説明

空調システム

【課題】快適性を向上させると共に、省エネルギー効果を向上することのできる空調システムを提供する。
【解決手段】暖房時においては、換気型調湿装置3が加湿を行うことで室内空間Hの湿度を高めた状態で、床暖房・床冷房装置4が床暖房を行うことで使用者Pの身体へ直接暖かさを伝える。これによって、室内空間Hの温度が大きく上昇していなくても、使用者Pは体感として快適な暖かさを感じることができる。一方、冷房時においては、換気型調湿装置3が除湿を行うことで室内空間Hの湿度を低めた状態で、床暖房・床冷房装置4が床冷房を行うことで使用者Pの身体へ直接涼しさを伝える。これによって、室内空間Hの温度が大きく低下していなくても、使用者Pは体感として快適な涼しさを感じることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の室内空間における空調を行う空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の室内における空調を行う空調システムとして、温風や冷風を発生させて室内で対流させることによって室内の暖房あるいは冷房を行う対流型空調機と、床暖房・床冷房装置とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この空調システムでは、暖房時においては、床暖房・床冷房装置に暖房用水を循環させた後、当該暖房用水を対流型空調機へ供給している。これによって、室内の温度を上げて暖房を行っている。一方、冷房形態においては、対流型空調機へ冷房用水を循環させた後、当該冷房用水を床暖房・床冷房装置へ供給している。これによって、室内の温度を下げて冷房を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−294798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の空調システムは、対流型空調機から送風を行い、室内空気の対流作用を生起することによって、室内雰囲気の空調を行っている。すなわち、室内で空気を対流させて温度を上げ、あるいは下げることを主たる作用として暖房・冷房を行っている。このような空調システムにあっては、温風や冷風が直接身体に当たることによって、使用者が不快感を覚えるという問題があり、また、室内の場所によって暑すぎる、寒すぎるといった温度ムラが生じてしまうという問題があった。また、従来の空調システムに対して省エネルギー化のニーズも高まっていた。以上より、快適性を向上させると共に省エネルギー効果を向上することのできる空調システムが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、快適性を向上させると共に、省エネルギー効果を向上することのできる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、発明者らは鋭意研究の結果、送風を行い空気の対流を生起させることで室内空間の温度を大きく変化させなくとも、使用者の身体の一部が接触する床面の温度調整と室内の換気型調湿とを同時に行うことによって、使用者が快適に感じる空間を提供できることを見出した。すなわち、発明者らは、暖房時においては、換気型調湿手段で加湿をすると共に床暖房を行うことにより、室内空間の温度自体は対流型空調機を用いる場合より低いとしても、使用者が体感として感じる暖かさを十分に確保できることを見出した。また、発明者らは、冷房時においては、換気型調湿手段で除湿をすると共に床冷房を行うことにより、室内空間の温度自体は対流型空調機を用いる場合より高いとしても、使用者が体感として感じる涼しさを十分に確保できることを見出した。
【0007】
従って、本発明に係る空調システムは、住宅の室内空間の空調を行う空調システムであって、外気を吸排気して加湿給気、または除湿給気を行うことで室内空間の湿度を調節する換気型調湿手段と、室内空間の床下で熱媒を流通させることで床暖房を行う床暖房手段と、室内空間の床下で冷媒を流通させることで床冷房を行う床冷房手段と、を備え、暖房時においては、換気型調湿手段が室内空間の加湿を行うと共に、床暖房手段が床暖房を行い、冷房時においては、換気型調湿手段が室内の除湿を行うと共に、床冷房手段が床冷房を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る空調システムでは、暖房時においては、換気型調湿手段が加湿を行うことで室内空間の湿度を高めた状態で、床暖房手段が床暖房を行うことで使用者の身体へ直接暖かさを伝える。これによって、室内空間の温度が大きく上昇していなくても、使用者は体感として快適な暖かさを感じることができる。一方、冷房時においては、換気型調湿手段が除湿を行うことで室内空間の湿度を低めた状態で、床冷房手段が床冷房を行うことで使用者の身体へ直接涼しさを伝える。これによって、室内空間の温度が大きく低下していなくても、使用者は体感として快適な涼しさを感じることができる。
【0009】
この空調システムでは、床暖房・床冷房手段及び換気型調湿手段を用いることによって送風による空気対流を少なくして冷暖房が可能であるため、快適性を向上することができる。すなわち、温風や冷風が直接身体に当たることにより使用者が不快感を覚えることを防止することができる。また、空気対流が少なく、床暖房・床冷房手段による輻射効果により温度分布が均一となるため、室内空間での場所によっての暑すぎ・寒すぎの温度ムラを無くすことができる。また、送風音が小さくなり、静かな室内環境を維持することができる。
【0010】
また、この空調システムは、健康志向という観点からも一層高品質な室内空間を提供することができる。すなわち、別途室内に加湿装置を設けなくても、暖房時には換気型調湿手段で加湿を行うため、インフルエンザ対策などのように健康に配慮した室内空間を提供することができる。また、空気対流を少なくして冷暖房が可能であるため、空気中のホコリの巻上げがなく、空気の清浄度を維持することができる。
【0011】
また、この空調システムは、従来の空調システムに比して省エネルギー化を図ることができる。すなわち、本発明に係る空調システムは、室内空間の温度を強制的に大きく上昇させることなく、湿度を上げた状態で床暖房により直接暖かさを伝えることで、使用者が体感として感じる暖かさを確保することができるものである。また、本発明に係る空調システムは、室内空間の温度を強制的に大きく低下させることなく、湿度を下げた状態で床冷房により直接涼しさを伝えることで、使用者が体感として感じる涼しさを確保することができるものである。使用者が暖かさを感じることができる室内空間を提供する場合において、従来の空調システムのように温風の送風を行うことで室内空間の温度を上昇させるのに必要とされるエネルギーに比して、換気型調湿手段での加湿及び床暖房手段での床暖房に要するエネルギーは少なくてよい。また、使用者が涼しさを感じることができる室内空間を提供する場合において、従来の空調システムのように冷風の送風を行うことで室内空間の温度を低下させるのに必要とされるエネルギーに比して、換気型調湿手段での除湿及び床冷房手段での床冷房に要するエネルギーは少なくてよい。また、対流型の空調システムはフィルター等の交換・清掃が必要であるが、本発明に係る空調システムではフィルター等の交換・掃除が不要なメンテナンスフリー設計とすることができる。
【0012】
以上によって、本発明に係る空調システムは、換気型調湿手段及び床暖房・床冷房手段を用いて調湿と床冷暖房とを同時に行うことによって、快適性を向上させると共に、省エネルギー効果を向上することができる。
【0013】
また、本発明に係る空調システムにおいて、床暖房手段及び床冷房手段は、熱媒及び冷媒を流通させることのできる流路を共有していることが好ましい。これによって、使用する季節に応じて一つの流路で床暖房と床冷房を切り替えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、快適性を向上させると共に、環境に対する負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る空調システムの概略構成図であって、暖房時における動作を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る空調システムの概略構成図であって、冷房時における動作を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る空調システムの暖房時における処理内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る空調システムの冷房時における処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る空調システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る空調システムの概略構成図であって、暖房時における動作を示す図である。図2は、本発明の実施形態に係る空調システムの概略構成図であって、冷房時における動作を示す図である。本実施形態に係る空調システム1は、住宅における室内空間Hのように、使用者Pが靴を脱いだ状態となる環境下における空調を行う機能を有している。すなわち、大型ビルなどの建築物などのように、使用者Pが靴を掃いていることを前提とした環境下で使用されるものとは適用対象が異なっている。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る空調システム1は、システム全体の制御を行う制御部2と、加湿及び除湿を行うことで室内空間Hの湿度を調節する換気型調湿装置(換気型調湿手段)3と、室内空間Hの床F内に設けられた床暖房・床冷房装置(床暖房手段、床冷房手段)4と、室内空間Hの湿度を検出する湿度センサ6と、室内空間Hの温度を検出する温度センサ7と、を備えている。
【0018】
換気型調湿装置3は、外気との間で吸気と排気を行い、室内空間Hに対して加湿給気を行うことで加湿すると共に除湿給気を行うことで除湿を行う機能を有する調湿装置である。換気型調湿装置3は、室内空間Hに対して送風による空気の対流を生じさせることなく調湿が可能である。換気型調湿装置3は、室内空間Hの天井Cに設けられており、室内空間Hの温度を大きく変化させることなく湿度を調節する機能を有する。この換気型調湿装置3には、公知の換気型の調湿装置を適用することができる。具体的に、換気型調湿装置3は、外気を加湿あるいは除湿する換気調湿器9と、空気流路10,11,12,13と、を主に備えている。換気調湿器9は、熱媒体を循環させるための循環流路、圧縮機、熱交換器、膨張弁、加湿部等を備えて構成されている。
【0019】
暖房運転時において、換気型調湿装置3は、空気流路11を介して外部より低温・低湿の外気を吸気し、当該外気を換気調湿器9において加湿処理を行った後、空気流路10を介して加湿した空気を室内空間Hへ給気する。また、換気型調湿装置3は、空気流路12を介して室内空間Hの空気を取り込んで、取り込んだ空気を換気調湿器9における加湿・熱交換処理に用いた後、空気流路13を介して低温・低湿となった空気を外部へ排気する(図1参照)。
【0020】
一方、冷房運転時において、換気型調湿装置3は、空気流路11を介して外部より高温・多湿の外気を吸気し、当該外気を換気調湿器9において除湿処理を行った後、空気流路10を介して除湿した空気を室内空間Hへ給気する。また、換気型調湿装置3は、空気流路12を介して室内空間Hの空気を取り込んで、取り込んだ空気を換気調湿器9における除湿・熱交換処理に用いた後、空気流路13を介して高温・高湿となった空気を外部へ排気する(図2参照)。
【0021】
床暖房・床冷房装置4は、室内空間Hの床下Fに暖房用水(熱媒)や冷房用水(冷媒)を流通させることによって、床暖房あるいは床冷房を行うものである。床暖房・床冷房装置4は、暖房用水及び冷房用水を循環させる配管を有する床冷暖房パネル21と、床冷暖房パネル21の配管に冷房用水を供給する冷房用水器22と、床冷暖房パネル21の配管に暖房用水を供給する暖房用水器23とを備えている。床冷暖房パネル21の配管には、冷房用水と暖房用水の両方を流すことが可能である。従って、床暖房・床冷房装置4は、床暖房機能と床冷房機能との間において、配管を共有して用いることができる。これによって、使用する季節に応じて一つの流路で床暖房と床冷房を切り替えることができる。冷房用水器22は、冷房運転時において床冷暖房パネル21の配管に対して冷房用水を供給する機能を有している。冷房用水が供給された床冷暖房パネル21は、室内空間Hに対して放熱を行う。本実施形態における冷房用水器22としては、高効率熱源機、地下水を用いた供給装置、チラーを用いることができる。暖房用水器23は、暖房運転時において床冷暖房パネル21の配管に対して暖房用水を供給する機能を有している。暖房用水が供給された床冷暖房パネル21は、室内空間Hに対して放射冷却を行う。本実施形態における暖房用水器23としては、高効率熱源機、ヒートポンプを用いることができる。
【0022】
制御部2は、換気型調湿装置3及び床暖房・床冷房装置4の制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPUを主体として構成され、ROM、RAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを備えている。制御部2は、暖房時においては、換気型調湿装置3が室内空間Hの加湿を行うと共に、床暖房・床冷房装置4が床暖房を行うように制御する機能を有している。すなわち、暖房時は、換気型調湿装置3は室内空間Hの湿度を高めるための加湿運転のみを行い、それと同時に床暖房・床冷房装置4は床暖房を行う。室内空間Hの使用者Pは、換気型調湿装置3によって十分に加湿された室内空間Hにおいて、床と接触している足元から床暖房・床冷房装置4による適度な暖かさを感じることができる。従って、換気型調湿装置3による加湿運転のみであることにより室内空間Hの現実の温度が対流型のエアコンによる空調を行った場合に比して低かったとしても、使用者Pが体感として感じる快適度を十分に確保することができる。具体的に、制御部2は、暖房時において換気型調湿装置3を制御することにより、室内空間Hの湿度を30〜60%とすることが好ましく、45〜60%とすることがより好ましい。また、室内空間Hの温度は18〜24℃であれば、本実施形態に係る空調システム1により使用者Pが快適性を体感することができる。空調システム1による暖房時の室内温度は、対流型のエアコンを用いた場合に使用者Pが暖かさを感じることができる温度よりも、低い温度であってよい。一方、制御部2は、暖房時において暖房用水器23を制御することにより、25〜60℃の暖房用水、より好ましくは25〜35℃の暖房用水を床冷暖房パネル21の配管に供給する。
【0023】
制御部2は、冷房時においては、換気型調湿装置3が室内空間Hの除湿を行うと共に、床暖房・床冷房装置4が床冷房を行うように制御する機能を有している。すなわち、冷房時は、換気型調湿装置3は室内空間Hの湿度を低めるための除湿運転のみを行い、それと同時に床暖房・床冷房装置4は床冷房を行う。室内空間Hの使用者Pは、換気型調湿装置3によって十分に除湿された室内空間Hにおいて、床と接触している足元から床暖房・床冷房装置4による適度な冷たさを感じることができる。従って、換気型調湿装置3による除湿運転のみであることにより室内空間Hの現実の温度が対流型のエアコンによる空調を行った場合に比して高かったとしても、使用者Pが体感として感じる快適度を十分に確保することができる。具体的に、制御部2は、冷房時において換気型調湿装置3を制御することにより、室内空間Hの湿度を30〜60%とすることが好ましく、45〜60%とすることがより好ましい。また、室内空間Hの温度は24〜28℃であれば本実施形態に係る空調システム1により使用者Pが快適性を体感することができる。空調システム1による冷房時の室内温度は、対流型のエアコンを用いた場合に使用者Pが涼しさを感じることができる温度よりも、高い温度であってよい。一方、制御部2は、冷房時において冷房用水器22を制御することにより、15〜35℃の冷房用水、より好ましくは20〜35℃の冷房用水を床冷暖房パネル21の配管に供給する。この冷房用水の温度は、使用者Pが快適な冷たさを感じることができる温度であり、床冷暖房パネル21の配管の結露が生じない温度であると共に、冷やしすぎによって使用者Pが違和感や不快感を感じない程度の温度である。このときの床面の温度は20℃程度となる。
【0024】
次に、図3及び図4を参照して、本発明の実施形態に係る空調システム1の動作について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る空調システム1の暖房時における処理内容を示すフローチャートである。図4は、本発明の実施形態に係る空調システム1の冷房時における処理内容を示すフローチャートである。図3及び図4に示す制御処理は、制御部2において所定のタイミングで実行される。また、図3及び図4に示す制御処理は、使用者Pのリモコン操作による指示に基づいて実行されてもよく、使用者Pが検知されたタイミングで実行されてもよく、あるいは湿度センサ6や温度センサ7によるセンサ値が所定の閾値を越えたときに自動で実行されてもよい。
【0025】
まず、暖房時の制御処理について説明する。図3に示すように、制御部2は、湿度センサ6及び温度センサ7からのセンサ値の読み込みを行う(ステップS10)。次に、制御部2は、S10で読み込んだ湿度や温度に基づいて、あるいは使用者Pの操作に基づいて室内空間Hの湿度を設定する(ステップS12)。制御部2は、S12で設定した湿度を目標値として、換気型調湿装置3を制御することによって加湿処理を行う(ステップS14)。具体的には、空気流路11から吸気された外気が換気調湿器9で加湿処理され、空気流路10を介して室内空間Hに給気される。また、空気流路12から吸気された室内空間Hの空気が換気調湿器9で加湿・熱交換処理に用いられ、空気流路13を介して外部に排気される。
【0026】
また、制御部2は、床暖房の温度を設定すると共に(ステップS16)、S16で設定した温度を目標値として床暖房・床冷房装置4を制御することによって床暖房処理を行う(ステップS18)。具体的には、暖房用水器23で所定の温度に温められた暖房用水が床冷暖房パネル21の配管に供給されて循環を行う。
【0027】
次に、冷房時の制御処理について説明する。図4に示すように、制御部2は、湿度センサ6及び温度センサ7からのセンサ値の読み込みを行う(ステップS20)。次に、制御部2は、S20で読み込んだ湿度や温度に基づいて、あるいは使用者Pの操作に基づいて室内空間Hの湿度を設定する(ステップS22)。制御部2は、S22で設定した湿度を目標値として、換気型調湿装置3を制御することによって除湿処理を行う(ステップS24)。具体的には、空気流路11から吸気された外気が換気調湿器9で除湿処理され、空気流路10を介して室内空間Hに給気される。また、空気流路12から吸気された室内空間Hの空気が換気調湿器9で除湿・熱交換処理に用いられ、空気流路13を介して外部に排気される。
【0028】
また、制御部2は、床暖房の温度を設定すると共に(ステップS16)、S16で設定した温度を目標値として床暖房・床冷房装置4を制御することによって床暖房処理を行う(ステップS18)。具体的には、暖房用水器23で所定の温度に温められた暖房用水が床冷暖房パネル21の配管に供給されて循環を行う。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る空調システム1の作用・効果について説明する。
【0030】
本発明の実施形態に係る空調システム1では、暖房時においては、換気型調湿装置3が加湿を行うことで室内空間Hの湿度を高めた状態で、床暖房・床冷房装置4が床暖房を行うことで使用者Pの身体へ直接暖かさを伝える。これによって、室内空間Hの温度が大きく上昇していなくても、使用者Pは体感として快適な暖かさを感じることができる。一方、冷房時においては、換気型調湿装置3が除湿を行うことで室内空間Hの湿度を低めた状態で、床暖房・床冷房装置4が床冷房を行うことで使用者Pの身体へ直接涼しさを伝える。これによって、室内空間Hの温度が大きく低下していなくても、使用者Pは体感として快適な涼しさを感じることができる。
【0031】
この空調システム1では、床暖房・床冷房装置4及び換気型調湿装置3を用いることによって送風による空気対流を少なくして冷暖房が可能であるため、快適性を向上することができる。すなわち、温風や冷風が直接身体に当たることにより使用者Pが不快感を覚えることを防止することができる。また、空気対流が少なく、床暖房・床冷房装置4による輻射効果により温度分布が均一となるため、室内空間Hでの場所によっての暑すぎ・寒すぎの温度ムラを無くすことができる。また、送風音が小さくなり、静かな室内環境を維持することができる。
【0032】
また、この空調システム1は、健康志向という観点からも一層高品質な室内空間を提供することができる。すなわち、別途室内に加湿装置を設けなくても、暖房時には換気型調湿装置3で加湿を行うため、インフルエンザ対策などのように健康に配慮した室内空間Hを提供することができる。また、空気対流を少なくして冷暖房が可能であるため、空気中のホコリの巻上げがなく、空気の清浄度を維持することができる。
【0033】
また、この空調システム1は、従来の空調システムに比して省エネルギー化を図ることができる。すなわち、空調システム1は、室内空間Hの温度を強制的に大きく上昇させることなく、湿度を上げた状態で床暖房により直接暖かさを伝えることで、使用者Pが体感として感じる暖かさを確保することができるものである。また、空調システム1は、室内空間Hの温度を強制的に大きく低下させることなく、湿度を下げた状態で床冷房により直接涼しさを伝えることで、使用者が体感として感じる涼しさを確保することができるものである。使用者が暖かさを感じることができる室内空間Hを提供する場合において、従来の空調システムのように温風の送風を行うことで室内空間Hの温度を上昇させるのに必要とされるエネルギーに比して、換気型調湿装置3での加湿及び床暖房・床冷房装置4での床暖房に要するエネルギーは少なくてよい。また、使用者Pが涼しさを感じることができる室内空間Hを提供する場合において、従来の空調システムのように冷風の送風を行うことで室内空間Hの温度を低下させるのに必要とされるエネルギーに比して、換気型調湿装置3での除湿及び床暖房・床冷房装置4での床冷房に要するエネルギーは少なくてよい。また、対流型の空調システムはフィルター等の交換・清掃が必要であるが、本発明に係る空調システム1ではフィルター等の交換・掃除が不要なメンテナンスフリー設計とすることができる。
【0034】
以上によって、本発明の実施形態に係る空調システム1は、換気型調湿装置3及び床暖房・床冷房装置4を用いて調湿と床冷暖房とを同時に行うことによって、快適性を向上させると共に、省エネルギー効果を向上することができる。
【0035】
本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0036】
例えば、上述の実施形態では床暖房・床冷房装置4は、暖房用水が流れる配管と冷房用水が流れる配管とを共有していたが、暖房用水が流れる配管と冷房用水が流れる配管とで別の配管を用いてもよい。
【0037】
また、上述の実施形態では、空調システム1は、換気型調湿装置3及び床暖房・床冷房装置4のみを備えるものであったが、システムの中に対流型のエアコンが組み込まれているものであってもよい。このような場合、例えば「加湿・床暖房モード」という運転モードとし、対流型エアコンの運転を休止させ、換気型調湿装置3による加湿及び床暖房・床冷房装置4による床暖房のみで暖房を行う。また、例えば「除湿・床冷房モード」という運転モードとし、対流型エアコンの運転を休止させ、換気型調湿装置3による除湿及び床暖房・床冷房装置4による床冷房のみで冷房を行う。
【0038】
また、上述の実施形態では、輻射による冷暖房装置として、床暖房・床冷房装置のみが設けられていたが、更に、壁や天井にも輻射パネルを配置してもよい。ただし、本発明の効果を奏するためには、使用者Pの身体の一部が接触する所から暖かさや涼しさを直接伝える必要があるため、床冷暖房パネルが必須の構成要素となる。従って、天井のみに輻射パネルを設けたものや壁のみに輻射パネルを設けたものは本発明の効果を奏することができない。
【符号の説明】
【0039】
1…空調システム、3…換気型調湿装置(換気型調湿手段)、4…床暖房・床冷房装置(床暖房装置、床冷房装置)、H…室内空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅の室内空間の空調を行う空調システムであって、
外気を吸排気して加湿給気、または除湿給気を行うことで前記室内空間の湿度を調節する換気型調湿手段と、
前記室内空間の床下で熱媒を流通させることで床暖房を行う床暖房手段と、
前記室内の前記床下で冷媒を流通させることで床冷房を行う床冷房手段と、を備え、
暖房時においては、前記換気型調湿手段が前記室内空間の加湿を行うと共に、前記床暖房手段が床暖房を行い、
冷房時においては、前記換気型調湿手段が前記室内空間の除湿を行うと共に、前記床冷房手段が床冷房を行うことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記床暖房手段及び前記床冷房手段は、前記熱媒及び前記冷媒を流通させることのできる流路を共有していることを特徴とする請求項1記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−122798(P2011−122798A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282868(P2009−282868)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000183071)住商メタレックス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】