説明

空調システム

【課題】冷却装置の消費電力を低減するとともに、室内の温度上昇を抑制することができる空調システムを提供する。
【解決手段】一方の面16aから冷気を吸気し一方の面16aの対向面16bから暖気を排気する電子機器16を上下方向に搭載するラック15が設置されている部屋11を冷却する空調システム1であって、部屋11はラック15を境界として一方の面16a側のクールゾーン11aと対向面16b側のホットゾーン11bとに区別してなるとともに、クールゾーン11aに設けられた供給口12と、ラック15の、ラック15に搭載された最下部に位置する電子機器16の下側に設けられた通気孔23と、ホットゾーン11bに設けられ、供給口12から冷気を取り込むとともに対向面16bから排気された暖気を部屋11の室外に排気する排気ファン21とを備えることを特徴とする空調システム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を搭載するラックが設置された部屋を冷却するための空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データセンタやサーバルームには、サーバやネットワーク機器などの電子機器が積み重ねられたラックが設置されている。電子機器はCPUなどの機能部品を有しており、電力を消費して発熱する。データセンタ等には、電子機器を一定温度以下に維持して動作保障を行うため、電子機器やデータセンタ等を冷却するために多大な電力を費やす冷却装置が備えられていた。しかし、省電力化の観点から冷却効率の向上が望まれるようになってきた。
【0003】
そこで、データセンタ等を電子機器への給気(冷風)側と電子機器からの排気(暖気)側とに分離した空調システムが提案されている。
【0004】
関連のある技術として、以下の文献が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−002775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の空調システムでは電子機器と同等の電力が必要なコンプレッサ等を用いて圧縮した冷却空気をデータセンタ等に導入する冷却装置を使用している。このため、データセンタ等を給気側と排気側とに分離する構成にしてもわずかに省電力化するにとどまり、依然として冷却のための多大な電力が消費されている。一方、冷却装置の消費電力を安易に低減しようとすると、冷却効率が低下して室内の気温が上昇してしまう。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、冷却装置の消費電力を低減するとともに、室内の温度上昇を抑制することができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、消費電力が大きいコンプレッサ等を用いる冷却装置を使用せず、コンプレッサの1/10の消費電力であるファンを用いた冷却構造を備える空調システムを発明するに至った。
【0009】
本発明の空調システムは、一方の面から冷気を吸気し該一方の面の対向面から暖気を排気する電子機器を上下方向に搭載するラックが設置されている部屋を冷却する空調システムであって、前記部屋は前記ラックを境界として前記一方の面側のクールゾーンと前記対向面側のホットゾーンとに区別してなるとともに、前記クールゾーンに設けられた供給口と、前記ラックの、該ラックに搭載された最下部に位置する電子機器の下側に設けられた通気孔と、前記ホットゾーンに設けられ、前記供給口から前記冷気を取り込むとともに前記対向面から排気された前記暖気を前記部屋の室外に排気する排気ファンとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
冷却装置の消費電力を低減するとともに、室内の温度上昇を抑制することができる空調システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態に係る空調システムの断面図である。
【図2】第2の実施の形態に係る空調システムの断面図である。
【図3】第3の実施の形態に係る空調システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態に係る空調システムについて図を用いて説明する。なお、以下では、本実施の形態の説明で必要な図のみ用いて説明する。このため、本発明はこれらの図に限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る空調システム1の断面図である。空調システム1は、ラック15、給気口12及び排気ファン21を備える。
【0014】
ラック15は部屋11の床及び天井と当接しており、部屋11をクールゾーン11aとホットゾーン11bとに区分けする。これは、電子機器16から排気される電子機器排気風(暖気)18が給気口12側に回り込まないようにするためである。また、ラック15は複数の電子機器16を上下方向に搭載するとともに、搭載された電子機器16のうち最下部に位置する電子機器16の下側に通気孔23を備える。
【0015】
通気孔23は供給口12から導入された冷風13を流速の早い冷風14として排気ファン21に通気する。通気孔23の孔径は供給口12の口径より小さいため冷風の流速が増加する。このため、通気孔23を通過した流速の早い冷風14は、電子機器排気風18と合流して暖気風20となり排気ファン21から排気される。
【0016】
ラック15に搭載された電子機器16は例えばサーバであり、CPU(Central Processing Unit)等の機能部品を有しており、電力を消費して発熱する。このため、電子機器16は、一方の面(一面)16aから冷風(外気)13を導入し、一方の面16aの対向面16b側に設けられた電子機器排気ファン17により電子機器排気風18を排気する。
【0017】
供給口12は部屋11のクールゾーン11a側の壁に設けられており、排気ファン21の排気で部屋11が減圧されることにより冷風13をクールゾーン11aに導入する。
【0018】
排気ファン21は、ホットゾーン11b中の暖気風20を排気風22として室外へ排気するものであり、例えば換気扇が挙げられる。このように、排気ファン21はコンプレッサ等の消費電力が大きい装置を有さないため、部屋11を冷却するために必要な消費電力を抑制することができる。
【0019】
次に、空調システム1の気体の流れについて説明する。まず、部屋11は排気ファン21を稼動すると減圧され、供給口12から冷風13が導入される。冷風13は、電子機器16に導入されるとともに通気孔23にも導入される。一般に、冷風は下方に溜まり易いため、導入された冷風13の多くは通気孔23を通過することになる。
【0020】
電子機器16に導入された冷風13は、電子機器16のCPU等により発生した暖気により電子機器排気風18に変換された後、電子機器排気ファン17によりホットゾーン11bに排気される。一方、通気孔23に導入される冷風13は、供給口12より径が小さい通気孔23を通過するため流速の早い冷風14としてホットゾーン11bに流れ込む。
【0021】
ホットゾーン11bに排気された電子機器排気風18は、流速の早い冷風14により乱気19になるとともに、流速の早い冷風14と合流する。合流した気流は暖気風20となり排気ファン21から排気風22として室外に排気される。
【0022】
このように、第1の実施の形態に係る空調システム1では、電子機器排気風18がクールゾーン11a側に回りこまない構造であるため、排気ファン21のみにより十分に部屋11を冷却することができる。また、通気孔23がラック15の下部に設けられており、効率よく電子機器排気風18を部屋11の室外に排気することができるため、従来の空調システムのようにコンプレッサ等を用いる必要がなく、部屋11を冷却するための消費電力を抑制することが可能となる。
【0023】
(第2の実施の形態)
図2は、第2の実施の形態に係る空調システム2の断面図である。空調システム1と同一の構成については説明を省略する。空調システム2は、空調システム1の構成に加え、フィルタ24及び還流制御ゲート25を備える。
【0024】
フィルタ24は、図2に示すように、電子機器16の一方の面16aを覆うように設けられている。還流制御ゲート25は、ラック15に搭載された電子機器16のうち最上部に位置する電子機器16の上側に設けられた通気孔27のフィルタ24側の口に設けられている。還流制御ゲート25は、電子機器16から排気される電子機器排気風18を還流暖気26としてフィルタ24と電子機器16との間に流入させるものであり、例えば開閉ゲートやファン等が用いられる。
【0025】
このように、第2の実施の形態に係る空調システム2は、冷風13が10℃以下の場合であっても、還流暖気26により電子機器16の結露を防ぐとともに、フィルタ24により冷風13に混入された埃の電子機器16への進入を抑制することができる。このため、電子機器16の寿命低下を防ぐとともに誤作動も抑制することが可能となる。
【0026】
(第3の実施の形態)
図3は、第3の実施の形態に係る空調システム3の断面図である。空調システム1と同一の構成については説明を省略する。空調システム3は、空調システム2の構成に加えて乱流調整板28を備える。
【0027】
乱流調整板28は、部屋11のホットゾーン11b側の壁面に設けられており、ホットゾーン11bの乱流空間領域29の幅を変更する。乱流調整板28を設けて乱流空間領域29の幅を制御することにより、暖気風20の流速を最適化することができ、部屋11の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0028】
このように、本発明に係る空調システム1〜3では、電子機器16と同等の消費電力が必要なコンプレッサ等を有する冷却装置を使用せずに電子機器16を冷却することができるため、従来の冷却装置の約10%の消費電力で部屋11を冷却することができる。このため、従来の空調システムと比べて大幅な冷却装置の省電力化を実現することが可能となる。
【0029】
また、排気ファン等は低コストであるため、これらを制御するためのシステム導入コストも低く抑えることができる。さらに、電子機器16と同等の消費電力であるコンプレッサ等を有する冷却装置が不要であるため、ラック15の数が数個程度の小規模な部屋(データセンタ)11からラック15の数が数十個程度の大規模な部屋11で容易に実現でき、部屋11に必要とされる大型の受電設備や大型の発電設備の規模を小型化することができるので、初期設備投資額も半減することができる。
【0030】
なお、第1〜3の実施の形態において、部屋11内の気流を制御するための制御装置、部屋11の温度を検知する温度センサ、湿度センサ、気圧センサ等を設けることにより、最適な電子機器16の稼働環境を実現することが可能となる。
【0031】
また、第3の実施の形態では、部屋11のホットゾーン11bに乱流調整板28を設ける態様について説明したが、部屋11の構造を変更したり、ラック15の位置を容易に変更することができるような場合には、これらを最適化することにより乱流空間領域29を調整してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1〜3 空調システム、11 部屋(データセンタ)、11a クールゾーン、11b ホットゾーン、12 供給口、13 冷風(外気)、14 流速の早い冷風、15 ラック、16 電子機器、16a 一方の面(一面)、16b 対向面、17 電子機器排気ファン、18 電子機器排気風、19 乱気、20 暖気風、21 排気ファン、22 排気風、23及び27 通気孔、24 フィルタ、25 還流制御ゲート、26 還流暖気、28 乱流調整板、29 乱流空間領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面から冷気を吸気し該一方の面の対向面から暖気を排気する電子機器を上下方向に搭載するラックが設置されている部屋を冷却する空調システムであって、
前記部屋は前記ラックを境界として前記一方の面側のクールゾーンと前記対向面側のホットゾーンとに区別してなるとともに、
前記クールゾーンに設けられた供給口と、
前記ラックの、該ラックに搭載された最下部に位置する電子機器の下側に設けられた通気孔と、
前記ホットゾーンに設けられ、前記供給口から前記冷気を取り込むとともに前記対向面から排気された前記暖気を前記部屋の室外に排気する排気ファンと
を備えることを特徴とする空調システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−221221(P2012−221221A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86369(P2011−86369)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(511089664)
【Fターム(参考)】