説明

空調システム

【課題】冷却装置の消費電力を低減するとともに、結露の発生を防ぐ空調システムを提供する。
【解決手段】室外の気体を給気する給気ファン14及び収納された電子機器11で発生する暖気16を室外に排気する排気ファン15を有する電子機器収納室10と、電子機器収納室10が室内に配置されるとともに電子機器収納室10と構造的に分離されている電子機器室20とを備える空調システム1であって、電子機器室20の外気23を電子機器収納室10と電子機器室20との隙間に導入する外気導入ファン22と、排気ファン15と電子機器室20の排気口25とを連通し、暖気16を室外に導出する排気ダクト24と、排気ダクト24に付設され、排気ダクト24に排気された暖気16の一部を抽気する抽気ゲート27とを備え、給気ファン14は、外気導入ファン22により導入された外気23と抽気ゲート27により抽気された暖気16との混合気30を電子機器室10に導入することを特徴とする空調システム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器収納室に収納された電子機器を冷却するための空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データセンタやサーバルーム等の電子機器収納室には、サーバやネットワーク機器などの電子機器が収納されている。電子機器はCPUなどの機能部品を有しており、電力を消費して発熱する。そこで、電子機器収納室には電子機器を冷却する空調システムが備えられている。
【0003】
関連のある技術として、以下の文献が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−002775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の空調システムでは電子機器と同等の電力を費やすコンプレッサ等を用いて冷却空気を電子機器収納室に導入している。このため、例えば電子機器収納室を給気側と排気側とに分離して冷却効率を向上させたとしても、わずかに省電力化するにとどまり、依然として冷却のための多大な電力が消費されている。一方、冷却装置の消費電力を安易に低減しようとすると、冷却効率が低下して室内の気温が上昇し、電子機器の誤作動が発生してしまう。
【0006】
また、冷却装置を簡略化して外気を直接電子機器収納室の室内に導入するような構成の場合、梅雨の時期や冬季には電子機器に結露が発生してしまい、その寿命が著しく短縮する問題があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、冷却のための消費電力を低減するとともに、結露の発生を防ぐ空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空調システムは、室外の気体を給気する給気ファン及び収納された電子機器で発生する暖気を室外に排気する排気ファンを有する電子機器収納室と、該電子機器収納室が室内に配置されるとともに前記電子機器収納室と構造的に分離されている電子機器室とを備える空調システムであって、前記電子機器室の外気を前記電子機器収納室と前記電子機器室との隙間に導入する外気導入ファンと、前記排気ファンと前記電子機器室の排気口とを連通し、前記暖気を室外に導出する排気ダクトと、前記排気ダクトに付設され、前記排気ダクトに排気された暖気の一部を抽気する抽気ゲートとを備え、前記給気ファンは、前記外気導入ファンにより導入された外気と前記抽気ゲートにより抽気された暖気との混合気を前記電子機器室に導入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
冷却装置の消費電力を低減するとともに、結露の発生を防ぐ空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態に係る空調システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態に係る空調システムについて図を用いて説明する。なお、以下では、本実施の形態の説明で必要な図のみ用いて説明する。このため、本発明はこれらの図に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る空調システム1の断面図である。空調システム1は、電子機器収納室10及び電子機器室20を備える。以下、各々について詳述する。
【0013】
電子機器収納室10は、電子機器11、ラック13、給気ファン14及び排気ファン15を備える。
【0014】
電子機器11はCPU(Central Processing Unit)等の機能部品を有しており、正面に不図示の外気導入口を備え、背面に電子機器排気ファン12を備える。電子機器11はCPUで発生した暖気16を排気ファン12によりホットゾーン10bに排気する。電子機器11としては例えばサーバが挙げられる。
【0015】
ラック13は電子機器11を上下方向に搭載する。ラック13は電子機器収納室10の床及び天井と当接しており、電子機器収納室10をクールゾーン10aとホットゾーン10bとに区分けする。
【0016】
給気ファン14は電子機器収納室10のクールゾーン10aの壁に設けられており、電子機器収納室10の室外の気体である混合気30をクールゾーン10aに導入する。排気ファン15は電子機器収納室10のホットゾーン10b側の壁に設けられており、ホットゾーン10bの暖気16を排気する。給気ファン14及び排気ファン15としては例えば換気扇が挙げられ、いずれも消費電力が小さい装置である。
【0017】
電子機器室20は、前述の電子機器収納室10、外気導入ゲート21、外気導入ファン22、排気ダクト24、抽気ゲート27及び通気路28を備える。電子機器室20には電子機器収納室10が構造的に分離されるように室内に配置されている。このため、電子機器室20は給気ファン14とは別個に外気導入ファン22を備え、電子機器収納室10と電子機器室20との隙間により通気路28を形成する。
【0018】
外気導入ゲート21及び外気導入ファン22は、電子機器室20の給気ファン14側の壁に設けられており、いずれも外気23を電子機器収納室10と電子機器室20との隙間に導入する。外気導入ゲート21は給気ファン14近傍の減圧下で外気23を導入することから、外気導入ファン22が外気導入量を調整することができない場合に有効である。外気導入ファン22は給気ファン14及び排気ファン15と同様に換気扇等の構造を有するものであり、小さな消費電力で稼動する。
【0019】
排気ダクト24は排気ファン15と電子機器室20の排気ファン15側の壁に設けられた排気口25とを連通し、排気ファン15で排気された暖気16を排気26として電子機器室20の室外に導出する。抽気ゲート27は排気ダクト24の排気ファン15から排気口25までの間に付設されており、排気ダクト13から排気された暖気16を抽気する。
【0020】
通気路28は電子機器収納室10と電子機器室20との隙間により形成され、抽気された暖気16を還流気29として給気ファン14の近傍に案内する。この隙間が通気路28を形成することにより、空調システム1を設置するための手間やコストを削減することが可能となる。
【0021】
次に、本実施の形態に係る空調システム1の気体の流れについて説明する。まず、電子機器11が稼動した後、電子機器室20の外気導入ファン22、電子機器収納室10の給気ファン14及び排気ファン15の電源を入れ、外気導入ゲート21及び抽気ゲート27のゲートを開放する。
【0022】
電子機器11のCPUで発生した暖気16は、電子機器排気ファン12によりホットゾーン10bに排気された後、排気ファン15により排気ダクト24を介して電子機器室20の室外に排気されるとともに、抽気ゲート27により暖気16の一部が抽気される。
【0023】
抽気された暖気16は還流気29として通気路28を経て給気ファン14の近傍に案内される。案内された還流気29は外気23と混合して混合気30が生成される。生成された混合気30は給気ファン14により電子機器室10の室内に導入されて電子機器11を冷却する。
【0024】
以上のように、本実施の形態に係る空調システム1では、ラック13が電子機器収納室10をクールゾーン10aとホットゾーン10bとに区分けしているため、暖気16がクールゾーン11a側に回りこまない。また、従来の空調システムのようにコンプレッサ等を用いる必要がないため、電子機器収納室10及び電子機器室20を冷却するための消費電力を抑制することが可能となり、発電設備の小型化も実現できる。また、コンプレッサ等が不要であるため、ラック13が1個〜数個の小型データセンタから数十個以上の大型データセンタのいずれにも容易に導入できる。
【0025】
また、本実施の形態に係る空調システム1では、給気ファン14が外気23と還流気29とが混合した混合気30を電子機器収納室10に導入する。このため、梅雨の季節や冬季の外気23を電子機器室20に導入しても還流気29(暖気16)により混合気30の温度の低下を防ぎ、電子機器11の結露の発生を抑制することが可能となる。
【0026】
本実施の形態に係る空調システム1には、給気ファン14や電子機器11の近傍等に温度センサ、湿度センサ、気圧センサ等を設け、各センサからの情報に基づいて外気導入ゲート21、外気導入ファン22、排気ダクト24、抽気ゲート27等を制御する制御装置を設けてもよい。制御装置を設けた空調システムでは、空調システムの動作を外気23の状況や電子機器11の稼働状況に応じて調整することができるため、電子機器11の誤作動を防止するとともに結露の発生を抑制することが可能となる。
【0027】
また、本実施の形態では、還流気29を通気路28により給気ファン14の近傍に案内しているが、抽気ゲート27と給気ファン14の近傍とを連通するダクトを設けてもよい。還流気29を無駄なく給気ファン14の近傍に案内することができるため、特に、外気23の温度が低い場合に混合気30の温度を容易に上昇させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 空調システム、10 電子機器収納室、10a クールゾーン、10b ホットゾーン、11 電子機器、12 電子機器排気ファン、13 ラック、14 給気ファン、15 排気ファン、16 暖気、20 電子機器室、21 外気導入ゲート、22 外気導入ファン、23 外気、24 排気ダクト、25 排気口、26 排気、27 抽気ゲート、28 通気路、29 還流気、30 混合気。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外の気体を給気する給気ファン及び収納された電子機器で発生する暖気を室外に排気する排気ファンを有する電子機器収納室と、該電子機器収納室が室内に配置されるとともに前記電子機器収納室と構造的に分離されている電子機器室とを備える空調システムであって、
前記電子機器室の外気を前記電子機器収納室と前記電子機器室との隙間に導入する外気導入ファンと、
前記排気ファンと前記電子機器室の排気口とを連通し、前記暖気を室外に導出する排気ダクトと、
前記排気ダクトに付設され、前記排気ダクトに排気された暖気の一部を抽気する抽気ゲートと
を備え、
前記給気ファンは、前記外気導入ファンにより導入された外気と前記抽気ゲートにより抽気された暖気との混合気を前記電子機器室に導入することを特徴とする空調システム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−220107(P2012−220107A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86370(P2011−86370)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(511089664)
【Fターム(参考)】