説明

空調システム

【課題】
乱流等による効率低下の小さい、効率の良い空調システムが望まれる。また、天井高を低くすると住戸の価値が下がるので、なるべく天井高を高く保ったまま床下空調システムを実現することが望まれる。その際、空調対象空間内の局所的な空気のよどみも軽減し、快適性を向上させるものであることが望ましい。更には、マンション造等の建物の特性を活かす空調システムであることが望ましい。
【解決手段】
本発明の目的は、室内機からの空気を床下に向かって略真下に放散するように案内し、送風機を一定速で回転させ、室内機から吹き出した空気を、天井を介さずに、室内機に戻る気流を形成する空調システムにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関し、特に、空気調和機をマンション造等に組み合わせた床下空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マンションや一般住宅における近年のエネルギー志向に伴い、高気密・高断熱化が推進されており、空調システムにおいても省エネルギー化が必須課題となってきている。
【0003】
特許文献1は、複数の部屋全体を温度の片寄りの少ない快適な冷暖房空間とする床下空調システムについて記載されている。これには、空調対象範囲の床下空間及び空調対象空間を囲む壁内の通気路とで構成した調和空気の吹出し通路と、空調対象空間の壁(巾木,回り縁,吹出し口台板を含む)に設けた吹出し口を備え、吹出し口の吹出し方向が斜め上向きまたは斜め下向きとしたことが記載されている。
【0004】
特許文献2は、床下チャンバ内に旋回流を発生させないようにして、各吹出口から吹き出す空調空気の吹出温度および吹出風量を均等化し、空調室にむらを発生させないようにするアンダーフロア空調システムについて記載されている。これには、床下チャンバの一方側壁に形成された吐出口に対向する床下チャンバの他方側壁側に、複数のリリーフダンパで仕切った吸込用均圧チャンバを形成すると共に、リリーフダンパを介して吸込用均圧チャンバに吸い込まれた空調空気を排出路により床下チャンバ以外に排出することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−078128号公報
【特許文献2】特開平07−217940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、床下空間内の乱流等による効率低下については考慮されていない。特許文献2は、床下空間内の旋回流等による温度むらについては考慮されているものの、床下空間内の乱流等による効率低下や気流が遅い場合については考慮されていない。また、一室の空調に関するものであって、更には天井裏にも空調用の構成を備える必要がある。
【0007】
従って、乱流等による効率低下の小さい、効率の良い空調システムが望まれる。また、天井高を低くすると住戸の価値が下がるので、なるべく天井高を高く保ったまま床下空調システムを実現することが望まれる。その際、空調対象空間内の局所的な空気のよどみも軽減し、快適性を向上させるものであることが望ましい。更には、マンション造等の建物の特性を活かす空調システムであることが望ましい。
【0008】
本発明は、天井高を高く保つことができ、効率の良い空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、
室外機と、内蔵された送風機によって床下に空気を吹き出す室内機と、前記室外機と前記室内機とで構成される冷凍サイクル1つで複数の部屋の空調を行う空調システムであって、
前記室内機からの空気を床下に向かって略真下に放散するように案内するダクトと、
前記送風機を一定速で回転させる制御回路と、を備え、
前記室内機から吹き出した空気は、前記床下、前記複数の部屋を通り、天井を介さずに、前記室内機に戻る気流を形成する空調システム
によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天井高を高く保ち、効率の良い空調システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【実施例】
【0012】
本発明における一実施例を各図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は空調システムの概観図である。1は空気調和機の室内機、2a,2bは室内機1からの吹出空気を案内する角ダクト、3は室内機1で熱交換するための空気を吸込む吸込グリル、4は空気調和機の室外機であり玄関横やベランダに設置される。5は室内機1と室外機4を繋いで冷凍サイクルを構成する冷媒配管、6は建物の一部であるコンクリートスラブ、7は角ダクト2a,2bから吹き出された空気が流れる床下空間、20は床、50は室内機1が据え付けられるスペースである玄関ホール等、60は室外である。
【0014】
室内機1は冷房,暖房,再熱除湿運転が可能なものであり、使用者の要求に応じた運転を行うものである。この室内機1は、いわゆる天井カセットタイプのエアコンと同様の構造であり、詳細は図4を用いて後述する。室内機1の設置場所は、例えば下駄箱の下のスペースである。通常の空気調和機、いわゆるルームエアコンや天井カセットタイプのエアコンでは部屋12に直接空気を吹き出すものであるが、この空調システムでは、室内機1から角ダクト2a,2bを介して一旦床下空間7に空気を吹き出す。このように室内機1で熱負荷された空気は床下空間7に吐出面風速を抑えて吐出静圧を維持した状態で放散される。また、この吐出空気は常時一定速で送風される。この床下空間7は床20とコンクリートスラブ6で囲まれた大きな空間であり、その空間内で自然と温度分布がバランスして均一になり、また、圧力もバランスして均一になる。この床下空間7は、熱負荷された空気を溜める空間である吐出用チャンバとなり、1つの熱源となる。なお、床下空間7の高さは200mm〜250mm程度である。
【0015】
図2は空調システムによる空気の流れを示す図である。11は吐出口、12は部屋である。上記のように1つの熱源となった床下空間7の空気が、部屋12に配設された各吐出口11を介してから部屋12に吹き出される。吹き出された空気は、吸込グリル3へと吸込まれていく。これによって気流が作られ、この気流によって部屋12を暖房等する。この気流を常時一定速とすることで、部屋12内に常時一定の空気の環流を形成することができる。
【0016】
本空調システムにおいては、マンション等の各戸内を1つの空間のように考え、1台の空気調和機、つまり、冷凍サイクル1つで戸内全体を空調する全館空調を行う。各部屋12にルームエアコンを設置するような個別空調とは異なるものである。全館空調では、冷凍サイクルを1つとすることで、排出するCO2 も低減することができ、地球にやさしい空調システムを実現する。
【0017】
室内機1の据え付けについて図3を用いて説明する。図3は空気調和機の据え付けに関する図である。室内機1は下駄箱の下のスペース等に設置されることとなるが、筐体から吊り下げる構造をとる。111は室内機1から空気を吹き出す室内機吐出口、201a,201bは筐体から室内機1を吊り下げるための取付具、202a,202bは室内機1に取り付けられ、取付具201a,201bと係合する本体吊金具である。この取付具201a,201bは筐体から吊り下げられるように固定されており、室内機1の本体吊金具202a,202bと係合する。この係合によって室内機1は筐体から吊り下げられる。
【0018】
次に室内機1の室内機吐出口111と床下空間7との連通について説明する。室内機吐出口111は斜視図上、角が丸くなっておらず文字通り長方形で表されている。この室内機吐出口111から吹き出される空気を床下空間7に導くために、角ダクト2a,2bを室内機1に取り付ける。取り付けは角が丸くなった四角いエリアの外側にあるねじ穴にねじで取り付けられる。この取り付けにより室内機1と床下空間7とが連通し、送風路が形成される。
【0019】
送風路の断面積は、室内機吐出口111の断面積から角ダクト2a,2bの断面積へというように変化することとなる。角ダクト2a,2bの内寸は、室内機吐出口111よりも約1.5 倍大きな面積に設定されている。従って、室内機1からの流れは角ダクト2a,2bにより拡大,減速することとなる。つまり、このような面積関係にすることで床下への突入風速を抑えることができる。これは、床下空間7での乱流の軽減に寄与することとなり、効率の良い空調を実現するのに資するものである。
【0020】
次に室内機1自体について図4を用いて説明する。図4は空気調和機を下から見上げた図(床から天井方向に向かって見た図)であり、(a)は露受皿を取り付けた概観図、(b)は露受皿を外した図である。
【0021】
101は室内機1の外箱、102は送風機であるシロッコファン、103は熱交換器、104は露受皿、105は露受皿104の固定具である露受皿固定具、106は吸込口であり少なくとも片面は吸込グリル3に繋がっている、107は湿度センサ、108は運転状態を制御する制御回路を内蔵した電気品箱、109は停電復帰用のオートリスタートスイッチ、110は静圧スイッチである。
【0022】
これらの部品は外箱101に収納される。シロッコファン102によって吸込グリル3を介して吸込口106から空気を吸い込み、熱交換器103で熱交換させ、室内機吐出口111から熱交換した空気を吹き出す。この空気調和機では冷暖房運転の他、除湿運転も可能な構成となっているため、除湿運転時に熱交換器103に結露する。この結露した露が外箱101内に垂れないように露受皿104を設けている。この露受皿104は露受皿固定具105で3箇所固定されている。
【0023】
冷房・暖房・除湿等の運転状態(室内温度,室内湿度,風量)は、湿度センサ107,後述の温度センサ,後述のワイヤードリモコン40の情報に基づいて、電気品箱108内の制御回路が各アクチュエータに指令を出すことで制御される。湿度センサ107を室内機1の下面に配置しているのは、フロアの空気の一番集まる部位での湿度判定を基準とした制御を行うためである。
【0024】
このような室内機1をマンション等の一戸に据え付けた場合について、図2よりも詳細に、図5,図6,図7を用いて説明する。図5は空調システムを実際の部屋に適用した際の空気の流れを示す側面図、図6は空調システムを実際の部屋に適用した際の空気の流れを示す平面図であり、図7は床下空間から吹き出す空気の流れを示す断面図である。12は部屋、20は床、21は扉、22は扉21に設けられたアンダーカット、23は天井面、24は天井裏、30は巾木、31は巾木30部分で床下空間7からの空気を吹き出す巾木吐出口、40は空気調和機を操作するためのワイヤードリモコン、50は玄関ホール等、51は下駄箱・物入等である。また、15は家具等である。
【0025】
図5では、図2のように、部屋12に配設された各吐出口(各吐出口11・各巾木吐出口31)から、床下空間7の空気が部屋12に吹き出される。巾木30からの吹き出しは図7に示す通りである。床下空間7全体を空気調和機の吐出用チャンバとして利用しているので、その吐出用チャンバに蓄えられ熱負荷された空気は均一な温度バランスを持っており、各吐出口(各吐出口11・各巾木吐出口31)で温度バランスのとれた空気が吹き出される(図6も参照)。その床下空間7の熱負荷された空気を各部屋12に設置された各吐出口(各吐出口11・各巾木吐出口31)から吹き出すことで各部屋12全体を一様に空調して、各部屋12間の温度バランスを調整することができる。
【0026】
図2で述べたように、空気が常時一定速で還流しているからである。吹き出された空気はその気流に乗って、吸込グリル3へと吸込まれていく。このようにして温度のバリアフリーを実現することができる。なお、温度のバリアフリーとは、各部屋12間で温度差が無いことをいう。
【0027】
このようなことを可能とするためには、室内機1で熱負荷した空気を角ダクト2a,2bを通して床下空間7へ放散させることと、常時一定の送風を行うことが重要である。ここでいう常時一定とは、風量が変更されない場合にはファンの回転数を一定に保つということである。ホテル等にあるように、風量は例えば「強」「中」「弱」と3段階に変更することが可能である。
【0028】
仮に、室内機1から遠い位置に空気を吹き出すよう床20の下にダクトを這わせて強制的に指向性を持たせると、指向性は非常に良いが、ダクト内部の圧力損失が大きくなり、床下全体を循環する風量自体が落ちてしまう。また、床下空間の圧力・温度バランスを損なうこととなる。すると、室内機1から近い部屋と遠い部屋とでは温度差が大きくなり、温度のバリアフリーを行うことができなくなる。
【0029】
従って、そのようなダクトを用いずに床下空間7全体を吐出用チャンバとした。このように床下空間7全体を吐出用チャンバとした場合であっても、床下全体を循環する風量を落とさずに床下空間7の空気に指向性を持たせるためには、室内機吐出口111を設けることが必要である。その際、室内機1から床下空間7へ吹き出す空気の面風速をある程度落として、床下での乱流等による圧力損失を押さえ、吐出静圧を維持することが重要である。
【0030】
このため、先ず第1に、室内機1から吹き出す空気を床20と平行に吹き出さず、角ダクト2a,2bによって略真下に吹き出すこととした。実施例では90度であるが、据え付け上の問題で90度にならない場合も考えられるので、床20と角ダクト2a,2bの軸線とのなす角が75度以上であれば良いものとする。こうすることで床下空間7内の気流に大きな速度を持たせず、乱流を軽減している。次に、角ダクト2a,2bの内寸を、室内機吐出口111よりも約1.5 倍大きな面積にして床下への突入風速を抑え、床下空間7での乱流を軽減している。以上の構成とし、床下空間7をかき回さないようにして、吐出用チャンバを均一な熱源として保っている。
【0031】
実際の気流について説明する。実際の部屋12は扉21や壁によって区画されているので、扉21が閉じられている場合等には、空気が流れなくなってしまう。そこで、扉21にアンダーカット22を設け、扉21が閉じられていたとしても空気が流れるように工夫している。場合によっては壁にアンダーカット22としての孔を設けても良い。このような構成とすることで各部屋12に気流を生じさせることができる。
【0032】
なお、本空調システムでは、天井裏24を利用せず、天井裏24には空調のための構成を備えていない。つまり、簡易な構成で空調システムを実現できる。また、その分だけ天井高を低くすること無く、空調システムを導入できる。
【0033】
室内空気の温度(例えば、1度毎)や風量(例えば、3段階)の制御はワイヤードリモコン40で操作することにより行われる。このワイヤードリモコン40には温度センサが内蔵されている。ワイヤードリモコン40は壁に設置され、各部屋12の空気の集まる箇所(気流の集まる箇所)で、外部の熱影響の少ない部分に設置される。湿度センサ107は室内機1の下面、更に言えば、下駄箱等の下部に設置されているので、温度センサの設置位置と湿度センサ107の設置位置とは異なる。
【0034】
図6(a)では、吐出口11を設けず、巾木吐出口31から空気を吹き出す様子を示している。上記のように床下空間7全体が吐出用チャンバであるので、各巾木吐出口31から略同一の吹き出しがなされる。このようにして吹き出された空気は室内機1へ向かい、玄関ホール等50あたりで集まる。従って、その位置にワイヤードリモコン40を配設している。
【0035】
ただし、通常は壁際に家具等15を置くことになり、または、壁際では構造上、巾木吐出口31を設けられない場合がある。この巾木吐出口31を部分的に塞いでしまった場合、その部分からは空気を吹き出すことができないので、部屋12の温度バランスが局所的に悪くなってしまう。このようにバランスの悪い部位、つまり、巾木吐出口31を設けられない場所付近の床20に吐出口11を設けることで、吐出口11から空気を吹き出させてバランスを調整する(図6(b))。この吐出口11を設けると、角ダクト2a,2bから床下空間7に吹き出された空気が吐出口11に向かうこととなって、床下空間7の空気の流れに弱い指向性を持たせることができ、その吐出口11が設けられた部屋12への風量を局所的に増やすことができる。従って、部屋12の温度バランスをとることができる。
【0036】
なお、図6(b)では吐出口11から室内機1に向かう気流以外の巾木吐出口31からの気流が省略されており、図6(a)(b)で気流を表す矢印の数が異なるが、室内機1から吹き出す風量が同じであれば、ワイヤードリモコン40の位置での風量、つまり矢印の数も同じになる。
【0037】
なお、吐出口11は床20を構成するパネル等で蓋をすることができ、自由な位置でそのパネル等を取り外せば吐出口11を設けることができるように工夫されている。なお、パネル等で蓋をすると床20と同一の面を構成することができる。吐出口11はグリル等で覆うことにより、機能を損なわずに床20の平面と同等のものとなる。
【0038】
また、吐出口11が設けられた箇所では局所的に風量が増えるため、僅かながら室温調整が可能となる。ここでいう室温調整とは、部屋12の室温を吐出口11からの吹き出し空気の温度に近づける室温調整である。快適性の向上のために、吐出口11に相当するパネル等の開口を小さな面積単位とすれば、室温調整を細かくすることが可能となる。逆に、大きな開口面積が欲しいときは隣接する複数のパネル等を開口して吐出口11とすればよい。
【0039】
以上のように、床下空間7に吹き出した気流に指向性を持たせるためには、あるいは、空気の温度と圧力とが自然とバランスするためには、室内機1からの吹き出し風量を常時一定とする必要がある。温度調整は風量によらず熱交換器の温度の上げ下げで行う必要がある。制御回路により室内機1に内蔵されている送風機であるシロッコファン102を一定速に維持し、床下空間7に熱負荷された空気を放散することで、それを行う。そして、一様な熱負荷を持った床下空間7の空気を各部屋12に吹き出すことで、大きな空調対象空間内の局部での空気のよどみや各部屋間の室温差を軽減し、戸内の温度のバリアフリー化を図ることで快適性の向上を達成させる。
【0040】
次に、マンション造について図8を用いて説明する。図8はマンション造を示す図であり、(a)は外断熱造を示す図、(b)は内断熱造を示す図である。70は外壁、71は通気層、72は断熱材である。
【0041】
図8(a)に示す外断熱造は、室外60と部屋12との間には、外壁70,通気層71,断熱材72,コンクリートスラブ6が存在している。断熱材72が蓄熱体であるコンクリートスラブ6よりも室外側にあることで、コンクリートスラブ6を通した熱橋の影響を軽減することができる。つまり、室内は室外の熱影響が軽減されている。また、コンクリートスラブ6自体を蓄熱体として利用できるため、コンクリートスラブ6自体に熱を持たせて保温層を形成し、室内での熱消費エネルギーを軽減することができる。暖房時には室内あるいは屋内の熱を逃がさない構造であり、保温性能が高いといえる。従って、空気調和機の暖房運転時においては、床暖房の効果を奏するものである。このとき床下空間7の上面は床20で覆われ、他の5面はコンクリートスラブ6で覆われている。
【0042】
一方、図8(b)に示す内断熱造は、室外60と部屋12との間には、コンクリートスラブ6,断熱材72が存在している。しかし、室外60からコンクリートスラブ6,床下空間7,床20を介して室内に繋がる部分(床下経路)や、室外60からコンクリートスラブ6,天井裏24,天井面23を介して室内に繋がる部分(天井経路)も存在する。断熱材72が蓄熱体であるコンクリートスラブ6よりも室内側にあることで室内は室外の熱影響を受け易い部分(床下経路や天井経路)がある。これらの部分は、コンクリートスラブ6を通した熱橋の影響が大きい。例えば暖房時には、その熱が室外側に放出され易く、室内での熱消費エネルギーが外断熱造と比較して大きい。従って、床暖房の効果は期待することができない。
【0043】
外断熱造を採用し、上記のように室内機1からの吹き出し風量を常時一定とすると、躯体の表面に熱を常時持たせることができる。また、外部の熱影響の少ない時間帯では、この躯体に蓄えられた熱の放熱を促すこととなり、空調補助としてこの躯体からの放熱を利用することができ、躯体蓄熱空調を実践することができる。従来の居室のみの空調においては、床下に漏洩した熱量の回収をすることができず、エネルギーを捨てながら空調するといった熱ロスの大きい空調となっていたのに対し、本空調のように床下空間を空調機の送風経路の一部として利用することで、従来の熱ロス分のエネルギーも含めて利用することができ、また、空調機から床下空間への吐出面風速を押さえた状態で常時一定速の送風を行うことにより、床下空間に均一な温度・圧力のバランス状態をつくることができ、かつ躯体に熱を持たせたり、躯体からの熱の放熱を促すことでエネルギーを無駄なく有効利用することが可能となった。また、床下空間に熱源が配置されることで、暖房期には床暖房効果があり、足元からの輻射熱による空調を行うことができる。
【0044】
以上の実施例では、床下空間に吐出する空調機からの送風の面風速を遅くすることで、吐出静圧の低下を軽減し、床下空間の圧力・温度バランスを取っている。床下空間の静圧を維持するためには動圧が低下するため、空調機から遠い部位からの吐出部では空気を押す力が弱くなるため、吐出開口面積を増やすことで部屋間の温度バランスを調整する。また、空調機から床下空間への吐出面風速を抑えることで床下空間での静圧低下を極力押さえた状態で居室内に吹き出し、床下空間を含むフロア全体をゆっくりした送風で循環することで快適な空調空間を提供する。
【0045】
このようにして、全館空調を行うことで、温度のバリアフリーが可能となり、温度・湿度の一括管理が可能となる。また、各部屋12間の床下空間7全体を吐出用チャンバとして利用することで、暖房運転時は床暖房効果が得られる。また、常時一定の風量で部屋12内の空気を循環しているので、局部的な湿度の上昇等が無くカビ等の発生を抑制する。部屋12内に常時一定の空気が流れていることで爽快感があり快適性の向上に資する。また、生活空間の快適性を向上し、地球にやさしい空調システムを実現でき、戸内の温度を一定に保つと共にCO2排出量の削減を図ることができる。
【0046】
なお、以下のように構成することもできる。
【0047】
室外機と、内蔵された送風機によって床下に空気を吹き出す室内機と、前記室内機から吹き出された空気の熱を蓄える床下空間とを備え、前記室外機と前記室内機とで構成される冷凍サイクル1つで複数の部屋の空調を行う空調システムであって、
前記室内機からの空気を床下に向かって略真下に放散するように案内するダクトと、
前記送風機を一定速で回転させる制御回路と、
前記部屋に前記床下空間からの空気を吹き出す吐出口と、を備え、
前記室内機から吹き出した空気は、前記床下空間、前記複数の部屋を通り、天井を介さずに、前記室内機に戻る気流を形成することによって、床下空間を一つの熱源とした空調を行うことができる。
【0048】
その際、前記室内機から前記床下空間へ到る送風路の断面積は、前記室内機の空気吹出口である室内機吐出口の断面積よりも、前記ダクトの断面積の方を大きくすると良い。
【0049】
その際、前記吐出口は、巾木に設けられた巾木吐出口としても良い。また、その際、前記吐出口は、床に設けられた吐出口をも含むこととしても良い。これにより、空調対象空間内の局所的な空気のよどみも軽減し、快適性を向上させることに寄与する。
【0050】
また、前記床下空間は、前記床で上面が覆われ、建物のコンクリートスラブにより他の5面が覆われることとしても良い。また、前記空調システムは、建物造を外断熱造とすることによって、マンション造等の建物の特性を活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】空調システムの概観図である。
【図2】空調システムによる空気の流れを示す図である。
【図3】空気調和機の据え付けに関する図である。
【図4】空気調和機を下から見上げた図であり、(a)は露受皿を取り付けた概観図、(b)は露受皿を外した図である。
【図5】空調システムを実際の部屋に適用した際の空気の流れを示す側面図である。
【図6】空調システムを実際の部屋に適用した際の空気の流れを示す平面図である。
【図7】床下空間から吹出す空気の流れを示す断面図である。
【図8】マンション造を示す図であり、(a)は外断熱造を示す図、(b)は内断熱造を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 空気調和機の室内機
2a,2b 角ダクト
3 吸込グリル
4 空気調和機の室外機
5 冷媒配管
6 コンクリートスラブ
7 床下空間
11 吐出口
12 部屋
15 家具等
20 床
21 扉
22 アンダーカット
23 天井面
24 天井裏
30 巾木
31 巾木吐出口
40 ワイヤードリモコン
50 玄関ホール等
51 下駄箱・物入等
60 室外
70 外壁
71 通気層
72 断熱材
101 外箱
102 シロッコファン
103 熱交換器
104 露受皿
105 露受皿固定具
106 吸込口
107 湿度センサ
108 電気品箱
109 停電復帰用のオートリスタートスイッチ
110 静圧スイッチ
111 室内機吐出口
112 ドレンホース
201a,201b 取付具
202a,202b 本体吊金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と、内蔵された送風機によって床下に空気を吹き出す室内機と、前記室外機と前記室内機とで構成される冷凍サイクル1つで複数の部屋の空調を行う空調システムであって、
前記室内機からの空気を床下に向かって略真下に放散するように案内するダクトと、
前記送風機を一定速で回転させる制御回路と、を備え、
前記室内機から吹き出した空気は、前記床下、前記複数の部屋を通り、天井を介さずに、前記室内機に戻る気流を形成する空調システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記室内機から前記床下空間へ到る送風路の断面積は、前記室内機の空気吹出口である室内機吐出口の断面積よりも、前記ダクトの断面積の方が大きいことを特徴とする空調システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記風量の指令を与える静圧スイッチを備えたことを特徴とする空調システム。
【請求項4】
請求項1において、
室内温度の指令を与えるリモコンを備えたことを特徴とする空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−298328(P2008−298328A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142750(P2007−142750)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】