても使用される。
【0023】
報知パネル39は、上述したように、LED50を点灯させて運転中である旨等、各種報知を行う報知手段である。この報知パネル39(図1)の上段には、運転中である旨を報知する緑色ランプ、給水タンク11への給水を促す赤色ランプ、プレフィルタ3Aのメンテナンス時期を報知する赤色ランプ及び水受皿9の水交換を促す赤色ランプが配置される。また、報知パネル39の下段には、電極32、33の劣化に伴うメンテナンス時期を報知する電極交換ランプ51(図1)及び気液接触部材5の劣化に伴うメンテナンス時期を報知する気液接触部材交換ランプ52(図1)が配置される。
【0024】
次に、床置き式空気除菌装置1の空気除菌時の動作を説明する。
図1において、操作蓋2Dを開くと、図示を省略した操作パネルが内側に設けられており、この操作パネルを操作することで、床置き式空気除菌装置1の運転が開始される。この運転が開始されると、図5Aに示すように、循環ポンプ13が駆動され、給水タンク支持皿10に溜まった水道水が、電解槽31に供給される。
この電解槽31では、電極32、33への通電により、水道水が電気分解されて活性酸素種を含む電解水が生成される。この電解水は、電解水供給管17の散水孔(図示せず)を経て、拡散穴5C中に散水され、ここから気液接触部材5の上縁部にしみ込み、下部に向けて徐々に浸透する。
【0025】
気液接触部材5から滴下した電解水は、水受皿9が受けて、水受皿9の一端側の傾斜面により給水タンク支持皿10内に流入し、そこに貯留される。本構成では、水が循環式となっており、蒸発等により水量が減った場合、給水タンク11内の水道水が、給水タンク支持皿10に適量供給される。この給水タンク11は、開閉蓋2E(図1参照)を開いて取り出し自在に配置され、この給水タンク11を取り出して水道水の補給が可能となる。
【0026】
電解水が浸透した気液接触部材5には、送風ファン7を経て、矢印Xで示すように、室内の空気が供給される。この室内の空気は、気液接触部材5にしみ込んだ活性酸素種に接触して、再び、室内に吹き出される。この活性酸素種は、室内の空気中に、例えばインフルエンザウィルスが浮遊した場合、その感染に必須の当該ウィルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)する機能を持ち、これを破壊すると、インフルエンザウィルスと、当該ウィルスが感染するのに必要な受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、これによって感染が阻止される。実証試験の結果、インフルエンザウィルスが浮遊した空気を、本構成の気液接触部材5に通した場合、当該ウィルスを99%以上除去できることが判明した。
【0027】
ところで、電極32、33は、電気分解を行うにつれて次第に白金が消耗(劣化)すると共に、電気分解により生じたスケールが付着し、性能が劣化していく。また、気液接触部材5についても、電解水によって次第に溶解すると共に、汚れた空気や汚れた電解水に含まれる不純物により次第に劣化していく。
そこで、本実施形態では、電極32、33のメンテナンス時期を検出する処理と、気液接触部材5のメンテナンス時期を検出する処理とを実行し、メンテナンス時期をユーザに報知する機能を具備している。
【0028】
図7は電極32、33のメンテナンス時期の検出処理を示すフローチャートである。なお、この検出処理は、床置き式空気除菌装置1の電源が投入されると、繰り返し実行される処理である。
先ず、床置き式空気除菌装置1の電源が投入されると、制御部30は、システム運転中であるか否かを判定する(ステップSa1)。運転停止中の場合(ステップSa1:No)、電極32、33が消耗しないため、制御部30は、メンテナンス時期の検出処理を一旦終了する。
【0029】
運転中と判定した場合(ステップSa1:Yes)、制御部30は、電解槽31で電気分解中(以下、電解中)か否かを判定する(ステップSa2)。電解中ではない場合(ステップSa2:No)、電極32、33が消耗しないため、制御部30は、メンテナンス時期の検出処理を一旦終了する。
【0030】
電解中と判定した場合(ステップSa2:Yes)、制御部30は、電解槽31の電極32、33に出力されている電力の電流値Iを取得し(ステップSa3)、電極32、33の消耗度を検出するために、電流値Iが、予め設定された閾値Ia未満であるか否かを判定する(ステップSa4)。制御部30は、電流値Iが閾値Ia以上であると判定した場合(ステップSa4:No)、時間係数k1を、電流値Iが閾値Ia以上の場合の電極32、33の消耗度に対応する値1.0に設定し(ステップSa5)、ステップSa9の処理に移行する。
【0031】
一方、電流値Iが、予め設定された閾値Ia未満である場合(ステップSa4:Yes)、制御部30は、電流値Iが、予め設定された閾値Ib未満であるか否かを判定する(ステップSa6)。ここで、閾値Ibは閾値Iaよりも小さく設定されている。制御部30は、電流値Iが閾値Ib以上であると判定した場合(ステップSa6:No)、時間係数k1を、電流値Iが閾値Ib以上、閾値Ia未満の場合の電極32、33の消耗度に対応する値0.8に設定し(ステップSa7)、ステップSa9の処理に移行する。
【0032】
一方、電流値Iが、閾値Ib未満である場合(ステップSa6:Yes)、制御部30は、時間係数k1を、電流値Iが閾値Ib未満の場合の電極32、33の消耗度に対応する値0.6に設定する(ステップSa8)。このようにして電流値Iに基づき電極32、33の消耗度に対応する時間係数k1を設定すると、制御部30は時間積算処理を行う(ステップSa9)。
【0033】
この時間積算処理は、制御部30が時間係数k1と使用時間t1とを乗算して、その乗算値を累積加算する処理であり、これにより、使用時間t1を時間係数k1で重み付けした積算時間(総量)T1を算出する。
【0034】
次に、制御部30は、未転極時間が予め設定した時間(例えば、15分間)経過したか否かを判定することにより、電極32、33を転極するか否かを判定する(ステップSa10)。そして、上記時間が経過していなければ(ステップSa10:No)、ステップSa12に移行する一方、経過していれば(ステップSa10:Yes)転極処理(ステップSa11)を行った後ステップSa12へ移行する。このように転極を行うことにより、電極32、33の白金量とスケール付着量との平均化を図ることができ、電極32、33の寿命を長くすることができる。
【0035】
ステップSa12において、制御部30は、電極32、33がメンテナンス時期に達したか否かを判定するため、積算時間T1が、電極32、33の予め定めたメンテナンス時間Tm1を超えているか否かを判定する(ステップSa12)。制御部30は、積算時間T1がメンテナンス時間Tm1を超えていないと判定すると(ステップSa12:No)、メンテナンス時期の検出処理を一旦終了し、一連のメンテナンス時期の検出処理を繰り返す。
【0036】
一方、積算時間T1がメンテナンス時間Tm1を超えている場合(ステップSa12:Yes)、制御部30は、電極交換ランプ51(図1)を点灯させ、電極32、33の交換を促す報知処理を行う(ステップSa13)。
ここで、電極32、33の交換を促す報知処理が行われた場合、ユーザが、電極33、33の交換を行い、リモコン40に設けられた電極32、33の交換が終了を伝える図示せぬ交換終了ボタンスイッチが操作されると、制御部30は、電極交換ランプ51を消灯し、積算時間T1のカウント値をリセットする。
【0037】
図8は気液接触部材5のメンテナンス時期の検出処理を示すフローチャートである。なお、この検出処理は、床置き式空気除菌装置1の電源が投入されると、繰り返し実行される処理である。
先ず、床置き式空気除菌装置1の電源が投入されると、制御部30は、システム運転中であるか否かを判定する(ステップSb1)。運転停止中の場合(ステップSb1:No)、気液接触部材5が劣化しないため、制御部30は、メンテナンス時期の検出処理を一旦終了する。
【0038】
運転中と判定した場合(ステップSb1:Yes)、制御部30は、循環ポンプ13が運転中であるか否かを判定する(ステップSb2)。循環ポンプ13が運転停止中の場合(ステップSb2:No)、電解水により気液接触部材5が劣化しないため、制御部30は、メンテナンス時期の検出処理を一旦終了する。
【0039】
循環ポンプ13が運転中と判定した場合(ステップSb2:Yes)、制御部30は、送風ファン7の風速νを取得し(ステップSb3)、気液接触部材5の劣化度を検出するために、風速νが、強風であるか否かを判定する(ステップSb4)。制御部30は、風速νが強風であると判定した場合(ステップSb4:Yes)、時間係数k2を、強風時の気液接触部材5の劣化度に対応する値1.0に設定し(ステップSb5)、ステップSb9の処理に移行する。
【0040】
一方、風速νが、強風でない場合(ステップSb4:No)、制御部30は、風速νが、弱風であるか否かを判定する(ステップSb6)。制御部30は、風速νが弱風であると判定した場合(ステップSb6:Yes)、時間係数k2を、強風時の気液接触部材5の劣化度に対応する値0.8に設定し(ステップSb7)、ステップSb9の処理に移行する。
【0041】
一方、風速νが、弱風でない場合(ステップSb6:No)、すなわち、送風ファン7が動作していない場合、制御部30は、時間係数k2を、無風時の気液接触部材5の劣化度に対応する値0.5に設定する(ステップSb8)。このようにして、風速νに基づき気液接触部材5の消耗度に対応する時間係数k2を設定すると、制御部30は、時間積算処理を行う(ステップSb9)。
【0042】
この時間積算処理は、制御部30が時間係数k2と使用時間t2とを乗算して、その乗算値を累積加算する処理であり、これにより、使用時間t2を時間係数k2で重み付けした積算時間(総量)T2を算出する。
【0043】
次に、制御部30は、気液接触部材5がメンテナンス時期に達したから否かを判定するため、積算時間T2が、気液接触部材5の予め定めたメンテナンス時間Tm2を超えているか否かを判定する(ステップSb10)。制御部30は、積算時間T2がメンテナンス時間Tm2を超えていないと判定すると(ステップSb10:No)、メンテナンス時期の検出処理を一旦終了し、一連のメンテナンス時期の検出処理を繰り返す。
【0044】
一方、積算時間T2がメンテナンス時間Tm2を超えている場合(ステップSa10:Yes)、制御部30は、気液接触部材交換ランプ52(図1)を点灯させ、気液接触部材5の交換を促す報知処理を行う(ステップSb11)。
ここで、気液接触部材5の交換を促す報知処理が行われた場合、ユーザが、気液接触部材5の交換を行い、リモコン40に設けられた気液接触部材5の交換が終了を伝える図示せぬ交換終了ボタンスイッチが操作されると、制御部30は、気液接触部材交換ランプ52を消灯し、積算時間T2のカウント値をリセットする。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電極32、33に供給される電力の電流値Iを性能劣化要素として取得し、取得した電流値Iに応じた性能低下度に対応する時間係数k1を設定し、この時間係数k1で使用時間t1の重み付けを行って、積算時間T1を算出するため、供給される電力が大きい程性能が低下する電極32、33の性能低下度と略一致する積算時間T2を取得することができる。従って、この積算時間T1に基づき電極32、33のメンテナンス時期を適切に検出でき、ユーザに報知することができる。
【0046】
また、送風ファン7から気液接触部材5に供給される空気の風速νを性能劣化要素として取得し、取得した風速νに応じた性能低下度に対応する時間係数k2を設定し、この時間係数k2で使用時間t2の重み付けを行って、積算時間T2を算出するため、供給される空気の送風量が多い程性能が低下する気液接触部材5の性能低下度と略一致する積算時間T2を取得することができる。従って、この積算時間T2に基づき気液接触部材5のメンテナンス時期を適切に検出でき、ユーザに報知することができる。
【0047】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、活性酸素種としてオゾン(O3)や過酸化水素(H22)を発生させる構成としても良い。この場合、電極として白金タンタル電極を用いると、イオン種が希薄な水から、電気分解により高効率に安定して活性酸素種を生成できる。
このとき、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応と同時に、
3H2O→O3+6H++6e-
2H2O→O3+4H++4e-
の反応が起こりオゾン(O3)が生成される。またカソード電極では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
2-+e-+2H+→H22
のように、電極反応によりO2-が生成したO2-と溶液中のH+とが結合して、過酸化水素(H22)が生成される。
【0048】
この構成では、電極に通電することにより、殺菌力の大きいオゾン(O3)や過酸化水素(H22)が発生し、これらオゾン(O3)や過酸化水素(H22)を含んだ電解水を作ることができる。この電解水中におけるオゾンもしくは過酸化水素の濃度を、対象ウィルス等を不活化させる濃度に調整し、この濃度の電解水が供給された気液接触部材5に空気を通過させることにより、空気中に浮遊する対象ウィルス等を不活化することができる。また、臭気も気液接触部材5を通過する際に、電解水中のオゾンまたは過酸化水素と反応し、イオン化して溶解することで、空気中から除去され、脱臭される。
【0049】
上記実施形態では、気液接触部材5への電解水滴下手段を説明したが、これに限定されず、気液接触部材5に電解水を浸透させてもよい。この場合、図示は省略したが例えば水受皿9に電解水を滞留させ、ここに気液接触部材5の下縁部を水没し、いわゆる毛細管現象によって電解水を吸い上げる構成としてもよい。
【0050】
上記実施形態では、電極32、33や気液接触部材5の性能劣化要素として、電流値I及び風速νを取得する場合を説明したが、これに限定されず、例えば、電極32、33の
性能劣化要素として、電極32、33に供給される電力値や電圧値を取得してもよく、また、気液接触部材5の性能劣化要素として、送風ファン7の回転数、循環ポンプ13による電解水の供給量又は循環ポンプ13の回転数等を取得してもよい。
【0051】
上記実施形態では、電極交換ランプ51及び気液接触部材交換ランプ52を用いてメンテナンス時期を報知する場合を説明したが、ランプ等の表示装置に限らず、例えば、ブザー等の放音装置により、メンテナンス時期を報知してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】内部構成を示す斜視図である。
【図3】筐体の縦断面図である。
【図4】気液接触部材の正面図である。
【図5】気液接触部材に電解水を滴下する手段を示す系統図であり、Aは側面図、Bは電解槽の構成図である。
【図6】制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】電極のメンテナンス時期の検出処理を示すフローチャートである。
【図8】気液接触部材のメンテナンス時期の検出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 床置き式空気除菌装置(空気除菌装置)
5 気液接触部材
12 空気除菌機構(空気除菌手段)
30 制御部(検出手段)
32、33 電極
50 電極交換ランプ51(報知手段)
51 気液接触部材交換ランプ(報知手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対以上の電極により電気分解された電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材に室内の空気を送風し、電解水に接触させた空気を室内に吹き出す空気除菌手段と、
前記電極或いは前記気液接触部材の使用時間以外の性能劣化要素を取得し、この性能劣化要素により使用時間を重み付けした総量に基づき、前記電極或いは前記気液接触部材のメンテナンス時期を検出する検出手段と、
前記検出手段がメンテナンス時期を検出した場合にメンテナンス時期を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする空気除菌装置。
【請求項2】
前記性能劣化要素に基づき、その性能劣化要素による性能低下度に対応する時間係数を設定し、この時間係数と使用時間との乗算値の累積加算値を前記総量として算出することを特徴とする請求項1に記載の空気除菌装置。
【請求項3】
前記電極の前記性能劣化要素は、前記電極に供給する電力値であり、この電力値により使用時間を重み付けした総量に基づき、前記電極のメンテナンス時期を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気除菌装置。
【請求項4】
前記気液接触部材の前記性能劣化要素は、前記気液接触部材への送風量であり、この送風量により使用時間を重み付けした総量に基づき、前記気液接触部材のメンテナンス時期を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気除菌装置。
【請求項5】
一対以上の電極により電気分解された電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材に室内の空気を送風し、電解水に接触させた空気を室内に吹き出す空気除菌装置の制御方法において、
前記電極或いは前記気液接触部材の使用時間以外の性能劣化要素を取得し、この性能劣化要素により使用時間を重み付けした総量に基づき、前記電極或いは前記気液接触部材のメンテナンス時期を検出し、メンテナンス時期を報知することを特徴とする空気除菌装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−202674(P2007−202674A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23021(P2006−23021)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】